(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持状態判別手段により前記不安定保持状態と判別されている場合に、前記3軸加速度センサ及び/又は前記方位センサの出力に基づき当該測位装置の保持状態が変化したことを判別する保持状態変化判別手段を備え、
前記測位制御手段は、
前記保持状態変化判別手段により保持状態が変化したと判別された場合に、前記衛星測位手段により即時に測位を行わせて前記一連の位置データの補正を行うことを特徴とする請求項1から3いずれか一項に記載の測位装置。
動きと方位に関する検出を行う自律航法用センサと、測位用衛星から信号を受信して測位を行う衛星測位手段とを有する測位装置を歩行体に保持させて当該歩行体の移動地点の測位を行う測位方法であって、
前記自律航法用センサの出力に基づき相対的な位置変化を求めて測位を行う自律測位ステップと、
前記衛星測位手段を用いて測位を行う衛星測位ステップと、
前記測位装置の保持状態を判別する保持状態判別ステップと、
前記衛星測位ステップおよび前記自律測位ステップの実行制御を行って前記歩行体の移動経路に沿った一連の位置データを作成するとともに、前記保持状態判別ステップの判別結果に基づいて前記自律測位ステップによる測位の方式を切り替える測位制御ステップとを含み、
前記自律航法用センサには、3軸方向の加速度をそれぞれ検出する3軸加速度センサと方位を検出する方位センサとが含まれ、
前記保持状態判別ステップは、前記3軸加速度センサの出力に基づいて前記保持状態の判別を行い、
前記測位制御ステップは、
前記保持状態判別ステップにより不安定保持状態と判別された場合に、
前記歩行体の歩行運動と前記方位センサにより検出された方位の変化に基づく移動方向の相対的な変化量を、前記自律測位ステップにより算出させて方位の定まっていない仮の一連の位置データを作成するとともに、前記衛星測位ステップにより間欠的に測位を行わせて、この測位データに基づき前記仮の一連の位置データを方位の定まった一連の位置データに補正することを特徴とする測位方法。
動きと方位に関する検出を行う自律航法用センサと、測位用衛星から信号を受信して測位を行う衛星測位手段とを有し、歩行体に保持される測位装置に搭載されたコンピュータに、
前記自律航法用センサの出力に基づき相対的な位置変化を求めて測位を行う自律測位機能と、
前記衛星測位手段を用いて測位を行う衛星測位機能と、
前記測位装置の保持状態を判別する保持状態判別機能と、
前記衛星測位機能および前記自律測位機能の作動制御を行って前記歩行体の移動経路に沿った一連の位置データを作成するとともに、前記保持状態判別機能の判別結果に基づいて前記自律測位機能による測位の方式を切り替える測位制御機能とを実現させ、
前記自律航法用センサには、3軸方向の加速度をそれぞれ検出する3軸加速度センサと方位を検出する方位センサとが含まれ、
前記保持状態判別機能は、前記3軸加速度センサの出力に基づいて前記保持状態の判別を行い、
前記測位制御機能は、
前記保持状態判別機能により不安定保持状態と判別された場合に、
前記歩行体の歩行運動と前記方位センサにより検出された方位の変化に基づく移動方向の相対的な変化量を、前記自律測位機能により算出させて方位の定まっていない仮の一連の位置データを作成するとともに、前記衛星測位機能により間欠的に測位を行わせて、この測位データに基づき前記仮の一連の位置データを方位の定まった一連の位置データに補正することを特徴とするプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測位装置が歩行体の上体に付けられて保持されている場合、或いは、背負われた入れ物や、上体に装着された入れ物に入れられている場合、測位装置には歩行体の水平方向の加速度変化が良く伝わる。従って、上述した方法で歩行体の移動方向を算出することができる。
【0005】
しかしながら、測位装置が手提げカバンなどに入れられて手からつるされて保持されている場合、測位装置には歩行体の水平方向の加速度変化が余り伝わらない。そのため、上述した方法では歩行体の移動方向を算出することが困難になる。
【0006】
この発明の目的は、測位装置が異なる保持状態にされても、適宜に方式を切り替えて測位を行うことのできる測位装置、測位方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
