特許第5760094号(P5760094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー・ティスクランドの特許一覧

特許5760094内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用
<>
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000002
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000003
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000004
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000005
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000006
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000007
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000008
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000009
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000010
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000011
  • 特許5760094-内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760094
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、内燃機関の製造、運転及び使用
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/07 20060101AFI20150716BHJP
   F01L 1/38 20060101ALI20150716BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20150716BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   F02M25/07 580A
   F02M25/07 570Z
   F01L1/38
   F02F1/24 F
   F02F1/42 B
【請求項の数】21
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-542410(P2013-542410)
(86)(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公表番号】特表2013-545028(P2013-545028A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011006219
(87)【国際公開番号】WO2012076183
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2013年6月5日
(31)【優先権主張番号】102010054206.7
(32)【優先日】2010年12月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィド・ラーション
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−034129(JP,A)
【文献】 特開平06−101577(JP,A)
【文献】 特開平11−182355(JP,A)
【文献】 国際公開第99/035391(WO,A1)
【文献】 特開2010−121628(JP,A)
【文献】 特開昭56−020713(JP,A)
【文献】 実開昭63−086306(JP,U)
【文献】 米国特許第3579981(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00−1/32
F01L 1/36−1/46
F01L 3/00−7/18
F02F 1/00−1/42
F02F 7/00
F02B 25/00−25/28
F02B 47/08−47/10
F02M 25/06−25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(1)とクランクシャフトと協働するピストン(3)とによって画定された、少なくとも1つの燃焼室(2)を有する2サイクル大型ディーゼルエンジンであって、前記燃焼室は、それぞれ排気弁(9;109;309)の弁頭(8;108;308)と配設された弁座との間に形成された、少なくとも1つの燃料ガス排気口(20;120;320;420)と、少なくとも1つの過給空気流入口(4)とを有しており、前記排気弁(9;109;309)は、開いた位置と閉じた位置との間で動作可能であり、前記燃料ガス排気口(20;120;320;420)は、少なくとも1つの排気管(11)と少なくとも1つの燃料ガス流出管(18;118a、118b;318、318a;418、418a)とに接続されており、それによって、燃焼の際に発生した燃料ガスの一部が、前記過給空気流入口(4)に返送される2サイクル大型ディーゼルエンジンにおいて、
前記排気弁(9;109;309)に固定された、又は、前記排気弁(9;109;309)と一体的に成形された絞り装置(10;110;310)が設けられており、前記絞り装置は、前記排気弁(9;109;309)の閉じた位置から、所望の開口度に至るまでの前記排気弁(9;109;309)の燃料ガス流出開口領域において、燃料ガスが前記排気管(11)に流入することを防止はしないが、より大きい開口度から開口した位置に至るまでの、前記排気弁(9;109;309)の排気ガス排出開口領域においてよりも強く絞るものであり、前記排気ガス排出開口領域においては、前記絞り装置(10;110;310)は、燃料ガスの前記排気管(11)への流入を全く絞らないか、又は、少なくともあまり強くは絞らないものであり、前記絞り装置(10;110;310)と、前記燃料ガス流出管(18;118a、118b;318、318a;418、418a)の排気口側の分岐部とは、前記絞り装置(10;110;310)が、前記燃料ガス流出開口領域において、燃料ガスの前記燃料ガス流出管(18;118a、118b;318、318a;418、418a)への流入を絞らないように、互いに対して配置されていることを特徴とする2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項2】
前記排気弁(9;109;309)は、前記過給空気流入口(4)の開口が始まるピストン位置の上方の最小1°及び最大40°のクランクシャフト角である、下降行程におけるピストン位置に到達する前には開口しないように制御されることを特徴とする請求項1に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項3】
前記絞り装置と前記燃料ガス流出管の排気口側分岐部とは、前記絞り装置が前記排気ガス排出開口領域において、燃料ガスの前記燃料ガス流出管への流入を防止又は少なくとも絞り、及び/又は、戻し弁が前記燃料ガス流出管内に設けられており、前記戻し弁は前記排気ガス排出開口領域において、燃料ガスの前記燃料ガス流出管への流入を防止又は少なくとも絞るように、互いに対して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項4】
前記絞り装置(10;110)は、前記排気弁(9)の弁棒(7;107)から径方向に突出した、一周する絞り突起(10;110)を有しており、前記絞り突起(10;110)は、前記燃料ガス流出開口領域において排気弁(9;109)が開口している場合に、前記燃料ガス流出管(18;118a;118b)の排気口側の分岐部に流れの方向において後置された前記排気管(11)の領域内に存在する前記弁棒(7;107)の領域に設けられており、前記排気管は、この領域においては円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項5】
