特許第5760080号(P5760080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760080
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】せん断波を使用する撮像方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20150716BHJP
   G01N 29/00 20060101ALI20150716BHJP
   G01R 33/48 20060101ALI20150716BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20150716BHJP
   G01S 15/89 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   A61B8/08ZDM
   G01N29/00
   G01N24/08 510Y
   A61B5/05 382
   G01S15/89 A
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-505551(P2013-505551)
(86)(22)【出願日】2010年4月20日
(65)【公表番号】特表2013-529098(P2013-529098A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】IB2010001282
(87)【国際公開番号】WO2011132014
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2013年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】509346184
【氏名又は名称】スーパー・ソニック・イマジン
(73)【特許権者】
【識別番号】506128396
【氏名又は名称】サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク(セ.エン.エル.エス.)
(73)【特許権者】
【識別番号】510224561
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ ディドロ パリ 7
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・モンタルド
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・ベルコフ
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・タンター
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・フィンク
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−538911(JP,A)
【文献】 特表2003−530941(JP,A)
【文献】 特表2009−534198(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/139245(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/012092(WO,A1)
【文献】 米国特許第07444875(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/08
A61B 5/055
G01N 29/00
G01R 33/48
G01S 15/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性媒質(2)を観測するためにせん断波を使用する撮像方法であって、
- いくつかの連続励起ステップであって、該ステップの間に弾性せん断波が、撮像デバイス(1)によって前記粘弾性媒質(2)中の異なる励起場所(Lj)でそれぞれ生成され、前記異なる励起場所は、最大距離Dmだけ互いに分離される、いくつかの連続励起ステップと
- 時間tkでの前記粘弾性媒体の連続原画像Imj(tk)の組が、前記粘弾性媒質中の前記せん断波の伝搬の間に前記撮像デバイスによって決定される、各励起ステップに対応する撮像ステップであって、前記原画像は、前記最大距離Dmに少なくとも等しい分解能Rを有し、tkは、前記対応するせん断波の生成から数えられる相対時間である、撮像ステップと、
- 前記同じ相対時間tkに対応する原画像Imj(tk)が、前記相対時間tkに対応する平均画像Im'(tk)を決定するために平均化される平均化ステップとを含む、撮像方法。
【請求項2】
