【文献】
Kenta Kokado, Yoshiki Chujo,Emission via Aggregation of Alternating Polymers with o-Carborane and p-Phenylene-Ethynylene Sequences,Macromolecules,米国,American Chemical Society,2009年 5月 2日,2009, 42,pp1418-1420
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
次世代ディスプレイとして脚光を浴びている有機EL素子(OLED;OrganicLight Emitting Device)について、電気、電子、材料、化学、物理、光学など、様々な分野において学問的研究および産業的研究が活発に進められている。かかる研究の成果により、PM(Passive Matrix)方式の有機EL素子(OLED)が携帯電話の外部画面に用いられるなど、一部の電子機器に導入されており、近年、AM(Active Matrix)方式の有機EL素子(OLED)を、PDA、携帯電話、ゲーム機などのモバイルディスプレイに適用するための研究と事業化が進められている。
【0003】
また、これについて、近年、蛍光物質だけでなく、リン光物質もまた有機EL素子(OLED)に用いられることができることが知られており、これに係る研究が進められている。リン光発光は、基底状態(ground states)から励起状態に電子が遷移した後、項間交差(intersystemcrossing)により一重項励起子が三重項励起子に無放射遷移した後、三重項励起子が基底状態に遷移しながら発光するメカニズム(mechanism)からなる。かかるリン光発光は、三重項励起子が遷移する際に、直接基底状態に遷移することができないため、電子スピンの変換が行われた後、基底状態に遷移する過程を経ることで、蛍光発光に比べて寿命(発光時間)が長くなる特性を有する。すなわち、蛍光発光の発光持続時間は数ナノ秒(several nano seconds)に過ぎないが、リン光発光の場合には、相対的に長い時間である数マイクロ秒(several micro seconds)に該当する。
【0004】
通常、リン光有機EL素子(PhOLED)は、ITO透明電極からなるアノード(anode)と、前記アノード上に形成された正孔輸送層(hole transport layer、HTL)と、前記正孔輸送層(HTL)上に形成された発光層(emitting layer、EML)と、前記発光層(EML)上に形成された電子輸送層(electrontransport layer、ETL)と、前記電子輸送層(ETL)上に形成されたカソード(cathode)と、を含む多層構造を有しており、これらは、蒸着などの方法により基板上に順次積層されてなる。また、前記発光層(EML)は、電荷輸送材料としてのホスト(host)と、リン光物質としてのドーパント(dopant)と、を含んでいる。
【0005】
上述のような構造のリン光有機EL素子(PhOLED)に電圧が加えられると、アノードから正孔が注入され、カソードから電子が注入される。また、注入された正孔と電子は、それぞれ、正孔輸送層(HTL)と電子輸送層(ETL)を経て発光層(EML)で再結合(recombination)が行われて発光励起子(excitons)を形成する。また、形成された発光励起子(excitons)は、基底状態に遷移しながら光を放出する。
【0006】
近年、リン光有機EL素子(PhOLED)の発光効率を高めるための試みが頻繁に行われている。結果、緑色の場合には29%、赤色の場合には15%の高い発光効率を有する技術が報告された。しかし、青色の場合には、緑色と赤色と比較して低い発光効率を示しており、色座標もまた良好でないという欠点を有している。これを解決するために、現在、多くの研究者が研究を行っている。主に、青色リン光有機EL素子(PhOLED)の層構造の改善と、電荷輸送材料(ホスト)の新たな物質に対する開発などに関する研究が行われている。
【0007】
層構造の改善については、韓国登録特許第10−0454500号[先行特許文献1]に、正孔輸送層(HTL)と発光層(EML)との間にバッファー層を形成した有機EL素子が開示されており、韓国登録特許第10−0777099号[先行特許文献2]に、正孔輸送層(HTL)と発光層(EML)との間に障壁緩和層を形成した有機EL素子が開示されている。
【0008】
しかし、前記先行文献1および2に開示されている有機EL素子は、層数が多すぎる多層構造を有しているため、各層を形成するための多数の工程が伴われて、製造工程が複雑であり、厚さが厚い。また、青色特性に適しないため、高い発光効率および長寿命特性を有することが困難である。
【0009】
