(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の全体構成を説明するための概略ブロック図である。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置100は、ファイバレーザ装置110と、加工制御ユニット120と、測定ユニット130とを備える。
【0025】
ファイバレーザ装置110はパルスレーザ光(以下、単に「パルス光」とも呼ぶ)を出射する。加工制御ユニット120は、ファイバレーザ装置110をその外部から制御するためのユニットであり、ファイバレーザ装置110から出射されるパルス光の条件を制御するためのものである。
【0026】
ファイバレーザ装置110から出射されたパルス光はワーク150に照射される。これによりワーク150が加工されるとともにワーク150の特性が変化する。測定ユニット130は、ワーク150に関する特性値を測定して、その測定結果を加工制御ユニット120に送信する。
【0027】
加工制御ユニット120は、ファイバレーザ装置110に、レーザ光の条件に関するデータを予め送信する。後述するように、ファイバレーザ装置110は、レーザ光源と、レーザ光源を制御するための制御系とを含む。制御系は、加工制御ユニット120から送信されたデータを予め記憶する。レーザ光の条件は、ワーク150の加工条件に従って予め定義される。また、制御系は、レーザ光に関する複数の条件を記憶する。
【0028】
なお、本実施の形態では、レーザ光がワークの加工に用いられるので、以下の説明では「レーザ光に関する条件」を「加工条件」と呼ぶこともある。
【0029】
加工制御ユニット120は、ワーク150の1回の加工において、測定ユニット130の測定結果に基づいて、ファイバレーザ装置110から出射されるべきレーザ光の条件を、複数の条件の中から選択する。加工制御ユニット120は、ファイバレーザ装置110に、選択された条件を示す信号を送信する。ファイバレーザ装置110は、その信号に応じてレーザ光の条件を切換える。すなわちワーク150の1回の加工中に、ファイバレーザ装置110から出射されるレーザ光の条件が、加工制御ユニット120によって切換えられる。
【0030】
さらに加工制御ユニット120は、レーザ光の出射を制御するためのトリガ信号をファイバレーザ装置110に送る。トリガ信号は加工制御ユニット120から所定の周期で送信される。ファイバレーザ装置110はトリガ信号を受けるごとにパルス光を出射する。すなわちファイバレーザ装置110から出射されるパルス光の繰り返し周波数は、トリガ信号の繰り返し周波数に一致する。
【0031】
図2は、
図1に示したレーザ加工装置のインターフェースに関する構成を示す図である。
図2を参照して、ファイバレーザ装置110は、レーザ光を発生させるためのレーザ光源101と、レーザ光源101を制御するためのレーザ制御系102とを含む。加工制御ユニット120は、加工条件を設定するための条件設定ユニット121と、コントローラ122とを含む。条件設定ユニット121は、本発明の「条件設定部」に対応する。コントローラ122は、本発明の「出射制御部」に対応する。レーザ制御系は、本発明の「光源制御部」に対応する。
【0032】
条件設定ユニット121は、たとえばユーザの入力に基づいて複数の条件を予め設定する。さらに条件設定ユニット121は、各条件に対応するデータをコントローラ122およびレーザ制御系102に送信する。たとえば条件設定ユニット121は、パーソナルコンピュータによって実現される。また、条件設定ユニット121からレーザ制御系102にデータを転送するためのインターフェースとしては、たとえばRS232Cを適用することができる。
【0033】
図3は、条件設定ユニット121から送信されるデータの例を示す図である。
図3を参照して、データは、番号(RNo.)、パルス光のピークパワー、パルス幅およびパルス光の繰り返し周波数を含む。番号(RNo.)は、条件設定ユニット121によって設定された条件ごとに付与される。パルス光のピークパワー、パルス幅および繰り返し周波数は、各番号に対応付けられる。
【0034】
なお、データのフォーマットは特に限定されないが、たとえばASCIIフォーマットである。また、データは、
図3に示す項目だけでなく、さらに別の項目を含んでいてもよい。
【0035】
なお、条件設定ユニット121からレーザ制御系102に送信される加工条件データは、ピークパワーに関する条件を代表とする、パルス波形に関する条件を含むことが好ましい。これにより、レーザ光源101から出射されるパルス光の波形を制御することができる。なお、
図3では、パルス波形に関する条件として、代表的にピークパワーの条件が示される。また、条件設定ユニット121により設定された条件に従う波形の例については後述する。
【0036】
図2に戻り、コントローラ122およびレーザ制御系102は、レーザ光源101の動作時に各種の信号を伝送する。詳細に説明すると、コントローラ122は、測定ユニット130の測定結果を受ける。コントローラ122は、その測定結果に基づいて、レーザ光に関する条件(言い換えればワークの加工条件)の切換が必要か否かを判定する。条件の切換が必要と判定された場合、コントローラ122はレーザ制御系102に、条件切換信号を送信する。
【0037】
