(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態における熱供給システムS1を示す概略図である。
【0010】
図1に示すように、熱供給システムS1は、ヒートポンプ(ヒートポンプ回路)20を有する第1加熱装置(第1装置)12と、ヒートポンプ以外の加熱装置を有する第2加熱装置(第2装置)14と、供給装置16と、制御装置18とを備える。制御装置18は、システム全体を統括的に制御する。熱供給システムS1の構成は設計要求に応じて様々に変更可能である。
【0011】
第1加熱装置12において、ヒートポンプ20は、蒸発、圧縮、凝縮、及び膨張の各工程からなるサイクルにより、低温の物体から熱を汲み上げ、高温の物体に熱を与える装置である。ヒートポンプは一般に、エネルギー効率が比較的高く、結果として、二酸化炭素等の排出量が比較的少ないという利点を有する。
【0012】
本実施形態において、ヒートポンプ20は、吸熱部21、圧縮部22、放熱部23、及び膨張部24を有し、これらは導管を介して接続されている。ヒートポンプ20において、導管内を作動流体が流れる。本実施形態において、ヒートポンプ20は、作動流体の熱を用いて供給装置16を流れる被加熱流体(第1流体、空気など)を加熱することができる。
【0013】
吸熱部21では、主経路25を流れる作動流体がサイクル外の熱源(低温熱源)の熱を吸収する。本実施形態において、ヒートポンプ20の吸熱部21は、外部装置90の放熱管91に熱的に接続され、その内部で作動流体が蒸発する蒸発器を含む。放熱管91を流れる媒体(冷媒など)の熱がヒートポンプ20の吸熱部21に吸収される。熱源として、外部装置90の排熱を利用することも可能である。吸熱部21が大気など他の熱源の熱を吸収する構成とすることもできる。後述するように、本実施形態において、吸熱部21は、第2加熱装置14から排出された流体(ドレン)からの熱を吸収可能であり、さらに、外部装置95から排出された流体(排ガス)からの熱を吸収可能である。
【0014】
圧縮部22は、圧縮機等によって作動流体を圧縮する。この際、通常、作動流体の温度が上がる。圧縮部22は、単段圧縮構造、又は作動流体を複数段に圧縮する多段圧縮構造を有することができる。圧縮の段数は、熱供給システムS1の仕様に応じて設定され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。圧縮部22は、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機のうち、作動流体の圧縮に適するものが適用される。圧縮機には動力が供給される。多段圧縮構造を有する圧縮部22において、多軸圧縮構造又は同軸圧縮構造が適用可能である。
【0015】
放熱部23は、圧縮部22で圧縮された作動流体が流れる導管を有し、主経路25内を流れる作動流体の熱をサイクル外の熱源(被加熱流体)に与える。放熱部の数は、システムS1の仕様に応じて設定され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。
【0016】
本実施形態において、放熱部23は、第1放熱部23Aと、第2放熱部23Bとを有する。第1放熱部23Aは、圧縮部22からの作動流体が流れ、その作動流体からの熱が供給装置16を流れる被加熱流体に伝わる導管を有する。第2放熱部23Bは、第1放熱部23Aからの作動流体が流れ、その作動流体からの熱が第2加熱装置14を流れる流体に伝わる導管を有する。本実施形態において、ヒートポンプ20は、第1放熱部23A及び/又は第2放熱部23Bを流れる作動流体の流量を制御する構成を有することができる。この構成において、例えば、ヒートポンプ20は、バイパス経路、流量センサ、流路制御弁などを有することができる。
【0017】
膨張部24は、減圧弁またはタービン等によって作動流体を膨張させる。この際、通常、作動流体の温度が下がる。タービンを使用した場合には膨張部24から動力を取り出すことができ、その動力を例えば圧縮部22に供給してもよい。ヒートポンプ20に使用される作動流体として、フロン系媒体(HFC 245fa、R134aなど)、アンモニア、水、二酸化炭素、空気などの公知の様々な熱媒体が、システムS1の仕様及び熱バランスなどに応じて用いられる。ヒートポンプ20の放熱部23を流れる作動流体の少なくとも一部が超臨界状態にできる。