前記撮像ステップと前記平均化ステップとの間に、前記原画像Imj(tk)が、前記異なる励起場所(Lj)が前記原画像Imj(tk)で相互に対応して位置決めされるように空間的に再位置決めされる再位置決めステップをさらに含む、請求項1に記載の撮像方法。
【請求項3】
前記原画像Imj(tk)は、前記異なる励起場所(Lj)が前記原画像Imj(tk)で同じ座標を有するように各原画像の座標系をオフセットすることによって空間的に再位置決めされる、請求項2に記載の撮像方法。
【請求項4】
連続原画像の前記組の数Jは、少なくとも5である、請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像方法。
【請求項5】
各励起場所(Lj)は、最大でR/5であるピッチだけ隣接励起場所から分離される、請求項1から4のいずれか一項に記載の撮像方法。
【請求項6】
各励起場所(Lj)は、最大でR/10であるピッチだけ隣接励起場所から分離される、請求項5に記載の撮像方法。
【請求項7】
前記励起場所(Lj)は、励起ステップごとに前記撮像デバイス(1)によって前記粘弾性媒質(2)中で移動される、請求項1から6のいずれか一項に記載の撮像方法。
【請求項8】
起ステップごとに前記励起場所が前記撮像デバイス(1)に対して固定されたままである間に、前記粘弾性媒質(2)は前記撮像デバイス(1)に対して移動され、その結果前記励起場所(Lj)は、励起ステップごとに前記粘弾性媒質(2)中で移動される、請求項1から5のいずれか一項に記載の撮像方法。
【請求項9】
記励起は、前記撮像デバイス(1)に属する超音波振動子のアレイ(6)によって前記粘弾性媒質(2)中に放出される少なくとも1つの超音波によって生成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の撮像方法。
【請求項10】
記励起は、外部の機械力を前記粘弾性媒質に各励起場所で加えることによって生成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の撮像方法。
【請求項11】
各原画像Imj(tk)は、超音波撮像によってか、またはMRIによって得られる、請求項1から10のいずれか一項に記載の撮像方法。
【請求項12】
記平均画像Im'(tk)に基づいて、少なくとも1つのせん断波伝搬パラメータが、前記粘弾性媒質の少なくとも1つの点で計算される特徴付けステップを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の撮像方法。
【請求項13】
前記特徴付けステップの間に計算される前記せん断波伝搬パラメータは、せん断波速度、せん断係数、ヤング率、せん断波減衰率、せん断弾性、せん断粘度、機械的緩和時間および異方性から選択される、請求項12に記載の撮像方法。
【請求項14】
前記励起は、少なくとも500Hzの帯域幅を有し、前記せん断波伝搬パラメータは、前記帯域幅内の複数の周波数で計算される、請求項12に記載の撮像方法。
【請求項15】
粘弾性媒質(2)を観測するためにせん断波を使用する請求項1から14のいずれかに記載の方法を実装するための撮像装置であって、前記装置は、
- いくつかの連続励起ステップの間に前記粘弾性媒質(2)中の異なる励起場所(Lj)でそれぞれ弾性せん断波を生成するように適合され、前記異なる励起場所は、最大距離Dmだけ互いに分離され、
- 各励起ステップについてそれぞれ前記粘弾性媒質中の前記せん断波の伝搬の間に時間tkでの前記粘弾性媒質の連続原画像Imj(tk)の組を決定するように適合され、前記原画像は、前記最大距離Dmに少なくとも等しい分解能Rを有し、tkは、前記対応するせん断波の生成から数えられる相対時間であり、
- 前記相対時間tkについて平均画像Im'(tk)を決定するために前記同じ相対時間tkに対応する原画像Imj(tk)を平均化するように適合される
少なくとも1つの電子中央ユニット(4)を含む、撮像装置。
【請求項16】
前記電子中央ユニット(4)はさらに、前記異なる励起場所(Lj)が前記原画像Imj(tk)で相互に対応して位置決めされるように、前記画像を平均化する前に前記原画像Imj(tk)を空間的に再位置決めするように適合される、請求項15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記電子中央ユニット(4)は、前記異なる励起場所(Lj)が前記原画像Imj(tk)で同じ座標を有するように各原画像の座標系をオフセットさせることによって前記原画像Imj(tk)を空間的に再位置決めするように適合される、請求項16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記電子中央ユニット(4)は、励起ステップごとに前記粘弾性媒質(2)中の前記励起場所(Lj)を移動させるように適合される、請求項15から17のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記電子中央ユニット(4)は、時間にわたる連続平均画像に基づいて前記粘弾性媒質(2)の少なくとも1つの点で少なくとも1つのせん断波伝搬パラメータを計算するように適合され、前記せん断波伝搬パラメータは、せん断波速度、せん断係数、ヤング率、せん断波減衰率、せん断弾性、せん断粘度、機械的緩和時間および異方性から選択される、請求項15から18のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項20】
