特許第5760100号(P5760100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760100
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】放射線測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/17 20060101AFI20150716BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20150716BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   G01T1/17 D
   G01T1/24
   G01T1/20 E
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-556150(P2013-556150)
(86)(22)【出願日】2012年2月2日
(86)【国際出願番号】JP2012052334
(87)【国際公開番号】WO2013114599
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2014年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 公貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 國彦
(72)【発明者】
【氏名】海上 貴信
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−303787(JP,A)
【文献】 特開2003−057354(JP,A)
【文献】 特開2004−301601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/17
G01T 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の入射を検出して所定の検出信号を出力する3つ以上の半導体センサーと、
当該半導体センサーの各々から出力された前記検出信号を入力する信号読取手段と、
を備え、
前記信号読取手段は、
前記3つ以上の半導体センサーのうち何れか一つから前記検出信号が入力された場合に、当該検出信号が入力されたタイミングで、他の前記半導体センサーから前記検出信号の入力が有ったか否かを判別する判別処理を行い、
前記3つ以上の半導体センサーの全てから前記検出信号が入力されたと判別された場合には、入力された前記検出信号をノイズと判断して、内部に保持されている計数値を維持し、
前記3つ以上の半導体センサーのうち少なくとも一つから前記検出信号が入力されていないと判別された場合には、入力された前記検出信号を正しく放射線が検出されたことによる検出信号であると判断して、入力された前記検出信号の数を加算することにより前記計数値を更新する、
ことを特徴とする放射線測定装置。
【請求項2】
前記信号読取手段は、前記判別処理を、前記検出信号の入力をトリガーとした割込処理として行うことを特徴とする請求項1記載の放射線測定装置。
【請求項3】
前記複数の半導体センサーは、
放射線が入射すると、当該放射線に応じた信号が生成されて出力される放射線検出部と、
当該放射線検出部から出力された信号の波高が所定の閾値を超えた場合に、所定幅のパルス信号を前記検出信号として出力するノイズ識別部と
をそれぞれ備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線測定装置。
【請求項4】
前記信号読取手段は、前記判別処理において、前記検出信号が入力されたタイミングで複数の前記ノイズ識別部から出力されている前記パルス信号の入力数を計数し、当該入力数が前記複数の半導体センサーの数と等しいか否かにより前記判別を行うことを特徴とする請求項3記載の放射線測定装置。
【請求項5】
前記信号読取手段は、入力された前記検出信号の数を所定の時間間隔毎に計数し、
前記計数された値が予め設定された基準値以上である場合には、当該計数された値にノイズが混入していると判断することを特徴とする請求項1に記載の放射線測定装置。
【請求項6】
情報を表示する表示部を備え、
前記信号読取手段は、前記計数された値に前記ノイズが混入しているとの判断が予め設定された基準回数以上連続してなされた場合には、前記表示部にエラー表示を行わせることを特徴とする請求項5記載の放射線測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォトダイオードやフォトトランジスタといった半導体検出素子を用いてガンマ線やX線などの放射線を直接、又は、シンチレータ等により可視光に変換して間接的に検出し、放射線量を測定する放射線測定装置がある。この放射線測定装置に用いられる半導体検出素子では、入射した電磁波によりPN接合面の欠乏層で光励起が生じ、光量に略比例した量の電子と正孔とが対で生成される。放射線測定装置において、半導体検出素子で生成された電子及び正孔は、パルス電流としてチャージアンプに流れて電圧変化に変換され、この電圧変化が検知されることにより放射線の入射が検出される。
