(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760127
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】電子装置のハウジング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20150716BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
H05K5/02 J
G06F1/16 312G
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-146585(P2014-146585)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-23290(P2015-23290A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2014年9月24日
(31)【優先権主張番号】201310304790.8
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505292889
【氏名又は名称】富準精密工業(深▲セン▼)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】501346906
【氏名又は名称】鴻準精密工業股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】王 才華
(72)【発明者】
【氏名】李 越建
(72)【発明者】
【氏名】林 振伸
(72)【発明者】
【氏名】張 文雄
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲チュン▼栄
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3105625(JP,U)
【文献】
特開平6−80152(JP,A)
【文献】
特開2001−298277(JP,A)
【文献】
特開2000−286565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
G06F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の外フレーム及び前記外フレームに収容されている固定部材を備え、前記外フレームは、内表面を備え、前記固定部材は、前記内表面と接触する外周壁を備える電子装置ハウジングにおいて、
前記外フレームの内表面は、一定の間隙をあけて設置された複数の係合部及び隣り合う2つの前記係合部の間に形成された係合溝を備え、各係合部は、互いに平行であり、且つ一定の間隙をあけて設置された突起及び2つの前記突起の間に形成された収容溝を備え、前記固定部材は、合金材料によって製造され、ダイカスト成型方法によって、前記外フレームの内表面に嵌入され、前記固定部材の前記外周壁と前記外フレームとが接続する箇所には、前記収容溝と協働する係合部及び前記係合溝と協働するロック部を備えることを特徴とする電子装置ハウジング。
【請求項2】
互いに平行に設置された少なくとも2つの突起の延在方向は、前記外フレームの延在方向と同じであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置ハウジング。
【請求項3】
前記収容溝における前記外フレームの延在方向と垂直な方向に沿う断面は、矩形或いは階段形であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置ハウジング。
【請求項4】
前記突起の両端には、斜面が設けられ、隣り合う2つの前記係合部の斜面の間には、ダブテール形の凹溝が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電子装置ハウジング。
【請求項5】
金属製の外フレーム及び前記外フレームに収容されている固定部材を備え、前記外フレームは、内表面を備え、前記固定部材は、前記内表面と接触する外周壁を備える電子装置ハウジングにおいて、
前記外フレームの内表面には、複数の収容溝が設けられ、前記固定部材は、合金材料によって製造され、ダイカスト成型方法によって、前記外フレームの内表面に嵌入され、前記固定部材の前記外周壁と前記外フレームとが接続する箇所には、前記収容溝と協働する係合部が設けられていることを特徴とする電子装置ハウジング。
【請求項6】
電子装置ハウジングを製造する方法において、
