特許第5760215号(P5760215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760215
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】作業車両の車軸駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20150716BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   F16H57/04 P
   B60K17/04 H
   F16H57/04 N
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-12151(P2011-12151)
(22)【出願日】2011年1月24日
(65)【公開番号】特開2012-154375(P2012-154375A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】海老原 智幸
(72)【発明者】
【氏名】橋間 弘明
(72)【発明者】
【氏名】笹原 謙悟
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−118558(JP,A)
【文献】 特開2010−203493(JP,A)
【文献】 特開2008−057723(JP,A)
【文献】 特開2010−174961(JP,A)
【文献】 特開2010−112480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/04
F16H 57/00−57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータからの動力を車軸に伝達するギア部を車軸ケース内に収容し、該車軸ケースの底部と上部に、それぞれ、前記ギア部の少なくとも一部を浸漬する第一油溜まりと、該第一油溜まり内からの潤滑油を貯留する第二油溜まりとを設け、該第二油溜まりは、前記電動モータを収容するモータ室を介して、該第一油溜まりに連通した車軸駆動装置において、
前記ギア部のギアの回転により掻き上げられた第一油溜まり内の潤滑油を、第二油溜まり内に導入する導入構造を設け、
前記導入構造は、前進回転に応じて回転するギアと、後進回転に応じて回転するギアとの間の上方に、該前進と後進の回転により掻き上げられた第一油溜まり内の潤滑油を前記第二油溜まり内に導くガイドを形成し、
前記ガイドとの間に、前記車軸の前進回転に応じて回転するギアにより掻き上げられた潤滑油を受け入れる第一導入油路を形成すると共に、後進回転で回転するギアにより掻き上げられた潤滑油を受け入れる第二導入油路を形成した
ことを特徴とする作業車両の車軸駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の作業車両の車軸駆動装置において、前記ガイドは、略水平な上面と、該上面前端から前記一方のギアの外周沿いに後斜め下方に延出される前下面と、該前下面後端から前記他方のギアの外周沿いに後斜め上方に延出する後下面とにより、側面視で三角形状を呈する構成とし、前記第二油溜まりとモータ室との間は、前記第二油溜まりとモータ室との間の隔壁に設けた連絡油路のみを介して直接連通したことを特徴とする作業車両の車軸駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載の作業車両の車軸駆動装置において、前記第一油溜まりと第二油溜まりとなるリザーバ、及び第一導入油路と第二導入油路を構成するガイド、及び前記連絡油路は、所定の対称面を挟んで略上下対称の位置に、上下対称の形状に設け、該対称面は、前記電動モータの軸、中間軸、車軸の軸心を含む、略水平な平面としたことを特徴とする作業車両の車軸駆動装置。
【請求項4】
請求項3記載の作業車両の車軸駆動装置において、前記車軸を、単独駆動可能な片車軸として、前記電動モータと同側または反対側に配置し、該車軸駆動装置を上下反転させて回転させても、上下反転前と同じ潤滑構成が得られること特徴とする作業車両の車軸駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータからの動力を車軸に伝達するギア部を車軸ケース内に収容し、該車軸ケースの底部と上部に、それぞれ、前記ギア部の少なくとも一部を浸漬する第一油溜まりと、該第一油溜まり内からの潤滑油を貯留する第二油溜まりとを設け、該第二油溜まりは、前記電動モータを収容するモータ室を介して第一油溜まりに連通した車軸駆動装置に関し、特に、前記第一油溜まりから第二油溜まりへの潤滑油導入構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動モータと、該電動モータからの動力を車軸に伝達するギア部とを備える車軸駆動装置において、該ギア部を、密閉した車軸ケースに収容する場合、該車軸ケースの底部に貯留した潤滑油の油溜まり(以下、「第一油溜まり」とする)に、ギア部を浸漬して潤滑すると共に、車軸ケースの上部に、ギア部のギアの回転により掻き上げられた潤滑油を受ける油溜まり(以下、「第二油溜まり」とする)を設け、該第二油溜まりから電動モータのモータ室に潤滑油を供給して、該電動モータを冷却する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
該技術では、モータ室を大容量の油溜まりとして利用しており、該モータ室への潤滑油の給排により、第一油溜まり内の潤滑油の油面高さを調整している。つまり、車両停止時には、第一油溜まり内の潤滑油がギアの回転で掻き上げられることがなく、第一油溜まりの油面高さが高くなり、発進に備えてギア部が潤滑油中に十分に浸漬される。これに対し、車両走行時には、第一油溜まり内の潤滑油は、ギアの回転により掻き上げられた後、第二油溜まりからモータ室にかけて貯留されるため、第一油溜まりの油面高さが低くなり、ギアの撹拌抵抗が小さくなる。なお、この際、ギア部の浸漬深さは浅くなるが、ギアの撹拌によって潤滑油がギア部の隅々まで行き渡っており、十分な潤滑性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−226394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記技術は、電気自動車等の走行専用車両に搭載する車軸駆動装置を想定しており、車軸の前進回転に応じて回転するギアによって掻き上げられた潤滑油だけが第二油溜まり内に導入される導入構造を設けている。このため、電動式の乗用芝刈機等の作業車両のように、前進と後進を繰り返しながら作業を行う車両では、後進時に第二油溜まり内には潤滑油が導入できず、該第二油溜まりからモータ室にかけての潤滑油の貯留量が少なくなる。従って、作業中の第一油溜まりの油面高さを十分には低くできず、ギアの撹拌抵抗が大きくなって、ロス馬力の増加や、油温上昇による潤滑性能の悪化を招く、という問題があった。更に、前記技術では、第二油溜まりとモータ室との間は、モータ軸の軸方向油路と径方向油路等によって形成された、長くて複雑な油路を介して連通されており、部品点数が多くなって、部品コストの増加や組立性・メンテナンス性の悪化を招く、という問題もあった。加えて、前記技術のように、高価な電動モータを備える車軸駆動装置では、製造コスト低減への強い要求もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