条件切換信号は、条件選択信号および確定信号によって構成される。条件選択信号は、加工条件のデータに含まれる番号(RNo.)を示す所定ビット数(たとえば5ビット)の信号である。確定信号は、加工条件の確定を示す信号である。
【0038】
レーザ制御系102は、条件切換信号を受信するとともに、その条件切換信号によって示される番号(RNo.)に基づいて、レーザ光の条件を現在の条件から新しい条件に切換える。そしてレーザ制御系102は、条件の切換えが完了したときに、切換完了信号をコントローラ122に送信する。
【0039】
コントローラ122は、レーザ制御系102から切換完了信号を受信した後に、トリガ信号trigをレーザ制御系102に送信する。レーザ制御系102はトリガ信号trigを受信すると、パルス光がレーザ光源101から発せられるように、レーザ光源101を制御する。そしてレーザ制御系102は、レーザ光源101からパルス光が出射されたタイミングで、パルス光の出射を示す信号sync_outをコントローラ122に送信する。
【0040】
図4は、コントローラ122の構成を説明するための機能ブロック図である。
図4を参照して、コントローラ122は、指令発生部201と、信号発生部202と、記憶部203とを含む。指令発生部201は、終了指令部211および切換指令部212を含む。信号発生部202は、切換信号発生部221と、トリガ信号発生部222とを含む。
【0041】
記憶部203は、条件設定ユニット121より送信されたデータ(
図3参照)を記憶する。
【0042】
終了指令部211および切換指令部212は、測定ユニット103による測定結果を受ける。終了指令部211は、その測定結果が所定の終了条件を満たす場合には、信号発生部202に、信号の発生を終了するための指令を送信する。切換指令部212は、測定ユニット103の測定結果が所定の切換条件を満たす場合には、加工条件を切換えるための指令を切換信号発生部221に送信する。
【0043】
切換信号発生部221は、切換指令部212からの指令に応じて切換信号を発生させる。切換信号により示される加工条件は、たとえば切換信号発生部221が切換指令部212から指令を受けた回数に基づいて設定される。
【0044】
トリガ信号発生部222は、切換指令部212からの切換信号によって示される加工条件のデータを記憶部203から読み出す。トリガ信号発生部222は、そのデータに基づいて、トリガ信号trigの周波数を設定する。トリガ信号発生部222は切換完了信号を受信すると、トリガ信号trigの出力を開始するとともに、信号sync_outを受信する。
【0045】
図5は、ファイバレーザ装置110の構成の一例を説明するための図である。なお、以下の説明における「LD」は半導体レーザを表わす。
【0046】
図5を参照して、ファイバレーザ装置110は、レーザ光源101と、レーザ光源101を制御するためのレーザ制御系102とを備える。
【0047】
レーザ光源101は、光増幅ファイバ1と、シードLD2と、アイソレータ4と、励起LD5と、結合器6と、アイソレータ7と、バンドパスフィルタ8と、励起LD9A〜9Dと、結合器10と、光増幅ファイバ11と、アイソレータ12と、エンドキャップ13とを含む。
【0048】
光増幅ファイバ1,11の各々は、光増幅成分である希土類元素が添加されたコア、およびそのコアの周囲に設けられるクラッドを有する。コアに添加される希土類元素の種類は特に限定されず、たとえばEr(エルビウム)、Yb(イッテルビウム)、Nd(ネオジム)などがある。以下では希土類元素はYbであるとして説明する。
【0049】
光増幅ファイバ1のコアに含まれる希土類元素が励起光を吸収することによって、その希土類元素が励起される。この状態においてシード光が光増幅ファイバ1のコアを伝播すると、励起された希土類元素による誘導放出が生じる。この誘導放出がシード光の光増幅として作用するためシード光が増幅される。
【0050】
シードLD2は、シード光を発する光源である。シードLD2は、レーザ制御系102の制御によりパルス発振して、パルス光をシード光として発する。なおシード光の波長は、たとえば1000〜1100nmの範囲から選択された波長である。
【0051】
シードLD2から出射されたシード光は、アイソレータ4を通過する。アイソレータ4は、シードLD2からのシード光を透過させるとともに光増幅ファイバ1からの戻り光を遮断する。これによって光増幅ファイバ1からの戻り光がシードLD2に入射するのを防ぐことができる。
【0052】
励起LD5は、光増幅ファイバ1のコアに添加された希土類元素を励起するための励起光を発する励起光源である。希土類元素がYbの場合、励起光の波長はたとえば940±10nmとなる。励起LD5は、レーザ制御系102の制御により励起光を発する。
【0053】
結合器6は、シードLD2からのシード光(パルス光)および励起LD5からの励起光を光増幅ファイバ1に入射させるために、そのシード光および励起光を結合する。シード光と励起光とが光増幅ファイバ1に入射されることにより、シード光すなわち光増幅ファイバ1に入射したパルス光が増幅される。
【0054】
アイソレータ7は、光増幅ファイバ1によって増幅されて光増幅ファイバ1から出射されたパルス光を通過させる。さらにアイソレータ7は、光増幅ファイバ1に戻る光を遮断する。
【0055】
バンドパスフィルタ8は、光増幅ファイバ1から出射されたパルス光のピーク波長を含む所定の波長帯の光を通過させるとともに、その波長帯と異なる波長帯の光を除去する。