また、電荷輸送材料(ホスト)については、韓国公開特許第10−2007−0091291号[先行特許文献3]に、トリアリールアミン基を含有する物質を正孔輸送材料として用いた有機EL素子が開示されている。また、韓国公開特許第10−2011−0041952号[先行特許文献4]に、特定の化学式で表されるカルバゾール化合物が開示されている。
【0010】
青色リン光有機EL素子(PhOLED)の発光効率を高めるために、電荷輸送材料は、発光層(EML)への電荷(正孔および電子)の注入を極大化する必要がある。また、このためには、広いエネルギーバンドギャップ(band gap)を有する必要がある。また、三重項エネルギー(ET;TripletEnergy)が高い必要がある。さらに、電荷輸送材料は、電荷移動度(mobility)などの電気的特性に優れ、ガラス転移温度(Tg)などの熱安定性にも優れる必要がある。
【0011】
前記先行特許文献3に開示されているように、電荷輸送材料、特に、正孔輸送層(HTL)を構成する正孔輸送材料は、TAPC(1,1−ビス(4−ビス(4−メチルフェニル)−アミノフェニル)−シクロヘキサン)を主に用いている。しかし、前記TAPCを含む従来の青色リン光用として用いられる電荷輸送材料は、ガラス転移温度(Tg)が低く、化合物の安定性が低くて、寿命が短いという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述のように、青色リン光有機EL素子(PhOLED)に用いられる電荷輸送材料は、高効率の青色リン光を具現するために、三重項エネルギー(ET)が高い必要があり、広いエネルギーバンドギャップを有する必要がある。また、電荷移動度などの物理的特性に優れ、ガラス転移温度(Tg)などの熱安定性に優れる必要がある。さらに、電気的にも安定して長寿命特性を有する必要がある。
【0022】
したがって、青色リン光用電荷輸送材料について鋭意研究を重ねた結果、カルボランが芳香族化合物で置換された場合に優れた発光効率を有することができるという物理的特性を有することを見出した。また、電荷移動度などの物理的特性とともにガラス転移温度(Tg)などの熱安定性、また、電気的安定性に優れ、長寿命特性を有することを見出した。特に、カルボランが、芳香族化合物としてトリフェニルアミン系またはカルバゾール系化合物で置換された場合、好ましくは、前記芳香族化合物がカルボランのパラ(p−)位に置換された場合に、高いガラス転移温度および優れた電荷移動度などを有することを見出した。さらに、前記芳香族化合物のフェニル基にアルキル基(alkyl group)が結合している場合、より優れた特性を有することを見出した。
【0024】
本発明で提供する化合物は、カルボラン(carborane)が芳香族化合物(aromatic compound)で置換された構造を有する。具体的に、B
10C
2H
2で表される立体構造のカルボランが芳香族化合物で置換された構造を有する。この際、前記芳香族化合物は、カルボランのHの代りに1個または2個が置換されていてもよい。
【0025】
前記芳香族化合物は、分子内に1個または2個以上のフェニル基を有するものであれば特に制限されない。カルボランのH位に芳香族化合物のフェニル基が置換結合する。
【0026】
好ましい具現例により、前記芳香族化合物は、1個以上のフェニル基と1個以上の窒素(N)原子を有する化合物から選択される。例えば、芳香族化合物は、フェニル基と窒素(N)を有する化合物であって、電荷移動度に優れたトリフェニルアミン系化合物またはカルバゾール系化合物などから選択されることが好ましい。カルボランが、芳香族化合物としてトリフェニルアミン系化合物またはカルバゾール系化合物で置換された場合、ガラス転移温度(Tg)などの熱的特性および電荷移動度などの電気的特性などにおいて好ましい。
【0027】
本発明において、前記トリフェニルアミン系化合物は、分子内に3個のフェニル基と1個以上の窒素(N)を有するものであれば特に制限されない。トリフェニルアミン系化合物は、例えば、分子内に3個のフェニル基と1個以上の窒素(N)を有するトリフェニルアミンを含み、前記トリフェニルアミンにいずれの他の化合物が結合していてもよい。例えば、トリフェニルアミンのフェニル基に、一つ以上のアルキル、アリール(一つ以上のフェニル基を有する化合物)およびヘテロ環化合物などが結合していてもよい。
【0028】
また、本発明において、前記カルバゾール系化合物は、分子内に一つ以上のカルバゾール構造を有するものであれば特に制限されない。カルバゾール系化合物は、具体的に、窒素(N)を含む5員環の両面に6員環のフェニル基(ベンゼン環)が2個結合したカルバゾールを有するものであれば特に制限されず、前記カルバゾールにいずれの他の化合物が結合していてもよい。例えば、カルバゾールに、一つ以上のアルキル、アリール(一つ以上のフェニル基を有する化合物)およびヘテロ環化合物などが結合していてもよい。
【0029】
好ましい具現例により、前記芳香族化合物は、フェニル基を有し、前記フェニル基には、一つ以上のアルキル基(C
nH