歩行体に保持されて測位を行う測位装置において、
動きと方位に関する検出を行う自律航法用センサと、
測位用衛星から信号を受信して測位を行う衛星測位手段と、
前記自律航法用センサの出力に基づき相対的な位置変化を求めて測位を行う自律測位手段と、
当該測位装置の保持状態を判別する保持状態判別手段と、
前記衛星測位手段および前記自律測位手段を制御して前記歩行体の移動経路に沿った一連の位置データを作成するとともに、前記保持状態判別手段の判別結果に基づいて前記自律測位手段による測位の方式を切り替える測位制御手段と
を備え、
前記自律航法用センサには、3軸方向の加速度をそれぞれ検出する3軸加速度センサと方位を検出する方位センサとが含まれ、
前記保持状態判別手段は、前記3軸加速度センサの出力に基づいて前記保持状態の判別を行い、
前記測位制御手段は、
前記保持状態判別手段により不安定保持状態と判別された場合に、
前記歩行体の歩行運動と前記方位センサにより検出された方位の変化に基づく移動方向の相対的な変化量を、前記自律測位手段により算出させて方位の定まっていない仮の一連の位置データを作成するとともに、前記衛星測位手段により間欠的に測位を行わせて、この測位データに基づき前記仮の一連の位置データを方位の定まった一連の位置データに補正することを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の発明は、
動きと方位に関する検出を行う自律航法用センサと、測位用衛星から信号を受信して測位を行う衛星測位手段とを有する測位装置を歩行体に保持させて当該歩行体の移動地点の測位を行う測位方法であって、
前記自律航法用センサの出力に基づき相対的な位置変化を求めて測位を行う自律測位ステップと、
前記衛星測位手段を用いて測位を行う衛星測位ステップと、
前記測位装置の保持状態を判別する保持状態判別ステップと、
前記衛星測位ステップおよび前記自律測位ステップの実行制御を行って前記歩行体の移動経路に沿った一連の位置データを作成するとともに、前記保持状態判別ステップの判別結果に基づいて前記自律測位ステップによる測位の方式を切り替える測位制御ステップと
を含み、
前記自律航法用センサには、3軸方向の加速度をそれぞれ検出する3軸加速度センサと方位を検出する方位センサとが含まれ、
前記保持状態判別ステップは、前記3軸加速度センサの出力に基づいて前記保持状態の判別を行い、
前記測位制御ステップは、
前記保持状態判別ステップにより不安定保持状態と判別された場合に、
前記歩行体の歩行運動と前記方位センサにより検出された方位の変化に基づく移動方向の相対的な変化量を、前記自律測位ステップにより算出させて方位の定まっていない仮の一連の位置データを作成するとともに、前記衛星測位ステップにより間欠的に測位を行わせて、この測位データに基づき前記仮の一連の位置データを方位の定まった一連の位置データに補正することを特徴としている。
【0016】
請求項7に記載の発明は、
動きと方位に関する検出を行う自律航法用センサと、測位用衛星から信号を受信して測位を行う衛星測位手段とを有し、歩行体に保持される測位装置に搭載されたコンピュータに、
前記自律航法用センサの出力に基づき相対的な位置変化を求めて測位を行う自律測位機能と、
前記衛星測位手段を用いて測位を行う衛星測位機能と、
前記測位装置の保持状態を判別する保持状態判別機能と、
前記衛星測位機能および前記自律測位機能の作動制御を行って前記歩行体の移動経路に沿った一連の位置データを作成するとともに、前記保持状態判別機能の判別結果に基づいて前記自律測位機能による測位の方式を切り替える測位制御機能と
を実現させ、
前記自律航法用センサには、3軸方向の加速度をそれぞれ検出する3軸加速度センサと方位を検出する方位センサとが含まれ、
前記保持状態判別機能は、前記3軸加速度センサの出力に基づいて前記保持状態の判別を行い、
前記測位制御機能は、
前記保持状態判別機能により不安定保持状態と判別された場合に、