【0056】
励起LD9A〜9Dの各々は、レーザ制御系102の制御により、光増幅ファイバ11のコアに含まれる希土類元素(Yb)を励起するための励起光を発する。なお、
図5では光増幅ファイバ11に対応して4個の励起LDが設けられているが、励起LDの個数は特に限定されるものではない。
【0057】
結合器10は、バンドパスフィルタ8を通過したパルス光と、励起LD9A〜9Dからの励起光とを光増幅ファイバ11に入射させるために、そのパルス光と励起光とを結合するためのものである。パルス光と励起光とが光増幅ファイバ11に入射されることにより、光増幅ファイバ11は、そのパルス光を増幅する。
【0058】
アイソレータ12は光増幅ファイバ11から出射されたパルス光を通過させるとともに、光増幅ファイバ11に戻る光を遮断する。エンドキャップ13は、ピークパワーの高いパルス光が光ファイバから大気中に出射される際に、光ファイバの端面と大気との境界面で生じるダメージを防止するために設けられる。
【0059】
レーザ制御系102は、駆動制御部20と、ドライバ22,23,24A〜24Dとを含む。
【0060】
駆動制御部20は、ドライバ22,23,24A〜24Dを統括的に制御することにより、レーザ光源101の動作を制御する。詳細には、駆動制御部20は、条件設定ユニット121(図示せず)から、レーザ光の複数の条件に関するデータを受けるとともに、そのデータを記憶する。駆動制御部20は、さらに、コントローラ122から切換信号を受けると、その切換信号によって示される条件(
図3に示す番号RNo.に対応)に従うパルス光をレーザ光源101から出射させるために、ドライバ22,23,24A〜24Dの駆動条件を設定する。
【0061】
具体的には、駆動制御部20は、シードLD2に供給される電流のピーク値および供給時間を設定するとともに、励起LD3、9A〜9Dに供給される電流のピーク値および供給時間を設定する。そして、駆動制御部20は、それらの設定が完了すると、切換完了信号をコントローラ122に送信する。
【0062】
駆動制御部20は、信号trigを受信すると、設定された駆動条件に従ってドライバ22,23,24A〜24Dを制御する。そして、レーザ光源101からパルス光の出射が完了すると、駆動制御部20は、信号sync_outを出力する。
【0063】
ドライバ22は、駆動制御部20の制御に従って、シードLD2に供給する駆動電流を変調させる。シードLD2に供給される駆動電流が変調されることにより、シードLD2から発せられるシード光の強度波形は、その駆動電流の波形を反映したものとなる。
【0064】
ドライバ22は、駆動制御部20の制御に従って、励起LD3に駆動電流を供給する。これにより励起LD3は励起光を発する。
【0065】
ドライバ24A〜24Dは、励起LD9A〜9Dの各々に対応して設けられる。各ドライバは、駆動制御部20の制御に従って、対応する励起LDに駆動電流を供給する。これにより励起LD9A〜9Dの各々は励起光を発する。
【0066】
なお、シードLD、励起LD、アイソレータ、バンドパスフィルタ等、ファイバレーザを構成する素子の特性は、温度に応じて変化し得る。したがって、これらの素子の温度を一定に保つための温度コントローラがレーザ制御系102に含まれていることが、より好ましい。
【0067】
次に、ワークの加工時におけるファイバレーザ装置110および加工制御ユニット120の動作についてより詳しく説明する。
図6は、レーザ制御系102、条件設定ユニット121およびコントローラ122の間における信号の伝送タイミングを示すタイミングチャートである。
【0068】
図6および
図2を参照して、まず、条件設定ユニット121にはワークの加工条件(すなわちパルス光の条件)がユーザにより入力される。加工条件に関するデータは、RS−232Cを介して条件設定ユニット121からレーザ制御系102に送信される。
【0069】
次に、加工が開始される。コントローラ122が条件A、条件B、条件Cの順に加工条件を選択する。コントローラ122は、加工条件を選択するたびに、条件選択信号および確定信号を送信する。確定信号が送信されたタイミングで加工条件が確定される。
【0070】
レーザ制御系102は、確定された加工条件に従って、レーザ光源101の駆動条件を設定する。レーザ制御系102は、駆動条件の設定が完了すると、切換完了信号をコントローラ122に送信する。
【0071】
コントローラ122は切換完了信号を受信すると、トリガ信号trigを送信する。レーザ制御系102は、トリガ信号trigを受信すると、レーザ光源101からパルス光を出射させるとともに、信号sync_outをコントローラ122に送信する。たとえば、信号sync_outは、パルス光がレーザ光源101から出射されたことをコントローラ122が把握するために用いられる。
【0072】
図7は、コントローラ122による処理を説明するフローチャートである。
図7および
図4を参照して、処理が開始されると、ステップS1において、コントローラ122は条件切換信号を送信する。ステップS2において、コントローラ122は、自身が切換完了信号を受信したか否かを判定する。
【0073】
