特許第5760312号(P5760312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡株式会社の特許一覧

特許5760312新規スルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合体ポリマー及びその用途、新規ブロック共重合体ポリマーの製造方法
<>
  • 特許5760312-新規スルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合体ポリマー及びその用途、新規ブロック共重合体ポリマーの製造方法 図000078
  • 特許5760312-新規スルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合体ポリマー及びその用途、新規ブロック共重合体ポリマーの製造方法 図000079
  • 特許5760312-新規スルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合体ポリマー及びその用途、新規ブロック共重合体ポリマーの製造方法 図000080
  • 特許5760312-新規スルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合体ポリマー及びその用途、新規ブロック共重合体ポリマーの製造方法 図000081
  • 特許5760312-新規スルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合体ポリマー及びその用途、新規ブロック共重合体ポリマーの製造方法 図000082
  • 特許5760312-新規スルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合体ポリマー及びその用途、新規ブロック共重合体ポリマーの製造方法 図000083
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760312
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】新規スルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合体ポリマー及びその用途、新規ブロック共重合体ポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20150716BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20150716BHJP
   C08G 75/20 20060101ALI20150716BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20150716BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20150716BHJP
   H01M 8/10 20060101ALI20150716BHJP
   H01M 8/02 20060101ALI20150716BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20150716BHJP
   C08J 5/22 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   C08G81/00
   C08G65/40
   C08G75/20
   C08L71/10
   C08L81/06
   H01M8/10
   H01M8/02 P
   H01B1/06 A
   C08J5/22 101
   C08J5/22CEZ
【請求項の数】28
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2009-526963(P2009-526963)
(86)(22)【出願日】2009年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2009058665
(87)【国際公開番号】WO2009136631
(87)【国際公開日】20091112
【審査請求日】2012年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2008-122176(P2008-122176)
(32)【優先日】2008年5月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-263722(P2008-263722)
(32)【優先日】2008年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-268126(P2008-268126)
(32)【優先日】2008年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸太
(72)【発明者】
【氏名】市村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】坂口 佳充
(72)【発明者】
【氏名】秋友 由子
(72)【発明者】
【氏名】西本 晃
(72)【発明者】
【氏名】山下 全広
(72)【発明者】
【氏名】佐々井 孝介
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴弘
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−217950(JP,A)
【文献】 特開2005−255850(JP,A)
【文献】 特開2006−176666(JP,A)
【文献】 特開2006−176665(JP,A)
【文献】 特開2004−263167(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/084759(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00
C08G 65/40
C08G 75/20
C08J 5/22
C08L 71/10
C08L 81/06
H01B 1/06
H01M 8/02
H01M 8/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にそれぞれ一つ以上の親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合ポリマーであって、下記化学式1で表される構造であり、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒とした0.5g/dLの溶液について30℃で測定される対数粘度が、0.5〜5.0dL/gの範囲であることを特徴とするブロック共重合ポリマー。
【化1】
(式中、XはH又は1価の陽イオンを、Yはスルホニル基、又はカルボニル基を、Z及びZ’はそれぞれ独立してO又はS原子のいずれかを、Wはベンゼン間同士の直接結合、スルホニル基、カルボニル基からなる群より選ばれる1種以上の基を、Ar及びArは、それぞれ独立して2価の芳香族基を、n及びmは独立して、それぞれ2〜100の整数を、それぞれ表す。)
【請求項2】
Arが下記化学式2で表される構造で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【化2】
【請求項3】
Arが下記化学式2で表される構造で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【化2】
【請求項4】
Ar及びArのいずれもが上記化学式2で表される構造で表される構造であることを特徴とする請求項2又は3に記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【請求項5】
Z及びZ’の少なくともいずれかが、O原子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【請求項6】
Z及びZ’のいずれもがO原子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【請求項7】
Wがベンゼン環同士の直接結合であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【請求項8】
nが10〜70の範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【請求項9】
mが3以上10未満の範囲であることを特徴とする請求項8に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【請求項10】
m/nが、0.4〜1.0の範囲であることを特徴とする請求項9に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【請求項11】
mが10以上70未満の範囲であることを特徴とする請求項8に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【請求項12】
m/nが、0.4〜1.5の範囲であることを特徴とする請求項11に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【請求項13】
親水性オリゴマー、疎水性オリゴマーおよび分子中に少なくとも2つ以上のハロゲンを有する芳香族系鎖延長剤を反応させてブロック共重合体ポリマーを合成する方法において、疎水性オリゴマーが下記化学式7
【化3】
(化学式7)
(式中、Zはそれぞれ独立してO又はS原子のいずれかを、Arは2価の芳香族基を、nは2〜100の整数を、それぞれ表す。)
で表される構造を分子中に含んでおり、親水性オリゴマーが下記化学式8
【化4】
(化学式8)
(式中、XはH又は1価の陽イオンを、Yはスルホニル基、又はカルボニル基を、ZはO又はS原子のいずれかを、Ar2は、2価の芳香族基を、mは2〜100の整数を、それ
ぞれ表す。)
で表される構造を分子中に含み、芳香族系鎖延長剤がパーフルオロ化合物(ただし、シアノ基、スルホニル基、カルボニル基からなる群より選ばれる基を含んでいてもよい)であることを特徴とするブロック共重合ポリマーの合成法。
【請求項14】
親水性オリゴマー及び疎水性オリゴマーの両末端がそれぞれOH基であることを特徴とする請求項13に記載のブロック共重合体ポリマーの合成法。
【請求項15】
親水性オリゴマー及び疎水性オリゴマーの両末端がそれぞれSH基であることを特徴とする請求項13に記載のブロック共重合体ポリマーの合成法。
【請求項16】
芳香族系鎖延長剤のハロゲンがフッ素であることを特徴とする請求項13に記載のブロック共重合体ポリマーの合成法。
【請求項17】
反応溶液の固形分濃度が1〜25重量%である反応溶液中で合成されることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載のブロック共重合体ポリマーの合成法。
【請求項18】
反応温度が50〜160℃の範囲であることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載のブロック共重合体の合成法。
【請求項19】
少なくとも、(A)親水性オリゴマー溶液、(B)疎水性オリゴマー溶液、及び(C)分子中に少なくとも2つ以上のハロゲンを有する芳香族系鎖延長剤を必須成分として混合して反応させることを特徴とする請求項13〜18のいずれかに記載のブロック共重合体の合成法。
【請求項20】
親水性オリゴマーの合成反応によって得られた反応溶液を親水性オリゴマー溶液として用い、かつ疎水性オリゴマーの合成反応によって得られた反応溶液を疎水性オリゴマー溶液として用いることを特徴とする請求項19に記載のブロック共重合体の合成法。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれかに記載のブロック共重合ポリマー、又は請求項13〜20のいずれかに記載の合成法で得られたブロック共重合ポリマーからなる成形物。
【請求項22】
請求項1〜12のいずれかに記載のブロック共重合ポリマー、又は請求項13〜20のいずれかに記載の合成法で得られたブロック共重合ポリマーからなる燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項23】
請求項1〜12のいずれかに記載のブロック共重合ポリマー、又は請求項13〜20のいずれかに記載の合成法で得られたブロック共重合ポリマーを構成成分とするブロック共重合ポリマー組成物。
【請求項24】
請求項23に記載のブロック共重合ポリマー組成物から得られる成形物。
【請求項25】
請求項23に記載のブロック共重合ポリマー組成物から得られる燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項26】
繊維状物質を含むことを特徴とする請求項25に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【請求項27】
請求項22、25、26のいずれかに記載の燃料電池用プロトン交換膜を用いた燃料電池用プロトン交換膜電極接合体。
【請求項28】
請求項27に記載の燃料電池用プロトン交換膜電極接合体を用いた燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規構造のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー及びその用途と新規構造のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー合成法に関する。さらには、該ポリマーを構成成分とする組成物、成形物、燃料電池用プロトン交換膜、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子膜をプロトン交換膜に用いた固体高分子形燃料電池(PEFC)や直接メタノール型燃料電池(DMFC)は、可搬性があり、小型化が可能であることから、自動車、家庭用分散発電システム、携帯機器用電源への応用が進められている。現在、プロトン交換膜としては、米国デュポン社製ナフィオン(登録商標)に代表されるようなパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜が広く用いられている。
【0003】
しかしながらこれらの膜は100℃以上で軟化するため、運転温度が80℃以下に制限されていた。運転温度をさらに上げると、エネルギー効率、装置の小型化、触媒活性の向上など、さまざまな利点があるため、より耐熱性の高いプロトン交換膜が求められている。耐熱性プロトン交換膜として、ポリスルホンやポリエーテルケトンなどの耐熱性ポリマーを発煙硫酸などのスルホン化剤で処理して得られるスルホン化ポリマーはよく知られている(例えば非特許文献1を参照)。しかしながら、一般的にスルホン化剤によるスルホン化反応の制御は困難である。そのため、スルホン化度が多すぎたり少なかったりしたりすることや、ポリマーの分解、不均一なスルホン化などが起こりやすいという問題があった。
【0004】
そのため、スルホン酸基などの酸性基を有するモノマーから重合したポリマーをプロトン交換膜として用いることが検討されている。例えば、特許文献1にはプロトン伝導性ポリマーとして、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ソーダ、及び4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと4,4’−ビフェノールの反応で得られる共重合ポリマーが示されている。このポリマーを構成成分とするプロトン交換膜は、前述のスルホン化剤を用いた場合のようなスルホン酸基の不均一性が少なく、スルホン酸基導入量及びポリマー分子量の制御が容易であった。しかしながら、燃料電池として実用化のためにはプロトン伝導性など様々な特性の改良が望まれている。
【0005】
特性向上のための試みとして、スルホン酸基を有するセグメント化ブロック共重合ポリマーの検討が行われている。セグメント化ブロック共重合ポリマーには、親水性セグメントが相分離によって親水性ドメインを形成することでプロトン伝導性が向上することが期待されている。例えば特許文献2では、スルホン化したポリエーテルスルホンセグメント化ブロック共重合ポリマーが記載されている。このポリマーを得る方法の一つは、スルホン化されやすいセグメントとされにくいセグメントから構成されたブロックポリマーのスルホン化である。しかしながらこの方法では各セグメント中のベンゼン環の電子密度の差によってスルホン化反応を局所的に行わせており、各セグメントのポリマー構造が制限されてしまうという欠点があった。また、エーテル基の酸素原子や、アルキル基などの電子供与性基が結合したベンゼン環は容易にスルホン化されるが、熱や加水分解などによる逆反応も起こりやすい。そのため、上記のポリマーではポリマー中のスルホン酸基の安定性が低いという問題もあった。また、このポリマーの用途として分離膜が挙げられているが、燃料電池用プロトン交換膜としての用途に関しては記載されていなかった。