【0018】
本実施形態において、第2加熱装置14は、ヒートポンプ以外の加熱装置として、ボイラ40を有する。本実施形態において、ボイラ40は、油やガスなどの燃料を燃焼させてその燃焼熱によって熱媒体(水など)を加熱する。ボイラ40としては公知の様々な形態が適用可能である。追加的又は代替的に、第2加熱装置14は、電気ヒータなどの他の加熱装置を有することができる。
【0019】
本実施形態において、第2加熱装置14は、ヒートポンプ20を流れる作動流体の熱が熱媒体(水など)に伝わる予熱部(給水加熱部)142と、予熱部142からの熱媒体を加熱する加熱部144とを有する。第2加熱装置14は、さらに、熱媒体としての水が流れる導管、ポンプなどの流体駆動機器、流体制御用の弁などを有することができる。
【0020】
予熱部142は、第1加熱装置12におけるヒートポンプ20の第2放熱部23Bに熱的に接続されかつ水が流れる導管を含む。予熱部142と第2放熱部23Bを含んで熱交換器31が構成される。熱交換器31は、低温の流体(第2加熱装置14(ボイラ40)に供給される水)と高温の流体(ヒートポンプ20内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有することができる。あるいは、熱交換器31は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有してもよい。本実施形態において、熱交換器31の熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。第2放熱部23Bの導管と予熱部142の導管とは互いに接触あるいは隣接して配置される。例えば、第2放熱部23Bの導管を、予熱部142の導管の外周面や内部に配設することができる。予熱部142において、ヒートポンプ20の放熱部23からの伝達熱によって、導管内の水が予熱されて温度上昇する(給水加熱)。
【0021】
加熱部144は、予熱部142からの予熱された水をさらに加熱する。本実施形態において、加熱部144はボイラ40の燃焼室42に熱的に接続される。他の実施形態において、加熱部144は電気ヒータに熱的に接続されることができる。加熱部144において、ボイラ40の燃焼室42からの伝達熱によって、導管内の水が蒸発して蒸気となる。
【0022】
供給装置16は、第1加熱装置12及び第2加熱装置14を用いて加熱された流体(被加熱流体)を外部装置95に供給する。供給装置16は、第1加熱部62と、第2加熱部64とを有する。供給装置16は、さらに、被加熱流体が流れる導管、ポンプなどの流体駆動機器、流体制御用の弁などを有することができる。
【0023】
本実施形態において、被加熱流体は空気であり、外部装置95には高温の空気(乾燥用空気)が供給される。他の実施形態において、被加熱流体は乾燥用以外の空気、あるいは空気以外の流体にできる。空気以外の被加熱流体としては、例えば、圧縮水、薬品、粘性液などが挙げられる。
【0024】
第1加熱部62は、第1加熱装置12におけるヒートポンプ20の第1放熱部23Aに熱的に接続されかつ空気が流れる導管を含む。第1加熱部62と第1放熱部23Aを含んで熱交換器32が構成される。熱交換器32は、低温の流体(供給装置16内の空気)と高温の流体(ヒートポンプ20内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有することができる。あるいは、熱交換器32は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有してもよい。本実施形態において、熱交換器32の熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。第1放熱部23Aの導管と第1加熱部62の導管とは互いに接触あるいは隣接して配置される。例えば、第1放熱部23Aの導管を、第1加熱部62の導管の外周面や内部に配設することができる。第1加熱部62において、ヒートポンプ20の第1放熱部23Aからの伝達熱によって、導管内の空気が温度上昇する。
【0025】
