(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760213
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】外張断熱工法による家屋の壁構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/80 20060101AFI20150716BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
E04B1/80 100B
E04B2/56 622C
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-137150(P2013-137150)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-10399(P2015-10399A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2014年10月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510114055
【氏名又は名称】エコホームパネル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075476
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐見 忠男
(72)【発明者】
【氏名】林 司郎
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−317532(JP,A)
【文献】
実公昭37−028946(JP,Y1)
【文献】
特許第4182558(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/80
E04B1/76
E04C2/30
E04B2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐力面材の外面に断熱材を接合してなる複数の壁パネルを柱又は梁に釘で固定することで耐力壁として構成される外張断熱工法による家屋の壁構造であって、 左右方向で他の壁パネルが隣接する壁パネルについては、隣接する壁パネル同士の間において、上記断熱材による断熱層を連続させるために該断熱材同士は隙間なく突き合わせつつも、耐力壁としての性能を保つために上記耐力面材同士の間は隙間を設けるべく、左右方向で上記断熱材の長さに比べ、上記耐力面材の長さが短く設定されて段差部が形成されていることを特徴とする外張断熱工法による家屋の壁構造。
【請求項2】
上記壁パネルは家屋の外側から上記断熱材を介して上記釘を打ち込むことで上記耐力面材を上記柱又は上記梁に固定して使用されるものであり、 上記釘には、上記家屋の柱又は梁へ打ち込まれたことを上記断熱材の外側から確認するために二重頭釘が使用される請求項1に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造。
【請求項3】
上記壁パネルには、上記釘の打ち込み位置を指示するべく、上記家屋の柱及び間柱のうち少なくとも一方と対応する位置に釘打指示手段が設けられている請求項1又は請求項2に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造。
【請求項4】
上記壁パネルには、家屋における該壁パネルの配設位置を示す配置指示手段が設けられている請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造。
【請求項5】
上記壁パネルは、上記家屋の設計データに基づいたCAD/CAM−システムを使用し、家屋上における配設位置を定めたうえで製造されたものである請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造の施工方法であって、 一の壁パネルを定められた配設位置に配した後、左右方向で該一の壁パネルの断熱材に他の壁パネルの断熱材を接触させて、壁パネルの左右方向における位置合わせを行うことを特徴とする外張断熱工法による家屋の壁構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外張り断熱工法による家屋の壁を構成する壁構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋等といった木造の建築物では、保温効果の向上を図るために断熱材を用いて断熱性を付与している。