ダイカスト金型を準備するステップであって、前記ダイカスト金型は、互いに協働する雄型及び雌型を備え、前記雄型には、注入口を設け、前記雌型には、注入口と連通するキャビティを設ける、ステップと、
金属製の外フレームを前記雌型のキャビティ内に固定するステップであって、前記外フレームの内表面に、一定の間隙をあけて複数の係合部を設置し、且つ各隣接する2つの係合部の間に係合溝を形成し、各係合部は、互いに平行であり、一定の間隙をあけて設置された2つの突起及び前記2つの突起の間に形成された収容溝を備える、ステップと、
前記雄型と前記雌型とを型閉じして、前記キャビティが被覆され、且つ前記注入口と前記キャビティとを連通させるステップと、
溶融状態のマグネシウム合金材料を前記注入口から前記キャビティ内に注入し、前記マグネシウム合金材料を前記外フレーム内にインサート成形することによって、1つの固定部材を形成するステップであって、前記固定部材には、前記外フレームの複数の収容溝及び複数の係合溝にそれぞれ対応し、且つ一定の間隙をあけて形成された複数のロック突起及び複数のロック部を形成する、ステップと、
前記雄型と前記雌型とを型開きするステップと、
成型した後、前記外フレーム及び前記固定部材を前記雌型から取り出すステップと、を備えることを特徴とする電子装置ハウジングの製造方法。
【請求項7】
前記電子装置ハウジングの製造方法において、前記外フレームを前記雌型内に固定するステップの前に、前記ダイカスト金型を加熱するステップを備えることを特徴とする請求項6に記載の電子装置ハウジングの製造方法。
【請求項8】
前記電子装置ハウジングの製造方法は、前記電子装置ハウジングを前記雌型から取り出した後、前記電子装置ハウジングに対して、表面処理を行うステップを備えることを特徴とする請求項6または7に記載の電子装置ハウジングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置のハウジング及びその製造方法に関し、特に電子装置の金属製ハウジング及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム、アルミニウム、亜鉛合金の材質は、軽くて、展延性に優れている。また、容易に加工成型でき、且つ一定の構造的強度を有するため、電子装置のハウジングの製造において理想的な材料である。電子装置のハウジングは、通常は、ダイカスト成型方法によって製造されるが、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の材料から製造されたハウジングの外観はその特性の制限により審美性に欠けるので、外表面に金属層を形成して、金属感をもたせる。しかし、これにより、ハウジングの製造過程において、外表面に金属層を形成する工程が増えるので、生産コストも増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の問題点に鑑みて、本発明は、外表面に金属層を形成せずとも、優れた金属感を有し、且つ製造工程が簡単である電子装置ハウジング及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明の電子装置ハウジングは、金属製の外フレーム及び前記外フレームに収容されている固定部材を備える。前記外フレームは、内表面を備え、前記固定部材は、前記内表面と接触する外周壁を備え、前記外フレームの内表面は、一定の間隙をあけて設置された複数の係合部及び隣り合う2つの前記係合部の間に形成された係合溝を備え、各係合部は、互いに平行であり、且つ一定の間隙をあけて設置された突起及び2つの前記突起の間に形成された収容溝を備え、前記固定部材は、合金材料によって製造され、ダイカスト成型方法によって、前記外フレームの内表面に嵌入され、前記固定部材の前記外周壁と前記外フレームとが接続する箇所には、前記収容溝と協働する係合部及び前記係合溝と協働するロック部を備える。
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の電子装置ハウジングは、金属製の外フレーム及び前記外フレームに収容されている固定部材を備え、前記外フレームは、内表面を備え、前記固定部材は、前記内表面と接触する外周壁を備え、前記外フレームの内表面には、複数の係合部が設けられ、前記固定部材は、合金材料によって製造され、ダイカスト成型方法によって、前記外フレームの内表面に嵌入され、前記固定部材の前記外周壁と前記外フレームとが接続する箇所には、前記収容溝と協働する係合部が設けられている。