【0003】
このような放射線測定装置で測定される電圧変化は、非常に微小なレベルとなるので、従来、放射線測定装置では、検出能力を向上させるための種々の改良がなされている。このような検出能力の向上に係る技術の一つとして、半導体検出素子の感度の上昇がある。半導体検出素子では、空乏層の体積を増大させることで、同一入射光量の放射線に対してより多くの電荷対が生成されるので、感度が上昇する。空乏層の体積を増大させるには、PN接合面の面積を増加させることが考えられる。しかしながら、単純にPN接合面を広くすると、接合面積に反比例して同一の入射光量に対する検出電圧が低下するので、ノイズの影響が相対的に大きくなるという問題がある。そこで、従来、複数の半導体検出素子を並列に配置して各々独立に放射線の検出を行わせ、検出結果を合算する技術が開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
また、微弱な放射線を複数のフォトダイオードを用いて検出する場合には、各フォトダイオードにおける検出は、各々独立、且つ、断続的になる。従って、複数のフォトダイオードで同時に放射線が検出される可能性は、非常に低い。そこで、特許文献3には、非同時計数回路を備え、複数の半導体検出器から同時に放射線の検出波形が入力された場合には、他の要因(例えば、放射線検出装置の振動)によるノイズであるとみなして計数から除外する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−139346号公報
【特許文献2】特許4643809号公報
【特許文献3】特許3750924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献3に開示されたノイズ判定技術では、並列に配置された各放射線検出部から出力されるアナログ信号波形に基づいて行われる予め設定された閾値以上の信号検出動作と、異なる半導体検出器による検出タイミングの非同時性の判別動作とをまとめて随時行っている。従って、構成及び動作が複雑になり、大型化や電力消費の増大に繋がるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、容易に低コストで製造可能であり、且つ、感度及びノイズ除去精度の高い放射線測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
放射線の入射を検出して所定の検出信号を出力する3つ以上の半導体センサーと、
当該半導体センサーの各々から出力された前記検出信号を入力する信号読取手段と、
を備え、
前記信号読取手段は、
前記3つ以上の半導体センサーのうち何れか一つから前記検出信号が入力された場合に、当該検出信号が入力されたタイミングで、他の前記半導体センサーから前記検出信号の入力が有ったか否かを判別する判別処理を行い、
前記3つ以上の半導体センサーの全てから前記検出信号が入力されたと判別された場合には、入力された前記検出信号をノイズと判断して、内部に保持されている計数値を維持し、
前記3つ以上の半導体センサーのうち少なくとも一つから前記検出信号が入力されていないと判別された場合には、入力された前記検出信号を正しく放射線が検出されたことによる検出信号であると判断して、入力された前記検出信号の数を加算することにより前記計数値を更新する、
ことを特徴とする放射線測定装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線測定装置において、
前記信号読取手段は、前記判別処理を、前記検出信号の入力をトリガーとした割込処理として行うことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の放射線測定装置において、
前記複数の半導体センサーは、
放射線が入射すると、当該放射線に応じた信号が生成されて出力される放射線検出部と、
当該放射線検出部から出力された信号の波高が所定の閾値を超えた場合に、所定幅のパルス信号を前記検出信号として出力するノイズ識別部と
をそれぞれ備えることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の放射線測定装置において、
前記信号読取手段は、前記判別処理において、前記検出信号が入力されたタイミングで複数の前記ノイズ識別部から出力されている前記パルス信号の入力数を計数し、当該入力数が前記複数の半導体センサーの数と等しいか否かにより前記判別を行うことを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の放射線測定装置において、