【0006】
また、特許文献3では特定の繰り返し単位を有するセグメント化ブロック共重合ポリマーをスルホン化して得られるポリマーを燃料電池のプロトン交換膜として用いることが記載されている。しかしながらこのポリマーも特許文献2のポリマーと同様にスルホン化に対する反応性の差を利用しているため、疎水性セグメントの構造は制限されてしまっていた。
【0007】
他のスルホン化されたセグメント化ブロック共重合ポリマーの例としては特許文献4に記載されたポリマーを挙げることができる。特許文献4のポリマーはブロック移行部での主鎖の配列がブロック内部と同じであることが特徴であるが、それ故にポリマー構造も制限されてしまっていた。
【0008】
さらに特許文献5においてもスルホン化ポリエーテルスルホンセグメント化ブロック共重合ポリマーを用いた燃料電池用プロトン交換膜が記載されている。
【0009】
しかしながら、これらのスルホン化ブロック共重合ポリマーを燃料電池のプロトン交換膜として用いる場合、高温や高湿度下での安定性がいまだ十分でないという欠点を有していた。前述したようにスルホン化でポリマーに導入したスルホン酸基は安定性に乏しいので燃料電池の使用条件である、高温、高湿度の環境下で脱離しやすいという欠点がある。さらに、高温、高湿度下で親水性ドメインが大きく膨潤し、強度低下が著しいという欠点があった。これらの欠点はポリマー中の各セグメントの構造に由来するものであるが、従来のセグメント化ブロック共重合ポリマーでは、構造が限定されており、燃料電池用プロトン交換膜の材料としては最適化できていなかった。
【0010】
また、燃料電池用プロトン交換膜に用いるポリマーとして、繰り返し単位中にハロゲンを含むスルホン化ポリエーテルスルホンセグメント化ブロック共重合ポリマーが特許文献6又は7に記載されている。しかしながら、これらのポリマーには膨潤性が高いものがあり、燃料電池に用いた場合の耐久性に問題がある場合があった。また、ハロゲン元素を含むモノマーは、合成が困難であったり、高価であったりするものが多く、ポリマー合成に困難が多いという問題があった。さらに、ポリマー中にハロゲン元素を多量に含むため、焼却すると有害なガスが生じるなど、廃棄においても問題があった。
【0011】
燃料電池用プロトン交換膜に用いるポリマーとして、特定のセグメントの末端に、フッ素などのハロゲン元素を有する構造を有する構造からなるスルホン化ポリエーテルスルホンセグメント化ブロック共重合ポリマーが特許文献8又は非特許文献2に記載されている。
また、末端修飾などを行わず、より簡便な手法として各セグメントの末端基を同じにしておいて、フッ素などのハロゲン元素を含む芳香族系鎖延長剤を用いて両オリゴマーを反応させるブロック共重合ポリマーの合成が非特許文献3に報告されている。
これらのポリマーでは、ハロゲン元素を含む構成単位は、異種のセグメント間の結合部分にのみ存在するため、分子中のハロゲン量が少なくなるという利点がある。しかしながら、セグメント構造、特にスルホン酸基を実質的に有さない疎水性セグメントの構造によっては、膨潤性が高いものがあり、燃料電池に用いた場合の耐久性に問題がある場合があった。
【0012】
我々はこれまでに、燃料電池用プロトン交換膜に用いるポリマーとして、膨潤性の少ないスルホン化ポリエーテルスルホンセグメント化ブロック共重合ポリマーとして、各セグメントが特定の構造であるスルホン化ポリエーテルスルホンセグメント化ブロック共重合ポリマーを発明し特許出願した(特許文献9を参照)。この出願において、疎水性セグメント中にベンゾニトリル構造を含むポリマーを開示している。しかしながら、前記出願に記載されたポリマーでは、セグメントの連鎖長が長いものを得ることが困難であり、ベンゾニトリル構造を含むポリマーでは特に困難であるという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0091225号明細書
【特許文献2】特開昭63―258930号明細書
【特許文献3】特開2001−250567号明細書
【特許文献4】特開2001−278978号明細書
【特許文献5】特開2003−31232号明細書
【特許文献6】特開2004−190003号明細書
【特許文献7】特評2007−515513号明細書
【特許文献8】特開2005−126684号明細書
【特許文献9】特開2006−176666号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】エフ ルフラノ(F. Lufrano)他3名著、「スルホネイテッド ポリスルホン アズ プロマイジング メンブランズ フォー ポリマー エレクトロライト フュエル セルズ」(Sulfonated Polysulfone as Promising Membranes for Polymer Electrolyte Fuel Cells)、ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス(Journal of AppLied Polymer Science)、(米国)、ジョン ワイリー アンド サンズ インク(John Wiley & Sons, Inc.)、2000年、77号、p.1250−1257
【非特許文献2】ヒ セウン リー(Hae−Seung Lee)、アブヒシェック ロイ(Abhishek Roy)、オズマ レーン(Ozma Lane)、スチュアート ダン(Stuart Dunn)、ジェームズ イー マクグラス(James E. McGrath)著、「ハイドロフィリック−ハイドロフォビック マルチブロック コポリマーズ ベースド オン ポリ(アリーレン エーテル スルホン) ヴィア ロー−テンプラチャー カップリング リアクションズ フォー プロトン エクスチェンジ メンブラン フューエル セルズ」(Hydrophilic−hydrophobic multiblock copolymers based on poly(arylene ether sulfone) via low−temperature coupling reactions for proton exchange membrane fuel cells)、ポリマー(Polymer)、(米国)、エルスヴィアー リミテッド(Elsevier Ltd.)、2008年、49号、p.715−723
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の現状に基づき、本発明の主要な課題は、既存のポリマーから得られるプロトン交換膜よりも、プロトン伝導性に優れるだけでなく、熱水に対する膨潤性がより少なく耐久性に優れている燃料電池用プロトン交換膜、並びに該プロトン交換膜を構成するスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー、該ポリマーの簡便な製造方法、及び該ポリマーの組成物及び成形物、燃料電池用プロトン交換膜電極接合体、及び燃料電池の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、親水性セグメント及び疎水性セグメントの構造と、セグメント間の結合基に関して鋭意検討したところ、特定の構造のポリマーが、優れたプロトン伝導性を示し、かつ、耐久性にも優れることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本願第1の発明は、
(1) 分子中にそれぞれ一つ以上の親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合ポリマーであって、下記化学式1で表される構造であり、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒とした0.5g/dLの溶液について30℃で測定される対数粘度が、0.5〜5.0dL/gの範囲であることを特徴とするブロック共重合ポリマー。
【0017】
【化5】

(式中、XはH又は1価の陽イオンを、Yはスルホン基又はカルボニル基を、Z及びZ’はそれぞれ独立してO又はS原子のいずれかを、Wはベンゼン間同士の直接結合、スルホニル基、カルボニル基からなる群より選ばれる1種以上の基を、Ar及びArは、それぞれ独立して2価の芳香族基を、n及びmは独立して、それぞれ2〜100の整数を、それぞれ表す。)
【0018】
(2) Arが下記化学式2で表される構造で表される構造であることを特徴とする(1)に記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【0019】
【化6】
【0020】
(3) Ar下記化学式2で表される構造で表される構造であることを特徴とする(1)に記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【化6】
【0021】
(4) Ar及びArのいずれもが上記化学式2で表される構造で表される構造であることを特徴とする(2)又は(3)に記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【0022】
(5) Z及びZ’の少なくともいずれかが、O原子であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【0023】
(6) Z及びZ’のいずれもがO原子であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【0024】
(7) Wがベンゼン環同士の直接結合であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー。
【0025】
(8) nが10〜70の範囲であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【0026】
(9) mが3以上10未満の範囲であることを特徴とする(8)に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【0027】
(10) m/nが、0.4〜1.0の範囲であることを特徴とする(9)に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【0028】
(11) mが10以上70未満の範囲であることを特徴とする(8)に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【0029】
(12) m/nが、0.4〜1.5の範囲であることを特徴とする(11)に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー。
【0030】
本願第2の発明は、
(13)親水性オリゴマー、疎水性オリゴマーおよび鎖延長剤を反応させてブロック共重合体ポリマーを合成する方法において、
疎水性オリゴマーが下記化学式7
【化7】
(化学式7)
(式中、Zはそれぞれ独立してO又はS原子のいずれかを、Arは2価の芳香族基を、nは2〜100の整数を、それぞれ表す。)
で表される構造を分子中に含んでおり、親水性オリゴマーが下記化学式8
【化8】
(化学式8)
(式中、XはH又は1価の陽イオンを、Yはスルホニル基、又はカルボニル基を、ZはO
又はS原子のいずれかを、Ar2は、2価の芳香族基を、mは2〜100の整数を、それ
ぞれ表す。)
で表される構造を分子中に含み、芳香族系鎖延長剤がパーフルオロ化合物(ただし、シアノ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボニル基からなる群より選ばれる基を含んでいてもよい)であることを特徴とするブロック共重合ポリマーの合成法。
【0031】
(14)親水性オリゴマー及び疎水性オリゴマーの両末端がそれぞれOH基であることを特徴とする(13)に記載のブロック共重合体ポリマーの合成法。
【0032】
(15)親水性オリゴマー及び疎水性オリゴマーの両末端がそれぞれSH基であることを特徴とする(13)に記載のブロック共重合体ポリマーの合成法。
【0035】
(16)鎖延長剤がヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル、デカフルオロベンゾフェノン、デカフルオロジフェニルスルホン、ペンタフルオロベンゾニトリルのいずれか、またはこれらの混合物であることを特徴とする(13)に記載のブロック共重合ポリマーの合成法。
【0036】
(17)反応溶液の固形分濃度が1〜25重量%である反応溶液中で合成されることを特徴とする(13)〜(16)に記載のブロック共重合体ポリマーの合成法。
【0037】
(18)反応温度が50〜160℃の範囲であることを特徴とする(13)〜(17)に記載のブロック共重合体の合成法。
【0038】
(19)少なくとも、(A)親水性オリゴマー溶液、(B)疎水性オリゴマー溶液、及び(C)分子中に少なくとも2つ以上のハロゲンを有する芳香族系鎖延長剤を必須成分として混合して反応させることを特徴とする(13)〜(18)に記載のブロック共重合体の合成法。
【0039】
(20)親水性オリゴマーの合成反応によって得られた反応溶液を親水性オリゴマー溶液として用い、かつ疎水性オリゴマーの合成反応によって得られた反応溶液を疎水性オリゴマー溶液として用いることを特徴とする(19)に記載のブロック共重合体の合成法。
【0040】
(21)(1)〜(12)のいずれかに記載のブロック共重合ポリマー、又は(13)〜(20)に記載の合成法で得られたスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーからなる成形物。
【0041】
(22)(1)〜(12)のいずれかに記載のブロック共重合ポリマー、又は(13)〜(20)に記載の合成法で得られたスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーからなる燃料電池用プロトン交換膜。
【0042】
(23)(1)〜(12)に記載のブロック共重合ポリマー、又は(13)〜(20)に記載の合成法で得られたスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーを構成成分とするスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー組成物。
【0043】
(24)(23)に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー組成物から得られる成形物。
【0044】
(25)(23)に記載のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー組成物から得られる燃料電池用プロトン交換膜。
【0045】
(26)繊維状物質を含むことを特徴とする(25)に記載の燃料電池用プロトン交換膜。
【0046】
(27)(22)、(25)、(26)のいずれかに記載の燃料電池用プロトン交換膜を用いた燃料電池用プロトン交換膜電極接合体。
【0047】
(28)(27)に記載の燃料電池用プロトン交換膜電極接合体を用いた燃料電池。
【発明の効果】
【0048】
本願第1の発明のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー及び、本願第2の発明のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマー製造法で得られたスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマーは、本発明外のスルホン化ブロック共重合ポリマーに対して、高温の水に対する膨潤性、耐久性、及びプロトン伝導性のいずれにおいても優れているものである。また、本発明のスルホン酸基含有ブロック共重合ポリマーからなる膜はメタノール阻止性に優れるため、水素を燃料とする燃料電池だけでなく、ダイレクトメタノール型燃料電池のプロトン交換膜にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】実施例1で得られたスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーのH−NMRスペクトルを示す。
図2】実施例1で得られたスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーの13C−NMRスペクトルを示す。
図3】実施例2で得られたスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーのH−NMRスペクトルを示す。
図4】実施例2で得られたスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーの13C−NMRスペクトルを示す。
図5】実施例17で得られたスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーのH−NMRスペクトルを示す。