前記歩行体の歩行運動と前記方位センサにより検出された方位の変化に基づく移動方向の相対的な変化量を、前記自律測位機能により算出させて方位の定まっていない仮の一連の位置データを作成するとともに、前記衛星測位機能により間欠的に測位を行わせて、この測位データに基づき前記仮の一連の位置データを方位の定まった一連の位置データに補正することを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従うと、装置の保持状態が判別されて、この判別結果に応じた方式で測位が行われるので、例えば、装置が歩行体の上体に付けられて保持されている場合でも、手提げカバンに入れられ手からつるされて保持されている場合でも、適宜、自律航法により歩行体の移動位置を測定していくことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態の測位装置の全体構成を示すブロック図である。
【0023】
この実施形態の測位装置1は、ユーザに携帯されて、GPS(全地球測位システム)による測位(GPS測位と記す)と、自律航法用センサを用いた測位(自律航法測位と記す)とを併用して、ユーザの移動軌跡を表わす一連の位置データを記録していく装置である。
【0024】
この測位装置1は、
図1に示すように、GPS衛星からの信号を受信するGPS受信アンテナ13と、GPS衛星からの信号受信処理および測位処理を行うGPS受信部14と、自律航法用センサとしての3軸地磁気センサ15および3軸加速度センサ16と、装置の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)10と、CPU10に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)11と、CPU10が実行する制御プログラムや制御データが格納されるROM(Read Only Memory)12等を備えている。上記のGPS受信アンテナ13およびGPS受信部14により衛星測位手段が構成され、CPU10により自律測位手段、保持状態判別手段、測位制御手段、保持状態変化判別手段が構成される。また、このCPU10がプログラムを実行するコンピュータとなる。
【0025】
GPS受信部14は、CPU10からの測位指令に応じてGPS衛星の信号を受信するとともに、所定の測位演算を行って現在地点の位置データを算出し、CPU10へ送る。
【0026】
3軸地磁気センサ15は、方位センサの一実施形態であり、互いに直交する3軸方向の地軸の大きさをそれぞれ検出するセンサである。3軸加速度センサ16は、互いに直交する3軸方向の加速度をそれぞれ検出するセンサである。これら3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16のセンサ信号は所定の周波数でサンプリングされてCPU10に取り込まれる。
【0027】
CPU10は、3軸地磁気センサ15および3軸加速度センサ16のセンサ出力を受けて、ユーザが歩行状態にあるかそれ以外の状態にあるかの判別、歩行時における測位装置1の保持状態の判別、保持状態に応じて第1方式と第2方式との自律航法測位の演算処理、GPS測位の実行間隔の制御、GPS測位の結果を受けて自律航法測位で得られた移動軌跡を補正する演算処理等を行う。
【0028】
次に、CPU10により実行される上記各処理について説明する。
【0029】
ユーザが歩行状態にあることの判別は、次のようにして行う。すなわち、先ず、3軸加速度センサ16のセンサ出力の時間平均を算出することで重力方向を特定し、3軸加速度センサ16のセンサ出力を鉛直成分と水平成分とに分離する。そして、鉛直成分の大きな変動を抽出して、この変動の周波数が人の歩行周期である1.2Hz〜2.2Hzであれば歩行状態と判別し、それ以外であれば歩行状態でないと判別する。
【0030】
測位装置1の保持状態の判別は、次のようにして行う。すなわち、3軸加速度センサ16のセンサ出力の水平成分の変動量と鉛直成分の変動量との比率(水平成分/鉛直成分)を算出し、この比率がしきい値以上(例えば1/5以上)であれば、ユーザの上体の水平成分の運動を検出可能な安定保持状態と判別し、しきい値より小さければ、ユーザの上体の水平成分の運動が検出困難な不安定保持状態と判別する。上記センサ出力の水平成分と鉛直成分の変動量は、例えば、各成分の所定時間(例えば2〜4秒)内における大小ピーク間の大きさとして計測できる。
【0031】
ここで、安定保持状態とは、例えば、測位装置1がユーザの上体に付けられて保持されている状態や、ユーザの上体に密着した入れ物に入れられている保持状態のことで、ユーザの上体と同様の運動を行う保持状態である。不安定保持状態とは、例えば、手持ちカバンに入れられてユーザの手から吊り下げられて保持された状態など、ユーザの上体の水平方向の運動が余り伝わらない保持状態である。
