特許第5760269号(P5760269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760269
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   B65D 63/10 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
   B65D63/10 G
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-100628(P2012-100628)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-227043(P2013-227043A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】591017939
【氏名又は名称】クラレファスニング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福島 康之
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−245767(JP,A)
【文献】 実公昭44−9229(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 63/10
A44B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の係止部(A)と、該係止部(A)の一端から延出し、係止部(A)の端部が貫通できる開口(C)を有する開口部(B)からなり、係止部(A)と開口部(B)はともに表面にフック状係合素子とループ状係合素子が混在した面ファスナーからなるベルトであって、開口部(B)には、開口(C)と該開口(C)の少なくとも係止部(A)から遠い側の開口(C)の辺付近に開口部(B)表面が折り返されて係合した折り返し部(D)が設けられていることを特徴とするベルト。
【請求項2】
折り返し部(D)が、係止部(A)から遠い側の辺を残して略コの字形または、略弓形に切れ目を開口部(B)に入れて折り返すことにより形成されたものである請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
面ファスナーが織物から構成されている請求項1または2に記載のベルト。
【請求項4】
織物がポリエステル系繊維から構成されており、地緯糸には熱融着性繊維が用いられ、同熱融着性繊維が融着することにより織物を構成する繊維が固定されている請求項3に記載のベルト。
【請求項5】
開口部(B)の幅(W)が係止部(A)の幅(W)の1.5〜3.0倍である請求項1〜4のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項6】
開口(C)の幅(W)が係止部(A)の幅(W)の1.05〜1.5倍である請求項1〜5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項7】
開口(C)の係止部(A)とは反対側端部から開口部(B)の係止部(A)とは反対側の端部までの距離(L)が折り返し部の長さ(L)の1.3〜5倍である請求項1〜6のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項8】
係止部(A)の幅(W)が0.6〜5cmである請求項1〜7のいずれかに1項記載のベルト。
【請求項9】
開口部(B)には、開口部(B)の途中で係合素子面を内側にして折り返して、開口部(B)の表面の係合素子を係合させることにより2枚の面ファスナーの積層状態となり、かつ開口(C)と重なり合う折り返し部の部分にも開口(Rc)が形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項10】
ベルトが面ファスナーテープから打ち抜きにより形成されたものである請求項1〜9のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項11】
棒状体または紐状体を結束するのに使用する結束用ベルトである請求項1〜10のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項12】
シートを枠に固定するのに使用する固定用ベルトである請求項1〜10のいずれか1項に記載のベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線、釣竿、スキー板などの長尺物を結束したり、あるいはスクリーン等のシートを枠等に固定したり、本等を重ね合わせて固定するのに用いられるベルトであって、特にフック状係合素子とループ状係合素子が同一表面に並存している面ファスナーテープを用いたベルトであって、長尺物の結束やシートや本等の固定に同面ファスナーの係合素子を係合させることにより結束状態や固定状態が保たれるようにしたベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から面ファスナーを結束用のベルトとして使用することは公知であり、同面ファスナーとして、フック状係合素子とループ状係合素子が同一表面に並存している面ファスナーを用いることも公知である。