近年の建築物では、該断熱材で略隙間なく外側を覆うことができるので断熱効果が高い、木軸組みの内側で結露が発生しないので耐久性が高い等の利点から、外張断熱工法が多く採用される。 通常の外張断熱工法による木造の建築物の壁構造は、屋外側から柱あるいは間柱の間に耐力面材を配し、該耐力面材を柱や間柱に釘で打ち付けた後、該耐力面材の外側に断熱材を貼り付けて構成される。つまり、通常の外張断熱工法による木造建築物の壁構造では、耐力面材を取り付ける作業と、断熱材を取り付ける作業の2つの作業を要し、これが施工作業を煩雑化している。 そこで、特許文献1から特許文献3には、施工作業の簡易化を図るべく、耐力面材と断熱材を一体化した壁パネルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−52362号公報
【特許文献2】特開2004−285781号公報
【特許文献3】特開2005−248567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の耐力面材と断熱材を一体化した壁パネルによって構成される耐力壁は、地震による揺れ等のような建築物に働く力に対してその性能を十分に発揮できない可能性があるという問題があった。 すなわち、上記従来の壁パネルは、施工後に上記耐力面材同士が隙間なく接触した状態となる。この耐力面材は、柱や梁等による木軸組みに釘打ちされて該木軸組みを固定することで、地震や風等による横方向からの力に耐えるための耐力壁を作る。但し、建築物に働く力の全てを該耐力壁で受けるような構成にしてしまうと、却って建築物の剛性が損なわれてしまうので、該耐力壁へ働く力をある程度逃がすことが出来る構成とすることが望ましい。そして、上記従来の壁パネルのように、耐力面材同士を隙間なく接触させてしまうと、該耐力壁へ働く力を逃がすことが困難になり、該耐力壁がその性能を十分に発揮することができなくなってしまう。 本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、簡易に施工することができるとともに、断熱性能を保持しつつ、耐力壁としての性能を好適に発揮することができる外張断熱工法による家屋の壁構造及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造の発明は、耐力面材の外面に断熱材を接合してなる複数の壁パネルを柱又は梁に釘で固定することで耐力壁として構成される外張断熱工法による家屋の壁構造であって、左右方向で他の壁パネルが隣接する壁パネルについては、隣接する壁パネル同士の間において、上記断熱材による断熱層を連続させるために該断熱材同士は隙間なく突き合わせつつも、耐力壁としての性能を保つために上記耐力面材同士の間は隙間を設けるべく、左右方向で上記断熱材の長さに比べ、上記耐力面材の長さが短く設定されて
段差部が形成されていることを要旨とする。 請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造の発明において、上記壁パネルは家屋の外側から上記断熱材を介して上記釘を打ち込むことで上記耐力面材を上記柱又は上記梁に固定して使用されるものであり、上記釘には、上記家屋の柱又は梁へ打ち込まれたことを上記断熱材の外側から確認するために二重頭釘が使用されることを要旨とする。 請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造の発明において、上記壁パネルには、上記釘の打ち込み位置を指示するべく、上記家屋の柱及び間柱のうち少なくとも一方と対応する位置に釘打指示手段が設けられていることを要旨とする。 請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造の発明において、上記壁パネルには、家屋における該壁パネルの配設位置を示す配置指示手段が設けられていることを要旨とする。 請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造の発明において、上記壁パネルは、上記家屋の設計データに基づいたCAD/CAM−システムを使用し、家屋上における配設位置を定めたうえで製造されたものであることを要旨とする。 