(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記報知手段は、前記使用時間カウント手段によりカウントされた経過時間が所定の値を超えた場合、又は前記製剤の使用期限までの残り時間が所定の値以下の場合に、アラームで報知する、
請求項5記載の薬剤投与装置。
前記製剤溶解手段は、前記製剤シリンジを前記薬剤投与装置本体に装着した場合に、前記薬剤投与装置本体側において前記製剤シリンジが装着されたことを検知して、前記ピストン駆動用モータでピストンを押し出し、製剤を自動溶解する、
請求項1記載の薬剤投与装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る薬剤投与装置の全体斜視図である。
【0015】
図1に示すように、薬剤投与装置1は、筐体2、先端キャップ3、確認窓4、リンジカバー5、検出用突起5b(
図2参照)、電源ボタン6、エア抜きボタン7、完了ボタン8、薬剤投与ボタン9、及び表示手段であるLCD(Liquid Crystal Display)10を備えて構成される。
【0016】
薬剤投与装置1は、装置本体の外装である筐体2によって覆われている。
【0017】
先端キャップ3は、筐体2の一端に着脱可能であり、製剤シリンジ11(
図2参照)の装着・脱着や薬液を注入する注射針の着脱時に必要に応じて着脱される。
【0018】
確認窓4は、透明な部材で構成したシリンジカバー5を介して製剤シリンジ11(
図2参照)の有無や種類、製剤の量等を視覚的に確認する内部確認用の窓である。確認窓4は、透明若しくは半透明な部材で構成されていてもよく、また物理的に削り取られた開口でもよい。シリンジカバー内部を視覚的に確認が可能であればよい。
【0019】
電源ボタン6は、薬剤投与装置1の電源をON/OFFする。これにより、薬剤投与装置1の動作をするための起動を行う。
【0020】
エア抜きボタン7は、製剤シリンジ11(
図2参照)内の空気抜きを行うときに使用するものである。製剤シリンジ11内や投与するための注射針(内部が空洞である中空針)内にエアーが入っている場合があるため、このエア抜きボタン7により、製剤シリンジなどの内部に存在する空気を除去する。
【0021】
完了ボタン8は、エア抜き動作を行った後や各種表示の確認等、必要な操作を完了した時、次のステップに進むことを可能にする。
【0022】
薬剤投与ボタン9は、製剤を投与する準備が完了した後、製剤投与時に押す。
【0023】
表示手段であるLCD10は、充電残量やエア抜き操作等の各種の必要な情報を視覚的に表示する。
【0024】
また、先端キャップ3は、製剤投与用の注射針が露出しないようにカバーする役割を有し、さらに、製剤投与時においては、先端キャップを皮膚に当接させ、製剤投与用の注射針を先端キャップの前面開口部から、皮膚に前記注射針を刺して、製剤を体内へ投与する。先端キャップは、注射針などの先端が尖った鋭利な部材をカバーして、操作時における安全性を確保している。
【0025】
図2及び
図3は、製剤シリンジ11を薬剤投与装置1内へ装着前後の状態を示す断面図である。
図2は、製剤シリンジ11を薬剤投与装置1側の装着部であるシリンジホルダ内へ装着する前の状態を示す内部断面図であり、
図3は、製剤シリンジ11をシリンジホルダ内へ装着した後の状態を示す内部断面図である。シリンジホルダは、ピストンケース12、着脱溝12a、ピストン15などから構成されている。
【0026】
図2に示すように、シリンジカバー5の装着前の状態では、薬剤投与装置1のシリンジカバー5を外し、製剤シリンジ11を薬剤投与装置1に挿入後、シリンジカバー5を装着して、筐体2内部にあるピストンケース12と嵌合する。シリンジカバー5は、
図2に示すように、着脱用突起5aと、検出用突起5bと、を備えている。
【0027】
図3に示すように、シリンジカバー5を薬剤投与装置1に装着した後の状態では、着脱用突起5aは、筐体2内に設けられたピストンケース12の内周面側に形成された着脱用溝12aと嵌合する。
【0028】
