(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760275
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】ガラス壜の検査方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
G01N21/90 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-520399(P2013-520399)
(86)(22)【出願日】2011年6月15日
(86)【国際出願番号】JP2011064186
(87)【国際公開番号】WO2012172695
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2014年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014661
【氏名又は名称】キリンテクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】沼津 正明
【審査官】
小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−277960(JP,A)
【文献】
特開2002−357559(JP,A)
【文献】
特開2002−357558(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/036197(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/036198(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/036199(WO,A1)
【文献】
特開昭58−744(JP,A)
【文献】
特開平11−108854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像に基づいて基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を前記テンプレートと比較してガラス壜の特定部位の欠陥を検出するガラス壜の検査方法であって、
検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像から差分画像を順次作成し、
前記差分画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての差分画像を合成して差分合成画像を作成し、
前記ガラス壜の検査1回分の全ての差分画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記差分合成画像を仮テンプレートとし、
前記仮テンプレートを用いて前記テンプレートを補正することを特徴とするガラス壜の検査方法。
【請求項2】
前記テンプレートは、所定数の良品のガラス壜を連続して撮影した原画像から差分画像を順次作成し、作成された差分画像を重ね合わせることにより作成することを特徴とする請求項1に記載のガラス壜の検査方法。
【請求項3】
前記仮テンプレートを追加データとして前記テンプレートに合成することにより、前記テンプレートを補正することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス壜の検査方法。
【請求項4】
照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像に基づいて基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を前記テンプレートと比較してガラス壜の特定部位の欠陥を検出するガラス壜の検査方法であって、
検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像又はこの原画像から作成された比較用画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての原画像又は比較用画像を合成して合成画像を作成し、
前記ガラス壜の検査1回分の全ての原画像又は比較用画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記合成画像を仮テンプレートとし、
前記仮テンプレートを追加データとして前記テンプレートに合成することにより、前記テンプレートを補正することを特徴とするガラス壜の検査方法。
【請求項5】
前記ガラス壜の特定部位の欠陥は、壜口部のビリであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガラス壜の検査方法。
【請求項6】
照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像を画像処理装置により処理して基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を前記テンプレートと比較してガラス壜の特定部位の欠陥を検出するガラス壜の検査装置であって、
前記画像処理装置は、
検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像から差分画像を順次作成し、
前記差分画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての差分画像を合成して差分合成画像を作成し、
前記ガラス壜の検査1回分の全ての差分画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記差分合成画像を仮テンプレートとし、