第2加熱部64は、第2加熱装置14の放熱部146に熱的に接続されかつ第1加熱部62からの空気が流れる導管を含む。第2加熱部64と放熱部146を含んで熱交換器33が構成される。熱交換器33は、低温の流体(供給装置16内の空気)と高温の流体(放熱部146内の蒸気)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有することができる。あるいは、熱交換器33は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有してもよい。本実施形態において、熱交換器33の熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。放熱部146の導管と第2加熱部64の導管とは互いに接触あるいは隣接して配置される。例えば、放熱部146の導管を、第2加熱部64の導管の外周面や内部に配設することができる。第2加熱部64において、第2加熱装置14の放熱部146からの伝達熱によって、導管内の空気がさらに温度上昇する。
【0026】
本実施形態において、供給装置16からの被加熱流体(乾燥用空気)の出力温度は、熱需要に応じて変化できる。出力温度は、例えば、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200℃以上にできる。
【0027】
本実施形態において、システムS1は、熱出力後の第2加熱装置14(ボイラ40)からの流体(ドレン)を再利用するための第1戻り経路70を有する。放熱部146からの放熱した後の流体が第1戻り経路70を流れる。第1戻り経路70からの流体(水)は、放熱管91を流れ、第1加熱装置12(ヒートポンプ20の吸熱部21)の作動流体と熱交換できる。第1戻り経路70からの流体の熱がヒートポンプ20の吸熱部21に吸収される。または、戻り経路70からの流体(水)は、第2加熱装置14(ボイラ40)に再び投入される。第2加熱装置14からの余剰流体は、適宜に外部に排出することができる。流体の再利用により、運転コストの削減が図られる。
【0028】
また、本実施形態において、システムS1は、熱出力後の外部装置95からの被加熱流体(排ガス)を再利用するための第2戻り経路72を有する。外部装置95からの放熱した後の流体が第2戻り経路72を流れる。第2戻り経路72からの流体(空気)は、放熱管74を流れる。第2戻り経路72の放熱管74は、低温熱源側の外部装置90の放熱管91に流体的に接続された導管93に熱的に接続される。第2戻り経路72からの流体(空気)の熱が導管93を流れる媒体(冷媒など)に吸収される。その媒体が放熱管91を流れ、その熱がヒートポンプ20の吸熱部21に吸収される。流体の再利用により、運転コストの削減が図られる。
【0029】
本実施形態において、システムS1は、外部装置95における熱需要情報(要求温度、要求流量)、ボイラ40の出力情報(温度、圧力など)、及びヒートポンプ20に対する低温熱源情報(外部装置90における排熱情報など)をそれぞれ検出するセンサを必要に応じて有する。制御装置18は、各種情報に基づき、システムS1全体を統括的に制御することができる。
【0030】
本実施形態において、制御装置18は、ヒートポンプ20を、部分負荷状態を含む全負荷と無負荷の間の負荷状態で運転制御することができる。本実施形態によれば、ヒートポンプ20の部分負荷運転とボイラ40によるバックアップとを含む制御により、システムS1全体のエネルギー効率の向上が図られる。
【0031】
また、本実施形態において、ヒートポンプ20を用いて加熱した被加熱流体としての空気(外部装置95に供給される流体)を、ボイラ40を用いてさらに加熱することができる。そのため、比較的高温の流体を外部装置95に供給でき、比較的高レベルの熱需要にも柔軟に対応できる。
【0032】
ここで、熱交換におけるエネルギー保存則から以下の式(1)及び式(1’)が成り立つ。なお、以下の説明において、A:伝熱面積[m
2]、G:質量流量[kg/s]、h:エンタルピ[J/kg/K]、k:熱貫流率[J/s/m
2/K]、T:温度[K]、W:熱量[J/s]である。各式における添え字は、Air:空気、BS;ボイラ蒸気、BFW:ボイラ給水、D:需要(デマンド)、HP:ヒートポンプ、WH:給水加熱器、in:入口、out:出口、である。
【0034】
ここで、ΔW
BFWは適切な値とし、ゼロであってもよい。
【0035】