コントローラ122が切換完了信号を受信していないと判定された場合(ステップS2においてNO)、コントローラ122が切換完了信号を受信したと判定されるまで、ステップS2の判定処理が繰り返される。コントローラ122が切換完了信号を受信したと判定された場合(ステップS2においてYES)、コントローラ122はトリガ信号trigを発生させる(ステップS3)。次にコントローラ122は、信号sync_outを受信する(ステップS4)。続いてコントローラ122は、測定ユニット103の測定結果を受信する(ステップS5)。
【0074】
コントローラ122は、測定ユニット103の測定結果が、加工条件を切換えるための条件(切換条件)を満たしているか否かを判定する(ステップS6)。たとえば、測定ユニット103の測定値が所定の切換目標値に達した場合には、切換条件が満たされたと判定される。測定ユニット103の測定結果がその切換条件を満たしていると判定された場合(ステップS6においてYES)、処理はステップS1に戻される。したがって、加工条件が切換えられる。一方、測定ユニット103の測定結果がその切換条件を満たしていないと判定された場合(ステップS6においてNO)、処理はステップS7に進む。
【0075】
ステップS7において、コントローラ122は、測定ユニット103の測定結果が、加工条件を終了するための条件(終了条件)を満たしているか否かを判定する。たとえば測定ユニット103の測定値が加工終了のための目標範囲内に含まれる場合に、終了条件が満たされたと判定される。測定ユニット103の測定結果がその終了条件を満たしていると判定された場合(ステップS7においてYES)、全体の処理は終了する。よって、加工が終了する。一方、測定ユニット103の測定結果がその終了条件を満たしていないと判定された場合(ステップS7においてNO)、処理はステップS3に戻される。したがって、現在の加工条件に従ってコントローラ122はトリガ信号trigを発生させる。
【0076】
なお、
図7に示す各ステップの処理と、
図4に示す機能ブロックとの対応を説明すると、ステップS1の処理は、切換信号発生部221により実行される。ステップS2〜S4の処理は、トリガ信号発生部222により実行される。ステップS5の処理は、終了指令部211および切換指令部212により実行される。ステップS6の処理は切換指令部212により実行される。ステップS7の処理は終了指令部211により実行される。
【0077】
図8は、本実施の形態に従うレーザ加工装置100による加工処理を説明するための図である。
図8を参照して、時刻taにおいて加工が開始される。まず、コントローラ122がレーザ制御系102に対して、特性値の時間変化率が大きい加工条件(1または複数の条件)を指示する。この条件に従ってワークが加工されることにより、特性値は初期値から大きく変化する。
【0078】
時刻tbにおいて、特性値が加工条件を切換えるための切換目標値に達する。切換目標値は、最終目標値の近傍の値(たとえば最終目標値の90%の値)に定められる。時刻tbにおいて、コントローラ122はレーザ制御系102に対して特性値の時間変化率が小さい加工条件(1または複数の条件)を指示する。この条件に従ってワークが加工されることにより、時刻tcにおいて特性値が最終目標値に達する。したがってワークの加工が終了する。
【0079】
このように本実施の形態では、まず、特性値の時間変化率が大きな加工条件に従ってワークが加工され、次に特性値の時間変化率が小さい加工条件に従ってワークが加工される。これにより加工時間(タクトタイム)の短縮化を図りつつ高精度の加工が可能になる。
【0080】
[パルス光波形について]
ワークの加工条件によっては、高パワーかつ持続時間(時間幅)の長いパルス光をレーザ光源101から出射することが必要になる場合がある。このためには、シード光のパルス幅を長くする必要がある。ドライバ22からシードLD2に供給されるパルス電流のパルス幅を長くすることによって、シード光のパルス幅を長くすることができる。
【0081】
しかしながら高パワーかつ広いパルス幅のパルス光が光ファイバを伝播した場合には、その光ファイバにおいて誘導ブリルアン散乱(stimulated Brillouin scattering;SBS)が生じる可能性が高くなる。これは、瞬間的に強い光がファイバ内で一定時間継続することによって、媒質の格子振動にエネルギが与えられて音波が発生し、屈折率の周期的な変化が発生するメカニズムから理解できる。
【0082】
光増幅ファイバ1あるいは11において誘導ブリルアン散乱が発生した場合には、レーザ光源101から出射されるレーザ光の波形が崩れ、レーザ出力が制限されるので、レーザ加工装置100の加工品質が低下する。さらに、誘導ブリルアン散乱により戻り光が発生する。この戻り光により、光学素子(たとえばシードLD2)を破損する可能性がある。
【0083】
このため、シードLD2が発するパルス光波形は、後段のファイバ増幅段の構成(コア径やファイバ長など)とピーク出力とで決まる誘導ブリルアン散乱の発生しきい値を超えないパルス幅や形状が求められる。
【0084】
形状が可変できるパルス波形は、実際のレーザ加工プロセスにおいて有効である。レーザパルスが加工する物質に吸収され熱に変化する過程において、熱伝達する時間のあいだ持続的にレーザパルスが照射される方が、目的とする加工品質が得られる場合が多々ある。このように、熱影響を少なくするためのピークパワーの高い短いパルスから比較的長いパルスまで、パルス幅が可変可能なレーザ装置は、加工対象物によって加工品質を選択的に制御することができる特徴がある。
【0085】
