(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機、利用側熱交換器、膨張装置、熱源側熱交換器を有する冷凍サイクルと、前記熱源側熱交換器に送風する送風機を備え、前記利用熱交換器で得られる熱を用いて産業用設備における被加温物を加温する産業用加温ヒートポンプ装置において、
前記冷凍サイクル機器の運転を制御する制御装置を備え、
この制御装置は、加温運転中のサーモオフ時に、前記送風機の運転を停止する通常モードと、加温運転中のサーモオフ時に、前記送風機を運転するサーモオフ送風モードと、加温運転を行なわずに前記送風機を運転するファン単独運転モードとを備え、
前記冷凍サイクル機器と制御装置は、単一のキャビネット内に収納され、
このキャビネットの側面に取外し可能なカバーを設け、
このカバー内部に、
前記制御装置に接続され、前記通常モード、前記サーモオフ送風モード、前記ファン単独運転モードを切換えるための運転モード切換えスイッチと、
前記制御装置に接続されて、前記サーモオフ送風モード、前記ファン単独運転モードにおける前記送風機ファンの回転数を設定するための回転数設定スイッチとが設けられる
ことを特徴とする産業用加温ヒートポンプ装置。
前記キャビネット内に収納された前記送風機と対向するキャビネットの一面に吹出し口を設け、この吹出し口からの風の吹出側に設けられ、前記送風機から吹出される風の方向を自動でまたは手動で変更する風向ガイドを設けた
ことを特徴とする請求項1記載の産業用加温ヒートポンプ装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本実施形態を図面にもとづいて説明する。
図1は、産業用設備における被加熱物である洗浄液を加温する加温システムの一例である被洗浄部品を加温された洗浄液で洗浄する洗浄システムの構成図である。
【0013】
部品製造工場Aの建屋の屋内に、開放タンクである洗浄槽Bが設置され、洗浄槽B内に水等の液体からなる洗浄液Cが溜められる。洗浄管Fの中途部に設けたポンプPaが洗浄槽Bの洗浄液Cを吸上げ、洗浄管Fの他端に設けたシャワーSから、例えば搬送コンベアD上に所定間隔を存して載置される被洗浄部品Eに洗浄液Cを吹き付けて、被洗浄部品Eを洗浄する。
【0014】
この洗浄槽B内の洗浄液Cは、産業用加温ヒートポンプ装置(以下、単に「ヒートポンプ装置」と呼ぶ)Hと、媒体配管Jを介して設けられる熱交換器Kから供給される熱媒体の放熱によって加温される。ここでは、熱媒体として水が用いられているので、媒体配管を水配管Jと呼ぶ。
【0015】
なお説明すると、水配管Jの途中にはポンプPbが設けられ、熱交換器K及びヒートポンプ装置Hとともに閉回路を形成している。ポンプPbの位置は水配管Jのどこに設けてもよく、ヒートポンプ装置H内に内蔵してもよい。
【0016】
ヒートポンプ装置Hの加温運転により、水配管J内の低温水が加熱されて温水化し、熱交換器Mから洗浄液Cに対して放熱される。逆に、水配管Jの温水は洗浄液Cに熱を奪われて低温となるが、再びヒートポンプ装置Hに導かれることにより加熱され、再び熱交換器Kで放熱し、洗浄液Cを加温する。
【0017】
ある程度の時間がかかるが、最終的に、洗浄液Cは所定の設定温度となり、この温度が維持される。この状態でポンプPa及び搬送コンベアDが運転し、被洗浄部品Eに対する洗浄が行われる。
【0018】
なお、部品製造工場Aの屋内であるから、ヒートポンプ装置Hの近傍には、洗浄工程もしくは、その他の製造工程に携わる作業員Mがいる。ヒートポンプ装置Hが作用しているときは、後述する送風機(ファン)から吹出し口2を介して冷風が出る。
【0019】
もともと、洗浄槽Bは内部の洗浄液Cの温度が高いため、その周囲の雰囲気温度はかなり高温となっている。そこで、送風機からの冷風が作業員Mに当れば清涼感を得られ、当らなくても洗浄槽B付近の雰囲気温度が低下する。
【0020】