前記装置は、少なくとも500Hzの帯域幅を持つ前記励起を加えるように適合され、前記中央ユニット(4)は、前記帯域幅での複数の周波数で前記せん断波伝搬パラメータを計算するように適合される、請求項19に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、せん断波を使用する撮像方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
より詳しくは、本発明は、粘弾性媒質を観測するためにせん断波を使用する撮像方法であって、
- その間に弾性せん断波が、撮像デバイスによって粘弾性媒質中の励起場所で生成される励起ステップjと、
- 粘弾性媒質の一組の連続画像が、前記粘弾性媒質中のせん断波の伝搬の間に前記撮像デバイスによって決定される撮像ステップとを含む、撮像方法に関する。
【0003】
文書米国特許第7252004(B2)号は、そのような方法の例を述べ、そこではせん断波の伝搬の動画を構成する連続画像が、粘弾性媒質中の1つまたはいくつかの点でせん断波の少なくとも1つの伝搬パラメータを計算することによって、粘弾性媒質をマッピングするために使用される。
【0004】
この周知の方法は、例えば癌領域または同様のものを見つけるための特に良好な結果を与えるけれども、そのような方法は、ある状況では、例えば高い減衰および回折を生じる非常に複雑な構造を有する生体媒質(例えば、せん断波が筋線維に対して横断方向に伝播されるときの動物の筋肉)では比較的低い信号対雑音比を有する画像をもたらすこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の特定の目的は、この欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、粘弾性媒質を観測するためにせん断波を使用する撮像方法であって、
- その間に弾性せん断波が、撮像デバイスによって粘弾性媒質中の異なる励起場所でそれぞれ生成されるいくつかの連続励起ステップjであって、前記異なる励起場所は、最大距離Dmだけ互いに分離される、いくつかの連続励起ステップjと、
- 時間tkでの粘弾性媒質の連続原画像Imj(tk)の組jが、前記粘弾性媒質中のせん断波の伝搬の間に前記撮像デバイスによって決定される、各励起ステップjに対応する撮像ステップであって、前記原画像は、前記最大距離Dmに少なくとも等しい分解能Rを有し、tkは、対応するせん断波の生成から数えられる相対時間である、撮像ステップと、
- 同じ相対時間tkに対応する原画像Imj(tk)が、前記相対時間tkに対応する平均画像Im'(tk)を決定するために平均化される平均化ステップとを含む、撮像方法を提案する。
【0007】
それ故に、本発明は、原画像での雑音の大部分を除去することを可能にし、より高い信号対雑音比を有する平均化画像を得ることを可能にする。従って、平均化画像は、せん断波伝搬パラメータのより良好なマッピングを得るために、かつオプションとして粘弾性媒質のあるレオロジー値および特に粘性効果を表すレオロジー値を得ることを可能にする前記伝搬パラメータのスペクトル(すなわち、周波数の関数としての前記伝搬パラメータの値)を得るためにより効果的に処理することができる。
【0008】
本発明の方法の様々な実装形態では、次の処理の1つまたは複数に頼ることもまたオプションとして可能であり、
- 本方法は、撮像ステップと平均化ステップとの間に、原画像Imj(tk)が、異なる励起場所が原画像Imj(tk)で相互に対応して位置決めされるように空間的に再位置決めされる再位置決めステップをさらに含み、
- 前記原画像Imj(tk)は、異なる励起場所が原画像Imj(tk)で同じ座標を有するように各原画像の座標系をオフセットすることによって空間的に再位置決めされ、
- 連続原画像の前記組jの数Jは、少なくとも5であり、
- 各励起場所は、せいぜいR/5であり、好ましくはせいぜいR/10であるピッチだけ隣接励起場所から分離され、
- 励起場所は、励起ステップごとに撮像デバイスによって粘弾性媒質中で移動され、
- 粘弾性媒質は、励起ステップごとに励起場所が撮像デバイスに対して固定されたままである間に移動され、その結果励起場所は、励起ステップごとに粘弾性媒質中で移動され、
- 前記せん断励起は、前記撮像デバイスに属する超音波振動子のアレイによって粘弾性媒質中に放出される少なくとも1つの超音波によって生成され、
