(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来技術では、赤外線の遮断性能を高めるためにフィルム中に無機系粒子を分散させているが、無機系粒子を多量に配合すればするほど透明性が犠牲になるおそれがある。一方、所望の透明性を維持すべき無機系粒子の分散量を減らせば赤外線遮断性能を高めることが困難になる。このように、透明性と赤外線遮蔽性能とを両立させることが困難ないしは不可能とされている。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、良好な透明性を維持しつつ、赤外線の遮断効果にも優れたフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の材料を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の赤外線遮蔽性透明フィルムに係る。
1. 1層又は2層以上から構成されるフィルムであって、少なくとも1つの層中に赤外線遮蔽性粒子が含まれており、
前記粒子が、1)インジウム・スズ酸化物(ITO)及び有機成分を含み、かつ、2)前記有機成分の含有量が前記粒子中1
〜11重量%であり、3)平均粒子径が1〜100nmである、
ことを特徴とする赤外線遮蔽性透明フィルム。
2. 少なくとも1つの層中に有機系紫外線吸収剤及び無機系紫外線吸収剤の少なくとも1種がさらに含まれる、前記項1に記載の赤外線遮蔽性透明フィルム。
3. 赤外線カット率が75%以上である、前記項1又は2に記載の赤外線遮蔽性透明フィルム。
4. 可視光透過率が75%以上である、前記項1〜3のいずれかに記載の赤外線遮蔽性透明フィルム。
5. 離型シート、粘着層、透明性基材層、透明樹脂層及び透明ハードコート層を順に含む層構成を有する、前記項1〜4のいずれかに記載の赤外線遮蔽性透明フィルム。
6. 前記項1〜5のいずれかに記載の赤外線遮蔽性透明フィルムを製造する方法であって、
1)赤外線遮蔽性粒子、2)有機溶剤及び3)合成樹脂を含む塗工液を透明基材上に塗工することによって赤外線遮蔽層を形成する工程を含む、赤外線遮蔽性透明フィルムの製造方法。
7. 合成樹脂が親水性基を有する、前記項6に記載の製造方法。
8. 合成樹脂が有機溶剤可溶型樹脂であって、当該有機溶剤に溶解している、前記項6又は7に記載の製造方法。
9. 合成樹脂が水酸基価9以上の非晶質ポリエステル樹脂である、前記項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の赤外線遮蔽性フィルムでは、有機成分の含有量が所定の範囲内に制御されたITO系赤外線遮蔽性粒子を用いることにより、可視光透過率80%以上という実用性のある透明性を維持しつつ、高い赤外線(IR)カット性能を発揮することができる。
【0011】
また、いずれかの層に紫外線吸収剤を含有させることにより紫外線(UV)カット性能も付与することができる。この場合、紫外線吸収剤として有機系紫外線吸収剤を用いる場合には、本発明の赤外線遮蔽フィルムのもつ高い透明性を維持しながら、紫外線カット性能も得ることができる。
【0012】
このようなフィルムは、例えば建築用窓、自動車用窓、鉄道車両窓、航空機窓等の熱線遮蔽フィルムとして使用できるほか、例えば医療用、保存用等の透明ケース又はショーケースの保護フィルム等として幅広く使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.赤外線遮蔽性透明フィルム
本発明の赤外線遮蔽性透明フィルム(本発明フィルム)は、1層又は2層以上から構成されるフィルムであって、少なくとも1つの層中に赤外線遮蔽性粒子が含まれており、
前記粒子が、1)インジウム・スズ酸化物(ITO(スズドープ酸化インジウムともいう。))及び有機成分を含み、かつ、2)前記有機成分の含有量が前記粒子中1〜20重量%であり、3)平均粒子径が1〜100nmであることを特徴とする。
【0015】
本発明フィルムは、いずかの層中に所定の赤外線遮蔽性粒子が含まれていることを必須とするほかは、種々の層構成を採用することができる。例えば、
図1に示す赤外線遮蔽性透明フィルム1では、透明性基材層11のおもて面に透明樹脂層12及び透明ハードコート層13が順に積層され、透明性基材層11の裏面に粘着層(透明粘着層)15及び離型シート16が順に積層された層構成を有する。そして、透明樹脂層12中には赤外線遮蔽性粒子14が分散されている。赤外線遮蔽性透明フィルム1の使用時には、離型シート16を剥離し、粘着層15を窓等の被着体に貼着すれば良い。
図1に示すように、透明ハードコート層13は、最外層として配置されている。
【0016】
なお、