[誘導ブリルアン散乱について]
前述の広いパルス幅のパルスのファイバ増幅において制約となる誘導ブリルアン散乱が、設計上の課題となる他の例として波長変換がある。本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の光源に、例えば第2高調波(SHG)、第3高調波(THG)などの高ピーク出力パルス光源を用いる場合に、基本波を発生するファイバ増幅器に生じる制約条件(スペクトル幅と増幅度の関係)の例について以下に示す。
【0086】
一般的に、波長変換では、レーザ光のスペクトル幅が、用いる非線形光学結晶の有する許容幅以内にある必要がある。したがって、ファイバ増幅器は、特定の狭いスペクトル幅(0.1nmのオーダ)の光を伝播させるよう設計される。このとき課題となる誘導ブリルアン散乱も、前述の広いパルス幅のファイバ増幅と同様に、戻り光による部品損傷の原因となるため避けなければならない。
【0087】
まず、光ファイバ中の光強度が閾値より大きくなると、光ファイバの主成分(本実施の形態では石英)の振動により発生した音波と光との相互作用によって、非線形散乱が発生する。誘導ブリルアン散乱は、非線形散乱の一種であり、光ファイバ中の音響フォノンと光との総合作用によって生じる。
【0088】
誘導ブリルアン散乱の発生閾値は、限界レーザパワーとレーザ光のスペクトル幅とに依存する。「非線形ファイバー光学」(G.P.アグラワール著、小田垣 孝・山田 興一訳、吉岡書店)によれば、この閾値は以下のように説明される。
【0089】
まず、ブリルアン利得係数g
Bは以下の式(1)に従って表わされる。
【0091】
式(1)において、cは光速であり、λ
pはレーザ波長であり、ρoはファイバ材質の密度である。ν
Aは光ファイバ中の超音波の速度であり、Δν
Bはブリルアン利得スペクトル幅である。nはファイバの屈折率であり、p
12は縦方向の弾性光係数である。
【0092】
次に、ブリルアン利得スペクトルのピーク利得は、以下の式(2)に従って表わされる。
【0094】
最後に、ブリルアン散乱発生閾値は、以下の式(3)に従って表わされる。
【0096】
L
effは有効な相互作用長であり、A
effは実効断面積であり、Δλ
pはレーザ光のスペクトル幅であり、P
ocrは限界レーザピークパワーである。
【0097】
図9は、誘導ブリルアン散乱発生閾値に基づいた、パルス光のスペクトル幅と限界平均パワーとの関係を説明するための図である。
図9を参照して、3本の直線は、レーザスペクトル幅と光ファイバから出力可能な限界平均パワーとの関係を示す。この関係は、誘導ブリルアン散乱発生閾値に基づいて、計算により求められたものである。
【0098】
上記の計算では、ファイバ増幅器に入射されるパルス光の繰り返し周波数が100kHzとし、パルス幅(時間幅)を10nsとした。また、ファイバ増幅器に含まれるファイバ長を10mとした。3本の直線は、ファイバ増幅器のコア径をパラメータに用いることによって得られたものである。コア径は、10μm、15μm、および20μmに設定した。
【0099】
図9から、スペクトル幅が大きくなるほど、レーザの限界平均パワーが大きくなることがわかる。また、たとえば、コア径が15μmの光増幅ファイバから10W級のレーザ出力を得るためには、レーザ光のスペクトル幅が少なくとも50pm(0.05nm)でなければならないことがわかる。たとえば、レーザの限界平均パワーを10Wとすると、スペクトル幅は55pm(0.055nm)となる。本実施の形態では、誘導ブリルアン散乱の発生閾値に基づいて、光増幅ファイバに入射されるレーザ光のスペクトル幅の下限は誘導ブリルアン散乱を発生させないスペクトル幅として定められる。
【0100】
以上の例のように、ファイバレーザを用いて波長変換を行なう場合、レーザ光のスペクトル幅は、用いる非線形光学結晶の有する許容幅以内に制限する必要があるとともに、誘導ブリルアン散乱の防止の観点からスペクトル幅の下限を定める必要がある。さらに、誘導ブリルアン散乱を防止する観点から、ファイバレーザに入射されるパルス光の繰り返し周波数およびファイバレーザの出力の上限を考慮する必要がある。このためにファイバレーザを用いて波長変換を行なう場合には、スペクトル幅と、繰り返し周波数と、出力(増幅度)とに制約条件が生じる。
図5と同様の構成を有する、波長変換を目的としたファイバレーザでは、スペクトル幅についてはシードLDの部品仕様の選定によるため、自由に制御できるものではないが、あるスペクトル幅に設計されたレーザ構成においては、加工制御ユニットからの外部指令に対する繰り返し周波数、出力(増幅度)が制約条件内にあることを判断して動作させる必要がある。このため、コントローラ122は、レーザ光源101から出射されるレーザ光(パルス光)の繰り返し周波数を制御するためにトリガ信号の出力の周期を制御するが、さらに、各パルスの条件が、レーザ制御系102に予め記憶された、安定な動作領域の範囲内にあることを判断する機能を有することが好ましい。
【0101】
[ファイバレーザと固体レーザとの比較]
本実施の形態に係るレーザ加工装置100は、ファイバレーザを備えることによって、レーザ光の条件(パルス幅、周波数等)を高速に切換えることができる。この点についてファイバレーザと固体レーザとを比較しながら説明する。
【0102】
図10は、固体レーザの一般的な構成を説明するための図である。
