特許第5760254号(P5760254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760254
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ろ過装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/34 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
   A61M1/34 500
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-89391(P2013-89391)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2013-255782(P2013-255782A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2013年4月22日
(31)【優先権主張番号】13/491,852
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596064112
【氏名又は名称】ポール・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド アール. デルジャッコ
(72)【発明者】
【氏名】パクストン イー. プロヴィテラ
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−145662(JP,A)
【文献】 特開2007−304016(JP,A)
【文献】 特表2012−501708(JP,A)
【文献】 特開2009−101022(JP,A)
【文献】 特表平09−501066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1つ以上のポートを含む入口部と、出口部出口ポートおよび溶離流体流入ポートを含む出口部とを備えるハウジングであって、前記入口部の前記ポートと前記出口部出口ポートとの間の第1の流体流路と、前記出口部の記溶離流体流入ポートと前記入口部の前記ポートとの間の第2の流体流路を画定するハウジングと、
(b)第1面と第2面とを有し、前記第1及び第2の流体流路を横切って前記ハウジングに配置された繊維状多孔質白血球除去フィルタと、
(c)第1面と第2面とを有し、前記第1及び第2の流体流路を横切って前記ハウジングに配置されている第1有孔拡散板であって、当該第2面は、前記第1有孔拡散板の中心から周縁に向かって徐々に減少するような略凸形状を有し、前記ハウジング内において前記白血球除去フィルタの前記第2面と前記出口部出口ポート及び前記溶離流体流入ポートとの間に配置され、前記第2面が前記出口部出口ポートに対向する、第1有孔拡散板と、
を備える、生体液処理装置。
【請求項2】
前記第1有孔拡散板が、2つ以上の略同心円のパターンに配置された小孔を備える、請求項1に記載の生体液処理装置。
【請求項3】
前記第1有孔拡散板が、非同心円状パターンに配置された小孔を備える、請求項1または2に記載の生体液処理装置。
【請求項4】
前記第1有孔拡散板の前記第1面が、上方に突出するリッジを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体液処理装置。
【請求項5】
前記第1有孔拡散板の前記第1面が、上方に突出する複数の同心円状のリッジを含む、請求項4に記載の生体液処理装置。
【請求項6】
前記リッジは不連続であり、前記リッジの列が1列おきに小孔によって切断されている、請求項5に記載の生体液処理装置。
【請求項7】
前記入口部は、入口部入口ポートと、独立した入口部溶離流体排出ポートとを備え、
前記ハウジングが、前記入口部入口ポートと前記出口部出口ポートとの間の第3の流体流路と、前記出口部の記溶離流体流入ポートと前記独立した入口部溶離流体排出ポートとの間の第4の流体流路を画定する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の生体液処理装置。
【請求項8】
第1面と第2面とを有し、前記第1及び第2の流体流路を横切って前記ハウジングに配置された第2有孔拡散板であって、前記ハウジング内において前記白血球除去フィルタの前記第1面と前記入口部の前記ポートとの間に配置された第2有孔拡散板をさらに備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体液処理装置。
【請求項9】
1つ以上の生体液成分を採取するための方法であって、
(a)生体液を請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体液処理装置に通すステップであって、生体液は、前記生体液処理装置の前記入口部の前記ポートから前記生体液処理装置の前記出口部出口ポートまで通過し、1つ以上の所望の生体液成分が、前記生体液が第1の流体流路に沿って前記入口部の前記ポートから前記出口部出口ポートまで通過する際に前記フィルタによって保持される、ステップと、
(b)生体液成分溶離流体を、前記出口部の前記溶離流体流入ポートから、前記第1有孔拡散板と、前記白血球除去フィルタと、前記入口部の前記ポートとを通過するように送るステップであって、前記生体液成分溶離流体が、1つ以上の生体液成分を前記フィルタから溶離させる、ステップと、
(c)1つ以上の溶離した生体液成分を採取するステップと、を備える方法。
【請求項10】
1つ以上の生体液成分を採取するための方法であって、
(a)生体液を請求項8に記載の生体液処理装置に通すステップであって、生体液は、前記生体液処理装置の前記入口部の前記ポートから前記生体液処理装置の前記出口部出口ポートまで通過し、1つ以上の所望の生体液成分が、前記生体液が前記第1の流体流路に沿って前記入口部の前記ポートから前記出口部出口ポートまで通過する際に前記フィルタによって保持される、ステップと、
(b)生体液成分溶離流体を、前記出口部の前記溶離流体流入ポートから、前記第1及び第2有孔拡散板と、前記白血球除去フィルタと、前記入口部の前記ポートとを通過するように送るステップであって、前記生体液成分溶離流体が、1つ以上の生体液成分を前記フィルタから溶離させる、ステップと、
(c)1つ以上の溶離した生体液成分を採取するステップと、を備える方法。
【請求項11】
溶離した白血球および/または幹細胞を採取するステップを備える請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
[0001]様々な用途に使用するための白血球への関心から、一部の白血球採取方法は、血液または血液製剤を市販の白血球除去ろ過装置に(装置入口と装置出口とを通過するように)通して、白血球を装置ハウジング内のフィルタ媒体によって捕捉し、それに続いて、ろ過装置に溶離流体を逆方向に(出口と入口とを通過するように)通すことによって白血球を装置から溶離する。
【0002】
[0002]しかしながら、回収効率を向上する装置および方法が必要とされている。本発明のこれらおよび他の利点は、以下に記載の説明から明らかとなる。
【発明の概要】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態は、生体液処理装置を提供するものである。この生体液処理装置は、(a)1つ以上のポートを含む入口部と、1つ以上のポートを含む出口部とを備え、入口部ポートと出口部ポートとの間の少なくとも1つの流体流路を画定するハウジングと、(b)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された多孔質フィルタと、(c)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第1有孔拡散板とを備え、第1拡散板は、ハウジングの多孔質フィルタの第2面と出口部ポートとの間に配置される。好ましくは、出口部は、出口ポートからなる第1ポートと、溶離流体流入ポートからなる第2ポートとを含み、ハウジングは、入口部ポートと出口ポートとの間の第1流体流路と、入口部ポートと溶離流体流入ポートとの間の第2流体流路を画定する。一実施形態では、入口部は、入口ポートからなる第1ポートと、溶離流体排出ポートからなる第2ポートとを含み、ハウジングは、入口部入口ポートと出口部出口ポートとの間の第1流体流路と、出口部溶離流体流入ポートと入口部溶離流体流出ポートとの間の第2流体流路を画定する。
【0004】
