(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
(実施形態1)
本実施形態では、半導体チップを封止してなる半導体パッケージとして、発光ダイオードチップ(以下、LEDチップという)を封止してなる発光ダイオードパッケージ(以下、LEDパッケージという)について説明する。このLEDパッケージは、基板としてのリードフレーム上に実装されたLEDチップと、その周囲に形成され、LEDチップが発光した光を反射するリフレクタと、LEDチップおよびリフレクタを封止し、集光して外部に光を放出するレンズとを備えてなるものである。
【0013】
まず、LEDパッケージのリフレクタおよびレンズを形成(成形)するトランスファモールド装置について説明する。リードフレーム上において、第1次に成形されるリフレクタ(1次成形樹脂)、第2次に成形されるレンズ(2次成形樹脂)ともトランスファモールドで行われ、それぞれに用いられるトランスファモールド装置の概略構成は同様である。
図1に本実施形態におけるトランスファモールド装置を構成する各部のレイアウトを示す。トランスファモールド装置では、供給ユニットAと収納ユニットBとの間に、所定の機能を備えた2つの増設レールユニットCが設けられている。
【0014】
フレーム供給部1において供給マガジン2に収納されたリードフレーム53が、ターンテーブル3へ向きを揃えて整列して供給され、該ターンテーブル3から供給テーブル4まで送り出し機構(図示しない)により送り出される。また、タブレット供給部5においてリニアフィーダ(図示せず)から樹脂タブレットtが、タブレットホルダ6へ装填される。リードフレーム53および樹脂タブレットtが、プレス部7、24、31、31に供給される。
【0015】
プレス部7、24、31、31(モールド金型機構)は台座部9、25、29、29に設けられており、それぞれモールド金型8およびそれを型締め型開きする公知の型開閉機構と、モールド金型8のキャビティに樹脂圧を印加(圧送)しながら樹脂を送り出す公知のトランスファ機構とを備えている。台座部9、25、29、29は、台座部29のように、例えば移動レール部28を支持するレール台座部29aとプレス部31を支持するベース台座部29bとで構成されている。
【0016】
また、プレス部7、24、31、31には、モールド金型8のクランプ面にエア吸引によりリリースフィルム10を張設するフィルム搬送ユニットFを設けても良い(
図1では、プレス部7にのみフィルム搬送ユニットFを図示している)。リリースフィルム10は、モールド金型8の加熱温度に耐えられる耐熱性を有するもので、クランプ面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材、例えばフッ素系樹脂フィルムである。このフィルムユニットFは、フィルム供給部11およびフィルム巻取り部12を備えており、リリースフィルム10が移動レール部13、26、28、28と直交する方向に張設される。
【0017】
移動レール部13、26、28、28は、供給テーブル4でリードフレーム53を受け取って保持し、タブレットホルダ6より樹脂タブレットtを受け取って保持するローダ14やプレス部7などからリードフレーム53を取り出すアンローダ15が共用して移動可能になっている。ローダ14およびアンローダ15は、移動レール部13、26、28、28を所要位置へ移動してプレス部7、24、31、31に一方向から進退移動するようになっている。
【0018】
また、移動レール部13、26、28、28は、他のユニットとのレール同士の接続性や拡張性を考慮して、一方側端に延出部13a、26a、28a、28aが設けられ、他方側端にレールの長さを短くして生じた空隙部13b、26b、28b、28bが設けられている。また、移動レール部13、26、28、28には、吸引ダクト16、27、30、30が併設されている。
【0019】
吸引ダクト16の一端には樹脂かすなどを集塵する集塵機17が連結して設けられており、他端には連結部16aが設けられている。また、吸引ダクト30の一端には吸引ダクト16の連結部16aが連結して設けられており、他端には連結部30aが設けられている。また、吸引ダクト27の一端には吸引ダクト30の連結部30aが連結して設けられており、他端には連結部27aが設けられている。すなわち、吸引ダクト16、27、30、30から集塵機17へ樹脂かすなどが集塵される。
【0020】
プレス部7などからアンローダ15により取り出されたリードフレーム53は、取り出し部18に待機している移動テーブル19へ受け渡される。ここでのリードフレーム53の状態は、例えば