【0032】
第1方式の自律航法測位は、次のようにして行う。すなわち、先ず、3軸加速度センサ16のセンサ出力の鉛直成分の変化からユーザの歩数をカウントし、予め設定されている歩幅データと歩数とを乗算することで移動量を算出する。さらに、鉛直成分の加速度が減少する期間(頭が一番高くなった状態から足を付くまでの期間)の水平成分の加速度のピークを求め、このピークの向きに基づいて移動方向を算出する。この移動方向は、3軸地磁気センサ15のセンサ出力に基づき方位表現で求める。そして、上記の移動量と移動方向とからなる移動ベクトルを逐次算出していく。
【0033】
ここで、自律航法測位の開始地点の位置データが既知であれば、この位置データに一連の移動ベクトルを逐次積算していくことで、絶対座標でユーザの移動経路の各地点の位置データが求められる。また、開始地点の位置データが既知でなければ、開始地点を仮に表わす仮の位置データに一連の移動ベクトルを逐次積算していくことで、相対座標でユーザの移動軌跡を表わす一連の位置データが求められる。
【0034】
第2方式の自律航法測位は、次のようにして行う。すなわち、先ず、3軸加速度センサ16のセンサ出力の鉛直成分の変化からユーザの歩数をカウントし、予め設定されている歩幅データと歩数とを乗算することで相対的な移動量を算出する。さらに、不安定保持状態においては、ユーザの水平成分の加速度変化が検出困難である一方、手提げカバン等に入れられて測位装置1の向きとユーザの移動方向とが一定の関係に維持される期間が長く続くと考えられる。それゆえ、移動方向を算出する際には、移動方向の絶対的な方位を定めずに、相対的な移動方向の変化のみを算出する。詳細には、自律航法測位の開始時に、仮の移動方向(例えば北方0°)を設定しておく。そして、3軸地磁気センサ15のセンサ出力から地磁気の向きを連続的に測定して地磁気の向きが30度変化すれば移動方向が−30度変化したものとして、前回の測位地点の移動方向に上記の角度変化を加算することで今回の測位地点での移動方向を算出する。この移動方向は、絶対的な方位が定まっていないが、移動経路に沿った各地点間の移動方向の相対的な変化が表わされるものとなる。そして、上記の移動量と移動方向とから、方位の定まっていない仮の移動ベクトルを逐次算出していく。
【0035】
上記のように算出された一連の移動ベクトルを逐次積算していくことで、方位の定まっていない仮の移動軌跡を表わす一連の位置データが求められる。
【0036】
GPS測位の実行間隔の制御は、通常時には例えば10分間ごとに1分間の測位を行わせるなど、経過時間に従って間欠的にされる。一方、測位装置1の保持状態の判別で不安定保持状態と判別されている期間には、カバンの持ち替え等の状態変化が生じていないか監視を行い、状態変化が生じた場合には、即時にGPS測位が行われるように測位指令を発行する。上記の状態変化とは、例えば、カバンの持ち替え等、測位装置1の向きとユーザの進行方向との関係が変化した可能性のある状況である。そして、3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16のセンサ出力に基づき、短時間に方位が大きく変化した場合(例えば1秒以内に175°以上)、重力方向が所定角度以上(例えば80°以上)変化した場合、加速度の変動量が所定量以上(例えば半分以下又は2倍以上)変化した場合、またはこれらの場合を複合した条件を満たした場合に、上記の状態変化が発生したと判断する。
【0037】
移動軌跡の補正処理は、自律航法測位により求められた一連の位置データを、GPS測位により求められた正確な位置データに基づいて補正するものであり、GPS測位の位置データに応じて相似変換補正と回転変換補正の2種類により行われる。
【0038】
図2には、移動軌跡の相似変換補正を説明する図を示す。
【0039】
相似変換補正は、自律航法測位で得られた移動軌跡L1の始点Aと終点Bx(正確な位置は地点B)の2地点の正確な位置データがGPS測位により得られている場合に行われるものである。
図2では、自律航法測位で求められた一連の位置データにより移動軌跡L1が表わされ、移動軌跡L1の始点Aの位置データと終点Bxの正確な地点Bの位置データとがGPS測位により得られている。
【0040】