請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の外張断熱工法による家屋の壁構造の施工方法であって、一の壁パネルを定められた配設位置に配した後、左右方向で該一の壁パネルの断熱材に他の壁パネルの断熱材を接触させて、壁パネルの左右方向における位置合わせを行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕 本発明の外張断熱工法による家屋の壁構造で使用する壁パネルは、耐力面材の外面に断熱材を接合して該耐力面材と該断熱材を一体化したものであり、該壁パネルを施工する作業のみで、該耐力面材による耐力壁と、該断熱材による断熱層の両方を設置することができ、施工作業の簡易化と工期の短縮化を図ることができる。更に該壁パネルは、家屋の壁上における左右方向で、断熱材の長さに比べ、耐力面材の長さが短く設定されて
段差部が形成されている。このため、家屋の壁上における左右方向で複数の壁パネル相互を左右に突き合わせながら並設していくと、耐力面材同士の間に
上記段差部による隙間を設けつつ、断熱材同士を隙間なく突き合わせて連続した断熱層を形成することができる。そして該耐力面材同士の間に設けられた
上記段差部による隙間は、該耐力面材による耐力壁へ働く力を逃がすためのものとなる。従って、好適な断熱性能を保持しつつ、耐力壁としての性能を好適に発揮することができる壁構造を簡易な施工作業で得ることができる。
【0007】
また通常の壁パネルは、耐力面材を柱又は梁に釘打ちして固定する場合、耐力面材の外側に断熱材が配されており、該断熱材を介して釘打ちを行うと、該釘の頭部が該断熱材の内部で止まってしまって該耐力面材をしっかりと固定することができない。このため該断熱材の一部を切除したり(特許文献1)、釘打ち部分に凹溝を設けて釘打ち後に該凹溝を桟木で塞いだり(特許文献2)、釘打ち部分を避けて断熱層を設けたり(特許文献3)するが、このような場合は断熱層が連続せずに断熱性能を低下させる。本発明の外張断熱工法による家屋の壁構造で使用する壁パネルにおいては、釘に二重頭釘を使用することにより、断熱材を介して耐力面材に釘を打ち込んだ場合に、該断熱材の外側からでも該耐力面材や柱又は梁への釘の打ち込み量を確認することができ、断熱性能を保持しつつ、壁パネルを好適に固定することができる。 また通常の壁パネルは、耐力面材を柱又は梁に釘打ちして固定する場合、耐力面材の外側に断熱材が配されているから、柱又は梁と耐力面材との位置関係が把握しづらく、釘の打ち込み位置を探すことが困難である。本発明の外張断熱工法による家屋の壁構造で使用する壁パネルにおいては、断熱材の外面に釘打指示手段を設けることにより、該釘打指示手段によって釘の打ち込み位置を探す手間を省くことが可能であり、釘打ち作業の簡易化と工期の短縮化を図ることができる。 また本発明の壁パネルは、家屋上における該壁パネルの配設位置を示す配置指示手段を設けられることにより、壁パネルの配設位置を迅速に把握することが可能となり、施工作業の短時間化を図ることができる。 またCAD/CAM−システムによって製造された壁パネルを使用する家屋の壁構造は、該壁パネルを並べて敷設するのみで、耐力面材同士の間に所定の隙間を設けつつ、断熱材による断熱層が連続したものとなり、耐久性と断熱性に優れたものとなる。さらに、例えば建築現場で寸法を合わせて断熱材を削る等のような建築現場における煩雑な加工作業が必要ない。 本発明の外張断熱工法による家屋の壁構造の施工方法は、上記壁パネルを用い、左右方向で隣接する壁パネルの断熱材相互を接触させることで、該壁パネルの左右方向における位置合わせが行われるため、非常に簡易であり、耐久性と断熱性を保持しつつも、作業の簡易化と工期の短縮化とが図られている。
【0008】
〔効果〕 本発明にあっては、簡易に施工することができるとともに、断熱性能を保持しつつ、耐力壁としての性能を好適に発揮することができる外張断熱工法による家屋の壁構造及びその施工方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例の壁パネルを示す(a)は外側から見た斜視図、(b)は平面図。
【
図2】壁パネルを木軸組みに取り付ける状態を示す正面図。
【
図3】壁パネルを木軸組みに取り付けた状態を示す平断面図。
【
図4】(a)は実施例の壁パネルを示す説明図、(b)はの通常の壁パネルを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を具体
化した一実施形態について以下に説明する。