前記燃料ガス流出管(18)は、前記燃料ガス排気口(20)から離れて、前記排気管(11)内で分岐し、前記絞り突起(10)は、前記排気ガス排出開口領域において排気弁(9)が開口している場合に、前記排気管(11)内で前記燃料ガス流出管(18)の分岐部の高さに概ね位置する前記弁棒(7)の領域に設けられており、前記排気管(11)は、前記燃料ガス流出管(18)の分岐部の領域において、特に円環状の直径拡大部を有しているので、前記絞り突起(10)は、排気弁(9)が前記排気ガス排出開口領域において開口している場合に、燃料ガスの前記排気管(11)への流入を全く絞らないか、又は、少なくとも排気弁(9)が前記燃料ガス流出開口領域において開口した場合よりも弱く絞ることを特徴とする請求項4に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項6】
前記絞り突起(110)は、排気弁(109)が前記排気ガス排出開口領域で開口している場合に、前記燃焼室(2)内に存在する前記弁棒(107)の領域に存在するので、前記燃料ガス流出管(118a;118b)の分岐部は、弁座に、又は、前記排気管(11)の前記弁座に直接接続された領域に存在していることを特徴とする請求項4に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項7】
前記弁棒(7;107)の直径は、前記絞り突起(10;110)の領域において、少なくとも前記絞り突起(10;110)の前記弁頭(8;108)に対向する側において、湾曲して、前記絞り突起(10;110)の最大の径方向外側寸法へ移行し、前記絞り突起(10;110)は、その径方向外側縁部において丸くなっていることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項8】
前記排気管は、前記燃料ガス排気口に流れの方向において後置された排気シリンダを有しており、その外周では、少なくとも1つの排気導管及び少なくとも1つの燃料ガス流出管が分岐しており、前記排気導管の分岐部は、前記燃料ガス流出管の分岐部の下流に設けられており、前記絞り装置は、前記排気シリンダ内で軸方向にスライド可能に受容されたスライダを有していても良く、前記スライダは前記排気弁と固く接続されているので、排気弁が前記燃料ガス流出開口領域で開口している場合は、前記排気導管の分岐部を少なくとも部分的に覆っていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項9】
前記絞り装置の前記スライダは前記排気弁と固く接続されているので、排気弁が前記排気ガス排出開口領域で開口している場合は、前記燃料ガス流出管の分岐部を少なくとも部分的に覆っていることを特徴とする請求項8に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項10】
前記スライダは円筒状のスライドスリーブとして構成されており、前記スライドスリーブは、前記排気弁の弁棒に接続されており、前記排気シリンダは同様に円筒状であることを特徴とする請求項8又は9に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項11】
前記排気弁が回転可能であることを特徴とする請求項10に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項12】
前記円筒状のスライドスリーブは、径方向支柱を通じて、前記排気弁の弁棒に接続されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項13】
排気導管には、前記排気シリンダの周にわたって分散した複数の分岐部が設けられており、及び/又は、排気導管には、前記排気シリンダに対して環状に開いた前記排気導管の分岐部が設けられていることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項14】
前記排気管(11)が、前記燃料ガス排気口(420)に流れの方向において後置された円筒状の排気シリンダを有しており、前記絞り装置(310)は、前記弁頭(308)の前記燃焼室(2)に背向する側に、弁棒(307)の軸方向において、又は、少なくとも軸方向要素を有して突出した段部(310)を、前記排気シリンダの断面の形状で有しており、前記段部は、排気弁(309)が前記燃料ガス流出開口領域で開口している場合、前記排気シリンダを閉鎖はしないが、狭めるものであり、前記燃料ガス流出管(318、318a;418、418a)は、前記段部(310)の径方向外側に位置する分岐領域において分岐し、前記排気弁(309)が閉じている場合には、前記弁頭(308)の前記燃焼室(2)に背向する側によって覆われており、分岐領域よりも径方向外側に延在するので、前記燃料ガス流出管(318、318a;418、418a)は、前記燃焼室(2)から分離しており、前記分岐領域は、前記段部(310)に径方向外側で接続される領域内に、又は、少なくとも前記段部(310)の外周付近に存在しており、前記排気弁(309)が閉じた場合に、前記弁頭(308)の前記燃焼室(2)に背向する側が載置された弁座は、前記分岐領域よりも径方向外側に延在することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項15】
前記燃料ガス排気口(420)の領域には、燃焼室壁面の材料内で少なくとも部分的に周囲を取り巻く冷却剤導管(24)が設けられていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項16】
前記冷却剤導管(24)が、前記弁座後方の材料内に設けられていることを特徴とする請求項15に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジン。
【請求項17】
シリンダ(1)とクランクシャフトと協働するピストン(3)とによって画定された、少なくとも1つの燃焼室(2)を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の2サイクル大型ディーゼルエンジンのためのシリンダヘッドであって、前記シリンダヘッドにおいて、燃料ガス排気口(20;120;320;420)を前記シリンダヘッドにおいて開閉する排気弁(9;109;309)の弁頭(8;108;308)のための弁座が設けられており、前記燃料ガス排気口(20;120;320;420)は、少なくとも1つの排気管(11)と少なくとも1つの燃料ガス流出管(18;118a、118b;318、318a;418、418a)とに接続されており、それによって、燃焼の際に発生した燃料ガスの一部が、過給空気流入口(4)に返送されるシリンダヘッドにおいて、
前記排気弁(9;109;309)に固定された、又は、前記排気弁(9;109;309)と一体的に成形された絞り装置(10;110;310)が設けられており、前記絞り装置は、前記排気弁(9;109;309)の閉じた位置から、所望の開口度に至るまでの前記排気弁(9;109;309)の燃料ガス流出開口領域において、燃料ガスが前記排気管(11)に流入することを防止はしないが、より大きい開口度から開口した位置に至るまでの、前記排気弁(9;109;309)の排気ガス排出開口領域においてよりも強く絞るものであり、前記排気ガス排出開口領域においては、前記絞り装置(10;110;310)は、燃料ガスの前記排気管(11)への流入を全く絞らないか、又は、少なくともあまり強くは絞らないものであり、前記絞り装置(10;110;310)と、前記燃料ガス流出管(18;118a、118b;318、318a;418、418a)の排気口側の分岐部とは、前記絞り装置(10;110;310)が、前記燃料ガス流出開口領域において、燃料ガスの前記燃料ガス流出管(18;118a、118b;318、318a;418、418a)への流入を絞らないように、互いに対して配置されていることを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の、運転中の2サイクル大型ディーゼルエンジンで燃料ガスを流出させる方法において、
