(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS T3250(2005)により規定される透析液側接続部分の流体ポートに具備される栓体であって、前記最小内径寸法φD1が6mm〜12.4mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の栓体。
前記円筒壁部内面に、前記流体ポートの外周に形成されたJIS T3250(2005)により規定される凹溝に係合可能な凸部を3箇所以上有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の栓体。
【背景技術】
【0002】
従来より、水や体液、血液、その他の液体や、空気などの気体を処理するためのモジュールには、通常、処理液や被処理液を通すための流体ポートが1個以上備えられており、モジュール内に液体が充填されている場合、それらの流体ポートには内容液が漏れないよう栓体が被冠されているが、輸送時に栓体のずれや外れにより、流体ポートの閉塞状態を保つことができず、液漏れが生じる場合があった。
【0003】
これら問題を解決するため、特許文献1では流体ポートに凹部を、栓体側には同凹部に係合可能な凸部を設ける方法が提案されているが、凹部を設けた流体ポート以外では栓体のずれや外れ防止効果を得ることが出来ないばかりか、栓体に凸部を設けるための金型構造が複雑となり、成形トラブルの増大が懸念されるなどの課題が残されていた。
【0004】
また、前述のモジュールが医療用具である場合、滅菌時や保管時に流体ポートの閉塞状態を保つことができず、液漏れが生じる場合があった。
【0005】
これら問題を解決するため、特許文献2では、内容液を液密に保つ目的で、シール部に弾性体である熱可塑性エラストマーが使用され、これがプラスチック材料と一体となった栓体が提案されているが、流体ポートに被冠される栓体においては、打栓、抜栓を行った際に弾性体とプラスチックとの接着状態が保てず、剥離してしまう不具合があった。これら不具合を解決するため、特許文献3では、複数の円形状貫通部を介して弾性体とプラスチックを接着する方法が、特許文献4では、プラスチック側接着部に凹部あるいは凸部またはこれら両方を設ける方法が提案されているが、プラスチック部分を成形する金型構造が複雑となるため成形時の金型トラブルの増大が懸念されることや、金型を単純な無理抜き構造とした場合には寸法安定性に欠けることなどの課題が残されていた。また、特許文献4においては、打栓時に流体ポート先端がエラストマー樹脂製の栓体に当接すると考えられるが、エラストマー部は柔らかいため、打栓終了位置を適切に把握することができず、接着されたエラストマーとプラスチックが剥離するような過剰な力がエラストマー部に付加されるという難点が有った。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の最良の実施形態の例を中空糸膜を用いた血液浄化モジュール(以下、ダイアライザー)の透析液ポートに具備される栓体に基づき、図面を参照しながら説明する。
図1(a)は本実施の形態に係る栓体およびダイアライザーの透析液ポートを一部断面概略図として示すものであり、
図1(b)は、
図1(a)に示した栓体の接着部の拡大断面図である。中央に円形状貫通部4を有する頭部1と、頭部1から突出した円筒壁部2と、円筒壁部の内部空間の方向に突出したシール部3が円形状貫通部4において頭部1と嵌合一体化されてなる形状を有し、かつ頭部1とシール部3とが射出成形により2色一体化された栓体であり、シール部3は頭部内周の接着部5と射出成形時に接着される。
【0012】
頭部1や円筒壁部2を構成する材料としては、安価に製作できる点から熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などが好ましいが、これら材料に限られるものではない。
【0013】