前記仮テンプレートを用いて前記テンプレートを補正することを特徴とするガラス壜の検査装置。
【請求項7】
前記テンプレートは、所定数の良品のガラス壜を連続して撮影した原画像から差分画像を順次作成し、作成された差分画像を重ね合わせることにより作成することを特徴とする請求項6に記載のガラス壜の検査装置。
【請求項8】
前記仮テンプレートを追加データとして前記テンプレートに合成することにより、前記テンプレートを補正することを特徴とする請求項6または7に記載のガラス壜の検査装置。
【請求項9】
照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像を画像処理装置により処理して基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を前記テンプレートと比較してガラス壜の特定部位の欠陥を検出するガラス壜の検査装置であって、
前記画像処理装置は、
検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像又はこの原画像から作成された比較用画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての原画像又は比較用画像を合成して合成画像を作成し、
前記ガラス壜の検査1回分の全ての原画像又は比較用画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記合成画像を仮テンプレートとし、
前記仮テンプレートを追加データとして前記テンプレートに合成することにより、前記テンプレートを補正することを特徴とするガラス壜の検査装置。
【請求項10】
前記ガラス壜の特定部位の欠陥は、壜口部のビリであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載のガラス壜の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス壜の検査方法および装置に係り、特にガラス壜の壜口部等の特定位置にある欠陥を撮像により検出することができるガラス壜の検査方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス壜の製造に際して、壜口部の肉厚内にひび割れのような亀裂(クラック)が入ることがあり、この亀裂はビリと称されている。ガラス壜の壜口部にビリが発生する箇所はある程度限られていて、代表的には壜口の天面付近に発生するビリ、壜口のねじ山部に発生するビリ、壜口のスカート部に発生するビリがある。ビリには亀裂の方向によって、縦方向(略垂直方向)に延びる縦ビリ、横方向(略水平方向)に延びる横ビリがある。
上述したビリはガラス壜の破損の原因になるため壜口部を撮像することによりビリの有無を検出し、ビリがあるガラス壜を不良壜として排除するようにしている。
【0003】
従来から、ガラス壜の壜口部を撮像してビリの有無を自動的に検査するガラス壜の検査装置が知られている。このガラス壜の検査装置は、1台の照明をガラス壜の壜口部の上方に設置し、壜口部の周囲に壜口部を取り囲むように多数(例えば、7台)のカメラを配置することにより構成されている。照明からの拡散光はガラス壜の壜口部に入射し、壜口部にビリがある場合には、ビリの亀裂面で反射して明るく光るため、カメラで撮影した画像中では、ビリに対応した画像部分が他の画像部分より明るい領域となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4478786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したガラス壜の壜口部のビリ検査を行う場合、予め撮影した良品のガラス壜の画像に基づいて基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を得て、この得られた画像をテンプレートと比較してガラス壜の良否の判定を行うテンプレートマッチングという手法を適用することが考えられる。
ところが、ガラス壜製造工場においては、複数の金型を用いてガラス壜を製造することが行われており、複数の金型間で、その寸法精度に殆ど差がない状況であっても、金型から製品を脱型し易くするために、金型に「離型剤」を塗布する必要があるが、金型に塗布する離型剤の量や金型の温度調整にバラツキがあると、CCDカメラの画像に影響を及ぼし、本来、良品と判定されるべきガラス壜であっても不良品と判定される場合がある。
【0006】
そのため、ガラス壜製造工場においては、稼動状況により基準となる画像(テンプレート)を見直す必要があり、一度、テンプレートを作成してしまえば、あとはその再現性に注意を払えばよいというものではなく、製造ラインの稼動状況に対応したテンプレートにする必要がある。したがって、ガラス壜製造工場においては、ガラス壜の製造を行いながら、予め良品に基づいて作成されたテンプレートに新たに製造されたガラス壜のデータを追加してテンプレートを更新していく必要がある。この場合、ガラス壜製造工場では単位時間当たりの製造個数が多大であり、ガラス壜検査装置は、高価であるために一台で多数のガラス壜を検査することができる高スループットの性能が求められている。そのため、ガラス壜検査装置は、高速でビリ検査を行うとともに、テンプレートへのデータ追加も高速で行う必要がある。例えば、ガラス壜検査装置は、200BPM(本/分)以上の処理能力が必要とされ、ガラス壜1本分の検査で撮影して処理する画像数は約200〜400枚にわたる。200BPM以上の処理能力を必要とする場合、1秒間に3.3本以上の検査を行う必要がある。したがって、撮影して処理する画像数は、1秒間に660枚〜1320枚となる。