洗浄工程における洗浄液Cの温度低下が少ない場合には、洗浄槽B内の洗浄液Cが設定温度よりも高めに設定された所定値を越えることもある。この温度を超えると、一旦、ヒートポンプ装置Hは冷凍サイクル運転を停止する。この冷凍サイクル運転が停止した状態での制御として、ヒートポンプ装置Hの使用者または設置者は、後述する「通常モード」と、「サーモオフ送風モード」を選択できる。
【0021】
「通常モード」では、圧縮機と送風機の運転を停止する、通常の運転である。すなわち、ヒートポンプ装置Hが屋外に設置された場合や、工場内に設置された場合でも工場A内の温度が比較的低く、作業員Mが清涼感を得る必要の無い場合に選択する。一方、「サーモオフ送風モード」は、作業員Mに清涼感を得たい場合、もしくは洗浄槽B付近の雰囲気温度を下げたい場合に有効である。
【0022】
ヒートポンプ運転を停止したまま洗浄工程を継続すると、洗浄槽B内の洗浄液Cの温度が自然的に低下する。設定温度よりも低い所定値を越えて低下したときは、自動で圧縮機の運転が再開されるとともに送風機も駆動され、洗浄液Cの加温運転が再開され、作業員Mは清涼感を得る、もしくは洗浄槽B付近の雰囲気温度が下がる。
【0023】
また、洗浄工程を終了した場合、すなわちヒートポンプ装置Hの加温運転を完全停止したときでも、他の作業を実施する近傍の作業員Mが清涼感を得たい場合、もしくは洗浄槽B付近の雰囲気温度を下げたい場合には、ヒートポンプ装置Hの使用者または設置者は、後述する送風機のみを運転する「ファン単独運転モード」も選択できる。
しかも、「サーモオフ送風モード」と「ファン単独運転モード」のいずれでも、送風機のみ運転中の、送風機の回転数を自在に設定できる。
【0024】
図2は、ヒートポンプ装置Hの外観斜視図である。
筐体表面を構成するキャビネット1の前面下部には吹出し口2が設けられ、この吹出し口2はファンガード3で覆われる。ファンガード3の上部には、点検コード確認窓4が設けられる。点検コード確認窓4を介して、内部の7セグメント・2桁の表示部(図示しない。以下、同じ)が見え、異常発生時や故障時に2桁の数字でその状態を報知するとともに、モード切換えに応じて通常(連続)表示、点滅表示もしくは消灯する。
【0025】
右側面部には、側面板7が取外し自在に設けられていて、この側面板7を取外すことにより、後述する「運転モード切換えスイッチ」であるディップスイッチ及び、「回転数設定スイッチ」であるロータリスイッチが現れる。
【0026】
キャビネット1内部には、送風機(
図5中の17)が収容されていて、この吹出し側をファンガード3に向けている。送風機の吸込み側になる背面部と左側面部に対向するキャビネット1には吸込み口が設けられる。この吸込み口と対向する背面部と左側面部に沿って、すなわち平面視で略L字状に形成された、フィンチューブタイプの熱源側熱交換器である空気熱交換器が配置されている。
【0027】
さらに、送風機及び空気熱交換器とは仕切り板を介した側部に、圧縮機や弁類及びこれらを連通する配管類が収容される。そして、送風機と空気熱交換器との配置部位とは仕切り板を介した上部に、利用側熱交換器である二重管からなる水−冷媒熱交換器が配置され、かつ圧縮機や送風機を駆動制御するための電気部品類が収容される。
なお、この水−冷媒熱交換器では、冷凍サイクルの冷媒と、洗浄液Cを加温する水配管J内の水が流れる。
【0028】
図3は、側面板7を取外すことにより露出する、ディップスイッチ5及びロータリスイッチ6の外観斜視図である。
はじめに、ディップスイッチ5について説明する。これは3個のディップスイッチ5a,5b,5cからなり、オン−オフ設定されるものである。左側のディップスイッチを第1のディップスイッチ5a、真ん中のディップスイッチを第2のディップスイッチ5b、右側のディップスイッチを第3のディップスイッチ5cと呼ぶ。
【0029】
図4A,
図4B,
図4Cは各ディップスイッチ5a,5b,5cでの運転設定例を示す。ここで、各ディップスイッチ5a,5b,5cのスイッチオフ設定状態を「0」とし、スイッチオン設定状態を「1」と表す。
ヒートポンプ装置Hの加温運転に伴い洗浄槽B内の洗浄液Cが設定温度範囲内に納まるように、圧縮機がオン−オフ制御される。加温運転中に圧縮機がオンに制御されているときを「サーモオン」と呼び、圧縮機がオフに制御されているときを「サーモオフ」と呼ぶ。