図6】実施例17で得られたスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーの13C−NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本願第1の発明は、特定のポリマー構造を有するスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマー及びその用途であるが、以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
本願第1の発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーは、分子中にそれぞれ一つ以上の親水性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合ポリマーであって、下記化学式1で表される構造であり、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒とした0.5g/dLの溶液について30℃で測定される対数粘度が、0.5〜5.0dL/gの範囲であることを特徴とするブロック共重合ポリマー。
【0051】
【化9】

(式中、XはH又は1価の陽イオンを、Yはスルホン基又はカルボニル基を、Z及びZ’はそれぞれ独立してO又はS原子のいずれかを、Wはベンゼン間同士の直接結合、スルホニル基、カルボニル基からなる群より選ばれる1種以上の基を、Ar及びAr12は、それぞれ独立して2価の芳香族基を、n及びmは独立して、それぞれ2〜100の整数を、それぞれ表す。)
【0052】
プロトン交換膜として用いる場合にはXがHであるとプロトン伝導性が高くなるため好ましい。ポリマーを加工、成形する際には、XはNa、K、Liなど1価の金属イオンであると、ポリマーの安定性が高まり好ましい。またXはモノアミンなどの有機カチオンであってもよい。Yはスルホン基であるとポリマーの溶媒への溶解性が高まる傾向にあり好ましい。Ar及びArはそれぞれ独立して、主として芳香族性の基から構成される公知の任意の2価の基であればよいが、好ましい例として下記化学式3A〜3Nで表される群より選ばれる2価の芳香族基を挙げることができる。
【0053】
【化10】
(式中、Rはメチル基を、pは0〜2の整数を、それぞれ表す。)
【0054】
pが1又は2であるポリマーは高分子量のポリマーを得ることが困難な場合があるので、pは0が好ましい。Ar及びArは、それぞれ独立して、上記化学式3A〜3Nの中でも、化学式3A、3C、3E、3F、3K、3M、3Nで表される構造がより好ましく、以下に示す化学式3A’、3F’で表される構造がさらに好ましく、化学式3A’で表される構造が加えて好ましい。さらに、Ar及びArのいずれもが化学式3A’で表される構造であることが最も好ましい。また、Ar及びArはそれぞれ独立して、上記化学式3A〜3Nで表される構造より選ばれる2種以上の構造からなっていてもよい。その場合、より優れた特性を示すためには、少なくとも下記化学式3A’、3F’、3M’のいずれかの構造を有していることが好ましく、下記化学式3A’もしくは3M’であることがより好ましい。化学式3A’の構造であると耐膨潤性及び耐久性に優れることから好ましい。化学式3M’の構造であると耐久性に優れることから好ましい。
【0055】
【化11】
【0056】
Z及びZ'の少なくともいずれかが、O原子であることが、原料の入手や合成の容易さ
から好ましい。いずれもがO原子であることがより好ましい。ただし、S原子であると耐酸化性が向上する場合がある。
【0057】
Wがベンゼン環同士の直接結合であると、膜の特性や耐久性を向上できるため好ましい。Wがスルホン基の場合、合成時の副反応を低減できるという利点がある。
【0058】
nは10〜70の範囲であると、膜の機械的特性が向上するため好ましい。10未満であると、膨潤性が大きくなりすぎたり耐久性が低下したりする場合がある。70を超えると、分子量の制御が困難になり、設計した構造のポリマーの合成が困難になる場合がある。nが20〜60の範囲であるとより好ましい。
【0059】
mが3以上10未満の範囲であると、メタノールを燃料とするダイレクトメタノール型燃料電池のプロトン交換膜に適した膜を得ることができるため好ましい。mは3〜8の範囲にあることがより好ましい。mが3未満であると、ランダム共重合ポリマーからなる膜と同程度の特性しか得られないため好ましくない。mが10以上であると、メタノール透過性が大きくなりすぎる場合がある。ダイレクトメタノール型燃料電池のプロトン交換膜に適した膜を得るためのポリマーとしては、m/nが0.4〜1.0の範囲にあることが好ましい。0.4よりも小さいと、膜のプロトン伝導性が著しく低下する場合がある。1.0以上であるとメタノール透過性が大きくなりすぎる場合がある。より好ましくは0.5〜0.8の範囲である。
【0060】
mが10以上70未満の範囲であると、水素を燃料とする燃料電池のプロトン交換膜に適した膜を得ることができるため好ましい。mは15〜55の範囲にあることがより好ましい。mが10未満であっても、水素を燃料とする燃料電池用のプロトン交換膜に用いるポリマーは合成可能であるが特性の充分な改善が望めない場合がある。mが70以上であると、水素を燃料とする燃料電池用のプロトン交換膜に用いるポリマーを合成することが困難になる場合がある。ただし、合成が可能な場合ではmが70以上であっても支障はない。水素を燃料とする燃料電池用のプロトン交換膜に用いるポリマーとしては、m/nが0.4〜1.5の範囲にあることが好ましい。0.4よりも小さいと、燃料電池の出力が著しく低下する場合がある。1.5以上であると膜の膨潤が著しく大きくなる場合がある。より好ましくは0.6〜1.3の範囲である。
【0061】
本願第1の発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーは、公知の任意の方法で合成することができる。予め合成しておいた、親水性及び疎水性のセグメントとなるオリゴマーを、カップリング剤で結合することによっても合成できる。その例として、ヒドロキシル基末端のオリゴマーを、デカフルオロビフェニルなどのパーフルオロ芳香族化合物でカップリングする方法を挙げることができる。予め合成しておいた、親水性及び疎水性のセグメントとなるオリゴマーのいずれかの末端基を反応性が高い基で修飾しておき、もう一方のオリゴマーを反応させることによっても合成することができる。また、上記の反応において、オリゴマーは合成後に精製・単離してから用いてもよいし、合成した溶液のままで用いてもよいし、精製・単離したオリゴマーを溶液として用いてもよい。中でも、予め合成しておいた、親水性及び疎水性のセグメントとなるオリゴマーのいずれかの末端基を反応性が高い基で修飾しておき、もう一方のオリゴマーを反応させる方法が好ましい。その場合、修飾したオリゴマーと、もう一方のオリゴマーは等モルで反応させることが好ましいが、反応中の副反応によるゲル化を防ぐためには、修飾したオリゴマーをわずかに過剰にしておくことがこのましい。過剰の度合いは、オリゴマー分子量や目的とするポリマーの分子量によっても異なるが、0.1〜50モル%の範囲であることが好ましく、0.5〜10モル%の範囲であることがより好ましい。また、反応性が高い基で末端を修飾するのは、疎水性セグメントのほうが好ましい。親水性セグメントの構造によっては修飾反応がうまく進行しない場合がある。
【0062】
以下、本願第1の発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーの合成法の一つについて説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0063】
<親水性オリゴマーの合成>
本願第1の発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーにおける親水性オリゴマーは、下記化学式4で表されるスルホン化モノマーを各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類と反応させて合成することができる。
【0064】
【化12】
【0065】
化学式4において、XはH又は1価の陽イオンを、Yはスルホン基又はカルボニル基を、Aはハロゲン元素をそれぞれ表す。XはNa又はKであることが、AはF又はClであることがそれぞれ好ましい。また、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類が過剰になるようにして、オリゴマーの末端基がOH基又はSH基となるようにすることが好ましい。オリゴマーの重合度は、化学式4のモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類とのモル比で調整することができる。
【0066】
化学式4のモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類とは、公知の任意の方法で反応させることができるが、塩基性化合物の存在下で芳香族求核置換反応によって反応させることが好ましい。反応は、0〜350℃の範囲で行うことができるが、50〜250℃の範囲で行うことが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ビスフェノール類や芳香族ビスチオフェノール類を活性なフェノキシド構造やチオフェノキシド構造になしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。ただし、Xがカリウムの場合には炭酸カリウムなどのカリウム塩を、Xがナトリウムの場合には炭酸ナトリウムなどのナトリウム塩をそれぞれ用いるようにすると、オリゴマー分子量の算出が容易になるためより好ましい。副生物として生成する水は、トルエンなどの共沸溶媒と溜去して系外に除去したり、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用したり、重合溶媒と共に溜去したりすることで除去することができる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましく、20〜40重量%の範囲であることがより好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合溶液は、そのままブロックポリマーの合成に用いてもよいし、無機塩などの副生成物を除去して溶液として用いてもよいし、ポリマーを単離・精製して用いてもよいが、好ましいのはポリマーを単離・精製する方法である。
【0067】
親水性オリゴマーの溶液から、副生成物である無機塩を除く方法は、濾過や、遠心沈降後のデカンテーション、水に溶解しての透析、水に溶解しての塩析など、公知の任意の方法を用いることができ、濾過が製造効率、収率の面から好ましい。濾過や遠心沈降で塩を除去した場合は、親水性セグメントの非溶媒に溶液を滴下することでポリマーを回収することができる。また、透析の場合は蒸発乾固によって、塩析の場合は濾過によって、それぞれポリマーを回収することができる。単離した親水性オリゴマーは、非溶媒による洗浄や、再沈、透析などによって精製することが好ましく、洗浄が作業効率と精製効率の面から好ましい。合成や精製の際に用いた有機溶媒は、できるだけ除去しておくことが好ましい。有機溶媒の除去は、乾燥によって行うことが好ましく、10〜150℃の範囲の温度で減圧乾燥することがより好ましい。
【0068】
親水性オリゴマーの非溶媒は、任意の有機溶媒から選択することができるが、反応に用いた非プロトン性極性溶媒と混和するものであることが好ましい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノノなどのケトン系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒などを例としてあげることができるが、これらに限定されるものではなく、他にも適したものを用いることができる。
【0069】
<疎水性オリゴマーの合成>
本願第1の発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーにおける疎水性オリゴマーは、下記化学式5A又は5Bで表されるモノマーを各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類と反応させた後、化学式6A、6B、6Cで表される化合物を反応させることによって合成することができる。
【0070】
【化13】
【0071】
各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類が過剰になるようにして、オリゴマーの末端基がOH基又はSH基となるようにすることが好ましい。オリゴマーの重合度は、化学式5A又は5Bのモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類とのモル比で調整することができる。
【0072】
化学式5A又は5Bのモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類とは、公知の任意の方法で反応させることができるが、塩基性化合物の存在下で芳香族求核置換反応によって反応させることが好ましい。反応は、0〜350℃の範囲で行うことができるが、50〜250℃の範囲で行うことが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ビスフェノール類や芳香族ビスチオフェノール類を活性なフェノキシド構造やチオフェノキシド構造になしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。副生物として生成する水は、トルエンなどの共沸溶媒と溜去して系外に除去したり、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用したり、重合溶媒と共に溜去したりすることで除去することができる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として1〜20重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましく、5〜15重量%の範囲であることがより好ましい。1重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、20重量%よりも多い場合には、ポリマー構造によって析出して反応が停止する場合がある。
【0073】
化学式5A又は5Bのモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類とを反応させた後で、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類由来の末端基に、上記化学式6A又は6Bの化合物を反応させる。反応は、化学式5A又は5Bのモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類との反応物を一旦単離してから行ってもよいし、反応溶液をそのまま用いてもよいが、簡便性の面から反応溶液をそのまま用いることが好ましい。その際に、反応で副生した無機塩などは、デカンテーションや濾過によって除いておいてもよい。
【0074】
各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類由来の末端基に、上記化学式6A又は6Bの化合物を反応させる場合には、上記化学式6A又は6Bの化合物を過剰にして反応させることが好ましい。さらに好ましくは、過剰の上記化学式6A又は6Bの化合物を含む溶液中に、化学式5A又は5Bのモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類との反応物を少量ずつ加え反応させていくことが好ましい。一度に大量に加えたり、上記化学式6A又は6Bが不足していたりすると、反応溶液がゲル化する場合がある。反応に用いる溶媒は、各成分が溶解する溶媒であればよいが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒などを好ましい例として挙げることができるがこれらに限定されるものではない。各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類との反応物は、空気中の二酸化炭素と接触すると、末端基がフェノキシド構造又はチオフェノキシド構造から、フェノール構造又はチオフェノール構造に変換され、反応性が低下してしまうので、空気との接触を避けることが好ましい。単離する場合には、フェノール又はチオフェノール末端の1〜5モル倍量の炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどを加えることが好ましい。反応温度は50〜150℃の範囲が好ましく、70〜130℃の範囲がより好ましい。
【0075】
疎水性オリゴマーの溶液から、副生成物である無機塩や過剰の化学式6A又は6Bの化合物を除く方法は、オリゴマーの非溶媒への滴下と洗浄など、公知の任意の方法を用いることができる。オリゴマーの非溶媒としては、水や、任意の有機溶媒を選択することができる。無機塩の除去には水が好ましい。化学式6A又は6Bの化合物の除去には有機溶媒が好ましい。水と有機溶媒の両方で洗浄することが好ましいが、最初に滴下する対象としては水と有機溶媒のいずれでもよい。合成や精製の際に用いた有機溶媒は、できるだけ除去しておくことが好ましい。有機溶媒の除去は、乾燥によって行うことが好ましく、10〜150℃の範囲の温度で減圧乾燥することがより好ましい。