また、シール部3を構成する材料としては、シール性をより高めることが出来る点から頭部1や円筒壁部2を構成する材料よりも硬度が低い弾性体が好ましい。かかる弾性体としては、ゴムやエラストマー樹脂を好適に用いることが出来るが、成形サイクルを短くできる点から射出成形により成形できる熱可塑性エラストマー樹脂が好ましい。熱可塑性エラストマー樹脂としては、オレフィン系、スチレン系、ポリ塩化ビニール系、ポリウレタン系、ポリエステル系、アミド系、ポリブタジエン系などが好ましいが、これらに限られるものではない。JIS K 6253(2006)に記載の方法で測定した弾性体の硬度は、栓体を取り付け取り外しする際の取り扱い性を考慮し90以下が好ましく、また、シール性を損なうような意図しない変形を防止するため30以上であることが好ましい。
【0014】
本実施の形態においては、透析液側接続部分の流体ポート(透析液ポート30)の形状は、JIS T 3250(2005)に定められているものであり、ポート先端部31の外径がφ14.9mmと定められている。栓体のシール部3は頭部1や円筒壁部2を構成する熱可塑性樹脂を射出成形後、熱可塑性エラストマー樹脂を射出成形することによって成形され、射出成形時において頭部と接着され、接着部5を形成する。射出成形の方法としては、熱可塑性樹脂を射出成形後、熱可塑性エラストマー樹脂を射出成形する際に、成形の都度、金型から完全に離型する方法と、熱可塑性樹脂を射出成形後、一部金型は離型せずに熱可塑性エラストマー樹脂を射出成形する方法があるが、樹脂の収縮等による成形性への影響などを考慮し、後者の方法が好ましく用いられる。円形状貫通部4のうち最も寸法が小さい内径寸法φD1(以下、最小内径寸法)とは、本発明においては、円形状貫通部の最下段の内径に等しいものであるが、シール部3の成形性を考慮し6mm以上であることが好ましく、一方で上限としては、打栓時にポート先端32と頭部1の内面が当接することで打栓終了位置を適切に把握することが出来、接着部5が剥離するような過剰な力がシール部に付加されないために、12.4mm以下であることが好ましく、12.0mm以下であることがより好ましい。他方、円形状貫通部4のうち最も寸法が大きい内径寸法φD2(以下、最大内径寸法)は特に制限されるものではなく、成形性や金型レイアウト等を考慮して自由に設計できる。
【0015】
接着部5の形状としては、接着面積を増やす目的で段差部6を有することが好ましい。段差部は1つでもよく、複数設けてもよい。熱可塑性樹脂と弾性体の材質組み合わせにより接着性が異なるため、段差部の寸法適正値も異なるが、式(1)で表される段差部の幅寸法A1と頭部1の肉厚寸法A2の比は、金型の加工精度や接着性の改善効果を考慮し、0.1以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましく、本発明に係る栓体を医療用具等に用いるとき、打栓時にポート先端32が頭部に当接した場合に段差部が容易に変形しないための強度や、成形性を考慮し、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。
【0016】
ここでいう段差部の幅寸法とは、各段における径方向の寸法であり、段が複数有って幅が各段において同一の場合、異なる場合ともに円形状貫通部4における最大内径寸法φD1と最小内径寸法φD2の差を2で除した数値として求められるものであり、下記式で表される。
【0017】
3.0≧A1/A2≧0.1 (1)
ここで、
φD1:円形状貫通部における最小内径寸法
φD2:円形状貫通部における最大内径寸法
A1=(φD2−φD1)/2
A2:頭部の肉厚寸法
なお、各々の寸法の測定の手段は校正されたノギス等であり、特に限定されるものではなく、測定においては任意の位置を選定して1点を測定すればよい。位置により寸法が変動する場合は、任意の3点を採りこの平均を採ればよい。
【0018】