図14に示すように、ペアをなして成形品ランナなどの不要樹脂で接続されている。アンローダ15は、移送手段として設けた移動テーブル19へリードフレーム53を受け渡すと、次のリードフレーム53の取り出し動作に移行する。移動テーブル19は、アンローダ15よりリードフレーム53が受け渡されると、取り出し部18からゲートブレイク(不要樹脂の分離)が行われるディゲート装置20を経て、ワークWが収納される収納部21までの間を往復移動する。
【0021】
収納部21において、移動テーブル19により移送されたリードフレーム53は、ピックアップ22により一旦保持される。そして、移動テーブル19が取り出し部18へ向かって移動すると、ピックアップ22は必要に応じて旋回して、下方に設けられた収納マガジン23へ下動して向きを揃えてリードフレーム53を収納する。このようなトランスファモールド装置を用いて、LEDパッケージのリフレクタおよびレンズが形成される。
【0022】
次に、LEDパッケージの製造方法について説明する。
図2にLEDパッケージの製造工程のフローチャートを示す。
【0023】
LEDチップが実装される基板として、
図3に示すように、下面51およびその反対の上面52を有するリードフレーム53を複数準備する(ステップS10)。この
図3ではリードフレーム53の平面が示されている。なお、
図3は平面図であるが、説明を明解にするために、空隙領域57および貫通孔58にハッチングを付している。
【0024】
このリードフレーム53は、例えば、銅系合金または鉄系合金などで構成されている。このような銅系合金または鉄系合金に例えばプレス加工を施して、所望の形状のリードフレーム53を得ることができる。また、リードフレーム53の上面には、銀または銀合金のメッキ処理が施されており、リードフレーム53の上面を白色とすることでLEDパッケージの反射効率を向上することができる。
【0025】
また、平面視矩形状に形成されたリードフレーム53には、パッケージ領域54(25×6=150領域)が長手方向と短手方向にマトリクス状に複数設けられている。後の切断を含むダイシング処理(ステップS70)によって、1つのパッケージ領域54から1つのLEDパッケージが形成される。なお、この数に限定されるものではない。
【0026】
図3に示すリードフレーム53のパッケージ領域54では、LEDチップが実装されると共にLEDチップの外部電極(例えばカソード電極)とボンディングワイヤを介して電気的に接続されるパッドリード55と、LEDチップの他の外部電極(例えばアノード電極)とボンディングワイヤを介して電気的に接続されるリード56とが形成されている。これらパッドリード55とリード56は、リードフレーム53の長手方向に延在するように形成されており、それぞれの先端が向かい合うように配置されている。また、パッケージ領域54内のパッドリード55およびリード56の他の領域は、抜き加工(プレス加工)が施された空隙領域57であり、パッドリード55とリード56とを電気的に分離するために形成されている。
【0027】
また、リードフレーム53の長手側の両縁部のそれぞれには、長手方向に沿って設けられているパッケージ領域54の外側周辺に厚さ方向に貫通する貫通孔58(通し孔)が形成されている。本実施形態では、リードフレーム53の長手方向には、25列のパッケージ領域54が設けられており、その各列の両端側にそれぞれ貫通孔58、58が形成されている。なお、貫通孔58は、抜き加工(プレス加工)が施されている。
【0028】
続いて、
図4に示すように、リードフレーム53にLEDパッケージのリフレクタ66を形成する(ステップS20)。この
図4ではモールド金型8でクランプされたリードフレーム53の断面が示されている。リフレクタ66の形成では、前述したモールド金型8を備えたトランスファモールド装置を用いてトランスファモールドを行う。なお、以下では、リフレクタ66を形成するモールド金型8をモールド金型8Aとして説明する。
【0029】
モールド金型8Aは、互いに対向して配置される上型67と下型68とで構成され、それらが近接して型締めされ、また離間して型開きされる。上型67を固定型とし、下型68を可動型とした場合、上型67に対して下型68が近接してモールド金型8Aが型締めされ、上型67に対して下型68が離間してモールド金型8Aが型開きされる。
【0030】
上型67は、リフレクタ66(成形品キャビティ)が形成される金型キャビティ71と、成形品ランナ72が形成される金型ランナ73と、成形品カル74が形成される金型カル75と、成形品スルーゲート79が形成される金型スルーゲート80とを有している。また、下型68は、リードフレーム53を載置するための凹部76を有している。この下型68では、その中央部には円筒形状のポット77およびその内部で上下動するプランジャ78が設けられている。
【0031】