2n+1−;ここで、nは、特に制限されず、例えば、1〜20である。)が結合していることが好ましい。このように、芳香族化合物のフェニル基にアルキル基が結合している場合、電気化学的安定性などにおいて有利である。
【0030】
例えば、前記芳香族化合物がトリフェニルアミン系化合物から選択される場合、前記トリフェニルアミン系化合物の3個のフェニル基のうち少なくとも1個以上のフェニル基には一つ以上のアルキル基が結合していることが好ましい。また、前記芳香族化合物がカルバゾール系化合物から選択される場合、前記カルバゾール系化合物の2個のフェニル基のうち少なくとも1個以上のフェニル基には一つ以上のアルキル基が結合していることが好ましい。
【0031】
また、本発明で提供する化合物は、2個の芳香族化合物で置換された構造を有することが好ましい。すなわち、カルボランが、前記のような芳香族化合物2個で置換されていることが好ましい。より具体的な具現例により、本発明で提供する化合物は、下記化1または化2で表される化合物から選択されることが好ましい。
【0034】
化1および化2中、CBは、カルボランである。また、前記化1および化2中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに同じであるか異なっていてもよく、これらは、それぞれ、水素(H)またはアルキル基である。前記アルキル基は特に制限されない。すなわち、アルキル基の炭素数は特に制限されない。アルキル基は、例えば、C1〜C20の炭素数を有していてもよい。
【0035】
前記アルキル基は、具体例としては、メチル基(methyl group)、エチル基(ethyl group)、プロピル基(propyl group)およびブチル基(butyl group)などから選択されてもよく、これらに制限されない。また、前記プロピル基(propyl group)は、n−プロピル基(n−propyl group)およびi−プロピル基(iso−propyl group)を含み、前記ブチル基(butyl group)は、n−ブチル基(n−butyl group)、i−ブチル基(iso−butyl group)およびt−ブチル基(tertiary−butyl group)を含む。前記化1および化2におけるR
1、R
2、R
3およびR
4から選択される一つ以上は、アルキル基であることが好ましい。
【0036】
前記化1および化2に示すように、カルボラン(CB)が、2個の芳香族化合物で置換されることが好ましい。化1は、カルボラン(CB)が、芳香族化合物として2個のトリフェニルアミン系化合物で置換された構造を示すものであり、化2は、カルボラン(CB)が、芳香族化合物として2個のカルバゾール系化合物で置換された構造を示すものである。
【0037】
この際、カルボランが2個の芳香族化合物で置換された場合、前記2個の芳香族化合物は、カルボランのオルト(o−)、メタ(m−)またはパラ(p−)位に置換されていてもよい。芳香族化合物は、好ましくは、カルボランのm−位またはp−位に置換されていてもよく、より好ましくは、p−位に置換されていてもよい。芳香族化合物がp−位に置換された場合、高いガラス転移温度(Tg)および電荷移動度などを有する。
【0038】
上述のように、本発明に係る化合物は、カルボランが、芳香族化合物(好ましくは、トリフェニルアミン系化合物またはカルバゾール系化合物)で置換された構造を有する。下記化3および化4には、数個の本発明に係る化合物の具体例を構造式で示している。この際、下記化3および化4中、カルボラン(−B
10C
2−)は分子模型で示している。また、下記化3および化4中、R
5はアルキル基である。
【0039】
本発明に係る化合物は、具体例として、下記化3および化4で示された群から選択されてもよい。好ましくは、芳香族化合物がトリフェニルアミン系化合物またはカルバゾール系化合物から選択される構造を示すものであって、下記化4で示された群から選択されてもよく、これらの中でもアルキル基(R
5)が結合したものから選択されることが好ましい。この際、化4にはフェニル基に1個のアルキル基(R
5)が結合したものを示しているが、フェニル基には1個〜4個のアルキル基(R
5)が結合していてもよい。また、本発明に係る化合物は、下記化3および化4で示された群のうち、好ましくは、芳香族化合物がカルボランのp−位に結合した化合物から選択されてもよい。
【0042】
一方、本発明に係る化合物は、様々な方法で合成(製造)することができる。好ましい具現例により、カルボランがトリフェニルアミン系化合物で置換される場合、これは、例えば、Br(bromine)で置換されたトリフェニルアミンを合成した後、これに触媒と溶媒などの存在下でカルボラン(o−、m−、またはp−)を置換反応させて合成(化1におけるR
1、R
2、R
3およびR
4がHであるもの)してもよい。他の例として、アルキルトリフェニルアミンを合成した後、これに触媒と溶媒などの存在下でカルボラン(o−、m−、またはp−)を置換反応させて合成(化1中、R
1、R
2、R