ここで、上記段差部は、頭部方向に向けて内径が大きくなるように形成することが重要である。その理由のひとつは、本発明に係る栓体を医療用具等に用いるとき、打栓、抜栓を繰り返すことが考えられるが、このときポート先端32がシール部に当接して接着部5が剥離するような過剰な力がシール部に付加されないようにするためである。また、もうひとつの理由としては、頭部方向と反対側に向けて内径が大きくなる、すなわち頭部内面における円形状貫通部4の内径が最も大きい場合、打栓時にポート先端32と頭部1の内面が当接する部分がエラストマー等であるシール部となることが多いが、この場合、打栓終了位置を適切に把握することが出来ず、不十分かまたは過剰な状態で栓体が挿入されたものとなり得るからである。したがって、円形状貫通部4の最小内径寸法部φD1は頭部の内面に隣接して形成する必要があり、さらには、段差部は、金型構造が複雑となるスライド方式等を用いる必要が無く、金型を単純構造と出来、金型トラブルなどを抑制できることから、頭部方向に向けて内径が大きくなるように形成する必要がある。
【0019】
また、種々の制約から十分な接着性が得られるほどの接着面積を確保可能な段差部を設けられない場合は、頭部における接着部へのシボ加工等を組み合わせることで接着面積を増大することが出来、接着性を高めることが出来る。このとき、シボ加工は頭部における接着部全体について行っても良いし、成形性や成形品の離型性を考慮して頭部における接着部の一部のみについて加工しても良い。シボの形状についても特に制限されるものではなく、成形性や成形品の離型性を考慮して自由に選択可能である。
【0020】
このように、段差部を頭部方向に向けて内径が大きくなるように形成することで接着面積を増大させることが出来、かつ、成形時においても複雑な金型構造や無理な離型等が不要であるため、成形品の寸法安定性や金型トラブルの抑制といった面において効果的である。ここで、段差部については、1段以上あることが好ましく、一方で、5段を超えると金型形状が複雑となり成形トラブルが懸念されることから好ましくない。
【0021】
図8はシール部の形状を示す一部断面概略図である。栓体を透析液ポート30に装着した場合、シール部3は透析液ポート内に挿入され、透析液ポート内周面にシール部3が接することで、ダイアライザーの内容液が漏れないよう保持する。シール部には、漏れを防止するためにシール部の外周に円周方向に連続するシール凸部10が設けられており、取り扱い性を損なうことなく内容液のシール性を高める事が可能となることから好ましく用いられる。
【0022】
シール凸部は、シール部を構成する材質や、材質の硬度などを考慮し自由に設計できるが、シール部の垂直方向に少なくとも1箇所以上設けることが好ましく、摩擦抵抗の増加に伴い取り扱い性が悪化する事や、成形時に金型からの離型性が悪化することから5箇所以下が好ましい。シール凸部までの距離G1は、透析液ポートの形状を考慮し自由に設計できるが、透析液ポートに入り口テーパ部35が設けられている場合は、シール性をより高めることを目的に入り口テーパ部高さG3よりも0.1mm以上大きくすることが好ましい。シール凸部幅G2は、栓体のサイズのレベルにも依るが、シール性をより高められることから0.5mm以上であることが好ましく、摩擦抵抗の増加に伴い取り扱い性が悪化することや、成形時に金型からの離型性が悪化することから2.5mm以下が好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。このときシール凸部幅とは、透析液ポートに栓が適切に取り付けられた状態において、透析液ポート内側とシール凸部が接触している透析液ポート垂直方向の幅をいう。
【0023】
シール凸部を2箇所以上設ける場合、シール凸部それぞれの幅の合計は、シール性をより高められることから0.5mm以上であることが好ましく、摩擦抵抗の増加に伴い取り扱い性が悪化することや、成形時に金型からの離型性が悪化することから2.5mm以下が好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。
【0024】