請求項1においては、電動モータからの動力を車軸に伝達するギア部を車軸ケース内に収容し、該車軸ケースの底部と上部に、それぞれ、前記ギア部の少なくとも一部を浸漬する第一油溜まりと、該第一油溜まり内からの潤滑油を貯留する第二油溜まりとを設け、該第二油溜まりは、前記電動モータを収容するモータ室を介して、該第一油溜まりに連通した車軸駆動装置において、前記ギア部のギアの回転により掻き上げられた第一油溜まり内の潤滑油を、第二油溜まり内に導入する導入構造を設け、前記導入構造は、前進回転に応じて回転するギアと、後進回転に応じて回転するギアとの間の上方に、該前進と後進の回転により掻き上げられた第一油溜まり内の潤滑油を前記第二油溜まり内に導くガイドを形成し、前記ガイドとの間に、前記車軸の前進回転に応じて回転するギアにより掻き上げられた潤滑油を受け入れる第一導入油路を形成すると共に、後進回転で回転するギアにより掻き上げられた潤滑油を受け入れる第二導入油路を形成したものである。
請求項2においては、前記ガイドは、略水平な上面と、該上面前端から前記一方のギアの外周沿いに後斜め下方に延出される前下面と、該前下面後端から前記他方のギアの外周沿いに後斜め上方に延出する後下面とにより、側面視で三角形状を呈する構成とし、前記第二油溜まりとモータ室との間は、前記第二油溜まりとモータ室との間の隔壁に設けた連絡油路のみを介して直接連通するものである。
請求項3においては、前記第一油溜まりと第二油溜まりとなるリザーバ、及び第一導入油路と第二導入油路を構成するガイド、及び前記連絡油路は、所定の対称面を挟んで略上下対称の位置に、上下対称の形状に設け、該対称面は、前記電動モータの軸、中間軸、車軸の軸心を含む、略水平な平面としたものである。
請求項4においては、前記車軸を、単独駆動可能な片車軸として、前記電動モータと同側または反対側に配置し、該車軸駆動装置を上下反転させて回転させても、上下反転前と同じ潤滑構成が得られるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、電動式の乗用芝刈機等の作業車両のように前進と後進を繰り返しながら作業を行う車両の場合に、前進時だけでなく後進時にも第二油溜まり内に潤滑油を供給し、該第二油溜まりからモータ室にかけての潤滑油の貯留量を十分に確保することができる。これにより、第一油溜まりの油面高さを適正な高さまで低くし、ギアの撹拌抵抗を小さくして、ロス馬力の低下や、油温上昇の抑制による潤滑性能の向上を図ることができる。
請求項2により、第二油溜まりとモータ室との間を、簡単な構成で連通することができ、部品点数を減らして、部品コストの低減や組立性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項3により、前記車軸駆動装置を上下反転させたものを、別仕様の作業車両の車軸駆動装置として使用することができ、装置の共通化が可能となり、在庫管理の管理コストや型費等の部品コストを引き下げて製造コストの低減を図ることができる。
請求項4により、上下反転前後の車軸駆動装置等を左右に並設して、左右一対の車軸駆動装置として使用することができ、装置の共通化を更に推し進め、在庫管理の管理コストや型費等の部品コストを引き下げて製造コストの一層の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に関わる車軸駆動装置を搭載した作業車両の全体構成を示す平面図である。
図2】車軸駆動装置の平面断面図である。
図3】前進時の潤滑油導入構成を示す図2のA−A矢視断面図である。
図4】後進時の潤滑油導入構成を示す図2のA−A矢視断面図である。
図5図3のB−B矢視断面図である。
図6】電動モータの斜視図である。
図7図6のC−C矢視断面図である。
図8】別形態の車軸駆動装置2Aの平面断面図である。
図9】別形態の車軸駆動装置2Bの平面断面図である。
図10】別形態の車軸駆動装置2Bの各種配置構成を示す平面模式図であって、図10(a)は車軸駆動装置2Bの180度水平回転前後のものを左右に並設して成る配置構成を示す平面模式図であり、図10(b)は車軸駆動装置2Bの上下反転前後のものを左右に並設して成る配置構成を示す平面模式図である。
図11】手動解除機能を省いた駐車ブレーキ装置の平面断面図である。
図12】クラッチ装置を備えた車軸周辺の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図1の矢印Fで示す方向を作業車両1の前進方向とし、以下の説明では、この前進方向を各部材の位置や方向等の基準とする。
【0010】
まず、本発明に関わる車軸駆動装置2を搭載した作業車両1の全体構成について、図1図2により説明する。該作業車両1は、乗用芝刈機であって、その前後方向に車体フレーム3が延設され、該車体フレーム3の前後部に、それぞれ、前輪11の車軸支持装置4と後輪12の車軸駆動装置2が配置され、該車軸支持装置4と車軸駆動装置2との間に、モア15が介設されている。
【0011】
このうちの前輪11の車軸支持装置4について説明する。前記車体フレーム3の前幅狭部の前後には、支持アーム3a・3bが横設され、該支持アーム3a・3b間に、揺動ピン6が前後方向に橋設され、該揺動ピン6に、支持ブラケット5aが左右揺動可能に外嵌されている。そして、該支持ブラケット5aは、車軸支持装置4を構成する前車軸ケース5の左右略中央部上面に固設されている。
【0012】
これにより、走行中、圃場の凹凸等によって左右の前輪11・11が個別に激しく上下動しても、車軸支持装置4は揺動ピン6を中心にして左右揺動するだけであり、車体フレーム3やモア15に伝達される振動は小さく、運転の快適性・安定性や芝刈りの作業効率の向上を図ることができる。