[0004]一部の実施形態では、生体液処理装置は、第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第2有孔拡散板をさらに備え、第2拡散板は、ハウジングの多孔質フィルタの第1面と入口部ポートとの間に配置される。
【0005】
[0005]好ましくは、多孔質フィルタは、少なくとも1つの多孔質白血球除去媒体を備える。
【0006】
[0006]本発明の他の実施形態は、生体液処理装置を提供し、生体液処理装置は、(a)入口ポートを含む入口部と、出口ポートおよび溶離流体流入ポートを含む出口部とを備え、入口部入口ポートと出口部出口ポートとの間の流体流路と、出口部溶離流体流入ポートと入口部入口ポートとの間の流体流路とを画定するハウジングと、(b)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された多孔質フィルタと、(c)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第1有孔拡散板とを備え、拡散板は、ハウジングの多孔質フィルタの第2面と出口部ポートとの間に配置される。
【0007】
[0007]本発明のさらに他の実施形態は、生体液処理装置を提供し、生体液処理装置は、(a)少なくとも1つの入口ポートを含む入口部と、出口ポートおよび溶離流体流入ポートを含む出口部とを備え、入口部入口ポートと出口部出口ポートとの間の流体流路と、出口部溶離流体流入ポートと入口部ポートとの間の流体流路とを画定するハウジングと、(b)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された多孔質フィルタと、(c)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第1有孔拡散板であって、ハウジングの多孔質フィルタの第2面と出口部ポートとの間に配置された第1有孔拡散板と、(d)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第2有孔拡散板であって、ハウジングの多孔質フィルタの第1面と入口部ポートとの間に配置された第2有孔拡散板とを備える。装置の一部の実施形態では、入口部は、入口ポートと、溶離流体排出ポートとを含み、ハウジングは、入口部入口ポートと出口部出口ポートとの間の流体流路と、出口部溶離流体流入ポートと入口部溶離流体排出ポートとの間の流体流路を画定し、多孔質フィルタ、第1有孔拡散板および任意の第2有孔拡散板は、流体流路を横切ってハウジングに配置される。
【0008】
[0008]他の実施形態では、1つ以上の所望の生体液成分を採取するための方法が提供され、本方法は、(a)生体液を生体液ろ過装置(生体液処理装置)の一実施形態に通し、生体液は、入口部ポートから出口部ポートまで通過し、1つ以上の所望の生体液成分が、生体液が流体流路に沿って入口部ポートから出口部ポートまで通過する際にフィルタによって保持され、(b)溶離流体を、出口部溶離流体流入ポートから、第1拡散板と、フィルタと、入口部ポートとを流体流路に沿って通過するように送り、溶離流体は、1つ以上の所望の生体液成分をフィルタから溶離させ、溶離した所望の生体液成分のうちの1つ以上を採取する。
【0009】
[0009]生体液ろ過装置が第2拡散板をさらに備える方法の一実施形態では、1つ以上の所望の生体液成分を採取するための方法は、(a)生体液を生体液ろ過装置の一実施形態に通し、生体液は、入口部ポートから出口部ポートまで通過し、1つ以上の所望の生体液成分が、生体液が流体流路に沿って入口部ポートから出口部ポートまで通過する際にフィルタによって保持され、(b)溶離流体を、出口部溶離流体流入ポートから、第1拡散板と、フィルタと、第2拡散板と、入口部ポートとを流体流路に沿って通過するように送り、溶離流体は、1つ以上の所望の生体液成分をフィルタから溶離させ、溶離した所望の生体液成分のうちの1つ以上を採取する。
【0010】
[0010]他の実施形態では、生体液処理システムが提供される。生体液処理システムは、少なくとも1つの容器、より好ましくは少なくとも2つの容器と流体連通する生体液処理装置の一実施形態を備える。システムの一実施形態では、容器のうちの1つは、幹細胞および/または白血球の凍結保存に適した容器からなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るろ過装置の一実施形態の分解図であり、入口部および入口ポートと、出口ポートおよび溶離流体流入ポートを含む出口部とを備えるろ過装置ハウジングを示しており、さらに入口部と出口部との間に位置付けられる白血球除去フィルタおよび拡散板も示している。
図2】本発明のろ過装置の一実施形態で使用される拡散板の一実施形態の、斜視図、側面図および断面図である。
図3-1】(A)〜(F)は拡散板の小孔パターンおよび小孔分布の一例を示している。
図3-2】(G)、(H)は拡散板の小孔パターンおよび小孔分布の一例を示している。
図3-3】(I)、(J)は拡散板の小孔パターンおよび小孔分布の一例を示している。
図3-4】(K)、(L)は拡散板の小孔パターンおよび小孔分布の一例を示している。
図3-5】(M)、(N)は拡散板の小孔パターンおよび小孔分布の一例を示している。
図4】本発明に係る拡散板およびろ過装置ハウジングの出口部の実施形態の部分断面図である。
図5】本発明に係るろ過装置ハウジングの一実施形態の入口部を示す図であり、図示の入口部は1つのポートを有する。
図6】本発明に係るろ過装置ハウジングの一実施形態の出口部を示す図である。
図7】本発明に係るろ過装置の他の実施形態の入口部の内部図であり、図示の入口部は、入口ポートと溶離流体排出ポートとを含む。
図8】本発明に係るろ過装置の一実施形態の分解図であり、入口部と出口部とを備えるろ過装置ハウジングと、さらに第1拡散板および第2拡散板と、第1拡散板と第2拡散板との間に配置された白血球除去フィルタとを示している。図示のろ過装置では、入口部および出口部はそれぞれ2つのポートを有しており、入口部は入口ポートおよび溶離流体排出ポートを含み、出口部は出口ポートおよび溶離流体流入ポートを含む。
図9】本発明に係る例示システムの一実施形態を示しており、図示のシステムは、図1に示すろ過装置の実施形態を含む。
図10】本発明に係る例示システムの他の実施形態を示しており、図示のシステムは、図1に示すろ過装置の実施形態を含む。
図11】本発明に係る例示システムのさらに他の実施形態を示しており、図示のシステムは、図8に示すろ過装置の実施形態を含む。
図12】本発明に係る例示システムのさらに他の実施形態を示しており、図示のシステムは、図1に示すろ過装置の実施形態を含む。
図13】本発明に係るろ過装置の実施形態の流体流路を略図で示しており、ろ過装置は、1つまたは2つの拡散板を備え、ろ過装置ハウジングの入口部および/または出口部は、1つまたは2つのポートを備える。
【本発明の詳細な説明】
【0012】
[0024]好適には、本発明に係る装置を使用して、所望の生体液成分、好ましくは白血球および/または幹細胞などのターゲット細胞の回収および採取を向上させることができる。装置は、臍帯血、羊水、および/または骨髄に関する用途に特に有用である。
【0013】
[0025]本発明の一実施形態は、生体液処理装置を提供し、生体液処理装置は、(a)1つ以上のポートを含む入口部と、1つ以上のポートを含む出口部とを備え、入口部ポートと出口部ポートとの間の少なくとも1つの流体流路を画定するハウジングと、(b)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された多孔質フィルタと、(c)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第1有孔拡散板とを備え、第1拡散板は、ハウジングの多孔質フィルタの第2面と出口部ポートとの間に配置される。好ましくは、出口部は、出口ポートからなる第1ポートと、溶離流体流入ポートからなる第2ポートとを含み、ハウジングは、入口部ポートと出口ポートとの間の第1流体流路と、入口部ポートと溶離流体流入ポートとの間の第2流体流路を画定する。一実施形態では、入口部は、入口ポートからなる第1ポートと、溶離流体排出ポートからなる第2ポートとを含み、ハウジングは、入口部入口ポートと出口部出口ポートとの間の第1流体流路と、出口部溶離流体流入ポートと入口部溶離流体流出ポートとの間の第2流体流路を画定する。
【0014】
[0026]一部の実施形態では、生体液処理装置は、第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第2有孔拡散板をさらに備え、第2拡散板は、ハウジングの多孔質フィルタの第1面と入口部ポートとの間に配置される。
【0015】
[0027]好ましくは、多孔質フィルタは、少なくとも1つの多孔質白血球除去媒体を備える。