【0003】
たとえば、特許文献1には、基体の同一面上にフック状係合素子とループ状係合素子を多数混在させた面ファスナーテープの一端に金属製またはプラスチック製の角型の環を取り付けた構造を有する結束用ベルトが記載されている。同文献に記載されている結束用ベルトを使用する場合には、電線や釣竿等の被結束物を複数本束ね、その周りに、係合素子面を外側にして同結束用ベルトを巻きつけ、周回してきたベルトの端部を環に通して折り返して締め付け、そして折り返した部分の係合素子と折り返す手前の係合素子を係合させることにより結束が完了することとなる。このような結束用ベルトの場合には、面ファスナーテープの一端に環を取り付ける必要があり、製造に手間を要するという問題点を有している。
【0004】
上記の結束用ベルトに代わる結束用ベルトとして、特許文献2には、同一面上にフック状係合素子とループ状係合素子を多数混在させた面ファスナーテープから、帯状の係止部と、同係止部の一端から延出し、同係止部の端部が貫通できる開口を有する開口部からなる結束用ベルトを打ち抜くことにより製造することが記載されている。この特許文献2に記載された結束用ベルトの場合には、面ファスナーテープから環に相当する開口部を打ち抜きにより形成するものであることから、上記特許文献1の技術のように、面ファスナーとは別に環を用意する必要がなく、その点で改善された技術であると言える。
【0005】
本発明者等は、上記特許文献2に記載された打ち抜き結束用バンドを使用して電線や棒状物を結束したところ、帯状の係止部の端部を開口部の開口に挿入する際に、開口の付近、特に開口の係止部から遠い側の辺付近に存在している係合素子と係止部の端部に存在している係合素子とが係合を生じ、その結果、係合部が開口へ挿入することを妨げていることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−84658号公報
【特許文献2】特開2000−203625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このフック状係合素子とループ状係合素子が同一面に並存している面ファスナーから打ち抜きにより得られ、かつ帯状の係止部と、同係止部の一端から延出し、同係止部の端部が貫通できる開口を有する開口部からなるバンドであって、同係止部の端部を同開口に貫通させる際に、開口の付近に存在している係合素子と係止部に存在している係合素子が係合し難くし、それにより、係止部を開口に容易に貫通させることができ、その結果、容易に結束したり、固定したりすることができるバンドを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、帯状の係止部(A)と、該係止部(A)の一端から延出し、係止部(A)の端部が貫通できる開口(C)を有する開口部(B)からなり、係止部(A)と開口部(B)はともに表面にフック状係合素子とループ状係合素子が混在した面ファスナーからなるベルトであって、開口部(B)には、開口(C)と該開口(C)の少なくとも係止部(A)から遠い側の開口(C)の辺付近に開口部(B)表面が折り返されて係合した折り返し部(D)が設けられていることを特徴とするベルトである。
【0009】
そして、好ましくは、本発明は、折り返し部(D)が、係止部(A)から遠い側の辺を残して略コの字形または、略弓形に切れ目を開口部(B)に入れて折り返すことにより形成されたものである場合である。また、好ましくは、面ファスナーが織物から構成されている場合であり、さらに好ましくは、織物がポリエステル系繊維から構成されており、地緯糸には熱融着性繊維が用いられ、同熱融着性繊維が融着することにより織物を構成する繊維が固定されている場合であり、特に好ましくは、さらに織物の裏面側には、バックコート樹脂層が存在していない場合である。
【0010】
そして、好ましくは、開口部(B)の幅(W)が係止部(A)の幅(W)の1.5〜3.0倍である場合であり、また開口(C)の幅(W)が係止部(A)の幅(W)の1.05〜1.5倍である場合であり、また開口(C)の係止部(A)とは反対側端部から開口部(B)の係止部(A)とは反対側の端までの距離(L)が折り返し部の長さ(L)の1.3〜5倍である場合であり、そして係止部(A)の幅(W)が0.6〜5cmである場合である。
【0011】
そして好ましくは、本発明は、開口部(B)には、開口部(B)の途中で係合素子面を内側にして折り返して、開口部(B)の表面の係合素子同士を係合させることにより2枚の面ファスナーの積層状態となり、かつ開口(C)と重なり合う折り返し部の部分にも開口(R)が形成されている場合である。
そして、好ましくは、本発明のベルトは、面ファスナーテープから打ち抜きにより一挙に形成されたものである場合である。
【0012】