検出用突起5bは、筐体2の内部に構成したシリンジカバー検出レバー14aの一端を押圧するために設けられている。
【0029】
製剤シリンジ11は、シールゴム11aと、シリンジ端面11bと、を有している。シールゴム11aは、製剤シリンジ11をシールして、内部の製剤11cを保存するために設けられている。
【0030】
ピストンケース12は、筐体2の内壁面に沿って設けられた略円筒形状の部材であって、外周面側に薬剤投与ボタン9(
図2参照)、ピストンケース12の内部には、ピストン15、シリンジ検出スイッチ13、シリンジカバー検出部14、ピストン駆動用モータ16と、が設けられている。
【0031】
薬剤投与ボタン9は、薬剤投与装置1の側面に設けられており、製剤11cを投与する際に押下される。
【0032】
ピストン15は、製剤シリンジ11の後端部に設けられたシールゴム11aに当接しながら前進して投与側に向かって製剤11cを押し出す。
【0033】
シリンジ検出スイッチ13は、製剤シリンジ11が装着されたシリンジカバー5がピストンケース12内に挿入されると、製剤シリンジ11に設けられているシリンジ端面11bによって押下される。これにより、シリンジ検出スイッチ13のスイッチが切り替わることで、シリンジカバー5内に製剤シリンジ11が装着されていることを検出することができる。
【0034】
シリンジカバー検出部14は、シリンジカバー検出レバー14a、シリンジカバー検出レバースプリング14b、及びシリンジカバー検出スイッチ14cと、を有する。シリンジカバー5がピストンケース12内に挿入されると、製剤シリンジ11に設けられている検出用突起5bによって、シリンジカバー検出レバー14aの一端が押圧され、シリンジカバー検出レバー14aがシリンジカバー検出レバースプリング14bのばね力に反して移動してシリンジカバー検出スイッチ14cを押下する。これにより、シリンジカバー検出スイッチ14cのスイッチが切り替わることにより、シリンジカバー5がピストンケース12内に装着されたことを検出することができる。上記のように、製剤シリンジ11を検出するシリンジ検出スイッチ13とシリンジカバーを検出するシリンジカバー検出スイッチ14cとの検出により、薬剤投与ボタン9の押圧が有効となり、製剤シリンジ11内の製剤の投与が可能となる。
【0035】
ピストン駆動用モータ16は、所望の方向へ回転することにより、製剤の投与方向(
図3において、左右方向を示す)にピストン15を前後進(伸縮)させ、シールゴム11aはピストン15に押圧され移動する。これにより、製剤シリンジ内の製剤は、シールゴム11aの移動量に応じ所定量投与される。
【0036】
図4及び
図5は、注射針17をシリンジカバー5へ装着する前後の状態を示す内部断面図である。
図4は、注射針17をシリンジカバー5へ装着する前の状態を示す内部断面図、
図5は、注射針17をシリンジカバー5へ装着した後の状態を示す内部断面図である。
【0037】
図4に示すように、シリンジカバー5には注射針検出レバー機構18が設けられ、薬剤投与装置1内には注射針検出スイッチ19を備える。注射針検出レバー機構18及び注射針検出スイッチ19は、注射針を検知する注射針検知手段を構成する。
【0038】
シリンジカバー5に搭載された注射針検出レバー機構18は、注射針検出レバー18aと、検出用突起18bと、注射針検出レバースプリング18cと、バネ固定栓18dとから構成されている。
【0039】
図5に示すように、注射針検出レバー機構18は、注射針17がシリンジ5の先端に取り付けられると、注射針検出レバー18aは注射針保持部17aの一端により押圧され、注射針検出レバー18aは注射針検出レバースプリング18cのばね力に反して移動して検出用突起18bが移動する。これにより、薬剤投与装置1の内部に設けられた注射針検出スイッチ19が、検出用突起18bにより押下され、注射針17がシリンジカバー5に取り付けられたことを検出することができる。
【0040】
図6は、薬剤投与装置1の電気回路及びその周辺のブロック図である。
【0041】