図1(a),(b)に示すように、壁パネル10は、耐力面材11に断熱材12を接合することによって、該耐力面材11と該断熱材12とを一体化して構成されたものである。該断熱材12は、該耐力面材11の両面のうち前記断熱材12が接合される面の側を外側として、該耐力面材11の外側から内側への伝熱を妨げることで、前記壁パネル10に断熱性能を付与するためのものである。 上記耐力面材11は、合板、中比重繊維板、ハードボード、火山性ガラス質板、パーティクルボード、木質セメント板、サーモプライ等のような、釘打ちによって固定可能な材料を使用し、矩形板状に形成されている。 上記断熱材12は、家屋の外側から内側への伝熱を妨げるとともに、湿気を家屋の内側から外側へ逃がすために、多孔質材を使用して矩形板状に形成されている。該多孔質材としては、ポリスチレン発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体、メラミン樹脂発泡体等のプラスチック発泡体が挙げられる。
【0011】
上記壁パネル10は左右方向(横幅方向)において、上記耐力面材11の長さW1が、上記断熱材12の長さW2に比べて、短く設定されている(W1<W2)。従って、該壁パネル10の側面には、該耐力面材11の長さW1と該断熱材12の長さW2との差に伴い、段差部13が形成されている。 なお、上記壁パネル10は上下方向(縦幅方向)において、上記耐力面材11の長さと上記断熱材12の長さとは同じ長さとされている。但し、上記した横幅方向と同様に上記耐力面材11の長さを上記断熱材12の長さに比べて短く設定し、上記壁パネル10の上面部にのみ、上記した側面と同様の段差部を形成してもよい。
【0012】
図2に示すように、家屋においては、基礎(図示略)の上に土台21が固定され、該土台21上に複数本の柱22が所定間隔おきに立設され、さらに該柱22上に梁23が支持固定され、また必要であれば複数本の柱22の間に間柱24が設けられて、木軸組み20が作られる。上記壁パネル10は、前記耐力面材11が該木軸組みに釘打ちされ、該木軸組みを固定することにより、地震や風等による横方向からの力に耐えるための耐力壁を作るとともに、該耐力壁の外側に前記断熱材12が断熱層を形成することにより、外張断熱工法による家屋の壁構造を構成する。 上記壁パネル10は、家屋の設計データに基づいたCAD/CAM−システムを使用し、該家屋の壁面上で何れの位置に配置されるかを、つまり家屋上における配設位置を定めて製造されたものである。すなわち、該壁パネル10の断熱材12の長さ(横幅)W2は、家屋上での配設位置における一方の柱22の中央から他方の柱22の中央までの距離と一致するように設定されている。また該壁パネル10の断熱材12の高さ(縦幅)は、家屋上での配設位置において、該壁パネル10の下端部が土台21に被さり、かつ該壁パネル10の上端部が梁23に被さるような長さに設定されている。
【0013】
上記壁パネル10は、CAD/CAM−システムを使用し、家屋での配設位置を定めて製造されたものであるため、一棟の家屋に使用される全てが同じ構成になっているとは限らない。例えば、一部の壁パネル10は、他の壁パネル10よりも短い横幅や縦幅で形成されていたり、あるいは窓枠を取り付けるための孔が形成されていたりする場合がある。よって、定められた位置以外に壁パネル10を取り付けようとすれば、土台21、柱22、梁23あるいは間柱24による木軸組み20の位置がずれてしまい、該壁パネル10を釘打ち固定して耐力壁を形成することができなくなる。そこで、該壁パネル10には、下記の釘打位置指示手段や配置指示手段を設けることが望ましい。
【0014】
上記壁パネル10において、断熱材12の外面には、土台21、柱22、梁23あるいは間柱24による木軸組み20と対応する位置に、釘打位置指示手段としての指示線31が付されている(
図1(a)参照)。 すなわち、
図2に示すように、該壁パネル10にあっては、前記耐力面材11よりも前記断熱材12が外側に配されるため、木軸組み20上に該壁パネル10を配すると外部から土台21、柱22、梁23あるいは間柱24による木軸組み20の位置が分からなくなる。該指示線31は、前記断熱材12が外側に配されたままの状態にあって、該木軸組み20の位置を示すことで、作業者に釘打位置を明確に認識させるためのものである。 上記指示線31は、CAD/CAM−システムを使用した前記壁パネル10の製造時に印刷されることで、該木軸組み20の位置に正確に対応する。よって、該指示線31に従って釘を打ち込むことで、前記壁パネル10の耐力面材11を木軸組み20に確実に釘打ちすることが可能である。 なお、該釘打位置指示手段は、指示線31に限らず、外部から垂木の位置を示すことが可能であれば、浅溝や色付けや点描等としてもよい。また該指示線31は、釘を打つ間隔に応じて途切れる鎖線とすることで、釘を打つ間隔を指示することも可能である。