ここで、始点Aは、自律航法測位の基準地点となるので、GPS測位の位置データと自律航法測位の位置データは同一である。一方、自律航法測位では、ユーザが移動するに従って誤差が累積的に加算されていくため、移動軌跡L1の終点Bxの位置データは、この地点でGPS測位により正確に求められる地点Bの位置データから大きくずれている。
【0041】
このように自律航法測位の一連の位置データ(移動軌跡L1)と、GPS測位により得られた始点Aおよび終点Bの位置データとが得られたら、CPU10は、次のように移動軌跡L1の座標変換を行う。すなわち、移動軌跡L1の始点Aと終点Bxが、GPS測位により求められた正確な地点Aと地点Bに重なるように、移動軌跡L1の全体を一律に伸縮又は縮小し且つ回転させる。それにより、始点Aと終点Bが正確な位置データの地点A,Bと重なった補正後の移動軌跡L2が求められる。補正前の移動軌跡L1と補正後の移動軌跡L2とは相似な関係となる。このように、補正後の移動軌跡L2が求められたら、移動軌跡L1を表わしている一連の位置データを、移動軌跡L2の対応する地点の位置データに変換して補正完了となる。
【0042】
この相似変換補正は、上述した第1方式の自律航法測位によって求められた方位の定まった移動軌跡であっても、第2方式の自律航法によって求められた方位の定まっていない移動軌跡であっても、同様に適用することができる。
【0043】
図3には、移動軌跡の回転変換補正を説明する図を示す。
【0044】
回転変換補正は、自律航法測位で得られた移動軌跡L3の始点CxではGPS測位により正確な位置データが得られてなく、仮の基準地点の位置データが設定されて作成された移動軌跡に対して行われるものである。
【0045】
このような移動軌跡L3に対しては、先ず、移動軌跡L3の終点付近の各地点Dx1〜DxnにおいてGPS測位により連続的に測位を行わせて複数地点D1〜Dnの正確な位置データを取得する。そして、移動軌跡L3の全体をその終点付近の各地点Dx1〜Dxnが正確な地点D1〜Dnと平行に重なるように回転および平行移動させる。それにより、終点付近における位置と移動方向とがGPS測位のものと一致する補正後の移動軌跡L4が求められる。補正前の移動軌跡L3と補正後の移動軌跡L4とは合同な形状となる。このように、補正後の移動軌跡L4が求められたら、移動軌跡L3を表わしている一連の位置データを、移動軌跡L4の対応する地点の位置データに変換して補正完了となる。移動軌跡L3の始点Cxは仮の位置データであったのに対し、補正後の移動軌跡L4では始点Cから終点Dnまで絶対座標での位置データが得られる。
【0046】
この回転変換補正は、第2方式の自律航法によって求められた方位の定まっていない移動軌跡に対して特に有用に適用することができる。また、第1方式の自律航法によって求められた方位の定まっている移動軌跡に対しても適用できるものである。
【0047】
ROM12には、CPU10に上記の各処理を実行させる各モジュールプログラムと、統括的に測位制御を行うための測位制御処理のプログラム12a等が格納されている。このプログラムは、ROM12に格納するほか、例えば、データ読取装置を介してCPU10が読み取り可能な、例えば、光ディスク等の可搬型記憶媒体、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに格納しておくことが可能である。また、このようなプログラムをキャリアウェーブ(搬送波)を媒体として通信回線を介して測位装置1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0048】
[測位制御処理]
次に、上記構成の測位装置1における全体的な処理の流れについて説明する。
【0049】
図4と
図5には、CPU10が実行する測位制御処理のフローチャートを、
図6〜
図10には、不安定保持状態での第2方式の自律航法測位の測位パターンの第1例〜第5例を説明するタイムチャートを示す。
【0050】
この測位制御処理は、ユーザが歩行状態にあると判定されている状態で実行される処理である。この測位制御処理が開始されると、先ず、CPU10は、GPS測位を間欠的に行うためにそのインターバル期間(例えば10分)のタイマー設定を行う(ステップS1)。このタイマー設定により、インターバル期間ごとにGPS受信部14に測位指令が発行されて1分間の測位が自動的になされる。
【0051】