リードフレーム53にリフレクタ66を形成するには、まず、
図1を参照して説明したように、供給ユニットAから型開きしたモールド金型8A(モールド金型8)にリードフレーム53および樹脂タブレットtをローダ14により供給する。例えば、
図1のプレス部31に示すように、左右方向に2つのリードフレーム53が空間を隔てて同一平面内に下型68の凹部76に配置(載置)され、2つのリードフレーム53間の5つのポット77内にそれぞれ樹脂タブレットtが装填される。なお、
図4では、説明を明解にするために、ポット77の右側に配置されるリードフレーム53を省略している。
【0032】
リフレクタ66を構成する樹脂(樹脂タブレットt)としては、例えばエポキシ樹脂が用いられる。硬化したエポキシ樹脂は、後の工程で形成されるレンズを構成する透過性の樹脂として用いられるシリコーン樹脂が硬化したものより硬いものである。また、エポキシ樹脂には例えば窒化アルミニウム(AlN)や酸化チタンからなるフィラーを含有させることで、リフレクタ66全体として白色となる。これにより、リフレクタ66は、フレームとしてLEDチップを保護することができ、またLEDチップの光の反射効率を向上することができる。
【0033】
次いで、モールド金型8Aを型締めして2つのリードフレーム53をクランプする。ここで、金型カル75と金型ランナ73とは連通しており、金型ランナ73の先端部(ゲート部70)とこれと最も近い金型キャビティ71とは連通している。また、金型キャビティ71と空隙領域57とは連通しており、一連の金型キャビティ71間は金型スルーゲート80を介して連通している。このように連通することで、溶融した樹脂81の流路が形成される。なお、リードフレーム53の貫通孔58に対して金型ランナ73(
図4では破線で示している)などは連通しないように避けて設けられているため、この時点では貫通孔58には樹脂は流れない。
【0034】
次いで、ポット77に装填された樹脂タブレットt(樹脂81)を加熱溶融させるとともに、プランジャ78を上動させて、金型キャビティ71およびリードフレーム53の空隙領域57を充填するように、溶融した樹脂81を金型カル75、金型ランナ73を介して圧送して加熱硬化させる。圧送された溶融した樹脂81によりすべての金型キャビティ71および空隙領域57が充填される。
【0035】
このようなトランスファモールドにより、金型キャビティ71では、凹部形状のリフレクタ66が形成される。また、空隙領域57で充填された樹脂81は、パッドリード55とリード56とを電気的に分離する。また、金型カル75では、成形品カル74が形成される。さらに、金型ランナ73では、成形品カル74を対称にそれぞれリードフレーム53、53側へ延在し、リードフレーム53、53をそれぞれの上面52で接続する成形品ランナ72が形成される。なお、成形品カル74および成形品ランナ72は不要樹脂である。
【0036】
次いで、
図1を参照して説明したように、収納ユニットBでは、モールド金型8A(モールド金型8)からアンローダ15により成形品ランナ72などで接続された2つのリードフレーム53、53を取り出し、ディゲート装置20を用いてリードフレーム53、53から、成形品カル74および成形品ランナ72を分離するディゲート処理を行う(ステップS21)。成形品カル74などはエポキシ樹脂で形成されているため、特許文献1の技術のようなツイスト機構を備えたディゲート装置20を用いて、成形品ランナ72の先端部(ゲート部70)で折って、各リードフレーム53から不要樹脂(成形品ランナ72、成形品カル74)をディゲートすることができる。
【0037】
図5および
図6に示すように、成形品カル74および成形品ランナ72が取り除かれると2つのリードフレーム53、53が分離される。この
図5ではリードフレーム53の下面51側の平面、
図6では上面52側の平面を示している。
図5に示すように、リードフレーム53の下面51側のパッドリード55およびリード56は、溶融した樹脂81で覆われずに露出している。また、
図6に示すように、リードフレーム53の複数のパッケージ領域54のそれぞれにおいて、リードフレーム53の上面52側のパッドリード55およびリード56の一部を露出するように、環状の開口部を有する凹部形状のリフレクタ66が形成される。
【0038】
続いて、
図7に示すように、各リードフレーム53の上面52に親水性のプラズマ処理を施す(ステップS30)。この
図7では動作中の大気圧プラズマ処理装置61Aが示されている。ここで親水性とは、基板であるリードフレーム53およびリフレクタ66(樹脂81)に対して、その上に形成されるレンズを構成する樹脂が結びつきやすい(樹脂との密着度を上げる)ことをいう。このため、プラズマ処理の他にブラスト処理などの表面洗浄を行ってリードフレーム53の上面52に親水性の処理を施しても良い。