図2は、ヒートポンプ20による給水加熱(ボイラ40における予熱)”無し”の場合における、乾燥用空気の熱交換の様子を示す。
図2では、ヒートポンプ20を超臨界状態の作動流体が流れる場合を想定している。凝縮域においても同様に設定可能である。
【0036】
T
HP−in、T
HP−out、T
Air−inが確定すれば、例えば以下の式(2)及び式(2’)を用いてT
Air−outを求めることができる。
【0038】
つまり、乾燥用空気を入口温度(大気温度)からT
Air−outまでをヒートポンプ20によって加熱し、T
Air−outからTDまでをボイラによる蒸気で加熱する。
【0039】
図3は、ヒートポンプ20による給水加熱(ボイラ40における予熱)”有り”の場合における、乾燥用空気の熱交換の様子を示す。基本的には、ヒートポンプ20による供給熱量が十分にあれば、給水加熱を行ったほうが、ヒートポンプ20の利用率向上につながり、省エネルギーの実現に有利であると考えられる。
【0040】
T
HP−WHin、T
BFW−out、T
BFW−inが確定すれば、例えば以下の式(3)を用いて、T
HP−WHoutを求めることができる。
【0041】
T
BFW−outが確定しないときは、初めに、仮にT
BFW−outの初期値を式(3)に入力し、計算によりT
HP−WHoutの適切な値が得られれば終了する。そうでない場合は、T
BFW−outの初期値を入れ替えて再計算を行う。
【0043】
T
BFW−outはヒートポンプ20の供給可能熱量に応じて、システム全体で省エネになる最適な値があると考えられる(最終的にT
BFW−outをある範囲調整し、最適点を決定する)。
【0044】
その後、乾燥用空気の加熱の計算は、ヒートポンプ20による給水加熱が無い場合と同様に行う。
【0045】
蒸気流量に関しては式(1)より以下の式(4)及び式(5)のように計算できる。
【0047】
低温熱源の流量・温度は時間により変動する可能性がある。その場合においてもプロセスへの乾燥のための熱供給は確実に実施する必要がある。
【0048】
図4は、システムS1の動作の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、熱需要に関する情報(温度及び流量)、ボイラ40の出口条件(温度及び圧力)、給水条件、及びヒートポンプ20に対する低温熱源条件(温排熱条件、温度及び流量)などの入力が行われる(ステップ301、302、303)。
【0049】
次に、入力された情報とヒートポンプ20の性能に関する情報とに基づき、乾燥用空気をできるだけ高い温度にするようにヒートポンプ20の出力(温度及び流量)が決定される(ステップ304)。
【0050】
次に、ヒートポンプ20の出力だけで乾燥用空気の仕様(温度・流量)を満たすことができるか否かの判定が行われる(ステップ305)。空気仕様を満たす場合、ボイラ40からの熱媒体の供給が無い条件が設定される(ステップ306)。空気仕様を満たさない場合、式(5)を用いて、ボイラ40からの蒸気流量が決定される(ステップ307)。
【0051】
次に、決定された蒸気流量に基づき、ヒートポンプ20による給水加熱(ボイラ40における予熱)に関する計算が行われる(ステップ308)。また、ヒートポンプ20による給水加熱(ボイラ40における予熱)”有り”の場合について、同様に、ボイラ40からの必要な蒸気流量が算出される(ステップ309)。
【0052】
次に、給水加熱”有り”の場合、給水加熱”無し”の場合の双方について、システムS1全体の一次エネルギー効率が算出される(ステップ310)。一次エネルギー効率=COP×発電効率×W
HP/W
D+ボイラ効率×W
B/W
D。
【0053】
さらに、システムS1の一次エネルギー、経済性、環境性の評価を評価することができる(ステップ311)。この評価には、例えば経済性及び環境性などに関する所定の指標を用いることができる。
【0054】
また、ステップ311において、システムS1全体での省エネルギーの最適化が完了したかどうかを判定することができる。未完了の場合は、ヒートポンプ20の出力及び/又は給水加熱量(温度、予熱量)を変更することができる(ステップ312)。この場合、全負荷と部分負荷との間におけるヒートポンプ20の所定の負荷状態について、上述したものと同様に、一次エネルギー効率が算出される。ヒートポンプ20の複数の負荷状態について計算を行い、その結果、ヒートポンプ20の負荷状態及び給水加熱量について最適値を得ることができる。すなわち、制御装置18は、ヒートポンプ20の負荷割合と、ボイラ40における給水加熱量(予熱量)とを最適化することができる。