すなわち、テンプレートマッチングの手法をガラス壜製造工場等で適用する場合には、テンプレート作成とビリ検査を同時に行うことが必須となり、ビリがある不良壜があると、ビリもテンプレートデータとして追加されてしまうことになる。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、予め撮影した良品のガラス壜の画像に基づいて基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を得て、この得られた画像をテンプレートと比較してガラス壜の良否の検査を高速で行うことができるとともに、前記基準画像となるテンプレートに検査後に良品と判定されたガラス壜の画像データのみを追加してテンプレートを補正または更新していくことができるガラス壜の検査方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明のガラス壜の検査方法の第一の態様は、照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像に基づいて基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を前記テンプレートと比較してガラス壜の特定部位の欠陥を検出するガラス壜の検査方法であって、検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像から差分画像を順次作成し、前記差分画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての差分画像を合成して差分合成画像を作成し、前記ガラス壜の検査1回分の全ての差分画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記差分合成画像を仮テンプレートとし、前記仮テンプレートを用いて前記テンプレートを補正することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像に基づいて基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した2枚の原画像から差分画像を順次作成し、この差分画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての差分画像を合成して差分合成画像を作成する。そして、前記ガラス壜の検査1回分の全ての差分画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記差分合成画像を仮テンプレートとする。この仮テンプレートは良品のガラス壜の画像より作成されたものであるため、これまで検査に用いていたテンプレートに仮テンプレートを追加データとして合成することができる。これに対して、検査1回分で得られた差分合成画像が不良壜のものであった場合(すなわち、差分画像とテンプレートとの比較工程において検査1回分の差分画像のうち1つでも不良壜のものと判定された場合)、差分合成画像は仮テンプレートとして合成されることはない。したがって、本発明をガラス壜製造工場において用いる場合には、ガラス壜の製造を行いながら、予め良品に基づいて作成されたテンプレートに新たに製造された良品のガラス壜のデータを追加してテンプレートを補正または更新していくことができ、製造ラインの稼働状況に対応したテンプレート(画像)にすることができる。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、前記テンプレートは、所定数の良品のガラス壜を連続して撮影した原画像から差分画像を順次作成し、作成された差分画像を重ね合わせることにより作成することを特徴とする。
本発明によれば、良品のガラス壜を連続して撮影した原画像から、差分画像を順次生成する。すなわち、撮影した原画像と次のタイミングで撮影した原画像を重ね合わせ、それぞれの画素値を引き算し、絶対値を画素値としたものが差分画像となる。そして、作成された差分画像を重ね合わせることによりテンプレートを作成する。
本発明の好ましい態様によれば、前記仮テンプレートを追加データとして前記テンプレートに合成することにより、前記テンプレートを補正することを特徴とする。
本発明のガラス壜の検査方法の第二の態様は、照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像に基づいて基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を前記テンプレートと比較してガラス壜の特定部位の欠陥を検出するガラス壜の検査方法であって、検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像又はこの原画像から作成された比較用画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての原画像又は比較用画像を合成して合成画像を作成し、前記ガラス壜の検査1回分の全ての原画像又は比較用画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記合成画像を仮テンプレートとし、前記仮テンプレートを