さらに好ましくは、本発明のベルトは、棒状体または紐状体等の長尺物を結束するのに使用する結束用ベルトである場合であり、またはシートを枠に固定するのに使用する固定用ベルトである場合である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベルトには、開口部(B)の開口(C)は、好ましくは略コの字形または略弓形の切れ目を入れて切れ目を入れなかった辺を中心にして折り返すことにより形成され、そして開口(C)の係止部(A)から遠い側の開口の辺付近に存在している係合素子を折り返し部(D)で覆うようにすることができるように、折り返し部(D)が設けられている。したがって、この折り返し部(D)を折り返して、折り返し部(D)の表面に存在している係合素子と折り返し部(D)で覆われた箇所に存在している開口部(B)の表面の係合素子を係合させることにより、折り返し部(D)は開口部(B)の表面に係合固定され、開口(C)の係止部(A)から遠い側の辺の表面近傍を折り返し片(D)で覆うことができ、その結果、係止部(A)の端部を開口(C)に貫通させる際に、係止部(A)表面の係合素子と、開口(C)の周り、特に開口(C)の係止部(A)から遠い側の開口(C)の辺の近傍表面に存在している係合素子との無用な係合が生じることを防ぐことができる。
【0014】
さらに、開口(C)の係止部(A)から遠い側の辺が折り返し部(D)により2重構造となって強化されており、その結果、結束する際や固定する際に、締め付けるために開口(C)を貫通させた係止部(A)を開口で折り返して引っ張ることが通常行われるが、その際に開口(C)から面ファスナーが裂けることを防ぐこともできる。
【0015】
さらに、面ファスナーが織物から構成されていることが、ベルトにする時の加工性や打ち抜き加工性の点で好ましく、織物は、ポリエステル系繊維から構成されており、地緯糸には熱融着性繊維が用いられ、該熱融着性繊維が溶融することにより織物を構成する繊維が固定されている。さらには熱融着繊維が収縮して織物を構成する経糸を十分に掴んで熱融着固定することが好ましい。その結果、織物の裏面側には、バックコート樹脂層を存在させる必要がなく、バックコート樹脂層が存在していないことから面ファスナーが柔軟であり、後述するように、小径の棒状体や紐状体にベルトを取り付ける際であっても、棒状体や紐状体の表面にベルトを固定させることができ、さらに面ファスナーが地緯糸の溶融により固定されているため、結束・結束解除を繰り返しても、バンドの幅方向端部がほつれることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のベルトの好適な一例を示す斜視図である。
図2】本発明のベルトの、特に開口部(B)を拡大した好適な一例の平面図である。
図3】本発明のベルトの、特に開口部(B)を拡大した他の好適な一例の平面図である。
図4】本発明のベルトの、特に開口部(B)を拡大した他の好適な一例の平面図である。
図5】本発明のベルトを用いて棒状体を結束した場合の好適な一例の斜視図である。
図6】本発明のベルトを用いて棒状体を結束した場合の他の好適な一例の斜視図である。
図7】本発明のベルトをシートを展張して枠に固定するのに用いた場合の好適な一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明を図面に基づき説明する。図1は、本発明の代表的なベルトの全体を示している。本発明のベルトは大きく分けると、帯状の係止部(A)と、同係止部(A)の一端から延出し、同係止部(A)の端部が貫通できる開口(C)を有する開口部(B)から構成されている。係止部(A)と開口部(B)はともに面ファスナーから形成されており、片面には、フック状係合素子とループ状係合素子が混在(並存)している(このような同一表面にフック状係合素子とループ状係合素子が混在している面ファスナーをフック・ループ混在型面ファスナーと称す場合がある)。このような、表面にフック状係合素子とループ状係合素子が混在している面ファスナーは、クラレファスニング株式会社からフリーマジック(登録商標)の商品名で販売されており、公知であり、本発明には、このような公知のフック・ループ混在型面ファスナーが使用できる。
【0018】
このようなフック状係合素子とループ状係合素子が同一面に混在している面ファスナーにおいて、より好ましくは、フック状係合素子の高さよりもループ状係合素子の方が0.1〜1mm高く、フック状係合素子の数とループ状係合素子の数が30:70〜70:30の範囲で、ループ状係合素子の数とフック状係合素子の合計素子密度が20〜150個/cmの範囲であるフック・ループ混在型の面ファスナーである。フック・ループ混在型の面ファスナーであることにより、開口(C)を貫通させて折り返した係止部(A)が、折り返しの前後で向かい合っている係合素子同士の係合により固定され、結束固定や連結固定等が完了することとなる。
【0019】