【0039】
親水性のプラズマ処理では、大気圧プラズマ処理装置61Aを用いて、チャンバ62に例えばアルゴンに酸素を混合したガス63を供給し、高周波電源64でプラズマを発生させて、リフレクタ66が形成されている上面52にプラズマ(ラジカル)を照射する。この大気圧プラズマ処理装置61Aに設けられた移動機構65により、照射しながら移動することができる。
【0040】
なお、この親水性のプラズマ処理は、リードフレーム53の下面51には施さない。なぜならば、後の工程(ステップS60)において、下面51を伝ったレンズ形成用の樹脂が貫通孔58を介して上面52まで圧送された後、加熱硬化されてレンズが形成されるため、下面51に親水性のプラズマ処理が施されていると、リードフレーム53とレンズ形成用の樹脂との密着性が上がり過ぎてしまい、ディゲートができない場合があるからである。
【0041】
続いて、
図8、
図9および
図10に示すように、各リードフレーム53のそれぞれに半導体チップを実装する(ステップS40)。具体的には、各リードフレーム53の複数のパッケージ領域54のパッドリード55上にそれぞれLEDチップ82を実装する。この
図8では拡大されたリードフレーム53の平面が示されており、
図9および
図10ではそれぞれ
図8のA−A線およびB−B線におけるリードフレーム53の断面が示されている。
【0042】
LEDチップ82は、パッドリード55に実装された面とは反対面にアノード電極とカソード電極が形成されており、これらの電極間に所定の順バイアスが印加されることで、発光する半導体チップである。このLEDチップ82がパッドリード55上に実装(ダイボンディング)された後、カソード電極とパッドリード55間およびアノード電極とリード56間がボンディングワイヤ83(例えば金ワイヤ)で電気的に接続される。また、これらLEDチップ82およびボンディングワイヤ83、83は環状の開口部を有する凹部形状のリフレクタ66の内側に配置される。なお、LEDチップ82の実装には、公知のダイボンディング装置が用いられ、また、ボンディングワイヤ83のワイヤボンディングには、公知のワイヤボンディング装置が用いられる。
【0043】
続いて、
図11および
図12に示すように、各リードフレーム53の下面51に疎水性のプラズマ処理を施す(ステップS50)。この
図11では動作中の大気圧プラズマ処理装置61Bが示されている。また、
図12では貫通孔58a(貫通孔58)の周辺領域を除いたリードフレーム53の下面51を覆うマスク85が示されている。マスク85は、平面視矩形状のステンレス材やテープ材(粘着材)からなり、貫通孔58aの周辺領域に対応する箇所を切り欠いたものである。この貫通孔58aの周辺領域は、トランスファモールド装置を用いてレンズを形成する後の工程(ステップS60)の際に、金型ランナが配置される領域である。
【0044】
このようなマスク85でリードフレーム53の下面51を覆って、各リードフレーム53の貫通孔58aが形成された下面51の周辺領域に疎水性のプラズマ処理が施される。ここで疎水性とは、基板であるリードフレーム53に対して、その上に形成される例えば成形品ランナとして用いられる樹脂が結びつきにくい(樹脂との密着度を下げる)ことをいう。
【0045】
疎水性のプラズマ処理では大気圧プラズマ処理装置61Bを用いて、チャンバ62に例えばCF
4ガス84を供給し、高周波電源64でプラズマを発生させて、リードフレーム53の下面51にプラズマ(ラジカル)を照射する。この大気圧プラズマ処理装置61Bに設けられた移動機構65により、照射しながら移動することができる。
【0046】
このような疎水性のプラズマ処理を施さないことも考えられる。しかしながら、疎水性のプラズマ処理を施すことで、リードフレーム53と樹脂との密着度を下げることができるので、後のディゲート処理(ステップS61)の際、リードフレーム53から樹脂を容易に分離することができる。なお、ディゲート処理が容易に行えるのであれば、疎水性のプラズマ処理は省略することができる。
【0047】
この大気圧プラズマ処理装置61Bは、後のレンズ形成工程(ステップS60)で用いられるトランスファモールド装置の構成部として設けられても良い。例えば、モールド金型8にリードフレーム53を供給するフレーム供給部1に設けることで、疎水性のプラズマ処理を施してすぐに成形品ランナを形成することができるので、低密着度でリードフレーム53に成形品ランナを形成することができる。なお、トランスファモールド装置とは別に疎水性のプラズマ処理の装置を設けても良い。
【0048】
続いて、
図13に示すように、各リードフレーム53にLEDパッケージのレンズ86を形成する(ステップS60)。この