【0055】
上記一連のフローは、例えば、熱需要又は低温熱源条件が変化したときに実施することができる。システムS1は、最適条件に基づき、高いエネルギー効率で安定的な熱供給を実施可能である。
【0056】
上記フローにおいて、ヒートポンプ20の稼動は、乾燥のための熱需要に合わせて、低温熱源条件(温排熱条件)に従って実施できる。ヒートポンプ20の熱出力が不足する場合は、ボイラ40からの蒸気でそれを補うことができる。
【0057】
また、上記フローにおいて、ヒートポンプ20を用いてボイラ40の給水加熱(予熱)を実施し、給水加熱温度をある程度調整し、システムS1の全体で省エネルギーになるように設定できる。
【0058】
システムS1の一次エネルギー評価において、一例として次の値が考えられる;COP(Coefficient of Performance、成績係数):3、発電効率:40%、ボイラ効率:90%。この場合、基本的にはヒートポンプ20の一次エネルギー効率は120%であり、ヒートポンプ20の稼働率を高めるのが有利である。
【0059】
ただし、ヒートポンプ20においては、
図5及び
図6に示すように、部分負荷効率が定負荷効率より高いケースがある。つまり、ヒートポンプ20の出力比率を下げたほうが全体効率が比較的高くなるケースがある。具体的には、低温熱源の温度が高い場合、すなわち、圧力比が小さい場合、部分負荷の効率が比較的高くなるケースがある。ヒートポンプ20の部分負荷運転を含めてシステムS1全体を制御することにより、エネルギー効率の向上が図られる。
【0060】
ここで、以下のケースについて、一次エネルギー効率の算出を行う。COP:3(定格)、発電効率:40%、W
D:100kW、ボイラ効率:90%とする。
【0061】
(1)ヒートポンプ20のみで全熱量を供給
例えば、W
H:100kW、COP:3(定格)とする。
一次エネルギー効率=COP×発電効率×W
HP/W
D+ボイラ効率×W
B/W
D
=3×0.4×100/100+0.9×0/100
=1.2
【0062】
(2)ヒートポンプ部分負荷運転
例えば、W
D:50kW、COP:3(定格)とする。
一次エネルギー効率=COP×発電効率×W
HP/W
D+ボイラ効率×W
B/W
D
=5×0.4×50/100+0.9×50/100
=1.45
【0063】
つまり、上記例における全運転(100kW)時のCOPが3のヒートポンプ20において、部分負荷運転時(50kW)のCOPが5である場合、ヒートポンプ20の一次エネルギー効率は145%となる。
【0064】
(3)ヒートポンプ部分負荷運転+ボイラ給水加熱
例えば、上記(2)の状態からボイラ給水加熱を実施し、実質的にW
HP:55、W
B:45になったとする。
一次エネルギー効率=COP×発電効率×W
HP/W
D+ボイラ効率×W
B/W
D
=5×0.4×55/100+0.9×45/100
=1.505
【0065】
このように、ボイラ40における給水加熱(予熱)を実施したほうが、システムS1全体の効率が向上する場合がある。
【0066】
ヒートポンプ20の部分負荷運転領域、及びヒートポンプ20を用いたボイラ40における給水加熱(予熱)を考慮することにより、ヒートポンプ20の運転の自由度が広がり、広い範囲でシステムS1の最大効率を求めることが可能である。つまり、システムS1は、ヒートポンプ20の自由度が広く、広い範囲で実質的な最大効率を得ることが可能である。
【0067】
ヒートポンプ20の熱出力は低温熱源の量に影響されるものの、本システムS1の構成により、安定して熱需要を満たすことができる。ヒートポンプ20とボイラ40の出力比を最適化することによって一次エネルギーの削減等に貢献できる。つまり、本実施形態によれば、低温熱源から供給される熱量及び温度が不安定であっても、安定して熱需要に対応できる。また、ヒートポンプ20とボイラ40の出力比の最適化が図られ、その結果、一次エネルギーの削減に寄与できる。
【0068】
図7は、他の実施形態における熱供給システムS2を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0069】