【0013】
前記前車軸ケース5の左右両端には、左右の操舵ケース80L・80Rが水平回動可能に支持され、該操舵ケース80L・80Rの側部に、左右の前輪11・11の前車軸11a・11aが回動可能に支持されている。
【0014】
更に、前記操舵ケース80L・80Rの上部には、それぞれ、操向軸10L・10Rが固設され、このうちの左の操向軸10Lは、左のL字状のナックルアーム8Lの屈曲部に固設され、右の操向軸10Rは、右のナックルアーム8Rの前端に固設される。該左右のナックルアーム8L・8Rの後端間は、左右方向に延設するタイロッド7によって連結されると共に、前記ナックルアーム8Lの内端には、操向ロッド9の前端が連結され、該操向ロッド9の後端は、図示せぬ操向ハンドル等の操向操作手段に連動連結されている。
【0015】
これにより、操向ハンドル等によって操向操作すると、前記操向ロッド9が前後動され、操向軸10Lを中心にして左の前輪11が水平回動される。それに伴い、ナックルアーム8L・タイロッド7・ナックルアーム8Rを介して伝達された操舵力により、操向軸10Rを中心にして右の前輪11が水平回動され、左右の前輪11・11が同時に操向されるようにしている。
【0016】
また、後輪12の車軸駆動装置2からは、左右の車軸24L・24Rが左右外方に突出されており、いずれも、軸継手13を介して、後輪12の後車軸12aに連結されている。該後車軸12a・12aは、いずれも、前記車体フレーム3後部に設けられた支持ケース14に回動可能に支持されており、後で詳述するようにして車軸駆動装置2から出力される動力により回転駆動される。
【0017】
また、前記モア15は、車体フレーム3の前後略中央部の下方に設けられると共に、三枚の刈刃15a・15a・15aが備えられ、該刈刃15a・15a・15aは、前記車軸駆動装置2から図示せぬ入力軸を介して入力された動力によって回転駆動される。
【0018】
更に、モア15の左右略中央部には、リアディスチャージ用のダクト16が連設されており、前記刈刃15a・15a・15aで刈り取った芝草が、ダクト16を介して、作業車両1の後端に装備した図示せぬ集草容器に排出されるようにしている。
【0019】
次に、前記車軸駆動装置2の概略構造と動力伝達構成について、図2図3図5により説明する。該車軸駆動装置2は、手動解除機能付きの駐車ブレーキ装置18と電動モータ19を、それぞれ、車軸ケース20の前部の左右側面に装着して成る。そして、該車軸ケース20には、車軸ケース20の後部に設けた左右の車軸24L・24Rと、該車軸24L・24Rに前記電動モータ19からの動力を伝達するギア部23とが収容される。
【0020】
このうちの電動モータ19には、内部にモータ室27を形成する筒状のモータケース28と、該モータケース28の軸心上に設けた左右の軸受け29・29に回転自在に支持されるモータ軸30と、該モータ軸30上に回転不能に永久磁石が嵌合固設されるロータ31と、該ロータ31の外周を取り巻く鉄心34にコイル部が挿通されて成るステータ32とが備えられる。
【0021】
このような構成の電動モータ19はブラシレスであることから、モータケース28の右部内面には回転角度検出器35が固設されて前記モータ軸30の右端に接続されており、インバータ制御のために、該モータ軸30の回転からロータ31の永久磁石の現在位置を検出するようにしている。更に、前記モータケース28の左側部は、円盤状の底壁47から成り、該底壁47を貫通するようにして、前記モータ軸30がモータケース28から左外方に突出されている。
【0022】
前記車軸ケース20は、縦割り状の左右のケース半部21・22から構成され、該ケース半部21・22は、それぞれ、左右の前側部36・37と、該前側部36・37よりも後方で前記車軸24L・24Rを複数の軸受け44によって回動自在に支持する車軸収容部38・39とから成る。そして、このうちの前側部36・37は、左右の側壁40・41と、該側壁40・41の外周を取り囲む左右の周壁70・71とから形成されている。
【0023】
このような左右のケース半部21・22を接合面33で組み付けて密閉した状態において、前記車軸ケース20内には、前記ギア部23を収容するギア室45が形成され、該ギア室45の底部に、前記ギア部23の潤滑と電動モータ19の冷却を行うための潤滑油が貯留されることにより、第一油溜まり25が形成される。
【0024】
前記ギア部23は、電動モータ19からの動力を減速する減速装置48と、該減速装置48による減速動力を差動的に前記車軸24L・24Rに伝達するデフギア装置49とから構成される。
【0025】
このうちの減速装置48において、前記左右の前側部36・37の左右の側壁40・41間には入力軸43が軸受け46・46により回動自在に支持され、該入力軸43の一端は、右のケース半部22の側壁41を貫通して車軸ケース20から外に突出し、その突出端に、前記モータ軸30の左端が、軸継手42を介して同一軸心上に連結される。一方、該入力軸43の他端は、左のケース半部21の側壁40を貫通して車軸ケース20から外に突出し、その突出部に前記駐車ブレーキ装置18が連結されている。
【0026】
更に、前後に配置された前記入力軸43と車軸24L・24Rとの間で、前記左右の側壁40・41間には、中間軸50が回動自在に支持され、該中間軸50の左部には、大径ギア52が外嵌固定されると共に、中間軸50の右部には、その外周に小径ギア53が刻設されている。そして、このうちの大径ギア52は、前記入力軸43の外周に刻設された小径の入力ギア51に噛合される一方、小径ギア53は、前記デフギア装置49における大径のリングギア54に噛合されている。これにより、ギア51・52・53・54から成る減速ギア列を備えた減速装置48が形成される。
【0027】
前記デフギア装置49は、前記車軸24L・24Rと同一回転軸心を有するように前記車軸収容部39内に支持された中空のデフケース64と、該デフケース64外周面に固設され前記中間軸50上の小径ギア53に噛合される前記リングギア54と、該デフケース64内において車軸24L・24Rと直交配置されデフケース64と一体的に回転するピニオン軸55と、該ピニオン軸55の両端に回転自在に配置されるベベルギアであるピニオン56・56と、前記車軸24L・24Rの内端側に固定され該ピニオン56・56に噛合されるベベルギアであるデフサイドギア57・57とにより構成されている。これにより、左右の車軸24L・24Rが差動的に結合される。
【0028】