図13ではモールド金型8でクランプされたリードフレーム53の断面が示されている。レンズ86の形成では、前述したモールド金型8を備えたトランスファモールド装置を用いてトランスファモールドを行う。なお、以下では、レンズ86を形成するモールド金型8をモールド金型8Bとして説明する。
【0049】
モールド金型8Bは、互いに対向して配置される上型87と下型88とで構成され、それらが近接して型締めされ、また離間して型開きされる。上型87を固定型とし、下型88を可動型とした場合、上型87に対して下型88が近接してモールド金型8Bが型締めされ、上型87に対して下型88が離間してモールド金型8Bが型開きされる。なお、駆動については、上型を可動として、下型を固定としても良い。
【0050】
上型87は、成形品ランナ91が形成される金型ランナ92と、成形品カル93が形成される金型カル94とを有している。この金型ランナ92には、成形品ランナ91にV字状のノッチ90を形成するための突起が設けられている。また、下型88は、リードフレーム53を載置するための凹部95と、レンズ86(成形品キャビティ)が形成される金型キャビティ96と、成形品スルーゲート97が形成される金型スルーゲート98とが設けられている。また、下型88では、ポット77およびプランジャ78に対して外側にオーバーフローキャビティ99が設けられている。
【0051】
リードフレーム53にレンズ86を形成するには、まず、
図1を参照して説明したように、供給ユニットAから型開きしたモールド金型8B(モールド金型8)にリードフレーム53および樹脂タブレットtをローダ14により供給する。例えば、
図1のプレス部31に示すように、左右方向に2つのリードフレーム53が空間を隔てて同一平面内に下型88の搭載部95に配置(載置)される。具体的には、モールド金型8Bに2つのリードフレーム53を同一平面内で横たわらせる。また、2つのリードフレーム53間の5つのポット77内にそれぞれ樹脂タブレットtが装填される。なお、
図13では、説明を明解にするために、ポット77の右側に配置されるリードフレーム53を省略している。
【0052】
レンズ86を構成する樹脂(樹脂タブレットt)としては、例えばシリコーン樹脂が用いられる。硬化したシリコーン樹脂は、前の工程(ステップS20)で形成されたリフレクタ66を構成するエポキシ樹脂が硬化したものより柔らかく、透過性のものである。これにより、レンズ86は、封止材としてLEDチップ82を保護することができ、またLEDチップ82からの光を集光して外部に効率良く照射することができる。
【0053】
次いで、モールド金型8Bを型締めして2つのリードフレーム53をクランプする。リードフレーム53の複数のパッケージ領域54のそれぞれに複数の金型キャビティ96が位置している。これにより各パッケージ領域54に実装されているLEDチップ82が金型キャビティ96で内包される。
【0054】
ここで、金型カル94と金型ランナ92とは連通しており、金型ランナ92の先端部(ゲート部89)とこれと最も近い金型キャビティ96とはリードフレーム53の貫通孔58aを介して連通している。また、一連の金型キャビティ96間は金型スルーゲート98を介して連通している。また、金型ランナ92と最も遠い金型キャビティ96とオーバーフローキャビティ99とは金型スルーゲート98を介して連通している。また、オーバーフローキャビティ99とリードフレーム53の貫通孔58bとは連通している。このように連通することで、溶融した樹脂101の流路が形成される。
【0055】
次いで、ポット77に装填された樹脂タブレットtを溶融させるとともに、プランジャ78を上動させて、金型ランナ92を介して金型キャビティ96へ溶融した樹脂101を圧送する。具体的には、金型ランナ92と接する下面51から貫通孔58aにより金型キャビティ96と接する上面52に溶融した樹脂101がまわされ、上面52上を流れるように金型キャビティ96および金型スルーゲート98を通ってオーバーフローキャビティ99および貫通孔58bまで圧送される。
【0056】
次いで、溶融した樹脂101を硬化させるために所定時間だけ待機する。これにより、すべての金型キャビティ96、オーバーフローキャビティ99で樹脂101が硬化される。また、流路となったリードフレーム53の貫通孔58a、58bに存在する樹脂101も硬化される。また、ポット77内にも樹脂101が残る場合、ポット内樹脂102として硬化される。
【0057】