【0016】
[0028]本発明の他の実施形態は、生体液処理装置を提供し、生体液処理装置は、(a)入口ポートを含む入口部と、出口ポートおよび溶離流体流入ポートを含む出口部とを備え、入口部入口ポートと出口部出口ポートとの間の流体流路と、出口部溶離流体流入ポートと入口部入口ポートとの間の流体流路とを画定するハウジングと、(b)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された多孔質フィルタと、(c)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第1有孔拡散板とを備え、拡散板は、ハウジングの多孔質フィルタの第2面と出口部ポートとの間に配置される。
【0017】
[0029]本発明のさらに他の実施形態は、生体液処理装置を提供し、生体液処理装置は、(a)少なくとも1つの入口ポートを含む入口部と、出口ポートおよび溶離流体流入ポートを含む出口部とを備え、入口部入口ポートと出口部出口ポートとの間の流体流路と、出口部溶離流体流入ポートと入口部ポートとの間の流体流路とを画定するハウジングと、(b)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された多孔質フィルタと、(c)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第1有孔拡散板であって、ハウジングの多孔質フィルタの第2面と出口部ポートとの間に配置された第1有孔拡散板と、(d)第1面と第2面とを有し、流体流路を横切ってハウジングに配置された第2有孔拡散板であって、ハウジングの多孔質フィルタの第1面と入口部ポートとの間に配置された第2有孔拡散板とを備える。装置の一部の実施形態では、入口部は、入口ポートと、溶離流体排出ポートとを含み、ハウジングは、入口部入口ポートと出口部出口ポートとの間の流体流路と、出口部溶離流体流入ポートと入口部溶離流体排出ポートとの間の流体流路を画定し、多孔質フィルタ、第1有孔拡散板および任意の第2有孔拡散板は、流体流路を横切ってハウジングに配置される。
【0018】
[0030]生体液処理装置の一部の実施形態では、少なくとも1つの有孔拡散板は、2つ以上の略同心円状のパターンに配置された小孔を備え、および/または有孔拡散板は、非同心円状に配置された小孔を備える。これに代えて、あるいはこれに加えて、少なくとも1つの有孔拡散板の第1面は、上方に突出するリッジを含む。有孔拡散板の第1面は、上方に突出する複数の同心円状のリッジを含むことができる。一部の実施形態では、リッジは不連続であり、リッジの列は1列おきに小孔によって切断されている。
【0019】
[0031]他の実施形態では、1つ以上の所望の生体液成分を採取するための方法が提供され、本方法は、(a)生体液を生体液ろ過装置の一実施形態に通し、生体液は、入口部ポートから出口部ポートまで通過し、1つ以上の所望の生体液成分が、生体液が流体流路に沿って入口部ポートから出口部ポートまで通過する際にフィルタによって保持され、(b)溶離流体を、出口部溶離流体流入ポートから、第1拡散板と、フィルタと、入口部ポートとを流体流路に沿って通過するように送り、溶離流体は、1つ以上の所望の生体液成分をフィルタから溶離させ、溶離した所望の生体液成分のうちの1つ以上を採取する。
【0020】
[0032]生体液ろ過装置がさらに第2拡散板を備える方法の一実施形態では、1つ以上の所望の生体液成分を採取するための方法は、(a)生体液を生体液ろ過装置の一実施形態に通し、生体液は、入口部ポートから出口部ポートまで通過し、1つ以上の所望の生体液成分が、生体液が流体流路に沿って入口部ポートから出口部ポートまで通過する際にフィルタによって保持され、(b)溶離流体を、出口部溶離流体流入ポートから、第1拡散板と、フィルタと、第2拡散板と、入口部ポートとを流体流路に沿って通過するように送り、溶離流体は、1つ以上の所望の生体液成分をフィルタから溶離させ、溶離した所望の生体液成分のうちの1つ以上を採取する。
【0021】
[0033]一部の実施形態では、本方法はクローズドシステムを維持しながら実行することができる。好ましくは、溶離流体は、白血球および/または幹細胞をフィルタから溶離させ、本方法は、溶離した白血球および/または幹細胞を採取する。本方法の一部の実施形態では、溶離した白血球および/または幹細胞をさらに処理して、例えば、それ続いてさらに精製した細胞を採取する。これに加えて、あるいはこれに代えて、溶離した生体液成分、好ましくは白血球および/または幹細胞を凍結保存する。
【0022】
[0034]他の実施形態では、生体液を処理するためのシステムが提供される。生体液処理システムは、生体液処理装置の一実施形態と、複数の容器と、溶離流体供給装置とを備える。
【0023】
[0035]生体液処理システムの他の実施形態は、少なくとも1つの容器、より好ましくは少なくとも2つの容器と流体連通する生体液処理装置の一実施形態を備える。システムの一実施形態では、容器のうちの1つは、幹細胞および/または白血球の凍結保存に適した容器からなる。一部の実施形態では、システムは溶離流体供給装置をさらに備える。
【0024】
[0036]本発明は、様々なソース、特に哺乳類からの生体液を使用して実施することができる。哺乳類は、ネコ科の動物(ネコ)およびイヌ科の動物(イヌ)を含むネコ目、ウシ亜科の動物(ウシ)およびイノシシ科の動物(ブタ)を含むウシ目由来のもの、またはウマ科の動物(ウマ)を含むウマ目であることが好ましい。通常、哺乳類は、サル目、セボイド目(Ceboids)またはシモイド目(Simoids)(サル)、もしくは真猿亜目(ヒトおよび類人猿)である。特に好ましい哺乳類はヒトである。
【0025】
[0037]以下、本発明の各構成要素をより詳細に説明する。同一の構成要素は、同一の参照番号で示す。
【0026】
[0038]図1図2、および図4から図6に示す実施形態では、生体液処理装置1000は、ハウジング600を備える。ハウジング600は、入口101と、入口ポート101a(この図示の実施形態では、入口ポート101aは、溶離流体排出ポートにもなる)と、入口ポート101aと連通する任意の入口流路107と、入口チャンバ102と、内面104を有する入口部壁103とを備える入口部100と、出口管208と、出口ポート201aと、出口ポートと連通する任意の出口流路207と、出口チャンバ202と、出口部壁203と、溶離流体流入ポート300と、溶離流体流入ポートと連通する任意の出口流路307と備える出口部200とを備え、入口部入口ポート101aと出口部出口ポート201aとの間の流路を画定し、また出口部溶離流体流入ポート300と入口部入口ポート101aとの間の流体流路を画定する。便宜上、上記の説明では、ポート201aおよびポート300は、それぞれ出口部の「出口ポート」および「溶離流体流入ポート」とされている。しかしながら、(図13に略図で示しているように)例えば、ポート201aを出口部の「溶離流体流入ポート」とし、ポート300を出口部の「出口ポート」とすることが可能であることは明らかである(これは、207、208、307および308などの関連構造にも同様に適用できる)。
【0027】
[0039]生体液処理装置の上記の図示実施形態は、第1面410および第2面420と、小孔450とを有する第1有孔拡散板400と、第1面501および第2面502を有する白血球除去フィルタ500とをさらに備える。図示のフィルタは、繊維状白血球除去媒体510を含む繊維状白血球除去フィルタエレメント515を備える。拡散板および白血球除去フィルタは、流体流路を横切ってハウジングに配置される。
【0028】
[0040]図1図2および図4における拡散板400の図示の実施形態では、白血球除去フィルタに対向する第1面410は略平面状の外形を有しており、ハウジング出口部ポートに対向する第2面420は略凸状の外形を有する(例えば、中心から周縁に向かって厚さが徐々に減少する)。しかしながら、他の配置も利用可能であり、第1拡散板および第2拡散板を含む実施形態では、2つの拡散板は異なる配置とすることができる。
【0029】
[0041]小孔は、任意の適当なパターンおよび分布とすることができ(例えば、図3−1〜図3−5にパターンおよび分布の例を示す)、第1拡散板および第2拡散板を含む実施形態では、2つの拡散板の小孔は、異なるパターンおよび/または分布とすることができる。好ましくは、隣接する小孔を通る溶離流体の流れの重複を減少させながら、できる限り多くのフィルタ媒体を通過するように溶離流体を導けるように小孔を配置する。同時に、装置(拡散板を含む)のフォース(force)の閾値は、少なくとも約10psig、好ましくは少なくとも約15psig、より好ましくは少なくとも約20psigである。一部の実施形態では、フォースの閾値は、約20psig〜約45psigの範囲である。