- 前記せん断励起は、外部の機械力を粘弾性媒質に各励起場所で加えることによって生成され、
- 各原画像Imj(tk)は、超音波撮像によってか、または MRIによって得られ、
- 本方法は、その間に時間にわたる前記平均画像Im'(tk)に基づいて、少なくとも1つのせん断波伝搬パラメータが、粘弾性媒質の少なくとも1つの点で計算される特徴付けステップを含み、
- 特徴付けステップの間に計算されるせん断波伝搬パラメータは、せん断波速度、せん断係数、ヤング率、せん断波減衰率、せん断弾性、せん断粘度、機械的緩和時間および異方性から選択され、
- 前記励起は、少なくとも500Hzの帯域幅を有し、前記せん断波伝搬パラメータは、前記帯域幅内で複数の周波数で計算される。
【0009】
さらにその上、本発明はまた、粘弾性媒質を観測するためにせん断波を使用する先行クレームのいずれかによる方法を実装するための撮像装置も提供し、前記装置は、
- いくつかの連続励起ステップjの間に粘弾性媒質中の異なる励起場所でそれぞれ弾性せん断波を生成するように適合され、前記異なる励起場所は、最大距離Dmだけ互いに分離され、
- 各励起ステップjについてそれぞれ前記粘弾性媒質中のせん断波の伝搬の間に時間tkでの粘弾性媒質の連続原画像Imj(tk)の組jを決定するように適合され、前記原画像は、前記最大距離Dmに少なくとも等しい分解能Rを有し、tkは、対応するせん断波の生成から数えられる相対時間であり、
- 前記相対時間tkについて平均画像Im'(tk)を決定するために同じ相対時間tkに対応する原画像Imj(tk)を平均化するように適合される、少なくとも1つの電子中央ユニットを含む。
【0010】
本発明の装置の様々な実装形態では、次の処理の1つまたは複数に頼ることもまたオプションとして可能であり、
- 前記電子中央ユニットはさらに、異なる励起場所が原画像Imj(tk)で相互に対応して位置決めされるように、前記画像を平均化する前に前記原画像Imj(tk)を空間的に再位置決めするように適合され、
- 前記電子中央ユニットは、異なる励起場所が原画像Imj(tk)で同じ座標を有するように各原画像の座標系をオフセットすることによって前記原画像Imj(tk)を空間的に再位置決めするように適合され、
- 前記電子中央ユニットは、励起ステップごとに粘弾性媒質中の励起場所を移動させるように適合され、
- 前記電子中央ユニットは、時間にわたる連続平均画像に基づいて粘弾性媒質の少なくとも1つの点で少なくとも1つのせん断波伝搬パラメータを計算するように適合され、前記せん断波伝搬パラメータは、せん断波速度、せん断係数、ヤング率、せん断波減衰率、せん断弾性、せん断粘度、機械的緩和時間および異方性から選択され、
- 前記装置は、少なくとも500Hzの帯域幅を持つ前記励起を加えるように適合され、前記電子中央ユニットは、前記帯域幅での複数の周波数で前記せん断波伝搬パラメータを計算するように適合される。
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、限定されない例として与えられ、添付の図面を参照するそれらの実施形態の次の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態でのせん断波撮像デバイスの例の概略図である。
図2図1の撮像デバイスによって決定され、せん断波が粘弾性媒質中で連続して生成される励起場所を示す、粘弾性媒質の一組の連続原画像の例を示す図である。
図3】原画像が、異なる励起場所が原画像で相互に対応して位置決めされるように空間的に再位置決めされる再位置決めステップを例示する図である。
図4】特定の例で、図3の様々な再位置決めされた原画像を平均化することによって得られる平均画像の例である。
図5図4の平均画像に対応する原画像である。
図6図4のそれなどの連続平均化画像から粘弾性媒質の1つの点で計算される、周波数の関数としてのせん断波速度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
様々な図では、類似の参照番号は、同一のまたは同様の要素を指定する。
【0014】
図1で示される撮像デバイス1は、超音波を圧縮状態で拡散する粘弾性媒質2中の弾性せん断波の伝搬を調べるためであり、その粘弾性媒質は、例えば、
- 特に工業的応用での品質管理のために、不活性体によって、または
- 医学的応用での生体、例えば患者の身体の一部によって構成されることもある。
【0015】
例として、これらの動きは、超音波圧縮波を媒質2中にそれの外表面3から送る役目を果たす、マイクロコンピュータ4(少なくともキーボード、その他などの入力インターフェース4b、およびスクリーン、その他などの出力インターフェース4aを含む)または任意の他の電子中央ユニットを用いて追跡される。これらの圧縮波は、媒質2に含有される拡散粒子5と相互作用し、その粒子は、超音波圧縮波を反射する。粒子5は、媒質2中の任意の不均一性によって構成されることもあり、特に医学的応用では、それらは、人体組織に存在するコラーゲンの粒子によって構成されることもある(超音波検査画像では、そのような粒子は、「スペックル」として周知の点を形成する)。