図10を参照して、固体レーザ230は、レーザ媒質231と、励起光源232,233と、反射ミラー234と、出射ミラー235と、Qスイッチ236とを含む。レーザ媒質231は、たとえばNd:YAG結晶である。励起光源232,233は、レーザ媒質231を励起するための励起光をレーザ媒質231に照射する。Qスイッチ236は、図示しない制御装置によって周期的にオンオフする。Qスイッチ236のオンオフの周期、およびデューティ比を制御することにより、パルス光のピークパワー等が制御される。
【0103】
しかしながら、Qスイッチを用いた固体レーザは以下の課題を有する。まず、Qスイッチの原理上、パルス光の周波数と、そのパルス幅とを互いに独立に変更することができない。さらに、パルス光の波形を積極的に制御することが困難である。加えてレーザ媒質(結晶)の熱特性のため、パルス光のピークパワーを高速に切換えることも困難である。
【0104】
これに対して、ファイバレーザは、発振方式にMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式を用いている。MOPA方式とは、シード光源からのシード光をアンプにより増幅する方式である。本実施の形態では、シード光源として高速での変調が可能な半導体レーザ(LD)を利用するとともに、アンプとして光増幅ファイバを利用する。MOPA方式によって、高繰り返し時にも充分なピーク出力を得ることが可能になる。さらに、繰り返し周波数に関わらず最適な出力を得ることができる。
【0105】
本実施の形態による構成を用いてMOPA方式の特徴を具体的に説明すると、ドライバからシードLDに供給されるパルス電流を制御することによって、シードLDから発せられるパルスレーザ光の繰り返し周波数、ピークパワー、パルス幅等の各種パラメータを互いに独立に変更できる。そのパルスレーザ光が増幅されるので、結果的に、レーザ光源から出射される光の繰り返し周波数、ピークパワー、パルス幅等の各種パラメータを互いに独立に変更できる。
【0106】
図11は、Qスイッチ固体レーザのパルス特性とファイバレーザのパルス特性との対比図である。
図11を参照して、パルス光の条件はピークパワー、繰り返し周波数およびパルス幅であり、パルス光を発生させるための励起条件は、Qスイッチ固体レーザとファイバレーザとで同じであるとする。Qスイッチ固体レーザの場合には、繰り返し周波数が設定されると、パルス幅およびピークパワーが一意に確定する。このため、Qスイッチ固体レーザの場合、ピークパワー、繰り返し周波数およびパルス幅は、これらによって定まる3次元空間内のある線に沿って変化する。
【0107】
これに対してファイバレーザの場合には、周波数とパルス幅とを独立に変化させることができる。よってファイバレーザの場合には、ピークパワー、繰り返し周波数およびパルス幅は、上記3次元空間内のある領域内で変化する。したがってレーザ光の条件の設定に関する自由度は、ファイバレーザのほうがQスイッチ固体レーザよりも高い。
【0108】
ただし、光増幅ファイバをアンプとして用いる場合には、ASEあるいは非線形光学効果等の問題を考慮しなければならない。非線形光学効果としては、たとえば誘導ラマン散乱(Stimulated Raman Scattering;SRS)、あるいは上記の誘導ブリルアン散乱等の非線形散乱がある。このような散乱の発生を回避するために、ファイバレーザの動作領域が制限される。
【0109】
図12は、非線形光学効果を考慮したファイバレーザの動作領域を説明するための図である。
図12を参照して、グラフ中の2本の線の一方は、誘導ラマン散乱(SRS)の発生閾値に基づいた、パルスエネルギEpとパルス幅Δtとの関係を示す。他方の線は、誘導ブリルアン散乱(SRS)の発生閾値に基づく、パルスエネルギEpとパルス幅Δtとの関係を表している。なお、パルスエネルギEpは、パルス光の平均出力ΔPおよび繰り返し周波数fにより、E=ΔP/fと定められる。
【0110】
図12に示すように、上記2本の線によってファイバレーザの動作領域、すなわちパルスエネルギEpの範囲およびパルス幅Δtの範囲が制限される。このことは、ファイバレーザの動作領域が、パルス光の平均出力ΔP、繰り返し周波数fおよびパルス幅Δtによって制限されることを表している。
【0111】
上記のように、ファイバレーザは、その原理上、レーザ光の制御の自由度を高くすることができる。しかしながら多くの場合、ファイバレーザの動作領域は
図12に示すように制限される。したがって、非線形散乱を抑制しながら高精度の加工を実現しうる条件が存在しても、その条件が予め定められた動作領域内に含まれなければ、ファイバレーザをその条件に従って動作させることは不可能である。このため、ユーザの利便性が低下するという課題が発生する。
【0112】
本実施の形態によれば、パルス光の出射タイミングが、ファイバレーザの外部の制御装置によって制御される。これによりファイバレーザから出射されるパルス光の繰り返し周波数をファイバレーザの外部から制御することができる。さらに、パルス光のパルス幅およびピークパワーに関する条件は、ファイバレーザの外部からファイバレーザに予め与えられる。この結果、ファイバレーザから出射されるパルス光のピークパワーおよびパルス幅も所望の条件を満たすことができる。
【0113】
本実施の形態によれば、ファイバレーザの外部からファイバレーザに与えられた条件に従ってファイバレーザを動作させることが可能になる。したがって、ファイバレーザから出射されるレーザ光の条件の設定の自由度を高めることができる。