このような構成において、前記電動モータ19からの動力は、前記モータ軸30から入力軸43に伝達され、減速装置48で減速された後、デフギア装置49により、左右の車軸24L・24Rを差動駆動することができる。
【0029】
また、前記ギア室45内で、前記入力ギア51より前方には、鉛直のブレーキ軸59が軸心回りに回動自在に支持されている。そして、該ブレーキ軸59の一端が前記車軸ケース20のケース半部22外に突出され、その突出端にはブレーキアーム60が外嵌固定されている。該ブレーキアーム60は、図示せぬ運転席近傍に配設されたブレーキ操作具にリンク部材を介して接続されている。
【0030】
該ブレーキ軸59の上下途中部は、鉛直平坦なカム面59aを有する平面断面視略半円状のカム部となっており、該カム面59aに対峙するようにして、ブレーキシュー61とブレーキパッド62が、前記車軸ケース20に左から順に固定されている。そして、該ブレーキシュー61とブレーキパッド62との間に、前記入力軸43上で入力ギア51の右方に固設されたブレーキロータ63の一部が介設されている。これにより、前記ブレーキ軸59、ブレーキロータ63、ブレーキシュー61、及びブレーキパッド62等から成るブレーキ機構58が、ギア室45内に構成されている。
【0031】
このようなブレーキ機構58により、図示せぬブレーキ操作具を非制動状態にしている間は、カム面59aがブレーキシュー61の鉛直面と平行であり、ブレーキロータ63に対してブレーキシュー61、ブレーキパッド62が互いに離間されている。そして、前記ブレーキアーム60を制動位置まで回動すると、カム面59aがブレーキシュー61の鉛直面と直角になり、該カム面59aの縁部がブレーキシュー61をブレーキロータ63に向かって押し付け、入力軸43が制動されて、左右の車軸24L・24Rが減速されるようにしている。
【0032】
次に、前記車軸駆動装置2の潤滑構成について、図2乃至図5により説明する。前記ギア室45の底部に設けた第一油溜まり25に加え、ギア室45の上前部には、第二油溜まり26が設けられている。該第二油溜まり26を設けるリザーバ17は、その後部が開口されており、この後部開口83の後方で、前記大径ギア52とリングギア54との間の上方には、前記ギア部23のギア52・54等の回転により掻き上げられた第一油溜まり25内の潤滑油を前記第二油溜まり26内に導くガイド73が形成されている。
【0033】
前記リザーバ17は、左のケース半部21の側壁40から接合面33に向かって突出してケース半部21内の空間から前上部を区画する左の隔壁65と、右のケース半部22の側壁41から接合面33に向かって突出してケース半部22内空間から前上部を区画する右の隔壁66とを、左右のケース半部21・22の接合状態において互いに当接することによって形成する。
【0034】
前記左の隔壁65は、側面視で下方に屈曲したかぎ状を呈し、左のケース半部21の周壁70沿いに前斜め下方に延出される前壁部65aと、該前壁部65a前端から下方に屈曲した後に前記ブレーキロータ63の外周沿いに湾曲しながら後斜め下方に延出される前底部65bと、該前底部65b後端から前記大径ギア52の外周沿いに湾曲しながら後斜め上方に延出される後底部65cとから構成される。
【0035】
同様に、右の隔壁66も、側面視で下方に屈曲したかぎ状を呈し、右のケース半部22の周壁71沿いに前斜め下方に延出される前壁部66aと、該前壁部66a前端から下方に屈曲した後に前記ブレーキロータ63の外周沿いに湾曲しながら後斜め下方に延出される前底部66bと、該前底部66b後端から前記大径ギア52の外周沿いに湾曲しながら後斜め上方に延出される後底部66cとから構成される。
【0036】
このような前壁部65a・66a前端の屈曲部から前底部65d・66bと後底部65c・66cにかけて形成される凹部空間に、前記第二油溜まり26が設けられている。
【0037】
更に、前記右の隔壁66における前底部66bと後底部66cとの境部には、左に開口した縦溝部66dが形成される一方、該縦溝部66dに対向する左の隔壁65における前底部65bと後底部65cとの境部は、平坦なままであり、左右のケース半部21・22の接合状態において、上下に貫通して第二油溜まり26とギア室45との間を連通する縦オリフィス67が形成されている。
【0038】
これにより、リザーバ17とその縦オリフィス67は、複雑な構造を別途に設けることなく、左右のケース半部21・22を組み付けるだけの簡単な構成により形成できると共に、第二油溜まり26内の潤滑油を、縦オリフィス67を介してギア室45内のギア部23に向けて流下させることができる。
【0039】
前記ガイド73は、リザーバ17と同様に、左のケース半部21の側壁40から接合面33に向かって突出する左の突壁74と、右のケース半部22の側壁41から接合面33に向かって突出する右の突壁75とを、左右のケース半部21・22の接合状態において互いに当接することによって形成する。
【0040】
前記左の突壁74は、側面視で三角形状を呈し、その外周面は、車軸ケース20の周壁70沿いに略水平な上面74aと、該上面74a前端から前記大径ギア52の外周沿いに後斜め下方に延出される前下面74bと、該前下面74b後端から前記リングギア54の外周沿いに後斜め上方に延出する後下面74cとから構成される。
【0041】
同様に、右の突壁75も、側面視で三角形状を呈し、その外周面は、車軸ケース20の周壁71沿いに略水平な上面75aと、該上面75a前端から前記大径ギア52の外周沿いに後斜め下方に延出される前下面75bと、該前下面75b後端から前記リングギア54の外周沿いに後斜め上方に延出する後下面75cとから構成される。
【0042】
このうちの上面74a・75aと、車軸ケース20の周壁70・71との間に第一導入油路81が形成されると共に、前下面74b・75bと、前記隔壁65・66の後底部65c・66cとの間に第二導入油路82が形成され、これら第一導入油路81と第二導入油路82とにより、前記ギア部23のギア52・54等により掻き上げられた潤滑油を前記第二油溜まり26内に導く導入構造が形成される。
【0043】
このような構成において、車軸駆動装置2を搭載した作業車両1の前進時には、図3に示すように、前記電動モータ19からの動力によって大径ギア52は矢印84の方向に回転し、それに対向するようにしてリングギア54が矢印85の方向に回転するため、該リングギア54の後部から第一油溜まり25内の潤滑油が掻き上げられ、該潤滑油は、リングギア54と車軸ケース20後部の周壁70・71との間の隙間空間90を通って前方に押し出されて第一導入油路81内に流入し、該第一導入油路81を通って前記第二油溜まり26内に流れ込む。
【0044】