追加データとして前記テンプレートに合成することにより、前記テンプレートを補正することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像に基づいて基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像又はこの原画像から作成された比較用画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての原画像又は比較用画像を合成して合成画像を作成する。そして、前記ガラス壜の検査1回分の全ての原画像又は比較用画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記合成画像を仮テンプレートとする。この仮テンプレートは良品のガラス壜の画像より作成されたものであるため、これまで検査に用いていたテンプレートに仮テンプレートを追加データとして合成することができる。これに対して、検査1回分で得られた合成画像が不良壜のものであった場合(すなわち、原画像又は比較用画像とテンプレートとの比較工程において検査1回分の原画像又は比較用画像のうち1つでも不良壜のものと判定された場合)、合成画像は仮テンプレートとして合成されることはない。したがって、本発明をガラス壜製造工場において用いる場合には、ガラス壜の製造を行いながら、予め良品に基づいて作成されたテンプレートに新たに製造された良品のガラス壜のデータを追加してテンプレートを補正または更新していくことができ、製造ラインの稼働状況に対応したテンプレート(画像)にすることができる。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記ガラス壜の特定部位の欠陥は、壜口部のビリであることを特徴とする。
【0014】
本発明のガラス壜の検査装置の第一の態様は、照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像を画像処理装置により処理して基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を前記テンプレートと比較してガラス壜の特定部位の欠陥を検出するガラス壜の検査装置であって、前記画像処理装置は、検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像から差分画像を順次作成し、前記差分画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての差分画像を合成して差分合成画像を作成し、前記ガラス壜の検査1回分の全ての差分画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記差分合成画像を仮テンプレートとし、前記仮テンプレートを用いて前記テンプレートを補正することを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記テンプレートは、所定数の良品のガラス壜を連続して撮影した原画像から差分画像を順次作成し、作成された差分画像を重ね合わせることにより作成することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記仮テンプレートを追加データとして前記テンプレートに合成することにより、前記テンプレートを補正することを特徴とする。
本発明のガラス壜の検査装置の第二の態様は、照明とカメラを用いて予め撮影した良品のガラス壜の画像を画像処理装置により処理して基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を前記テンプレートと比較してガラス壜の特定部位の欠陥を検出するガラス壜の検査装置であって、前記画像処理装置は、検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像又はこの原画像から作成された比較用画像と前記テンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての原画像又は比較用画像を合成して合成画像を作成し、前記ガラス壜の検査1回分の全ての原画像又は比較用画像が良品のガラス壜のものと判定された場合に前記合成画像を仮テンプレートとし、前記仮テンプレートを
追加データとして前記テンプレートに合成することにより、前記テンプレートを補正することを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記ガラス壜の特定部位の欠陥は、壜口部のビリであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)予め撮影した良品のガラス壜の画像に基づいて基準画像となるテンプレートを作成しておき、検査対象のガラス壜の画像を得て、この得られた画像をテンプレートと比較してガラス壜の良否の判定を高速で行うことができる。
(2)基準画像となるテンプレートに検査後に良品と判定されたガラス壜の画像データのみを追加してテンプレートを補正または更新していくことができる。
(3)検査対象のガラス壜を自転させてガラス壜を連続して撮影した原画像から差分画像を順次作成し、差分画像とテンプレートとを比較してガラス壜の良否の判定を行うとともに検査対象のガラス壜の検査1回分で得られた全ての差分画像を合成して差分合成画像を作成することができる。差分画像とテンプレート画像は全く違う形をしているが、差分合成画像とテンプレートは、ほぼ同じ形をしているため、面積計算や周囲長などの特徴検査も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1は、ガラス壜の検査装置を示す平面図である。
図2は、ガラス壜の検査装置を示す立面図である。
図3は、照明LED1又は照明LED2からの光がガラス壜の壜口部に入射し、壜口部からの光がカメラにより撮影されている場合の光路を示す模式的立面図である。
図4は、本発明のガラス壜の検査装置の検査手順を説明する模式図である。
図5は、本発明のガラス壜の検査装置の検査手順を説明する模式図である。
図6は、本発明のガラス壜の検査装置の検査手順を説明する模式図である。
図7は、本発明のガラス壜の検査装置の検査手順を説明する模式図である。