【0016】
せん断波の伝搬を観測するために、観測媒質2の外表面3に接触して配置される超音波プローブ6が、使用される。このプローブは、軸Xに沿って超音波圧縮波パルスを供給し、そのパルスは、例えば0.5MHzから100MHzの範囲、好ましくは0.5MHzから15MHzの範囲にあり、例えば約4MHzである周波数を有する、超音波検査で一般に使用される種類である。
【0017】
超音波プローブ6は、n個の超音波振動子T1、T2、...、Ti、...、Tnのアレイによって構成され、ここでnは、1以上の整数である。例として、プローブ6は、例えば軸Xに垂直である軸Yに沿って一直線になったn=128個の振動子を含む振動子の直線状ストリップの形であってもよい。しかしながら、問題になっているプローブは同等に、振動子の二次元アレイ(平面またはその他)の形である可能性もある。
【0018】
振動子T1〜Tnは、おそらくは例えば柔軟なケーブルを介してプローブ6に接続される電子ラック7に含有される中央ユニットCPUを介して、マイクロコンピュータ4によって互いから独立して制御される。振動子T1〜Tnはそれ故に、
- 「平面」である超音波圧縮波(すなわち、その波面がX、Y平面で直線に進む波)、または媒質2中の全観測領域を照らす任意の他の種類の集束もしくは非集束波、例えばランダム音響信号を様々な振動子T1〜Tnによって放出させることによって生成される波か、
- さもなければ媒質2の1つもしくは複数の点に集束される超音波圧縮波を選択的に放出することができる。
【0019】
媒質2中のせん断波の伝搬を観測するために、いくつかのステップ、すなわち、
a)その間にマイクロコンピュータ4が、粘弾性媒質中で集束される少なくとも1つの超音波をプローブ6によって放出させることによって弾性せん断波を粘弾性媒質2中に生成する励起ステップ、
b)その間にせん断波の伝搬が、粘弾性媒質2中の多数の観測領域点で同時に観測される観測ステップ、
c)およびその間にマイクロコンピュータ4が、連続する瞬間tk(tkは、せん断波の生成から数えられる相対時間であってもよい)での連続伝搬画像を決定するためにサブステップb2)の間に粘弾性媒質2から受け取る音響信号を処理する撮像ステップが、連続して行われる。
【0020】
a)励起ステップ
励起ステップa)の間に、せん断励起は、超音波振動子のアレイ6によって粘弾性媒質2中に放出される少なくとも1つの集束超音波によって生じさせることができる。
【0021】
励起ステップa)の間に放出される集束超音波は、0.5MHzから15MHzの範囲にある、例えば約4MHzに等しい周波数fの単色波であってもよく、それは、p/f秒の間放出され、ここでpは、50から5000の範囲にある(例えば、約500である)整数であり、fは、Hz単位で表される。矩形信号または同類の形のそのような励起は、少なくとも500Hzの比較的大きい帯域幅(例えば、0〜1000Hzの帯域幅)を持つせん断波を生成することができる。
【0022】
励起ステップa)の間に放出される集束超音波は、生成されるようなせん断波が、所望の波形を提示しかつ媒質2中の所望の領域を照らすように、単一集束点または複数の集束点に集束されてもよい。集束点は、せん断波が生成される励起場所を構成する。例えば、励起場所Lは、いくつかの連続する超音波を直線に沿って素早く集束することによって得られるこの直線の形であってもよく、その場合には例えばBercoffらによって説明されるように[「Supersonic Shear Imaging: a New Technique for Soft Tissue Elasticity Mapping」、IEEE transactions on ultrasonics, ferroelectrics, and frequency control、Vol. 51、no. 4、2004年4月、396〜409頁]、平面であるせん断波を生成することが可能である。
【0023】
b)観測ステップ
観測ステップは、次のサブステップを含んでもよく、
b1)マイクロコンピュータ4は、プローブ6に一連の超音波圧縮波衝撃を粘弾性媒質中に毎秒少なくとも500ショットの割合で放出させ、それは好ましくは、集束されないまたは軽度に集束されてもよく[ステップa)で放出される超音波の集束、および前記超音波のタイミングは、前記超音波の少なくともいくつかが、超音波放出の少なくともいくつかについて、観測領域を通るせん断波の伝搬の間に観測領域に達するように適合され]、
b2)マイクロコンピュータ4は、プローブ6に粘弾性媒質2から受け取る音響信号を実時間で検出させかつ記録させ、前記信号は、粘弾性媒質中の反射粒子5と相互作用する超音波圧縮波によって生成されるエコーを含み、これらのエコーは、粘弾性媒質の変位の連続画像に(直接的にまたは間接的に)対応する。