式(4)で表されるシール凸部径φF1と透析液ポート内径φF2の差(B)は、シール部を構成する材質や、材質の硬度、シール凸部の形状などを考慮し自由に設計できるが、十分なシール性を得るために0.1mm以上大きくすることが好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましい。また、摩擦抵抗の増加に伴い取り扱い性が悪化することや、成形時に金型からの離型性が悪化することから1.2mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.8mm以下がさらに好ましい。ここでいう透析液ポート内径は、栓を適切に透析液ポートに取り付けた状態において、透析液ポート内側とシール凸部が接触している箇所の透析液ポート内径のことであり、シール凸部径と透析液ポート内径の差は次式で表される。
【0025】
φF1−φF2=B (4)
φF1:シール凸部径
φF2:透析液ポート内径
本実施の形態に係るシール凸部の形状は、成形時の金型トラブルを考慮し金型を単純構造とするため1箇所にのみ設けており、スライド方式等は用いず単一の金型部品のみで形成している。離型時にはシール凸部に金型の離型方向に力が加わり変形することが考えられるが、シール凸部を金型の離型方向になだらかにすることで成形品の離型性向上を図っている。
【0026】
このように弾性体の硬度や内容液のシール性、取り扱い性、成形性などを考慮し自由に設計することが出来る
円筒壁部2は透析液ポート30を包み込むように設けられており、ポートに触れることなく打栓、抜栓作業をすることが可能となり、菌の付着抑制効果に優れることから、好ましく用いられる。特に、シール部を構成する材料が前述エラストマー樹脂などの弾性体の場合は、シール部に手が触れることで変形し、適切にシールできないことが懸念されるため、これを防止できることから好ましい。また、円筒壁部の内周には、透析液ポート30の外周に形成されたJIS T3250(2005)により規定される凹溝33に係合可能な凸部7が設けられている。凸部は、栓外れを防止する観点から3箇所以上に設けることが好ましく、より好ましくは等間隔で3箇所以上に設けることが好ましい。凸部の形状は、上記凹溝に係合可能であればどのような形状であっても良く、本実施の形態に係る凸部の形状は、成形時の金型トラブルを考慮し金型を単純構造とするため、スライド方式等は用いず単一の金型部品のみで形成している。離型時には凸部に金型の離型方向に力が加わり変形することが考えられるが、凸部を金型の離型方向になだらかにすることで成形品の離型性向上を図っている。このように材質や成形性や金型のレイアウト等を考慮し自由に設計することが出来る。
【0027】
上述の通り、栓体を凹溝33で係合させる方法を用いることで、前述規格に準拠したポートであれば何れのポートにも係合させることが可能となり、ポート側に工夫を施すことなく広く用いることが出来る。
【0028】
図2はダイアライザーの透析液ポートに栓体が打栓される様子を示している一部断面概略図である。栓体を透析液ポートに取り付ける際、まず、透析液ポート30の先端テーパ部34に円筒壁部内周の凸部7が当接する。さらに栓体を押し込むと、凸部が先端テーパ部を乗り越える。このとき、栓体と透析液ポートとの水平度や同軸度がずれると栓体が傾くが、円筒壁部2の入り口に設けられている案内部8が打栓の妨げとなるような栓体の傾きを防止するため、継続して打栓することが可能となる。
【0029】
図3はダイアライザーの透析液ポートに円筒下部に円筒凸部を設けていない栓体が打栓される様子を示している一部断面概略図である。栓体を透析液ポートに取り付ける際、まず、透析液ポート30の先端テーパ部34に円筒壁部内周の凸部7が当接する。さらに栓体を押し込むと、凸部が先端テーパ部を乗り越えるが、このとき栓体と透析液ポートとの水平度や同軸度がずれると傾きが発生するため打栓することが困難である。
【0030】
しかしながら、上記したように、円筒壁部2の入り口に同壁部の突出方向と同一方向にさらに案内部8を突出させることで、打栓時に透析液ポートの先端テーパ部に円筒壁部内周の凸部が当接した際に、栓体の傾きを防止する効果が得られる。案内部は凸部ではない平坦な形状を有するものであるが、具体的な形状は特に規制されるものではなく、材質や成形性や金型のレイアウト等を考慮し自由に設計することが出来、円筒壁部の入り口全周に突出させても良いし、間欠に突出させても良い。
