特許第5760071号(P5760071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760071
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】空気調和回路のための汎用減衰装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20150716BHJP
   F25B 41/00 20060101ALI20150716BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   G10K11/16 B
   F25B41/00 B
   B60H1/32 613Z
【請求項の数】20
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-252965(P2013-252965)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-115653(P2014-115653A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2013年12月9日
(31)【優先権主張番号】13/708,273
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513214000
【氏名又は名称】ハラ ビステオン クライメイト コントロール コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ウィリアム バートランド
(72)【発明者】
【氏名】カストリオット シャスカ
(72)【発明者】
【氏名】ヤフェイ ジョウ
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−139875(JP,U)
【文献】 特開2007−178047(JP,A)
【文献】 特開昭62−245059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00 − 13/00
F25B 41/00 − 41/06
F01N 1/00 − 1/24
B60H 1/00 − 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減衰装置であって、
内部に形成される少なくとも一つのチャンバを備えるハウジングと、
前記少なくとも一つのチャンバ内に配置され、且つ仕切板を備える減衰部材と、を有し
前記仕切板は、その中央に配置された単一の中央のパイプと、この中央のパイプを取り囲む複数のパイプと、を備え、これらのすべてのパイプは、前記仕切板を貫き
前記減衰部材及び前記ハウジングは、約200Hz乃至約2000Hzの周波数帯域内で発生する音響エネルギーを減衰させるように構成されることを特徴とする減衰装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、車両の空気調和回路と流体連通されることを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
【請求項3】
少なくとも一つの前記パイプは、車両の空気調和回路の冷却剤導管の断面流動面積の1/2より大きい累積断面流動面積を持つことを特徴とする請求項2に記載の減衰装置。
【請求項4】
前記減衰部材は、車両の空気調和回路を通じて流動する流体の脈動波によって発生する音響エネルギーを減衰させるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の減衰装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、本体セクションと、入口セクションと、出口セクションと、を備え、前記入口セクション及び出口セクションのうち少なくとも一つは、前記少なくとも一つのチャンバ内での流体の捕捉を回避するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
【請求項6】
前記仕切板は、ハウジングの縦方向軸線に対して45゜より大きい角度で前記少なくとも一つのチャンバ内に位置決められることを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
【請求項7】
少なくとも一つの前記パイプは、その長さが約25mm乃至約125mmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
【請求項8】
少なくとも一つの前記パイプは、ハウジングの内側面に隣接して構成される部分パイプであることを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
【請求項9】
少なくとも一つの前記パイプの外側面は、ハウジングの内側面から離隔してこれらの間に間隔を形成することを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
【請求項10】
少なくとも一つの前記パイプは、ハウジングを通過する流体の実質的に均一な流動分配を容易にするように構成されることを特徴とする請求項1に記載の減衰装置。
【請求項11】
減衰装置であって、
