(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グラフィカル物体の前記立体投影が、観察者によって観察者の視野角から見られる前記グラフィカル物体の表面に属する前記立体投影のビルディングブロックのみを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のデバイス。
前記ビルディングブロックが、正方形、長方形、多角形、円形、ドット、円板、楕円、直線若しくは曲線、任意の正弦波線によって境界を定められた閉曲面、文字、テキスト、ロゴ、数字、又は画像であり、前記ビルディングブロックが白抜き区域を含むか、又は含まないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のデバイス。
銀行券、貴重文書若しくはカード、輸送券若しくはカード、税金バンデロール、及び製品ラベルからなる群から選択された商品又は機密保護文書の偽造からの保護のための請求項1〜11のいずれか一項に記載のデバイスの使用。
【背景技術】
【0002】
複数対の立体投影によって形成された画像から構成される物体の3次元表示が、当技術分野で知られている。
【0003】
米国特許第5457554号及び米国特許第5364557号において、S.M. Farisは、コレステリック液晶材料を含むインク層で作られる3次元画像を生成する方法を開示しており、前記インク層は、それぞれ、右(RHLCインク層)円偏光又は左(LHLCインク層)円偏光を反射する。前記3次元画像を生成するために、異なる原色のLCインク層が互いの上に印刷される。
【0004】
米国特許第7041233号において、M Kuntz等は、キラル液晶(コレステリック液晶とも呼ばれる)材料で形成された2つの非立体画像で3次元効果を発生させる方法を説明している。液晶層は熱プロセスによって配向されるか、又は好ましくはカプセル化形態で使用される。この技術で生成される3次元効果は、少なくとも5メートルなどの遠い距離から見ることができる。異なる色区域を形成するのに、LC硬化処理プロセスの間マスクの使用を必要とした(例えば、実施例1)。
【0005】
シルクスクリーン、フレキソグラビア、又は輪転グラビアなどの印刷技術による機密保護要素として有用なデバイスの工業用印刷は、3次元効果を発生させるための上述の開示技術によって対処されなかったいくつかの制限を受け入れなければならない。例えば、これらの印刷技術では、2つの印刷ユニットが、1対の立体投影の左旋液晶(LHLC)インク層及び右旋液晶(RHLC)インク層を印刷するために必要とされ、両方の印刷ユニットは、ある視野角で同じ色のLCインク層を印刷することができ、又は2つの印刷ユニットは、3D画像のための加色をもたらす同じ視野角で異なる色の1対のLCインク層を印刷することができる。デバイスを印刷するのに利用できる印刷ユニットの数は、一般に、2ユニット又は4ユニットに制限され、したがって、LCインクでデバイスを印刷するのに利用できる色の数は非常に狭い。
【0006】
3D知覚は、人間の脳で同時に解釈される多くのパラメータに依存する。実物体又は実情景について、人間の脳は、基本的には、物体の3D知覚及び情景の焦点深度情報を抽出するために両眼視差を使用し、両眼視差とは、左眼及び右眼で見る物体の網膜像の場所の差を指す。印刷画像について、3D形状の最も関連性のある手掛かりは肌理勾配、濃淡、又は陰影であり、情景が複数の物体を含む場合、他方の物体による一方の物体の遮蔽(occlusion)(すなわち、一方の物体が他方の物体の前に置かれ、それにより、下にある物体を隠す)は、情景の空間的配列及び物体の3D形状の付加的な重要な手掛かりである。
【0007】
非常に限られた数の単色インク層(例えば、1つ又は2つの単色インク層)しか利用可能でない場合、体積知覚は濃淡などの3D手掛かりの減少又は消失に起因して衰え、単色インク層で印刷された複数の物体を含む情景の場合、別の物体によるある物体の遮蔽により、観察者は異なる物体の相対距離の手掛かりを有することができない。
【0008】
この影響は本出願の
図1〜4に例示される。
図1は、互いに脇に印刷された単色層により形成された細分されていない物体、すなわち、立方体の1対の単色立体投影を示す。
図2は、部分的に重ねられた場所に印刷された
図1の前記対の単色立体投影を示す。
図1又は
図2をLHLCインク層及びRHLCインク層で印刷し、観察のために適切な円偏光フィルタを使用する場合でさえ、立方体の容積又は3D形状を認識することができないが、それは、人間の脳が立方体の3次元形状を推定することができるいかなる手掛かりも物体が欠いているからである。
【0009】
図3及び
図4は、物体の形成のために陰影の微妙な差異(
図3)の代わりに単色層(
図4)を使用した場合の3D効果の消失を示す。
図3では、人間の頭の詳細が識別でき、人間の脳が物体を人間の頭の3次元画像であるとして理解することができるが、同じことが
図4の画像では可能でない。
図4では、人間の頭の輪郭しか知覚することができない。観察者の脳は、
図4を人間の頭の3次元画像として解釈することができない。
【0010】
機密保護要素として有用なデバイスの工業用印刷プロセスが課する特別な制限のため、上述の先行技法のどれによっても3次元効果を発生させることは不可能である。
【0011】
したがって、円偏光を反射する非常に限られた数のインク層(LCインク層)を用いて立体感をもつデバイスを印刷する方法の必要性が依然として存在する。
【0012】
開示されている技術は、逆の偏光方向の光を反射する2つの単色LCインク層のみを用いるか、又は逆の偏光方向の光を反射する非常に制限された数の対の単色LCインク層を用いる、機密保護要素として有用な立体感をもつデバイス(3Dデバイス)を生成する方法について言及していない。本発明の課題はそのような方法及びデバイスを提供することであった。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、適切な観察装置で観察されるときに立体感を示すグラフィカル物体(graphical object)を一緒に表示する第1のインク層及び第2のインク層を、下地の背景上に、備えるデバイスに関し、前記インク層の一方が、ある視野角で第1の色を示し、左円偏光被覆であるか、又は左円偏光顔料を含み、前記インク層の他方が、前記視野角で同じ色又は別の色を示し、右円偏光被覆であるか、又は右円偏光顔料を含み、前記第1のインク層及び前記第2のインク層が、前記グラフィカル物体の1対の立体投影の第1の画像及び第2の画像を表示し、前記第1のインク層及び前記第2のインク層が、互いの上に重ねられるか、又は、互いの上に重ね合わせ可能であるか、又は互いに脇に印刷され、このデバイスは、前記グラフィカル物体が別個のビルディングブロックから構成され、立体投影の各々の内で、グラフィカル物体を形成するビルディングブロックが、インク層の下にある背景をビルディングブロック間で識別できるようにするように表示されることを特徴とする。
【0014】