図6に示すように、薬剤投与装置1は、電源ボタン6、エア抜きボタン7、完了ボタン8、薬剤投与ボタン9、シリンジカバー検出スイッチ14c、注射針検出スイッチ19、カレンダ20、タイマ21、装置の電源である電源部22、マイクロプロセッサ23、ピストン駆動用モータ16、モータドライブ回路24、電流検知回路25、エンコーダ26、表示部27(LCD10)、サウンダ28、バイブレータ29、及び通信部30を備えて構成される。
【0042】
上記電源ボタン6、エア抜きボタン7、完了ボタン8、薬剤投与ボタン9、シリンジカバー検出スイッチ14c、ピストン駆動用モータ16、及び注射針検出スイッチ19は、制御部であるマイクロプロセッサ23と電気的にそれぞれ接続されている。
【0043】
電源ボタン6は、薬剤投与装置1の電源のON/OFFの切り替えに使用する。これをONすることにより、薬剤投与装置1の動作をするための起動を行う。
【0044】
エア抜きボタン7は、薬剤投与前の前準備として一般的に行われるエア抜き動作をさせる時に使用する。
【0045】
完了ボタン8は、必要な操作を完了した時に押下して次のステップに移行するのに使用される。
【0046】
薬剤投与ボタン9は、製剤投与動作をさせたいときに使用される。
【0047】
マイクロプロセッサ23は、装置全体の動作を制御するとともに、各種ボタン6〜9から送られてきた電気信号から装置の対応する動作を制御する。また、マイクロプロセッサ23は、記憶部23Aと、内蔵タイマ21Aとを備える。
【0048】
記憶部23Aは、ROM、RAM及び電気的に書換可能な不揮発性メモリであるEEPROM(electrically erasable programmable ROM)やフラッシュ・メモリ(Flashmemory)などの半導体メモリ等により構成され、製剤の使用期限データ等を記録する。ROMは、マイクロプロセッサ23により実行されるソフトウェアプログラムや固定データを予め格納されている。RAMは、投与時刻・投与量など投与に関するデータや、使用時間カウントデータ、演算に使用するデータ及び演算結果等を一時的に記憶するいわゆるワーキングメモリとして使用される。RAMは、電源バックアップされることにより、又はEEPROMにも上記データの一部若しくは全部を記憶することにより、電源ボタン6OFF後も、予め定められた製剤の使用期限データなどを記憶している。
【0049】
内蔵タイマ21Aは、計時機能を有する。
【0050】
特に、マイクロプロセッサ23は、製剤投与の動作の制御を行う。具体的には、マイクロプロセッサ23は、薬剤投与ボタン9が押されると、シリンジカバー検出スイッチ14cと注射針検出スイッチ19とを確認し、製剤シリンジ11が正常に装着されているかどうかを確認する。製剤シリンジ11が正常に装着されているのを確認後、モータドライブ回路24に電気信号を送りピストン駆動用モータ16を動作させる。ピストン駆動用モータ16が回転すると、ピストン駆動用モータ16と機械的に接続されているピストン15(
図2参照)が前進し、製剤シリンジ11内の製剤が体内へ投与される。製剤の投与量は、ピストン駆動用モータ16に接続されたエンコーダ26からの出力信号(パルス信号)をカウントすることで投与量を判断し管理する。
【0051】
また、マイクロプロセッサ23は、
図7及び
図8で後述するプログラムを実行することにより、製剤が使用開始されてからの経過時間をカウントする使用時間カウント手段としての機能を有する。さらに、マイクロプロセッサ23は、予め設定されている製剤投与量の情報に基づいて、生体に投与する製剤の投与量を、前記モータドライブ回路を自動的に制御して投与することができる。つまり、製剤投与量制御部も有している。また、前記製剤投与量などの投与に関する製剤投与情報を設定する製剤投与情報設定部も有している。また、製剤投与量などの製剤投与情報はメモリに格納されている。
【0052】
カレンダ20、タイマ21、及びマイクロプロセッサ23内の内蔵タイマ21Aは、薬剤投与装置1の時間管理に使用されている。例えば、製剤投与時、LCD10に投与時の現在時刻を表示することで使用者自身の投与時の時間管理に有効である。