【0031】
図4は本実施の形態に係る案内部を間欠に突出させた例を図示するものである。案内部を間欠に突出させる場合、傾き防止効果を十分得るため、円筒壁部の入り口に凸部と同数以上突出させることが好ましく、少なくとも凸部と円周上同位置に突出させることがより好ましい。案内部と案内部との間の凹み部9の寸法は特に規定されるものではないが、打栓、抜栓作業時にポートに触れ、菌が付着することを考慮し5mm以下であることが好ましい。また、式(2)で表される案内部の樹脂厚み寸法J2と円筒凹み部寸法H2の比Wは、袋に無作為に梱包した状態等において栓体同士が円筒凹み部を介して咬合してしまうことを考慮し、0.95以下または1.2以上であることが好ましい。
【0032】
H2/J2=W (2)
また、本実施の形態において、円筒壁部の樹脂厚み寸法J1と案内部の樹脂厚み寸法J2は同一であるが、材質の曲げ弾性係数等の特性を考慮し、自由に設計することができる。
【0033】
案内部が軸方向に突出する高さの適正値は、円筒壁部内径により異なるが、十分な傾き防止効果を得るためには、2mm以上であることが好ましく、打栓、抜栓作業時にポートに触れ、菌が付着することを考慮し3mm以上であることがより好ましい。
【0034】
図5、
図9は本実施の形態に係る円筒壁部と案内部のその他の例を図示するものである。本実施形態のような円筒壁部の入り口全周に案内部を突出させた栓体でも、傾き防止効果と打栓、抜栓作業時にポートに触れ、菌が付着することを防止する効果を得ることが出来る。円筒壁部内径が異なると、案内部が突出する高さの適正値も異なるが、十分な傾き防止効果を得るためには、案内部が突出する高さは2mm以上であることが好ましく、打栓、抜栓作業時にポートに触れ、菌が付着することを考慮し3mm以上であることがより好ましい。本実施の形態においては、抜栓時に凸部7が透析液側ポートの外周に形成されたJIS T3250(2005)により規定される凹溝33を乗り越える際、案内部を設けなかった場合や、案内部を間欠に設けた場合に比較し円筒壁部2の変形が抑制されるため、打栓時の押し込み力や抜栓時の引き抜き力が高くなり、取り扱い難くなる。式(3)で表すことが出来る円筒壁部の樹脂厚み寸法J1に対する案内部の樹脂厚み寸法J2の比は、これら取り扱い性を考慮し0.9以下とすることが好ましい。
【0035】
J2/J1≦0.9 (3)
また、
図9の断面図のように、案内部に切り欠き部40を設けることも出来る。切り欠き部には接触部41が設けられており、栓体を回動させると接触部が透析液ポートに設けられた凸部や血液浄化モジュール本体に接触し、引き続き回動を続けると意図的に引き抜く方向への力を加えることなく栓体が透析液ポートの垂直方向に外れる方向に持ち上がり、より抜栓しやすくなることから好ましく用いられる。接触部と案内部先端の水平方向との間の角度である接触角度42は、より少ないトルクで抜栓出来ることから30°以下が好ましく、接触部が透析液ポートに設けられた、接触部に接触可能な凸部やリブ部、さらには血液浄化モジュール本体に接触した場合の変形をより少なくすることが出来ることから20°以下がより好ましく、15°以下がさらに好ましい。また、接触角度が大きいほど抜栓時の回動角度が少なく、回動角度が少ない方がより抜栓しやすいことから、接触角度は5°以上が好ましく、9°以上がより好ましく、13°以上がさらに好ましい。このとき接触角度は、円筒状に形成された案内部を平面上に展開した状態において測定した、接触部と案内部先端の水平方向との間の角度である。
【0036】
接触部は、本実施の形態のように、円周方向に一方向のみに設けても良いし、円周方向の両方向に設けても良い。円周方向の両方向に設ける場合、各方向の接触角度は同一としても良いし、異なる角度としても良く、抜栓時の取り扱い易さや円筒壁部を構成する材質の曲げ弾性係数等を考慮し自由に設計することが出来る。
【0037】