本発明は、さらに、上述で定義したようなデバイスを準備する方法に関し、前記方法は、好ましくは、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、又はインクジェット印刷からなる群から選択された印刷方法により、最も好ましくはシルクスクリーン印刷により、基板上に第1のインク組成物及び第2のインク組成物を塗布して第1のインク層及び第2のインク層を形成するステップを含み、前記インク組成物の一方が、ある視野角で第1の色を有する左円偏光コレステリック液晶顔料を含み、他方のインク組成物が、前記視野角で同じ色又は別の色の右円偏光コレステリック液晶顔料を含む。
【0015】
本発明は、さらに、上述で定義したようなデバイスを準備する方法に関し、前記方法は、
a)第1のインク組成物及び第2のインク組成物を事前パターン化基板上に、好ましくは、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、又はインクジェット印刷からなる群から選択された印刷方法により、最も好ましくはシルクスクリーン印刷により、塗布して第1のインク層及び第2のインク層を形成するステップであり、前記インク組成物の一方が、ある視野角で第1の色を有する左円偏光コレステリック液晶物質を含み、他方のインク組成物が、前記視野角で同じ色又は別の色の右円偏光コレステリック液晶物質を含む、ステップと、
b)前記コレステリック液晶物質を含む前記層を事前パターン化基板との相互作用によって配向させるステップと、
c)ステップa)及びb)において塗布されて配向された層を硬化処理するステップと
を含む。
【0016】
本発明は、さらに、適切な観察装置で観察されるときに立体感を示すグラフィカル物体を表示するデバイスを生成する方法に関し、前記グラフィカル物体を別個のビルディングブロックに細分するステップと、細分されたグラフィカル物体の第1の立体投影及び第2の立体投影を印刷面上に発生させるステップとを特徴とする。
【0017】
本発明は、さらに、上述で定義したようなデバイスと、観察装置、好ましくは、2つのレンズのための左円偏光フィルタ及び右円偏光フィルタを含む眼鏡であり、各レンズがその眼鏡をかけている観察者の一方の眼を覆う、眼鏡とを備える認証システムに関する。
【0018】
本発明は、さらに、銀行券、貴重文書若しくはカード、輸送券若しくはカード、税金バンデロール(tax banderol)、及び製品ラベルからなる群から選択された商品又は機密保護文書の偽造からの保護のための上述で定義したようなデバイスの使用に関する。
【0019】
本発明は、適切な観察装置で観察されるときに3次元効果を示す機密保護要素として有用なデバイスを、左円偏光を反射するキラル液晶顔料又は物質を含む第1のインク(LHLCインク層)と、右円偏光を反射するキラル液晶顔料又は物質を含む第2のインク(RHLCインク層)とを使用して印刷する方法を開示する。本発明の方法によれば、3次元効果は、非常に限られた数の色で、好ましくは、ある視野角で2つまでの異なる色のLC顔料で、最も好ましくは、ある視野角で単一色のLC顔料で生成することができる。
【0020】
本発明の方法によれば、3次元効果は別個のビルディングブロックから構成されたグラフィカル物体の1対の画像を印刷することによって生成され、各画像は1対の立体投影の一方を表示し、前記グラフィカル物体は実物体又は仮想物体の表示である。3次元効果は、本発明のデバイスを観察するために観察者が1対の偏光フィルタ又はレンズを含む適切な観視装置を使用するときに観察できる。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明は、グラフィカル物体を別個のビルディングブロックに細分する方法を開示する。
【0022】
さらなる実施形態では、本発明は、別個のビルディングブロックから構成されるグラフィカル物体の1対の立体投影を生成し、前記1対の立体投影を表示する画像を基板に印刷する方法を開示する。
【0023】
グラフィカル物体を複数の別個のビルディングブロックに細分することにより、説明した機密保護フィーチャに固有の制限を克服し、表示物体(represented object)の体積、又は複数の物体を含む表示情景の体積を理解するために手掛かりを脳に与えることができるようになる。
【0024】
観察者の左眼及び右眼で見られる2つの異なる遠近画像の投影に基づいて3次元効果を発生させることは、当技術分野で知られている(例えば、米国特許第5,457,554号又は米国特許第7,041,233号)。1対の立体投影は、実在カメラ又は仮想カメラで実物体又は仮想物体の1対の画像を捕捉することによって生成することができ、前記カメラは物体から一定の距離で軸に沿って移動され(
図21a)、又は代替として、前記カメラはカメラ撮影方向に関して直角の経路に沿って移動される(
図21b)(両方の位置での物体又は情景に向かうカメラの撮影方向(軸y)は互いに平行であり、カメラの移動経路(x軸)に垂直である)ことが当技術分野で知られている。1対の第1の立体投影及び第2の立体投影は、カメラで捕捉された1対の画像を面に投影することによって得られる。
【0025】
本発明による好ましい実施形態では、観察者の位置を基準にしてグラフィカル物体の後面に属し、したがって、観察者の観察位置から観察者には見えないビルディングブロックは除去される。見えないビルディングブロックを除去することにより、ビルディングブロックのいかなる遮蔽も防止することによって3D効果が改善される。グラフィカル物体のビルディングブロックへの細分が、観察者の視野角から観察者によって見られるグラフィカル物体の表面の部分のみに適切な組のビルディングブロックを直接適用することによって行われる場合、このビルディングブロックの除去は省略することができる。
【0026】
第1の立体投影及び第2の立体投影に対応する第1のLC画像層及び第2のLC画像層は、互いの上に印刷される(重ねられたLC画像層)か、若しくは部分的に互いに重なるように互いの上に置くことができる(重ね合わせ可能なLC画像層)か、又は、代替として、第1の立体投影及び第2の立体投影に対応する第1のLC画像層及び第2のLC画像層は、互いに脇に互いに離して印刷される(重ねられていないLC画像層)。
【0027】
互いに脇に印刷される場合、2つのLCインク層間の距離は、ゼロ(接触する位置、2つの立体投影が1点又は1つの側面で互いに連結される)と、数センチメートル、好ましくは0〜5cm、より好ましくは0〜3cm、及び最も好ましくは0〜1cm(接触しない位置)との間で変わることができる。2つの重ねられていないLC画像層は、立体感をもつ物体を見るために観視装置を使用する観察者が同時に見ることができなければならない。デバイスの3D効果は、2つの立体投影の間の距離を減少させることにより改善する。最良の3D効果は、2つの立体投影が互いに部分的に重なるように印刷される場合に得られる。
【0028】
第1の立体投影及び第2の立体投影に対応する第1のLC画像層及び第2のLC画像層が互いに数センチメートル離して印刷される場合、観察者がある距離から、例えば、腕の長さから又はより大きい距離からデバイスを見るときに、デバイスの立体感は一層よく知覚される。デバイスごとに、最適の3D効果を知覚するのに最適の観察距離があり、観察距離が最適距離よりも短いか又は大きい場合、3D効果は依然として知覚されるが、それほど目立たないことがある。最適の観察距離はLHLC画像層及びRHLC画像層の重なりの程度によって決まるか、又は互いに脇に印刷されたLHLC画像層とRHLC画像層との間の距離によって決まり、最適の観察距離は、さらに、グラフィカル物体の位置と、立体画像を撮影するときの両方のカメラ位置とによって画定される仮想三角形の寸法によって決まる。