【0076】
非溶媒の有機溶媒は、任意の有機溶媒から選択することができるが、反応に用いた非プロトン性極性溶媒と混和するものであることが好ましい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノノなどのケトン系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒などを例としてあげることができるが、これらに限定されるものではなく、他にも適したものを用いることができる。
【0077】
<セグメント化ブロック共重合ポリマーの合成>
セグメント化ブロック共重合ポリマーは、上記のようにして合成した、疎水性オリゴマーと親水性オリゴマーを反応させることにより得ることができる。疎水性オリゴマー及び親水性オリゴマーは、それぞれ独立して構造、分子量、分子量分布、及び末端基の異なるオリゴマーからなる群より選ばれる1種以上のオリゴマーを用いることができる。各オリゴマーの分子量は公知の任意の方法で求めることができるが、末端基を定量して数平均分子量を求めることが好ましい。末端基の定量は、滴定法、比色法、ラベル法、NMR法、元素分析など公知の任意の方法を用いることが可能であるが、NMR法が簡便で正確性に優れるため好ましく、H−NMR法がより好ましい。本発明のおける疎水性オリゴマーは、ベンゾニトリル構造を有することを特徴とするが、その構造ゆえに溶媒への溶解性が乏しい。よって、NMR測定の際に、適当な重水素化溶媒に溶解しない場合には、N−メチル−2−ピロリドンなど、疎水性オリゴマーが溶解する通常の溶媒に溶解した溶液に、重水素化ジメチルスルホキシドなどの重水素化溶媒を加えて測定することが好ましい。
【0078】
親水性オリゴマー中のスルホン酸基はアルカリ金属塩であることが好ましく、NaかKであるとより好ましい。スルホン酸基と塩を形成するイオンが複数の種類からなる場合は、前もって、元素分析で組成を分析しておくと、正確な分子量を求めることができる。いったん過剰の酸で処理した後、金属塩やアルカリ金属水酸化物で処理してもよい。親水性オリゴマーは、ブロックポリマー合成の直前に乾燥して吸着した水分を除去しておくことが好ましい。乾燥は100℃以上に加熱すればよいが、減圧乾燥するとなお好ましい。
【0079】
親水性オリゴマーと疎水性オリゴマーのモル比は0.9〜1.1の範囲であることが好ましく、0.95〜1.05の範囲であることがより好ましい。等モルにすると重合度が増大するが、大きくなりすぎるとその後の取扱いに支障をきたす場合があるので、適宜モル比によって調整することが好ましい。また、パーフルオロフェニル基を末端に有するオリゴマーは過剰にしておくことが好ましい。パーフルオロフェニル基を末端に有するオリゴマーのモル数が極端に少ないとゲル化反応が生じる場合があり、好ましくない。
【0080】
親水性オリゴマーと疎水性オリゴマーとの反応は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒中で、オリゴマーのフェノール又はチオフェノール末端の1〜5モル倍量の炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基性化合物の存在下、50〜150℃の範囲で反応させることによって行うことが好ましく、70〜130℃の範囲がより好ましい。重合度は、前記のようにオリゴマーのモル比で調整してもよいし、反応溶液の粘度などから終点を判断して、冷却や末端停止などによって重合を停止させてもよい。反応は窒素などの不活性ガス気流下で行うことが好ましい。反応溶液中の固形分濃度は、5〜50重量%の範囲にあればよいが、疎水性オリゴマーが溶解していないと反応性不良の原因となるため、5〜20重量%の範囲であることが好ましい。疎水性オリゴマーが溶解しているかどうかは、目視により透明であるかどうか、濁っているかいないかで判断することができる。
【0081】
反応溶液からのポリマーの単離と精製は公知の任意の方法で行うことができる。例えば、反応溶液を、水、アセトン、メタノールなどのポリマーの非溶媒に滴下することによってポリマーを固化させることができる。なかでも水が取扱いやすく、無機塩を除去できるため好ましい。また、オリゴマー成分や、親水性の高い成分を除去するために、60℃〜100℃の熱水や、水と有機溶媒(アセトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒)の混合溶媒などで洗浄することが好ましい。
【0082】
本願第1の発明のセグメント化ブロック共重合ポリマーの好ましい構造の例を以下に示すが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。下記式中、XはH又は1価の陽イオンを、n及びmは独立して、それぞれ2〜100の整数を、それぞれ表す。
【0083】
【化14】
【0084】
【化15】
【0085】
本願第2の発明は、特定のポリマー構造を有するスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーの製造法及びスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーの用途であるが、以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0086】
本願第2の発明におけるスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーは以下の製造法で得られる。
親水性オリゴマー、疎水性オリゴマーおよび鎖延長剤を反応させてブロック共重合体ポリマーを合成する方法において、疎水性オリゴマーが下記化学式7
【化16】
(化学式7)
(式中、Zはそれぞれ独立してO又はS原子のいずれかを、Arは2価の芳香族基を、nは2〜100の整数を、それぞれ表す。)
で表される構造を分子中に含んでおり、疎水性オリゴマーが下記化学式8
【化17】
(化学式8)
(式中、XはH又は1価の陽イオンを、Yはスルホニル基、又はカルボニル基を、ZはO
又はS原子のいずれかを、Ar2は、2価の芳香族基を、mは2〜100の整数を、それ
ぞれ表す。)
で表される構造を分子中に含むことを特徴とするブロック共重合ポリマーの製造方法である。
【0087】
プロトン交換膜として用いる場合にはXがHであるとプロトン伝導性が高くなるため好ましい。ポリマーを加工、成形する際には、XはNa、K、Liなど1価の金属イオンであると、ポリマーの安定性が高まり好ましい。またXはモノアミンなどの有機カチオンであってもよい。Yはスルホニル基であるとポリマーの溶媒への溶解性が高まる傾向にあり好ましい。Ar及びArはそれぞれ独立して、主として芳香族性の基から構成される公知の任意の2価の基であればよいが、好ましい例として下記化学式3A〜3Nで表される群より選ばれる2価の芳香族基を挙げることができる。
【0088】
【化18】
(式中、Rはメチル基を、pは0〜2の整数を、それぞれ表す。)
【0089】
pが1又は2であるポリマーは高分子量のポリマーを得ることが困難な場合があるので、pは0が好ましい。Ar及びArは、それぞれ独立して、上記化学式3A〜3Nの中でも、化学式3A、3C、3E、3F、3K、3M、3Nで表される構造がより好ましく、以下に示す化学式3A’、3F’で表される構造がさらに好ましく、化学式3A’で表される構造が加えて好ましい。さらに、Ar及びArのいずれもが化学式3A’で表される構造であることが最も好ましい。また、Ar及びArはそれぞれ独立して、上記化学式3A〜3Nで表される構造より選ばれる2種以上の構造からなっていてもよい。その場合、少なくとも下記化学式3A’の構造を有していることが好ましい。
【0090】
【化19】
【0091】
Z及びZ'の少なくともいずれかが、O原子であることが、原料の入手や合成の容易さ
から好ましい。いずれもがO原子であることがより好ましい。ただし、S原子であると耐酸化性が向上する場合がある。
【0092】
nは20〜70の範囲であると、膜の機械的特性が向上するため好ましい。20未満であると、膨潤性が大きくなりすぎたり耐久性が低下したりする場合がある。70を超えると、分子量の制御が困難になり、設計した構造のポリマーの合成が困難になる場合がある。nが30〜60の範囲であるとより好ましい。
【0093】
mが3以上25未満の範囲であると、メタノールを燃料とするダイレクトメタノール型燃料電池のプロトン交換膜に適した膜を得ることができるため好ましい。mは3〜20の範囲にあることがより好ましい。mが3未満であると、ランダム共重合ポリマーからなる膜と同程度の特性しか得られないため好ましくない。mが25以上であると、ダイレクトメタノール型燃料電池に適用できるポリマーを合成することが困難になるため好ましくない。ただし、合成が可能な場合ではmが25以上であっても支障はない。
【0094】
mが25以上70未満の範囲であると、水素を燃料とする燃料電池のプロトン交換膜に適した膜を得ることができるため好ましい。mは30〜60の範囲にあることがより好ましい。mが25未満であっても、水素を燃料とする燃料電池用のプロトン交換膜に用いるポリマーは合成可能であるが特性の充分な改善が望めない場合がある。mが70以上であると、水素を燃料とする燃料電池用のプロトン交換膜に用いるポリマーを合成することが困難になる場合がある。ただし、合成が可能な場合ではmが70以上であっても支障はない。
【0095】
本願第2の発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーの合成法では、反応中の副反応によるゲル化を防ぐために、鎖延長剤とオリゴマーを当モルで仕込むか、もしくは鎖延長剤をわずかに過剰にしておくことが好ましい。過剰の度合いは、オリゴマー分子量や目的とするポリマーの分子量によっても異なるが、0〜50モル%の範囲であることが好ましく、0〜10モル%の範囲であることがより好ましい。
【0096】
以下、本願第2の発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーの合成法について説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0097】
<親水性オリゴマーの合成>
本願第2の発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーにおける親水性オリゴマーは、下記化学式4で表されるスルホン化モノマーを各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類と反応させて合成することができる。また、下記化学式4で表されるスルホン化モノマーに加えて4,4‘−ジクロロジフェニルスルホンや2,6−ジクロロベンゾニトリルのようなジハロゲン化物を用いて各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類と反応させて合成しても良い。
【0098】
【化20】
【0099】
化学式4において、XはH又は1価の陽イオンを、Yはスルホン基又はカルボニル基を、Aはハロゲン元素をそれぞれ表す。XはNa又はKであることが、AはF又はClであることがそれぞれ好ましい。また、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類が過剰になるようにして、オリゴマーの末端基がOH基又はSH基となるようにすることが好ましい。オリゴマーの重合度は、化学式4のモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類とのモル比で調整することができる。
【0100】
化学式4のモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類とは、公知の任意の方法で反応させることができるが、塩基性化合物の存在下で芳香族求核置換反応によって反応させることが好ましい。反応は、0〜350℃の範囲で行うことができるが、50〜250℃の範囲で行うことが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ビスフェノール類や芳香族ビスチオフェノール類を活性なフェノキシド構造やチオフェノキシド構造になしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。副生物として生成する水は、トルエンなどの共沸溶媒と溜去して系外に除去したり、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用したり、重合溶媒と共に溜去したりすることで除去することができる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましく、20〜40重量%の範囲であることがより好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。
【0101】
親水性オリゴマーの溶液から、副生成物である無機塩を除く方法は、濾過や、遠心沈降後のデカンテーション、水に溶解しての透析、水に溶解しての塩析など、公知の任意の方法を用いることができ、濾過が製造効率、収率の面から好ましい。濾過や遠心沈降で塩を除去した場合は、親水性セグメントの非溶媒に溶液を滴下することでポリマーを回収することができる。また、透析の場合は蒸発乾固によって、塩析の場合は濾過によって、それぞれポリマーを回収することができる。単離した親水性オリゴマーは、非溶媒による洗浄や、再沈、透析などによって精製することが好ましく、洗浄が作業効率と精製効率の面から好ましい。合成や精製の際に用いた有機溶媒は、できるだけ除去しておくことが好ましい。有機溶媒の除去は、乾燥によって行うことが好ましく、10〜150℃の範囲の温度で減圧乾燥することがより好ましい。
【0102】
親水性オリゴマーの非溶媒は、任意の有機溶媒から選択することができるが、反応に用いた非プロトン性極性溶媒と混和するものであることが好ましい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノノなどのケトン系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒などを例としてあげることができるが、これらに限定されるものではなく、他にも適したものを用いることができる。
【0103】
<疎水性オリゴマーの合成>
本願第2の発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーにおける疎水性オリゴマーは、下記化学式5A又は5Bで表されるモノマーを各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類と反応させることによって合成することができる。
【0104】
【化21】
【0105】
各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類が過剰になるようにして、オリゴマーの末端基がOH基又はSH基となるようにすることが好ましい。オリゴマーの重合度は、化学式5A又は5Bのモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類とのモル比で調整することができる。
【0106】
化学式5A又は5Bのモノマーと、各種ビスフェノール類又は各種ビスチオフェノール類とは、公知の任意の方法で反応させることができるが、塩基性化合物の存在下で芳香族求核置換反応によって反応させることが好ましい。反応は、0〜350℃の範囲で行うことができるが、50〜250℃の範囲で行うことが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ビスフェノール類や芳香族ビスチオフェノール類を活性なフェノキシド構造やチオフェノキシド構造になしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。副生物として生成する水は、トルエンなどの共沸溶媒と溜去して系外に除去したり、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用したり、重合溶媒と共に溜去したりすることで除去することができる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として1〜25重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましく、5〜15重量%の範囲であることがより好ましい。1重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、25重量%よりも多い場合には、ポリマー構造によって析出して反応が停止する場合がある。
【0107】