【0053】
カレンダ20は、日をまたがるような比較的長い時間の管理・監視用に使用し、タイマ21又は内蔵タイマ21Aは、時分など比較的短い時間の管理・監視用として使用する。もちろん、これらカレンダ20、タイマ21、及び内蔵タイマ21Aは、単独で使用してもよいし、タイマ21又は内蔵タイマ21Aのうちいずれか一つを備える構成でもよい。また、複数同時に使用して比較しながら両方で相互監視や時差の補正などを行うようにすれば、時間管理の信頼性を向上させることができる。
【0054】
電源部22は、薬剤投与装置1の電源部分を示す。電源部22は、携帯性を重視して充電式電池22a及び充電回路22bから構成されている。充電式電池には、ニッケル水素やリチウムイオンなどの電池が使用される。なお、電源部22には、一次電池を使用しても動作可能である。
【0055】
電流検知回路25は、ピストン駆動用モータ16に異常な荷重がかかったときに通常よりも大きく変動した電流が流れるため、その異常時の電流を検知し、マイクロプロセッサ23に電気信号を送信する。マイクロプロセッサ23は、上記電気信号を受け取ると異常と判断し、薬剤投与動作を中断し、LCD10にエラー等を表示させたり、表示用LEDを点滅させたり、サウンダ28で警告音を出力させたり、バイブレータ29で振動することにより使用者に異常を連絡する。
【0056】
表示部27と、サウンダ28と、バイブレータ29は、それぞれ使用者への報知手段に使用される。表示部27は、
図1に示す表示手段であるLCD10やLED及び有機EL等を指し、現在の動作状態や警告の表示等を、視覚的に確認するために使用される。
【0057】
表示用LEDなどの光学式の報知方法においては、点灯及び点滅などによる報知が可能である。また、マルチカラータイプの表示用LEDなどを用いる場合、RGBの各色を切り換えたり、各色の比率による任意の色を点灯または点滅表示したりすることで、報知内容の重要度や緊急度も視覚的に報知することが可能となる。したがって、聴覚的に不自由な人に有効である。
【0058】
また、前記表示用LEDは上記LCD10とは別個に設けても構わない。
【0059】
表示部27は、製剤シリンジ11を薬剤投与装置1に装着する装着部近傍に配置してもよい。
【0060】
サウンダ28は、警告音、薬剤投与中の音、充電開始時及び完了時の音を出力する。また、サウンダ28は、音声合成LSI(図示せず)を内蔵し、音声による動作のアナウンス等を行う。したがって、視覚的に不自由な人にも有効である。
【0061】
バイブレータ29は、薬剤投与装置1の振動により警告等を使用者に報知する。バイブレータ29は、音声の代わり、又は音声によるアナウンスと同時に振動することで、使用者に異常等を連絡することが可能であるので、効果的に薬剤投与装置1などの動作状態を伝えることができる。
【0062】
通信部30は、無線又は有線により他の機器(例えば、PCなど)と通信する。例えば、通信部30は、USB(Universal Serial Bus)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、無線・有線LAN、RF(Radio Frequency)通信、特定近距離無線等が挙げられる。本実施の形態では、通信部30は、製剤の使用期限データを入力する入力手段として使用する。なお、上記入力手段は、キー操作部(図示せず)であってもよい。
【0063】
通信部30は、無線通信又は有線通信で使用期限時間の変更を行いたい時に使用する。具体的には、通信部30は、無線の場合は、赤外線通信、RF通信等を用い、有線の場合は、USBやLAN等を用いPCやキーボードを接続して、製剤の投与関係データや製剤の使用期限データ等を設定・変更する。PCに接続して使用する場合は、通信部30は、このPCのメモリに予め記憶されている時間関連データを受信し、マイクロプロセッサ23の記憶部23Aに記憶する。また、通信部30は、PCのキーボードなどから直接入力された数値データを記憶部23Aに記憶することも可能である。内部のメモリに格納しデータを設定・変更・更新する。