前記信号読取手段は、入力された前記検出信号の数を所定の時間間隔毎に計数し、
前記計数された値が予め設定された基準値以上である場合には、当該計数された値にノイズが混入していると判断することを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の放射線測定装置において、
情報を表示する表示部を備え、
前記信号読取手段は、前記計数された値に前記ノイズが混入しているとの判断が予め設定された基準回数以上連続してなされた場合には、前記表示部にエラー表示を行わせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従うと、放射線の検出感度及びノイズ除去精度の高い放射線測定装置を容易且つ低コストで製造することが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の放射線測定装置の全体構成の概略を示すブロック図である。
図2】放射線検出部の回路構成の概略を示す図である。
図3A】放射線測定動作における初期設定処理の制御手順を示すフローチャートである。
図3B】放射線測定動作における判別計数処理の制御手順を示すフローチャートである。
図3C】放射線測定動作における演算処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態の放射線測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【0017】
本実施形態の放射線測定装置1は、並列に設けられた4つの半導体センサー11〜14と制御部31(信号読取手段)と、を備えている。半導体センサー11は、放射線検出部21及び検出弁別部26(ノイズ識別部)を含み、また、半導体センサー12は、放射線検出部22及び検出弁別部27を含む。半導体センサー13は、放射線検出部23及び検出弁別部28を含み、半導体センサー14は、放射線検出部24及び検出弁別部29を含む。
【0018】
図2は、放射線検出部21に係る回路構成の概略を示す回路ブロック図である。
【0019】
本実施形態の放射線検出部21は、直列に接続されたフォトダイオードD1と、チャージアンプ部OA11と、増幅部OA21と、を備えている。放射線検出部22〜24は、放射線検出部21と同一の構成であるので、説明を省略する。
【0020】
フォトダイオードD1のカソード端は、抵抗R11を介してバイアス電圧Vbiasの出力端子に接続されている。一方、フォトダイオードD1のアノード端は、チャージアンプ部OA11に含まれるオペアンプOP21の反転入力端子に接続されている。また、オペアンプOP21の非反転入力端子には、所定の参照電圧が入力されている。オペアンプOP21には、抵抗R21とキャパシタC21とが並列に接続されている。オペアンプOP21、抵抗R21、及び、キャパシタC21により、フォトダイオードD1で生成された電荷を出力電圧に変換するチャージアンプ部OA11が構成される。
【0021】
このチャージアンプ部OA11で用いられるキャパシタC21の容量が小さいと、変換される電圧が大きくなる一方でノイズが増加し、容量が大きいと、電圧が小さくなる一方でノイズも小さくなるので、これらの容量には、適宜な値が設定される。また、抵抗R21は、フォトダイオードD1からパルス状に出力されてキャパシタC21に一時的に蓄えられた電荷の放出速度を定める。この抵抗R21の抵抗値は、検出持続時間との関係から高い値が望ましいが、高すぎると電場ノイズの影響を受けやすくなるので、フォトダイオードD1のインピーダンスを超えない範囲で適宜設定される。また、オペアンプOP21には、特にノイズの小さい低ノイズアンプであって、ガンマ線検出時の検出電圧波形の幅(例えば、約50μs)に見合ったスルーレイト、及び、利得帯域のものが選択される。
【0022】
増幅部OA21は、オペアンプOP21の出力端子に接続されたキャパシタC31と、キャパシタC31の他端に接続された抵抗R31とを介してチャージアンプ部OA11と接続され、主に、電圧信号の増幅や狭帯域フィルタ(主にローパスフィルタ)として機能する。この増幅部OA21は、抵抗R31の他端に対して並列に接続されたオペアンプOP41、キャパシタC41、及び、抵抗R41を備えている。増幅部OA21の出力電圧は、キャパシタC51及び抵抗R51を介し、アナログ電圧波形Voutとして検出弁別部26に出力される。
【0023】