【0015】
ここで、
図3に示すように、上記壁パネル10は木軸組み20に対して、家屋の外側から上記断熱材12を介して釘を打ち込んで固定されており、該釘には二重頭釘32が使用される。該二重頭釘32は、下側釘頭32aと、該下側釘頭32aの上部に更に上側釘頭32bとを有している。 上記したように該壁パネル10にあっては、前記耐力面材11よりも前記断熱材12が外側に配されるため、通常の一重頭釘を使用した場合、断熱材12を介して釘を打ち込むと、該釘が柱22や梁23へ打ち込まれていることを確認することができず、該釘が該断熱材12の内部で止まってしまう可能性がある。また通常の一重頭釘を使用した場合、該断熱材12を介して該釘が柱22や梁23へ打ち込まれていたとしても、上記のように該断熱材12の材料にはプラスチック発泡体が使用されていることから、前記耐力面材11を柱22や梁23に釘打ちすることに比べて固定力が弱い。 下側釘頭32aと上側釘頭32bを有する二重頭釘32を使用する場合、該上側釘頭32bは、壁パネル10を固定するためのものではなく、下側釘頭32aが前記耐力面材11の表面に達していることを示す指標とされる。つまり、二重頭釘32において下側釘頭32aから上側釘頭32bまでの長さを断熱材12の厚みに応じた長さとしておくことで、該上側釘頭32bが断熱材12の表面に達していることを確認すれば、下側釘頭32aは前記耐力面材11の表面に達しており、また柱22や梁23に釘が打ち込まれたことになる。
【0016】
上記壁パネル10において、断熱材12の外面には、家屋上における該壁パネル10の配設位置を示す配置指示手段としての番号33が付されている。該番号33は、壁パネル10を木軸組み20上に敷設していく際に、取り付ける順番を示すことで、該壁パネル10の配設位置を表している。 つまり、木軸組み20上で壁パネル10の敷設を開始する始点は決められており、該始点から該番号33に従って壁パネル10を順に取り付けていくことで、自ずと壁パネル10を定められた位置に配設することが可能である。該番号33は、CAD/CAM−システムを使用した前記壁パネル10の製造時に印刷される。 なお、該配置指示手段は、番号33に限らず、壁パネル10の配設位置を示すことが可能であれば、アルファベットや図やシール等としてもよい。
【0017】
上記壁パネル10の敷設作業は、上記木軸組み20上の始点から前記番号33に従って該壁パネル10を配置するとともに、互いの断熱材12を接触させることによって、該壁パネル10の左右方向における位置合わせを行う。そして、上記二重頭釘32を使用し、該壁パネル10を上記木軸組み20に固定する。該木軸組み20に固定された該壁パネル10は、
図3に示すように、左右方向で互いの断熱材12が接触し、隙間なく突き合わされていることから、該断熱材12による断熱層が連続したものとなる。 一方、該壁パネル10の前記耐力面材11においては、左右方向に隣接する壁パネル10相互の段差部13が合わさることで、耐力面材11同士の間に隙間13Aを形成する(
図3参照)。該隙間13Aは、該耐力面材11によって作られる耐力壁としての性能を保つためのものとなる。すなわち、
図4(a)に示すように、風や地震による揺れ等によって横方向から力Fが加わる場合、隙間13Aが設けてあることで、左右の耐力面材11による耐力壁は、余計な負荷が加わることなく力Fに耐え、その性能を好適に発揮する。
図4(b)に示すように、通常の隙間13Aを設けずに左右方向の耐力面材11を接触させた耐力壁は、横方向から力Fが加わると、接触した耐力面材11同士の間に歪みによる負荷が発生し、耐力壁がその性能を十分に発揮出来ない。従って、該隙間13Aは、横方向から力Fが加わる場合に、耐力面材11同士の接触による負荷を逃がす機能を奏し、該耐力面材11によって作られる耐力壁としての性能を保つ。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の外張断熱工法による家屋の壁構造及びその施工方法にあっては、簡易に施工することができるとともに、断熱性能を保持しつつ、耐力壁としての性能を好適に発揮することができるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0019】
10 壁パネル11 耐力面材12 断熱材13A 隙間22 柱23 梁31 指示線32 二重頭釘33 番号