3およびR
4がアルキル基であるもの)してもよい。なお、触媒と溶媒などの存在下で、カルバゾール(またはアルキル基が結合したカルバゾール)にカルボラン(o−、m−、またはp−)を置換反応させて合成(化2中、R
1、R
2、R
3およびR
4がHまたはアルキル基であるもの)してもよい。
【0043】
上述のように、本発明に係る化合物は、カルボランが、芳香族化合物(好ましくは、トリフェニルアミン系化合物またはカルバゾール化合物)で置換された特定構造の化合物であって、これは、高い三重項エネルギー(ET)と広いエネルギーバンドギャップを有する。また、ガラス転移温度(Tg)などの熱安定性と電荷移動度などの電気的特性が、従来、通常用いられるTAPCやカルバゾール化合物と比較して優れている。
【0044】
これにより、本発明に係る化合物は、熱安定性と電気的特性(電荷輸送特性など)などが要求される製品、例えば、有機EL素子(OLED)、より具体的な例として、青色リン光有機EL素子(PhOLED)の電荷輸送体に適用されて、優れた発光効率を具現する。また、本発明に係る化合物は、電気化学的安定性が高くて、青色リン光有機EL素子(PhOLED)などの素子において長寿命特性を有する。
【0045】
一方、本発明に係る電荷輸送材料は、前記本発明に係る化合物を含有する。本発明に係る電荷輸送材料は、例えば、有機EL素子(OLED)、具体例として、青色リン光有機EL素子(PhOLED)の電荷(正孔および電子)輸送体として有用に用いられ、好ましくは、正孔輸送体として非常に有用に用いられる。
【0046】
また、本発明に係る青色リン光有機EL素子(PhOLED)は、前記本発明に係る化合物を含有する。具体的に、本発明に係る青色リン光有機EL素子(PhOLED)は、通常、多数の有機薄膜層を有することができ、この際、前記多数の有機薄膜層のうち少なくとも一つ以上の層は、前記本発明に係る化合物を電荷輸送材料として含む。
【0047】
具体的な具現例により、本発明に係る青色リン光有機EL素子(PhOLED)は、通常、アノード(anode)と、前記アノード上に形成された正孔輸送層(HTL)と、前記正孔輸送層(HTL)上に形成された発光層(EML)と、前記発光層(EML)上に形成された電子輸送層(ETL)と、前記電子輸送層(ETL)上に形成されたカソード(cathode)と、を含む多層構造を有することができる。
【0048】
また、本発明に係る青色リン光有機EL素子(PhOLED)は、場合に応じて、前記アノードと正孔輸送層(HTL)との間に形成された正孔注入層(hole injection layer、HIT)と、前記電子輸送層(ETL)とカソードとの間に形成された電子注入層(electron injection layer、EIL)から選択される一つ以上をさらに含んでもよい。なお、本発明に係る青色リン光有機EL素子(PhOLED)は、前記各層を支持するための基板(substrate)を含んでもよい。
【0049】
この際、前記正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)および電子輸送層(ETL)から選択される一つ以上は、前記本発明に係る化合物を含有することが好ましい。好ましくは、少なくとも正孔輸送層(HTL)は、前記本発明に係る化合物を含有することが好ましい。
【0050】
前記基板は、支持力を有するものであれば特に制限されず、例えば、ガラス基板や高分子基板などから選択されてもよい。また、基板は、フレキシブル(flexible)性を鑑みて高分子基板から選択されてもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびポリカーボネート(PC)などから選択される一つ以上の樹脂を含むフィルムを用いてもよい。
【0051】
前記アノードは、特に制限されず、これは、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化タングステン(WO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)および酸化亜鉛アルミニウム(ZAO)などの酸化金属;窒化チタンなどの窒化金属;金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉛、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブなどの金属;かかる金属の合金またはヨウ化銅の合金;また、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリ(3−メチルチオフェン)、およびポリフェニレンスルファイドなどの伝導性重合体;などから選択される材質からなってもよい。アノードは、具体例として、ITO、IZOおよびWOなどから選択される透明電極から選択されてもよい。
【0052】