【0030】
第1〜第3のディップスイッチ5a,5b,5cを、
図4Aに示すように、全てオフとする「000」としたときは、加温運転状態(加温運転中)のサーモオフ(圧縮機の運転を一旦停止)状態で、送風機の運転も圧縮機に連動して停止となる。これを、先に述べた「通常モード」と呼ぶ。
【0031】
図4Bに示すように、第1のディップスイッチ5aと第2のディップスイッチ5bはオフであるが、第3のディップスイッチ5cをオンとする「001」としたとき、加温運転を行うが、サーモオフ(圧縮機の運転を一旦停止)中に送風機は単独運転を継続する。これを、先に述べた「サーモオフ送風モード」と呼ぶ。なお、このときの送風機の回転数は、ロータリスイッチ6により自在に設定できる。
【0032】
なお、「通常モード」と、「サーモオフ送風モード」のいずれにおいても、洗浄槽B内の洗浄液Cの温度が設定温度よりも低い所定値を下回った場合には、自動で圧縮機(及び送風機)の運転を再開(サーモオン)し、洗浄液Cを加温する。
【0033】
図4Cに示すように、第1のディップスイッチ5aと第3のディップスイッチ5cをオフとするが、第2のディップスイッチ5bはオンとする「010」としたとき、洗浄液Cの温度に係らず、圧縮機を停止して加温運転は行わないが、送風機のみ単独運転を行う。これを、先に述べた、「ファン単独運転モード」と呼ぶ。そのときの回転数はロータリスイッチ6により自在に設定できる。
【0034】
次に、送風機の回転数を設定するロータリスイッチ6について説明する。
【0035】
ロータリスイッチ6は、設定者がノブを回転させ、ノブに付された矢印の方向が指す目盛に対応した送風機の回転数を設定できるようになっている。
【0036】
ロータリスイッチ6には、「1」から「16」まで、目盛が付されている。それぞれの目盛に対応する送風機の回転数は、以下の表1に示すように、最低:480rpmから最大:950rpmまでの間に設定される。
【表1】
【0037】
図5は、ヒートポンプ装置Hにおける、ヒートポンプ式冷凍サイクルの構成図と、そのヒートポンプ式冷凍サイクルを制御する制御装置の構成図である。
【0038】
ヒートポンプ式冷凍サイクルは、インバータ装置10で可変速駆動される圧縮機11、冷媒の流通方向を変更する四方弁12、利用側熱交換器である水−冷媒熱交換器13、膨張装置である電子制御膨張弁14、熱源側熱交換器である空気熱交換器15、再び四方弁12を通過して圧縮機11に戻るよう、順次冷媒管16を接続することで構成される。
【0039】
水−冷媒熱交換器13は、例えば2重管からなり、内管内を冷媒が流通し、内管と外管との間を水(媒体)が流通する。内管と外管の間は、先に説明した水配管Jに接続される。空気熱交換器15は、例えばフィンドチューブタイプであり、プロペラファン型の送風機17が対向して設けられる。
【0040】
冷凍サイクルが運転されると、圧縮機11で冷媒が圧縮され、吐出された高温高圧冷媒が図中実線矢印に示すように、四方弁12を介して水−冷媒熱交換器13に流れる。水−冷媒熱交換器13では、水配管Jを流れる水と冷凍サイクル中の高温高圧冷媒が熱交換して、水が加熱される。
【0041】
水配管Jの水は温水となり、先に説明(
図1)した熱交換器Kで放熱して、洗浄槽B内の洗浄液Cを加温する。洗浄液Cが設定温度に到達すれば、ポンプPaが駆動され、洗浄管Fを介してシャワーSから洗浄液Cが散布され、搬送コンベアD上の被洗浄部品Eが洗浄される。
【0042】
水−冷媒熱交換器13において冷媒は凝縮され、液冷媒となって膨張弁14に導かれて断熱膨張する。さらに、空気熱交換器15で蒸発して、再び四方弁12から圧縮機11に導かれて圧縮される。
ヒートポンプ式熱源装置Hの冷凍サイクルの冷媒として、本実施形態ではHFC冷媒であるR410Aを用いているが、適切な他の冷媒を用いてもよい。また、水配管Jを循環する水についても、不凍液などの他の熱媒体を用いても良い。
【0043】