【0030】
[0042]拡散板が円形である一部の実施形態では、複数の小孔が2つ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の略同心円を形成し、(拡散板の中心から略等距離にある複数の小孔によって形成される)これらの円は、拡散板の中心から外周に向かって直径が増加する。他の一部の実施形態では、複数の小孔は、略同心円を形成しないか、あるいはパターンが略同心円状パターンと非円形パターンとの組み合わせを含む。図示の実施形態のいくつかでは、小孔は外周に向かって略同心円を形成し、そのうちの一部の実施形態では、(例えば、図3−1の(A)および図3−1の(C)に示されているように)中心および/または中心付近の小孔が略同心円を形成している。また、他の実施形態では、(例えば、図3−1の(A)、(F)および(F)に示されているように)中心のパターンが拡散板の残りの部分のパターンと異なっており、例えば、中心のパターンが略同心円状ではない。あるいは、拡散板の中心の小孔をごく少数とすることもできる(例えば、図3の(E)では、中心の小孔は1つである)。
【0031】
[0043]図3−1の(A)および(C)に示す実施形態では、小孔が6つの略同心円のパターンを形成し、これらの円は拡散板の中心から外周に向かって直径が増加する。他の一部の図示の実施形態(図3−1の(B)および図3−1の(D)〜図3−2の(H)では、拡散板の中心以外の部分が略同心円状の小孔を有しており、これらの円は拡散板の中心から外周に向かって直径が増加する。他の一部の図示の実施形態(図3−3の(I)〜図3−5の(N))では、小孔が異なるパターン(例えば、非円形)を形成し、例えば、拡散板の外周付近の小孔が、拡散板の他の部分に位置付けられる小孔と異なるパターン(例えば、一部の小孔間の間隔が大きい非円形)を有する。
【0032】
[0044]小孔の内径は、任意の適当な内径とすることができる。また、拡散板は異なる直径の小孔を有することが可能であり、例えば、少なくとも1箇所(例えば、外側の輪)の小孔の直径が、少なくとも他の1箇所(例えば、より中心に近い輪)の小孔の直径と異なる。例として、より外側の輪の小孔の平均直径を、(例えば、図3−2の(G)および(H)に示されるように)より中心に近い部分にある小孔の平均直径よりも大きくすることができ、またはその逆も可能である。通常、個々の小孔の平均内径は、約0.005インチ(約0.1mm)またはそれ以下から、約0.12インチ(約3.0mm)またはそれ以上の範囲である。小孔の内径は、一方の面と他方の面でほぼ同一とすることができる。あるいは、図2の断面図に示す実施形態では、小孔を非対称の開口とすることができ、例えば、小孔の第2面420での内径は第1面410での内径よりも大きい。あるいは、小孔の第1面410での内径を第2面420での内径よりも大きくすることもできる(図示せず)。第1拡散板および第2拡散板を含む実施形態では、2つの拡散板は異なる直径の小孔および/または異なる孔の対称性を有することが可能である。
【0033】
[0045]拡散板の一方または両方の面は、追加の構成要素、例えばリッジ(隆起部)をさら含むことができる。好ましくは、フィルタの第2面502と対向する拡散板の第1面410は、例えば両面間に間隔をあけて、ろ過の際のフィルタからの生体液の排出を向上させるために、上方に突出するリッジを含む。図2に示す実施形態では、第1面410は複数の同心円状のリッジ411を含む。リッジは不連続であり、また、リッジの列は1列おきに小孔450によって切断されている。図示の実施形態では、リッジは12個の略同心円のパターンを形成しており、これらの円は、拡散板の中心から外周に向かって直径が増加している。第1拡散板および第2拡散板を含む実施形態では、2つの拡散板は、リッジおよび/または配列された部材などの異なる追加構成要素を有することが可能である。
【0034】
[0046]一般的に小孔を有する一体かつ一枚の固体板である拡散板は、例えば、略長方形、正方形、円形、楕円形または三角形などの、任意の適当な形状とすることができる。通常、板の形状は、例えばハウジングでの装着および/または封着を容易にするために、ハウジングの内部の形状と略一致することになる。例えば、図示の実施形態では、ハウジングおよび拡散板は略円形である。
【0035】
[0047]ハウジングは、任意の数および任意の位置のポートを含み、入口部ポートと出口部ポートとの間の流路を画定し、第1拡散板および白血球除去フィルタ(および、任意で第2拡散板)が流体流路を横切ってハウジングに配置される様々な構成を含むことができる。図示の実施形態では、入口部は1つまたは2つのポートを含み、出口部は2つのポートを含む。しかしながら、出口部が含むポートを1つとすることができ、また入口部および/または出口部が含むポートを3つまたはそれ以上とすることができる。
【0036】
[0048]一好適実施形態では、溶離流体流入ポートは出口部壁に設けられ、第1拡散板の第2面の略中心に対向するように配置される。出口部出口ポートは出口部壁に設けられ、第1拡散板の第2面の中心ではない部分に対向するように配置される。入口部入口ポートは入口部壁に設けられ、フィルタの第1面の中心ではない部分に対向するように配置される。
【0037】
[0049]必要に応じて、装置は、例えば独立エレメント(例えば、メッシュエレメントなど)として、および/またはハウジングの一部(フィルタの上流面および/または下流面に面したハウジングの表面上の1つ以上のリッジなど)として、1つ以上のスペーサおよび/または排液部材を含むことが可能である。このような部材によって、例えば、生体液を入口ポートからフィルタおよび出口ポートを通してプライミングおよび/もしくは通過させ、ならびに/または溶離流体を溶離流体流入ポートからフィルタおよび入口ポートを通して通過させるために、ろ過装置を通る流体の流れを向上させることができる。
【0038】
[0050]図5に示す実施形態では、入口部100は、スロット105と、複数の同心円状のリッジ106と、流路107とを含む内面104を有する入口部壁103を含み、リッジおよび流路はスロットによって切断されている。図示の実施形態では、スロットは深さが一定ではなく、入口部入口ポート101aに近い方の端部がもう一方の端部よりも深い。図示の入口部は、入口部入口ポート101aにつながる入口管108も含む。リッジが存在することによって入口部壁103とフィルタの第1面501との間に空間ができ、例えば、溶離流体を溶離流体流入ポートからフィルタおよび入口ポートを通してプライミングおよび/または通過させるために、ろ過装置を通る流体の流れを向上させることができる。
【0039】
[0051]図6に示す実施形態では、出口部200は、内面204を有する出口部壁203を含む。通常、図4に示すように、内面204の外形は拡散板400の第2面420の外形と略相補形になっている。例えば、第2面420が略凸状の外形を有する場合、内面204は略凹状の外形を有することが好ましく、また、第2面420が略平面状である場合、内面204は略平面である。
【0040】
[0052]さらに、図6に示す実施形態では、出口部は、出口部出口ポート201aにつながる出口管208と、出口部溶離流体流入ポート300につながる溶離管308と、管のうちの少なくとも1つと連通する可撓性導管を保持するためのリテーナ209とを含む。
【0041】
[0053]図7(入口部の内部図)および図8(ろ過装置)に示す実施形態では、生体液処理装置1000’は、ハウジング600’を備える。ハウジング600’は、入口101’と、入口ポート101a’と、溶離流体排出ポート101bと、入口ポート101a’と連通する任意の入口流路107と、ポート101a’および101bと連通する任意の流路109と、入口チャンバ102’と、内面104’を有する入口部壁103’と、(不連続リッジとして図示する)複数の同心円状のリッジ106’と、流路107’とを備え、リッジおよび流路がスロット110によって切断されている入口部100’と、出口管208と、出口ポート201aと、出口ポートと連通する任意の出口流路207と、出口チャンバ202と、出口部壁203と、溶離流体流入ポート300と、溶離流体流入ポートと連通する任意の出口流路307とを備える出口部200とを備え、入口部入口ポートと出口部出口ポートとの間の流体流路を画定し、また出口部溶離流体流入ポートと入口部溶離流体流出ポートとの間の流体流路を画定する。生体液処理装置の図示の実施形態は、第1面410および第2面420と、小孔450とを有する第1有孔拡散板400と、第1面501および第2面502を有する白血球除去フィルタ500と、繊維状白血球除去媒体510を含む繊維状白血球除去フィルタエレメント515を有する図示のフィルタと、第1面410’および第2面420’と、小孔450’とを有する第2有孔拡散板400’と、を備える。白血球除去フィルタは、第1拡散板と第2拡散板との間に置かれている。拡散板および白血球除去フィルタは、流体流路を横切ってハウジングに配置される。