このようなトランスファモールドによって、金型キャビティ96で内包されるLEDチップ82を封止するレンズ86(成形品キャビティ)と、2つのリードフレーム53、53のそれぞれの下面に架かるようにして2つのリードフレーム53、53を接続する成形品ランナ91とを含むワークWを形成することができる。なお、本実施形態では、モールド金型8Bを用いたトランスファモールドによって、レンズ86、成形品ランナ92、成形品カル94などの成形品を含んだリードフレーム53をワークWとして説明している。
【0058】
次いで、
図1を参照して説明したように、型開きしたモールド金型8B(モールド金型8)からアンローダ15によりワークWを取り出す。このワークWは、
図14および
図15に示すように、2つのリードフレーム53、53と、成形品カル93を対称にそれぞれリードフレーム53、53側へ延在し、リードフレーム53、53をそれぞれの下面51で接続する成形品ランナ91とで構成されたものとして形成される。
図14ではリードフレーム53、53の下面51側の平面、
図15では上面52側の平面を示している。
【0059】
図13〜
図15に示すように、このワークWでは、2つのリードフレーム53において、成形カル93、成形品ランナ91、レンズ86および成形品スルーゲート97を形成する樹脂101と、貫通孔58a、58bおよびオーバーフローキャビティ99に存在する樹脂101とが一体成形されている。このため、樹脂101によって2つのリードフレーム53、53は、接続された状態となっている。
【0060】
次いで、
図1を参照して説明したように、収納ユニットBでは、ディゲート装置20を用いてワークWから、ワークWで接続された成形品ランナ91などの不要樹脂を分離するディゲート処理を行う(ステップS61)。成形品カル93および成形品ランナ91が取り除かれると、2つのリードフレーム53、53が分離され、
図16、
図17および
図18に示すように、複数のパッケージ領域54のそれぞれにレンズ86が形成されたリードフレーム53のワークWとなる。この
図16ではリードフレーム53の下面51側の平面、
図17では上面52側の平面、
図18ではリードフレーム53の短手側からみた側面を示している。
【0061】
成形品ランナ91などの不要樹脂の除去では、ツイスト機構ではなく、別の機構により、トランスファモールドによる成形品を含むワークWから、ワークWで接続された不要樹脂を分離するディゲート装置20(以下、ディゲート装置20Aという)を用いる。ここで、
図19を参照してディゲート装置20Aの構成について説明する。
【0062】
図19に示すように、ディゲート装置20Aは、ワークWが載置され、成形品ランナ91などの不要樹脂が対応する位置に空間111が設けられたパレット112と、ワークWを押さえつけ、成形品ランナ91などの不要樹脂が対応する位置に空間111が設けられたハンド113と、パレット112およびハンド113の空間111内を可動するプッシャ114、115とを備えている。このディゲート装置20Aでは、パレット112およびハンド113が、成形品ランナ91などの不要樹脂が接続されている箇所を除いてワークWを上下からクランプし、プッシャ114、115が、上下方向の一方から他方へ動いて、浮いた状態の不要樹脂を押し続けて、ワークWから不要樹脂を引き千切るものである。
【0063】
パレット112は、空間111を隔てて配置され、2つのリードフレーム53、53がそれぞれ載置される2つのフレーム受け105、105と、フレーム受け105、105下に設けられているランナ受け106、106を有している。フレーム受け105では、レンズ86が収められる凹部104が形成されている。凹部104は、リードフレーム53が載置された際に、成形品ランナ91が接続されている箇所を除いてリードフレーム53の外周部に当接し、またレンズ86が接しない深さとなっている。また、ランナ受け106は、成形品カル93および成形品ランナ91などの不要樹脂がリードフレーム53から分離された後、パレット112から不要樹脂が落下するのを防止するために形成されている。
【0064】
ハンド113は、空間111を隔てて配置され、2つのフレーム受け105、105に対向する2つの押さえ103、103を有している。押さえ103では、パッドリード55、リード56が接しないように凹部107が形成されている。凹部107は、リードフレーム53をパレット112とハンド113とでクランプした際に、成形品ランナ91が接続されている箇所を除いてリードフレーム53の外周部に当接するものとなっている。
【0065】
プッシャ114、115は、成形品ランナ91などの不要樹脂をクランプする構成となっている。本実施形態では、プッシャ(上)114を不要樹脂受けとして補助的に補助プッシャとして用いている。また、プッシャ(上)114には、不要樹脂を吸引する吸引孔116が設けられている。この吸引孔116には、図示しない真空ポンプが接続されている。また、プッシャ(下)115には、不要樹脂をクランプする際に、ポット内樹脂102が収められる凹部117が形成されている。凹部117を設けることで、小さなポット内樹脂102ではなく、それよりも大きい成形品カル93や成形品ランナ91を押すことができる。