四方弁12は、空気熱交換器15の表面に空気中の水分が凝縮してできる着霜を溶かす除霜運転のために設けられているが、工場屋内の着霜しない高温の雰囲気条件下で空気熱交換器15が使用されるならば、四方弁12は不要となる。
なお、除霜運転時は、四方弁12が切換えられ、冷媒は図中破線矢印に示すように流れ、圧縮機11から吐出した高温高圧冷媒が、空気熱交換器15に流れ、着霜を溶かす。
【0044】
次に、制御器(制御装置)20について説明する。
制御器20は、マイクロコンピュータ及び、その周辺回路から構成されていて、運転スイッチ21の入り操作によってヒートポンプ式熱源装置Hの運転が開始され、切り操作によって全ての構成機器の運転を停止する(運転停止)。運転スイッチ21は、作業員が日常的に操作する外部のスイッチである。
【0045】
ここで、運転スイッチ21の入り状態におけるヒートポンプ式熱源装置Hの状態には、以下の4つのモードが存在する。
1つ目は、「通常モード」であり、加温運転を実施し、加温運転のサーモオフ時には送風機17も停止するモード。2つ目は、「サーモオフ送風モード」であり、加温運転を実施し、加温運転のサーモオフ時には送風機17のみを運転するモード。3つ目は、加温運転は実行せず、常に送風機17のみを運転する「ファン単独運転モード」。4つ目は、後述する加温運転及び送風機17の運転のいずれも実行しない「停止モード」である。
【0046】
上述したように圧縮機11を駆動するインバータ装置10は制御器20によって制御され、また送風機17のプロペラファンを駆動するファンモータMも制御器20によって制御される。
【0047】
空気熱交換器15の冷媒出口配管近傍には、熱交温度センサ22が設けられ、冷媒温度(Te)を検出する。空気熱交換器15の熱交換用空気流入側には熱交換用の空気温度(To)を検出する温度センサ23が設けられる。各温度センサ22,23は制御器20に接続され、制御器20では検出した各温度Te、Toを読み取る。
これら温度センサ22,23の検出温度は、空気熱交換器15の着霜状態の検出に用いられる。
【0048】
すなわち、制御器20は、加温運転のサーモオン中に各検出温度Te、Toの差(Te−To)及び、その差の時間変化に基づき着霜状態を検出し、その着霜量が除霜に必要な量に達したか、否かを判断する。除霜が必要と判断した場合は、四方弁12を切換えて、図中破線矢印方向に冷媒を導いて除霜運転を行う。
なお、上述したように除霜運転が必要でなければ、四方弁12と、これらの温度センサ22,23は不要となる。
【0049】
制御器20には、水−冷媒熱交換器13における出口側の水配管Jの温度(以下、出口水温という)を検出する出口温度センサ26が接続される。さらに制御器20は、出口水温が設定温度と一定値になるように、圧縮機11に接続されるインバータ装置10の出力周波数を制御する。
【0050】
また、出口水温が設定温度よりも高い所定値に到達するとインバータ装置10の出力を停止し、圧縮機11を停止(サーモオフ)させる。圧縮機11の停止判断については、出口水温ではなく、水−冷媒熱交換器13における入口側の水配管Jの温度(以下、入口水温という)を検出する入口温度センサ25によって検出した入口水温が所定値よりも高くなった場合に、圧縮機11を停止(サーモオフ)させても良い。
【0051】
さらに、制御器20には、ディップスイッチ5とロータリスイッチ6が接続される。制御器20は、前述のとおり、加温運転のサーモオフ時に送風機17の運転を停止する「通常モード」の機能、加温運転時のサーモオフ時に送風機17を運転する「サーモオフ送風モード」の機能、加温運転を行わずに送風機17のみを運転する「ファン単独運転モード」、及び加温運転と送風機17の運転のいずれも実行しない「停止モード」の機能を備えている。
【0052】
制御器20は、ディップスイッチ5によって設定された設定内容にもとづき上記4つのモードから1つのモードを選択して実行する。
まず、ディップスイッチ5を「000」に設定することで「通常モード」となり、「001」に設定することで、「サーモオフ送風モード」となる。さらに、ディップスイッチ5を「010」に設定することで、「ファン単独運転モード」となる。
【0053】