【0042】
[0054]便宜上、上記の説明では、ポート101a’およびポート101bは、それぞれ入口部の「入口ポート」および「溶離流体排出ポート」とされている。しかしながら、例えば(図13に略図で示しているように)、ポート101a’を入口部の「溶離流体排出ポート」とし、ポート101bを入口部の「入口ポート」とすることが可能であることは明らかである(これは、107などの関連構造にも同様に適用できる)。他の実施形態について上で述べたとおり、便宜上、上記の説明では、ポート201aおよびポート300は、それぞれ出口部の「出口ポート」および「溶離流体流入ポート」とされている。しかしながら、例えば(図13に略図で示しているように)、ポート201aを出口部の「溶離流体流入ポート」とし、ポート300を出口部の「出口ポート」とすることが可能であることは明らかである(これは、207、208、307および308などの関連構造にも同様に適用できる)。
【0043】
[0055]図7に示す実施形態では、第1面410は複数の同心円状のリッジ411を含む。リッジは不連続であり、また、リッジの列は1列おきに小孔450によって切断されている。
【0044】
[0056]様々な白血球除去フィルタが本発明での使用に適している。図示の実施形態では、第1面501および第2面502を有する多孔質白血球除去フィルタ500は、少なくとも1つの繊維状多孔質白血球除去媒体510を有する少なくとも1つの繊維状多孔質白血球除去エレメント515を備えており、繊維状多孔質白血球除去媒体は、1つ以上の媒体層を備えることができる。フィルタ500は、複数のフィルタエレメントを含むことができる。フィルタ500は、追加のエレメント、層または構成要素を含むことができ、それらは、例えば前置ろ過、支持、排液、スペーシングおよび緩衝のうちの少なくとも1つの、異なる構造および/または機能を有することが可能である。例として、フィルタ500は、メッシュおよび/またはスクリーンなどの少なくとも1つの追加要素も含むことができる。
【0045】
[0057]様々な生体液成分溶離流体が本発明での使用に適している。通常、溶離流体は所望の生体液成分と生理学的に適合し、生体液成分に大きな影響を及ぼさない。溶離流体の具体例としては、例えば、生理食塩水(通常生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む)や、米国特許第6,544,751号明細書および第7,291,450号明細書に開示されているより粘性の高い流体が挙げられる。
【0046】
[0058]フィルタに捕捉または保持された所望の成分は、多孔質フィルタからバックフラッシュ(backflushing)によって放出される。例えば、溶離流体を、溶離流体流入ポートから、拡散板を通過し、さらに多孔質フィルタをフィルタの第2面(便宜上、以下「下流面」と呼ぶ)からフィルタの第1面(便宜上、以下「上流面」と呼ぶ)に向かって通過し、さらに入口部ポートを通過するように送ることによって、成分が放出される。第1拡散板および第2拡散板を含む実施形態では、バックフラッシュは、溶離流体を、溶離流体流入ポートから、第1拡散板を通過し、さらに多孔質フィルタをフィルタの下流面からフィルタの上流面に向かって通過し、さらに第2拡散板を通過し、さらに入口部ポートを通過するように送る。
【0047】
[0059]バックフラッシュは、任意の適当な流体流量、例えば約0.1〜15L/min/mで行うことができるが、この範囲よりも大幅に高いまたは低い流量で行うこともできる。例えば、バックフラッシュは、約1〜8L/min/mなどの約0.5〜10L/min/mの範囲で行うことができ、より好ましくは、流量は、約2〜6L/min/m、もしくはさらに約2.5〜5L/min/mなど(例えば、約3〜4L/min/m)の約1.5〜7L/min/mの範囲である。最も好ましい流量は、溶離流体の粘度および/または温度と、フィルタ媒体の特質とによって決定してもよい。したがって、より穏やかな処理が望まれる場合などの一部の実用例においては、バックフラッシュは、約1〜100ml/min/m(例えば、約15〜85ml/min/m)の範囲の流量で行うことができ、より好ましくは、流量は、約30〜70ml/min/m、もしくはさらに約40〜60ml/min/m(例えば、約50ml/min/m)の範囲である。さらに、一部の実施形態では、バックフラッシュの際に、バックフラッシュ流体の流れをパルシングすることができる。
【0048】
[0060]本発明の実施形態に従って、任意の適当な体積の生体液を処理することができる。また、装置は様々なフィルタ、例えば、例えば約0.5インチ(約1.2cm)またはそれ以下から約5インチ(約12cm)またはそれ以上の範囲の直径を有するフィルタを含むことができる。したがって、このようなフィルタに合わせて、溶離圧は通常、1psi(約6.89kPa)〜100psi(約689kPa)の範囲内であり、孔の内径は通常、約0.005インチ(約0.12mm)〜約0.12インチ(約3.0mm)の範囲内であり、孔ごとの媒体隙間(フィルタ媒体の溶離可能領域)は、約0.010in(約6.45mm)〜約1in(約645mm)の範囲内であり、溶離流量は、約1ml/s〜約50ml/sの範囲内である。これに基づき、孔を、フィルタ媒体の大部分の領域に及ぶように簡単かつ迅速に配置することができる。
【0049】
[0061]ろ過装置の実施形態は、生体液処理システムに含むことが可能であり、例えば、システムは複数の導管および容器、好ましくは、サンプリングポーチや血液バッグ(例えば、採集バッグおよび/またはサテライトバッグ)などの可撓性容器を含む。一実施形態では、本発明に係るシステムはクローズドシステムからなる。多種多様で適当な容器および導管が当技術分野で知られている。例えば、血液採集バッグおよびサテライトバッグ、サンプリングポーチ、ならびに導管は、軟質ポリ塩化ビニルから製造することができる。バッグ、ポーチ、および/または導管は、例えば、エチレンブチルアクリレートコポリマー(EBAC)樹脂、エチレンメチルアクリレートコポリマー(EMAC)樹脂、超高分子量軟質PVC樹脂およびエチレンビニルアセテート(EVA)から製造することもできる。バッグ、ポーチ、および/または導管は、例えば、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステルおよびポリカーボネートから形成することもできる。
【0050】
[0062]所望の生体液成分(例えば、白血球および/または幹細胞)の凍結保存を含む実施形態では、適当な追加のシステム構成要素、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの凍結保存剤に適合する、および/または凍結保存に対応する容器および導管は、限定はされないが、米国特許第6,146,124号明細書、米国特許第5,789,147号明細書、米国特許出願公開第2004/0254560号明細書およびカナダ特許出願第2259878号明細書に開示されている容器および導管を含む。
【0051】
[0063]システムが溶離流体供給装置をさらに備える一実施形態では、溶離流体供給装置は、シリンジポンプまたはシリンジからなり、一部の実施形態では、溶離溶液を含む充填済みシリンジからなる。
【0052】
[0064]他のシステム構成要素は、当技術分野で公知のように、例えば、(例えば、生体液から血塊および/または残屑を除去するための、および/または滅菌凍結保存剤を提供するための)フィルタと、シリンジと、流れ制御装置(例えば、クランプおよび/またはトランスファーレッグクロージャ(transfer leg closures)および/またはバルブなどのインライン装置)を含む。
【0053】
[0065]以下の定義は、本発明に従って使用される。
【0054】
[0066]生体液。生体液は、生体に関連するあらゆる処理済みまたは未処理の流体を含む。具体的には、全血、温血または冷血、臍帯血、および保存血または新鮮血を含む血液;生理食塩水、栄養塩類および/または抗凝血溶液を含むがこれに限定されない少なくとも1つの生理溶液で希釈された血液などの処理済み血液;血小板濃縮液(PC)、多血小板血漿(PRP)、血小板乏血漿(PPP)、無血小板血漿、血漿、新鮮凍結血漿(FFP)、血漿から得られる成分、濃縮赤血球(PRC)、移行帯物質またはバフィーコート(BC)などの血液成分;胎盤および/または臍帯由来の流体;血液または血液成分由来の、あるいは骨髄由来の血液製剤;幹細胞を含む流体;羊水;血漿から分離され、生理溶液または凍結保護液中に再懸濁された赤血球;血漿から分離され、生理溶液または凍結保護液中に再懸濁された血小板を含む。生体液は、骨髄穿刺液を含む生理溶液も含む。本発明に従って処理する前に、生体液を処理して白血球の一部を除去しておくことができる。本明細書中で使用される血液製剤または生体液とは、上述の成分、および他の手段によって得られる同様の血液製剤または生体液を意味する。