【0029】
機密保護文書、銀行券、又は貴重物品のための機密保持要素として有用なデバイスでは、第1のLC画像層及び第2のLC画像層は、最も好ましくは、互いに部分的に重なるように印刷される。第1のLC画像層及び第2のLC画像層が互いに部分的に重なるように印刷される場合、第2のLCインク層を塗布する前に第1のLCインク層の硬化処理が必要とされる。
【0030】
デバイスは、銀行券、貴重文書、身分証明書、又は一般的には認証を必要とする任意の物品を保護するための機密保護要素又は機密保護フィーチャとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】別個のビルディングブロックに細分されない立方体の1対の単色立体投影を示す図である(本発明の一部ではない)。
【
図2】
図1の1対の立体投影であり、その投影が部分的に互いの上に配置されている図である(本発明の一部ではない)。
【
図3】色明度の変動(陰影区域)を含む3D物体(人間の頭)の写真を示す図である(本発明の一部ではない)。
【
図4】単色インク層で表示された
図3の写真を示す図である(本発明の一部ではない)。
【
図5】2つのLC画像層の重ね合わせが2つの立体投影で構成されている状態で、
図6に示されるような細分された立方体を含むデバイスの図である。2つのLC画像層が、下にある吸収性表面上に1対のLCインク層で印刷される場合、適切な1対の円偏光フィルタを使用する観察者は、3D体積をもつ単色立方体を見ることになる。
【
図6】3つの別個のビルディングブロックに細分された立方体の
図1の1対の単色立体投影を示す図である。
【
図7】複数の単色ドットに細分された
図3のグラフィカル物体を示す図である。
【
図8】
図7の細分された物体の1対の立体投影を示す図である。
【
図8a】
図8の1対の立体投影からのLHLC組成物及びRHLC組成物を用いて印刷されたデバイスの写真を示す図である。LHLC層及びRHLC層は互いにわずかに重なるように印刷される。
【
図8b】
図8の1対の立体投影からのLHLC組成物及びRHLC組成物を用いて印刷されたデバイスの写真を示す図である。LHLC層及びRHLC層は互いに部分的に重なるように印刷される。
【
図9】複数の別個のビルディングブロックに細分された立方体の1対の単色立体投影を示す図である。
【
図10】複数の別個のビルディングブロックに細分された球体の1対の単色立体投影を示す図である。
【
図11a】複数の別個のビルディングブロックに細分された立方体の1対の単色立体投影を示し、ビルディングブロックが円板である図である。
【
図11b】ネガ像として印刷された、
図11aからの複数の別個のビルディングブロックに細分された立方体の1対の単色立体投影を示す図である。
【
図12】複数の別個のビルディングブロックに細分された立方体の1対の単色立体投影を示し、ビルディングブロックがドットである図である。
【
図13】複数の別個のビルディングブロックに細分された立方体の1対の単色立体投影を示し、ビルディングブロックが直線である図である。
【
図14】複数の別個のビルディングブロックに細分された立方体の1対の単色立体投影を示し、ビルディングブロックが「A」という文字である図である。
【
図15】下にある吸収性表面上のRHLC画像層及びLHLC画像層の部分的な重なりをもつデバイス、例えば、
図5のデバイスの側面図であり、前記RHLC画像層及び前記LHLC画像層は1対の立体投影で構成される。LHLC画像層及びRHLC画像層は重ねられる。
【
図15a】RHLC画像層及びLHLC画像層が、下にある吸収性表面上で互いに脇(重ねられず、接触する位置)に印刷されたデバイス、例えば、
図5のデバイスの側面図であり、前記RHLC画像層及び前記LHLC画像層は1対の立体投影で構成される。
【
図15b】RHLC画像層及びLHLC画像層が下にある吸収性表面上で互いに脇(重ねられず、接触しない位置)に印刷されたデバイス、例えば、
図5のデバイスの側面図であり、前記RHLC画像層及び前記LHLC画像層は1対の立体投影で構成される。
【
図16】吸収性表面上に印刷された第1のLC画像層と、同じ基板の透明ゾーン上に印刷された第2のLC画像層とをもつデバイスの側面図であり、前記第1の画像層及び前記第2の画像層は1対の立体投影で構成される。2つのLC画像層は重ね合わせ可能であり、3次元デバイスを見るには、透明ゾーン上に印刷された第2のLC画像層が第1のLC画像層の上に置かれるように、基板が折りたたまれなければならない。この構成において、立体感をもつデバイス(3Dデバイス)を正確に再構成するには、2つのLC層は、基板の折りたたみ軸に平行な対称軸に沿って180°回転を第2の立体投影に与えることによって印刷されなければならない。
【
図17】第1の基板の吸収性表面上に印刷された第1のLC画像層と、第2の基板の透明区域上に印刷された第2のLC画像層とをもつデバイスの側面図であり、前記第1の画像層及び前記第2の画像層は1対の立体投影で構成される。この構成において、3Dデバイスを正確に再構成するには、第2の画像層(透明基板上に印刷された)は、吸収性表面上に印刷された画像層の上になければならない。2つのLC画像層は重ね合わせ可能である。
【
図18】透明基板上に印刷されたRHLC画像層及びLHLC画像層の重なりをもつデバイスの側面図であり、前記RHLC画像層及び前記LHLC画像層は1対の立体投影で構成される。吸収層で被覆されたさらなる基板がLC画像層を視覚化するために必要とされ、被覆された基板は、3Dデバイスの1対の重ねられたLC画像層の下に配置される。LC層は重ねられる。
【
図19】透明基板の異なる区域に印刷されたRHLC画像層及びLHLC画像層をもつデバイスの側面図であり、前記RHLC画像層及び前記LHLC画像層は1対の立体投影で構成される。第2のLC画像層は基板の折りたたみ軸に平行な対称軸に応じて逆方位に印刷され、2つのLC画像層は重ね合わせ可能である(
図16と同様の方法で)。吸収層で被覆されたさらなる基板がLC画像層を視覚化するために必要とされ、前記被覆された基板は、1対の重ねられたLC画像層の下に配置され、透明基板はLHLC画像層及びRHLC画像層を重ねるように折りたたまれる。
【
図20】2つの異なる透明基板上に印刷されたRHLC画像層及びLHLC画像層をもつデバイスの側面図であり、前記RHLC画像層及び前記LHLC画像層は1対の立体投影で構成される。LC画像層は重ね合わせ可能である。吸収層で被覆されたさらなる基板がLC画像層を視覚化するために必要とされ、被覆された基板は、1対の重ねられたLC画像層の下に配置される。
【
図21a】グラフィカル物体、例えば、立方体の1対の画像を、物体から一定の距離で捕捉するカメラの移動を示す図である。1対の立体投影は、カメラで捕捉した1対の画像を2次元表面に投影することによって得られる。