【0064】
以下、上述のように構成された薬剤投与装置1の動作について説明する。
【0065】
まず、使用開始時間検知動作について述べる。
【0066】
図7は、薬剤投与装置1の使用開始時間検知の動作を示すフローチャートであり、マイクロプロセッサ23により実行される。図中、Sは動作フローの各ステップを示す。
【0067】
ステップS1では、マイクロプロセッサ23は、注射針検出スイッチ19などを使用して、注射針17がシリンジカバー5に正しく装着されたか否かをチェックする。注射針17が正しく装着されている場合には、ステップS2に進み、注射針17が取り付けられてない場合は、ステップS5の待機状態へ移行する。
【0068】
ステップS2では、マイクロプロセッサ23は、前回の注射針17の取り付けから今回の注射針の取り付けまでの間に製剤シリンジ11が交換されたか否かをチェックする。製剤シリンジ11が交換されていない場合はステップS4に進み、薬剤投与処理に移行する。
【0069】
製剤シリンジ11が交換されている場合には、ステップS3でマイクロプロセッサ23は、タイマ21の計時を開始し、製剤シリンジの交換時を、製剤シリンジ11の使用開始時として使用開始からの経過時間をカウントする。
【0070】
ステップS4では、本フローを終了して薬剤投与処理に移行する。
【0071】
図8は、薬剤投与装置1の有効使用時間判定のフローチャートであり、マイクロプロセッサ23により実行される。本フローは、電源ボタン6の投入で開始される。
【0072】
ステップS11では、マイクロプロセッサ23はタイマ21における製剤の使用開始時からの経過時間を確認する。
【0073】
ステップS12では、マイクロプロセッサ23は、タイマ21の経過時間が規定の時間を経過しているか否かをチェックする。ここでの規定時間とは、製剤の有効使用期間である。
【0074】
有効使用期間を経過している場合は、マイクロプロセッサ23は、製剤の有効使用期間が過ぎていると判断しステップS17に移行する。
【0075】
ステップS17では、マイクロプロセッサ23は、薬の有効期限が過ぎた旨のメッセージを警告報知する。具体的には、有効期間が過ぎたことを使用者に知らせるために、マイクロプロセッサ23は、表示手段であるLCD10に薬の有効期限が過ぎた旨の「!薬の期限が過ぎました」という旨の警告メッセージを表示する。また、マイクロプロセッサ23は、サウンダ28で警告音を報音する、またはバイブレータ29で振動させる処理を行う。また、表示用LEDを点滅させて報知してもよい。さらにこれらの組み合わせでもよい。
【0076】
このように、製剤の有効使用期限が過ぎた場合、使用者に有効期限が切れたことを適確に通知することにより、有効使用期限を過ぎた製剤は酸化等が進み安全に使用できなくなる可能性がある旨を、使用者が確実に認識することが可能となるので、使用者が安全に薬剤投与装置を使用できるという効果がある。
【0077】
ステップS18では、マイクロプロセッサ23は、以降製剤が投与できないように薬剤投与装置1を自動停止する。製剤が有効使用期限を過ぎた場合、使用者への製剤投与を禁止している理由としては、有効使用期限を過ぎた製剤は、酸化等が進み人体に悪影響を与えるおそれが生じ、安全に使用できなくなる可能性があるためである。薬剤投与装置1側で、製剤の投与を自動的に禁止することは、使用者に対する安全面において、非常に有効である。
【0078】
上記ステップS12で、製剤の有効使用期限が規定時間内の場合は、ステップS13に進む。
【0079】
ステップS13では、マイクロプロセッサ23は、製剤の有効使用期限までの残り日数を、タイマ21の経過時間から算出する。
【0080】
ステップS14では、マイクロプロセッサ23は、算出した残り日数が使用期限日の所定日前(例えば、二日前)であるか否かチェックする。
【0081】