【0024】
例えば1秒未満の間続くこともあるステップb1)の間に、例えば毎秒500から10,000ショットの範囲、好ましくは毎秒1000から5000ショットの範囲にある割合で非集束超音波圧縮波を放出することが可能である(この割合が、媒質2を通る圧縮波についての往復の移動時間によって、すなわち方向Xでの媒質2の厚さによって制限される場合、圧縮波によって生成されるエコーはすべて、新しい圧縮波が送られる前にプローブ6によって受け取られていることが必要である)。
【0025】
各非集束超音波圧縮波は、せん断波の伝搬速度よりもはるかに速い伝搬速度(例えば、人体中で約1500メートル毎秒(m/s))で媒質2を通って伝播し、反射粒子5と相互作用し、それによって超音波検査の分野では名称「スペックル雑音」の下でそれ自体周知であるエコーまたは他の類似のかく乱を信号中に生成する。
【0026】
スペックル雑音は、非集束超音波圧縮波の各ショットkの後、サブステップb2)の間に振動子T1〜Tnによって拾い上げられる。ショット番号kの後に各振動子Tiによってこのようにして拾い上げられるような信号si(tk)は、最初に高周波数(例えば、30MHzから100MHz)でサンプリングされ、ラック7の一部を形成しかつ前記振動子に接続されるサンプラーによって実時間でデジタル化(例えば、12ビットに)され、そのサンプラーは、それぞれE1、E2、...、Enと参照される。
【0027】
このようにしてサンプリングされかつデジタル化されるような信号si(tk)は次いで、同様に実時間で、ラック7に属しかつ振動子Tiに特有のメモリMiに保存される。
【0028】
例として、各メモリMiは、約128メガバイト(MB)の容量を提示し、ショットk=1からqにわたって連続して受け取る信号si(tk)をすべて含有し、ここでqは、超音波ショットの総数である。
【0029】
c)撮像ステップ
撮像ステップc)は、せん断波の同じ伝搬に対応する信号si(tk)がすべて保存された後、例えば延期された時間にマイクロコンピュータ4によって行うことができ、中央ユニットCPUは、例えば米国特許第7252004(B2)号で説明されるように、サブステップc1)に対応する従来の経路形成(path-forming)ステップを使用して、これらの信号をラック7に属する加算回路Sによって再処理させる(さもなければ中央ユニットCPUは、この処理をそれ自身で行う、または実際その処理は、マイクロコンピュータ4で行われてもよい)。
【0030】
これは、画像Im(tk)を、例えば今の場合には2D画像を生成し、各々は、観測領域での座標(x,y)の離散位置に対応するマトリクスの形であり、各々は、ショット番号kの後の観測領域の画像に対応する。
【0031】
経路形成ステップの後、中央ユニットCPUは、ラック7の一部を形成する中央メモリMまたはマイクロコンピュータ4に画像Im(tk)を保存する。
【0032】
各画像Im(tk)は、約1mm以下の分解能Rを有してもよい。
【0033】
ステップa〜cの繰り返し
本発明によると、ステップa〜cは、例えば4と10との間に含まれてもよい回数Jにわたって繰り返される。励起ステップj=1からJの間に、励起場所Ljは、撮像デバイス1によって(振動子アレイ6によって伝送される超音波の集束を変えることによって、すなわち当技術分野で周知であるように、振動子T1〜Tnに加えられる遅延を変えることによって)繰り返しjごとにオフセットされる。連続する励起場所Ljは、せいぜい前記分解能Rに等しく、好ましくは前記分解能Rよりも小さい最大距離Dmだけ互いに分離される。特定の実施形態では、各励起場所Ljは、せいぜいR/5であり、好ましくはせいぜいR/10であるピッチだけ隣接励起場所から分離できる。例えば、人は、J=7の繰り返しを使用することができ、励起場所Ljは、各繰り返しでR/10のピッチだけオフセットでき、その結果最初の繰り返し(j=1)から最後(j=J)の間の全オフセットDmは、7R/10に等しい。
【0034】
励起場所Ljが、例えば図2で示されるように軸Xに平行な直線であるときは、前記励起場所Ljは、繰り返しごとに軸Yに平行な前記ピッチだけオフセットできる。上記のオフセットは、励起場所Ljが励起ステップa)ごとに撮像デバイス1によって粘弾性媒質2中で移動されるという事実によって得ることができる。励起場所が直線であるときは、この線はまた、この線を小角度(数度)だけ傾けることによって繰り返しごとにオフセットでき、この場合には、1つの励起線の各点から別の励起線までの距離(前記距離はそのとき、前記点が属する励起線に垂直に測定される)は、前記線に沿って変化し、前記最大距離Dmは、1つの励起場所の1つの点からもう一方の励起場所までの前記距離の最大値である。
【0035】