疎水性オリゴマーの溶液から、副生成物である無機塩を除く方法は、オリゴマーの非溶媒への滴下と洗浄など、公知の任意の方法を用いることができる。オリゴマーの非溶媒としては、水や、任意の有機溶媒を選択することができる。無機塩の除去には水が好ましい。最初に滴下する対象としては水と有機溶媒のいずれでもよい。合成や精製の際に用いた有機溶媒は、できるだけ除去しておくことが好ましい。有機溶媒の除去は、乾燥によって行うことが好ましく、10〜150℃の範囲の温度で減圧乾燥することがより好ましい。
【0108】
非溶媒の有機溶媒は、任意の有機溶媒から選択することができるが、反応に用いた非プロトン性極性溶媒と混和するものであることが好ましい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノノなどのケトン系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒などを例としてあげることができるが、これらに限定されるものではなく、他にも適したものを用いることができる。
【0109】
<セグメント化ブロック共重合ポリマーの合成>
セグメント化ブロック共重合ポリマーは、上記のようにして合成した疎水性オリゴマーと親水性オリゴマーを鎖延長剤と反応させることにより得ることができる。疎水性オリゴマー及び親水性オリゴマーは、それぞれ独立して構造、分子量、及び分子量分布の異なるオリゴマーからなる群より選ばれる1種以上のオリゴマーを用いることができる。各オリゴマーの分子量は公知の任意の方法で求めることができるが、末端基を定量して数平均分子量を求めることが好ましい。末端基の定量は、滴定法、比色法、ラベル法、NMR法、元素分析など公知の任意の方法を用いることが可能であるが、NMR法が簡便で正確性に優れるため好ましく、H−NMR法がより好ましい。本発明のおける疎水性オリゴマーは、ベンゾニトリル構造を有することを特徴とするが、その構造ゆえに溶媒への溶解性が乏しい。よって、NMR測定の際に、適当な重水素化溶媒に溶解しない場合には、N−メチル−2−ピロリドンなど、疎水性オリゴマーが溶解する通常の溶媒に溶解した溶液に、重水素化ジメチルスルホキシドなどの重水素化溶媒を加えて測定することが好ましい。
【0110】
親水性オリゴマー中のスルホン酸基はアルカリ金属塩であることが好ましく、NaかKであるとより好ましい。スルホン酸基と塩を形成するイオンが複数の種類からなる場合は、前もって、元素分析で組成を分析しておくと、正確な分子量を求めることができる。いったん過剰の酸で処理した後、金属塩やアルカリ金属水酸化物で処理してもよい。親水性オリゴマーは、ブロックポリマー合成の直前に乾燥して吸着した水分を除去しておくことが好ましい。乾燥は100℃以上に加熱すればよいが、減圧乾燥するとなお好ましい。
【0111】
次に本願第2の発明における、(16)、(17)に関して以下説明する。
(16)芳香族系鎖延長剤のハロゲンがフッ素であることを特徴とする(13)〜(15)に記載のブロック共重合体ポリマーの合成法。
(17)芳香族系鎖延長剤がパーフルオロ化合物(ただし、シアノ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボニル基からなる群より選ばれる基を含んでいてもよい)であることを特徴とする(16)に記載のブロック共重合体ポリマーの合成法。
用いる鎖延長剤としては、ハロゲンがフッ素であると、反応性が高くセグメント長の低下などの副反応を抑制できるので、ハロゲンがフッ素である芳香族系鎖延長剤が好ましい。さらに、ハロゲンがフッ素である芳香族系鎖延長剤は、1分子中に3個以上のフッ素原子を有していることが好ましく、2個以上のフッ素原子が隣接していることがより好ましく、パーフルオロ化合物であると、より反応性が高いため好ましい。ハロゲンがフッ素である芳香族系鎖延長剤は電子吸引性を置換基として有していてもよく、電子吸引性基はフッ素原子に対してオルト位、又はパラ位であると好ましい。電子吸引性基の例としては、シアノ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボニル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ハロゲンがフッ素である芳香族系鎖延長剤の好ましい例としては、単数の芳香族環(電子吸引性基を置換基として有していてもよい)、あるいは複数の芳香族基が電子吸引性基で連結された芳香族環が、パーフルオロ化された化合物を挙げることができ、より具体的には、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル、デカフルオロベンゾフェノン、デカフルオロジフェニルスルホン、ペンタフルオロベンゾニトリルのいずれか、またはこれらの混合物を挙げることができる。また、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル、デカフルオロベンゾフェノン、デカフルオロジフェニルスルホン、ペンタフルオロベンゾニトリルなどの化合物において、フッ素原子の一部が、置換された化合物も、上記の要件を満たす範囲で用いることができる。フッ素原子を置換するものとしては、水素原子や、塩素、臭素、ヨウ素などの他のハロゲン原子、フェノキシ基、フェニル基、メチル基などの炭化水素基などが例として挙げられる、これらに限定されるものではない。
【0112】
親水性オリゴマーと疎水性オリゴマーと鎖延長剤の反応は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒中で、オリゴマーのフェノール又はチオフェノール末端の1〜5モル倍量の炭酸カリウム、炭酸カリウムなどの塩基性化合物の存在下、50〜160℃の範囲で反応させることによって行うことが好ましく、70〜130℃の範囲がより好ましい。重合度は、前記のようにオリゴマーのモル比で調整してもよいし、親水、疎水の含有量もオリゴマーのモル比で調整してもよい。反応溶液の粘度などから終点を判断して、冷却や末端停止などによって重合を停止させてもよい。反応は窒素などの不活性ガス気流下で行うことが好ましい。反応溶液中の固形分濃度は、1〜25重量%の範囲にあればよいが、反応性と疎水性オリゴマーの溶解性が悪いことを考慮すると、5〜20重量%の範囲であることが好ましい。さらに最も好ましくは8〜15重量%の範囲である。ここでの固形分濃度とは溶液中のポリマー濃度のことである。疎水性オリゴマーが溶解しているかどうかは、目視により透明であるかどうか、濁っているかいないかで判断することができる。
【0113】
セグメント化ブロックポリマーの重合は、各オリゴマーの重合溶液を、前記のような精製を行わずにそのままの状態で、もしくは無機塩などの副生成物を除去した状態で混合して行ってもよい。具体的には、オリゴマーの重合溶液からポリマーを単離・精製することなく、もしくは無機塩など副生成物のみを溶液から除去した状態で各オリゴマー重合溶液を混合し、鎖延長剤を添加して炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基性化合物の存在下、反応させることができる。重合は50〜160℃の範囲で反応させることによって行うことが好ましく、70〜130℃の範囲がより好ましい。重合度は、オリゴマーのモル比で調整してもよいし、親水、疎水の含有量もオリゴマーのモル比で調整してもよい。反応溶液の粘度などから終点を判断して、冷却や末端停止などによって重合を停止させてもよい。反応は窒素などの不活性ガス気流下で行うことが好ましい。反応溶液中の固形分濃度は、1〜25重量%の範囲にあればよいが、反応性と疎水性オリゴマーの溶解性が悪いことを考慮すると、5〜20重量%の範囲であることが好ましい。さらに最も好ましくは8〜15重量%の範囲である。疎水性オリゴマーが析出していないかどうかは、目視により透明であるかどうか、濁っているかいないかで判断することができる。
【0114】
反応溶液からのポリマーの単離と精製は公知の任意の方法で行うことができる。例えば、反応溶液を、水、アセトン、メタノールなどのポリマーの非溶媒に滴下することによってポリマーを固化させることができる。なかでも水が取扱いやすく、無機塩を除去できるため好ましい。また、オリゴマー成分や、親水性の高い成分を除去するために、60℃〜100℃の熱水や、水と有機溶媒(アセトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒)の混合溶媒などで洗浄することが好ましい。
【0115】
本願第2の発明の合成法で合成されたセグメント化ブロック共重合ポリマーの好ましい構造の例を以下に示すが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。また、ポリマーにおいては親水セグメントおよび疎水セグメントが必ず交互に連結されている必要はない。下記式中、Arは前記に記載の鎖延長剤のいずれか、またはこれらの混合物を、XはH又は1価の陽イオンを、n及びmは独立して、それぞれ2〜100の整数を、それぞれ表す。
【0116】
【化22】
【0117】
【化23】
【0118】
本願第1、第2の発明におけるセグメント化ブロック共重合ポリマーのイオン交換容量は、0.5〜2.7meq/gにあることが好ましい。0.5meq/g以下ではプロトン伝導性が低くなりすぎるため好ましくない。2.7meq/g以上であると、膨潤が大きくなり耐久性が低下するため好ましくない。0.7〜2.0meq/gの範囲であると、プロトン伝導性や耐膨潤性などでより好ましい特性を有する。さらに0.7〜1.6meq/gの範囲であると、メタノール透過性が小さいので、ダイレクトメタノール型燃料電池用プロトン交換膜に特に適する。本発明のスルホン酸基含有ブロック共重合体ポリマー分子量を、0.5g/dLのN−メチル−2−ピロリドン溶液を30℃で測定したときの対数粘度で表すと、0.5以上であることが物理特性の面から好ましく、0.9以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。0.5未満であると物理特性が著しく低下するため好ましくない。対数粘度が5.0を超えるとポリマーを溶解した溶液の粘度が著しく高くなりすぎて取り扱いが困難になる恐れがある。
【0119】
本願第1、第2の発明におけるスルホン酸基含有ブロック共重合体ポリマーは他の物質や化合物を混合して組成物として用いることもできる。混合するものの例としては、繊維状物質、リンタングステン酸、リンモリブデン酸などのヘテロポリ酸や、低分子のスルホン酸やホスホン酸、リン酸誘導体などの酸性化合物、ケイ酸化合物、ジルコニウムリン酸などを挙げることができる。混合物の含有量は50質量%未満あることが好ましい。50質量%以上であると成形性の物理特性が損なわれるため好ましくない。混合する物質としては、繊維状物質が、膨潤性を抑制する上で好ましく、チタン酸カリウム繊維など無機の繊維状物質がより好ましい。
【0120】
さらに、他のポリマーと混合した組成物として使用することもできる。これらのポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの熱硬化性樹脂等を用いることができる。
【0121】
これら組成物として使用する場合には、本発明のスルホン酸基含有ブロック共重合体ポリマーは、組成物全体の50質量%以上100質量%未満含まれていることが好ましい。より好ましくは70質量%以上100質量%未満である。本発明のスルホン酸基含有ブロック共重合体ポリマーの含有量が組成物全体の50質量%未満の場合には、この組成物を含むプロトン交換膜のスルホン酸基濃度が低くなり良好なプロトン伝導性が得られない傾向にあり、また、スルホン酸基を含有するユニットが非連続相となり伝導するイオンの移動度が低下する傾向にある。なお、本発明の組成物は、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、などの各種添加剤を含んでいても良い。
【0122】
本願第1、第2の発明におけるスルホン酸基含有ブロック共重合体ポリマーは適当な溶媒に溶解した溶液を組成物として用いることができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホン、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどに溶解することが好ましい。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中の化合物濃度は0.1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜20重量%の範囲であることがより好ましく、5〜15重量%の範囲であることがさらに好ましい。溶液中の化合物濃度が0.1質量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50質量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。溶液に、前記した化合物などをさらに混合して使用してもよい。
【0123】
これらの本願第1、第2の発明におけるスルホン酸基含有ブロック共重合体ポリマー組成物中のポリマーのスルホン酸基は、酸でも陽イオンとの塩であってもよいが、スルホン酸基の安定性の面からは陽イオンとの塩であることが好ましい。塩である場合、成形後など必要に応じて酸処理することで、酸へ変換することができる。
【0124】
本願第1、第2の発明におけるスルホン酸基含有ブロック共重合体ポリマーおよびその組成物は、押し出し、紡糸、圧延またはキャストなど任意の方法で繊維やフィルムなどの成形体とすることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。
【0125】
溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。たとえば、加熱、減圧乾燥、化合物を溶解する溶媒と混和することができる化合物非溶媒への浸漬等によって、溶媒を除去し成形体を得ることができる。溶媒が、有機溶媒の場合には、加熱又は減圧乾燥によって溶媒を留去させることが好ましい。この際、必要に応じて他の化合物と複合された形で繊維状、フィルム状、ペレット状、プレート状、ロッド状、パイプ状、ボール状、ブロック状などの様々な形状に成形することもできる。溶解挙動が類似する化合物と組み合わせた場合には、良好な成形ができる点で好ましい。このようにして得られた成形体中のスルホン酸基は陽イオンとの塩の形のものを含んでいても良いが、必要に応じて酸処理することによりフリーのスルホン酸基に変換することもできる。
【0126】
本願第1、第2の発明におけるスルホン酸基含有ブロック共重合体ポリマーおよびその組成物からイオン伝導膜を作製することもできる。イオン伝導膜は、本発明のスルホン酸基含有共重合体ポリマーだけでなく、多孔質膜、不織布、フィブリル、紙などの支持体との複合膜であってもよい。得られたイオン伝導膜は、燃料電池用のプロトン交換膜として用いることができる。
【0127】
イオン伝導膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去してイオン伝導膜を得ることができる。溶媒の除去は、乾燥によることがイオン伝導膜の均一性からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜1000μmであることが好ましい。より好ましくは50〜500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとイオン伝導膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、1000μmよりも厚いと不均一なイオン伝導膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にしたりするなどして、溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。
【0128】