【0114】
レーザ光の条件の設定の自由度が高められることにより、加工条件を容易に変更することができる。さらに、最適な加工条件を見出すために必要な時間を短縮できる。よって、ユーザの利便性を高めることができる。
【0115】
さらに、本実施の形態によれば、レーザ光の条件に関する複数のパラメータを互いに独立に設定できるので、複数の加工条件を設定することができる。
【0116】
さらに、本実施の形態によれば、複数の加工条件は、レーザ制御系に予め記憶されるとともに、条件の切換えは、加工制御ユニットからレーザ制御系に、加工条件を示す番号を伝送することにより行なわれる。これにより、加工条件を高速で切換えることができる。
【0117】
さらに本実施の形態によれば、加工開始時点から終了時点の少し手前の時点(特性値が切換目標値に達する時点)までは、特性値が時間に対して大きく変化する加工条件が適用される。そして終了時点直前では特性値が時間に対して小さく変化する加工条件が適用される。本実施の形態によれば複数の加工条件を高速に切換えることが可能であるので、1回の加工時における加工速度を最大化することができるとともに、特性値を最終目標値に近づけることができる。これにより、タクトタイムを短縮化しつつ高精度の加工を行なうことができる。
【0118】
[レーザ加工装置の具体例]
本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置100は、ワークの特性の測定結果に基づいて加工条件を切換えることができるため、各種の加工用途に対応可能である。たとえば、穴あけ、溶接、切断、熱処理、形状加工等の各種の用途にレーザ加工装置100を適用することができる。以下では、レーザ加工装置100の1つの具体例としてレーザトリミング装置を説明する。
【0119】
レーザトリミングとは、抵抗体、コンデンサ、インダクタンス、配線等の電気・電子部品の一部または全部をレーザ光で切除したり、その部品の特性を変化させたりすることによって、電気的特性を所望の値に設定するレーザ加工である。
【0120】
以下に説明する例では、ワークとして、薄膜を有する抵抗体を示す。この抵抗体は、トリミング対象である薄膜の一部をレーザ光を用いて切除することにより、抵抗値の調整が可能な素子である。
【0121】
図13は、レーザトリミングの具体例を示す図である。
図13(a)は、レーザトリミングの第1のケースを示す。この例では、ワーク150上に、複数のトリミング対象151〜153が存在する。各トリミング対象の加工条件(トリミング条件)が異なるため、条件が高速で変更される。このようにトリミング対象ごとに条件を変更する例として、各トリミング対象151〜153の材料が異なる場合が挙げられる。トリミング対象151には、第1の条件に従う加工C1が行なわれ、トリミング対象152には、第2の条件に従う加工C2が行なわれ、トリミング対象153には、第3の条件に従う加工C3が行なわれる。
【0122】
図13(b)は、レーザトリミングの第2のケースを示す。この例では、トリミング対象154に対する1回のトリミング処理の中で、レーザ光の条件が高速に切換えられる。したがってトリミング対象154に、加工C1,C2,C3が順次実行される。
【0123】
測定ユニット130は、プローブ131と、測定器132とを含む。トリミング時にはトリミング対象にパルス光Lが照射される。さらに、そのトリミング対象の特性としての電気抵抗値が、プローブ131および測定器132によって測定される。測定器132の測定結果に基づいて加工条件、すなわちレーザ光源からのレーザ光(パルス光)の条件が変更される。
【0124】
レーザ光源がQスイッチ固体レーザの場合には、ワークの加工中に高速に切換え可能な加工パラメータは繰り返し周波数のみである。しかしながら繰り返し周波数を変更すると、他のパラメータ(ピークパワー、パルス幅)等も同時に変わる。一方、レーザ光源がファイバレーザの場合には、加工パラメータは、繰り返し周波数、ピークパワー、パルス幅および加工速度である。これらのパラメータは独立に設定可能である。よってファイバレーザの場合には、加工条件を任意に設定することが可能になる。
【0125】
図14は、Qスイッチ固体レーザおよびファイバレーザの加工パラメータの設定例を説明するための図である。
【0126】
図14(a)は、1回の加工における加工目標値(抵抗値)が1種類の場合におけるQスイッチ固体レーザの加工パラメータを説明する図である。加工目標値が1種類の場合には、周波数、パワーおよび加工速度を適切に設定することによって、加工精度およびタクトタイムの最適化を実現することができる。
【0127】
図14(b)は、1回の加工に複数の加工条件が必要な場合における、Qスイッチ固体レーザの加工パラメータを説明する図である。このような場合には、
図14(a)に示した最適条件は適用できない。たとえば低抵抗の条件を基準にすると、中間抵抗の周波数ではレーザ光のパワーがオーバーパワーとなるため加工精度は大きく低下する。したがって、各抵抗のバランスを考慮した条件の設定が必要となる。
【0128】
図14(c)は、1回の加工に複数の加工条件が必要な場合における、ファイバレーザの加工パラメータを説明する図である。ファイバレーザでは、繰り返し周波数、ピークパワー、パルス幅および加工速度が互いに独立した条件であるため、