残り日数がある一定の日前の場合は、ステップS15でマイクロプロセッサ23は、表示手段であるLCD10に薬の有効期限が切れるまでの残り日数を表示する。製剤の使用期限までの残り時間を表示手段であるLCD10等に表示することで使用者が目視にて簡単に確認することができる。また、製剤の使用期限までの残り時間をサウンダ28等により音声出力をしたり、振動を発生させたりする態様でもよく、これらの組み合わせでもよい。音声出力又は振動を用いれば、使用者はもちろんのこと、視覚障害者にとっても容易に確認することができる。また、振動で出力することで周囲の人に迷惑をかけることなく、視覚障害者でも容易に確認することが可能となる。
【0082】
このように、使用期限日がおとずれる前の段階で、残り時間が所定の閾値を達すると(例えば、二日前)、使用期限前に使用者に確実にアラーム等で通知することができる報知手段が設けられている。これにより、使用者は余裕をもって交換用の製剤シリンジを準備することが可能となる。
【0083】
上記ステップS14で算出した残り日数が使用期限日の所定日前でない場合、あるいは上記ステップS15で残り日数の表示後は、ステップS16に進む。すなわち、まだ製剤シリンジ11の有効使用期限まで、まだ余裕がある場合には、残り使用期限を表示することなく、警告を知らせることもなく、正しい製剤が装着されたとして、ステップS16の製剤の注入動作に移行する。
【0084】
図9は、薬剤投与装置の表示手段であるLCD10の表示例を示す図である。
【0085】
図9の例は、例えば
図8のステップS15の表示例である。
図8のステップS17のメッセージ表示についても同様に表示することができる。
図9(a)は、プログレスバータイプである。この表示方法では、グラフィカルに表示することで、直感的に現在の経過時間を知ることができる。
図9(b)は、使用期日を表示しているタイプである。具体的な日付を表示することで正確に使用期限を知ることができる。
【0086】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の薬剤投与装置1では、マイクロプロセッサ23が、製剤シリンジ11の交換時期を、製剤の使用開始時として検出し、製剤が使用開始されてからの経過時間をカウントする。そして、マイクロプロセッサ23は、そのカウント結果を表示手段であるLCD10等に表示することによりユーザに通知するので、製剤シリンジ11の使用開始からの時間を簡単かつ確実に検知することができ、有効使用期間を管理することができる。
【0087】
これにより、ユーザは使用開始からの有効使用期間を自分で記録する作業等が不要になり、手間をかけることなく使用開始からの経過時間のカウントを容易に管理することができる。これまでの手入力による設定(データキャリア変更時)が不要となるため、入力忘れ、誤入力等による人為的ミスを防止できるとともに、使用期限切れの製剤を体内へ投与されるというミスを防止でき、安全性の高い薬剤投与装置を提供できる。
【0088】
また、本実施の形態では、
図2及び
図3に示す製剤シリンジ検出手段と
図4及び
図5に示す注射針検出手段とを有することで、製剤の使用開始時間を検出する。すなわち、製剤シリンジの交換及び注射針の取り付けは、製剤投与のために必要な作業であり、この必要な作業から薬剤投与装置が自動に製剤の使用開始を検出する。具体的には、製剤投与のための注射針が取り付けられたことを検出し、注射針の取付け検出後、製剤が使用開始されてからの経過時間をカウントする。これにより、より確実に簡単に製剤の使用開始からの経過時間を管理することができ、かつ警告報知することで使用者が容易に製剤の交換時期を知ることができる。
【0089】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係る製剤を自動溶解させる薬剤投与装置の内部断面図である。
図6と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明については、ここでは省略する。
【0090】
本実施の形態2では、溶解して使用するタイプの製剤シリンジ44を用いた場合の製剤使用開始検知手段を示す。
【0091】