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の電子装置ハウジングを製造する方法は、ダイカスト金型を準備するステップであって、前記ダイカスト金型は、互いに協働する雄型及び雌型を備え、前記雄型に注入口を設け、前記雌型に注入口と連通するキャビティを設ける、ステップと、金属製の外フレームを前記雌型のキャビティ内に固定し、前記キャビティの内表面に、一定の間隙をあけて複数の係合部を設置するステップであって、各隣接する2つの係合部の間に係合溝を形成し、各係合部は、互いに平行であり、一定の間隙をあけて設置された2つの突起及び前記2つの突起の間に形成された収容溝を備える、ステップと、前記雄型と前記雌型とを型閉じして、前記キャビティが被覆され、且つ前記注入口とキャビティとを連通させるステップと、溶融状態のマグネシウム合金材料を前記注入口から前記キャビティ内に注入し、前記マグネシウム合金材料を前記外フレーム内にインサート成形することによって、1つの固定部材を形成するステップであって、前記固定部材に、前記外フレームの複数の収容溝及び複数の係合溝にそれぞれ対応し、且つ一定の間隙をあけて形成された複数のロック突起及び複数のロック部を形成する、ステップと、前記雄型と前記雌型とを型開きするステップと、成型した後、前記外フレーム及び前記固定部材を前記雌型から取り出すステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子装置ハウジングは、インサート成形の技術を利用して、固定部材と外フレームとを一体化して金属製の外フレームを製造する。これにより、電子装置ハウジングは、金属層を形成せずとも優れた金属感を有し、製造工程を簡略化できる。また、外フレームの金属材料を変更することで、異なる金属感を有する外観を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る電子装置ハウジングの斜視図である。
【
図2】
図1に示した電子装置ハウジングの外フレームの斜視図である。
【
図3】
図1に示した電子装置ハウジングのIII−III線に沿う断面図である。
【
図4】
図1に示した電子装置ハウジングのIV−IV線に沿う断面図である。
【
図5】本発明に係る電子装置ハウジングの製造方法のフローチャートである。
【
図6】本発明に係る電子装置ハウジングの製造過程中において型閉じした際のダイカスト金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明に係る電子装置ハウジング及びその製造方法について詳細に説明する。
図1に示したように、電子装置ハウジング100は、外フレーム20及び固定部材40を備える。固定部材40は、外フレーム20内に収容され、且つ外フレーム20に固定されている。
【0010】
図2〜
図4を併せて参照すると、外フレーム20は矩形状を呈し、内表面22を備える。外フレーム20の内表面22は、一定の間隙をあけて設置された複数の係合部24及び隣り合う2つの係合部24の間に形成された係合溝26を備える。各係合部24は、互いに平行に位置し、且つ一定の間隙をあけて設置された突起242及び該2つの突起242との間に形成された収容溝245を備える。突起242は、外フレーム20の内表面22に突設されており、且つ外フレーム20の延在方向(長手方向)に平行に延在する。突起242の両端には、外フレーム20の内表面22に向けて傾斜した斜面2421が設けられている。収容溝245の切断面は、矩形を呈す。係合溝26は、隣り合う2つの係合部24の斜面2421の間に位置するダブテール形の凹溝である。外フレーム20の材質は、ステンレス鋼、アルミニウム及びチタン等の金属であり、鍛造或いはダイカスト成型方法によって製造される。本実施形態において、外フレーム20の材質はステンレス鋼であり、ダイカスト成型方法によって製造される。他の実施形態において、収容溝245の形状は、外フレーム20の下表面に向けて延在して形成されたL形の階段溝であってもよい。また、突起242の数量は、2つ以上であってもよい。
【0011】
固定部材40は外周壁42を備え、この外周壁42には、外部に向けて延在し、且つ一定の間隙をあけて、複数のロック突起43が形成されており、隣り合う2つのロック突起43の間には、ロック部45が形成されている。ロック突起43は、外周壁42の延在方向に平行に設置され、且つ対応する収容溝245内に収容されている。また、ロック突起43は、対応する2つの突起242と接触するため、固定部材40を外フレーム20に対して、Z軸方向に固定するとともに、外フレーム20の内表面22とも接触するため、固定部材40を外フレーム20に対してY軸方向に固定する。ロック部45はダブテール形を呈し、対応する係合溝26内に収容され、且つ両側の係合部24と接触して、固定部材40を外フレーム20に対してX軸方向に固定する。固定部材40の材質は、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛合金であり、鍛造或いはダイカスト成型方法によって製造される。本実施形態において、固定部材40は、内フレーム体であり、ダイカスト成型方法によって製造される。他の実施形態において、固定部材40は板体状を呈する。