また、ディップスイッチ5が上述の「000」、「001」及び「010」以外に設定された場合には、制御器20は、加温運転及び送風機17の運転のいずれも実行しない「停止モード」を行う。
ロータリスイッチ6は、「サーモオフ送風モード」または「ファン単独運転モード」における、送風機17のファン回転数を設定するための回転数設定スイッチであり、実際に設定される送風機17の回転数は、先に[表1]で説明した通りである。
【0054】
制御器20には、さらに表示部30が接続される。この表示部30は、上述したようにキャビネット1の前面上部に設けられる点検コード確認窓4を通して作業者等が、機器の外部から見られるものである。
【0055】
なお、作業員の安全のために送風機の運転中には、表示部30の7セグメントで8の字すべてを点灯または点滅させて危険を表示する。「通常モード」のサーモオン中及び「サーモオフ送風モード」のサーモオン中は、連続点灯をなす。「サーモオフ送風モード」のサーモオフ中及び「ファン単独運転モード」の送風機のみの運転中では、点滅表示をなす。
【0056】
また、「通常モード」のサーモオフ中、「停止モード」及び運転スイッチ21が切り操作状態の場合は、送風機17が運転を停止するため、全てのセグメントが消灯する。なお、制御器20には、変形例として、
図7で追って説明するルーバーモータ35を接続し、制御することも可能である。
【0057】
次に、
図6のフローチャートを参照しながら作用について説明する。なお、このフローチャートにおいて、「コンプ」とは、圧縮機11を意味し、ファンとは、送風機17を意味している。
【0058】
まず、運転スイッチ21が入り操作状態となると、ステップが開始する。ここで、ディップスイッチ5の設定が、制御器20で読み取られ、ディップスイッチ5の設定が、「000」もしくは「001」であるとき(ステップS1のYes)は、加温運転がサーモオン状態にあるか否かが判別される(ステップS2)。
【0059】
このステップS2で、加温運転がサーモオン状態にあるとき(ステップS2のYes)、加温運転が実施される。すなわち、圧縮機11が駆動され、送風機17が駆動される(ステップS3)。このとき、表示部35は通常表示をなし(ステップS4)、7セグメントで二桁の素子全てが点灯する。
【0060】
一方、ステップS2で加温運転サーモオフのとき(ステップS2のNo)は、さらに、ディップスイッチの設定が、「000」であるか否かが判断される(ステップS5)。ディップスイッチの設定が、「000」であるとき(ステップS5のYes)は、加温運転が停止(圧縮機11の運転が停止)するとともに、送風機17の運転が停止(ファンオフ)となる(ステップS6)。すなわち、先に説明した「通常モード」であり、このとき表示部35は消灯する(ステップS7)。
【0061】
ステップS5でディップスイッチ5の設定が「000」ではないことが確認されたとき(ステップS5のNo)、すなわちディップスイッチ5の設定が「001」の場合は、送風機17のみ駆動し、圧縮機11等他の機器は停止する(ステップS8)。すなわち、「サーモオフ送風モード」となる。
【0062】
このとき、ロータリスイッチ6の設定内容が制御器20にて読み取られ、ロータリスイッチ6に設定された回転数で、送風機17を運転(ステップS9)する。表示部35は、送風機17が回転中を示すために点滅表示をなす(ステップS10)。
【0063】
また、ディップスイッチ5の設定が、「000」もしくは「001」ではないとき(ステップS1のNo)は、ディップスイッチ5の設定が、「010」であるか否かが確認される(ステップS11)。Yesのときは、圧縮機11を駆動せず、送風機17のみを運転する「ファン単独モード」である。
【0064】
すなわち、ステップS5のNoの場合と同様に、送風機17は駆動するが、他の機器を停止する(ステップS8)。このとき、ロータリスイッチ6に設定された回転数で送風機17を運転(ステップS9)し、表示部35が点滅表示をなす(ステップS10)。
【0065】