検出弁別部26〜29は、各々、放射線検出部21〜24から入力された電圧波形の中に予め設定された閾値電圧以上の電圧が検出されると、検出を示すパルス信号(検出信号)を制御部31に対して出力するディスクリミネータを含む。ここで、検出弁別部26〜29から出力される信号としては、例えば、通常状態では「0」信号(ローレベル信号)であり、検出信号の出力時には、「1」信号(ハイレベル信号)となるような二値信号が用いられる。このように、検出弁別部26〜29は、閾値電圧以上の電圧を検出したタイミングで出力の変化する二値信号が出力可能であり、且つ、簡易な構成であればよく、例えば、ディスクリミネータの代わりにコンパレータを含むこととしても良い。また、この段階で電圧波形データや検出信号を所定のサンプリング周波数による離散データ(デジタルデータ)に変換する処理は、不要な処理により電力消費を増大させ、また、検出タイミングに誤差を生じさせるので、必要とされない。
【0024】
制御部31は、放射線測定装置1の各部の動作を制御すると共に、後述するように、検出弁別部26〜29からそれぞれ入力された検出信号がノイズによるものであるか否かを判別する判別処理を行い、ノイズではないと判別されたもの、即ち、放射線が正しく検出されたことを示す検出信号の入力回数を計数する。また、制御部31は、所定の時間間隔毎(例えば、1分)に、当該時間内のカウント数から出力用の測定単位(例えば、線量当量(Sv/h))による値(出力値)に換算する演算処理を行う。
【0025】
この制御部31は、例えば、マイコンであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及び、ROM(Read Only Memory)を含む。ROMには、制御部31で行われる判別処理や演算処理をソフトウェア的に実行させるためのプログラムが記憶されている。放射線の計測時には、CPUによりこのプログラムが読み出されてRAMに展開され、実行される。出力値への換算に必要なパラメータ、即ち、観測機器の検出効率といった値、又は、検出効率を含む換算式は、予めRAMに記憶されている。
【0026】
制御部31は、図示略の表示部(例えば、LCD(液晶ディスプレイ))に駆動制御信号を送ることで算出した出力値を表示させたり、通信インターフェイスを介して外部機器に出力値を送信したり、履歴データとしてRAMに出力値を順次記憶させたりすることが可能となっている。
【0027】
次に、本実施形態の放射線測定装置1の動作について説明する。
本実施形態の放射線測定装置1では、図1、2に示したように、半導体センサー11〜14が並列に設けられている。そして、検出弁別部26〜29から出力された検出信号が各々独立に制御部31へと入力される。
【0028】
図3A図3Cは、放射線の測定動作の際に制御部31のCPUによって実行される各処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0029】
放射線の測定に係る処理は、例えば、放射線測定装置1の電源がオンされることで自動的に開始される。このとき、制御部31のCPUは、図3Aに示すように、初期設定処理を実行する。初期設定処理が開始されると、CPUは、カウンタ値を「0」に設定してRAMに記憶させる(ステップS101)。また、CPUは、出力値への換算及び出力値の出力間隔を設定し、当該間隔ごとに演算処理のための割込信号を発生させるタイマーを動作させる(ステップS102)。そして、初期設定処理を終了する。
【0030】
次に、検出弁別部26〜29から制御部31に入力される信号のうち何れかが検出を示す信号に変化すると、制御部31のCPUは、当該変化の検出をトリガーとして割込処理を開始する。この割込処理では、CPUは、図3Bに示す判別計数処理を実行する。CPUは、先ず、その検出信号を出力した検出弁別部以外の他の3つの検出弁別部からも検出信号が入力されているか否かを判別する(ステップS111)。具体的には、本実施形態の放射線測定装置1では、CPUは、検出弁別部26〜29からの入力信号の値を合算し、合計値が検出弁別部26〜29の数(即ち、4)と等しいか否かを判別する。合計値が検出弁別部の数と等しいと判別された場合には、全ての検出弁別部26〜29から検出信号が入力されていることになるので、CPUは、この検出信号をノイズによるものと判断して放棄し、そのまま割込処理を終了する。一方、検出弁別部の少なくとも一つから検出信号が入力されていないと判別された場合には、CPUは、この検出信号が正しく放射線を検出したものであると判断して、RAMに記憶させているカウンタ値に1を加算する(ステップS112)。或いは、このステップS112の処理では、カウンタ値に上記の合計値を加算することとしても良い。そして、割込処理を終了する。
【0031】
また、制御部31のCPUは、タイマー動作により演算処理に係る割込信号が入力されると、図3Cに示すように、RAMに記憶させたカウンタ値を取得する(ステップS121)。それから、CPUは、このカウンタ値を出力値に換算する(ステップS122)。CPUは、算出された出力値を表示部に表示させたり外部に送信したりする出力処理を行う(ステップS123)。その後、CPUは、RAMに記憶させたカウンタ値、及び、タイマー動作をリセットする(ステップS124)。そして、CPUは、割込処理を終了する。
【0032】