【
図21b】グラフィカル物体、例えば、立方体の1対の画像を捕捉するカメラの移動を示す図であり、カメラは、物体に向かう撮影方向に垂直な経路に沿って進む。1対の立体投影は、カメラで捕捉した1対の画像を2次元表面に投影することによって得られる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によれば、適切な観察装置で見るときに立体感を有するグラフィカル物体を表示するデバイスが、第1の画像層及び第2の画像層から形成される。第1の画像層は、左旋偏光を反射するLCインク層(LHLCインク層)で印刷され、前記LCインク層は、左旋キラル液晶顔料(左旋コレステリック液晶顔料とも呼ばれる)(LHLC顔料)、又はある視野角で第1の色の左旋キラル液晶物質(左旋コレステリック液晶物質とも呼ばれる)(LHLC被覆)を含み、第2の画像層は、右旋偏光を反射するLCインク層(RHLCインク層)で印刷され、前記LCインク層は、右旋キラル液晶顔料(右旋コレステリック液晶顔料とも呼ばれる)(RHLC顔料)、又は同じ視野角で同じ色若しくは異なる色の右旋キラル液晶物質(右旋コレステリック液晶物質とも呼ばれる)(RHLC被覆)を含む。2つの画像層は、それらがグラフィカル物体の1対の立体投影を表示し、グラフィカル物体が別個のビルディングブロックから構成されることを特徴とする。
【0033】
本明細書で使用する「LHLC顔料」という用語はLHLCインク層に含まれるLC顔料を指し、「RHLC顔料」という用語はRHLCインク層に含まれるLC顔料を指す。
【0034】
本発明の概念は、
図5、
図6、及び
図8〜14に示される。LHLC画像層及びRHLC画像層で印刷される場合、
図5、
図6、及び
図8〜14は本発明のデバイスの実施形態を示す。
【0035】
図5は、
図6に示される2つの立体投影が互いに部分的に重なるように印刷されている本発明の一実施形態を示す。
【0036】
図6及び
図8〜14では、立体投影は、表示を明瞭にするために互いに脇に離して印刷されており、本発明によるデバイスでは、立体投影は、互いに部分的に重なるように印刷されるか、又は代替として、互いに脇に印刷され、機密保護要素として有用なデバイスでは、立体投影は、好ましくは、互いに部分的に重なるように印刷される。
【0037】
図6は本発明の一実施例を示す。
図6は、3つのビルディングブロックに細分された
図1の立方体の1対の立体投影を示す。1対の立体投影は互いに脇に印刷される。
図6がLHLCインク層及びRHLCインク層で印刷される場合、円偏光フィルタを含む適切な観察装置を使用する観察者は、2つの投影の適切な視差を与える距離から立方体の3D表示を観察することになる。
【0038】
図7の画像は本発明の一実施例を示す。
図7は
図3による人間の頭を示すが、しかし、人間の頭は今や複数のビルディングブロック、ここではドットに細分される。観察者の位置を基準にして後面に位置決めされ、したがって、観察者の観察位置から観察者には見えない人間の頭の面に属するビルディングブロックを除去するために、
図7の画像は「清浄化」される。清浄化プロセスにより、ビルディングブロックのいかなる遮蔽も避けることによって3D効果は改善される。この「清浄化ステップ」は、観察者が観察者の視野角から見る物体の表面に、適切な組のビルディングブロックを適用することによってビルディングブロックへの分割が行われる場合、省略することができる。
【0039】
図8は、
図7の2つの画像を2つの異なる位置から撮影することによって生成された、細分されたグラフィカル物体の1対の立体投影を示す。1対の立体投影は互いに脇に印刷される。
【0040】
図8a及び
図8bは、
図8の1対の立体投影に基づく本発明によるいくつかのデバイスの写真を示す。
図8aでは、立体投影は互いにわずかに重なり、一方、
図8bでは、立体投影は互いに強力に重なるように印刷される。
図8aを見ている観察者で、円偏光フィルタを含む適切な観察装置を使用する観察者は、2つの投影の適切な視差を与える距離から人間の頭の3D表示を観察することになる。3D効果は、立体投影のより強力な重なりに起因して
図8bではるかに劇的であり、
図8aよりも
図8bでより短い距離で適切な視差が得られるので、より短い距離から
図8bも観察することができる。
【0041】
本発明に好適な円偏光液晶顔料(「LHLC顔料及びRHLC顔料」と呼ばれる)、例えば、LCP Technology GmbHからの商品名ヘリコーン(Helicone)(登録商標)の下で商業化されたLC顔料が、当技術分野で知られている。LC顔料技術と、被覆及びインクでのそれらの使用とが、例えば、欧州特許出願公開第1213338号、欧州特許出願公開第1046692号、又は欧州特許出願公開第0601483号に開示されており、それぞれの開示は参照により本明細書に組み込まれる。本発明に好適なコレステリック液晶材料は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第6,410,130号に開示されており、それぞれの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
LHLC顔料及びRHLC顔料は、本発明のデバイスを印刷するために選択された印刷方法に応じて従来のインク組成物に組み入れることができる。好適な調合物の例は、例えば、The Printing Ink Manual、R.H. Leach、R.J.Pierce編、第5版に見いだすことができる。
【0043】
本発明に好適なLC顔料を含む組成物は、例えば、欧州特許出願公開第0597986号又は国際公開第2003/020835号パンフレットに開示されている。
【0044】
好ましくは、本発明で使用されるインク組成物は、LC顔料以外のいかなるさらなる顔料も含まない。本発明で使用されるLC顔料を含む典型的な調合物は、例えば、
【0045】
− 水系インクによるフレキソ印刷で印刷するための調合物、
【表1】
【0046】
− 溶剤系インクによるフレキソ印刷で印刷するための調合物、
【表2】
【0047】
− グラビア印刷で印刷するための調合物、
【表3】
【0048】
− スクリーン印刷で印刷するための調合物、
【表4】
【0049】
− UV硬化インクによるスクリーン印刷で印刷するための調合物、
【表5】
がある。
【0050】
本発明に好適なLC物質を含む組成物は、例えば、米国特許第6,410,130号に開示されている。
【0051】
好適な印刷方法には、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、又はインクジェット印刷が含まれる。
【0052】