前記排気弁(9;109;309)の閉じた位置から、所望の開口度に至るまでの前記排気弁(9;109;309)の燃料ガス流出開口領域において、前記排気弁(9;109;309)に固定された、又は、前記排気弁(9;109;309)と一体的に成形された絞り装置(10;110;310)によって、燃料ガスの前記排気管(11)への流入が防止はされないが、より大きい開口度から開口した位置に至るまでの、前記排気弁(9;109;309)の排気ガス排出開口領域においてよりも強く絞られるとともに、前記燃料ガス流出開口領域においては、前記絞り装置(10;110;310)によって、燃料ガスの前記燃料ガス流出管(18;118a、118b;318、318a;418、418a)への流入が絞られないことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記排気ガス排出開口領域において、燃料ガスの前記燃料ガス流出管への流入が、前記絞り装置及び/又は前記燃料ガス流出管内に設けられた能動的に制御可能若しくは受動的な戻し弁によって防止又は少なくとも絞られることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
電子的に作動する排気弁においては、前記絞り装置の制御時間は連続的に修正されることを特徴とする請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
カムシャフトによって作動する排気弁においては、燃料ガスの流出量は、前記燃料ガス流出管内の能動的に制御可能な戻し弁によって制御されることを特徴とする請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、特に請求項1のプリアンブルに記載の特徴を有する2サイクル大型ディーゼルエンジンと、当該内燃機関のための請求項13及び請求項19のプリアンブルに記載の排気弁及びシリンダヘッドと、請求項20のプリアンブルに記載の当該内燃機関製造方法と、当該内燃機関の請求項26のプリアンブルに記載の使用と、請求項27のプリアンブルに記載の当該内燃機関運転方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
同属の内燃機関において、内燃機関の1つ又は複数の燃焼室に供給された過給空気に、再循環された燃焼ガスを供給するための、燃料ガス再循環が知られている。それによって、窒素酸化物(NO)の排出量が減少することになっている。すなわち、過給空気は、事前圧縮及び場合によっては、乾燥、ろ過、温度調節等の前処理が行われた、周囲からの純粋な洗浄空気の他に、その他の洗浄ガスの成分、例えば、洗浄空気と再循環された燃料ガスとから成る混合物等を含んでいても良い。過給空気は、洗浄ガス及び/又は純粋な洗浄空気の他に、さらなる成分、例えば蒸発させた天然ガスを含んでいても良い。
【0003】
燃料ガスを燃焼室に戻すために、例えば、洗浄空気に再循環された燃料ガスを混合すること、及び、燃焼室をこの混合物で、1つ又は複数の共通の吸気口、例えば吸気ポートを通じて洗浄することが知られている。さらに、一方では燃焼室の再循環された燃料ガスを、他方では残りの分の過給空気を、個別の吸気口を通じて、燃焼室に導入し、過給空気を生成する混合物が燃焼室内で生成されるようにすることが知られている。このとき、本発明を、従来のあらゆる種類の、燃焼室への燃料ガスの返送と組み合わせることができる。
【0004】
これについて、特許文献1からは、同属の内燃機関が知られている。当該内燃機関においては、燃焼室を排気管と接続又は分離する排気弁の他に、個別の第2の排気弁が設けられており、当該排気弁は、燃焼室を再循環管と接続するか、又は、再循環管から分離する。この構造は、比較的多くの費用を要する。
【0005】
さらに、特許文献2は内燃機関を開示しており、当該内燃機関においては、流れにしたがって排気弁に後置された排気管内で、再循環導管が分岐しており、当該再循環導管は、排気弁の弁棒に設けられた第2の弁構造及び排気管内に配設された弁受容部(Ventilaufnahme)によって開閉可能である。このために例えば、排気管の弁棒に設けられた、周側のスリットを有するブッシュが設けられる。排気管内に固定して配置された弁受容部は、やはり再循環導管への分岐部を覆う、スリットを備えたブッシュを有している。弁座の不均等な作動(Einlaufen)を回避するために、排気弁とそれに伴って弁棒とが、回転機構によって常に回転させられることによって、再循環導管への分岐部は開閉され得る。ここで、再循環導管の開閉のために、第2の個別の弁が不要であるとしても、回転機構によって決定された開放頻度及び位相と、エンジン作業サイクル及びエンジンサイクル中の再循環位相に適した位相との同調は困難であるように思われる。
【0006】
さらに、特許文献3からは4サイクルエンジンが知られており、当該4サイクルエンジンにおいては、排気弁に後置された排気管内で、再循環導管が分岐しており、当該再循環導管は、個別の弁を通じて開閉され、この弁は、同時に排気管のための絞り弁としても構成されており、したがって、再循環導管が開放された場合に、排気管を通る流れを絞る。このとき、再循環弁‐排気導管絞り弁は、掃気行程の間、排気管を絞り、再循環導管を開放する位置にとどまっている。
【0007】
最後に、特許文献4からは内燃機関が知られており、当該内燃機関においては、再循環導管が、排気弁に流れの方向において後置された排気管において初めて分岐しており、当該再循環導管はここでも、個別の弁を通じて開閉される。一実施形態において、排気管内の、再循環導管に前置された弁に後置された領域に、絞り装置が設けられており、当該絞り装置は、偏向可能な弁を有している。この弁は、主要排気弁の開口時に生じる圧力によって開口され、圧力が十分に低下すると、プレテンションバネによって閉止される。この解決法は、排気弁と絞り装置と再循環導管に前置された弁との同調、全体の構造、及び絞り装置を閉じるバネのプレテンションの調整に鑑みて、比較的複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005057207号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2151569号明細書
【特許文献3】特開平6−241127号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第102008058612号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記に鑑みて、本発明の課題は、内燃機関、そのための排気弁及びシリンダヘッド、並びに、当該エンジンの運転方法を提供し、それによって、可能な限り少ない外気と混合された燃料ガスを、高い圧力レベルにおいて、再循環又はその他の目的のために流出させることにある。さらに、当該内燃機関の画期的な使用及び製造方法についても記載する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本課題は、内燃機関に関しては請求項1の特徴によって、排気弁に関しては請求項13の特徴によって、シリンダヘッドに関しては請求項19の特徴によって、製造方法に関しては請求項20の特徴によって、使用に関しては請求項26の特徴によって、内燃機関の運転方法に関しては請求項27の特徴によって解決される。
【0011】
本発明によると、このために、排気弁に固定された、又は、排気弁と一体的に形成された絞り装置が設けられている。当該絞り装置は、排気弁の閉じた位置から、所望の開口度に至るまでの排気弁の燃料ガス流出開口領域において、燃料ガスが排気管に流入することを防止するか、又は、少なくとも、所望の開口度よりも大きい開口度から、開放された位置に至るまでの、排気弁の排気ガス排出開口領域においてよりも強く絞るものであり、当該排気ガス排出開口領域においては、当該絞り装置は、燃料ガスの排気管への流入を好ましくは全く絞らないか、又は、少なくとも排気弁の燃料ガス流出開口領域においてよりも弱く絞るものである。絞り装置と、排気口側又は排気弁によって制御された燃焼室排気口の近傍に位置する燃料ガス流出管の分岐部とは、当該絞り装置が、燃料ガス流出開口領域において、燃料ガスの燃料ガス流出管への流入を、好ましくは全く絞らないか、又は少なくとも不必要には絞らないように、互いに対して配置されている。
【0012】
燃料ガス流出開口領域において、排気弁は、比較的狭い環状隙間を形成し、その絞り構造によって、最終的には周辺環境に至る排気導管を遮断するか、又は、当該排気導管を少なくとも直径若しくは流積において狭める。それに対して、燃料ガス流出管は開放される。それによって、排気弁の開口プロセス開始時にはまだ非常に高い燃焼室内の燃料ガスの圧力は、まず、大きな速度とそれに伴う高い動圧とを有して、排気弁の環状隙間を通過する流れに変換される。次にこの流れは、排気管を閉じる、又は、少なくとも流積を減らす若しくは絞る絞り装置によって再び動圧に変換されるので、燃料ガスは高い圧力で、同時に絞り装置によって遮断されていない、又は、少なくとも重要でない程度にのみ妨げられた燃料ガス流出管内に流れる。