図8は、本発明のガラス壜の検査装置の検査手順を説明する模式図である。
図9は、本発明のガラス壜の検査装置の検査手順を説明する模式図である。
図10は、本発明のガラス壜の検査装置の検査手順を説明する模式図である。
図11は、本発明のガラス壜の検査装置の検査手順を説明する模式図である。
図12は、検査対象のガラス壜の壜口部を撮影した画像である。
図13は、調整用原画像および検査用原画像の一例を示す画像である。
図14は、調整用原画像、検査用原画像および差分画像の一例を示す画像である。
図15は、差分合成画像の一例を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るガラス壜の検査方法および装置の実施態様を
図1乃至
図15を参照して説明する。本発明のガラス壜の検査方法および装置は、検査すべきガラス壜の特定部位として壜口部の場合を説明し、検査すべき欠陥が壜口部におけるビリである場合を説明する。
【0020】
検査対象となるガラス壜は、検査用のスターホイール(図示せず)に保持され、スターホイールの円周上の搬送経路に沿って搬送される。このスターホイールの円周上の搬送経路の途中の1つの検査ステーションに、本発明に係るガラス壜の検査装置が配置されている。この検査ステーションにおいて、スターホイールにより搬送されるガラス壜がインデックス(回転割出し)され、本発明に係るガラス壜の検査装置によって壜口部におけるビリの有無が検査される。
【0021】
図1は、ガラス壜の検査装置を示す平面図である。
図1に示すように、ガラス壜の検査装置は、ガラス壜1の壜口部2を取り囲むように配置された2台の照明LED1,LED2と、1台のカメラCAM1とを備えている。
図1において、壜口部2は斜線で示している。照明LED1および照明LED2は検査対象のガラス壜1を挟んでカメラCAM1と反対側に配置されている。照明LED1と照明LED2は、カメラCAM1の光軸Cxに対して左右に対称した位置に配置されている。これにより、照明LED1,LED2からの光がビリの亀裂面で左右どちらに反射してもカメラCAM1で撮像できるようになっている。照明LED1,LED2は赤色LED照明から構成されており、カメラCAM1はCCDカメラから構成されている。
【0022】
図2は、ガラス壜の検査装置を示す立面図である。
図2に示すように、ガラス壜1は壜台3に載置されており、壜台3を回転させることによりガラス壜1は軸心1x回りに自転するようになっている。ガラス壜1の壜口部2は、ねじ部2nとねじ部2nの下方にあるスカート部2sとを有している。ガラス壜1の壜口部2の斜め上方には、2台の照明LED1,LED2が配置されている。また、ガラス壜1の壜口部2の斜め上方には、1台のカメラCAM1が配置されている。
【0023】
照明LED1,LED2およびカメラCAM1はコントローラ4に接続されており、コントローラ4により制御されて照明LED1,LED2は交互にパルス点灯するようになっており、カメラCAM1は照明LED1,LED2のパルス点灯と同期して壜口部2を撮像するようになっている。すなわち、照明LED1のパルス点灯に合わせてカメラCAM1の撮影タイミングが設定され、照明LED2のパルス点灯に合わせてカメラCAM1の撮影タイミングが設定されている。コントローラ4は、カメラCAM1で撮影された画像を処理する画像処理装置を備えており、カメラCAM1により撮影された画像は画像処理装置により処理されるようになっている。
【0024】
図3は、照明LED1又は照明LED2からの光がガラス壜1の壜口部2に入射し、壜口部2からの光がカメラCAM1により撮影されている場合の光路を示す模式的立面図である。
図3に示すように、照明LED1又は照明LED2からの光は、ガラス壜1の壜口部2に入射し、壜口部2にビリBがあった場合、壜口部2に入射した光はビリBの亀裂面で反射し、この反射光L
RはカメラCAM1で撮影される。カメラCAM1で撮影した画像中では、ビリに相当する画像部分は他の画像部分より明るい領域となる。
【0025】
次に、前述のように構成されたガラス壜の検査装置の検査手順について
図4乃至
図11を参照して説明する。
図4乃至
図11においては、各画像は模式化して示している。
(1)新規テンプレートの作成工程
まず、所定数の良壜のみを撮影して新規テンプレートを作成する工程を説明する。照明LED1又はLED2からの光は、壜台3に載置されたガラス壜1の壜口部2の上方から壜口内に入射する。壜口内に入射した光は壜口部2を透過及び/又は反射して壜口部2の斜め上方に配置されたカメラCAM1により撮影される。このとき、壜台3によってガラス壜1を回転(自転)させながら、カメラCAM1により壜口部2を連続して撮影し多数の原画像を得る。コントローラ4に設けられた画像処理装置は、上記撮像工程と併行して、
図4に示すように、連続して撮影した2枚の原画像から、差分画像を順次生成する。すなわち、撮影した原画像と次のタイミングで撮影した原画像を重ね合わせ、それぞれの画素値を引き算し、絶対値を画素値としたものが差分画像となる。この場合、壜口部2の全周を連続して撮影した原画像から多数の差分画像を得る。例えば、1回の検査で差分画像は約200〜400枚ほど生成される。
【0026】
次に、
図5に示すように、差分画像から仮テンプレートを作成する。この場合、画像処理装置は、差分画像を何枚も重ね合わせ、常に明るい方の画素を優先し、画素値とする。仮テンプレートは、指定された条件(検査本数、例えば50本のガラス壜)を満たすまで作られる。テンプレート作成条件(検査本数)を満たせば、仮テンプレートのデータは検査で使用するテンプレートにデータコピーされ、所定数の良壜のみに基づいて新規テンプレートが作成される。なお、所定数の良壜から新規テンプレートを作成する場合を説明したが、所定時間に多数の良壜を撮影した原画像から新規テンプレートを作成してもよい。すなわち、テンプレート作成条件は、検査本数であってもよいし、検査時間であってもよい。