図10に示すように、製剤シリンジ44は、製剤を体内に投与する前に、あらかじめ2つ以上の製剤を調合した上で、使用する混合使用タイプであり、粉末製剤44a、シリンジ凸部44b、薬液44c、ゴムA44d、及びゴムB44eとからなる。なお、製剤シリンジ44に装着された注射針17には、保護キャップ43が取り付けられている。
【0092】
溶解して使用するタイプの製剤シリンジ44は、製剤を溶解してからの有効使用期間が定められている。また、薬剤投与装置1は、粉末製剤44aと薬液44cとを自動又は半自動で溶解させることができる。したがって、薬剤投与装置1は、製剤溶解時を使用開始時としてタイマ21(マイクロプロセッサ23の内蔵タイマ21Aでもよい)をスタートさせることで、有効使用期間の管理が可能となる。
【0093】
製剤シリンジ44が薬剤投与装置1に取り付けられた場合、製剤シリンジ44の取り付けがシリンジ検出スイッチ13により検出され、検出された電気信号がマイクロプロセッサ23に送られる。
【0094】
マイクロプロセッサ23は、モータドライブ回路24に電気信号を送りピストン駆動用モータ16を回転させ、機械的に接続されたピストン15を前進させる。マイクロプロセッサ23は、一定量ピストン15を前進させることで、製剤シリンジ44の内部の粉末製剤44aと薬液44cとを溶解させる。ピストン15が前進(
図10においては、左方向)していくと、ゴムB44eが前進(
図10においては、左方向)していき、その作用により、ゴムA44d及び薬液44cも前進(
図10においては、左方向)していく。このとき、薬液44cの一部が、シリンジの内径が若干大きくなっているシリンジ凸部44bにさしかかると、薬液44cがシリンジ凸部44bを経由して、ゴムA44dを迂回するように粉末製剤44a側へ流れ出し、粉末製剤44aと混合される。ピストン15を前進させる距離は、ピストン駆動用モータ16に接続されたエンコーダ26から発生させられるパルス数をカウントすることで求めることができる。また、マイクロプロセッサ23は、所定のパルス数をカウントすることで、粉末製剤44aが薬液44cにより溶解されたか否かを判断することも可能である。
【0095】
図11は、製剤を半自動溶解させる薬剤投与装置の内部断面図である。
図10と同一構成部分については同一符号を付している。
【0096】
図11では、製剤シリンジ44が交換されたことを、
図10のシリンジ検知スイッチ13により検知する代わりに、完了ボタン8の押下により判別する。完了ボタン8を押すことで、粉末製剤44aと薬液44cとの溶解を開始しタイマ21を運針させる。これは、使い捨ての自動溶解可能な薬剤投与装置などに有効である。
【0097】
このように、実施の形態2によれば、製剤シリンジ44内の粉末製剤44aを溶解して使用する場合、製剤シリンジ44内の製剤を溶解する製剤溶解手段と、前記製剤が溶解されたことを検出する製剤溶解検出手段とを有しているので、これによって、前記製剤が溶解されたことを容易に検出するとともに、製剤溶解時を使用開始時としてタイマ21をスタートさせることで、前記使用時間カウント手段で使用開始からの経過時間をカウントすることを可能としたものである。また、製剤シリンジには、粉末製剤44aを別の薬液44cで溶解して使用するタイプの製剤も存在し、その場合、粉末製剤44aの溶解後から有効使用期限が決められている。したがって、溶解タイプ(混合使用タイプ)の製剤シリンジを使用する際の溶解後の経過時間の検出にも有効である。
【0098】
また、実施の形態2では、粉末製剤44aを薬液44cで溶解して使用するタイプの製剤シリンジ44においては、製剤の溶解を検知することで使用開始を検出する。製剤の溶解は、製剤投与のために必要な作業であり、この必要な作業から薬剤投与装置が自動に製剤の使用開始時期(ここでは、粉末製剤溶解時点)を検出することで、確実に簡単に製剤の使用開始からの経過時間が管理でき、かつ報知することで使用者が容易に製剤の交換時期を知ることができることが見出された。
【0099】
(実施の形態3)