次に、CPU10は、一区間の移動軌跡の新規作成を開始する(ステップS2)。一区間の移動軌跡とは、一回の補正処理の対象となる移動軌跡のことである。この一区間の移動軌跡が複数連なってユーザの移動経路の全体が表わされる。
【0052】
続いて、CPU10は、3軸加速度センサの水平成分と鉛直成分の変動量の比率に基づいて保持状態の判別処理を実行する(ステップS3)。保持状態の判別処理の詳細は上述したごとくである。この判別の結果、比率がしきい値より大きい場合には、ユーザの上体の水平方向の加速度変動が検出可能な保持状態であることから、移動方向を方位で求める第1方式の自律航法測位を実行するため“YES”側に分岐する。
【0053】
そして、上述した第1方式の自律航法測位によって3軸加速度センサ16のセンサ出力に基づき歩数をカウントし(ステップS4)、3軸加速度センサ16と3軸地磁気センサ15のセンサ出力から移動方向を方位で算出し(ステップS5)、移動量(=歩数×歩幅データ)と移動方向とから移動ベクトルを作成してこれを補正前の測位データとしてRAM11に保存する(ステップS6)。
【0054】
続いて、間欠的なGPS測位のインターバル期間が経過によりGPS受信部14でGPS測位が実行されて、GPS受信部14からCPU10へ測位出力がなされているか判別する(ステップS7)。その結果、測位出力がなければ、ステップS3に戻る。
【0055】
すなわち、測位装置1が安定保持状態で保持されていればインターバル期間を通してステップS3〜S7のループ処理により第1方式の自律航法測位が連続的に実行されて、一連の移動ベクトルがRAM11に蓄積される。
【0056】
一方、測位装置1が手提げカバンに入れられている場合など、測位装置1が不安定保持状態にある場合には、ステップS3の判別処理で“NO”側に移行する。そして、上述した第2方式の自律航法測位によって3軸加速度センサ16のセンサ出力に基づき歩数をカウントし(ステップS8)、3軸地磁気センサ15のセンサ出力から移動方向の相対的な変化を算出する(ステップS9)。さらに、移動量(=歩数×歩幅データ)と相対的な移動方向とから、方位の定まっていない仮の移動ベクトルを作成してこれを補正前の測位データとしてRAM11に保存する(ステップS10)。
【0057】
続いて、現在、後述するステップS14で開始されるGPS測位中であるか判別し(ステップS11)、測位中でなければ上述したカバン持ち替え等の状態変化が生じていないか確認する(ステップS12)。その結果、状態変化も生じていなければステップS7に移行する。
【0058】
すなわち、測位装置1が不安定保持状態で保持され上記の状態変化も途中で生じなければインターバル期間を通してステップS3,S8〜S12,S7のループ処理により第2方式の自律航法測位が連続的に実行されて、一連の移動ベクトルがRAM11に蓄積される。
【0059】
そして、インターバル期間が経過してGPS受信部14の測位出力がなされたら、ステップS7の判別処理で“YES”側に移行する。そして、上記一連の移動ベクトルを始点の位置データに逐次加算して移動軌跡(一連の位置データ)を作成し、移動軌跡記憶部17に保存する(ステップS19)。始点の位置データがない場合には、仮の位置データが設定されて相対座標で表わされる移動軌跡が作成される。この処理により、第1方式の自律航法測位または第2方式の自律航法測位によって、
図2や
図3の補正前の移動軌跡L1又はL3等が作成・保存される。
【0060】
なお、インターバル期間が経過してGPS受信部14によりGPS測位がなされた際に、GPS衛星の信号が届かないところに居るなどして測位出力がない場合には、ステップS7の判別処理で“NO”と判別され、再びステップS3に戻って、次のインターバル期間まで自律航法の処理が繰り返される。
【0061】
移動軌跡を作成したら、次に、CPU10は、GPS測位により移動軌跡の始点位置が取得されているか判別し(ステップS21)、取得されていればこの始点位置の位置データと直前のステップS7で取得された終点位置の位置データとに基づいて、
図2に示したように移動軌跡を相似変換補正する。さらに、移動軌跡記憶部17に保存されている移動軌跡のデータ(一連の位置データ)を補正後の位置データに書き換えて保存する(ステップS22)。
【0062】