本願第1、第2の発明におけるプロトン交換膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、プロトン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には5〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることがさらに好ましく、20〜80μmであることが最も好ましい。プロトン交換膜の厚みが5μmより薄いとプロトン交換膜の取り扱いが困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、200μmよりも厚いとプロトン交換膜の電気抵抗値が高くなり燃料電池の発電性能が低下する傾向がある。プロトン交換膜として使用する場合、膜中のスルホン酸基は金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸処理によりフリーのスルホン酸に変換することもできる。この場合、硫酸、塩酸、等の水溶液中に加熱下又は加熱せずに得られた膜を浸漬処理することで行うことも効果的である。また、プロトン交換膜のプロトン伝導率は1.0×10−3S/cm以上であることが好ましい。プロトン伝導率が1.0×10−3S/cm以上である場合には、そのプロトン交換膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、1.0×10−3S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。より好ましくは、1.0×10−2〜1.0×10−0S/cmの範囲である。また、高い耐久性を達成するためには、膨潤性ができるだけ少ないことが好ましい。膨潤性が大きすぎると膜強度が低下するため、耐久性が低下することがあり、好ましくない。ただし、少なすぎると必要なプロトン伝導性が得られない場合があり、好ましくない。燃料電池のプロトン交換膜として用いる場合、膨潤性の好ましい範囲を80℃の熱水で処理した場合の値を例として示すと、吸水率(ポリマー乾燥重量に対して吸収した水の重量%)が20〜130重量%であることが好ましく、30〜110重量%であることがより好ましい、面積膨潤率(膨潤前の膜の面積に対する、膨潤による面積の増加量の割合)は、0〜20%の範囲にあることが好ましく、0〜15%の範囲にあるとより好ましい。膨潤性は、ポリマー中のスルホン酸基量、親水性セグメントの連鎖長、疎水性セグメントの連鎖長などによって調整することができる。スルホン酸基量を多くすると吸水性を大きくすることができ、親水性セグメントの連鎖長を大きくするとさらに吸水性を大きくすることができる。スルホン酸基量を少なくしたり、疎水性セグメントの連鎖長を大きくしたりすることによって、面積膨潤率を小さくすることができる。また、ポリマーから膜を製造する工程条件(乾燥温度、乾燥速度、溶液濃度、溶媒組成)によっても膜の膨潤性を制御することができる。
【0129】
相分離構造を形成させるためには、通常、上記のような方法で製膜するだけでよいが、相分離を促進する目的で、水などの非溶媒をポリマー溶液中に加えて製膜することもできる。
【0130】
また、上述した本発明のプロトン交換膜またはフィルム等を電極に設置することによって、本発明のプロトン交換膜またはフィルム等と電極との接合体を得ることができる。この接合体の作製方法としては、従来から公知の方法を用いて行うことができ、例えば、電極表面に接着剤を塗布しプロトン交換膜と電極とを接着する方法またはプロトン交換膜と電極とを加熱加圧する方法等がある。この中でも本発明のスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物およびその組成物を主成分とした接着剤を電極表面に塗布して接着する方法が好ましい。プロトン交換膜と電極との接着性が向上し、また、プロトン交換膜のプロトン伝導性を損なうことが少なくなると考えられるためである。
【0131】
上述したプロトン交換膜またはフィルム等と電極との接合体を用いて、燃料電池を作製することもできる。本発明のプロトン交換膜又はフィルム等は、耐熱性、加工性、プロトン伝導性に優れているため、高温での運転にも耐えることができ、作製が容易で、良好な出力を有する燃料電池を提供することができる。本発明のプロトン交換膜は、水素を燃料とする固体高分子形燃料電池(PEFC)の他にも、メタノール透過性が小さいため、メタノールを燃料とするメタノール直接型燃料電池(DMFC)にも適している。また、耐熱性やバリアー性に優れるため、メタノール、ガソリン、エーテルなどの炭化水素から改質器によって水素を取り出して用いるタイプの燃料電池にも適している。
【0132】
また、本願第1、第2の発明におけるスルホン酸基含有セグメント化ブロック共重合ポリマーは、燃料電池における電極の触媒のバインダーとしても用いることができる。従来のバインダーに比べて、高い耐久性と優れたプロトン伝導性によって、優れた電極を得ることができる。バインダーとして用いる場合には、適切な溶媒に溶解又は分散して用いることができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホン、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、及びこれらの有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができる。
【実施例】
【0133】
以下本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
【0134】
<溶液粘度>
ポリマー粉末を0.5g/dLの濃度でN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度(ln[ta/tb])/cで評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度を表す)。
【0135】
<イオン交換容量>
乾燥したプロトン交換膜100mgを、0.01NのNaOH水溶液50mlに浸漬し、25℃で一晩攪拌した。その後、0.05NのHCl水溶液で中和滴定した。中和滴定には、平沼産業(株)製、電位差滴定装置COMTITE−980を用いた。イオン交換当量は下記式で計算して求めた。
イオン交換容量[meq/g]=(10−滴定量[ml])/2
【0136】
<プロトン伝導性>
自作測定用プローブ(テフロン(登録商標)製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃95%RHの恒温・恒湿オーブン(株式会社ナガノ科学機械製作所、LH−20−01)中に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
【0137】
<NMR測定>
ポリマー(スルホン酸基はNaもしくはK塩)を溶媒に溶解し、VARIAN社製UNITY−500を用いてH−NMRは室温で、13C−NMRは70℃でそれぞれ測定を行った。溶媒にはN−メチル−2−ピロリドンと重ジメチルスルホキシドの混合溶媒(85/15 vol./vol.)を用いた。親水性セグメント及び疎水性セグメントをそれぞれ構成する親水性オリゴマー及び疎水性オリゴマーは、H−NMRスペクトルを測定し、末端基由来のピークと骨格部分のピークのそれぞれの積分比から、数平均分子量を求めた。例えば、下記の合成例1の疎水性オリゴマーAで例示すると、ビフェニル構造におけるエーテル結合のオルト位のプロトンのピークは、末端基由来(パーフルオロビフェニルに結合した箇所)のものは7.2ppmに検出され、骨格中のものは7.3ppmに検出されるので、これらのピークの積分比から数平均分子量を求めた。また、下記の合成例5の親水性オリゴマーAで例示すると、ビフェニル構造におけるエーテル結合のオルト位のプロトンのピークは、末端基由来(フェノール性水酸基のオルト位)のものは6.8ppmに、骨格中のものは7.3ppmに、それぞれ検出されるので、これらのピークの積分比から数平均分子量を求めた。また、ブロックポリマーについては、親水性セグメントと疎水性セグメントの組成比をH−NMRで、セグメント長の低下の有無の確認を13C−NMRで、それぞれ分析した。ブロックポリマーの合成において、副反応で各セグメントの分子量が低下した場合、セグメント間の交換反応に由来するピークが13C−NMRによって検出される。例えば、下記比較例1の構造のブロックポリマーでは、交換反応由来のピークは155.5ppm及び157.0ppmに現れたのに対して、ほぼ同様の構造の下記実施例1のブロックポリマーでは、それらのピークは痕跡程度で明確に確認できなかった。このようにして13C−NMRによって、各オリゴマー由来のセグメント連鎖長が保持されているかどうかを確認した。さらに、下記実施例に記載の他のブロックポリマーにおいても実施例1のブロックポリマーと同様に交換由来のピークを明確に確認できなかった。実施例19のブロックポリマーにおいては、はじめから交換由来のものと同じピーク示す構造を含むためはっきりと交換の確認ができていない。
【0138】
<膨潤性評価>
23℃50%RHの室内に1日放置しておいたプロトン交換膜を50mm四方に切り出した後、80℃の熱水に24時間浸漬した。浸漬後、膜の寸法及び重量をすばやく測定した。膜は120℃で3時間乾燥させ、乾燥重量を測定した。以下の式に従って、吸水率及び面積膨潤率を算出した。膜の寸法は特定の頂点に結合した直交する2辺の長さを測定した。
吸水率(%)={浸漬後の重量(g)−乾燥重量(g)}÷乾燥重量(g)×100
面積膨潤率(%)={浸漬後の辺の長さA(mm)×浸漬後の辺の長さB(mm)}÷{50×50}×100−100
【0139】
<メタノール透過性>
25℃の室内において、二つのガラス水槽を、サンプルを隔膜として連結し、片方の水槽に5Mのメタノール水溶液、もう片方に蒸留水をそれぞれ入れ、蒸留水を入れた側のメタノール濃度を適当な時間ごとに定量した。メタノールの定量はガスクロマトグラフィー法で行い、あらかじめ所定の濃度のメタノール溶液を注入したときのピーク面積から作成した検量線を用いてメタノール濃度を算出した。得られたメタノール濃度を経過時間に対してプロットしたときの傾きから、以下の式によりメタノール透過係数を求めた。
メタノール透過係数(mmol・m−1・sec−1)=プロットの傾き(mmol・sec−1)÷膜面積(m)×膜厚(m)
【0140】
得られたポリマーからのプロトン交換膜の作製に関して以下に記す。
【0141】
<プロトン交換膜の作製方法A>
ポリマー(スルホン酸基が塩型のもの)2.0gをN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)18mLに溶解し、アプリケーターを用いてガラス板上に500μmの厚みでキャストし、100℃で1時間、150℃で1時間加熱して乾燥した。その後、ガラス板を室温付近まで放冷し、膜ごと水につけて膜を剥離した。剥離した膜は純水に浸漬した後、1N硫酸に1時間浸漬して、スルホン酸基を酸型に変換し、純水で洗浄して遊離の硫酸を除き、風乾してプロトン交換膜を得た。
【0142】
<プロトン交換膜の作製方法B>
ポリマー(スルホン酸基が塩型のもの)20.0gをN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)180mLに溶解し、加圧濾過した後、厚み190μmのポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に400μmの厚みで連続的にキャストし、130℃で30分間加熱して乾燥して得られた膜をポリエチレンテレフタレート製のフィルムと共に巻き取った。得られた膜はポリエチレンテレフタレート製のフィルムに付着した状態で、連続的に純水に浸漬させた後、連続的に1mol/Lの硫酸水溶液に30分間浸漬させて、スルホン酸基を酸型に変換し、純水で洗浄して遊離の硫酸を除いた後、乾燥し、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムから剥離してプロトン交換膜を得た。
【0143】
本願第1の発明の、親水性及び疎水性オリゴマーの合成に関して以下に示す。
【0144】
<合成例1:疎水性オリゴマーA>
2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)49.97g(290.5mmol)、4,4’−ビフェノール(略号:BP)54.99g(295.3mmol)、炭酸カリウム46.94g(339.6mmol)、NMP750mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた1000mL枝付きフラスコに入れ、オイルバス中で攪拌しつつ窒素気流下で加熱した。トルエンとの共沸による脱水を140℃で行なった後、トルエンをすべて留去した。その後、200℃に昇温し、15時間加熱した。窒素導入管、攪拌翼、冷却還流管、温度計を取り付けた別の1000mL枝付きフラスコに、NMP200mLとパーフルオロビフェニル4.85gを入れ、窒素気流下、攪拌しながら、オイルバス中で110℃に加熱した。そこに、DCBNとBPの反応溶液を、滴下漏斗を用いて2時間かけて攪拌しながら投入し、投入完了後、さらに2時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、3000mLの純水に注ぎオリゴマーを固化させ、さらに純水で3回洗浄して、NMP及び無機塩を除去した。水洗したオリゴマーは、濾別した後、100℃で2時間乾燥させた後、室温まで冷却し、3000mLのアセトンで2回洗浄し、過剰のパーフルオロビフェニルを除去した。再びオリゴマーを濾別し、120℃で16時間減圧乾燥して疎水性オリゴマーAを得た。H−NMR測定による数平均分子量は13880だった。疎水性オリゴマーAの化学構造を以下に示す。
【0145】
【化24】
【0146】
<合成例2:疎水性オリゴマーB>
DCBN49.97g(290.5mmol)、BP54.99g(295.3mmol)、炭酸カリウム46.94g(339.6mmol)、NMP770mL、トルエン130mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた1000mL枝付きフラスコに入れ、オイルバス中で攪拌しつつ窒素気流下で加熱した。トルエンとの共沸による脱水を140℃で行なった後、トルエンをすべて留去した。その後、200℃に昇温し、15時間加熱した。窒素導入管、攪拌翼、冷却還流管、温度計を取り付けた別の1000mL枝付きフラスコに、NMP200mLとパーフルオロビフェニル8.09gを入れ、窒素気流下、攪拌しながら、オイルバス中で110℃に加熱した。そこに、DCBNとBPの反応溶液を、滴下漏斗を用いて2時間かけて攪拌しながら投入し、投入完了後、さらに3時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、3000mLのアセトンに注ぎオリゴマーを固化させた。細かい沈殿を含む上澄みは除去し、さらにアセトンで2回洗浄した後、純水で3回洗浄して、NMP及び無機塩を除去した。その後、オリゴマーを濾別し、120℃で16時間減圧乾燥して疎水性オリゴマーBを得た。H−NMR測定による数平均分子量は11260だった。疎水性オリゴマーBの化学構造を以下に示す。
【0147】
【化25】
【0148】
<合成例3:疎水性オリゴマーC>
パーフルオロビフェニル4.85gの代わりに、パーフルオロジフェニルスルホン5.78gを用いた他は合成例1と同様にして疎水性オリゴマーCを合成した。H−NMR測定による数平均分子量は14010であった。疎水性オリゴマーCの化学構造を以下に示す。
【0149】
【化26】
【0150】
<合成例4:疎水性オリゴマーD>
DCBN29.49g(171.5mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(略号:BFP)59.35g(176.5mmol)、炭酸カリウム28.06g(203.0mmol)、NMP700mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた1000mL枝付きフラスコに入れ、合成例1と同様の操作によって疎水性オリゴマーDを得た。H−NMR測定による数平均分子量は14250だった。疎水性オリゴマーDの化学構造を以下に示す。
【0151】
【化27】
【0152】
<合成例5:疎水性オリゴマーH>
DCBN49.97g(290.5mmol)、BP57.02g(306.2mmol)、炭酸カリウム46.55g(336.8mmol)、NMP770mL、トルエン130mLを窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた1000mL枝付きフラスコに入れ、オイルバス中で攪拌しつつ窒素気流下で加熱した。トルエンとの共沸による脱水を140℃で行なった後、トルエンをすべて留去した。その後、200℃に昇温し、15時間加熱した。窒素導入管、攪拌翼、冷却還流管、温度計を取り付けた別の1000mL枝付きフラスコに、NMP200mLとパーフルオロビフェニル30.09gを入れ、窒素気流下、攪拌しながら、オイルバス中で110℃に加熱した。そこに、DCBNとBPの反応溶液を、滴下漏斗を用いて2時間かけて攪拌しながら投入し、投入完了後、さらに3時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、3000mLのアセトンに注ぎオリゴマーを固化させた。細かい沈殿を含む上澄みは除去し、さらにアセトンで2回洗浄した後、純水で3回洗浄して、NMP及び無機塩を除去した。その後、オリゴマーを濾別し、120℃で16時間減圧乾燥して疎水性オリゴマーEを得た。H−NMR測定による数平均分子量は5810だった。疎水性オリゴマーHの化学構造を以下に示す。
【0153】
【化28】
【0154】
<合成例6:疎水性オリゴマーI>
パーフルオロビフェニル4.85gの代わりに、パーフルオロベンゾフェノン5.26gを用いた他は合成例1と同様にして疎水性オリゴマーIを合成した。H−NMR測定による数平均分子量は13050であった。疎水性オリゴマーIの化学構造を以下に示す。
【0155】
【化29】
【0156】
<合成例7:親水性オリゴマーA>