本発明に好適なLC顔料では、液晶はコレステリック状態に既に配向され重合されている(硬化処理されている)が、これはLC物質には当てはまらない。上述の印刷技法のうちのいずれかによって塗布された後、塗布層を硬化処理する前に、組成物中のLC物質の配向を達成しなければならない。本発明によれば、LC物質の配向は、LC物質を含む層を事前パターン化基板に塗布することによって達成される。そのとき、基板は、塗布層中の液晶に対して配向層の役割をする。基板の事前パターニングは、例えば、ビロードなどの材料、若しくはブラシでこすることにより、又は好適な露光により行うことができる。LC物質の配向は、事前パターン化基板との相互作用により生じる。その後、配向LC層は、通常通り、好ましくは、UV硬化処理によって硬化処理することができる。LC物質の配向のこの方法は、例えば、米国特許出願公開第2011/0095518号から分かり、それぞれの内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
本発明に好適なインク組成物は、当業者には既知のように、例えば、物理的乾燥(溶剤の蒸発)、UV硬化処理、電子ビーム硬化処理、ヒートセット、酸化重合、それらの組合せ、又は他の硬化処理過程によって硬化処理することができる。本発明にはUV硬化インク組成物を使用することが好ましい。
【0054】
本明細書で使用するデバイスは、銀行券、貴重文書、身分証明書、又は一般的には認証を必要とする任意の物品を保護するための機密保護要素又は機密保護フィーチャとして有用である。
【0055】
本明細書で使用する「機密保護要素」という用語は、銀行券又は別の機密保護文書の信憑性を決定し、それを偽造物から保護するための銀行券又は別の機密保護文書の要素を示すものとする。
【0056】
本明細書で使用する「ビルディングブロック」という用語は、グラフィカル物体を一緒に形成する、例えば、限定はしないが、正方形、長方形、多角形、円形、ドット、円板、楕円、直線、曲線、又は任意の正弦波線によって境界を定められた任意の閉曲面などの一群の幾何学的図形を指す。「別個のビルディングブロック」という用語は、さらに、文字、テキスト、ロゴ、数字、又は画像を指すことができる。これらのビルディングブロックは、例えば、大文字「A」の中の白抜き区域などのいくつかの白抜き区域を含むことができる(
図14を参照)。グラフィカル物体を形成するビルディングブロックは、観察者の脳が別個のビルディングブロックを1つの表示物体に組み合わせることができるように等距離整列で、又は任意の方法で配列することができる。言い換えれば、別個のビルディングブロック間の距離は、観察者がビルディングブロックを互いに離れていると認識するように十分に広くなければならない。2つのビルディングブロック間の空間は、細分された物体の縁部を画定するのに役立ち、すべてのビルディングブロックの1対の立体画像は、表示物体又は表示情景の体積を画定するのに寄与する。
【0057】
1対の立体投影の各々において、ビルディングブロックは、1対の画像を生成するときの物体を基準としたカメラの位置に応じて互いに完全に又は部分的に分離される。
【0058】
本明細書で使用する「別個のビルディングブロック」という用語は、細分されたグラフィカル物体内では、物体を形成するビルディングブロックが、別々に識別可能であるように配列され、立体投影内では、ビルディングブロックが互いに部分的に重なることができることを指す。本明細書で使用する「別個のビルディングブロック」という用語は、インク層の下にある背景がビルディングブロック間で識別できることを指し、「識別できる」という用語は観察者の肉眼で見えることを意味する。
【0059】
グラフィカル物体を細分するのに必要なビルディングブロックの数は、デバイスのサイズ、表示物体の複雑さ、及び達成可能な印刷解像度によって決まる。
【0060】
簡単なグラフィカル物体では、2つのビルディングブロックへの分割が、表示物体の3D形状の十分な指標を与えるのに足りることがあるが、より複雑な表示物体又は表示情景では、複数のビルディングブロックが、良好な3D表示を与えるのに必要である。所与のグラフィカル物体のための別個のビルディングブロックの最適の数及び位置は、当業者により通常のルーチンで決定されうる。
【0061】
細分するプロセスはグラフィカル物体上で行われる。1対の立体投影を生成するためにカメラで捕捉される画像は、グラフィカル物体の分割の後に別個のビルディングブロックに生成される。
【0062】
ステップの逆の順序(立体投影の生成と、それに続くビルディングブロックへの分割)は、2つの立体投影の間の整合性を維持することの難しさをもたらし、したがって、3D効果をもつデバイスの生成を妨げることになる。
【0063】
1対の立体投影を生成するためにカメラで捕捉された2つの画像は、一般に、カメラのわずかな平行移動によって得られる画像の視覚遠近感のわずかな変化により得られる(
図21a及び21bを参照)。カメラの2つの撮影位置及び角度は、グラフィカル物体を形成する大部分のビルディングブロックが隣接するビルディングブロックと区別可能なままであり、そのような構成において、2つの別個のビルディングブロックが互いに重ならないか、又は2つの別個のビルディングブロックが互いに部分的にしか重ならないように選択されるべきである。
【0064】
図5〜14では、様々な複雑さのグラフィカル物体が、様々な形態及び複雑さをもつ適切な数の別個のビルディングブロックから構成される本発明による実施形態が示される。
【0065】
本発明で使用される「グラフィカル物体」という用語は、仮想物体の表示又は実物体の表示を指す。
【0066】
本発明のデバイスを生成するのに有用な表示物体には、簡単な物体、例えば、線若しくは2D図面、又は非常に複雑な物体、例えば人間の頭のような、例えば彫刻の図形が含まれる。
【0067】
本発明のグラフィカル物体は、ポジ像として、又はネガ像として表現することができる。物体がポジ像として表現される場合、物体を構成するビルディングブロック、例えば、正方形、長方形、多角形、円形、ドット、円板、楕円、直線、曲線、任意の正弦波線によって境界を定められた任意の閉曲面、文字、テキスト、ロゴ、数字、又は画像が、LCインク層で印刷される。物体がネガ像として表現される場合、ビルディングブロック間の分離区域がLC層で印刷される。
図11aは、本発明による細分された立方体のポジ像の1対の立体投影の一例を示し、
図11bは、本発明により細分された立方体のネガ像の1対の立体投影の一例を示す。
【0068】
本発明によれば、上述したコレステリックLC顔料又はLC物質を含む2つ又はせいぜい4つのインク層を塗布することによって、好ましくは、上述したコレステリックLC顔料を含む2つ又はせいぜい4つのインク層を塗布することによって、立体感を有するデバイスが得られる。
【0069】
本発明で使用される好適な基板は、紙、複合材料、又はプラスチック基板である。例えば、銀行券の場合、基板は紙、複合材料、又はポリマーである。
【0070】
デバイスが印刷される基板の気孔率は、知覚される3D効果の品質に影響を及ぼすことがある。多孔質又は繊維質の基板においては、輝度の変動が、1対のLCインク層の異なるゾーンに、これらのゾーンの下にある層に応じて現われることがある。LC層内のそのような輝度変動は、3D効果の劣化をもたらすことがある。LCインク層の光学品質を改善し、輝度のそのような変動を防止するために、多孔質又は繊維質基板は、第1の被覆層、すなわち、下塗層で被覆することができる。そのような下塗層は当技術分野で知られており、例えば、磁気的配向画像に基づく機密保護要素の視覚的外観を改善するために使用されている(国際公開第2010/058026号パンフレットを参照)。