図1では、赤外線遮蔽性粒子は、透明樹脂層12に含まれており、これが赤外線遮蔽層となるが、例えば粘着層15に含まれていても良い。特に、
図1の層構成においては、赤外線遮蔽性粒子を層中に配合しやすい等の見地より、透明樹脂層及び粘着層の少なくとも一方に赤外線遮蔽性粒子が含まれていることが望ましい。以下、
図1に示す層構成を代表例として本発明フィルムを説明する。
【0017】
(1)透明樹脂層
透明樹脂層には、少なくとも赤外線遮蔽性粒子が合成樹脂中に分散している。すなわち、
図1における透明樹脂層12は、合成樹脂及びその中に分散されている赤外線遮蔽性粒子14を含むものである。
図1の赤外線遮蔽性透明フィルム1の透明樹脂層12は、合成樹脂中に赤外線遮蔽性粒子が分散した赤外線遮蔽層となる。
【0018】
合成樹脂
合成樹脂としては透明性のものであれば限定されず、公知又は市販の合成樹脂を使用することができる。例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。特に、透明樹脂層を湿式コーティング法により形成する場合は、前記合成樹脂は有機溶剤可溶型樹脂であることが望ましい。このような有機溶剤可溶型樹脂を溶剤に溶解させて得られる樹脂溶液に赤外線遮蔽性粒子を分散させ、これによる塗膜を形成することによって、透明樹脂層(赤外線遮蔽層)を好適に形成することができる。
【0019】
赤外線遮蔽性粒子
赤外線遮蔽性粒子(本発明粒子)は、1)インジウム・スズ酸化物(ITO)及び有機成分を含み、かつ、2)前記有機成分の含有量が前記粒子中1〜20重量%であり、3)平均粒子径が1〜100nmである。
【0020】
本発明において、有機成分は、本発明粒子の分散安定性を維持できるものであれば特に限定されない。特に、金属有機化合物に由来する有機成分が好ましい。すなわち、後記の製造方法に示すように、金属有機化合物を所定の条件下で加熱された場合に残存する有機成分が好適である。
【0021】
上記のような金属有機化合物としては、有機金属化合物のほか、金属アルコキシド等も包含する。金属有機化合物としては、特に制限されず、またいずれの市販品も使用できる。例えば、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、ステアリン酸塩、一般式C
6H
5(CH
2)
nCOOH(nは0〜5の整数が好ましい。)で示されるカルボン酸類(例えば、安息香酸等)の塩、パラトルイル酸塩、n−デカン酸塩等の脂肪酸金属塩、イソプロポキシド、エトキシド等の金属アルコキシド、上記金属のアセチルアセトン錯塩等が挙げられる。これらの中でも、特にオレイン酸塩、パラトルイル酸塩、ステアリン酸塩、n−デカン酸塩、金属エトキシド、金属アセチルアセトネート等が好ましい。
【0022】
これらの中でも、脂肪酸塩(脂肪酸の金属塩)が好ましい。特に、飽和脂肪酸の金属塩が望ましい。飽和脂肪酸としては、例えば下記一般式(1)で示されるような脂肪酸が好適である。
C
nH
2n+1COOH(ただし、nは5〜30の整数を示す。)・・・(1)
ただし、上記n(脂肪酸の炭素数)は限定的ではないが、通常5〜30程度、特に5〜20、さらに6〜18であることが好ましい。
【0023】
金属有機化合物に含有される金属はIn及びSnである。この場合、1つの金属有機化合物にIn及びSnを含む化合物を1種又は2種以上使用しても良いし、Inの金属有機化合物の少なくとも1種とSnの金属有機化合物の少なくとも1種とを併用しても良い。
【0024】
本発明粒子における有機成分の含有量は、通常は1〜20重量%の範囲内で設定できるが、1〜10重量%とすることが好ましく、特に1〜8重量%とすることがより好ましく、さらには5〜8重量%とすることが最も好ましい。有機成分の含有量が20重量%を超える場合は、可視光透過率が大幅に低下する。他方、有機成分の含有量が1重量%未満となる場合は、本発明粒子の分散性が低下する結果、凝集粒子の生成等により良好な可視光透過率が得られなくなる結果、本発明フィルムに濁り又は曇りをもたらすことになる。
【0025】
本発明粒子の平均粒径は、通常1〜100nm程度であるが、最終製品の用途等により変更することが可能である。例えば、金属コーティング用に用いる場合は通常1〜50nm程度、好ましくは1〜10nmとすれば良い。
【0026】
上記のような本発明粒子は、公知又は市販のものを使用することができる。市販品としては、例えば製品名「ITO−TF5001」、「ITO−TF5002」、「ITO−TF5003」、「ITO−TF5004」、「ITO−TF5005」、「ITO−TF5006」、「ITO−TF5007」(いずれも株式会社巴製作所製)等を好適に用いることができる。
【0027】