【0013】
同時に、排気弁の初期燃料ガス流出開口領域の期間(排気弁の開口時)には、純粋な、又は、少なくとも洗浄空気を大幅に含まない燃料ガスは、燃焼室内に存在しており、排気弁の排気ガス排出開口領域の期間において存在し得るような、燃料ガスと過給空気との混合物ではない。このとき、排気弁の初期開口期間が特に重要であり、閉止プロセスの終了時の位相はさほど重要ではない。なぜなら、ピストンが下へ向かう行程の間のみ、燃料ガスの圧力は、流出した燃料ガスを途中に設けたポンプを用いずに燃焼室流入口側に再循環させる場合に、燃料ガスを過給空気流入口に返送するために十分な高さを有するからである。
【0014】
排気弁の同期に応じて、完全に、又は、少なくとも比較的純粋な燃料ガスが、燃料ガス流出管に達する。当該燃料ガス流出管は、燃料ガスの燃焼室への再循環のために燃料ガスを流出させる場合に、再循環導管であり得る。それに対して、排気弁の排気ガス排出開口領域の期間中(排気弁が比較的大きい開口度の場合)に存在する燃料ガス過給空気混合物は、完全に又は少なくとも大部分が、絞られていない又は少なくともわずかに絞られた排気管に排出され、燃料ガス流出管又は燃料ガス再循環の場合には再循環導管に到達することはないか又はあってもわずかな部分である。
【0015】
ここで、絞り装置を排気弁と一体的に構成すること、又は、少なくとも排気弁に取り付け若しくは固定して構成することは、常に排気弁と同期して行われるがゆえに技術的に容易な、燃料ガスの燃焼室流入口側への再循環又はその他の目的のための燃料ガス流出の適時選択の面、及び、単純な構造並びに既存のエンジン及びエンジンコンセプトの容易な装置変更の面からも、特に有利である。燃料ガス流出開口領域が到達すべき排気弁の所望の開口度も、排気弁の成形又は排気弁に成形された若しくは排気弁に固定された絞り装置の影響を受ける可能性があり、排気弁開口時に発生する圧力には結びついていない。
【0016】
本発明に基づいて構成された排気弁であれば、既存のエンジンでは多くの場合において、燃料ガスを本発明に基づいて流出させるためには、単に1つ又は複数の排気弁を交換するだけで十分である。これは特に、排気弁を単に絞るのみで、完全には閉じない絞り装置に当てはまる。これに対して、絞り装置が排気管を完全に閉止する場合には、弁棒と一直線になるような適切な接触面を、排気管に再加工することが必要であり得る。この場合、又は、エンジンに設けられたシリンダヘッド内に燃料ガス流出管が存在していない場合、存在する全てのシリンダヘッドの交換は、本発明に基づいて構成されたシリンダヘッドによって有利であり得る。特に、既存の内燃機関を燃料ガス流出又は燃料ガス再循環に装置変更する場合には、本発明に係る製造方法は有利である。
【0017】
本発明では、さらに、運転中の内燃機関、特に2サイクル大型ディーゼルエンジンにおいて、特に燃料ガス再循環のために、燃料ガスを流出させる方法が規定されている。当該内燃機関は、シリンダ及びクランクシャフトと協働するピストンによって画定された少なくとも1つの燃焼室を有しており、当該燃焼室は、それぞれ排気弁の弁頭(Ventilteller)と配設された弁座(Tellersitz)との間に形成された少なくとも1つの燃料ガス排気口と、少なくとも1つの過給空気流入口とを有している。このとき、例えば燃焼の際に生じた燃料ガスの一部を過給空気流入口に返送するために、燃料ガス排気口は、少なくとも1つの排気管及び少なくとも1つの燃料ガス流出管と接続されている。排気弁は、開いた位置と閉じた位置との間で作動され、排気弁の燃料ガス流出開口領域において、燃料ガスの排気管への流入は、排気弁に固定された、若しくは排気弁と一体的に成形された絞り装置によって防止されるか、又は、少なくとも排気弁の比較的大きな開口度から開いた位置に至る排気ガス排出開口領域においてよりも強く絞られる。これに対して、燃料ガス流出開口領域では、燃料ガスの燃料ガス流出管への流入は、絞り装置によって、好ましくは全く絞られないか、又は、少なくとも不必要には絞られない。
【0018】
本発明によると、排気弁に固定された、又は排気弁と一体的に成形された絞り装置は、特に燃料ガス再循環を有する2サイクルエンジンにおいて利点を有する。燃料ガス再循環を有する一般的な2サイクルエンジンの場合よりも排気弁を遅く開口できることによって、エネルギー損失を回避できる。一般的な2サイクルエンジンでは、返送された燃料ガスと新しく流入する過給空気との混合を防止するために、流入空気スリットを通過するよりもかなり前に排気弁(又は個別の再循環排気弁)を開口しなければならないことが多い。本発明によると、燃料ガスの燃料ガス流出管への流入を許容するために、1つ又は複数の流入口(流入空気スリット)の開口が始まるピストン位置の上方最大40°のクランクシャフト角度であるピストン位置が下降行程において到達される前に排気弁を開口する必要はない。多くの場合において、排気弁を遅めに開口することは有利であるが、1つ又は複数の流入口(流入空気スリット)を通じて燃焼室の洗浄が開始する前であればいずれの場合も有利である。ここでは、再循環ガスの高い圧力も特に重要である。なぜなら、過給空気の圧力も比較的高いはずだからである。再循環圧力が十分に高い場合、ポンプは不要である。
【0019】
ここで特に有利なのは、燃料ガス流出側において支配的な比較的高い圧力が、流れて来る燃料ガス‐過給空気混合物に対して戻し弁を閉止した状態で維持することによって、燃料ガス流出管内に設けられた戻し弁が、排気ガス排出開口領域に存在する排気弁において絞られていない排気管内に流れる燃料ガス‐過給空気混合物の流入を防止する場合である。このとき、燃料ガス流出管内の戻し弁は、特に排気弁がカムシャフトによって作動する場合、流出させた分の燃料ガスをより良好に制御するために、能動的に制御される戻し弁でもあり得る。電子的に制御され、カムシャフトではなく固有の駆動部によって作動する排気弁の場合、排気弁の制御時間は、流出させた分の燃料ガスを制御するために適切に設定され得る。
【0020】
別の選択肢として、又は、前記措置に補足して、排気弁の排気ガス排出開口領域における絞り装置が燃料ガスの燃料ガス流出管への流入を防止又は少なくとも絞るように、絞り装置を構成するか、又は、絞り装置と再循環導管の排気口側分岐部とを互いに対して配置することが可能であり、それによって、排気ガス排出開口領域の期間に存在する燃料ガス‐過給空気混合物の燃料ガス流出管への流入を防止するという効果が得られる。
【0021】
本発明の有利なさらなる構成において、絞り装置は、排気弁の弁棒から径方向に突出した、好ましくは一周にわたる絞り突起を有しており、この絞り突起は、燃料ガス流出開口領域において排気弁が開口している場合に、燃料ガス流出管の排気口側分岐部に流れの方向において後置された排気管の領域内に存在する弁棒の領域に設けられている。排気弁が燃料ガス流出開口領域に存在する間、排気管を貫流する流れは絞られ、絞り突起において生じる動圧に基づいて、燃料ガス流出管内にポンプで送られるか、又は迂回される。
【0022】
特に、絞り突起が可動式ピストンのように、排気シリンダとして形成された排気管の一部において、排気管の内周に少なくとも緩く接している場合、燃料ガスは、排気弁が燃料ガス流出開口領域で開口している場合、量又は圧力を大きく損なうことなく、燃料ガス流出管に到達する。したがって、流入口側へ戻る再循環導管において、追加的なポンプを用いなくても良い。当該再循環導管は、燃料ガスが再循環のために流出させられる場合、燃料ガス流出管として用いられる。排気シリンダが、燃料ガス流出管の排気口側分岐部に流れの方向において後置された領域であって、排気弁が燃料ガス流出開口領域に存在する場合に絞り突起が存在する領域において、円筒状に形成されている場合、同属の2サイクル大型ディーゼルエンジンにおいて一般的に設けられた弁回転機構は、しばしばプロペラ構造(Umschaftpropellergestaltung)を用いて弁の断続的回転運動を確実なものとし、当該弁回転機構は一般的な方法で維持され得る。
【0023】