【0071】
本明細書で使用するLHLCインク層及びRHLCインク層の「下地の背景」という用語は、LCインク層が印刷されるか、又は配置される表面を指す。
【0072】
インク層の下にある背景は、不透明な吸収性表面又は透明な表面とすることができる。
【0073】
本明細書で使用する「吸収性」若しくは「光吸収性」表面又は背景という用語は、可視スペクトルの光の少なくとも一部を吸収する層、好ましくは暗色の表面、最も好ましくは黒色表面を指す。
【0074】
吸収性背景の場合、背景表面は、基板上に印刷された下にある被覆層、又は不透明な基板自体で構成することができる。
【0075】
本明細書で使用する「透明な」という用語は、可視スペクトル(400〜700nm)の少なくとも一部に光学的透明性がもたらされることを意味する。可視スペクトルの少なくとも一部で透明であり、観察者が基板を通して見ることができるとすれば、透明基板は完全に又は部分的に着色することができる。
【0076】
図15から
図20は、吸収性又は透明基板上のLHLC画像層及びRHLC画像層の様々な配列の例を示す。
図15から
図20では、LHLC画像層及びRHLC画像層は図に示されるように配列することができ、又はこれらの層は互いに入れ換えることができる。
【0077】
デバイスが透明な背景上に印刷される場合、LHLC画像層若しくはRHLC画像層のいずれか、又はLHLC画像層及びRHLC画像層の両方を透明表面上に印刷することができる。
【0078】
LHLC画像層又はRHLC画像層の一方が透明表面上に印刷され、他方の画像層が吸収性表面上に印刷される場合、吸収性表面及び透明表面は同じ基板の一部とすることができ、又は2つの異なる基板の一部とすることができる。透明表面及び吸収性表面が1つの基板の一部である場合、2つのLHLCインク層及びRHLCインク層は、印刷された透明表面が印刷された吸収性表面の上に置かれるように基板を折りたたむことによって3Dデバイスとして観察することができる。
【0079】
本明細書で使用する「重ねられた」立体投影又は「重ねられた」LC画像層又は「重ねられた」LCインク層とは、第1の立体投影及び第2の立体投影に対応する第1のLCインク層及び第2のLCインク層が互いの上に部分的に重なる位置に印刷されることを意味する。位置合わせが全体的に完全に重複することは、2つの立体投影の間のわずかな差によって防止される。
【0080】
本明細書で使用する「重ねられていない」立体投影又は「重ねられていない」LC画像層又は「重ねられていない」LCインク層とは、第1の立体投影及び第2の立体投影が、数センチメートル、好ましくは0〜5cm、より好ましくは0〜3cm、及び最も好ましくは0〜1cmの投影間の距離で、互いに脇に接触する位置に又は接触しない位置に印刷されることを意味する。
【0081】
本明細書で使用する「重ね合わせ可能な」立体投影又は「重ね合わせ可能な」LC画像層又は「重ね合わせ可能な」LCインク層とは、第1の立体投影及び第2の立体投影が2つの異なる基板上に印刷され(2つの基板の少なくとも一方は透明である)、互いの上に置くことができることを意味し、又は代替として「重ね合わせ可能な立体投影」又は「重ね合わせ可能なLC画像層」又は「重ね合わせ可能な」LCインク層とは、第1の立体投影及び第2の立体投影が同じ基板の2つの異なるゾーン上に印刷され(2つのゾーンの少なくとも一方は透明である)、基板を折りたたむことによって第2のゾーン上に重ねることができることを意味する。
【0082】
LHLC画像層及びRHLC画像層が共に透明表面に印刷される場合、両方の画像層は同じ透明表面上に印刷することができ、又は、両方の画像層は、同じ基板又は2つの異なる基板に含まれる2つの異なる透明表面上に印刷することができる。LHLC画像層及びRHLC画像層は、印刷された透明層が互いの上に置かれるように一方の基板を折りたたむこと、又は両方の基板を重ねることのいずれかによって重ねられる。LHLC画像層及びRHLC画像層の両方が透明表面に印刷される場合、重ねられたLC画像層は、適切な円偏光フィルタを使用する観察者に2つの立体投影及び3D効果が見えるようにするために吸収性表面の上に配置されなければならない。
【0083】
いくつかの軸配向ポリマー材料は円偏光と干渉することがあることが当技術分野で知られており、そのような高分子材料は、グラフィカル物体の立体投影の一方がデバイス中の軸配向ポリマーを通して見られる場合、デバイスの3次元効果に影響を与えることになる。したがって、デバイス内のLCインク層の一方が透明基板を通して見られる場合、前記透明基板は軸配向ポリマー材料で構成されない。
【0084】
両方のLC層は、下にある吸収性表面の境界の内部に完全に囲まれなければならない。一方又は両方のLC層が下にある吸収性表面の外側に位置づけられる場合、3D知覚は部分的に又は完全に消えてしまうことがある。
【0085】
立体的な対の画像によって与えられるデバイスの3次元効果を見るには、例えば、観察者は、適切な観察装置、特に、米国特許第5,457,554号に記載されているような円偏光フィルタ又はレンズをもつ特殊な眼鏡を使用する必要がある。観察装置は、好ましくは、1対の円偏光フィルタ又はレンズを、すなわち、左円偏光フィルタ又はレンズと右円偏光フィルタ又はレンズとを含む眼鏡とすることができ、各フィルタ又はレンズは眼鏡をかけている観察者の一方の眼を覆う。LHLC画像層は左円偏光フィルタ又はレンズを通して見られ、RHLC画像層は右円偏光フィルタ又はレンズを通して見られる。したがって、観察装置を使用する観察者は各LCインク層を一方の眼でのみ見ており、したがって、立体投影の一方は右眼画像を表示し、第2の立体画像は左眼画像を表示する。3D効果をもつ物体の画像は観察者の脳によって再構成される。
【0086】
本発明の方法は、同じ視野角のLC材料(1対のLHLC材料及びRHLC材料)で1つの単一色のみを用いて、又は同じ視野角で2つの異なる色のLC材料を用いて3次元効果を提供する手段を開示する。
【0087】
LHLCインク層及びRHLCインク層が同じ視野角で異なる色である場合、観察装置で見られる色は2つの層の加色である。
【0088】
本発明は、さらに、3次元画像を生成するプロセスに関し、そのプロセスは、
a)コンピュータソフトウェアを使用して、グラフィカル物体を2つの別個のビルディングブロック又は複数の別個のビルディングブロックに細分するステップであり、前記ビルディングブロックが同一であるか、又は異なっている、ステップと、
b)ビルディングブロックごとに、細分されたグラフィカル物体の第1の立体投影及び第2の立体投影に対応する左眼画像及び右眼画像を発生させるステップと、
c)LHLCインク層及びRHLCインク層を印刷するために使用されるべき印刷方法に応じて、前記第1の立体投影及び前記第2の立体投影を印刷プレート若しくは支持体に、又は1対の印刷プレート若しくは支持体に移送するステップと、
d)第1のLHLC又はRHLCインク組成物を使用することによって前記第1の立体投影を印刷するステップと、
e)前記第1のインク組成物を適宜硬化処理するステップと、
f)第2のRHLC又はLHLCインク組成物を使用することによって前記第2の立体投影を印刷するステップであり、前記第2のLCインク組成物が前記第1のLCインク組成物と反対方向の円偏光を反射する、ステップと、