図14(a)に示した各加工条件を高速で切換えながら、その条件に従う加工を実行することができる。よって、Qスイッチ固体レーザに比較して、加工精度およびタクトタイムの最適化を容易に実現できる。
【0129】
たとえば、
図13(a)に示す加工(第1のケース)の場合、Qスイッチ固体レーザによるトリミングでは平均的な条件に従ってトリミングが実行される。このためタクトタイムが長くなる可能性がある。一方、本実施の形態によれば、トリミング対象ごとに、その対象にとって最適な条件でトリミングが可能であるので、タクトタイムが長くなる可能性を小さくすることができる。
【0130】
また、
図13(b)に示す加工(第2のケース)の場合、トリミングを停止するタイミングを制御することで、加工精度を高くすることが可能になる。ここで、レーザ光の照射を急停止すると、その部分では、急激な温度変化に起因するクラックが発生する可能性がある。本実施の形態によれば、トリミングの終了直前における温度変化が緩やかになるように、レーザ光の照射条件を選択することができる。よって、クラックの発生を防ぐことが可能になる。
【0131】
[シードLDの制御回路の構成例]
本実施の形態では、駆動制御部20およびドライバ22によりシードLD2が制御される。具体的には、ドライバ22は、駆動制御部20からの信号に基づいて、シードLD2に与える駆動電流を変調する。このような制御を実現可能な駆動制御部20およびドライバ22の構成例を以下に説明する。
【0132】
図15は、駆動制御部20およびドライバ22の構成の一例を示す図である。
図15を参照して、駆動制御部20は、記憶部41と、FPGA(Field Programmable Gate Array)42と、D/Aコンバータ43とを含む。ドライバ22は、アンプ44と、トランジスタ46と、抵抗47とを含む。
【0133】
記憶部41は、加工条件に対応する波形データを不揮発的に記憶する。FPGA42はデジタル信号発生器であり、記憶部41から読み出した波形データDをデジタルデータとして出力する。FPGA42は、信号trigに応じて、記憶部41から波形データDを読み出すとともに、その波形データDに基づいてクロック信号DAC_clkと、データ信号DAC_data(デジタルデータ)とを出力する。FPGA42は、駆動制御部20からの停止信号に応じてその動作を停止する。
【0134】
D/Aコンバータ43は、クロック信号DAC_clkと、データ信号DAC_dataとを受けて、データ信号DAC_dataにより示されるデジタルデータをアナログデータに変換する。D/Aコンバータ43は、高速の信号処理に適したD/Aコンバータ(高速D/Aコンバータ)であることが好ましい。
【0135】
アンプ44は、D/Aコンバータ43からのアナログ信号である電流Idacをトランジスタ46の制御に必要な信号に変換する。トランジスタ46の制御電極にはアンプ44から出力された信号に対応する電圧V
LDが与えられる。
【0136】
トランジスタ46が電圧V
LDに応じて導通するとシードLD2に駆動電流I
LDが流れる。駆動電流I
LDがしきい値電流より大きくなるとシードLD2がレーザ発振してシードLD2からシード光が発せられる。電圧V
LDによってトランジスタ46に流れる電流が制御されるので駆動電流I
LDの強度が制御される。これによりシード光の強度が制御される。
【0137】
記憶部41は複数の加工条件(波形データ)を保存する。FPGA42は、記憶部41に含まれる複数の加工条件の中から、条件切換信号によって指示される条件(波形データ)を選択する。
図15に示した構成では、FPGAによってデジタル信号発生器が実現される。ただしデジタル信号発生器には、マイクロプロセッサやASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを用いてもよい。
【0138】
図16は、
図15に示した構成を有する駆動制御部20およびドライバ22の動作を説明するための図である。
図16および
図15を参照して、D/Aコンバータ43への入力値(データ信号DAC_dataが示す値)を、0とある値(
図16ではa〜j)とに設定する。
図16(a)に示すように、D/Aコンバータ43は、周期tを有するクロック信号DAC_clkの立ち上がりおよび立下りに応じて、データ信号DAC_dataが示すデジタルデータを読み込み、その読み込んだデジタルデータをアナログデータに変換する。
【0139】
一例として、
図16(b)に示すように、D/Aコンバータ43への入力値a〜fは、aからjの順に大きくなる。この入力値に基づいてD/Aコンバータ43、アンプ44およびトランジスタ46が動作する。これらの応答性により、駆動電流I
LDの波形は
図16(c)に示す波形となる。この駆動電流I
LDをシードLD2に供給することで、たとえば包絡線が時間に応じて単調増加するようなシード光の波形を実現できる。また、1つのパルス波形を形成するaからのデータ信号DAC_dataの数を変更することで、パルス幅を変更することもできる。
【0140】
なお、本実施の形態では、アンプである光増幅ファイバを用いて2段階の光増幅が行なわれる。ただし増幅段の数は2に限定されず、1でもよいし、3以上でもよい。
【0141】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。