本発明の前記有利なさらなる構成において、燃料ガス流出管は、燃料ガス排気口から離れて、排気管内で分岐しても良い。このとき、絞り突起は、排気ガス排出開口領域において排気弁が開口している場合に、排気管内で燃料ガス流出管の分岐部の高さに概ね位置する弁棒の領域に設けても良い。排気管は、燃料流出管の分岐部の領域において、特に直径を円環形に拡大することができるので、排気管に流入する燃料ガスは、排気弁が排気ガス排出開口領域において開口している場合に、燃料ガス流出管の分岐部の高さにある位置において、絞り突起の周囲を流れることができる。ここで好ましくは、直径拡大部分は、燃料ガスの排気管への流入が好ましくは全く絞られない大きさであるが、少なくとも燃料ガスの流入が、燃料ガス流出開口領域において開口した排気弁、又は、燃料ガス流出管の分岐部に流れの方向において後置された領域に存在する絞り突起よりも弱く絞られる大きさである。
【0024】
他方では、同様に、絞り突起を、弁棒の弁頭付近に位置する領域に配置することが考えられる。この絞り突起は、排気ガス排出開口領域で開口した排気弁において、燃焼室内に存在するので、排気管への流入は、絞り突起と弁座との間に形成された環状流路を通じて可能である。この場合、再循環導管の分岐部は、好ましくは弁座そのものに、又は、排気管の弁座に直接接続された領域に配置されている。同時に、燃焼室内に存在する絞り突起において、燃料ガス‐空気混合物を排出するのに十分な大きさの排気弁の開口度を保証するため、及び、燃料ガス流出開口領域で開口した排気弁において、絞り突起を、燃料ガス流出管の分岐部に流れの方向において後置された排気管の領域に移動させるためには、排気弁の過度に大きなストロークは不要である。
【0025】
自明のことながら、絞り突起は、少なくとも排気ガス排出開口領域において開口した排気弁の場合には周囲を流れさせ、燃料ガス流出開口領域において開口した排気弁の場合には、流れを燃料ガス流出管に誘導する。それゆえ有利には、絞り突起は、フロー条件に不都合な角は有しておらず、少なくともその前面、すなわち絞り突起が燃料ガス流出開口領域において再循環導管の分岐部に対向する面において、双曲線状に曲げられた表面を有しており、それによって、燃料ガス流出開口領域において開口した排気弁の場合に、絞り突起の前で排気管の領域に流入する燃料ガスは、この排気管の領域から側方において分岐する燃料ガス流出管に誘導される。
【0026】
本発明のさらなる有利な構成によると、排気管は、燃料ガス排気口に流れの方向において後置された排気シリンダを有しており、その外周では、少なくとも1つの排気導管及び少なくとも1つの燃料ガス流出管が分岐している。このとき、排気導管の分岐部は、燃料ガス流出管の分岐部の下流に設けられている。絞り装置はさらに、排気シリンダ内で専ら軸方向にスライド可能に受容されたスライダを有していても良く、当該スライダは、燃料ガス流出開口領域で開口した排気弁の場合は排気導管の分岐部を、排気ガス排出開口領域で開口した排気弁の場合は燃料ガス流出管の分岐部を、少なくとも部分的に覆うように成形され、排気弁に接続されている。
【0027】
ここで有利には、燃料ガス流出開口領域に存在する排気弁において、排気導管への流入が完全に防止又は少なくとも阻まれるだけではなく、排気ガス排出開口領域で開口した排気弁において、燃料ガス‐空気混合物の燃料ガス流出管への流入、又は、そこで収集された燃料ガスの排気シリンダへ戻る流れも完全に防止又は少なくとも阻まれる。
【0028】
すでに言及したように、スライダは必ずしも完全に、排気シリンダの内周に密に接して動作しなくても良い。スライダと排気シリンダ壁面との間から何らかのガスが漏出したとしても、スライダの基本的な作用、すなわち、燃料ガス流出開口領域に存在する排気弁の場合の排気管内の絞りとしての作用、及び、有利には、排気ガス排出開口領域で開口された排気弁の場合の燃料ガス流出管の分岐部における絞りとしての作用が満たされている限りは、重要な問題ではない。
【0029】
一般的な弁回転機構のすでに言及された機能性の意味では、スライダが円筒形のスライドスリーブ(Schiebehuelse)として構成され、排気シリンダが同様に円筒形であると有利である。しかしながら、このような弁回転機構を有さない排気弁の場合、全く異なるジオメトリが考えられる。
【0030】
スライダ又はスライドスリーブは、例えば径方向支柱(Radialstreben)を通じて、排気弁の弁棒に接続可能である。しかしながら、同じく、スライドスリーブを、弁頭の燃焼室に背向する側を起点とするチューブとして構成することが考えられる。当該チューブには、弁頭に近い領域において、流れのための流出開口部が設けられている。
【0031】
このとき好ましくは、排気シリンダの周にわたって分散した複数の分岐部を有する、排気シリンダから分岐する複数の排気導管又は1つの排気導管が設けられており、それによって、排気ガス排出開口領域で開口した排気弁において、燃料ガス‐過給空気混合物の流入が促進される。別の選択肢として、又は、補足的に、排気導管は、排気シリンダの周囲で環状に延在し、排気シリンダに対して環状に開かれていても良いし、又は、排気シリンダに対して環状に開かれた分岐部を有していても良い。
【0032】
排気ガス排出開口領域で開口した排気弁の場合に排気管内に存在する絞り突起を有するさらなる構成の場合であって、直径を拡大して、絞り突起の周囲を流れることを可能にする場合と同様に、スライダ又はスライドスリーブによって絞り又は閉じることができる排気導管/燃料ガス流出導管を有する有利なさらなる構成において、絞り装置、すなわち絞り突起又はスライダ若しくはスライドスリーブは、排気管内で比較的燃焼室から離れて配置され得る。したがって、絞り装置は高い熱的負荷を加えられず、それゆえ、絞り突起が例えば中空の場合には、比較的安価に形成することができる。この場合、燃料ガス流出管の分岐部は、燃焼室から比較的離れて位置しているので、熱的負荷の高い薄肉の材料部分は、燃料ガス流出管の分岐部と燃焼室内壁との間には存在しない。
【0033】
他方、燃料ガス流出管の分岐部と絞り装置のスライド領域とが収容され得る排気シリンダの特定の設計寸法を設けなければならない。それゆえ、燃焼室内の排気ガス排出領域に存在する絞り突起と、燃焼室排気口又は弁座付近で分岐する燃料ガス流出管とを有するさらなる構成も有利である。加えて、それによって、より直接的かつ損失の無い燃料ガスの燃料ガス流出管への流入が得られる。
【0034】
この方向でさらに進んでいるのは、本発明の第3の有利なさらなる構成である。当該構成においては、排気管が同様に、燃料ガス排気口に流れの方向において後置された好ましくは円筒状の排気シリンダを有しており、当該排気シリンダは、すでに説明した排気シリンダを有するさらなる構成の場合よりもはるかに短いものであり得る。なぜならば、排気シリンダは、ここでは単に、排気弁が閉じられているか、又は、燃料ガス流出開口領域で開かれている限りにおいて、弁頭の燃焼室に背向する側で弁棒の軸方向に突出した段部を、排気シリンダの断面の形状において受容しなければならないので、排気弁は閉じられ、又は少なくとも排気管への流入が絞られているからである。このとき、燃料ガス流出管は、段部の径方向外側に位置する分岐領域(すなわち弁頭の弁座の領域)において分岐し、排気弁が閉じている場合には、弁頭の燃焼室に背向する側によって覆われている。したがって、排気弁が閉じている場合、燃料ガス流出管は、燃焼室から分離している。
【0035】
しかしながら好ましくは、分岐領域は、段部に径方向外側で隣接する領域に、又は、少なくとも段部の外周付近に存在しているので、閉じた排気弁において、弁頭の燃焼室に背向する側が載っている弁座は、分岐領域よりも径方向外側に延在し、それゆえ、排気弁が閉じた場合に燃焼室の排気口を確実に閉じることができる。
【0036】
このさらなる構成の利点は、特に、絞り装置の製造費用が少ないことにある。弁頭の背面のみが段部によって多少延長されなければならず、排気シリンダの外周に段部を設置する場合には、排気シリンダの内周表面は、適切に精密に加工され、弁棒軸と正確に並ぶように構成しなければならない。再循環導管の流入口又は分岐部を、排気管の分岐部又は流入口に対して前置又は並置することも、燃料ガス流出管の分岐部が燃焼室に対して直接開かれており、燃料ガスの燃料ガス流出管への流入の最適化という観点から有利であることが明らかになっている。他方、燃料流出管の分岐部の領域では、高い熱的負荷が生じており、特に燃焼室と燃料ガス流出管との間の燃焼室壁面の薄肉の材料部分において生じている。したがって、十分な冷却を確保するためには、燃料ガス排気口の領域における、燃焼室壁面の材料に、特に弁座と燃料ガス流出管との間の材料に設けられた冷却剤導管が有利である。
【0037】