本体セクションと、入口セクションと、出口セクションと、を備えるハウジングであって、前記本体セクション、入口セクション、及び出口セクションのうち少なくとも一つは協動して少なくとも一つのチャンバを形成し、前記チャンバでの流体の捕捉を回避するように構成されるハウジングと、
前記少なくとも一つのチャンバ内に配置され、且つ仕切板を備える減衰部材と、を有し
前記仕切板は、その中央に配置された少なくとも一つの中央のパイプと、この中央のパイプを取り囲む複数のパイプと、を備え、これらのすべてのパイプは、前記仕切板を貫き
少なくとも一つの前記パイプは、第1端部及び第2端部を備えることを特徴とする減衰装置。
【請求項12】
前記本体セクションは、その長さが約30mm乃至約135mmの範囲であることを特徴とする請求項11に記載の減衰装置。
【請求項13】
前記入口セクション及び出口セクションのうち少なくとも一つは、車両の空気調和回路と流体連通されることを特徴とする請求項11に記載の減衰装置。
【請求項14】
少なくとも一つの前記パイプは、その長さが約25mm乃至約125mmの範囲であることを特徴とする請求項11に記載の減衰装置。
【請求項15】
前記本体セクションの長さに対する少なくとも一つの前記パイプの長さの割合は、約0.05乃至約0.95の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の減衰装置。
【請求項16】
少なくとも一つの前記パイプの第2端部の長さに対する少なくとも一つの前記パイプの第1端部の長さの割合は、約0.01乃至約1.0の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の減衰装置。
【請求項17】
少なくとも一つの前記パイプの第1端部及び第2端部は、仕切板の対向側面から側方向の外側に向かって延びることを特徴とする請求項11に記載の減衰装置。
【請求項18】
前記減衰部材及びハウジングは、約200Hz乃至約2000Hzの周波数を持つ音響エネルギーを減衰させるように構成されることを特徴とする請求項11に記載の減衰装置。
【請求項19】
車両用減衰装置であって、
内部に形成された少なくとも一つのチャンバを備えるハウジングであって、空気調和回路と流体連通されるハウジングと、
前記空気調和回路の流体によって生成される音響エネルギーを減衰させるために、前記少なくとも一つのチャンバ内に配置される減衰部材と、を有し
前記減衰部材は、仕切板と、この仕切板の中央に配置された少なくとも一つの中央のパイプと、この中央のパイプを取り囲む複数のパイプと、を備え、これらのすべてのパイプは、前記仕切板を貫くことを特徴とする車両用減衰装置。
【請求項20】
前記減衰部材及びハウジングは、約200Hz乃至約2000Hzの周波数を持つ音響エネルギーを減衰させるように構成されることを特徴とする請求項19に記載の車両用減衰装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰装置に係り、さらに具体的には、空気調和回路のための減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体システムでの圧力上昇(pressure surges)緩和用、及び結果的な振動及びノイズ低減用の減衰装置は、公知の2群の減衰装置に大別される。一つの群は、例えば、さらなるガス体積を収容する水力学的緩衝装置(hydraulic accumulator)のような油空圧減衰器(hydropneumatic attenuator)を含む。他の群は、流体音響減衰器、いわゆる消音器を含むが、流体音響減衰器では、さらなるガス体積なしに反射または吸収によって減衰効果が現われる。
【0003】
油空圧減衰器は、通常的に非常に低い周波数から約400Hzまで延びる周波数帯域を減衰させる。このような油空圧減衰器は、圧縮器の作動、圧縮器の噛み合い過程及び噛み合い解除過程だけではなく、圧縮器の作動過程によって、前述した周波数帯域で圧力脈動が発生する流体システムに特に好適に使用できる。さらなるガス体積を持つ油空圧減衰器は体積が大きくて重いため、油空圧減衰装置は、例えば、自動車内の空気調和システムのような、設置空間が限定され、且つ軽量構造の必要な多数の用例では使われる。さらなるガス体積を持つ減衰装置の他の短所は、減衰作用が温度によって変わるということ、そして減衰作用が透過によるガス損失によって全般的に低下するということである。
【0004】
逆に、流体音響減衰器はさらに小型であり、且つ軽量構造を持つ。しかし、流体音響減衰器は、さらに高い周波数のみで減衰作用が十分であるため、その使用が制限される。このような制限のため流体音響減衰器は、非常に低い周波数から非常に高い周波数まで延びる非常に広い周波数帯域を発生させる空気調和回路で使われるには理想的ではない。
広い範囲の周波数について音響エネルギーを減衰させるように構成される減衰装置を生産することが望ましく、この時、減衰装置の構造的複雑性及びパッケージサイズは最小になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、減衰装置、さらに具体的には、空気調和回路のための減衰装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示内容によれば、減衰装置が広い範囲の周波数について音響エネルギーを減衰させるように構成され、減衰装置の構造的複雑性及びパッケージサイズが最小化するということが分かる。