【0055】
[0067]「単位(ユニット)」とは、ドナーから得た、あるいは全血1単位由来の生体液の量である(欧米での単位数)。単位は、1回の献血中の採血量を指すこともある。通常、1単位の容積は変動し、量は患者ごと、また献血ごとに異なる。複数単位分のある血液成分、具体的には複数単位分の血小板およびバフィーコートをプールまたは混合してもよく、通常は4単位以上が混合される。
【0056】
[0068]本明細書中で使用される用語「クローズド(closed)」は、生体液、例えば、ドナー血液、血液サンプルおよび/または血液成分の採取および処理(ならびに、必要に応じて、例えば部分の分離、成分への分離、ろ過、貯蔵および保存などの操作)を、システムの無菌完全性を損なうことなく可能にするシステムを意味する。クローズドシステムは、独自に作製するか、もしくは「無菌ドッキング(sterile docking)」装置として知られる装置を使用してシステム構成要素を結合させることで得ることができる。無菌ドッキング装置の例は、米国特許第4,507,119号明細書、第4,737,214号明細書および第4,913,756号明細書に開示されている。
【0057】
[0069]本発明に係るフィルタエレメントの繊維状多孔質白血球除去媒体の作製には、合成高分子材料を含む様々な材料を使用することができる。適当な合成高分子材料としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6T、ナイロン612、ナイロン11およびナイロン6共重合体が挙げられ、中でも、例えばPBTおよびPETなどのポリエステルがより好ましい。通常、繊維状多孔質媒体は、メルトブローン繊維(melt−blown fibers)から作製される。例えば、米国特許第4,880,548号明細書、第4,925,572号明細書、第5,152,905号明細書および第6,074,869号明細書には、メルトブローン繊維から作製された白血球フィルタおよび多孔質フィルタエレメントが開示されている。
【0058】
[0070]フィルタエレメントは、任意の適当な孔構造、例えば、孔サイズ(例えば、バブルポイント、例えば米国特許第4,340,479号明細書に記載のK、または毛管凝縮フローポロメトリー(capillary condensation flow porometry)によって明示される孔サイズ)、孔等級(pore rating)、孔径(例えば、米国特許第4,925,572号明細書などに記載の修正OSU F2試験を利用して特徴付けられる場合)、または流体をエレメントに通す際の1つ以上の対象物質の通過を減らすあるいは可能にする除去等級(removal rating)を有することができる。白血球は主に吸着によって除去されると考えられるが、ろ過によっても除去することができる。孔構造は、少なくともあるレベルの白血球を除去し、それと同時に所望の成分、例えば血漿、血小板および赤血球のうちの少なくとも1つを通過させることができるように選択することができる。使用する孔構造は、処理する生体液の組成と、処理済み生体液の所望の排出レベルとによって決定される。
【0059】
[0071]フィルタエレメントは、任意の所望の臨界湿潤表面張力(例えば米国特許第4,925,572号明細書で定義されるCWST)を有することができる。CWSTは、例えば米国特許第5,152,905号明細書、第5,443,743号明細書、第5,472,621号明細書および第6,074,869号明細書にさらに開示されているように、当技術分野において公知の方法で選択することができる。一般的に、フィルタエレメントは、約53dynes/cm(約53×10−5N/cm)よりも大きいCWST、より一般的には約58dynes/cm(約58×10−5N/cm)よりも大きいCWSTを有し、また、約66dynes/cm(約66×10−5N/cm)以上のCWSTを有することが可能である。一部の実施形態では、フィルタエレメントは、約62dynes/cm〜約115dynes/cm(約62〜約162×10−5N/cm)の範囲、例えば、約80〜約100dynes/cm(約80〜約100×10−5N/cm)の範囲のCWSTを有していてもよい。
【0060】
[0072]フィルタエレメントの表面特性は、湿式酸化または乾式酸化によって、またはポリマーで表面をコーティングするもしくは表面にポリマーを堆積させることによって、またはグラフト反応によって(例えば、CWSTに影響を及ぼすように、または表面電荷、例えば正電荷もしくは負電荷を含むように、および/または表面の極性もしくは親水性を変化させるように)改質させることができる。改質には、例えば、放射線照射、極性モノマーまたは荷電モノマー、電荷ポリマーを用いた表面のコーティングおよび/または硬化、ならびに化学的改質を行って官能基を表面に結合させることが含まれる。グラフト反応は、ガスプラズマ、蒸気プラズマ、熱、バンデグラーフ発生器(Van der Graaff generator)、紫外線、電子ビーム、もしくは様々な他の形態の放射物などのエネルギー源への暴露によって、またはプラズマ処理を利用した表面エッチングもしくは堆積によって活性化させてもよい。
【0061】
[0073]ハウジングは、例えば、接着剤、溶媒、レーザ溶着、高周波シール、超音波シールおよび/またはヒートシールを利用して、当技術分野において公知の方法でシールすることができる。これに加えて、あるいはこれに代えて、射出成形によってハウジングをシールすることができる。
【0062】
[0074]ハウジングおよび拡散板は、任意の適当な形状、例えば、略長方形、正方形、円形、楕円形または三角形とすることができる。ハウジングおよび拡散板は、あらゆる不浸透性熱可塑性材料を含む、処理する生体液と適合する任意の適当な硬質不浸透性材料から製作することができる。一好適実施形態では、ハウジングおよび拡散板は、アクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレンまたはポリカーボネート樹脂などのポリマーから製作され(ここで、ハウジングと拡散板とは別のポリマーから製作することができる)、ポリマーは、透明または半透明のポリマーであってよい。このようなハウジングおよび拡散板は、簡単かつ経済的に製作される。ハウジングが透明または半透明のポリマーから製作される実施形態では、ハウジングによって、ハウジングを通る生体液の通過が観察可能になる。
【0063】
[0075]上述のとおり、生体液処理装置の実施形態を本発明に係る生体液処理システムに含むことができる。必要に応じて、生体液はクローズドシステムを維持しながら処理することができる。本発明に係る生体液処理システムの一般的な実施形態は、生体液処理装置の一実施形態と、複数の導管、コネクタおよび流れ制御装置と、白血球が除去された生体液を収容するための容器と、好ましくは、凍結保存に適した容器からなる、溶離した細胞(例えば、白血球および/または幹細胞)を収容するための容器と、(例えば、細胞を対象者に投与する前に検査および/または分析するために)溶離した細胞のサンプルを得るためのシリンジおよび/またはポーチなどの1つ以上のサンプリング装置とを備える。2つ以上のサンプリング装置を含む実施形態では、サンプリング装置のうちの少なくとも2つの装置の容積は、同一容積または異なる容積とすることができる。
【0064】
[0076]図9から図12は、本発明に係るシステムの実施形態例を示す。システム2000の図示の実施形態のそれぞれは、生体液処理装置1000(図9から図11)または生体液処理装置1000’(図12)と、(白血球が除去された生体液を収容するための)収集容器30と、凍結保存に適した容器(冷凍バッグ)40と含む。図示の実施形態は、(シリンジとして示されている)任意の溶離流体供給装置350と、滅菌フィルタ51および導管52を備える任意の凍結保存剤供給システム50とを備え、凍結保存剤供給システム50は、凍結保存剤の流量を制御できるように配置される。
【0065】
[0077]図9図11および図12に示すシステムの実施形態は、粗フィルタを内部に有するドリップチャンバ20を含む。図10に示す実施形態は、可撓性トランスファーバッグ(transfer bag)21を含む。ドリップチャンバおよびトランスファーバッグは、本発明に従って処理される生体液の収容に適している。