g)未硬化処理インク組成物を硬化処理するステップと
を含む。
【0089】
2つの立体図形が2つのLCインク層の重なりなしに互いに脇に印刷される場合、ステップe)は省略することができ、両方のLC層はステップg)において同時に硬化処理される。
【0090】
ステップa)、すなわち、グラフィカル物体の別個のビルディングブロックへの分割では、様々な適切なソフトウェアを使用することができる。例えば、公的に利用可能なプログラムBlender(GNU General Public Licence下のフリーソフト)を使用することができ、3DMax、Cinema 4D、Softimage、又は任意の同様のツールなどの他のソフトウェアを使用して、同じ又は類似の結果を達成することができる。
【0091】
ステップa)、すなわち、グラフィカル物体の別個のビルディングブロックへの分割は、好ましくは、Blenderソフトウェアを使用して以下のように達成される。
【0092】
i)<Addition>機能を使用して「メッシュ」を追加することによって細分されるべきグラフィカル物体の選択;ソフトウェアで使用されるメッシュという用語は、例えば、正方形、立方体、球体、人間の頭、又は本発明のデバイスで表示することができる他の物体のような仮想物体を指す、
【0093】
ii)ソフトウェアの<Edit Menu/Subdivide>機能を使用して、グラフィカル物体がビルディングブロックに細分される。例えば、立方体は、その面の各々を複数のビルディングブロック、例えば、正方形に細分することによって細分される。例えば、
図9は、各面を9つの正方形に細分することによって生成された立方体の1対の立体画像を示す。
【0094】
代替として、ステップa)のグラフィカル物体の上述した別個のビルディングブロックへの分割は、以下のように達成される。
【0095】
j)Blenderソフトウェアの<Addition>機能を使用することによって、例えば、正方形、ドット、大文字Aなどの「メッシュ」の追加、
【0096】
jj)ステップj)のメッシュのコピー及び多数のペースト;複数のビルディングブロックは、細分されたグラフィカル物体、例えば、立方体を表示するように生成されて配列される。例えば、
図11a又は
図14は、それぞれ、円板又は大文字Aのコピー/ペーストによって生成することができる立方体の対の立体投影を示す。
【0097】
特に、不規則不均一表面をもつ仮想又は実物体を表示するグラフィカル物体の細分に有用なさらなる代替では、ステップa)のグラフィカル物体の別個のビルディングブロックへの分割は、有利には、Blenderソフトウェアを使用して以下のように達成される。
【0098】
k)複数のメッシュ(例えば、複数の正方形又は立方体)から構成されるネットワークのコピー/ペーストによる生成、
【0099】
kk)ソフトウェアBlenderのマッピング機能を使用する直線平行移動により、メッシュは、型として、例えば、人間の頭として働く仮想物体の表面に積み重ねられ、仮想物体が除去され、仮想又は実物体の形状をもつメッシュのネットワークのみが残される。
【0100】
ビルディングブロックの数及びビルディングブロックのタイプは、所望の効果に応じて選択することができる。グラフィカル物体の複雑さ、及びビルディングブロックの数に応じて、ビルディングブロックに物体を細分するステップ(ステップa))は、ビルディングブロックの「清浄化プロセス」を追加的に含むことができ、グラフィカル物体細分がソフトウェアで行われる場合、細分されたグラフィカル物体は、観察者の視野角から観察者に見えないはずである表示仮想物体の後面(見えない側)に属するビルディングブロックを含むことがあり、前面のビルディングブロックによる後面のビルディングブロックの遮蔽が生じるが、印刷されたデバイスの3次元効果を改善するために、後面からの前記ビルディングブロックは清浄化プロセスで除去することができる。例えば、
図7では、ビルディングブロックの遮蔽は人間の頭のあごに見え、清浄化プロセスの後、あごの輪郭はより正確になる(
図8の各立体投影に見られるように)。
【0101】
グラフィカル物体の細分に使用される同じソフトウェア(Blender、3DMax、Cinema 4D、Softimage、又は任意の同様のツール)をさらに使用して、細分されたグラフィカル物体の立体投影に対応する立体画像を、これらソフトウェアの仮想カメラツールの使用によって、生成することができる。例えば、Blenderソフトウェアをさらに使用して、細分されたグラフィカル物体の立体画像を仮想カメラで撮影する。
【0102】
現存又は仮想の細分された物体を実在カメラで撮影することに由来する本物の写真をさらに使用して、1対の立体投影に対応する1対の画像を生成することができる。
【0103】
ステップc)、すなわち、印刷方法に応じて適切な印刷プレート又は支持体に立体投影を移送する方法は、選択された印刷技法によって決まる。これらの方法は印刷業で広く使用されており、参考ハンドブック、例えば、Printing Technology、JM Adams及びP.A. Dolin、Delmar Thomson Learning、第5版に説明されている。
【0104】
例えば、スクリーン印刷でデバイスを印刷するには、第1の立体投影及び第2の立体投影の各々のためのステンシルが、当技術分野で既知のプロセスによって、例えば、Printing Technology、JM Adams及びP.A. Dolin、Delmar Thomson Learning、第5版、302〜312頁に説明されているような写真用ステンシルの生成によって生成される。
【0105】
l)第1の立体投影及び第2の立体投影の各々が、透明オーバレイ上に白黒ポジ像としてレーザプリンタで印刷される、
【0106】
ll)第1のメッシュスクリーン及び第2のメッシュスクリーンが、フォトエマルジョンで被覆され、暗闇で乾燥される、
【0107】
lll)各透明オーバレイ(細分されたグラフィカル物体の第1の立体投影及び第2の立体投影に対応する)は各エマルジョン被覆スクリーンの上に配置され、次に、UV光にさらされる、
【0108】
llll)各スクリーンは、露光されなかったエマルジョンを除去するために完全に洗い流され、各メッシュスクリーンに各立体投影のネガステンシル画像が残される。
【0109】
第1のネガステンシルをもつ第1のメッシュスクリーンは、第1の立体投影に対応する第1の画像層をLHLC又は代替としてRHLCインク組成物で印刷するために使用され、第2のネガステンシルをもつ第2のメッシュスクリーンは、第2の立体投影に対応する第2の画像層をRHLC又は代替としてLHLCインク組成物で印刷するために使用される。
【0110】
ステップe)及びg)において、LCインク組成物は、物理的乾燥(溶剤の蒸発)、UV硬化処理、eビーム硬化処理、ヒートセット、酸化重合、又はそれらの組合せによって、最も好ましくは、UV硬化処理によって硬化処理される。
【0111】