一方、ステップS21の判別処理で、始点位置が取得されていないと判別された場合には、暫くの間GPS測位を継続して行って連続的な位置データを取得する(ステップS23)。この直前にGPS測位は成功していることから、ステップS23の連続的なGPS測位はほぼ成功する。また、この連続的な位置データの取得中にも自律航法測位を継続して行ってステップS19で作成した移動軌跡の終点付近の位置データとして付加するようにしても良い。
【0063】
そして、ステップS23で取得されたGPSの連続的な位置データ(終点の位置データと終点付近の連続的な位置データ)に基づいて、
図3に示したように移動軌跡を回転変換補正する。さらに、移動軌跡記憶部17に保存されている移動軌跡のデータ(一連の位置データ)を補正後の位置データに書き換えて保存する(ステップS24)。
【0064】
上記のような処理により、
図6のタイムチャートに示すように、測位装置1が不安定保持状態で保持されてユーザが歩行を継続している場合に、第2方式の自律航法測位(S8,S9)が連続的に行われる一方、その始点と終点で間欠的なGPS測位が行われて、その間の移動軌跡が相似変換補正されて保存される。また、
図9のタイムチャートに示すように、GPS測位により移動軌跡の始点の位置データが取得されていない場合には、その終点付近B〜でGPS測位が連続的に行われて、その間の移動軌跡が回転変換補正されて保存される。
【0065】
そして、ステップS22又はステップS24で補正が完了したら、ステップS2に戻って、次の一区間の移動軌跡の新規作成を開始する。この繰り返し処理により、
図6や
図9に示される一区間ごとの移動軌跡の作成およびその補正処理が繰り返されるようになっている。
【0066】
なお、フローチャートでは示していないが、第1方式の自律航法測位の途中で安定保持状態から不安定保持状態に変更された場合、或いは、第2方式の自律航法測位の途中で不安定保持状態から安定保持状態に変更された場合には、即時にGPS測位を行って、それまでの移動軌跡の作成および補正処理を行って、そこから新たな一区間の移動軌跡の作成を開始するようにしても良い。
【0067】
次に、手提げカバンに入れられているなどの不安定保持状態において、カバンの持ち替えなどの状態変化が発生した場合の処理について説明する。この場合、ステップS12の判別処理で“持ち替え有り”と判別されて、次に進む。すると、先ず、CPU10は、この時点までに保存されている一連の移動ベクトルから移動軌跡を作成して移動軌跡記憶部17に保存する(ステップS13)。そして、即時にGPS測位が行われるように測位命令を発行して持ち替え時のGPS測位を開始させ(ステップS14)、次いで、GPS測位が成功しない場合のタイムアウト時間(例えば1分)を計数するタイマーを起動させる(ステップS15)。
【0068】
さらに、この持ち替え時のGPS測位が成功するまでの期間についても自律航法測位により移動軌跡が作成されるように、一区間の移動軌跡の新規作成を開始する(ステップS16)。そして、持ち替え時のGPS測位のタイムアウトになったか確認し(ステップS17)、未だであればGPSの測位出力が取得できたか判別する(ステップS18)。
【0069】
つまり、GPS測位のタイムアウトでなくGPSの測位出力も取得できていなければ、ステップS3,S8〜S11、S17,S18のループ処理が繰り返されて、第2方式の自律航法測位が連続的に実行されてカバン持ち替え後の移動軌跡が作成されていく。
【0070】
一方、カバン持ち替えによるGPS測位の出力が取得できないままタイムアウトになってしまったら、カバン持ち替え直前までの移動軌跡は方位が定まっておらず、それを補正することができないため、この移動軌跡を破棄する(ステップS20)。そして、ステップS1からの処理を再び開始する。
【0071】
また、タイムアウト前にGPSの測位出力が取得できれば、カバン持ち替え直前までの移動軌跡を補正するためにステップS21に移行する。続く、ステップS21,S22の移動軌跡の補正処理は前述したごとくである。そして、補正処理後にステップS2に戻る。なお、ステップS16で、カバン持ち替え後の移動軌跡の新規作成を開始している場合には、ステップS2では継続的な移動軌跡が作成されるように処理する。
【0072】
上記のステップS12で“YES”と判別された後の処理により、
図7、
図8に示すように、GPS測位のインターバル期間の途中でも、カバン持ち替え有りと判別されたら、そこで一区間の移動軌跡を終了とし、GPS測位が即時に開始されるようになっている。そして、