ディップスイッチ5の設定が、「010」ではない(ステップS11のNo)場合は、ディップスイッチ5の設定が、「000」、「001」、「010」以外の場合となり、圧縮機11や送風機17など全ての機器を停止し(ステップS12)、送風機17が運転を行っていないため、表示部35は消灯する(ステップS15)。
【0066】
したがって、再び
図1に示すように、「通常モード」及び「サーモオフ運転モード」では、ヒートポンプ装置Hを駆動し、熱交換器Kを介して洗浄槽B内の洗浄液Cを加温し、さらに、ポンプPaを駆動して、シャワーSから被洗浄部品Eに洗浄液を散布して洗浄する。
洗浄液Cの温度が上昇すると、サーモオフとなってヒートポンプ装置Hを停止し、熱交換器Kは残熱による加温をなす。
【0067】
ここで、ヒートポンプ装置Hが屋外に設置されている場合や、ヒートポンプ装置Hを工場内に設置した場合でも周辺にほとんど作業員がいない場合、作業場の雰囲気が比較的低温を保ち良好なときは、送風機17の運転も停止する「通常モード」を選択しておけばよい。この設定では、送風機17の運転が停止するため、無駄な電力の消費がない。
【0068】
サーモオフ状態でも、洗浄作業は継続できるので、洗浄槽Bやヒートポンプ装置H周辺に作業員Mがいる場合が多い。あるいは、作業場の雰囲気が比較的高温化して悪化している場合もある。
そこで、ヒートポンプ装置Hを工場内に設置した場合には、圧縮機11の運転を停止するが、送風機17を運転する、「サーモオフ送風モード」を選択しておけば良い。
【0069】
この設定により、サーモオフ中も吹出し口2から送風機17のファンの回転にともなう風が吹出され、近くの作業員Mに吹付けられる。あるいは、サーキュレータとして作業場の空気が循環され、雰囲気が良好となり、いずれにしても作業員Mは清涼感を得られる。
【0070】
さらに、洗浄槽B内の洗浄液Cが設定温度よりも所定値だけ低い値を下回った場合には、サーモオンとなってヒートポンプ装置Hの加温運転が再開される。圧縮機11が駆動され熱交換器Kで放熱し洗浄液Cを加温する。このように、自動で圧縮機11の停止と駆動再開が繰り返される。
【0071】
また、所定数の被洗浄部品Cの洗浄が終了し、洗浄作業を停止する場合もあり、当然ながらヒートポンプ装置Hの運転を停止する。ただし、別な作業で洗浄槽Bやヒートポンプ装置H周辺に作業員Mがいることが多く、あるいは作業場の雰囲気が比較的高温化して悪化している場合もある。
【0072】
このときは圧縮機11の運転は行わずに、送風機17を駆動する「ファン単独運転モード」を選択しておく。この設定では、加温運転は実施されないが、送風機17のみが運転され、かつファン回転数が自在に選択できるので、作業員Mは引き続いて清涼感を得られる。ヒートポンプ装置Hとして従来のように完全停止するのではなく、必要に応じて送風機17から風が出ているので、有効利用が得られる。
【0073】
図7は、変形例としてヒートポンプ装置Haの外観斜視図である。
この場合、吹出し口2に、複数に分割されたルーバー40を取付ける。好ましくは、自動で風向を可変するが、手動で可変するようにしてもよい。自動で変更する場合に、先に
図5で示すように、制御器20にルーバーモータ35が接続され、送風機17の運転と連動して制御される。
【0074】
いずれにしても、作業員Mが必ずしも吹出し口2の直前にいることに限らないので、作業員Mのいる方向に吹出し方向を選択できれば好都合である。あるいは、広い角度に亘って冷風を吹出すことができる。
【0075】
また、実施形態として利用側熱交換器において冷媒の凝縮熱を水を介して洗浄液を間接的に加温する例で説明したが、利用側熱交換器内を被加熱媒体(例えば洗浄液)そのものを流して直接加温しても良い。
【0076】
さらに、実施形態として、被洗浄物Eに対する洗浄工程にヒートポンプ装置Hを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の産業用設備における被加熱物を加温する場合にも適用できる。
【0077】
なお、上述の実施形態は例として提示したものであり、実施形態の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。