また、本発明粒子として、公知の製造方法に従って調製することができる。例えば特開2004−59407号に開示された方法により製造することができる。従って、例えば金属成分としてIn及び/又はSnを含む金属有機化合物を、酸化性雰囲気下において、その金属有機化合物の分解開始温度以上、かつ、完全分解温度未満の温度範囲内で加熱することによって製造することができる。
【0028】
赤外線遮蔽性粒子の分散量は、所望の赤外線遮蔽性能等に応じて適宜設定することができるが、通常は1〜10g/m
2とし、特に2〜5g/m
2とすることが望ましい。かかる範囲内に設定することによって、よりいっそう優れた赤外線遮蔽性能と良好な透明性を得ることができる。
【0029】
その他の成分
本発明フィルムの透明樹脂層中(又は粘着層を有する場合は粘着層中)には、赤外線遮断性粒子のほか、本発明の効果を妨げない範囲内において、他の成分が含まれていても良い。例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、滑剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0030】
特に、本発明では、紫外線吸収剤を使用することが好ましい。紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系紫外線吸収剤、あるいは例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の有機系紫外線吸収剤の少なくとも一方を含有させることができる。本発明では、より高い透明性を確保できるという点で有機系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。なお、紫外線吸収剤を使用する場合の使用量は限定的ではないが、高い紫外線吸収性能と良好な透明性が得られるという見地より、特に1〜5g/m
2とすること望ましい。従って、例えば1〜3g/m
2とすることもできる。
【0031】
(2)離型シート
離型シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の公知又は市販の離型シートを用いることができる。離型シートの厚みは限定的ではないが、通常5〜50μm程度とすることが好ましい。
【0032】
(3)粘着層
粘着層としては、所望の透明性を維持できるものであれば限定されず、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、スチレン系粘着剤等によって形成することができる。例えば、
図1に示すような層構成であれば、離型シート16の離型面に前記粘着剤を塗布することによって粘着層15を形成することができる。粘着層の厚みは限定されないが、通常5〜50μm程度とすることが好ましい。
【0033】
(4)透明性基材層
透明性基材層としては、例えばポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ABS樹脂等のシート又はフィルムを用いることができる。透明性基材層の厚みは限定されないが、一般には5〜50μm程度とすることが好ましい。
【0034】
(5)透明ハードコート層
透明ハードコート層としては、例えばシリコン系、アクリル系、アクリルシリコン系、ウレタン系等の公知又は市販のハードコート剤等からなる層が挙げられる。例えば、これらの樹脂(特に有機溶剤可溶型樹脂)を有機溶剤に溶解して得られる溶液を塗工することによって透明ハードコート層を形成することができる。透明ハードコート層の厚みは限定されないが、一般には2〜20μm程度とすることが好ましい。
【0035】
(6)その他の層
本発明フィルムでは、上記(1)〜(5)の各層のほか、公知又は市販の赤外線遮断フィルムで採用されている各層を含んでいても良い。例えば、接着剤層、金属層(Al層、Ag層等)、金属酸化物層(ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)層、ZnO層等)等を積層させても良い。これらの層の積層方法は、例えば湿式コーティング法、蒸着法、スパッタリング法等の公知の方法に従って実施することができる。
【0036】
2.赤外線遮蔽性透明フィルムの製造方法
本発明フィルムは、前記1.で示した各層を公知の方法で形成することによって製造することができる。すなわち、公知のラミネート方法、印刷方法等を採用することによって製造することができる。
【0037】
特に、本発明では、1)赤外線遮蔽性粒子、2)有機溶剤及び3)合成樹脂を含む分散液を透明基材上に塗工することによって赤外線遮蔽層を形成する工程を含む、赤外線遮蔽性透明フィルムの製造方法によって好適に製造することができる。
【0038】
上記分散液について、赤外線遮蔽性粒子は前記1.で述べたものを使用し、有機溶剤及び合成樹脂は公知又は市販のものを使用することができる。