【0007】
一実施形態において、減衰装置は、内部に形成される少なくとも一つのチャンバを備えるハウジングと、前記少なくとも一つのチャンバ内に配置され、且つ仕切板を備える減衰部材であって、前記仕切板は、これを通じて延びる少なくとも一つのパイプを備える減衰部材と、を備え、前記減衰部材及びハウジングは、約200Hz乃至約2000Hzの周波数帯域内で発生する音響エネルギーを減衰させるように構成される。
【0008】
他の実施形態において、減衰装置は、本体セクション、入口セクション、出口セクションを備えるハウジングであって、前記本体セクション、入口セクション、出口セクションのうち少なくとも一つは協動して少なくとも一つのチャンバを形成し、前記チャンバでの流体の捕捉を回避するように構成されるハウジングと、前記少なくとも一つのチャンバ内に配置され、且つ仕切板を備える減衰部材であって、前記仕切板は、これを通じて延びる少なくとも一つのパイプを備え、前記少なくとも一つのパイプは、第1端部及び第2端部を備える減衰部材と、を備え、前記少なくとも一つのパイプは、第1端部及び第2端部を備える。
【0009】
さらなる実施形態において、車両用減衰装置は、内部に形成された少なくとも一つのチャンバを備えるハウジングであって、空気調和回路と流体連通されるハウジングと、前記空気調和回路の流体によって生成される音響エネルギーを減衰させるために、前記少なくとも一つのチャンバ内に配置される減衰部材であって、仕切板及びこの仕切板を通じて延びる少なくとも一つのパイプを備える減衰部材と、を備え、前記減衰部材は、仕切板及びこの仕切板を通じて延びる少なくとも一つのパイプを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、減衰装置、さらに具体的には、空気調和回路のための減衰装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の減衰装置の側面立面図である。
図2図1に示した減衰装置のセクションライン2−2の断面立面図であり、本発明の実施形態による減衰装置の減衰部材を示す図面である。
図3図1に示した減衰装置のセクションライン3−3の断面図であり、減衰装置に配置される図2の減衰部材を示す図面である。
図4図1に示した減衰装置のセクションライン4−4の断面立面図であり、本発明の他の実施形態による減衰装置の減衰部材を示す図面である。
図5図1に示した減衰装置のセクションライン4−4の断面図であり、減衰装置に配置される図4の減衰部材を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明及び添付図面は、本発明の多様な例示的な実施形態を説明及び図示するものである。該説明及び図面は、当業者に本発明を実施及び利用可能にする役割を行い、本発明の範囲を限定しようとする意図ではない。
【0013】
図1乃至図5は、本発明による減衰装置10を示すものである。減衰装置10が車両(図示せず)の空気調和回路(図示せず)に配置されている必要がある。当業者ならば、減衰装置10が他の用例で望ましく使われるということを理解できるであろう。減衰装置10は、流体(例えば、空気調和回路の冷却剤)の圧力脈動波から発生して約200Hz乃至約2000Hzの範囲の周波数を持つ音響エネルギーを減衰させるように構成される。さらに具体的に、減衰装置10は、約250Hz乃至約1700Hzの範囲の周波数を持つ音響エネルギーを減衰させるように構成される。これによって、減衰装置10は、多様な車両プラットホームまたはシステムに採用される。
【0014】
減衰装置10は、実質的に円筒状の本体セクション12、入口セクション14及び出口セクション16を持つハウジング11を備える。減衰装置10のそれぞれのセクション12、14、16は、例えば、金属材料または非金属材料のような任意の適当な材料で形成される。特定実施形態で、本体セクション12は、水力学的内径D1が約30mm乃至約80mmの範囲であり、長さL1が約30mm乃至約135mmの範囲である。非限定的な例において、水力学的内径D1は約38mmであり、長さL1は約70mmである。しかし、本体セクション12は、必要に応じて任意の適当な形状及びサイズを持つことができる。
【0015】
本体セクション12の対向端部18、20には、それぞれ入口セクション14及び出口セクション16が被せられる。入口セクション14及び出口セクション16を本体セクション12に結合させるために、例えば、溶接、加熱溶接、ブレージング(brazing)、半田付け、または接着剤あるいは少なくとも一つのファスナーを用いるような多様な方法及び工程が採用される。入口セクション14及び出口セクション16は、対向する方向に本体セクション12から遠く側方向の外側に向かって延びる。図示されたように、本体セクション12は、内部に形成されるチャンバ22を備える。図示されたもの以外にも、必要に応じてさらなるチャンバ22がハウジング11に形成される。必要に応じて、チャンバ22は、入口セクション14の少なくとも一部内に、そして出口セクション16の少なくとも一部内に延びることができる。入口セクション14及び出口セクション16は、それぞれ内部に形成される通路24を備える。チャンバ22及び通路24は、内部に流体の流動を収容するように構成される。