逆に、作業車両1の後進時には、図4に示すように、前記電動モータ19からの動力によって大径ギア52は前記矢印84と反対の矢印86の方向に回転し、それから離間するようにしてリングギア54が前記矢印85と反対の矢印87の方向に回転するため、該リングギア54の前部と前記大径ギア52の後部によって第一油溜まり25内の潤滑油が掻き上げられ、該潤滑油は、前後に配置される大径ギア52とリングギア54との間を上昇した後に前記第二導入油路82内に流入し、該第二導入油路82を通って前記第二油溜まり26内に流れ込む。
【0045】
これにより、作業車両1の進行方向にかかわらず、走行中は常に、第一油溜まり25内の潤滑油がギア部23のギア52・54によって掻き上げられ、第一導入油路81または第二導入油路82を介して、第二油溜まり26に導入できるようにしている。
【0046】
また、前記リザーバ17において、右の側壁41で前壁部66aと前底部66bとの間の屈曲部近傍には、左右方向に貫通した横オリフィス68が形成されている。該横オリフィス68は、右の側壁41に設けた樋状の中間孔69を介して、前記モータケース28の底壁47上部に軸心方向に貫通した取込孔47aと連通されており、これら横オリフィス68、中間孔69、及び取込孔47aから連絡油路72が形成される。
【0047】
これにより、第二油溜まり26とモータ室27との間は、長く複雑な油路を介することなく、連絡油路72を通して直接連通させることができる。
【0048】
更に、前記リザーバ17の右の側壁41の下部には、前記横オリフィス68よりも大径の横オリフィス68Aと、中間孔69Aとが形成され、前記モータケース28の底壁47の下部には排出孔47bが形成されており、これら横オリフィス68A、中間孔69A、及び排出孔47bから連絡油路72Aが形成される。
【0049】
以上のような構成において、車軸駆動装置2が停止状態では、前記第一油溜まり25の初期の油面高さは位置76にあり、該位置76では、ギア室45内の減速装置48、デフギア装置49、ブレーキ機構58の略下半部が浸漬されており、運転開始に備えて、十分な潤滑油が確保されている。
【0050】
車軸駆動装置2が運転を開始すると、電動モータ19が作動して前記大径ギア52やリングギア54が回転し、前記第一油溜まり25内の潤滑油が掻き上げられ、前述した導入構造によって第二油溜まり26内に流れ込む。流れ込んだ潤滑油は、第二油溜まり26内に貯留されつつ、前記連絡油路72を介して前記モータ室27内に流入し、電動モータ19のステータ32等の冷却に使用される。冷却後の潤滑油は、モータ室27内の第三油溜まり78に貯留されつつ、前記連絡油路72Aを介して第一油溜まり25に戻される。
【0051】
ここで、前記モータ室27とギア室45とは、前述の如く連絡油路72Aを介して連通されているため、車軸駆動装置2が停止状態では、第三油溜まり78の油面高さは、第一油溜まり25と同じ位置76にあるが、車軸駆動装置2が運転を開始すると、前記第二油溜まり26からの流れ込む潤滑油の分だけ、第三油溜まり78の油面高さは、第一油溜まり25よりも高くなって位置77aとなる。そして、該位置77aと前記位置77の高低差79の分だけ、潤滑油がモータ室27内に貯留されることとなる。なお、位置77aは、ロータ31の回転を妨げないように、該ロータ31の下端近傍となるように設定するのが望ましい。
【0052】
車軸駆動装置2が運転を停止すると、電動モータ19も作動を停止し、前記大径ギア52やリングギア54の回転も止まって、第二油溜まり26への潤滑油の導入が停止する。すると、第二油溜まり26内の潤滑油は、縦オリフィス67を通って第一油溜まり25内に流下すると共に、連絡油路72からモータ室27・連絡油路72Aを通って第一油溜まり25に戻されるため、第二油溜まり26は空となる。
【0053】
すると、該第二油溜まり26内から排出された潤滑油の分だけ、第一油溜まり25の油面高さは、位置77から位置76まで上昇し、第三油溜まり78の油面高さも、位置77aから位置76まで上昇する。
【0054】
これにより、車軸駆動装置2の運転中には、第一油溜まり25内の潤滑油を、リザーバ17内の第二油溜まり26から、モータ室27内の第三油溜まり78の一部にかけて貯留することができ、第一油溜まり25の油面高さを十分に低くできる。
【0055】
すなわち、電動モータ19からの動力を車軸24L・24Rに伝達するギア部23を車軸ケース20内に収容し、該車軸ケース20の底部と上部に、それぞれ、前記ギア部23の少なくとも一部を浸漬する第一油溜まり25と、該第一油溜まり25内からの潤滑油を貯留する第二油溜まり26とを設け、該第二油溜まり26は、前記電動モータ19を収容するモータ室27を介して第一油溜まり25に連通した車軸駆動装置2において、前記ギア部23のギア52・54の回転により掻き上げられた第一油溜まり25内の潤滑油を第二油溜まり26内に導入する導入構造を設け、該導入構造は、前記車軸24L・24Rの前進回転に応じて回転するギアであるリングギア54により掻き上げられた潤滑油を受け入れる第一導入油路81と、前記車軸24L・24Rの後進回転に応じて回転するギアである大径ギア52・リングギア54により掻き上げられた潤滑油を受け入れる第二導入油路82とを有するので、電動式の乗用芝刈機等の作業車両1のように前進と後進を繰り返しながら作業を行う車両の場合に、前進時だけでなく後進時にも第二油溜まり26内に潤滑油を供給し、該第二油溜まり26からモータ室27にかけての潤滑油の貯留量を十分に確保することができる。これにより、第一油溜まり25の油面高さを適正な高さである位置77まで低くし、ギア51・52・53・54の撹拌抵抗を小さくして、ロス馬力の低下や、油温上昇の抑制による潤滑性能の向上を図ることができる。
【0056】
更に、前記第二油溜まり26とモータ室27との間は、隔壁である側壁41・底壁47に設けた連絡油路72のみを介して直接連通するので、第二油溜まり26とモータ室27との間を、簡単な構成で連通することができ、部品点数を減らして、部品コストの低減や組立性・メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0057】
なお、それほど複雑な構成を設けることなく、潤滑油による冷却性能を更に向上させる場合は、前記取込孔47aの代わりに、図6図7に示すような延長油路148を設けてもよい。該延長油路148は、主に、前記底壁47よりも肉厚の底壁147内に形成され、該底壁147は、円盤部147Aと、該円盤部147Aの前上部から前記モータケース28の外周面に沿って右方に延設されるアーム部147Bとから構成される。
【0058】