【0039】
特に、上記分散液は、合成樹脂が有機溶剤に溶解してなる溶液中に赤外線遮蔽性粒子が分散したものであることが好ましい。すなわち、前記合成樹脂としては、有機溶剤可溶型樹脂を使用することが望ましい。
【0040】
例えば、前記の透明樹脂層を形成する場合は、水酸基価9以上の非晶質ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。これにより、分散液中に赤外線遮蔽性粒子が沈降することなく高い分散状態を保つことができる。このような合成樹脂自体は公知又は市販のものを使用することができる。市販品としては、例えば有機溶剤可溶型非晶質ポリエステル樹脂である製品名「バイロン240」(いずれも東洋紡績株式会社製)等を好適に用いることができる。
【0041】
また例えば、前記の粘着層を形成する場合(すなわち、赤外線遮蔽性と粘着性とを兼ね備えた層を形成する場合)は、酸変性された粘着成分を含む粘着剤を好適に使用することができる。これにより、分散液中に赤外線遮蔽性粒子が沈降することなく高い分散状態を保つことができる。このような粘着剤(粘着成分)は公知又は市販のものを使用することができる。市販品としては、例えば水添スチレン系熱可塑性エラストマーである製品名「タフテックM1913」、「タフテックM1943」(いずれも旭化成ケミカルズ株式会社製)等を好適に用いることができる。
【0042】
分散液における赤外線遮蔽性粒子の含有量(固形分割合)は、所望の赤外線遮蔽効果等に応じて適宜設定することができるが、通常は分散液の固形分中10〜30重量%となるように調節すれば良い。また、合成樹脂の含有量も、用いる合成樹脂の種類等により異なるが、一般的には分散液の固形分中60〜85重量%となるように調節すれば良い。
【0043】
また、必要に応じて、上記の分散液中には、本発明の効果を妨げない範囲内で他の添加剤が含まれていても良い。例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、レベリング剤等を配合することができる。紫外線吸収剤を使用する場合は、より高い透明性を維持できるという見地より、有機系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0044】
分散液を塗工する方法は特に限定されず、公知の方法に従って実施することができる。特に、印刷方法によって塗工することが好ましい。本発明では、例えばグラビア印刷等を好適に採用することができる。
【0045】
分散液を塗工した後は、必要に応じて乾燥工程を実施した後、透明基材上に赤外線遮蔽層が積層された積層体を得ることができる。乾燥工程は、自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであっても良い。その後は、必要に応じて、前記積層体に他の層を積層したり、あるいは加工を行うことによって、最終的に本発明の赤外線遮蔽性透明フィルムを得ることができる。これらの積層、加工等は公知の方法に従って実施すれば良い。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0047】
実施例1
離型シート/粘着層/透明性基材層/透明樹脂層/透明ハードコート層からなる赤外線遮蔽性フィルムを製造した。
【0048】
赤外線遮蔽性粒子として、製品名「ITO−TF5003」(株式会社巴製作所製、平均粒子径20nm、有機成分含有量10重量%)を用いた。この赤外線遮蔽性粒子を固形分量が20重量%となるようにトルエンに分散した。これに市販のヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤を添加し、溶解させることによって混合溶液を調製した。他方、市販のポリエステル系樹脂(製品名「バイロン240」東洋紡績株式会社製)をその固形分量が50重量%となるようにトルエンに添加し、溶解させることにより樹脂溶液を調製した。その後、前記混合溶液と樹脂溶液とを混合・攪拌することにより分散液を得た。塗工に先立って、上記分散液にウレタン系硬化剤(製品名「コロネートHL」日本ポリウレタン製)を添加し、次いでろ過(80メッシュ)した後、コンマコートによりPET製透明性基材の片面に塗工・乾燥することによって乾燥後膜厚10μmの透明樹脂層(赤外線遮蔽層)を形成した。この透明樹脂層の上に、市販のアクリル系ハードコート主剤(シリカ粒子4重量%含有)及び硬化剤を重量比100:4の割合で混合した混合液をマイクログラビアにより塗工し、乾燥後膜厚5μmの透明ハードコート層を形成した。
【0049】