【0016】
特定実施形態において、入口セクション14及び出口セクション16は、減衰装置10の製造及び洗浄を容易にするように構成される。非限定的な例として、入口セクション14は略円錐状であり、実質的に管状の部分26を備えるが、この管状の部分は、本体セクション12に隣接して半径方向の外側に向かって広がる第1端部28を持つ。同様に、出口セクション16は略円錐状であり、実質的に管状の部分30を備えるが、この管状の部分は、本体セクション12に隣接して半径方向の外側に向かって広がる第1端部32を持つ。それぞれの入口セクション14及び出口セクション16の第1端部28、32は、本体セクション12のチャンバ22内に延びないため、チャンバ22内の水分及び他の流体(すなわち、水、油など)の捕捉は防止される。さらに、入口セクション14の第1端部28は、拡散器として機能し、本体セクション12内への流体の流動を実質的に均一に分配する。他の一方には、出口セクション16の第1端部32は、漏斗(funnel)として機能し、本体セクション12からの流体の流動を集める。特定実施形態において、実質的に管状の部分26、30は、それぞれ必要に応じて水力学的内径D2が約7.5mm乃至約20mmの範囲であり、任意の長さL2を持つ。非限定的な例として、実質的に管状の部分26、30それぞれの水力学的内径D2は、約9.4mmである。しかし、入口セクション14及び出口セクション16は、必要に応じて任意の適当な形状及びサイズを持つことができる。特定実施形態において、減衰装置10は、空気調和回路に連結される。非限定的な例として、入口セクション14の実質的に管状の部分26の第2端部34は、空気調和回路の圧縮器の放出側に流体連結され、出口セクション16の実質的に管状の部分30の第2端部36は、空気調和回路の凝縮器の入口側に流体連結される。減衰装置10は、必要に応じて空気調和回路の他の構成要素に流体連結されてもよい。
【0017】
図2乃至図5に示したように、減衰部材50は、減衰装置10のチャンバ22内に配置される。減衰部材50は、本体セクション12と別途に形成されるか、または本体セクション12と一体に形成されて単一構造を形成するということを理解できるであろう。図示された減衰部材50は、仕切板52及び内部に配置される一つ以上の実質的に円筒状のパイプ54を備える。当業者ならば、パイプ54及び仕切板52が必要に応じて別途にまたは一体に形成されるということを理解できるであろう。特定実施形態において、減衰部材50は、プラスチック材料で形成される。しかし、必要に応じて減衰部材50を形成するために他の材料が使用されてもよい。
【0018】
仕切板52は、必要に応じてチャンバ22内に位置決められて第1サブチャンバ56及び第2サブチャンバ58を形成する。図示されたように、仕切板52は、第1サブチャンバ56及び第2サブチャンバ58が実質的に同じ体積を持つようにチャンバ22内に位置決められる。しかし、仕切板52は、第1サブチャンバ56が第2サブチャンバ58より大きい体積を持つように、または第1サブチャンバ56が第2サブチャンバ58より小さな体積を持つようにチャンバ22内に位置決められるということを理解できるであろう。特定実施形態において、仕切板52は、流体の流動方向に実質的に垂直にチャンバ22内に位置決められる。非限定的な例として、仕切板52は、減衰装置10の縦方向軸線に対して45゜より大きい角度で位置決められる。当業者ならば、仕切板52が必要に応じて任意の位置に、そして任意の角度で減衰装置10のチャンバ22内に位置決められるということを理解できるであろう。図示された仕切板52は、実質的に円形の平面的な板である。しかし、仕切板52は、必要に応じて他の形状及び構造を持つこともできるということを理解できるであろう。例えば、仕切板52は、減衰装置10を介して流体の流動方向に対して少なくとも一つの凸面または凹面を持つ実質的に折り曲げられている板である。仕切板52の外周面60は、本体セクション12の内側面62に隣接する。本体セクションの内側面と仕切板の外周面との間での流体の流動を防ぐために、本体セクション12の内側面62と仕切板52の外周面60との間に流体気密式連結が形成される。
【0019】
図示されたように、それぞれのパイプ54は、通路63を備えて内部に流体の流動を収容する。さらに具体的には、パイプ54の通路63は、第1サブチャンバ56から第2サブチャンバ58内への流体の流動を可能にする。図示されたパイプ54は、略線形の構造を持つ。必要に応じて多様な他の形状及び構造のパイプ54が採用される。非限定的な例として、それぞれのパイプ54の長さL3は、約25mm乃至約125mmの範囲であり、さらに具体的には、61mmである。特定実施形態において、本体セクション12の長さL1に対するそれぞれのパイプ54の長さL3の割合は、約0.05乃至約0.95の範囲である。非限定的な例において、本体セクション12の長さL1に対するそれぞれのパイプ54の長さL3の割合は、少なくとも0.25であり、さらに具体的には、約0.85である。本体セクション12の長さL1に対するそれぞれのパイプ54の長さL3の割合は、減衰装置10の伝達損失に影響を及ぼす。よって、本体セクション12の長さL1に対するそれぞれのパイプ54の長さL3の割合が増加するにつれて、減衰装置10の伝達損失も増加し、特に低周波の場合にそうである。消音器または減衰装置において、伝達損失とは、減衰装置の出口から減衰装置を抜け出る音響出力の割合に対する、減衰装置の入口から入る音響出力の割合として定義される。特定実施形態において、パイプ54の累積断面流動面積は、入口セクション14の実質的に管状の部分26の断面流動面積の1/2より大きい。例えば、パイプ54の累積断面流動面積は、空気調和回路の冷却剤導管の断面流動面積の1/2より大きい。当業者ならば、流体の脈動波を弱化させるために、パイプ54の累積断面流動面積が任意のサイズ及び寸法をいずれも持つということを理解できるであろう。