変形形態では、粘弾性媒質2は、アレイ6が固定されたままであり、励起場所が振動子アレイ6に対して固定されたままである間に励起ステップごとに移動され、その結果励起場所Ljは、励起ステップごとに粘弾性媒質2中で移動される。これは、例えば媒質2が、生きている人間または動物の心臓もしくは肝臓の一部であるときに当てはまることもある。そのような場合には、連続励起ステップa)は、時には媒質2の位置が基準位置に非常に近いところで実行されてもよく、その結果励起場所間の最大距離Dmは、分解能R未満のままである。
【0036】
各励起ステップjの後、人は、連続する瞬間tkに上で述べられるような一組の画像Imj(tk)を得る。これらの画像Imj(tk)は、今後は原画像と呼ばれることになる。
【0037】
d)再位置決めステップ
図3で示されるように、原画像Imj(tk)は、異なる励起場所(Lj)が様々な原画像Imj(tk)で相互に対応して位置決めされるように空間的に再位置決めされてもよい。この再位置決めは、例えば異なる励起場所(Lj)がすべての原画像Imj(tk)で同じ座標を有するように原画像Imj(tk)の座標系(x,y)[または3D撮像の場合には3D座標系(x,y,z)]をオフセットすることによって得ることができる。再位置決めステップは、各撮像ステップc)の後の各原画像についてか、またはステップa〜cのすべての繰り返しの後の同じ時間でのすべての原画像について実行できる。
【0038】
この再位置決めステップは、オプションとして省略されてもよい。粘弾性媒質2が、可動であり、励起場所が、上で説明されるように振動子アレイに対して固定されたままであるときは、この再位置決めステップは、好ましくは省略でき、反対に、励起場所Ljが、振動子アレイに対して励起ごとに移動されるときは、前記再位置決めは、好ましくは使用される。
【0039】
e)平均化ステップ
同じ相対時間tkに対応する原画像Imj(tk)(もしあればそれらの再位置決め後の)は次いで、前記相対時間tkに対応する平均画像Im'(tk)を決定するために平均化される。平均は、原画像の画素値sj(tk)(x,y)の単純算術平均とすることができる。
【0040】
図4で示されるように、平均化ステップは、図5で示されるそれのような原画像よりもはるかに良好な品質の平均画像を得ることを可能にする。特に、画像の信号対雑音比は、平均化ステップによって劇的に増大し、それは、次のステップでの粘弾性媒質2のレオロジー的特徴のより良好な特徴付けを可能にする。
【0041】
押し付けている領域(pushing area)から2mmの横方向距離では、最大せん断波周波数は、200Hz(@-6dB)である。200Hzより上のすべての周波数成分は、組織によって減衰された。新しい平均化方法を使用するとき、最大せん断波周波数は、500Hz(@-6dB)であり、所与の場所について、従来の方法でよりも組織粘弾性についてはるかに多くの情報にアクセスできる。
【0042】
f)特徴付けステップ
時間にわたる平均画像Im'(tk)に基づいて、少なくとも1つのせん断波伝搬パラメータが、粘弾性媒質の少なくとも1つの点で、好ましくは粘弾性媒質のマッピングを得るために完全な画像について、計算される。このせん断波伝搬パラメータは、例えばせん断波速度、せん断係数、ヤング率、せん断波減衰率、せん断弾性、せん断粘度、機械的緩和時間および異方性から選択できる。そのようなパラメータは、例えば米国特許第7252004(B2)号で説明されるように決定できる。
【0043】
さらに、平均化画像の良好な信号対雑音比に起因して、前記パラメータの分光分析を実行することが可能である。例えば、図6で示されるように、前記パラメータが、せん断波の速度vであるときは、前記速度vをせん断波の帯域幅内で周波数fの関数として決定することが可能である。
【0044】
測定されるパラメータが、せん断波減衰αであるときは、そのような減衰は、
α(f) = α0 + α1fa
などの法則に従って変化すると考えられてもよく、ここでfは、せん断波周波数であり、aは、生体媒質での機械的波について一般に0と2との間に含まれる、べき指数である。この場合には、本発明は、例えばWO-A-2009/007582で教示されるように、べき指数aを正確に評価し、粘弾性媒質中のyをマッピングすることを可能にする。
【0045】
変形形態
変形形態では、せん断波の励起は、例えばWO-A-00/55616で説明されるように、例えばマイクロコンピュータ4によって制御される振動器を通じて、外部の機械力を粘弾性媒質に各励起場所で加えることによって得られる可能性がある。
【0046】
別の変形形態では、各原画像Imj(tk)は、超音波撮像によってよりもむしろMRIによって得られる。
【符号の説明】
【0047】
1 撮像デバイス
2 粘弾性媒質
3 外表面
4 マイクロコンピュータ
4a 出力インターフェース
4b 入力インターフェース
5 拡散粒子
6 超音波プローブ、超音波振動子のアレイ
7 電子ラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6