このうち、前記円盤部147Aにおいて、前記第二油溜まり26に連通する取込油路147aが、右端閉塞状態で左右方向に形成され、該取込油路147aの前壁からは、前方に向かって第一油路147cが形成される。
【0059】
前記アーム部147Bにおいては、前記第一油路147cの前部が、アーム部147B内を左右方向に延設する第二油路147dの左端に接続され、該第二油路147dの右端は、第三油路147eの前部に接続されている。
【0060】
該第三油路147eは、前記アーム部147Bの右部内を後方に向かって延設され、該延設端は、前記モータケース28で半径方向に穿孔された流入油路28aの前端と接続され、これにより、取込油路147a・第一油路147c・第二油路147d・第三油路147e・流入油路28aから成る延長油路148が構成される。
【0061】
このうちの流入油路28aの後端は、前記モータ室27の奥側にある奥室部27a内に開口されており、第二油溜まり26内の潤滑油は、横オリフィス68・中間孔69から延長油路148を介して奥室部27a内に流入する。
【0062】
該奥室部27a内を流下してきた潤滑油は、ロータ31とステータ32との間の隙間149や、ステータ32とモータケース28内面との間の隙間150を通過することにより、電動モータ19全体を効果的に冷却した後、前記底壁147の下部に設けた排出孔147bを通って第一油溜まり25に戻されるようにしている。
【0063】
すなわち、第二油溜まり26内の潤滑油をモータ室27の奥側まで導入可能な導入経路である延長油路148を、モータケース28の付帯部分であるアーム部147Bを利用して設けるので、モータ軸の軸方向油路と径方向油路等ほど複雑な構成を設けることなく、良好な冷却性能を確保することができるのである。
【0064】
次に、前記車軸駆動装置2の上下対称構造と、その別形態について、図2図3図5図8乃至図10により説明する。図2図3図5に示すように、車軸駆動装置2の下部の前記横オリフィス68A、中間孔69A、排出孔47bは、それぞれ、車軸駆動装置2の上部の前記横オリフィス68、中間孔69、取込孔47aに対し、対称面Hを挟んで略上下対称の位置と形状に設けられている。ここで、該対称面Hとは、前記入力軸43・中間軸50・車軸24L・24Rの全ての軸心を含む略水平な平面である。
【0065】
更に、車軸駆動装置2の下部には、第一油溜まり25を形成する車軸ケース20の下部20aA、縦オリフィス67Aを有するリザーバ17A、前記連絡油路72A、及びガイド73Aが設けられ、これらは、それぞれ、車軸駆動装置2の上部における上部20a、縦オリフィス67を有するリザーバ17、連絡油路72、及びガイド73に対して、前記対称面Hを挟んで略上下対称の位置と形状に設けられている。
【0066】
これにより、車軸駆動装置2を上下反転させても、第一油溜まり25、第二油溜まり26、第三油溜まり78、第一導入油路81・第二導入油路82、及び連絡油路72を、上下反転前と同様に形成して同じ潤滑構成が得られる。
【0067】
すなわち、前記第一油溜まり25・第二油溜まり26、第一導入油路81・第二導入油路82、及び連絡油路72の構成部は、所定の対称面Hを挟んで略上下対称の位置と形状に設けるので、前記車軸駆動装置2を上下反転させたものを、別仕様の作業車両の車軸駆動装置として使用することができ、装置の共通化が可能となり、在庫管理の管理コストや型費等の部品コストを引き下げて製造コストの低減を図ることができる。
【0068】
また、このような上下対称構造を有する車軸駆動装置2の別形態について説明する。
図8に示す車軸駆動装置2Aは、前記車軸駆動装置2とは異なり、車軸100L・100R毎に電動モータ19が設けられ、それぞれ単独駆動可能な片車軸として構成される。そして、左の車軸100Lをそれと同側に配置した電動モータ19により駆動する左の車軸駆動装置ユニット2ALと、右の車軸100Rをそれと同側に配置した電動モータ19により駆動する右の車軸駆動装置ユニット2ARとを接合して、この車軸駆動装置2Aが構成される。
【0069】
前記左の車軸駆動装置ユニット2ALは、駐車ブレーキ装置18付きの前記電動モータ19を、ケース半部102の前部の左側面に装着して成り、該ケース半部102には、ケース半部102の後部で前記電動モータ19と同側に設けた車軸100Lと、該車軸100Lに前記電動モータ19からの動力を伝達するギア部104とが収容されている。
【0070】
該ギア部104には、左端が前記左の電動モータ19のモータ軸30に連結された入力軸112の外周に刻設される小径の入力ギア108と、該入力ギア108に噛合され中間軸113の略中央部左寄りに固設される大径ギア109と、該中間軸113の左端部の外周に刻設される小径ギア110と、該小径ギア110に噛合され車軸100Lの右端部に固設される大径の伝達ギア111とが設けられており、ギア108・109・110・111から成る減速ギア列を備えた減速装置106が形成される。
【0071】
同様に、右の車軸駆動装置ユニット2ARも、駐車ブレーキ装置18付きの電動モータ19を、ケース半部103の前部の右側面に装着して成り、該ケース半部103には、ケース半部103の後部で前記電動モータ19と同側に設けた車軸100Rと、該車軸100Rに前記電動モータ19からの動力を伝達するギア部105とが収容されている。
【0072】
該ギア部105においても、右端が前記右の電動モータ19のモータ軸30に連結された入力軸118の外周に刻設される小径の入力ギア114と、該入力ギア114に噛合され前記中間軸113の略中央部右寄りに固設される大径ギア115と、該中間軸113の右端部の外周に刻設される小径ギア116と、該小径ギア116に噛合され車軸100Rの左端部に固設される大径の伝達ギア117とが設けられており、ギア114・115・116・117から成る減速ギア列を備えた減速装置107が形成される。
【0073】
このような構成において、左右の電動モータ19・19からの動力は、それぞれ、入力軸112・118に伝達された後、前記ギア部104・105の減速装置106・107で減速され、単独制御可能な駆動力として、前記左右の車軸100L・100Rに伝達される。このため、必要に応じて、差動駆動を行ったり、車軸100L・100Rを互いに逆方向に回転させてその場旋回を行うことができる。
【0074】
更に、前記左右のケース半部102・103を接合面119で組み付けて車軸ケース101を形成し、該車軸ケース101内に、前記ギア部104・105を収容するギア室120が形成され、該ギア室120の底部に、前記第一油溜まり25が形成される。
【0075】