実施の形態3は、針取付け検知機能をなくし、製剤投与時に押下される薬剤投与ボタン9が押された時のタイマ21の運針ついて、詳細に説明する。
【0100】
図12は、本発明の実施の形態3に係る注射針取り付け検知機能を備えていない薬剤投与装置の使用開始時間検知時の動作を示すフローチャートである。
【0101】
上述した実施の形態1では、製剤シリンジ11の交換の検出と、注射針17の取り付けの検出との2種類の検出によりタイマ21を運針し、有効使用期間をチェックしていた。実施の形態3では、注射針取り付け検知をなくし、薬剤投与動作に置き換えることで実現することができる。
【0102】
まず、ステップS21では、マイクロプロセッサ23は、製剤シリンジ11を交換したか否かを判別する。例えば、
図2及び
図3に示す方法で検出される。使い捨てタイプの薬剤投与装置では未使用の状態であることを前提とする。マイクロプロセッサ23は、製剤シリンジ11が交換された場合には、新品の製剤シリンジ11であると判断する。使用中の製剤シリンジ11の場合は、ステップS25で待機状態へ移行する。
【0103】
ステップS22では、マイクロプロセッサ23は、薬剤投与ボタン9が押下されたか否かを判別する。新品の製剤シリンジ11と判断されかつ薬剤投与ボタン9が押下された場合、マイクロプロセッサ23は、製剤シリンジ11の使用開始時点と判断し、ステップS23でタイマ21を運針させる。薬剤投与ボタン9が押下されない場合は、そのままステップS24に進む。
【0104】
ステップS24では、本フローを終了して薬剤投与処理に移行する。
【0105】
注射針取り付け検知機能を無くす理由としては、装置のより一層の小型化が必要な場合に有効である。
【0106】
また、報知手段としては、表示手段であるLCD10による文字の表示の他に、サウンダ28(
図4参照)により「製剤の使用期限が切れました。新品に交換してください。」や、「製剤の使用期限の2日前です。あたらしい製剤を準備してください。」と音声出力することで、視覚障害者でも安全に製剤を使用することができるような手段を設けている。
【0107】
また、バイブレータ29を備えることで、警告を振動で出力させ、聴覚障害者でも安全に使用することができるよう促すような手段を設けている。
【0108】
このように、実施の形態3によれば、
図2及び
図3に示す製剤シリンジ検出手段と、
図4及び
図5に示す注射針検出手段の代わりに薬剤投与ボタン9を押す動作に基づいて、製剤の使用開始を検出する。製剤シリンジの交換及び製剤投与のためのボタン押下は、製剤投与のために必要な作業であり、この必要な作業から自動的に製剤の使用開始を検出することで、確実に簡単に使用開始からの経過時間が管理でき、かつ警告報知することで使用者が容易に製剤の交換時期を知ることができる。
【0109】
また、
図4及び
図5に示す注射針検出機能を外すことで装置のさらなる小型化が可能である。
【0110】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0111】
例えば、上記各実施の形態では、穿刺手段としてレーザ発射装置又は針薬剤投与装置を用いたが、本発明はこれに限られず、穿刺手段として両者を併用してもよい。
【0112】
また、本実施の形態では薬剤投与装置という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、装置の名称は薬剤注入装置、薬剤投与システム等であってもよいことは勿論である。
【0113】
また、上記薬剤投与装置を構成する各部、例えば薬剤投与ボタンの種類、その数及び接続方法などはどのようなものでもよい。
【0114】
以上説明した薬剤投与方法は、この薬剤投与方法を機能させるためのプログラムでも実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。
【0115】
2008年12月22日出願の特願2008−325896の日本出願に含まれる明細書、図面及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。