図2に示すように、熱供給システムS2は、
図1のシステムS1と同様に、ヒートポンプ(ヒートポンプ回路)20を有する第1加熱装置(第1装置)12と、ヒートポンプ以外の加熱装置を有する第2加熱装置(第2装置)14と、供給装置16と、制御装置18とを備える。制御装置18は、システム全体を統括的に制御する。熱供給システムS2の構成は設計要求に応じて様々に変更可能である。
【0070】
本実施形態において、第2加熱装置14は、ヒートポンプ以外の加熱装置として、電気ヒータ48を有する。
【0071】
また、本実施形態において、供給装置16は、第1加熱装置12及び第2加熱装置14(電気ヒータ48)を用いて加熱された流体(被加熱流体)を外部装置95に供給する。供給装置16は、第1加熱部62と、第2加熱部64とを有する。供給装置16は、さらに、被加熱流体が流れる導管、ポンプなどの流体駆動機器、流体制御用の弁などを有することができる。
【0072】
本実施形態において、被加熱流体は空気であり、外部装置95には高温の空気(乾燥用空気)が供給される。他の実施形態において、被加熱流体は乾燥用以外の空気、あるいは空気以外の流体にできる。空気以外の被加熱流体としては、例えば、圧縮水、薬品、粘性液などが挙げられる。
【0073】
第1加熱部62は、第1加熱装置12におけるヒートポンプ20の放熱部23に熱的に接続されかつ空気が流れる導管を含む。第1加熱部62と放熱部23を含んで熱交換器32が構成される。第1加熱部62において、ヒートポンプ20の放熱部23からの伝達熱によって、導管内の空気が温度上昇する。
【0074】
第2加熱部64は、第2加熱装置14における電気ヒータ48の放熱部148に熱的に接続されかつ第1加熱部62からの空気が流れる導管を含む。本実施形態において、放熱部148と第2加熱部64の導管とは互いに接触あるいは隣接して配置される。例えば、放熱部148を、第2加熱部64の導管の外周面や内部に配設することができる。第2加熱部64において、第2加熱装置14の放熱部148からの伝達熱によって、導管内の空気がさらに温度上昇する。
【0075】
本実施形態において、供給装置16からの被加熱流体(乾燥用空気)の出力温度は、熱需要に応じて変化できる。出力温度は、例えば、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200℃以上にできる。
【0076】
本実施形態において、システムS2は、熱出力後の外部装置95からの被加熱流体(排ガス)を再利用するための第2戻り経路72を有する。外部装置95からの放熱した後の流体が第2戻り経路72を流れる。第2戻り経路72からの流体(空気)は、放熱管74を流れる。第2戻り経路72の放熱管74は、低温熱源側の外部装置90の放熱管91に流体的に接続された導管93に熱的に接続される。第2戻り経路72からの流体(空気)の熱が導管93を流れる媒体(冷媒など)に吸収される。その媒体が放熱管91を流れ、その熱がヒートポンプ20の吸熱部21に吸収される。流体の再利用により、運転コストの削減が図られる。
【0077】
本実施形態において、システムS2は、外部装置95における熱需要情報(要求温度、要求流量)、電気ヒータ48の出力情報(温度など)、及びヒートポンプ20に対する低温熱源情報(外部装置90における排熱情報など)をそれぞれ検出するセンサを必要に応じて有する。制御装置18は、各種情報に基づき、システムS2全体を統括的に制御することができる。
【0078】
本実施形態において、制御装置18は、ヒートポンプ20を、部分負荷状態を含む全負荷と無負荷の間の負荷状態で運転制御することができる。本実施形態によれば、ヒートポンプ20の部分負荷運転と電気ヒータ48によるバックアップとを含む制御により、システムS2全体のエネルギー効率の向上が図られる。
【0079】
また、本実施形態において、ヒートポンプ20を用いて加熱した被加熱流体としての空気(外部装置95に供給される流体)を、電気ヒータ48を用いてさらに加熱することができる。そのため、比較的高温の流体を外部装置95に供給でき、比較的高レベルの熱需要にも柔軟に対応できる。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の請求の範囲によってのみ限定される。