このような車軸駆動装置2Aにおける潤滑構成も、前記車軸駆動装置2と同様に、前記第一油溜まり25、第二油溜まり26、第一導入油路81・第二導入油路82、及び連絡油路72の構成部が、図示せぬ所定の対称面を挟んで略上下対称の位置と形状に設けられている。
【0076】
これにより、車軸駆動装置2Aを上下反転させても、第一油溜まり25、第二油溜まり26、第一導入油路81・第二導入油路82、及び連絡油路72を、上下反転前と同様に形成して同じ潤滑構成が得られる。
【0077】
加えて、両車軸駆動装置ユニット2AL・2ARの構成部は、第一油溜まり25、第二油溜まり26、第一導入油路81・第二導入油路82、及び連絡油路72の構成部も含め、全て、略上下対称の位置と形状に設けると共に、接合面119を挟んで略左右対称の位置と形状にも設けられている。
【0078】
例えば、左右のケース半部102・103を組み付けた状態では、左右の入力軸112・118、左右の車軸100L・100Rは、同一軸心上にあって略左右対称の位置と形状に形成されている。前記入力軸112・118と車軸100L・100Rとの間の中間軸113については、両車軸駆動装置ユニット2AL・2ARで共通の軸とし、小径ギア110・116と大径ギア109・115が着脱可能に外嵌されると共に、該小径ギア110・116、大径ギア109・115は、それぞれ、略左右対称の位置と形状に形成されている。
【0079】
これにより、車軸駆動装置ユニット2AL・2ARの一方を上下反転させて他方に使用することができ、車軸駆動装置2Aを、単一のユニットの組み合わせで構成することができる。
【0080】
また、図9に示す車軸駆動装置2Bは、前記車軸駆動装置2とは異なり、電動モータ19によって駆動する車軸を、該電動モータ19と反対側に配置した車軸121のみとしたものであり、該車軸121は、専用の電動モータ19が設けられて単独駆動可能な片車軸として構成されている。
【0081】
該車軸駆動装置2Bは、手動解除機能付きの駐車ブレーキ装置18と電動モータ19を、それぞれ、左右のケース半部123・124の前部側面に装着して成り、該左右のケース半部123・124から成る車軸ケース122には、該車軸ケース122の後部に設けた左の車軸121と、該車軸121に前記電動モータ19からの動力を伝達するギア部125とが収容されている。
【0082】
該ギア部125においては、右端が前記電動モータ19のモータ軸30に連結された入力軸43の外周に刻設される小径の入力ギア51と、該入力ギア51に噛合され中間軸50の左部に固設される大径ギア52と、該中間軸50の右部の外周に刻設される小径ギア53と、該小径ギア53に噛合され単一の車軸121の右部に固設される大径のリングギア54Aとが設けられており、これにより、ギア51・52・53・54Aから成る減速ギア列を備えた減速装置146が形成される。
【0083】
このような構成において、電動モータ19からの動力は、入力軸43に伝達された後、前記ギア部125の減速装置146で減速され、独立制御可能な駆動力として車軸121に伝達される。このため、駆動する車輪の位置に適した位置に車軸駆動装置2Bを自由に移動配置することができる。
【0084】
これにより、例えば、図10(a)に示すように、二個の前記車軸駆動装置2Bの一方を左側に配置して左の車軸駆動装置ユニット2BLとし、他方を矢印126のように180度水平回転して右の車軸駆動装置ユニット2BRとし、その両車軸121L・121Rが同一軸心上となるように配置することにより、左右一対の車軸駆動装置ユニット2BL・2BRから成る車軸駆動装置を形成することができる。
【0085】
更に、このような車軸駆動装置2Bにおける潤滑構成も、前記車軸駆動装置2・2Aと同様にして、前記第一油溜まり25、第二油溜まり26、第一導入油路81・第二導入油路82、及び連絡油路72の構成部が、図示せぬ所定の対称面を挟んで略上下対称の位置と形状に設けられている。
【0086】
これにより、例えば、図10(b)に示すように、二個の前記車軸駆動装置2Bの一方を左側に配置して左の車軸駆動装置ユニット2BLaとし、他方を上下反転して右側に配置して右の車軸駆動装置ユニット2BRaとし、その両車軸121La・121Raが同一軸心上となるように配置することにより、左右一対の車軸駆動装置ユニット2BLa・2BRaから成る車軸駆動装置を形成することができる。
【0087】
すなわち、車軸駆動装置2Aでは、車軸100L・100Rを単独駆動可能な片車軸として電動モータ19と同側に配置し、車軸駆動装置2Bでは、車軸121を電動モータ19と反対側に配置するので、上下反転前後の車軸駆動装置ユニット2ALと車軸駆動装置ユニット2ARを左右に並設して左右一対の車軸駆動装置2Aとして使用することができ、更に、上下反転前後の車軸駆動装置ユニット2BLaと車軸駆動装置ユニット2BRaを左右に並設して左右一対の車軸駆動装置として使用することができ、これにより、装置の共通化を更に推し進め、在庫管理の管理コストや型費等の部品コストを引き下げて製造コストの一層の低減を図ることができる。なお、前述の如く、車軸駆動装置2Bについては、180度水平回転前後の車軸駆動装置ユニット2BLと車軸駆動装置ユニット2BRを左右に並設しても、左右一対の車軸駆動装置として使用することができる。
【0088】
次に、前記駐車ブレーキ装置18について、図2図5図11図12により説明する。図2図5に示すように、該駐車ブレーキ装置18は、前記入力軸43を制動する制動部18aと、この制動を手動で解除する解除部18bとにより構成される。
【0089】
このうちの制動部18aにおいては、左のケース半部21の側壁40の左側面に、コイル129を埋設した円柱状の支持ブロック127が固設され、該支持ブロック127の軸心孔127aを貫通して、前記入力軸43が左方に延出されている。
【0090】
そして、該入力軸43の左端部には、筒状のボス体138が外嵌固定され、該ボス体138の外周の軸方向略中央には、前記入力軸43と一体的に回転する円盤状のブレーキロータ133が固設されている。更に、該ブレーキロータ133よりも内側には、ブレーキパッド132が、前記ボス体138の外周に、軸方向摺動可能かつ相対回転不能にスプライン嵌合されると共に、ブレーキロータ133よりも外側には、固定ディスク134が配置されている。
【0091】
該固定ディスク134の外方には、解除ディスク135が配置され、更に外方には、該解除ディスク135、前記固定ディスク134、ブレーキロータ133、及びブレーキパッド132を内部に収容するお椀状のブレーキケース128が配置されている。該ブレーキケース128の開口部が、前記支持ブロック127の左端部に外嵌されると共に、固定用のボルト136が、ブレーキケース128から支持ブロック127を介して側壁40まで螺挿されており、ブレーキケース128と支持ブロック127が、左のケース半部21の左側面に締結固定されている。