燃料ガス流出管が、燃焼室に向かって環状に広がっているか、又は、排気シリンダに向かって環状に開かれた分岐部を通じて燃料ガス排気口から分岐している場合、冷却剤導管は、好ましくは少なくとも部分的に周囲を取り巻いている。環状に開いた分岐部は、燃料ガス流出管に輸送されるべき燃料ガスを収集するためには有利であり、このために、好ましくは当該分岐部は、ビード様に(wulstartig)燃焼室壁面の材料内へ開くことができる。
【0038】
以下に、本発明の有利な実施形態を、任意の図を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第1の実施形態に係る内燃機関の概略図である。
図2】排気弁が閉じた場合における、図1に示した内燃機関の燃焼室排気口の部分断面図である。
図3】排気弁が燃料ガス流出開口領域において開口した場合における、図2に対応する図である。
図4】排気弁が燃料ガス流出開口領域で開口した場合における、本発明のさらなる実施形態に係る燃焼室排気口の領域の概略図である。
図5】排気弁が排気ガス排出開口領域で開口した場合における、図4に対応する図である。
図6排気弁が閉じた場合の、本発明によっては把握されていない内燃機関の本発明によっては把握されていないシリンダヘッドにおける燃焼室排気口の領域を、説明の目的で示した概略図である。
図7】排気弁が燃料ガス流出開口領域で開口した場合における、図6に対応する図である。
図8】排気弁が排気ガス流出開口領域で開口した場合における、図6及び図7に対応する図である。
図9図6から図8に示した変型例に対してわずかに変更を加えた燃焼室排気口領域の概略図である。
図10】クランク角を通じて表示された圧力推移のダイヤグラムである。
図11】クランク角を通じて表示された流積のダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の主な適用範囲は、2サイクル大型ディーゼルエンジンであり、例えば船舶の駆動に用いられる。この種の設備の基本的な構造及び作用の仕方は、それ自身知られている。ここでは、しばしば、排気ガスの一部を、NOの排出量を削減するために、作動室2に返送する、すなわち再循環させることが必要となる。このいわゆる再循環ガスは、管理を容易にし、かつ、正確な調量を保証するために、可能な限り純粋な燃料ガス、すなわち洗浄ガスで希薄されていない排気ガスである。
【0041】
図1は、燃料ガス再循環を備えた内燃機関の例であり、当該内燃機関は、本発明の実施形態にしたがってさらに構成されている。しかしながら、本発明は、図1に純粋に例示的に示された再循環装置の構造に限定されるものではない。図2から図9に例示されているように、様々な、本発明に基づいて構成された排気弁及びシリンダヘッドを用いることもできる。
【0042】
本発明はさらに、燃料ガス再循環を備えたエンジンに限定されるものではなく、燃料ガスを他の目的で流出させるために用いることもできる。それゆえ、以下で排気弁の「再循環開口領域」と言う場合、燃料ガス再循環を有する内燃機関における「燃料ガス流出開口領域」が意図されており、「再循環導管」という記載は「燃料ガス流出管」というより一般的な記載を代替する。しかしながら、本発明の上述した実施形態は、燃料ガスが燃料ガス再循環とは異なる目的で流出させられる、又は、取り除かれる場合にも、同様に用いられ得る。
【0043】
図1には、内燃機関のシリンダ1が示されている。当該内燃機関は、複数の直列に配置されたシリンダを有していても良い。各シリンダ1は燃焼室2を有しており、当該燃焼室は、下に向かって、詳細には示されていない方法で、ピストン棒とその頭部と連接棒とを通じてクランクシャフトと協働する、上下運動可能なピストン3によって画定されている。シリンダ1の下側領域には、空気流入スリット4が設けられており、当該スリットはピストン3によって通過され、このようにして増減(auf-und abgesteuert)される。各シリンダ1の空気流入スリット4は、配設された供給管5と連通しており、当該供給管は、全てのシリンダにわたって通じる、過給空気が供給可能な分配管6に接続されている。流入スリット4は、空気流入口として機能し、当該流入スリットを通じて、燃焼室2には燃焼空気が供給される。
【0044】
燃焼室2を上に向かって画定するシリンダカバーの領域には、排気弁9が設けられており、当該排気弁を通じて、燃料ガス排気口20を開閉できる。ここではさらに、詳細には図示されていない燃料噴射装置を設けても良い。
【0045】
燃料排気口20は、排気管11に接続されている。全てのシリンダの排気管11は、通常、全てのシリンダのための共通の排気ガス収集管12に接続されている。当該排気ガス収集管から、排気ガス導管13が分岐しており、当該排気ガス導管は、排気ターボチャージャ14、15のタービン14に排気ガスを供給する。タービン14はコンプレッサ15を駆動し、当該コンプレッサは、洗浄空気導管16を通じて圧縮された洗浄空気を、過給空気分配管6に供給する。洗浄空気導管16内には、洗浄空気冷却器17を配置しても良い。
【0046】
タービン14を離れた排気ガスは、周辺環境に排出される。この排気ガスのNO含有量を可能な限り少なくするために、燃焼室2での燃焼の際に発生するガスの一部は、直接又は間接に、燃焼室2に再び戻される(再循環される)。このために再循環導管18が設けられており、当該再循環導管は、燃料ガス排気口20の領域において分岐するとともに、全てのシリンダ1にわたって通じる再循環ガス収集室19に接続され、当該再循環ガス収集室は、取り出された再循環ガスを冷却及び/又は洗浄及び/又はろ過するための任意の処理ユニット21を介して、再循環導管18の一部で、過給空気分配管6に接続されている。最終的に再循環導管18は、過給空気流入口として機能する流入スリット4に接続されている。
【0047】
図1に示した構成では、再循環ガスは洗浄空気又は洗浄ガスと混合され、燃料室2に過給空気として、すなわち間接的に供給される。このために、再循環導管18は過給空気分配管6に接続されている。図1に破線で示されているように、再循環導管18の接続部は、冷却器17に前置していても良い。このような場合には、再循環ガスの冷却を独自に行う必要はない。
【0048】
燃焼室2から取り出され、再循環導管18に供給された再循環ガスの圧力は、洗浄空気導管16における洗浄空気圧力よりも高いので、自発的な流れが存在し、再循環導管18内の圧力を増大させるための追加的なユニットは不要である。過給空気における短時間の圧力ピークの場合に、再循環導管18への戻りを確実に防止するために、例えば過給空気分配管6と再循環ガス収集室19との間の領域において、それぞれ燃焼室の流入口側に向けて開口している戻し弁を再循環導管18内に設けても良い。
【0049】
さらに、例えば再循環ガス収集室19と各燃焼室2との間の領域において、それぞれ燃焼室の流入口側に向けて開口している戻し弁23を再循環導管18内に設けても良い。それによって、燃料ガス排気口20側の圧力が再循環ガス収集室19側よりも高い場合に、燃料ガスのみが再循環導管18を貫流できること、及び、燃料ガス排気口20側の圧力が再循環ガス収集室19側よりも低い場合に、そこを再循環ガスとして収集された燃料ガスが逆流しないことが同時に確実化される。
【0050】
すでに述べたように、燃焼室2から取り出され、再循環された燃料ガスの圧力は過給空気の圧力よりも高いので、ポンプ又はコンプレッサ等の追加的な装置は不要である。このために、本発明によって設けられた絞り装置が主に用いられる。
【0051】
燃料ガス再循環システムには様々な変型例が知られており、図1に示された燃料ガス再循環システムは例示的なものにすぎない。例えば、並列操作を保証するために、すでに言及した要素と比較可能ないくつかの要素が幾重にも存在し得る。前記エンジンの動作中における所望の機能性を得るために、示した要素の内いくつかを、機能的に分離された、直列に配置されたユニットに分割することもできる。さらに、このようなシステムは、拡張したシステムの核を構成し得る。この拡張したシステムは、例えばさらなる要素をタービン14の上流又は下流に有しており、それによって、排気ガス中に含まれるエネルギーをさらに利用すること、又は、排気ガスを最終的に環境中に排出される前に洗浄することが可能になる。コンプレッサ15等の要素の上流/下流の空気流に対しても、図1に示されていない装置によるさらなる処理を行うことができる。この空気流には、純粋な周囲空気とは異なる物質を混合することもできるので、再循環された燃料ガスが、シリンダの洗浄のために設けられたガス流に混合される前に、洗浄空気の代わりに、さらなる気体状かつ可燃性、又は、不燃性の物質を含む洗浄ガスが存在する。最後に存在する、シリンダの洗浄のために設けられた混合気は、非常に多彩な組成を有しており、「過給空気」と呼ばれている。自明のことながら、本発明は、全ての前記燃料ガス再循環システムで利用可能である。