前記正孔輸送層(HTL)は、上述のように、前記本発明に係る化合物を含有することが好ましい。また、正孔輸送層(HTL)は、前記本発明に係る化合物以外に、従来、通常用いられている正孔輸送物質をさらに含んでもよい。
【0053】
前記発光層(EML)は、単層または複数層からなってもよく、これは、電荷輸送のためのホスト(host)と、リン光特性のためのドーパント(dopant)と、を含む。この際、前記ホストは、通常のものを用いるか、前記本発明に係る化合物を含んでもよい。
【0054】
前記発光層(EML)のホストは、通常のものとして、例えば、4,4’−N,N−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、1,3−N,N−ジカルバゾールベンゼン(mCP)およびこれらの誘導体を用いてもよい。また、前記ホスト材料は、(4,4’−ビス(2,2−ジフェニル−エテン−1−イル)ジフェニル(DPVBi)、ビス(スチリル)アミン(DSA)系、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシロキシ)アルミニウム(III)(SAlq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、3−(ビフェニル−4−イル)−5−(4−ジメチルアミノ)4−(4−エチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(p−EtTAZ)、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、2,2’,7,7’−テトラキス(ビフェニル−4−イル)−9,9’−スピロフルオレン(Spiro−DPVBI)、トリス(パラ−tert−フェニル−4−イル)アミン(p−TTA)、5,5−ビス(ジメシチルボリル)−2,2−ビチオフェン(BMB−2T)およびペリレン(perylene)などから選択されてもよい。また、前記挙げた材料に、前記本発明に係る化合物を混合して構成してもよい。
【0055】
また、前記発光層(EML)のドーパントとしては、通常用いられるFIr6およびFIrpicなどから選択される一つ以上を用いてもよく、その他、DCM1(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン)、ジシアノメチレン−2−メチル−6−(ジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン)、ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン)、ジシアノメチレン)−2−tert−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン)、ジシアノメチレン)−2−イソプロピル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン)およびナイルレッド(Nile red)およびルブレン(Rubrene)などから選択されてもよい。
【0056】
前記電子輸送層(ETL)は、通常のものを用いるか、前記本発明に係る化合物を含有してもよい。電子輸送層(ETL)は、通常のものとして、例えば、アリール置換オキサジアゾール、アリール置換トリアゾール、アリール置換フェナントロリン、ベンゾオキサゾールおよびベンゾチアゾール化合物などから選択されてもよく、具体例として、4−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(BAlq)、1,3−ビス(N,N−t−ブチル−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(OXD−7)、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、およびトリス(8−キノリナト)アルミニウム(III)(Alq3)などが挙げられる。また、前記挙げた物質に、前記本発明に係る化合物を混合して構成してもよい。
【0057】
なお、前記正孔注入層(HIL)および電子注入層(EIL)の場合にも通常のものを用いてもよい。これらは、例えば、通常のものとして用いられる4,4’−ビス{N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ}ビフェニル(α−NPD)、PEDOT/PSS、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、および4,4’,4”−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(2−TNATA)などの物質から選択されてもよい。
【0058】
前記カソードは、特に制限されず、これは、通常のものを用いてもよい。カソードは、金属から選択されてもよい。カソードは、例えば、Al、Ca、MgおよびAgなどから選択される一つまたは2以上の合金を含んでもよく、具体例として、AlまたはAlを含む合金にLiFがコーティングされたものを用いてもよい。