【0092】
このようなブレーキケース128の内周面には、前記固定ディスク134が固設されると共に、前記ブレーキパッド132の外周近くの内側面132aは、前記支持ブロック127に取り付けたバネ130によって、外方に向かって付勢されており、付勢されたブレーキパッド132により、ブレーキロータ133が固定ディスク134との間で挟持されて制動される。
【0093】
このような構成の制動部18aにおいて、電動モータ19に電力が供給されて車軸駆動装置2が運転状態では、図示せぬコントローラからの信号により、前記コイル129が作動し、ブレーキパッド132が内方に向かって牽引されており、前記ブレーキロータ133の制動は解除されている。逆に、電動モータ19への電力が供給されずに車軸駆動装置2が停止状態になると、前記コイル129が作動せず、ブレーキパッド132がバネ130の弾性力によって外方に向かって付勢され、前記ブレーキロータ133が制動される。
【0094】
従って、車軸駆動装置2が停止状態になると、ブレーキロータ133を介して入力軸43が自動的に制動され、電動モータ19からの動力による車軸24L・24Rの駆動を確実に停止することができる。
【0095】
前記解除部18bにおいては、前記ブレーキケース128の軸心に設けたネジ孔128aに、解除ボルト137が外側から螺挿され、該解除ボルト137の先部には、前記解除ディスク135の軸心孔135aが遊嵌され、リング141により、前記解除ディスク135からの解除ボルト137の抜け止め防止を図っている。
【0096】
該解除ディスク135の軸心近くには、小径の段差部135bが外方に突出形成され、該段差部135bの外周にバネ139が外嵌されると共に、該バネ139は前記ブレーキケース128と解除ディスク135との間に張設されており、解除ディスク135は、通常は、外方に向かって、つまりブレーキパッド132から離間する方向に牽引されている。一方、解除ディスク135の外周近くの内側面には、押圧ピン131が固設され、該押圧ピン131は、前記固定ディスク134からブレーキロータ133を貫通してブレーキパッド132の外側面まで延設されている。
【0097】
このような構成において、解除ボルト137を手動で回転させ、ブレーキケース128のネジ孔128aを内方に向かって螺挿していくと、解除ボルト137に遊嵌された解除ディスク135は回転することなく内方に移動し、該解除ディスク135に固設された押圧ピン131が、ブレーキパッド132を内方に向かって押圧移動させ、前記ブレーキロータ133の制動が解除される。
【0098】
これにより、作業車両1を故障や運搬等のために移動させる際、車軸駆動装置2が停止状態にあるために入力軸43が自動的に制動されていても、解除ボルト137の手動操作により、入力軸43の制動を確実に解除して車軸24L・24Rを回転自在とし、作業車両1の迅速な移動が可能となり、メンテナンス性や作業効率の向上を図ることができる。
【0099】
また、図11図12に示すように、前記手動解除機能付きの駐車ブレーキ装置18の代わりに、解除部18bを省いて制動部18aだけとした駐車ブレーキ装置18Aを設けると共に、右の車軸24Rの代わりに、クラッチ装置142を備えた車軸24RAを設けるようにしてもよい。
【0100】
該クラッチ装置142においては、車軸24RAの内端部に、クラッチスライダ143が軸方向摺動可能かつ相対回転不能にスプライン嵌合されると共に、クラッチスライダ143の内側の歯部143aは、デフギア装置49Aにおける右のデフサイドギア57Aの外側に形成された歯部57Aaに対向配置されている。そして、該デフサイドギア57Aは、前記車軸24RAと同一軸心上の中央軸145に固設されている。
【0101】
このような構成において、図示せぬクラッチレバーを傾倒操作してクラッチ「入」にすると、図示せぬリンクを介してフォーク144が左方に操作され、クラッチスライダ143が左方に摺動して該クラッチスライダ143の歯部143aがデフサイドギア57Aの歯部57Aaと噛合する。すると、中央軸145が車軸24RAと接続され、左右の車軸24L・24RAとが差動的に結合される。
【0102】
逆に、クラッチ「切」にすると、フォーク144が右方に操作され、クラッチスライダ143が右方に摺動して該クラッチスライダ143の歯部143aがデフサイドギア57Aの歯部57Aaから離間する。すると、中央軸145が車軸24RAと遮断され、左右の車軸24L・24RAへの動力が切断される。
【0103】
これにより、前記駐車ブレーキ装置18の操作空間が狭い等してブレーキ解除操作が困難な場合でも、クラッチレバー等のクラッチ操作と連動して車軸24L・24RAを回転自在とし、作業車両1の迅速な移動が可能となり、メンテナンス性や作業効率の向上を図ることができる。
【0104】
更に、前記駐車ブレーキ装置18では、入力軸43の制動状態への復帰操作を忘れた場合でも、電動モータ19作動時には車軸24L・24Rが回動するため、復帰操作を忘れたと即座に判断できない。これに対し、駐車ブレーキ装置18Aとクラッチ装置142とを併設すると、クラッチ「入」への復帰操作を忘れた場合は、電動モータ19作動時でも車軸24L・24RAが回動しないため、復帰操作を忘れたと即座に判断することができ、作業効率の向上が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、電動モータからの動力を車軸に伝達するギア部を駆動ケース内に収容し、該駆動ケースの底部と上部に、それぞれ、前記ギア部の少なくとも一部を浸漬する第一油溜まりと、該第一油溜まり内からの潤滑油を貯留する第二油溜まりとを設け、該第二油溜まりは、前記電動モータを収容するモータ室を介して第一油溜まりに連通した、全ての車軸駆動装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0106】
2・2A・2B 車軸駆動装置
19 電動モータ
20 車軸ケース
23 ギア部
24L・24R・100L・100R・121 車軸
25 第一油溜まり
26 第二油溜まり
27 モータ室
41 側壁(隔壁)
47 底壁(隔壁)
52 大径ギア(ギア)
54 リングギア(ギア)
72 連絡油路
81 第一導入油路
82 第二導入油路
H 対称面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12