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ソーダ(略号:S−DCDPS)250.0g(508.9mmol)、BP97.04g(520.7mmol)、炭酸ナトリウム66.23g(624.9mmol)、NMP650mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、オイルバス中で攪拌しつつ窒素気流下で加熱した。トルエンとの共沸による脱水を140℃で行なった後、トルエンをすべて留去した。その後、200℃に昇温し、16時間加熱した。続いて、NMP500mLを投入し、攪拌しながら室温まで冷却した。得られた溶液を、25G2ガラスフィルターで吸引濾過したところ、黄色の透明な溶液が得られた。得られた溶液を3Lのアセトンに滴下してオリゴマーを固化させた。オリゴマーはさらにアセトンで3回洗浄した後、濾別して減圧乾燥し親水性オリゴマーAを得た。H−NMR測定による数平均分子量は25560であった。親水性オリゴマーAの化学構造を以下に示す。
【0157】
【化30】
【0158】
<合成例8:親水性オリゴマーB>
S−DCDPS250.0g(508.9mmol)、BP96.62g(518.5mmol)、炭酸ナトリウム65.95g(622.2mmol)、NMP650mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、合成例6と同様にして親水性オリゴマーBを得た。H−NMR測定による数平均分子量は31340であった。親水性オリゴマーBの化学構造を以下に示す。
【0159】
【化31】
【0160】
<合成例9:親水性オリゴマーC>
S−DCDPS250.0g(508.9mmol)、BP97.46g(523.0mmol)、炭酸ナトリウム66.52g(627.7mmol)、NMP650mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、合成例6と同様にして親水性オリゴマーCを得た。H−NMR測定による数平均分子量は20920であった。親水性オリゴマーCの化学構造を以下に示す。
【0161】
【化32】
【0162】
<合成例10:親水性オリゴマーD>
S−DCDPS250.0g(508.9mmol)、BFP175.09g(523.0mmol)、炭酸ナトリウム66.23g(624.9mmol)、NMP800mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、合成例6と同様にして親水性オリゴマーDを得た。H−NMR測定による数平均分子量は24380であった。親水性オリゴマーDの化学構造を以下に示す。
【0163】
【化33】
【0164】
<合成例11:親水性オリゴマーE>
4,4’−ジクロロベンゾフェノン−3,3−ジスルホン酸ナトリウム231.7g(508.9mmol)、BP97.04g(520.7mmol)、炭酸ナトリウム66.23g(624.9mmol)、NMP800mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、合成例6と同様にして親水性オリゴマーEを得た。H−NMR測定による数平均分子量は23530であった。親水性オリゴマーEの化学構造を以下に示す。
【0165】
【化34】
【0166】
<合成例12:親水性オリゴマーH>
S−DCDPS250.0g(508.9mmol)、BP106.18g(570.2mmol)、炭酸ナトリウム69.50g(655.8mmol)、NMP650mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、合成例6と同様にして親水性オリゴマーHを得た。H−NMR測定による数平均分子量は3890であった。親水性オリゴマーHの化学構造を以下に示す。
【0167】
【化35】
【0168】
<合成例13:親水性オリゴマーI>
S−DCDPS250.0g(508.9mmol)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン167.72g(523.5mmol)、炭酸ナトリウム63.80g(602.0mmol)、NMP650mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、合成例6と同様にして親水性オリゴマーIを得た。H−NMR測定による数平均分子量は24700であった。親水性オリゴマーIの化学構造を以下に示す。
【0169】
【化36】
【0170】
<実施例1>
親水性オリゴマーA 45.00g、疎水性オリゴマーA 24.61g、炭酸ナトリウム0.28g、NMP400mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた1000mL枝付きフラスコに入れ、窒素気流下50℃のオイルバス中で攪拌し溶解させた。その後、110℃まで加熱し、10時間反応させた。その後、室温まで冷却し、3Lの純水中に滴下してポリマーを固化させた。純水で3回洗浄した後、純水に浸漬したまま80℃で16時間処理し、その後で純水を除いて熱水洗浄を行った。その後、熱水洗浄をもう一度繰り返した。さらに水を除去したポリマーを、1000mLのイソプロパノールと500mLの水との混合溶媒に室温で16時間浸漬し、ポリマーを取り出し洗浄を行った。同じ操作をもう一度行った。その後、濾過でポリマーを濾別し、120℃で12時間減圧乾燥してスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーAを得た。ポリマーAの対数粘度は、2.1dL/gだった。得られたポリマーからプロトン交換膜の作製方法Aによってプロトン交換膜Aを得た。ポリマーAの化学構造を以下に示す。
【0171】
【化37】
【0172】
<実施例2>
親水性オリゴマーB 42.27g、疎水性オリゴマーA 18.72g、炭酸ナトリウム0.37g、NMP350mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーBを得た。ポリマーBの対数粘度は、2.6dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Bを得た。ポリマーBの化学構造は、mが52である他は、ポリマーAと同じである。
【0173】
<実施例3>
親水性オリゴマーA 42.27g、疎水性オリゴマーB 18.62g、炭酸ナトリウム0.46g、NMP350mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーCを得た。ポリマーCの対数粘度は、3.2dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Cを得た。ポリマーCの化学構造は、nが37である他は、ポリマーAと同じである。
【0174】
<実施例4>
親水性オリゴマーC 42.27g、疎水性オリゴマーB 22.75g、炭酸ナトリウム0.56g、NMP370mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーDを得た。ポリマーDの対数粘度は、2.5dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Dを得た。プロトン交換膜Dのメタノール透過係数は、0.016(mmol・m−1・sec−1)であった。ポリマーDの化学構造を以下に示す。
【0175】
【化38】
【0176】
<実施例5>
親水性オリゴマーD 42.27g、疎水性オリゴマーC 24.29g、炭酸ナトリウム0.48g、NMP380mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーEを得た。ポリマーEの対数粘度は、2.1dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Eを得た。ポリマーEの化学構造を以下に示す。
【0177】
【化39】
【0178】
<実施例6>
親水性オリゴマーA 43.00g、疎水性オリゴマーD 23.97g、炭酸ナトリウム0.47g、NMP380mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーFを得た。ポリマーFの対数粘度は、3.1dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Fを得た。ポリマーFの化学構造を以下に示す。
【0179】
【化40】
【0180】
<実施例7>
親水性オリゴマーE 39.58g、疎水性オリゴマーD 23.97g、炭酸ナトリウム0.47g、NMP380mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーMを得た。ポリマーMの対数粘度は、2.1dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Mを得た。ポリマーMの化学構造を以下に示す。
【0181】
【化41】
【0182】
<実施例8>
親水性オリゴマーH 22.00g、疎水性オリゴマーH 32.75g、炭酸ナトリウム1.56g、NMP390mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーKを得た。ポリマーKの対数粘度は、2.4dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Kを得た。プロトン交換膜Dのメタノール透過係数は、0.004(mmol・m−1・sec−1)であった。ポリマーKの化学構造は、mが7、nが18.5である他は、ポリマーAと同じである。
【0183】
<実施例9>
親水性オリゴマーI 25.00g、疎水性オリゴマーA 14.05g、炭酸ナトリウム0.28g、NMP270mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーLを得た。ポリマーLの対数粘度は、2.1dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Lを得た。ポリマーLの化学構造を以下に示す。
【0184】
【化42】
【0185】
<実施例10>
親水性オリゴマーA 37.15g、疎水性オリゴマーI 19.58g、炭酸ナトリウム0.50g、NMP340mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーNを得た。ポリマーNの対数粘度は、2.8dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Nを得た。ポリマーNの化学構造を以下に示す。
【0186】
【化43】
【0187】
<実施例11>
ポリマーAからプロトン交換膜の作製方法Bによってプロトン交換膜Oを得た。
【0188】
<比較例1>
用いる原料や仕込み量を変えた他は、上記合成例と同様にして、下記構造の疎水性オリゴマーE及び親水性オリゴマーFをそれぞれ合成した。
【0189】
【化44】
【0190】
親水性オリゴマーF 44.06g、疎水性オリゴマーE 23.89g、炭酸ナトリウム0.47g、NMP380mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーGを得た。ポリマーGの対数粘度は、1.5dL/gだった。得られたポリマーから、反応温度を160℃に、反応時間を60時間にした他は、実施例と同様の方法によってプロトン交換膜Gを得た。ポリマーGの化学構造を以下に示す。
【0191】
【化45】
【0192】
<比較例2>
用いる原料や仕込み量を変えた他は、上記合成例と同様にして、下記構造の疎水性オリゴマーFを合成した。
【0193】
【化46】
【0194】
親水性オリゴマーF 44.06g、疎水性オリゴマーF 25.38g、炭酸ナトリウム0.47g、NMP380mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーHを得た。ポリマーHの対数粘度は、2.5dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Hを得た。ポリマーHの化学構造を以下に示す。
【0195】
【化47】
【0196】
<比較例3>
用いる原料や仕込み量を変えた他は、上記合成例と同様にして、下記構造の親水性オリゴマーGを合成した。
【0197】
【化48】
【0198】
親水性オリゴマーG 42.74g、疎水性オリゴマーF 25.38g、炭酸ナトリウム0.47g、NMP380mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーIを得た。ポリマーIの対数粘度は、1.9dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Iを得た。ポリマーIの化学構造を以下に示す。
【0199】
【化49】
【0200】
<比較例4>
用いる原料や仕込み量を変えた他は、上記合成例と同様にして、下記構造の疎水性オリゴマーGを合成した。
【0201】
【化50】
【0202】
親水性オリゴマーF 44.06g、疎水性オリゴマーG 23.87g、炭酸ナトリウム0.47g、NMP380mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーJを得た。ポリマーJの対数粘度は、1.3dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Jを得た。ポリマーJの化学構造を以下に示す。
【0203】
【化51】
【0204】
実施例及び比較例で得られたプロトン交換膜の評価結果を表1及び表2に示す。
【0205】
【表1】
【0206】
【表2】
【0207】
<実施例12:繊維状フィラーの添加>
合成例1で得られたポリマーに対して、六チタン酸カリウム繊維(大塚化学株式会社製
商品名:ティスモN、平均繊維径 0.3〜0.6μm、平均繊維長10〜20μm)を5重量%加えたほかは、実施例1と同様にしてプロトン交換膜を得た。得られた膜のプロトン伝導性と吸水率は、実施例1と同等であったが、面積膨潤率は7%と小さくなり、膨潤性が改良されていた。
【0208】
<実施例13:実施例4で作製したプロトン交換膜Dのダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の発電評価>
Pt/Ru触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC61E54)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt/Ru触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1になるように加えた。次いで撹拌してアノード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、ガス拡散層となる東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が2mg/cmになるようにスクリーン印刷により塗布乾燥して、アノード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。また、Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC10V40E)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1となるように加え、撹拌してカソード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、撥水加工を施した東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1mg/cmとなるように塗布・乾燥して、カソード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。上記2種類の電極触媒層付きカーボンペーパーの間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により200℃、6MPaにて3分間加圧、加熱し膜電極接合体を作製した。この接合体をElectrochem社製評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込み、燃料電池発電試験機(株式会社東陽テクニカ製)を用いて発電試験を行った。発電は、セル温度70℃で、アノードに70℃に調整した1mol/Lのメタノール水溶液(1.5mL/min)を、カソードに70℃に調整した高純度空気ガス(80mL/min)を、それぞれ供給し、電流密度が0.2A/cmにおける出力電圧を測定したところ、0.29Vの出力電圧を示した。
【0209】
<比較例5:市販のプロトン交換膜のDMFC発電評価>
デュポン社製プロトン交換膜ナフィオン(商品名)117を用い、プレス温度を150℃にした他は、実施例13と同様にして発電評価を行った。ナフィオン(商品名)117のメタノール透過係数は、0.69(mmol・m−1・sec−1)であった。電流密度が0.2A/cmにおける出力電圧を測定したところ、出力電圧は0.19Vしかなく、実施例12に比べ劣るものであった。