一方、PET製離型シートが前記基材シートと接触する面に市販の粘着剤をコンマコートにより塗工することによって乾燥後膜厚が10μmの粘着層をPET製離型シート上に形成した後、その粘着層をPET製透明性基材と貼り合わせた。このようにして本発明の赤外線遮蔽性フィルムが得られた。得られた赤外線遮蔽性フィルムにおける各成分の含有量(固形分量)は、表1に示す通りである。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例2
離型シート/粘着層/透明性基材層/透明樹脂層/透明ハードコート層からなる赤外線遮蔽性フィルムを製造した。
【0052】
市販のヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤をトルエンに添加し、溶解させることによって混合溶液(全固形分量30重量%)を調製した。他方、市販のポリエステル系樹脂(製品名「バイロン240」東洋紡製)をその固形分量が50重量%となるようにトルエンに添加し、溶解させることにより樹脂溶液を調製した。その後、前記混合溶液と樹脂溶液とを混合・攪拌することにより分散液を得た。塗工に先立って、上記分散液にウレタン系硬化剤(製品名「コロネートHL」日本ポリウレタン製)を添加し、次いでろ過(80メッシュ)した後、コンマコートによりPET製透明性基材の片面に塗工・乾燥することによって乾燥後膜厚10μmの透明樹脂層を形成した。この透明樹脂層の上に、さらに市販のアクリル系ハードコート主剤(シリカ粒子4重量%含有)及び硬化剤を重量比100:4の割合で混合した混合液をマイクログラビアにより塗工し、乾燥後膜厚5μmの透明ハードコート層を形成した。
【0053】
一方、2種の粘着剤(製品名「タフテックM1913」旭化成ケミカルズ製、製品名「アルコンP100」荒川化学製)を固形分重量比で6:4の割合で混合した後、全固形分が25重量%となるようにトルエンを添加し、粘着剤溶液を調製した。実施例1と同様の赤外線遮蔽性粒子をその固形分量が20重量%となるようにトルエンに分散させることにより分散液を調製し、これを前記の粘着剤溶液に添加、混合することにより混合液を得た。この混合液をコンマコートで塗工することによって乾燥後膜厚が10μmの赤外線遮蔽性粒子含有粘着層(赤外線遮蔽層)をPET製離型シート上に形成した後、前記粘着層をPET製透明性基材と貼り合わせた。このようにして本発明の赤外線遮蔽性フィルムが得られた。得られた赤外線遮蔽性フィルムにおける各成分の含有量(固形分量)は、表2に示す通りである。
【0054】
【表2】
【0055】
比較例1
有機成分含有量12重量%である赤外線遮蔽性粒子(製品名「ITO−TF5007」株式会社巴製作所製)を用いたほかは、実施例1と同様にして赤外線遮蔽性フィルムを製造した。
【0056】
試験例1
実施例1〜2及び比較例1のフィルムについて、紫外線(UV)カット率、可視光透過率、赤外線(IR)カット率及びヘイズ値を測定した。その結果を表3に示す。また、実施例1及び2のフィルムの透過率を測定した結果を
図3に示す。なお、各物性の測定方法は次のようにして実施した。
【0057】
(1)UVカット率
分光光度計(「UV−3100PC」株式会社島津製作所製)を用いて波長300nm〜380nmの分光透過率を測定し、紫外線の相対分光分布と波長間隔から得られる重価係数を乗じて加重平均することで紫外線透過率が導かれ、これにより紫外線カット率を求める。
【0058】
(2)可視光透過率
分光光度計(「UV−3100PC」株式会社島津製作所製)を用いて波長380nm〜780nmの分光透過率を測定し、CIE昼光D
65の分光分布とCIE明順応標準比視感度の波長分布、及び波長間隔から得られる重価係数を乗じて加重平均することで、可視光透過率を求める。
【0059】
(3)IRカット率
分光光度計(「UV−3100PC」株式会社島津製作所製)を用いて波長780nm〜2500nmの分光透過率を測定し、これにより赤外線カット率を求める。
【0060】
(4)ヘイズ値
ヘイズメーター(「NDH−2000」日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0061】
【表3】
【0062】
表3の結果からも明らかなように、有機成分の含有量が12重量%という比較的高い値を有する赤外線遮蔽性粒子を用いた比較例1のフィルムは、可視光透過率が46%と低く、しかもヘイズ値が41%と曇りの大きなフィルムになっていることがわかる。これに対し、実施例1〜2のフィルムは、有機成分の含有量が所定の範囲内に制御された赤外線遮蔽性粒子を用いることにより、高いIRカット値を有するとともに可視光透過率80%以上という実用性に優れた透明性を有することがわかる。このように、本発明では、有機成分含有量が11重量%以下、特に10重量%以下の赤外線遮蔽性粒子を用いることにより、優れた性能が得られることがわかる。