また、フック・ループ混在型の面ファスナーは、ポリエステル系の繊維から形成された織物であることが好ましく、特に織物を構成する地緯糸に熱融着性のポリエステル系繊維、好ましくは芯成分が高融点のポリエステル系樹脂(例えば、共重合成分が実質的に存在していないポリエチレンテレフタレート)、鞘成分が低融点のポリエステル系樹脂(例えば、イソフタル酸を15〜25モル%共重合したポリエチレンテレフタレート)からなり、地経糸と係合素子用糸が高融点のポリエステル系樹脂(例えば、共重合成分が実質的に存在していないポリエチレンテレフタレート)からなり、面ファスナーを製造する段階で、該低融点ポリエステル系樹脂成分を溶融熱収縮させて、面ファスナー構成糸を融着固定した面ファスナーは、従来一般的に用いられている面ファスナーと比べて、面ファスナーの裏面に面ファスナー構成繊維を固定するためのバックコート樹脂、例えばポリウレタン樹脂やアクリル系樹脂を塗布する必要がないことから、面ファスナーが柔軟である。また、本発明のバンドを用いて結束あるいは連結する対象物が小径の棒状物であっても、バックコート樹脂が無いことで巻き付けやすくなることから、本発明のバンドに適している。
【0020】
本発明のベルトにおいて、開口部(B)は係止部(A)よりも幅が広く、開口部(B)には係止部(A)の反対側の端部が貫通できる開口(C)が設けられている。そして、図1に示すように、開口部(B)には、折り返し部(D)が設けられており、折り返し部(D)の面ファスナーを折り返すことにより係止部(A)から遠い側の開口(C)の辺付近に存在している係合素子を折り返し部(D)で覆うようにすることができる。すなわち、係止部(A)から遠い側の開口(C)の辺付近に存在している係合素子を折り返し部(D)で覆うことにより、ベルトを輪状にして被結束物を結束するために開口(C)に係止部(A)を挿入する際に、係止部(A)の表面に存在している係合素子と開口(C)の近傍表面に存在している係合素子が無用な係合を生じることを防ぐことができる。特に、開口(C)に係止部(A)を挿入する時や、挿入した係止部(A)を引っ張り出す時に、開口部(B)表面に存在している開口(C)の係止部(A)から遠い側の辺近傍に存在している係合素子が係止部(A)の表面に存在している係合素子と無用な係合を生じ易いので、それを防ぐために開口(C)を形成するために折り返した折り返し部(D)によって、開口(C)の係止部(A)から遠い側の辺付近に存在している係合素子を覆い、向かい合う面に存在している係合素子同士を係合させることにより覆っている状態を固定する。
【0021】
本発明のベルトにおいて、係止部(A)の長さと幅(図2に示すW)は、結束する対象物等の太さや本数等により大きく変わるが、一般的には、それぞれ、係止部(A)の長さ5〜80cmと、幅(W)0.6〜5cmの範囲が採用される。また、開口部(B)の幅(図2に示すW)としては、係止部(A)の幅の1.5〜3.0倍が好ましく、1.5倍未満では開口部(B)の強度が低下し、一方、3倍を超える場合には、使用する面ファスナーの幅が大きくなるだけでメリットが殆どない。
【0022】
図2は本発明ベルトの開口部(B)を模式的に示したものであり、開口部(B)には、係止部(A)から遠い側の辺を残して略コの字形に切れ目(S)が入れられている。この切れ目(S)により囲まれた部分を持ち上げ、そして図2に示す折り返し線(E)で折り返して、折り返し部(D)を図1に示すように、開口部(B)の係合素子を有する表面に密着させる。それにより図1に示すように、係止部(A)から遠い側の開口(C)の辺付近に存在している係合素子が折り返し部(D)で覆われることとなる。
【0023】
そして、折り返し部(D)の長さ(L)に対して、開口(C)の係止部(A)とは反対側の端部から開口部(B)の係止部(A)とは反対側の端部までの距離(L)は1.3〜5倍であるのが、折り返し部(D)で覆われた先に係合素子が露出している部分が存在していることにより、開口(C)で折り返してきた係止部(A)の係合素子がこの露出している係合素子と係合することとなり、結束状態や連結状態がより強固なものとなり、好ましい。なお、図2図4では、面ファスナー表面に存在している係合素子の記載を省略している。
【0024】
切れ目(S)は図2に示すような略コの字形や、略弓形であることが打ち抜き性と係止部(A)の開口(C)への貫通性を兼ね備える点で好ましい。この場合、略とは、完全にそれらの形状でなくともそれに近い状態であればよい。また図3に示すようなH字形であってもよい。H字形の場合には、図3に示す両方の折り返し線(E)で面ファスナーを折り返すことにより、係止部(A)から遠い側の開口(C)の辺付近の係合素子を覆うのみならず、係止部(A)に近い側の開口(C)の辺付近の係合素子も覆うことができ、結束・解除時に無用な係合を防止しやすい点から好ましい。
【0025】
さらに、図4に示すような開口部(B)がその長さの途中で折り返すことができるような構造を有している場合には、開口部(B)の途中で折り返して、開口部(B)の表面の係合素子を係合させることにより開口部(B)は2枚の面ファスナーの積層状態となるため、開口部(B)、特に開口(C)付近の強度が向上し、開口(C)から面ファスナーが裂けることあるいは裂け目が広がることを防ぐことが可能となる。図4に示すように、開口部(B)の途中で折り返した場合に、折り返した部分は開口部(B)を補強することとなるので、図4では開口部(B)を折り返した部分を補強部(R)と記載している。そして、この補強部(R)を形成するために折り返す箇所を折り返し線(R)と記載している。