【0059】
また、本発明において青色リン光有機EL素子(PhOLED)を構成する前記各層の厚さは特に制限されない。なお、前記各層は、通常の方法、例えば、各層に応じて、スパッタリングなどの真空蒸着法、液状コーティング後の乾燥、またはコーティング後の焼成などにより形成されてもよく、その形成方法は特に制限されない。
【0060】
以下、本発明の実施例および比較例を示す。下記の実施例は本発明の理解を容易にするために提供されるものであって、これによって本発明の技術的範囲が限定されない。
【0061】
[実施例1]
以下の過程によりカルボランのo−位がカルバゾール化合物で置換された化合物を合成(製造)した。
【0062】
1.カルバゾールに炭酸カリウム(potassium carbonate)、パラジウムリン酸三カリウム(palladium tripotasium phospate)を滴加して攪拌した後、カラムクロマトグラフィーを用いてジカルバゾイルエチレン(dicabazoylethylene)を分離した。
【0063】
2.前記のジカルバゾイルエチレン(dicabazoylethylene)に溶媒のベンゼンの存在下でo−カルボラン(o−carborane)を加えて攪拌した。攪拌した溶液を無水硫化マグネシウムを用いて水分を除去し、溶媒を除去した。次に、カラムクロマトグラフィーを用いて最終生成物を分離取得した。
【0064】
前記のように合成した本実施例1による最終生成物は、o−位がカルバゾール化合物で置換された化合物であって、下記の化5に示す通りであり、これは、
1H−NMR分析により確認した。
【0066】
[実施例2]
下記のような過程によりカルボランのm−位がカルバゾール化合物で置換された化合物を合成(製造)した。
【0067】
1.カルバゾールにK
2CO
3(potassiumcarbonate)、パラジウムリン酸三カリウム(palladium tripotassiumphosphate)を滴加して攪拌した後、カラムクロマトグラフィーを用いてジカルバゾイルエチレン(dicarbazoylethylene)を分離した。
【0068】
2.前記のジカルバゾイルエチレン(dicarbazoyl ethylene)を溶媒のジメチルエーテル(DME)に溶解し、0℃でn−プチルリチウム(n−BuLi)を滴加した。次に、溶媒のピリジン(Pyridine)と塩化銅(copper chloride)をさらに加えて反応させた。次に、反応した溶液を無水硫化マグネシウムを用いて水分を除去し、溶媒を除去した。次に、カラムクロマトグラフィーを用いて最終生成物を分離取得した。
【0069】
前記のように合成した本実施例2による最終生成物は、m−位がカルバゾール化合物で置換された化合物であって、下記の化6に示す通りであり、これは、
1H−NMR分析により確認した。
【0071】
[実施例3]
前記実施例2と比較して、カルボランとしてm−カルボランの代わりにp−カルボラン(p−carborane)を用いたこと以外は同様にして合成(製造)した。
【0072】
前記のように合成した本実施例3による最終生成物は、p−位がカルバゾール化合物で置換された化合物であって、下記の化7に示す通りであり、これは、
1H−NMR分析により確認した。
【0074】
[実施例4]
以下の過程によりカルボランのp−位がトリフェニルアミンで置換された化合物を合成(製造)した。
【0075】
1.ジフェニルアミン(diphenylamine)と1,4−ジブロモベンゼン(1,4−dibromobenzene)をPd(OAc)
2(palladium acetylacetate)、ナトリウムtert−ブトキシド(Sodiumtertbutoxide)、DPPFおよびトルエンが存在する溶液に滴加して12時間攪拌した。次に、無水硫化マグネシウムを用いて水分を除去した後、カラムクロマトグラフィーを用いてBr(bromine)で置換されたトリフェニルアミン(triphenyl amine)を分離した。
【0076】
2.前記のBrで置換されたトリフェニルアミン(triphenyl amine)を溶媒のテトラヒドロフラン(THF)で溶解した後、この溶液を−78℃に維持した。次に、温度を下げた後、n−プチルリチウム(n−BuLi)を加えて30分間還流溶液の温度を維持して、ホウ酸トリメチル(trimethoxyborate)を加えて反応させた。次に、無水硫化マグネシウムを用いて水分を除去した後、溶媒を除去した。次に、カラムクロマトグラフィーを用いて生成されたトリフェニルアミンボロン酸(triphenyl amine boronic acid)を分離した。
【0077】
3.前記のトリフェニルアミン−4−ボロン酸(triphenyl amine−4−boronic acid)にp−カルボラン(p−carborane)、Pd(PPh
3)
4(Tetrakis(triphenylphosphine)palladium)およびK