【0066】
また、プッシャ(上)114では、
図26〜
図28に示すように、成形品ランナ91などの不要樹脂に対して当接する当接面が、水平面に対して所定角度θで傾斜している。
図26ではテーパ状、
図27では凹状、
図28では凸状の当接面が示されている。角度θは例えば5〜15°となるようにしている。このようにプッシャ(上)114の当接面を傾斜させることで、例えば成形品ランナ91と成形品カル93との段差がある場合であっても、全体として段差を吸収してプッシャ(上)114が不要樹脂と当接することができる。
【0067】
このようなディゲート装置20Aを用いた、前述したトランスファモールドによるレンズ86などの成形品を含むワークWから、ワークWで接続された成形品ランナ91などの不要樹脂を分離するディゲート方法について説明する。
【0068】
まず、
図19に示すように、パレット112にワークWを載置(搬入)する。ここでは、リードフレーム53に対して、成形品ランナ91などの不要樹脂を上側、レンズ86を下側となるように、パレット112にワークWが載置される。また、成形品ランナ91などの不要樹脂が空間111に位置するようにワークWが載置される。
【0069】
続いて、
図20に示すように、パレット112とハンド113でワークWを上下からクランプする。ここでは、成形品ランナ91などの不要樹脂が形成されている箇所を除いてクランプすることで、空間111で不要樹脂を浮かせた状態としている。
【0070】
続いて、
図21に示すように、プッシャ114、115で成形品ランナ91などの不要樹脂を上下からクランプした後、
図22に示すように、プッシャ114、115でクランプしたまま上下方向の下方から上方へ浮いた状態の成形品ランナ91などの不要樹脂を押し続けて、ワークWから成形品ランナ91などの不要樹脂を平行移動させて引き千切る。
【0071】
本実施形態では、リードフレーム53に対して上側に成形品ランナ91などの不要樹脂を配置しているので、下方から上方にプッシャ114、115を平行移動させている。これにより、シリコーン樹脂などのような柔らかい樹脂からなる不要樹脂であっても確実にディゲートすることができるので、LEDパッケージの製造歩留まりを向上することができる。また、成形品ランナ91などの不要樹脂を上下からプッシャ114、115でクランプして押し続けることで、より確実にディゲートすることができる。
【0072】
続いて、
図23に示すように、吸引孔116を介して成形品ランナ91などの不要樹脂を吸引しながらプッシャ(上)114を上昇させる。また、ハンド113も合わせて上昇させる。また、プッシャ(下)115は下降させる。続いて、
図24に示すように、成形品ランナ91などの不要樹脂を吸引しながら、所定の廃棄位置まで移動した後、吸引を停止させて、
図25に示すように、プッシャ(上)114の不要樹脂当接面からプッシャピン118をバネにより突出させて成形品ランナ91などの不要樹脂を廃棄する。その後、パレット113から2つのリードフレーム53が搬出される。
【0073】
このようにしてディゲートされると、
図16〜
図18に示したようなリードフレーム53が形成される。本実施形態では、成形品ランナ91にV字状のノッチ90(
図13参照)を形成しているので、ディゲート装置20Aでディゲートされることによって、V字状のノッチ90でリードフレーム53から成形品ランナ91などの不要樹脂が分離される。このため、
図18に示すように、リードフレーム53にはランナ残り91aが残存する。
【0074】
このランナ残り91aは、後の工程でリードフレームの長手辺を支えながら搬送する場合に、邪魔にならないサイズであれば良い。また、ランナ残り91aは後の切断を含むダイシング処理(ステップS70)で廃棄されてしまうので完成したLEDパッケージには問題とならない。このようにノッチ90を設けることで、ノッチ90で確実に成形品ランナ91を引き千切ることができる。なお、V字状のノッチ90に限らず、凹状のノッチであっても、局所的に応力がかかる形状であれば良い。
【0075】
続いて、リードフレーム53の複数のパッケージ領域54に沿ってダイシング処理を施す(ステップS70)と、
図29に示すように、個片化されたLEDパッケージが形成される。
図29(a)はLEDパッケージの正面図、
図29(b)は上面図、
図29(c)は底面図、
図29(d)は左側面図、
図29(e)は右側面図、
図29(f)は背面図である。
【0076】