【0052】
図2及び図3からは、上述した種類の絞り装置10を有する燃料ガス排気口の第1の実施形態が見て取れる。図2は、閉じた排気弁9によって排気管11から分離された状態の燃焼室2を示している。それに対して、破線は、排気弁9が完全に開口した位置を示している。すなわち、排気弁9は、両矢印で示したように、ピストン3の動きと同調した制御時間で上下に動く。
【0053】
ここで、排気弁9は弁頭8を有しており、当該弁頭は、閉じた位置において弁座に載置され、したがって燃料ガス排気口20を閉鎖し、弁9の下降運動において、燃料ガス排気口20を開放する。このとき、弁頭8は弁棒7に固定されており、当該弁棒は、シリンダヘッドに従来の方法で支承されると共に、一般的にはここには図示されていないカムシャフトによって駆動される。特にいわゆる電子弁制御原則に基づき、クランクシャフトと弁棒との間に機械的連結を有さない、例えば近年見られる、電磁石等による弁作動を有する電子弁直接制御のような他の弁作動装置も考えられる。
【0054】
弁棒7には、回転対称に構成された絞り突起10が、絞り突起10が閉じた排気弁9において(図2)、及び、所望の開口度まで(図3)、再循環導管18の排気管11からの分岐部に流れの方向において後置された領域に配置されている位置に設けられている。排気弁9の図2図3とに示された位置の間の領域は、排気弁9の再循環開口領域に相当し、当該領域においては、絞り突起10が、その外周で、排気管11の円筒状部分の内周に隣接し、それによって、少なくとも主に燃焼室2から流出する燃料ガスのために、排気管11を閉鎖しているが、この閉鎖は、本発明にとって重要な絞り作用が得られる限りは、絶対的なものであることを強制されない。
【0055】
この段階において燃焼室2から流出した燃料ガスは、図3において矢印で示したように、再循環導管18の方向に誘導され、このために、絞り突起10の燃焼室2に対向する側における双曲線状又は丸い表面と、再循環導管18の分岐部領域において、排気管11を円環形に取り囲む、やはり丸い側面を有する直径拡大部22とが用いられる。
【0056】
排気弁9が、再循環開口領域の上限を画定する、図3に示した所望の開口度の位置から、その完全に開口した位置(図2において破線で示されている)に向けて下に移動する場合、絞り突起10は、再循環導管18の分岐部及び直径拡大部22の領域に到達し、そこで、絞り突起10の周囲を、完全に開いた燃料ガス排気口20を通って燃焼室2から流出するガスが流れ、当該ガスは排気管11を通って排出され得る。
【0057】
この示された実施形態は、いくつかの観点において有利である。例えば、排気弁9の図2に示した位置と図3に示した位置の間における初期開口段階の間、すなわち再循環又は燃料ガス流出開口領域において、燃焼室2内には純粋又は略純粋な燃料ガスが存在する。なぜなら、この段階では、空気流入スリット4は通過されないか、又は、少なくともまだ十分には通過されないからであり、この燃料ガスはさらに、高い圧力を有している。再循環導管18に流入する燃料ガスは、再循環に望ましい特性、すなわち、再循環導管18に流入する燃料ガスに混合されるべき洗浄ガス又は洗浄空気という、洗浄システム内に存在するガスの圧力に対する過圧を有しているので、図3に示すように、戻し弁23は、再循環導管18内で開口する。他方、燃料ガスは、所望の低い酸素濃度を有しており、当該酸素濃度は、空気流入スリット4及び過給空気を開放した後に初めて増大する。
【0058】
これに対して、後続の排気ガス排出開口段階、すなわち、図2において破線で示したように排気弁9がさらに開口した状態では、ピストン3はすでに過給空気流入スリット4を通過しているので、燃焼室2内には、再循環には不都合な圧力の低い混合気が存在する。この混合気は、さらに開放された燃料ガス排気口20を通って、排気管11の入口領域に到達し、絞り突起10も存在する直径拡大部22の領域に到達する。したがって、燃焼室2から流出するガスに大きな動圧を与えることなく、絞り突起10の周囲を流れることが可能である。ガスはようやく燃焼室から流出する。なぜなら、排気ガス収集管12内の圧力は、原則として過給空気の圧力よりも低いからである。この混合気は、排気ガス排出開口段階の間に再循環導管18に流入すること、又は、戻し弁23を開口することはできず、絞り突起又は絞り体10の周囲を排気ガス収集管12の方向へ流れ、再循環からは排除される。
【0059】
図4及び図5は、本発明のさらなる実施形態を示しており、当該実施形態においては、一部変更された排気弁109と、再循環導管118a、118bの排気管11からの変更された分岐領域とが用いられているが、燃焼室2自体は、図1から図3に示された実施形態から変更されずとも良く、これは、図1に示した残りのエンジン構成要素についても同様である。
【0060】
ここで、弁棒107には、やはり周囲を取り巻く絞り突起110が設けられている。しかしながら、この絞り突起は、弁頭108に直接後置されている。同時に、再循環導管の分岐部、又は、この実施形態の場合には再循環導管118a、118bの分岐部は、燃料ガス排気口120への接続領域に直接存在している。燃料ガス排気口120は、図4に示した排気弁109の再循環開口位置において、弁頭108の背面と、燃焼室壁面に接する弁座とによって形成されているが、燃料ガス排気口120は、図5に示した排気弁109の排気ガス排出開口位置において、絞り突起又はバッフル110の背面及び径方向外側面と弁座との間に形成されている。
【0061】
本発明の第1の実施形態のように、ここでも絞り突起110は、排気弁109が再循環開口領域に存在する場合に、再循環導管の分岐部118a、118bに流れの方向において後置された排気管11の領域を少なくとも十分に閉鎖するので、図4において矢印で示したように、燃焼室2から流出した燃料ガスは、排気弁の再循環開口領域において、再循環導管118a、118bに誘導される。各再循環導管、又は、各再循環導管118a、118bが合流する再循環導管の部分において、図4及び図5に示すように、それぞれ1つの戻し弁を設けることが可能である。この戻し弁は、図4において、単にスペースの問題上、再循環導管118bの中に図示されていない。燃料ガスが、収集容器19に集められた再循環ガスよりも高い圧力を有している場合、戻し弁によって、再循環ガス又は燃料ガスが再循環収集容器19に流入することが可能になる。
【0062】
これに対して、排気弁108がより大きな開口度を有している場合、又は、排気ガス排出開口領域に存在する場合、周囲を取り囲む絞り突起110は排気管11をもはや閉鎖しないので、図5において矢印で示したように、存在するガスは、排気管11へ流れ、そこからさらに排気ガス収集管12へ流れる。注意すべきことに、燃料ガスの再循環側への流入を改善する目的で、2つの再循環導管118a、118bだけではなく、この位置において円筒状である排気管11の周にわたって分散した複数の再循環導管を設けても良い。したがって、周の内壁に、そこから再循環導管118が分岐するような空洞を設けても良い。
【0063】
図6から図8には、本発明のさらなる実施形態が示されており、図6には排気弁308が閉じている場合の実施形態が、図7には排気弁が再循環領域で開口している場合の実施形態が、図8には排気弁が排気ガス排出領域において開口している場合の実施形態が示されている。
【0064】
この実施形態では、絞り装置は、弁頭308の背面から突出した段部310によって構成されており、当該段部は、図6に示された排気弁309の閉じた位置から、図7に示された所望の開口度を有する排気弁の位置に至る再循環開口領域において、排気管11を閉鎖するが、再循環導管318、又は、その排気管11の周囲を環状に取り巻く分岐部318a、又は、その排気管11の周囲を環状に取り巻く、燃焼室2から燃料ガス排気口320を通って流出する燃料ガスの流入のための流入口318aを開放する。これに対して、図8に示した排気ガス排出領域においては、排気弁307は、段部310がもはや再循環開口領域に対応する位置において排気管11の円筒状壁面に隣接するのではなく、排気管11を開放する範囲で、燃焼室内にスライドされている。すでに述べたように、ここでも、再循環導管318内に戻し弁を設けることができる。
【0065】