【0210】
<実施例14:実施例1のプロトン交換膜を用いた水素を燃料とする燃料電池(PEFC)の発電評価>
デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液に、市販の40%Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社 燃料電池用触媒 TEC10V40E)と、少量の超純水及びイソプロパノールを加えた後、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が0.5mg/cmになるように均一に塗布・乾燥して、電極触媒層付きガス拡散層を作製した。上記の電極触媒層付きガス拡散層の間に、高分子電解質膜を、電極触媒層が膜に接するように挟み、ホットプレス法により200℃、8MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度80℃で、アノード及びカソードにそれぞれ75℃で加湿した水素と空気を供給して発電特性を評価した。開始直後における電流密度が0.5A/cmにおける出力電圧を初期出力とした。また、耐久性評価として、1時間に3回の割合で開回路電圧を測定しつつ上記の条件で2000時間を上限として連続運転を行った。開回路電圧が開始直後の値よりも10%以上低下したときの時間を耐久時間とした。実施例1のプロトン交換膜を用いたPEFC発電評価における初期電圧は0.71Vであり、連続運転では2000時間経過後も電圧低下は3%であった。
【0211】
<比較例6>
比較例2のプロトン交換膜を用いて実施例14と同様にPEFC発電評価を行ったところ1576時間で出力が10%低下しており、実施例14に比べ劣るものであった。
【0212】
本願第2の発明の、親水性及び疎水性オリゴマーの合成に関して以下に示す。
【0213】
<合成例14:疎水性オリゴマーJ>
2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)65.00g(376.8mmol)、4,4’−ビフェノール(略号:BP)71.62g(384.3mmol)、炭酸カリウム58.43g(422.8mmol)、NMP950mLを窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、オイルバス中で攪拌しつつ窒素気流下で加熱した。200℃に昇温し、4時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、3000mLの純水に注ぎオリゴマーを固化させ、さらに純水で3回洗浄して、NMP及び無機塩を除去した。水洗したオリゴマーは、濾別した後、120℃で16時間減圧乾燥して疎水性オリゴマーJを得た(化47)。H−NMR測定による数平均分子量は10572だった。
【0214】
【化52】
【0215】
<合成例15:疎水性オリゴマーK>
DCBN30.00g(173.9mmol)、BP32.87g(176.4mmol)、炭酸カリウム29.25g(211.7mmol)、NMP440mLを窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた1000mL枝付きフラスコに入れ、合成例14と同様の操作によって疎水性オリゴマーKを得た(化48)。H−NMR測定による数平均分子量は12169だった。
【0216】
【化53】
【0217】
<合成例16:疎水性オリゴマーL>
DCBN29.49g(171.5mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(略号:BFP)59.35g(176.5mmol)、炭酸カリウム28.06g(203.0mmol)、NMP700mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた1000mL枝付きフラスコに入れ、合成例14と同様の操作によって疎水性オリゴマーLを得た(化49)。H−NMR測定による数平均分子量は13620だった。
【0218】
【化54】
【0219】
<合成例17:親水性オリゴマーM>
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ソーダ(略号:S−DCDPS)200.0g(407.1mmol)、BP77.41g(415.4mmol)、炭酸カリウム63.2g(457.0mmol)、NMP720mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、オイルバス中で攪拌しつつ窒素気流下で加熱した。その後、200℃に昇温し、18時間加熱した。続いて、NMP300mLを投入し、攪拌しながら室温まで冷却した。得られた溶液を、25G2ガラスフィルターで吸引濾過し、得られた溶液を3Lのアセトンに滴下してオリゴマーを固化させた。オリゴマーはさらにアセトンで3回洗浄した後、濾別して減圧乾燥し親水性オリゴマーMを得た(化50)。H−NMR測定による数平均分子量は24361であった。
【0220】
【化55】
【0221】
<合成例18:親水性オリゴマーN>
S−DCDPS200.0g(407.1mmol)、BP77.7g(416.8mmol)、炭酸カリウム63.37g(458.5mmol)、NMP720mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、合成例17と同様にして親水性オリゴマーNを得た(化51)。H−NMR測定による数平均分子量は20920であった。
【0222】
【化56】
【0223】
<合成例19:親水性オリゴマーO>
S−DCDPS30.0g(61.1mmol)、BP17.96g(96.3mmol)、DCBN5.67(32.9mmol)、炭酸カリウム14.65g(106.0mmol)、NMP140mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた200mL枝付きフラスコに入れ、合成例17と同様にして親水性オリゴマーOを得た(化52)。H−NMR測定による数平均分子量は19898であった。
【0224】
【化57】
【0225】
<合成例20:親水性オリゴマーP>
S−DCDPS250.0g(508.9mmol)、BFP175.09g(523.0mmol)、炭酸ナトリウム66.23g(624.9mmol)、NMP800mL、トルエン150mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、合成例4と同様にして親水性オリゴマーPを得た(化53)。H−NMR測定による数平均分子量は24380であった。
【0226】
【化58】
【0227】
<実施例15>
親水性オリゴマーM 7.00g、疎水性オリゴマーJ 4.53g、NMP110mLを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた200mL枝付きフラスコに入れ、窒素気流下70℃のオイルバス中で攪拌し溶解させた。その後、デカフルオロビフェニル(DFB)0.24g、炭酸カリウム0.11gを加え、110℃まで加熱し、10時間反応させた。反応溶液の固形分濃度は10重量%とした。その後、室温まで冷却し、1Lの純水中に滴下してポリマーを固化させた。純水で3回洗浄した後、純水に浸漬したまま80℃で5時間処理した。さらに水を除去したポリマーを、1000mLのイソプロパノールと500mLの水との混合溶媒に室温で16時間浸漬し、ポリマーを取り出し洗浄を行った。同じ操作をもう一度行った。その後、濾過でポリマーを濾別し、120℃で12時間減圧乾燥してスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーKを得た(化54)。ポリマーKの対数粘度は、3.1dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Kを得た。
【0228】
【化59】
【0229】
<実施例16>
親水性オリゴマーM 7.00g、疎水性オリゴマーK 4.95g、炭酸カリウム0.12g、DFB0.27g、NMP110mLを用い、実施例1と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーLを得た(化55)。ポリマーLの対数粘度は、3.4dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Lを得た。ポリマーLの化学構造は、オリゴマーの重合度が異なる以外はポリマーKと同じである。
【0230】
【化60】
【0231】
<実施例17>
親水性オリゴマーN 7.00g、疎水性オリゴマーJ 4.5g、炭酸カリウム0.12g、DFB0.22g、NMP111mLを用い、実施例14と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーMを得た(化56)。ポリマーMの対数粘度は、2.9dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Mを得た。ポリマーMの化学構造は、オリゴマーの重合度が異なる以外はポリマーKと同じである。
【0232】
【化61】
【0233】
<実施例18>
親水性オリゴマーN 7.00g、疎水性オリゴマーK 4.47g、炭酸カリウム0.11g、DFB0.24g、NMP110mLを用い、実施例14と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーNを得た(化57)。ポリマーNの対数粘度は、2.7dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Nを得た。ポリマーNの化学構造は、オリゴマーの重合度が異なる以外はポリマーKと同じである。
【0234】
【化62】
【0235】
<実施例19>
親水性オリゴマーM 7.00g、疎水性オリゴマーJ 4.53g、炭酸カリウム0.11g、ヘキサフルオロベンゼン(HB)0.13g、 NMP110mLを用い、実施例14と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーOを得た(化58)。ポリマーEの対数粘度は、2.9dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Oを得た。ポリマーOの化学構造は、鎖延長剤としてHBを使用した以外はポリマーKと同じである。
【0236】
【化63】
【0237】
<実施例20>
親水性オリゴマーO 7.00g、疎水性オリゴマーJ 4.47g、炭酸カリウム0.12g、DFB0.26g、NMP110mLを用い、実施例14と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーPを得た(化59)。ポリマーPの対数粘度は、3.4dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Pを得た。ポリマーPの化学構造は親水性セグメントにもベンゾニトリルの構造をランダム構造で含むものである。
【0238】
【化64】
【0239】
<実施例21>
親水性オリゴマーP 7.00g、疎水性オリゴマーL 4.91g、炭酸カリウム0.10g、DFB0.26g、NMP110mLを用い、実施例14と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーQを得た(化60)。ポリマーQの対数粘度は、2.5dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Qを得た。
【0240】
【化65】
【0241】
<実施例22>
合成例14と同様の仕込み比でNMPを317mlとなるように疎水性オリゴマーMを重合した。また、合成例17と同様の仕込み比でNMPを200mlとなるように親水性オリゴマーQを重合した。それぞれの重合溶液を混合し、1時間攪拌した。その後、DFB1.68gを加え、110℃に加熱し、10時間反応させた。精製は実施例14と同様にしてスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーRを得た(化61)。ポリマーRの対数粘度は、3.5dL/gだった。得られたポリマーから上記の方法によってプロトン交換膜Rを得た。
【0242】
【化66】
【0243】
<比較例7>
合成例14と同様にして、DCBNの仕込み量を過剰にすることでCl末端を有する疎水性オリゴマーMを合成した。疎水性オリゴマーM 数平均分子量14200。仕込み量を変えた以外は合成例17と同様の方法でOH末端を有する親水性オリゴマーQを合成した。親水性オリゴマーQ 数平均分子量24110。であった。
【0244】
【化67】
(疎水性オリゴマーM 数平均分子量14200)

(親水性オリゴマーQ 数平均分子量24110)
【0245】
親水性オリゴマーQ 44.06g、疎水性オリゴマーM 23.89g、炭酸カリウム0.47g、NMP380mLを用い、鎖延長剤を用いないこと以外は実施例14と同様にして、スルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーSを得た(化63)。ポリマーSの対数粘度は、1.5dL/gだった。得られたポリマーから、反応温度を160℃に、反応時間を60時間にした他は、実施例と同様の方法によってプロトン交換膜Sを得た。
【0246】
【化68】
【0247】
<比較例8>
用いるモノマーをDCBNから4,4‘−ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)にしたことと仕込みを変更した以外は合成例14と同様にして疎水性オリゴマーNを合成した(化64)。疎水性オリゴマーN 数平均分子量 13560であった。
【0248】
【化69】
【0249】
仕込み量と用いる疎水性オリゴマーをJからNに、親水性オリゴマーをMからQに変更した以外は実施例14と同様の方法でスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーTを得た(化65)。ポリマーTの対数粘度は2.3dL/gだった。得られたポリマーから実施例と同様の方法によってプロトン交換膜Tを得た。
【0250】
【化70】
実施例及び比較例で得られたプロトン交換膜の評価結果を表3に示す。
【0251】
【表3】
【0252】
<実施例23:実施例17のプロトン交換膜を用いた水素を燃料とする燃料電池(PEFC)の発電評価>
デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液に、市販の40%Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社 燃料電池用触媒 TEC10V40E)と、少量の超純水及びイソプロパノールを加えた後、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ社製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が0.5mg/cmになるように均一に塗布・乾燥して、電極触媒層付きガス拡散層を作製した。上記の電極触媒層付きガス拡散層の間に、高分子電解質膜を、電極触媒層が膜に接するように挟み、ホットプレス法により200℃、8MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度80℃で、アノード及びカソードにそれぞれ75℃で加湿した水素と空気を供給して発電特性を評価した。開始直後における電流密度が0.5A/cmにおける出力電圧を初期出力とした。また、耐久性評価として、1時間に3回の割合で開回路電圧を測定しつつ上記の条件で2000時間を上限として連続運転を行った。開回路電圧が開始直後の値よりも10%以上低下したときの時間を耐久時間とした。実施例16のプロトン交換膜を用いたPEFC発電評価における初期電圧は0.73Vであり、連続運転では2000時間経過後も電圧低下は4%であり、耐久時間は2000時間以上であった。
【0253】
<比較例9>
比較例7のプロトン交換膜を用いて実施例22と同様にPEFC発電評価を行ったところ1670時間で出力が10%低下しており、耐久時間は1670時間であり、実施例22に比べ劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0254】
以上より、本発明のプロトン交換膜は、構造の異なる比較例のプロトン交換膜と同等以上のプロトン伝導性を示すにもかかわらず、面積膨潤がより小さく、寸法安定性に優れたプロトン交換膜であることが分かる。これは、本発明のプロトン交換膜を構成するポリマーのベンゾニトリル構造に由来するものであると考えられる。本発明のスルホン酸基含有セグメント化ブロックポリマーは、高出力かつ高耐久性を示しうる燃料電池用プロトン交換膜として用いることができ、産業の発展に寄与するところ大である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6