1対の立体画像を印刷するために使用されるインク組成物がコレステリック液晶物質を含む場合、LC物質はLC相を形成するために配向され、その後、インク組成物は、物理的乾燥(溶剤の蒸発)、UV硬化処理、eビーム硬化処理、ヒートセット、酸化重合、又はそれらの組合せによって、最も好ましくは、UV硬化処理によって硬化処理される。
【0112】
本発明によるデバイスは、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、又はインクジェットの印刷などの様々な印刷方法で印刷することができ、LC層は、最も好ましくはシルクスクリーン印刷で印刷される。
【0113】
(実施例)
本発明による細分されたグラフィカル物体を生成するプロセスを示すために、物体の3Dコンピュータモデリング用の公的に利用可能なプログラムBlender(GNU General Public Licence下のフリーソフト)を使用して、実施例が準備された。
【0114】
細分されたグラフィカル物体の立体投影を形成するのに使用される画像を仮想カメラで撮影するために、Blenderソフトウェアがやはり使用された。
【0115】
比較例1:細分されていない立方体の1対の単色立体投影(図1及び2)
濃淡勾配、反射、又は陰影のない立方体の1対の立体投影の単色表示を観察することによって、1対の円偏光フィルタなどの適切な観察装置を使用した観察者は、表示物体を3D物体として解釈することができなかった(投影がLHLC層及びRHLC層で印刷されている場合でさえ)。物体は平坦な不規則多角形のように見えた(
図1)。
【0116】
図1の立体投影が重ねられた(
図2)ときに、観察者は、依然として、1対の適切な円偏光フィルタなどの適切な観察デバイスを使用した場合さえ3D効果を観察することができなかった。
【0117】
実施例1:細分された立方体の1対の単色立体投影(図6)
グラフィカル物体、すなわち、仮想立方体の表示が、本発明の方法により別個のビルディングブロックに細分された。細分された立方体の1対の立体投影が、1対の画像を2つの異なる位置から撮影することによって発生された。細分されたグラフィカル物体の1対の立体投影がLHLC層及びRHLC層で印刷された場合、1対の適切な円偏光フィルタなどの適切な観察装置を使用し、2つの投影の適切な視差を与える距離からデバイスを観察した観察者は、3D形状を観察した。
【0118】
図5は、
図6の1対の立体投影が互いに部分的に重なるようにそれらを印刷することによって得られた。
【0119】
同様に、
図9、11、12、13、14は、様々なタイプのビルディングブロックをもつ立方体の単色立体投影を示す(ビルディングブロックは、
図9では立方体、
図11aではポジ像としての円板、
図11bではネガ像としての円板、
図12ではドット、
図13では線、
図14では大文字Aである)。
【0120】
実施例2:互いに部分的に重なる細分された立方体の1対の単色立体投影(図5)
グラフィカル物体、すなわち、仮想立方体の表示が、本発明の方法により別個のビルディングブロックに細分された。細分された立方体の1対の立体投影が、1対の画像を2つの異なる位置から撮影することによって発生された。細分されたグラフィカル物体の1対の立体投影は、互いに部分的に重なるようにLHLC層及びRHLC層で印刷された。1対の適切な円偏光フィルタなどの適切な観察装置を使用した観察者は、腕の長さ又はより短い距離のような非常に短い距離からでさえ3D形状を観察した。
【0121】
実施例3:細分された球体の1対の単色立体投影(図10)
グラフィカル物体、すなわち、仮想球体の表示が、本発明の方法により別個のビルディングブロックに細分された。ここで、良好な結果が、球体を緯度及び経度に沿ってビルディングブロックに分離することによって得られた。
【0122】
比較例2:
仮想の3D物体(仮想の人間の頭)がBlenderソフトウェアでモデル化され、異なる度合いの灰色のインクを使用して印刷された(陰影区域)(
図3)。物体の3D形状を認識することができた。
【0123】
図3の画像が単色インクで印刷された(
図4)。もはや3D形状を認識することができなかった。
【0124】
実施例4:
プログラムBlenderを使用する本発明の方法に従って、
図3の画像が複数のビルディングブロック、本実施例ではドットに細分された(
図7)。物体の3D形状を認識することができた。
【0125】
図7の画像の「清浄化」は、選ばれた視野角から見えるはずがないビルディングブロック(ドット)を除去することによって行われた。清浄化プロセスはビルディングブロックのいかなる遮蔽も避けることによって3D効果を改善した。
【0126】
図7の1対の画像は、1対の立体投影(
図8)を与えるソフトウェアBlenderの仮想カメラを使用して生成された。
【0127】
図8の1対の立体投影は、写真ステンシル法によって1対のステンシルを生成するために使用された。
【0128】
i)立体投影が、透明オーバレイ上に白黒ポジ像としてレーザプリンタで印刷された、
【0129】
ii)2つのメッシュスクリーンがフォトエマルジョンで被覆され、暗闇で乾燥された、
【0130】
iii)各透明オーバレイ(細分された物体の左眼投影及び右眼投影に対応する)が各エマルジョン被覆スクリーンの上に配置され、次に、UV光にさらされた、
【0131】
iv)各スクリーンは、露光されなかったエマルジョンを除去するために完全に洗い流され、各メッシュスクリーンに各立体投影のネガステンシル画像が残された。
【0132】
LC顔料を含むインク組成物の準備:
【表6】
【0133】
上述の組成物において、PIは、以下の組成物をもつ光開始剤の混合物を示す。
【0134】
【表7】
ITX:イソプロピルチオキサントン
EPD:エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート
BZP:4−フェニルベンゾフェノン
BDK:ベンジルジメチルケタール
【0135】
a)
図8の1対の立体画像は、メッシュスクリーンの一方でLHLCインク組成物を使用し、且つ互いに脇にある第2のメッシュスクリーンでRHLCインク組成物を使用して、黒色に被覆されたChromoluxボール紙上に印刷された。インク層はUV照射によって硬化処理された。
【0136】
図8aは、この方法で得られたデバイスの写真を示す。
【0137】
b)代替として、
図8の立体投影の一方は、メッシュスクリーンの一方でLHLC含有インク組成物を使用して、黒色に被覆されたChromoluxボール紙上に印刷された。インク層はUV硬化処理によって乾燥された。
【0138】
図8の第2の立体投影は、第1の立体投影を部分的に覆うように第2のメッシュスクリーンでRHLC含有インク組成物により印刷された。前記第2のインク層はUV照射によって硬化処理された。
【0139】
図8bは、この方法で得られたデバイスの写真を示す。
【0140】
得られたデバイス(
図8a及び
図8b)を見た観察者で、1対の円偏光フィルタなどの適切な観察デバイスを使用した観察者は、1対の立体投影によって形成された画像を適切な視差を与える距離から観察したときに物体の3D形状を認識した。
【0141】
図8bでは、最良の3D効果が、非常に短い距離、例えば、腕の長さの距離又はより短い距離から観察できた。
図8aは、
図8bよりも大きい距離から最も良く観察された。