この実施形態では、再循環導管318への流入口又は分岐部318aは、燃焼室2の排気口320に直接配置されているので、燃焼室壁面と再循環導管318又は分岐部318aとの間に存在する材料には、高い熱的負荷が加えられる。ここには同時に、非常に薄肉の材料部分が立っている。この欠点を回避するために、図6から図8に示した本発明の実施形態には、図9に示したように、一部変更を加えることができる。
【0066】
このとき、燃焼室側表面と再循環導管418の流入口418aとの間に立っている材料部分に、冷却剤管24が設けられており、この冷却剤管はやはり排気管11の周囲を取り囲んでいる。同時に、材料内に開いている再循環流入口418aの収集体積と、再循環導管418の入口領域とは、燃焼室から離れてさらに後方へ、材料内に向かって移行しているので、ここでは、より幅広い材料部分は、図6から図8に示した本発明の実施形態においてよりも、高い熱的負荷に耐え得るものである。加えて、弁棒307に接して、周知の回転ブレードリングが25で示されており、当該回転ブレードリングは、ここを通り過ぎるガスによって弁回転運動を行い、当該弁回転運動は、排気弁309及び弁座の予定よりも早い摩耗を防止すべきものである。
【0067】
図11では、本発明に係る内燃機関に関して例示的かつ純粋に量的に、上死点後のクランク角で表されるピストン3の動きに応じて、洗浄ガス流入口4を形成する流入スリットの領域における自由な流積の推移が、曲線bによって示されている。これに対して、曲線aは、燃料ガス排気口20の領域における自由な流積の推移を示している。このとき、直線部分は、排気弁9がカムシャフトによって駆動されている場合の推移を示している。点線部分は、排気弁が電子的に、クランクシャフトと弁棒との間の機械的連結無しに作動する場合に考えられ得る自由な流積の推移を示している。
【0068】
カムシャフトによって作動する排気弁9の開口は、曲線aによると、例えば上死点後115°のクランク角において、すなわち、下降行程中の下死点上方65°において行われる。電子的に制御及び作動する排気弁の場合、開口は幾分早く、例えば上死点後110°のクランク角で開始し、完全に開口する前、及び、排気弁が排気ガス排出領域に進む前に、燃料ガス流出開口領域を延長するために中断することができる。
【0069】
曲線bによると、洗浄ガス流入口4は、上死点後約135°のクランク角(すなわち下降行程中の下死点上方45°)において開口する。ピストン3及びクランクシャフトによって形成される駆動装置が略左右対称であると仮定すると、洗浄ガス流入口6は、ピストン3の上昇行程において、上死点前約135°のクランク角で再び閉じられる。排気弁9の閉止は、しばしば上死点おいて対称的には制御されておらず、上昇行程において多少遅くに行われるので、排気弁9が開口している場合に、作動室2は確実に洗浄される。ここでは、燃料ガスはもはや取り出されないので、ピストンの上昇行程において燃料ガス流出開口領域は存在せず、電子的に制御及び作動される排気弁の制御は、カムシャフトによって作動される一般的な排気弁に対応して行われ得る。
【0070】
排気弁9の開口に際して、漏れ出る排気ガスは、排気管11内における圧力の増大を引き起こす。図10では、曲線cによって、排気管11内の圧力の推移が、ピストンの動きに応じて、すなわちクランク角を通じて示されている。ここから明らかなのは、排気弁9を開口する際に、排気管11内の圧力が急激に上昇するということである。これによって、1つ又は複数の頂点を有する、上死点後約115°のクランク角において始まる圧力インパルスeがもたらされる。圧力インパルスeは、比較的短い持続時間を有しており、単に約20°のクランク角を越えて広がっている。したがって、圧力インパルスeは、流入スリット4の開口前に終了する。いずれの場合にも、洗浄ガス流入口4の開口は、圧力インパルスeの最終的な終了につながり得る。
【0071】
図10のさらなる曲線dによって、燃焼室2内の圧力の推移が、クランク角を通じて示されている。燃焼室2内の圧力が比較的高くなるので、ここでは、圧力に割り当てられているx座標上では、曲線dに関しては、曲線cに関する場合とは異なる尺度が有効である。図10において、曲線cと曲線dとは交差している。しかしながら、これは単に尺度が異なることに基づいている。同じ尺度を用いた場合、曲線cと曲線dとは、交差しないか、せいぜいのところ圧力インパルスeの領域で交差する程度である。曲線a(図11)によると、排気弁9は、上死点後約130°のクランク角以降、完全に開口している。したがって、燃焼室2内の圧力と排気管11内の圧力とは、上死点後約150°から上死点後180°までの圧力インパルスeの終了後は略同じである。曲線bによると、上死点後約160°以降は、洗浄ガス流入口4は完全に開口している。
【0072】
したがって、燃焼室2内及び排気管11内の圧力は、洗浄ガス圧力よりもわずかに低いのみであり、このことは、図10において曲線fによって示されている。曲線fは、洗浄システム内の圧力を示しており、曲線cと同じ尺度で示されている。eにおいて明らかなのは、排気管内の圧力が、排気弁9の開口後すぐに、洗浄システム内の圧力fを大きく超過しており、これによって、正の圧力差が得られる。この圧力差は、本発明によると、燃料ガスを燃料ガス流出管システム内に押し進め、さらに、流入口によって洗浄ガスシステム内のどこかで終了する燃料ガス再循環回路内に押し進めるために用いられる。ここで注意すべきことには、本発明に係る絞り装置が存在しなかったなら、排気弁の直接下流で排気弁作動直後に圧縮される比較的大きな体積のゆえに、曲線cの形状は、eにおいてはるかにより平らになり、より小さい最大圧力値のみが得られるだろう、ということである。
【0073】
gに関して強調されるのは、洗浄のための洗浄ガス圧力fが、排気管及び以下の排気ガス排出システム内の実際の圧力を超過しているということである。この段階の間は、洗浄流入口が燃焼室に向けて開放されている場合、洗浄システムと排気ガス排出システムとの間にシリンダ体積を通じて伝達される正の圧力差が存在するので、洗浄は、洗浄ガスの流入口を通るシリンダ体積への流入と、開口した排気弁による燃料ガスの同時の押し出し(Herausdraengen)とにつながる。
【0074】
図示された実施形態を、本発明の枠内で変更及び修正することが可能である。
【0075】
例えば、弁回転機構は、再循環制御の機能にとって強制的なものではないが、図1から図7に示した実施形態において設けても良い。これに対して、このような弁回転機構が欠けている場合、絞り装置がバッフル、スライドスリーブ、又は弁頭から突出した段部の形態であるにせよ、当該絞り装置と、排気管の配設された部分とは、全く異なるジオメトリを有することも可能である。しかしながら、図示された実施形態では、バッフル、スライドスリーブ、又は弁頭から突出した段部は、排気管の配設された部分のように、あらゆる径方向において弁棒に対して左右対称に形成されている。
【0076】
自明のことながら、本発明によると、排気弁は1つの部分から、すなわちワンピースとして形成しても良いし、又は、複数の部分を組み立てて構成しても良い。ここで、回転ブレードリング25、又は、さらなる部品等の、さらなる部品を当該排気弁に固定しても良い。重要なことは、排気弁はつねに全体が一体的に制御され、動くということである。シリンダヘッドについても、個々の部材からアセンブリとして組み立てることができる。当該部材は、それぞれの機能及び/又は内部空間を実現するように特に合わせることができる。例えば水冷環状導管24である。さらに、全ての実施形態において、能動的に制御された、又は受動的な戻し弁を、燃料ガス流出管又は再循環導管内に設けることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 シリンダ
2 燃焼室
3 ピストン
4 流入スリット
5 供給管
6 分配管
7、107、307 弁棒
8、108、308 弁頭
9、109、309 排気弁
10、110、310 絞り装置
10、110 絞り突起
310 絞り段部
11 排気管
12 排気ガス収集管
13 排気ガス導管
14 タービン
15 コンプレッサ
14、15 排気ターボチャージャ
16 過給空気導管
17 過給空気冷却器
18、118a、118b、318、318a、418、418a 燃料ガス流出管
19 再循環ガス収集空間
20 燃料ガス排気口
21 再循環ガス処理ユニット
22 直径拡大部
23 戻し弁
24 水冷環状導管
25 弁回転ブレードリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11