【0066】
[0078]図7から図10に示すシステムの実施形態は、少なくとも1つのサンプリング装置を含む。図9および図11に示すシステムの実施形態は、シリンジ61および62を含み、シリンジ61の容積はシリンジ62の容積よりも小さいものとして図示されている。図12に示すシステムの実施形態は、1つのシリンジ61を含む。図10に示すシステムの実施形態は、(可撓性サンプリングポーチとして示される)2つの容器63を含む。図示のサンプリングポーチは、アクセスポートまたはルアーフィッティング(luer fitting)も含む。
【0067】
[0079]以下、本発明に係るシステムを使用した方法の例示実施形態についてより詳細に説明する。
【0068】
[0080]1つ以上の所望の生体液成分を採取するための方法の一実施形態は、(a)生体液を生体液ろ過装置の一実施形態に通し、生体液は、入口部ポートから出口部ポートまで通過し、1つ以上の所望の生体液成分が、生体液が流体流路に沿って入口部ポートから出口部ポートまで通過する際にフィルタによって保持され、(b)溶離流体を、出口部溶離流体流入ポートから、第1拡散板と、フィルタと、入口部ポートとを流体流路に沿って通過するように送り、溶離流体は、1つ以上の所望の生体液成分をフィルタから溶離させ、溶離した所望の生体液成分のうちの1つ以上を採取する。
【0069】
[0081]生体液ろ過装置が第2拡散板をさらに備える方法の一実施形態では、本方法は、(a)生体液を生体液ろ過装置の一実施形態に通し、生体液は、入口部ポートから出口部ポートまで通過し、1つ以上の所望の生体液成分が、生体液が流体流路に沿って入口部ポートから出口部ポートまで通過する際にフィルタによって保持され、(b)溶離流体を、出口部溶離流体流入ポートから、第1拡散板と、フィルタと、第2拡散板と、入口部ポートとを流体流路に沿って通過するように送り、溶離流体は、1つ以上の所望の生体液成分をフィルタから溶離させ、溶離した所望の生体液成分のうちの1つ以上を採取する。
【0070】
[0082]一部の実施形態では、入口部入口ポートが入口部溶離流体排出ポートにもなり、本方法は、(a)生体液を、入口部入口ポート/溶離流体排出ポートから出口部出口ポートまで通過させ、1つ以上の所望の生体液成分が、生体液が流体流路に沿って入口部入口ポート/溶離流体排出ポートから出口部出口ポートまで通過する際にフィルタによって保持され、(b)溶離流体を、出口部溶離流体流入ポートから、第1拡散板と、フィルタと、任意の第2拡散板と、入口部入口ポート/溶離流体排出ポートとを流体流路に沿って通過するように送り、溶離流体は、1つ以上の所望の生体液成分をフィルタから溶離させ、溶離した所望の生体液成分のうちの1つ以上を採取する。
【0071】
[0083]一部の実施形態では、入口部は、入口ポートと、独立した溶離流体排出ポートとを備え、本方法は、(a)生体液を、入口部入口ポートから出口部出口ポートまで通過させ、1つ以上の所望の生体液成分が、生体液が流体流路に沿って入口部ポートから出口部出口ポートまで通過する際にフィルタによって保持され、(b)溶離流体を、出口部溶離流体流入ポートから、第1拡散板と、フィルタと、任意の第2拡散板と、入口部溶離流体排出ポートとを流体流路に沿って通過するように送り、溶離流体は、1つ以上の所望の生体液成分をフィルタから溶離させ、溶離した所望の生体液成分のうちの1つ以上を採取する。
【0072】
[0084]溶離流体(生体液成分溶離流体)が1つ以上の生体液成分をフィルタから溶離させた後、1つ以上の溶離した所望の生体液成分を採取する。本方法の好適実施形態は、溶離した白血球および/または幹細胞を採取する。本方法の実施形態は、クローズドシステムを維持しながら実行することができる。本方法の好適実施形態では、溶離した生体液成分、好ましくは白血球および/または幹細胞を凍結保存する。
【0073】
[0085]参考に図9に示す例示システム2000を使用して説明すると、本方法の一実施形態では、通常ソース容器またはシリンジ(図示せず)内に収容されている処理用生体液、例えば、採取した体積約65〜約250mlの臍帯血ユニットを、例えばトランスファースパイク(transfer spike)、ルアー接続、または無菌ドッキングによって、ドリップチャンバ20の上流側でシステムに取り付ける。必要であれば、生体液の容器をシステムに取り付ける前に、(例えば、ルアー接続または無菌ドッキングを利用するなどして、溶離流体流入ポート308と連通する導管308aを介して)溶離流体供給装置350をシステムと連通するように配置することができる。流れ制御装置1から4は、初めは閉じておく。
【0074】
[0086]流れ制御装置1および2を開く。生体液は、ドリップチャンバ20(および内部の粗フィルタ)を通過し、入口部入口ポート101aを経由して生体液ろ過装置1000を通過し、ろ過された(白血球が除去された)生体液は、出口管208を経由して容器30内に入る。ろ過が完了した後、流れ制御装置1および2を閉じる。
【0075】
[0087]流れ制御装置3を開き、溶離流体供給装置350(溶離流体を内部に含むシリンジとして図示しているが、代わりに、例えばシリンジポンプとすることもできる)を作動させて、溶離流体を、導管308aを経由して溶離流体流入ポート308から、拡散板(孔を下流面から上流面に通過して)と、フィルタ(下流面と上流面とを経由して)と、入口部入口ポート/溶離流体排出ポート101aとを通過させて、好ましくは凍結保存に適した容器40(以下、容器40は「冷凍バッグ」と呼ぶ)内に送る。溶離流体によって溶離した所望の細胞は、溶離流体とともに冷凍バッグ内に入る。溶離が完了した時点で、流れ制御装置3を閉じる。
【0076】
[0088]任意で、溶離した細胞の少なくとも1つのサンプルを採取する。例えば、流れ制御装置4を開き、必要に応じて、(例えば、プランジャを押圧することによって)サンプリング装置62を作動させて導管内の流体を冷凍バッグ40内に移動させる。流れ制御装置1および3を開くことができ、冷凍バッグを圧縮して、空気をバッグからドリップチャンバ20に向けて押し出すことができる。流れ制御装置3は、液体がバッグ40から出る前に閉じる必要がある。好ましくは、流れ制御装置3が取り付けられた導管をヒートシールして切断し、システムの冷凍バッグを含む部分を容器30を含む部分から分離する。
【0077】
[0089]必要に応じて、サンプリング装置61を作動させてサンプル(例えば、約0.5ml〜約1ml)を装置内に送ることができ、サンプリング装置61につながる導管61aをヒートシールして切断することができる。
【0078】
[0090]凍結保存剤、一般的にはジメチルスルホキシド(DMSO)を、システム/容器(クローズドシステムを維持する場合は、凍結保存剤供給装置システムは、凍結保存剤に適合する導管を有し、凍結保存剤が充填されたシリンジとすることができる)から、滅菌フィルタ51および導管52を通過させて冷凍バッグ内に送る。必要に応じて、サンプリング装置62を作動させ、導管内の液体を冷凍バッグ40内に移動させて(例えば、冷凍バッグの内容物を混合した後に)、空気を冷凍バッグおよび導管から取り除くことができる。
【0079】
[0091]凍結保存後のサンプルを取り出す場合は、サンプリング装置62を作動させてサンプル(例えば、約0.5ml〜約1ml)を装置内に送ることができる。また、液体をセグメント調製のために導管40a内に残しておくことができる。装置62につながる導管62aをヒートシールして切断することができ、また導管40aをヒートシールして所望の数のセグメントを提供することができる。
【0080】
[0092]凍結保存後のサンプルを取り出さない場合は、サンプリング装置62を作動させて、セグメント調製のために液体を冷凍バッグ40から導管40a内に送ることができる。装置62につながる導管62aをヒートシールして切断することができ、また導管40aをヒートシールして所望の数のセグメントを提供することができる。
【0081】
[0093]バッグおよび導管は、当技術分野において公知の方法で、凍結および保存(ならびにその後さらに処理)する。
【0082】
[0094]図10から図12に示す例示システムを使用した方法の実施形態は、図9に示しかつ上述した例示システムを使用した方法の実施形態とほぼ同様に実行することができる。しかしながら、通常ソース容器またはシリンジ(図示せず)内に収容されている処理用生体液、例えば、採取した臍帯血ユニットは、例えばトランスファースパイク、ルアー接続、または無菌ドッキングによって、ドリップチャンバではなくトランスファー容器、例えばトランスファー容器21(図10に示す)の上流側でシステムに取り付ける。必要に応じて、トランスファー容器は内部に粗フィルタ(図示せず)を含むことができる。