前述したように、シリコーン樹脂などのような柔らかい樹脂からなる不要樹脂(成形品ランナ91、成形品カル93)であっても、それが接続されている箇所を除いてワークWを上下からクランプして、不要樹脂を浮かせた状態として、その不要樹脂を押し続けて、ワークWから前記不要樹脂を引き千切ることで、確実にディゲートすることができる。これによりLEDパッケージの製造歩留まりを向上することができる。
【0077】
(実施形態2)
前記実施形態1では、レンズ86の形成工程(ステップS60)において、金型ランナ92および金型カル94が上型87に設けられたモールド金型8Bを用いて形成された上ランナゲートのワークW(
図14、
図15参照)のディゲート方法について説明した。本実施形態では、レンズ86の形成工程(ステップS60)において、
図30および
図31に示すように、金型ランナおよび金型カルが下型に設けられたモールド金型を用いて形成された下ランナゲートのワークWのディゲート方法について説明する。
図30ではリードフレーム53、53の下面51側の平面、
図31では上面52側の平面を示している。
図30および
図31に示す下ランナゲートのワークWでは、リードフレーム53の下面51側にポット内樹脂102が存在する。
【0078】
まず、
図32に示すように、パレット112にワークWを載置(搬入)する。ここでは、リードフレーム53に対して、成形品ランナ91などの不要樹脂を下側、レンズ86を上側となるように、パレット112にワークWが載置される。また、成形品ランナ91などの不要樹脂が空間111に位置するようにワークWが載置される。
【0079】
続いて、
図33に示すように、パレット112とハンド113でワークWを上下からクランプする。ここでは、成形品ランナ91などの不要樹脂が形成されている箇所を除いてクランプすることで、空間111で不要樹脂を浮かせた状態としている。
【0080】
続いて、吸引孔116で吸引しながら、成形品ランナ91などの不要樹脂にプッシャ(上)114を当接させ、
図34に示すように、プッシャ(上)114を上下方向の上方から下方へ浮いた状態の成形品ランナ91などの不要樹脂を押し続けて、ワークWから成形品ランナ91などの不要樹脂を平行移動させて引き千切る。
【0081】
本実施形態では、リードフレーム53に対して下側に成形品ランナ91などの不要樹脂を配置しているので、上方から下方にプッシャ(上)114を移動させている。これにより、シリコーン樹脂などのような柔らかい樹脂からなる不要樹脂であっても確実にディゲートすることができるので、LEDパッケージの製造歩留まりを向上することができる。
【0082】
続いて、
図35に示すように、2つのフレーム受け105、105を、それぞれの回動軸121、121で回動させて逆ハの字状に回転配置して、プッシャ(上)114の上昇路を確保して、
図36に示すように、プッシャ(上)114を上昇させた後、
図37に示すように、フレーム受け105、105の回転を戻す。
【0083】
続いて、
図38に示すように、成形品ランナ91などの不要樹脂を吸引しながら、所定の廃棄位置まで移動した後、吸引を停止させて、
図39に示すように、プッシャ(上)114の不要樹脂当接面からプッシャピン118を突出させて成形品ランナ91などの不要樹脂を廃棄する。その後、パレット113から2つのリードフレーム53が搬出される。
【0084】
前記実施形態1と同様に、本実施形態で示したような下ランナゲートのワークWで、シリコーン樹脂などのような柔らかい樹脂からなる不要樹脂(成形品ランナ91、成形品カル93)がリードフレーム53に接続されていたとしても、その接続されている箇所を除いてワークWを上下からクランプして、不要樹脂を浮かせた状態として、その不要樹脂を押し続けて、ワークWから前記不要樹脂を引き千切ることで、確実にディゲートすることができる。これによりLEDパッケージの製造歩留まりを向上することができる。
【0085】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0086】
例えば、前記実施形態では、基板として、銅合金をプレス加工したリードフレームを用いた場合について説明したが、ガラスエポキシ基板などの配線基板や、半導体基板にも適用することができる。成形品ランナと接続されたこれらの基板に対して、本発明によれば成形品ランナを分離することができるからである。
【0087】
また、例えば、前記実施形態では、半導体パッケージとしてLEDパッケージについて説明した場合について説明したが、シリコーン樹脂のように柔らかく弾力性のある樹脂を用いた半導体パッケージにも適用することができる。本発明によればツイスト機構でディゲートできないような柔らかい樹脂を用いてトランスファモールドされたワークでもディゲートできるからである。