【0020】
特定実施形態において、それぞれのパイプ54は、仕切板52の対向側面から側方向の外側に向かって延びる。パイプ54の第1端部64は、仕切板52から遠く第1サブチャンバ56内に、且つ入口セクション14に向かって延びる。非限定的な例において、第1端部64の長さL4は、約12.5mm乃至約62.5mmの範囲であり、さらに具体的には、29mmである。一方に、パイプ54の第2端部66は、仕切板52から遠く第2サブチャンバ58内に、且つ出口セクション16に向かって延びる。非限定的な例において、第2端部66の長さL5は、約12.5mm乃至約62.5mmの範囲であり、さらに具体的には、29mmである。図示されたパイプ54の第1端部64の長さL4は、パイプ54の第2端部66の長さL5と実質的に同一であるが、第1端部64の長さL4及び第2端部66の長さL5は、必要に応じて任意の適当な長さである。非限定的な例において、第2端部66の長さL5に対する第1端部64の長さL4の割合は、約0.01乃至約1.0の範囲であり、さらに具体的には、0.475である。第2端部66の長さL5に対する第1端部64の長さL4の割合は、減衰装置の伝達損失を極大化するために最適化される。端部64、66は、必要に応じて任意の適当な形状及びサイズを持つことができる。
【0021】
図2及び図3に示した本発明の実施形態で提示されるように、減衰部材50のパイプ54のうち一つは中央に位置し、離隔している部分パイプ54のアレイによって取り囲まれる。図示された部分パイプ54は、中央に位置するパイプ54から実質的に均一に離隔し、それぞれの部分パイプ54のうち一つに隣接して、減衰装置10を通過する流体の流動の実質的に均一な分配を可能にする。特定実施形態において、パイプ54は、入口セクション14の通路24及び減衰装置10の中央軸線に対して均一に位置決められて、減衰装置10を通過する流体の流動の実質的に均一な分配をさらに容易にする。当業者ならば、必要に応じてパイプ54のうち少なくとも一つが不均一に離隔するということを理解できるであろう。図3にさらに明らかに示したように、それぞれの部分パイプ54のエッジ表面68は、本体セクション12の内側面62と隣接して部分パイプ54と本体セクション12との接触を極大化し、これによって減衰装置10の作動中に発生するノイズを最小化する。
【0022】
再び図4及び図5を参考にすれば、本発明の他の実施形態による減衰部材50は、離隔しているパイプ54のアレイを備える。図示されたパイプ54は、パイプ54のうちそれぞれの隣接するパイプから実質的に均一に離隔して、減衰装置10を通過する流体の流動の実質的に均一な分配を可能にする。特定実施形態において、パイプ54は、入口セクション14の通路24及び減衰装置10の中央軸線に対して均一に位置決められて、減衰装置10を通過する流体の流動の実質的に均一な分配をさらに容易にする。当業者は、必要に応じてパイプ54のうち少なくとも一つが不均一に離隔するということを理解できるであろう。図5にさらに明らかに示したように、それぞれのパイプ54の外側面70は、本体セクション12の内側面62から離隔してこれらの間に隙間を形成する。前記隙間は、本体セクション12とパイプ54との願わない接触を防ぎ、これによって減衰装置10の作動中に発生するノイズを最小化する。
【0023】
減衰部材50は、必要に応じて任意の数のパイプ54を備えることができる。また、パイプ54は、任意の適切な構造に仕切板52に配置されて流体の脈動波を弱化させ、必要に応じて減衰装置10を通過する流体の流動の実質的に均一な分配を可能にする。
【0024】
作動中に流体の流動は、入口セクション14の第2端部34を通じて減衰装置10に流れ込む。この流体は、入口セクション14の通路24を通じて、且つ本体セクション12の第1サブチャンバ56内に流動する。第1サブチャンバ56内に流れ込む時、流体は、パイプ54を通過する前に、且つ出口セクション16を通じて放出される前に第2サブチャンバ内に膨脹する。減衰部材50及びサブチャンバ56、58での流体の連続的な膨脹は、それぞれの周波数で音響エネルギーを消散させる役割を行うが、減衰装置10は、前記周波数に対してチューニングされ、流体のノイズを2段階に低減させて弱化させる。
以上の説明から、当業者は本発明の核心的な特徴を容易に確認でき、本発明が多様な用途及び状況に好適になるように、本発明の思想及び範囲を逸脱せずに本発明についての多様な変化及び変更を行える。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、減衰装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0026】
10 減衰装置
12 本体セクション
14 入口セクション
16 出口セクション
50 減衰部材
52 仕切板
54 パイプ
図1
図2
図3
図4
図5