なお、この放射線測定装置1では、値の出力間隔をカウンタ値の取得間隔より短く設定することができる。例えば、60秒の取得間隔に対し、出力間隔が10秒の場合には、10秒毎のカウンタ値を直近の6個RAMに記憶させ、当該6個の合計カウンタ値に基づいて出力値への換算を行うことが可能である。このとき、不要になった最も古いカウント値データを次のカウント値で上書き更新することで、RAMに不要なデータを記憶させることなく継続的な動作が可能となる。
【0033】
以上のように、本実施形態の放射線測定装置1は、複数個の半導体センサー11〜14と、制御部31と、を備え、制御部31は、半導体センサー11〜14の検出弁別部26〜29からそれぞれ出力される所定の検出信号を取得する。制御部31は、検出弁別部26〜29のうち一つから検出信号が入力されると、他の検出弁別部からの検出信号の入力の有無を判別し、検出弁別部26〜29の全てから同時に検出信号が入力されたと判別された場合には、当該検出信号をノイズと判断して放棄し、検出弁別部26〜29の少なくとも一つから検出信号が同時に入力されていない場合には正当な検出信号であると判断して検出数に加算する。このような構成を備えることで、放射線測定装置1は、検出電圧を下げずに放射線検出部の検出感度を上昇させることが出来る。一方で、制御部31は、検出弁別部26〜29の何れかから入力された二値データに基づき、複数の検出弁別部26〜29からの入力信号の同時性を判断することで簡便にノイズ判定を行う。従って、制御部31では、容易に更なるノイズ除去を行って検出精度を向上させることが出来る。
【0034】
また、この放射線測定装置1では、検出信号を割込信号として取得するので、常に入力データをサンプリングする必要が無く、制御部31のCPUに対し、定常的に大きな負荷をかけない。
【0035】
また、本実施形態の放射線測定装置1において、半導体センサー11〜14は、単純にディスクリミネータやコンパレータなどを用いて閾値以上の電圧波形を検知して検出信号を生成し、各々制御部31に出力すればよいだけの構成であるので、製造時の手間が簡略化される。また、放射線検出部21〜24や検出弁別部26〜29の動作をクロック同期させたり、高周波数でデータサンプリングを行ったりする処理が必要なく、容易にノイズ判定や放射線の検出を行うことが出来る。即ち、この放射線測定装置1は、廉価なマイコンで制御が可能となる。従って、放射線測定装置1の製造コストを低減させることが出来る。
【0036】
また、この放射線測定装置1では、容易に並列配置される半導体センサー11〜14の数を増減させることが出来るので、必要な感度や放射線測定装置1のサイズなどに基づいて容易に変更することが出来る。また、入力エラーの判別も容易であるので、エラー表示を容易に行うことが出来る。
【0037】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、検出弁別部26〜29からの検出信号が全て同一に入力されているか否かについて、制御部31においてソフトウェア的に判別処理を行ったが、例えば、論理積回路を設ける事で容易に判別処理を行う構成を備えることとしても良い。
【0038】
また、放射線検出部21〜24の具体的な構成は、上記実施の形態で示したものに限られない。例えば、フォトダイオードの代わりにフォトトランジスタを用いても良いし、チャージアンプとして他の形態を用いても良い。また、検出弁別部26〜29の出力は、アクティブローであっても良い。また、放射線検出部の数は、4に限られず、感度や回路規模に応じて2以上の適宜な値に設定される。
【0039】
また、上記実施形態では、全ての検出弁別部26〜29からの検出信号の同時性についてのみノイズの判断基準として示したが、所定の時間内に通常の測定範囲のカウンタ値と比較して非常に多いカウンタ値が得られた場合にもノイズであると判断しても良い。その他、サイズを大型化させず、且つ、回路構成を複雑にしない他の周知のノイズフィルタリング技術、特に、ソフトウェア的に実施可能なものを併用することとしても良い。また、ノイズ判定が連続するような場合には、エラー信号を出力したり、表示部にエラー表示をさせたりすることとしても良い。
その他、上記実施の形態で示した具体的な数値や細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【産業上利用可能な分野】
【0040】
本発明は、放射線の検出、及び、測定を行う装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 放射線測定装置
11〜14 半導体センサー
21〜24 放射線検出部
26〜29 検出弁別部
31 制御部
C21、C31、C41、C51 キャパシタ
D1 フォトダイオード
OA11、OA21 チャージアンプ部
OP21、OP41 オペアンプ
R11、R21、R31、R41、R51 抵抗
図1
図2
図3A
図3B
図3C