【0026】
なお、この図4に示すような開口部(B)を折り返し、開口部(B)全体を折り返した面ファスナーの開口部(B)を折り返した部分に相当する補強部(R)で覆う場合には、折り返す面ファスナーの補強部(R)にも開口(C)に対応する開口(R)を設ける必要がある。その場合には、開口(R)は折り返す前の開口(C)より広く、特に図4に示すように係止部(A)から遠い側の開口(C)の辺付近には折り返した面ファスナーの係合素子が存在しないように広く開口(R)を設けるのが好ましい。また、図4のE部分が切断されていても開口(R)と開口(C)が略重なって、少なくとも係止部(A)から遠い側の開口(C)の片付近が開口部(B)表面が折り返されていれば若干効果は低下する場合がある本発明の効果を有する。
【0027】
なお、開口(C)の大きさは、係止部(A)を通すことができるならば特に限定されないが、図2に示すように、幅(W)は係止部(A)の幅(W)の1.05〜1.5倍の範囲が好ましい。
【0028】
図5は、本発明のバンドを用いて棒状体を20本ほど束ねた場合の斜視図である。本発明のバンドをフック・ループ混在面が表側となるように20本ほどの棒状体の周りに巻き付け、そして周回してきた係止部(A)の端部を開口部(B)の開口(C)に通して締め付け、そして開口(C)で折り返して、折り返す前後の表面の係合素子を係合させることにより結束が完了する。この際に、開口(C)の折り返し側は係合素子が折り返し部(D)で覆われているため、係止部(A)を開口(C)に通す際や、係止部(A)を引っ張って締め付ける際に無用な係合が生じることがなく、作業性が向上し、締め付け程度に関しても適切な程度を容易に調整でき、また自由に選択できることとなる。
さらに、開口が折り返し部(D)により補強されることとなるため、開口(C)から面ファスナーが裂けたり、あるいは裂けが広がることを防ぐことができる。
【0029】
さらに図6に示すように、結束する棒状体(あるいはコード状物)の1本に、折り返し部(D)を用いて本発明のバンドを固定し、そして残りの棒状体に係止部(A)を巻き付けて結束することもできる。このような方法を用いると、結束を解いた後においてもバンドを棒状体の表面に固定することができ、結束を解いた場合に生じやすい、バンドの紛失という問題を解決することができる。しかも、本発明のバンドの特長点である、結束時に無用な係合が生じることを防止できるという特長点を何ら損なうことがない。このような使用形態として、電気コードの結束に本発明のバンドを使用する場合が挙げられる。例えば、モバイル型のパソコンの電気コードを使用する際は電線コードの一箇所に本発明のバンドを図6に示すように固定しておき、パソコンを持ち運ぶ際には、取り外した電線コードを束ね、その束ねた状態で図6のように本発明のバンドで結束し、そして目的場所まで移動した後に、電線コードの結束を解いて、パソコンに繋ぐ方法に用いるのに適している。
【0030】
図7は、本発明のバンドを用いてシートを枠に固定する場合のバンドの使い方を示すものである。すなわち、枠(F)に本発明のバンドを巻き付け、開口(C)に係止部(A)を貫通させ、そして貫通させた係止部(A)をさらにシート(T)に設けた穴に通して折り返し、折り返す前後の係止部の係合素子同士を係合させることにより、シート(T)を枠(F)に固定できることとなる。このようなシートとして、工事現場を覆う養生シートや映写用のスクリーン、看板となるシート、支柱に固定するテントや農業用シート等が挙げられる。
【0031】
本発明のベルトは、開口部(B)の幅より広い幅を有するフック・ループ混在型の面ファスナーから本発明のベルト形状に打ち抜くことにより容易に製造できる。その際に、開口(C)を形成可能となる切れ目を入れることもできるし、また打ち抜きとは別に入れることもできる。
【0032】
このように、本発明のベルトは、結束時や連結時の無用な係合素子同士の係合が生じることを防止することができ、作業性に優れている。また開口(C)からの面ファスナーの裂けを防止することができる。
本発明のベルトは棒状体、特に電線コードを束ねる結束コードとして、あるいはシート等を枠に張り付ける際の連結バンド等として極めて優れている。
【符号の説明】
【0033】
A:係止部(A)
B:開口部(B)
C:開口(C)
D:折り返し部(D)
E:折り返し線(E)
R:補強部(R)
M:棒状体
F:枠
S:切れ目(S)
T:シート
:係止部の幅(W
:開口部の幅(W
:開口の幅(W
:折り返し部(D)の長さ(L
:開口の係止部(A)とは反対側端部から開口部(B)の係止部(A)とは反対側の端までの距離(L
:補強部の開口(R
:補強部が形成される折り返し線(R
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7