【0083】
[0095]これに加えて、あるいはこれに代えて、参考に図11に示す(生体液ろ過装置の入口部が入口ポート101aと溶離流体排出ポート101bとを備える)例示システムを使用して説明すると、溶離流体を、導管308aを経由して溶離流体流入ポート308から、拡散板(孔を下流面から上流面に通過して)と、フィルタ(下流面と上流面とを経由して)と、溶離流体排出ポート101bとを通過させて、冷凍バッグ40内に送る。
【0084】
[0096]サンプルが必要な場合は、サンプルを、例えばシリンジではなく、1つ以上の可撓性サンプリング容器、例えば可撓性サンプリングポーチ(図10に示す71および72)内に送ることによって、凍結保存前および/または凍結保存後に採取することができる。
【0085】
[0097]例えば、1つのサンプル、例えば凍結保存前サンプルを採取する場合、システムは、1つのサンプリング装置、例えば図12に示すようなサンプリング装置62、または例えばサンプリングポーチ(図示せず)を含むことが可能である。
【0086】
[0098]以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、当然のことながら、実施例を本発明の範囲を多少なりとも限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例1】
【0087】
[0099]本実施例は、本発明に係る拡散板を含む装置の実施形態を使用することによって、拡散板を有していない装置と比較して、白血球の回収が向上することを実証する。
【0088】
[0100]拡散板を有する装置は、溶離ポートにつながる導管に接続した計器で測定したフォースの最少閾値が、約20重量ポンド毎平方インチ(PSIG)である。
【0089】
[0101]拡散板は、おおむね図3−1の(A)に示すような小孔パターンを有する。ある一連の実験では、小孔の平均直径は0.050インチであり、他の一連の実験では、小孔の平均直径は0.032インチである。
【0090】
[0102]装置は、おおむね図1および図2に示すように製造し、制御装置は拡散板を有していない。白血球除去フィルタは、おおむね米国特許第4,880,548号明細書に記載されている通りに作製する。
【0091】
[0103]異なる体積の血液を装置に通し、手動のシリンジを使用して溶離ポートから装置に送った、溶離流体としての10%デキストラン40生理食塩水で捕捉した細胞を溶離する。
【0092】
[0104]総有核細胞の平均回収率は、制御装置で約59%、小孔の平均直径が0.050インチの装置で約79%、小孔の平均直径が0.032インチの装置で約84%である。
【実施例2】
【0093】
[0105]本実施例は、本発明に係る1および2つの拡散板を含む装置の実施形態を使用することによって、拡散板を有していない装置と比較して、白血球の回収が向上することを実証する。
【0094】
[0106]拡散板を有する装置は、溶離流体ポートにつながる導管に接続した計器で測定したフォースの最少閾値が、約20重量ポンド毎平方インチ(PSIG)である。
【0095】
[0107]拡散板は、おおむね図3−1の(A)に示すような小孔パターンを有する。ある一連の実験では、白血球除去フィルタの下流面と出口部との間に1つの拡散板を使用し、小孔の平均直径は0.032インチである。他の一連の実験では、白血球除去フィルタの下流面と出口部との間に第1拡散板を、白血球除去フィルタの上流面と入口部との間に第2拡散板を使用し、第1および第2拡散板のそれぞれの小孔の平均直径は0.030インチである。
【0096】
[0108]装置は、おおむね図1および図2に示すように(1つの拡散板を有する場合)、また図8に示すように(第1および第2拡散板を有する場合)製造し、制御装置は拡散板を有していない。白血球除去フィルタは、おおむね米国特許第4,880,548号明細書に記載されている通りに作製する。
【0097】
[0109]異なる体積の血液を装置に通し、手動のシリンジを使用して溶離ポートから装置に送った、溶離流体としての10%デキストラン40生理食塩水で捕捉した細胞を溶離する。
【0098】
[0110]総有核細胞の平均回収率は、制御装置で約59%、1つの拡散板を有する装置で約84%、第1および第2拡散板を有する装置で約90%である。
【0099】
[0111]本明細書において引用された、刊行物、特許出願および特許を含む全ての参照文献は、それぞれの参照文献が個別かつ具体的に参照によって本明細書中に援用されるように示され、その全体が本明細書中に記載されるのと同じ程度に、参照することによって本明細書に援用される。
【0100】
[0112]本発明を説明する文脈において(特に、添付の特許請求の範囲の文脈において)、「1つの(a/an)」および「その(the)」という用語ならびに同様の指示語を使用する場合は、本明細書中で特に指摘しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むものと解釈すべきである。「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち、「〜を含むがこれに限定されない」を意味するもの)として解釈すべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個々に言及するための略記法としての機能を果たすことを意図しているに過ぎず、それぞれの値は、その値が本明細書において個別に列挙されているのと同じように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で特に指摘しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適当な順序で行うことができる。本明細書に挙げる全ての例、または例示的な言い回し(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにするためのものであって、特許請求の範囲に特に記載されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言語も、特許請求の範囲に記載されていない構成要素を本発明の実施に不可欠なものとして示していると解釈すべきではない。
【0101】
[0113]本明細書には、発明者等が知る発明を実施するための最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を記載した。上記の説明を読むことにより、当業者にはこれらの好ましい実施形態の変形例が明らかとなるであろう。本発明の発明者等は、当業者がそのような変形例を適宜使用することを期待し、また本明細書中に具体的に記載された方法以外の方法で本発明を実施することを意図する。したがって、本発明は、準拠法によって許可されるように添付された特許請求の範囲内で列挙された内容の全ての修正物および均等物を含む。さらに、本明細書中で特に指摘しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、全ての可能な変形例における上記要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1、2、3、4…流れ制御装置、20…ドリップチャンバ、21…トランスファー容器、30…容器、40…容器(冷凍バッグ)、40a、52、61a、62a、308a…導管、50…凍結保存剤供給システム、51…滅菌フィルタ、61、62…シリンジ(サンプリング装置)、71、72…サンプリングポーチ、100、100’…入口部、101、101’…入口、101a、101a’…入口ポート、101b…溶離流体排出ポート、102、102’…入口チャンバ、103、103’…入口部壁、104、104’…内面、105、110…スロット、106、106’、411…リッジ、107、107’…入口流路、108…入口管、109…流路、200…出口部、201a…出口ポート、202…出口チャンバ、203…出口部壁、204…内面、207、307…出口流路、208…出口管、209…リテーナ、300…溶離流体流入ポート、308…溶離管、350…溶離流体供給装置、400…第1有孔拡散板、400’…第2有孔拡散板、410、410’、501…第1面、420、420’、502…第2面、450、450’…小孔、500…白血球除去フィルタ、510…繊維状多孔質白血球除去媒体、515…繊維状多孔質白血球除去エレメント、1000、1000’…生体液処理装置、1500…生体液処理システム
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13