本実施の形態では、切り欠き部を案内部の円周方向に1箇所設けているが、2箇所以上であってもよく、円筒壁部を構成する材質の曲げ弾性係数や、案内部の樹脂厚み等を考慮して自由に設計することが出来る。切り欠き部を2箇所以上設ける場合には、打栓・抜栓作業時の操作性や成形トラブルを考慮し、案内部の円周方向に等間隔で設けることが好ましい。
【0038】
案内部の樹脂厚み寸法は、接触部が透析液ポートに設けられた、接触部に接触可能な凸部やリブ部、さらには血液浄化モジュール本体に接触した場合の変形をより少なくすることを目的に、接触部周辺の樹脂厚みを接触部周辺以外の案内部の樹脂厚みよりも厚くすることが好ましい。
図10は案内部を反頭部方向から見た概略図である。本実施の形態においては、式(4)で表すことが出来る案内部の樹脂厚み寸法J2に対する接触部の樹脂厚み寸法J3の比は、これら取り扱い性を考慮し1.1以上とすることが好ましい。
【0039】
J3/J2≧1.1 (4)
図6は本実施の形態に係る段差部のその他の例を図示するものである。このような形態においても、上述した理由から、頭部1の内面に隣接して円形状貫通部の最小内径寸法部φD1を形成する必要がある。すなわち、段差部は成形時の金型構造や成形性を考慮して頭部方向に向けて内径が大きくなるように形成する必要がある。ここで、段差部は成形時の金型構造や成形性を考慮して頭部の天面に向けて内径が大きくなるように設け、頭部の天面に隣接する位置に円形状貫通部の最大内径寸法部φD2を設ける必要がある。
【0040】
図7には本発明に係る実施の形態と異なる段差部の例を図示するが、これらの形態においては頭部1の内面に隣接する位置に円形状貫通部の最小内径寸法部φD1が設けられていない、または頭部の天面に隣接する位置に円形状貫通部の最大内径寸法部φD2が設けられていない例であり、また、頭部の内面から天面に向けて内径が大きくなるように段差部6が設けられていない例である。これらの形態においては、金型構造が複雑となることで成形時の金型トラブルの増大や、成形性の悪化が懸念されるため、好ましくない。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
以下、本発明に係る実施例を示す。
【0042】
栓体は、
図1に示す頭部と、頭部から突出した円筒壁部と、円形状貫通部において頭部と嵌合一体化されるシール部を有する形状であり、JIS T3250(2005)により規定される透析液側接続部分の流体ポートに具備される栓体であって、かつ前記円筒壁部の内部空間の方向に突出したシール部とが射出成形により2色一体化された栓体であり、シール部は頭部内周の接着部と射出成形時に接着される。頭部を構成する材料として曲げ弾性係数が820MPaのポリエチレンを用い、シール部を構成する材料としてJIS K 6253(2006)に記載の方法で測定した硬度が70であるスチレン系熱可塑性エラストマー(以下、エラストマー)を用いた。
頭部内周には、頭部の厚み方向に1段の段差が1つ設けられており、円形状貫通部の最小内径寸法部φD1をφ10.6mmとし、最大内径寸法φD2をφ12.4mmとし、A2=2mmとした。このときA1=0.9mmである。
【0043】
その結果、ポリエチレンとエラストマーとの接着面積は98.04mm
2であった。
[比較例1]
栓体の円形状貫通部の内周には段差を設けず、円形状貫通部の内径寸法をφ10.6mmとした以外は実施例と同様の形状とした。
【0044】
その結果、ポリエチレンとエラストマーの接着面積は66.6mm
2であった。
[剥離強度測定]
実施例、比較例の結果から実施例1では比較例1に比し1.6倍の接着強度があることが設計段階で確認できたため、実施例1の栓体を試作し、ポリエチレンとエラストマーの接着強度を測定した。接着強度測定は、先端径φ4mmの金属棒を使用し、10mm/秒の速度で栓体のシール部内面を頭部方向に押し込み、エラストマーがポリエチレンから剥離したときの力を測定した。このとき、剥離が発生する以前に金属棒がエラストマーを貫通した場合は、貫通したときの力を測定した。
【0045】
測定の結果、エラストマーの剥離は見られず、金属棒がエラストマーを貫通した。このときの力は54Nであり、十分な強度が得られていた。