【0012】
係合部24は、本実施形態の構造に限定されず、例えば、フック、突起等であってもよい。この際、固定部材40には、係合部24と協働する係合部材を形成する。つまり、ロック突起43の構造も、本実施形態のロック突起43の構造に限定されない。即ち、他の実施形態において、係合溝26及びロック部45は省略でき、係合部24と係合部材との組み合わせによって、固定部材40を外フレーム20の内側に嵌入する。
【0013】
図5及び
図6に示したように、電子装置ハウジング100の製造方法は、以下のステップ(S1〜S8)を備える。ステップS1において、ダイカスト金型10を準備し、ダイカスト金型10は、互いに協働する雄型12及び雌型14を備える。雄型12には、注入口126が設けられており、雌型14には、注入口126と連通するキャビティ142が設けられている。
【0014】
ステップS2において、ダイカスト金型10を加熱する。
【0015】
ステップS3において、金属製の外フレーム20を雌型14のキャビティ142内に固定する。この際、外フレーム20の内表面22には、一定の間隙をあけて複数の係合部24が形成されている。各隣接する2つの係合部24の間には、係合溝26が形成されている。各係合部24は、互いに平行に位置し、且つ一定の間隙をあけて設置された2つの突起242及び該2つの突起242の間に形成された収容溝245を備える。
【0016】
外フレーム20は、ダイカスト成型、押出し、鍛造等の様々な金属製造方法によって製造されるが、好ましくはダイカスト成型方法によって外フレーム20を製造する。また、係合部24及び係合溝26は、CNC加工を採用して製造される、或いは外フレーム20を製造する過程において、ダイカスト成型方法を採用して、直接的に製造することができる。係合部24及び係合溝26は、ダイカスト成型方法を採用して製造するのが好ましい。
【0017】
ステップS4において、雄型12と雌型14とを型閉じする。この際、キャビティ142は被覆され、且つ注入口126とキャビティ142とは連通する。
【0018】
ステップS5において、溶融状態のマグネシウム合金材料を注入口126からキャビティ142内に注入し、該マグネシウム合金材料をインサート成形することによって、外フレーム20内に1つの固定部材40を形成する。ここで、固定部材40に、外フレーム20の複数の収容溝245及び複数の係合溝26にそれぞれ対応し、且つ一定の間隙をあけて位置する複数のロック突起43及び複数のロック部45が形成される。他の実施形態において、溶融状態のアルミニウム合金或いは亜鉛合金をキャビティ142内に注入して、固定部材40を形成し、この際、溶融のアルミニウム合金或いは亜鉛合金は、収容溝245及び係合溝26にも流れ込んで、収容溝245と対応するロック突起43及び収容溝245と対応するロック部45を形成する。また他の実施形態において、溶融状態のアルミニウム合金或いは亜鉛合金をキャビティ142内に注入して、固定部材40をインサート成形によって、外フレーム20内に形成してもよい。
【0019】
ステップS6において、雄型12と雌型14とを型開きする。
【0020】
ステップS7において、成型した後、外フレーム20及び固定部材40を雌型14から取り出す。
【0021】
ステップS8において、成型した外フレーム20及び固定部材40に対して、表面処理を行う。本実施形態において、表面処理によって、固定部材40の表面に残っている余分な材料及びばりを取り除く。
【0022】
他の実施形態において、ステップS3に進む前に、外フレーム20に対して、面取りを行ってもよい。これにより、表面のばりを取り除くため、優れた金属感を有する外表面を得ることができる。
【0023】
本発明の電子装置ハウジング100は、インサート成形の技術を利用して、固定部材40と外フレーム20とを一体化して金属製の外フレーム20を製造する。これにより、電子装置ハウジング100は、金属層を形成せずとも優れた金属感を有し、製造工程を簡略化できる。また、外フレーム20の金属材料を変更することで、異なる金属感を有する外観を得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
100 電子装置ハウジング
10 ダイカスト金型
12 雄型
126 注入口
14 雌型
142 キャビティ
20 外フレーム
22 内表面
24 係合部
242 突起
2421 斜面
245 収容溝
26 係合溝
40 固定部材
42 外周壁
43 ロック突起
45 ロック部