2CO
3(potassium carbonate)を加え、溶媒のジメチルエーテル(DME)と蒸留水を滴加して140℃で12時間攪拌した。攪拌した溶液を無水硫化マグネシウムを用いて水分を除去し、溶媒を除去した。次に、カラムクロマトグラフィーを用いて最終生成物を分離取得した。
【0078】
前記のように合成した本実施例4による最終生成物は、p−位がトリフェニルアミンで置換された化合物であって、下記の化8に示す通りであり、これは、
1H−NMR分析により確認した。
【0080】
[実施例5]
以下の過程により、p−位がトリフェニルアミンで置換され、前記トリフェニルアミンにはメチル基(Me)が結合した化合物を合成(製造)した。
【0081】
1.4−ブロモトルエン(4−bromotoluene)とベンジルアミン(benzylamine)をキサントホス(Xantphos)、パラジウム(Pd)、ナトリウムtert−ブトキシド(Sodium tertbutoxide)、およびトルエン(toluene)が存在する溶液に滴加して、14時間還流温度で攪拌した。次に、無水硫化マグネシウムを用いて水分を除去した後、カラムクロマトグラフィーを用いてメチル基(Me)で置換されたトリフェニルアミン(triphenyl amine)を分離した。
【0082】
2.前記のメチル基(Me)で置換されたトリフェニルアミン(4,4’−dimethyltriphenylamine)にトリクロロメタン(trichloromethane)を滴加して溶解し、N−ブロモサクシニミド(N−bromosuccimide)を混合して140℃の高い温度で攪拌する。次に、無水硫化マグネシウムを用いて水分を除去し、溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィーを用いてp−メチルトリフェニルアミン(p−Methyl triphenyl amine)を分離した。
【0083】
3.前記のp−メチルトリフェニルアミン(p−Methyl triphenyl amine)に溶媒のジメチルエーテル(DME)とピリジン(Pyridine)を3:1の体積比で滴加した後、0℃に維持し、n−プチルリチウム(n−BuLi)を滴加した。次に、得られた溶液を還流温度で40分間維持した後、p−カルボランを滴加した。次に、塩化銅(copper Chloride)を加えて140℃で攪拌した。攪拌した溶液を無水硫化マグネシウムを用いて水分を除去し、カラムクロマトグラフィーを用いて最終生成物を分離取得した。
【0084】
前記のように合成した本実施例5による最終生成物は、p−位がトリフェニルアミンで置換され、前記トリフェニルアミンのフェニル基にはメチル基(Me)が結合した化合物であって、下記の化9に示す通りであり、これは、
1H−NMR分析により確認した。下記の化9中、Meはメチル基(CH
3−)である。
【0086】
[比較例1]
従来の正孔輸送層(HTL)を構成する正孔輸送材料として頻繁に用いられる通常のTAPCを本比較例1による試料として用いた。これは、下記の化10に示す構造を有する。下記の化10中、Meはメチル基(CH
3−)である。
【0088】
[比較例2]
下記の化11に示すカルバゾール化合物を本比較例2による試料として用いた。
【0090】
前記各実施例(1〜5)および比較例(1および2)による化合物に対し、三重項エネルギー(ET、λ
ex=355nm)、エネルギーバンドギャップ、正孔移動度(Hole mobility)および熱的特性などの物性を評価し、その結果を下記[表1]に示す。熱的特性としては、ガラス移転温度(Tg)と溶融温度(Tm)を評価した。この際、三重項エネルギー(ET)とエネルギーバンドギャップは、レーザ測定器(1 ns pulsed nitrogen laser,Photon Technology International社製、モデル名:GL−3300)を用いて評価し、正孔移動度は、前記レーザ測定器(モデル名:GL−3300)とDigital Oscilloscope(LeCroy社製、モデル名:LC 572A)を用いて分析した。次に、熱的特性(Tg、Tm)は、Perkin−Elmer社製のPysisDiamond DSC測定器を用いて評価した。
【0092】
前記[表1]を参照すると、本発明によりカルボランが芳香族化合物(トリフェニルアミン系またはカルバゾール系化合物)で置換された実施例(1〜5)による化合物は、従来の比較例(1および2)と比較して、同様なレベルの三重項エネルギー(ET)を有するか、それ以上の3.0eV以上の高い三重項エネルギー(ET)を有することが分かる。また、比較例(1および2)より広いエネルギーバンドギャップを有することが分かる。また、正孔移動度と熱的特性も非常に高いことが分かる。
【0093】