【0027】
(2)新規テンプレートを用いたガラス壜の検査
良壜のみから作成された新規テンプレートを用いて、ガラス壜の製造工程において実際に製造されたガラス壜の検査を行う。
図2に示すガラス壜の検査装置によって、検査対象のガラス壜1を自転させつつガラス壜1の壜口部2を連続して撮影し多数の原画像を得る。コントローラ4に設けられた画像処理装置は、上記撮像工程と併行して、
図6に示すように、連続して撮影した2枚の原画像から、差分画像を順次生成する。すなわち、撮影した原画像と次のタイミングで撮影した原画像を重ね合わせ、それぞれの画素値を引き算し、絶対値を画素値としたものが差分画像となる。例えば、1回の検査で差分画像は約200〜400枚ほど生成される。
【0028】
次に、画像処理装置は、
図7に示すように、前記差分画像と新規テンプレートとを比較し、差分画像がテンプレートよりも暗い画素値で構成された場合に壜口部2にビリがない良壜と判定し、差分画像がテンプレートよりも明るい画素値を含んでいる場合に壜口部2にビリがある不良壜と判定する。1つのガラス壜を検査している間に差分画像は連続して生成され、差分画像が生成される度にテンプレートとの比較を行い、上記判定を行う。
【0029】
画像処理装置は、上記差分画像とテンプレートとの比較による判定と併行して、生成された差分画像を順次合成していく。こうして、
図8に示すように、検査1回分で得られた差分画像(ガラス壜を連続して撮影した原画像から得た多数の差分画像)を合成して差分合成画像を作成する。例えば、1回の検査で得られた約200〜400枚の差分画像を合成して差分合成画像を作成する。
(3)テンプレートの更新
検査1回分で得られた
図8に示す差分合成画像が良壜のものであった場合(すなわち、
図7に示す比較工程において検査1回分の全ての差分画像が良壜のものと判定された場合)、画像処理装置は、
図9に示すように、差分合成画像を仮テンプレートとして合成する。これに対して、検査1回分で得られた差分合成画像が不良壜のものであった場合(すなわち、
図7に示す比較工程において検査1回分の差分画像のうち1つでも不良壜のものと判定された場合)、差分合成画像は仮テンプレートとして合成されることはない。このように良壜から得られた仮テンプレートは、
図10に示すように、これまで検査に用いたテンプレートに追加データとして合成される。仮テンプレートを追加データとして合成する場合、加工して合成してもよいし、そのまま合成してもよい。したがって、本発明をガラス壜製造工場において用いる場合には、ガラス壜の製造を行いながら、予め良品に基づいて作成されたテンプレートに新たに製造された良品のガラス壜のデータを追加してテンプレートを補正または更新していくことができ、製造ラインの稼働状況に対応したテンプレート(画像)にすることができる。こうして、補正または更新されたテンプレートを用いて次のガラス壜を検査することができる。
【0030】
なお、
図11に示すように、作成された差分合成画像とテンプレートとを比較して面積計算や周囲長などの特徴検査を行ってもよい。差分画像とテンプレート画像は全く違う形をしているが、差分合成画像とテンプレートは、ほぼ同じ形をしているため、面積計算や周囲長などの特徴検査も可能となる。
【0031】
図12乃至
図15は、実際のガラス壜の検査工程で得られた画像である。
図12は検査対象のガラス壜の壜口部を撮影した画像である。
図13は調整用原画像および検査用原画像の一例を示す。
図14は調整用原画像、検査用原画像および差分画像の一例を示す。
図13及び
図14において、調整用原画像は、縦びりの存在するガラス壜を撮影した画像であり、ガラス壜の自転により縦びりの位置が変化している。
図13において、上の画像は縦びりが正面にある場合の各画像であり、下の画像は縦びりが正面から+6°移動した位置にあるときの各画像である。
図14において、上の画像は縦びりが正面から+12°移動した位置にあるときに得られる各画像であり、下の画像は縦びりが正面から+18°移動した位置にあるときに得られる各画像である。
図15は差分合成画像の一例を示す。
【0032】
図1乃至
図15に示す実施形態においては、原画像から差分画像を生成し、差分画像とテンプレートとを比較してガラス壜の良否を判定したが、原画像が直接にテンプレートと比較できる場合には、原画像とテンプレートとを比較してガラス壜の良否を判定してもよい。また、原画像から、差分画像とは別の形態の比較用画像を生成し、比較用画像とテンプレートとを比較してガラス壜の良否を判定してもよい。この場合には、比較用画像を合成して合成画像を生成する。
【0033】
また、
図1乃至
図15に示す実施形態においては、ガラス壜の壜口部のビリを検出する場合を説明したが、壜口部以外の部位、例えば、壜底部などのビリを検出する場合にも本発明を適用することができる。また、ガラス壜は、使用後の壜を回収して再利用するリターナブル壜もあり、このリターナブル壜は使用中や輸送中等において壜同士が接触したり他の物品に接触したりして壜口部にビリが入ることがある。リターナブル壜のビリを検出する場合にも本発明を適用することができる。
【0034】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ガラス壜の壜口部等の特定位置にある欠陥を撮像により検出することができるガラス壜の検査方法および装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 ガラス壜
2 壜口部
2n ねじ部
2s スカート部
3 壜台
4 コントローラ
Cx 軸心
CAM1 カメラ
LED1,LED2 照明