なお、前記実施例1〜3の結果を参照すると、カルバゾールの置換位置に応じて特性が異なることが分かる。すなわち、置換基であるカルバゾールがカルボランのo−位ではなくm−位に結合した場合において良好な特性を示すことが分かる。また、p−位に置換された場合に最も良好な特性を示した。特に、ガラス移転温度(Tg)において、o−位やm−位に置換された場合よりp−位に置換された場合において、10℃以上の高い熱的特性を有することが分かる。
【0094】
また、実施例4および実施例5を比較すると、トリフェニルアミンにメチル基(Me)が結合した場合、すなわち、実施例5による化合物の場合において、正孔移動度およびガラス移転温度(Tg)が、メチル基(Me)が存在しない実施例4の場合より良好な結果を示すことが分かる。
【0095】
一方、前記実施例4および実施例5による化合物に対し、電気化学的安定度を評価した。電気化学的安定度は、当業界において通常用いられているCV(Cyclic voltammetry)曲線により評価し、その結果を添付の
図1および
図2に示す。
図1は実施例4による化合物のCV曲線であり、
図2は実施例5による化合物のCV曲線である。
【0096】
図1および
図2に示すように、CVにより、カルボランがトリフェニルアミンで置換され、トリフェニルアミンのフェニル基にメチル基(Me)が結合した化合物(実施例5)が、メチル基(Me)が存在しない化合物(実施例4)に比べて電気化学的に安定していることが分かる。これは、化合物の電気化学的安定性による長寿命特性を有することができることを意味する。
【0097】
<素子の製造>
[素子の実施試料1〜3]
ガラス基板上にアノードとしてITO薄膜を蒸着した後、前記アノード(ITO)上に通常と同様な蒸着方法で正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)およびカソードを形成した。正孔注入層(HIL)としては、通常用いられるNDPを使用し、発光層(EML)としては、通常用いられるホスト(CBP)とトーパント(FIr6)を9:1のモル比で使用した。また、電子輸送層(ETL)とカソードは、通常用いられるSiTAZとLiF/Alをそれぞれ使用して、ガラス/アノード/HIL(NPD)/HTL/EML(CBP+FIr6)/ETL(SiTAZ)/カソードの積層構造を有するPhOLEDを製造した。
【0098】
この際、前記正孔輸送層(HTL)は、各実施試料に応じて異なるものを用いた。具体的に、実施試料1は、前記実施例1による化合物を用いて、実施試料2は、前記実施例2による化合物を用いた。また、実施試料3の場合には、前記実施例3による化合物を用いた。
【0099】
[素子の比較試料1および2]
前記と同様にしてPhOLEDを製造するが、異なる正孔輸送層(HTL)を用いた。具体的に、比較試料1の場合には、前記比較例1による化合物(TAPC)を用いて、比較試料2の場合には、前記比較例2による化合物(カルバゾール)を用いた。
【0100】
前記のように製造した各実施試料(1〜3)および比較試料(1および2)によるPhOLEDに対し、電流密度を持たせる最小駆動電圧(V
ON)と、12Vでの電流密度を評価した。また、発光輝度(cd/A)、発光効率(lm/W)および色座標(CIE)などの素子特性を評価した。
【0101】
本発明の実施試料によるPhOLEDは、従来の比較試料と比較して、高い電流密度を有することは言うまでもなく、発光輝度(Cd/A)と発光効率(1m/W)などの素子特性に優れることが分かる。また、芳香族化合物(カルバゾール系)がカルボランのp−位に置換された化合物を用いた実施試料3の場合、発光特性に非常に優れており、4.5Vの低い電圧で駆動されることが分かる。
【0102】
一方、PhOLEDを構成するにあたり、前記と同様にして実施するが、正孔輸送層(HTL)としてトリフェニルアミンにメチル基(Me)が結合した前記実施例5による化合物を用いた素子と、正孔輸送層(HTL)として通常のTAPCを用いた前記比較試料1による素子に対して寿命特性を評価した。
【0103】
寿命特性は、光学的特性および電気的特性の測定が完了したPhOLEDに対し、DC−powersupply(ED−200E)を用いてDC−powerを供給して輝度計で寿命(lifetime)を測定した。この際、lifetimeの測定は、初期輝度の半分になる時点を半減期とし、この半減期までの時間をlifetimeとした。評価結果、前記実施例5による化合物を用いた素子の場合には871時間、前記比較試料1による素子の場合には428時間の半減期となり、本発明に係る素子試料が2倍以上の長寿命特性を有することが分かる。
【0104】
以上の実施例を参照すると、本発明に係る化合物(電荷輸送材料)は、高い三重項エネルギー(ET)と広いエネルギーバンドギャップを有することが分かる。また、正孔移動度などの電気的特性に優れ、特に、ガラス移転温度(Tg)などの熱安定性に非常に優れることが分かる。また、熱安定性とともに電気化学的にも安定して、長寿命特性を有することが分かる。なお、これを適用したPhOLEDは、優れた発光特性を有することが分かる。