図7に示すように、GPS測位により終点Bの位置データが取得され、移動軌跡の始点Aの位置データも取得されている場合には、その間の移動軌跡が相似変換補正されて移動軌跡記憶部17に保存されるようになっている。
【0073】
また、GPS測位により終点Bの位置データが取得されずにタイムアウトになった場合には、
図8に示すように、その間の移動軌跡は方位を定めることができないため破棄され 、さらに、持ち替え有りと判別されたタイミングから新規の移動軌跡を作成すべく第2方式の自律航法測位が開始されるようになっている。この場合、移動軌跡の始点が不知のまま第2方式の自律航法測位が行われることになる。従って、
図9に示した動作と同様に、その後にGPS測位が成功して連続的な位置データが取得されれば、その間の移動軌跡が回転変換補正により補正されて保存されることになる。
【0074】
なお、フローチャートでは示していないが、
図10に示すように、移動軌跡の始点が不知のまま第2方式の自律航法測位が開始され、その後、GPS測位を行う前に、再度、持ち替え有りと判別された場合には、その間の移動軌跡は方位を定めることができないため破棄するようにしても良い。
【0075】
以上のように、この実施形態の測位装置1によれば、測位装置1の保持状態を判別して、保持状態により自律航法測位の方式を切り替えるようになっているので、例えば、測位装置1がユーザの上体に付けられて保持されている期間と、手提げカバンに入れられて吊り下げられて保持されている期間など、同一の方式で測位を行うことができない場合にも適宜方式を切り替えて自律航法による測位を行うことができる。
【0076】
また、保持状態の判別を、加速度の水平成分の変動量と鉛直成分の変動量との比率に基づいて行っているので、測位装置1がユーザの上体とほぼ同様に運動する保持状態と、ユーザの上体の運動が伝わり難い保持状態とを適宜判別することができる。
【0077】
また、上記実施形態の測位装置1によれば、加速度の水平成分の変動量の割合が大きい安定保持状態と判別された場合には、この水平成分の加速度からユーザの移動方向を算出して移動軌跡を作成するとともに、間欠的なGPS測位の結果に基づき相似変換補正や回転変換補正を行って補正された移動軌跡が保存されるようになっている。すなわち、測位装置1の保持状態に適した自律航法測位やGPS測位が行われて正確な移動軌跡が求められるようになっている。
【0078】
一方、加速度の水平成分の変動量の割合が小さい不安定保持状態と判別された場合には、地磁気の計測によりユーザの相対的な移動方向(移動方向の前後地点間の相対的変化)を算出して方位の定まっていない仮の移動軌跡を作成するとともに、間欠的なGPS測位の結果に基づいて相似変換補正や回転変換補正を行って、方位の定まった移動軌跡に補正し保存されるようになっている。すなわち、測位装置1の保持状態に適した自律航法測位やGPS測位が行われて正確な移動軌跡が求められるようになっている。
【0079】
また、上記実施形態の測位装置1によれば、不安定保持状態のときにカバン持ち替え等の保持状態の変化が発生していないか監視を行い、変化の発生があれば、即時にGPS測位を行って、それまでの移動軌跡の補正処理を実行するようになっている。従って、かばん持ち替え等により、測位装置1の向きとユーザの進行方向との関係が変化するような場合にも対応して、その前後の移動軌跡を正確に求めることが可能になっている。
【0080】
具体的には、右手に持っていたカバンを左手に持ち替える行動等による短時間に大きな方位変化が検出された場合、外部からの大きな衝撃でカバンの中で測位装置が回転すること等による所定量以上の重力方向の変化が検出された場合、手に持っていたカバンを脇に抱えること等による水平方向の加速度の変動量が大きく変化した場合、或いは、これらを複合した条件によりカバン持ち替え等の保持状態の変化が発生したと判別するので、自律航法用センサを用いて比較的容易に且つ正確に保持状態の変化を検出することができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、自律航法用センサとして3軸加速度センサと3軸地磁気センサを例示したが、測位装置の天地の向きが一定になると保証されている場合には2軸の地磁気センサを用いることもできる。また、方位センサとしてジャイロスコープを用いて第2方式の自律航法測位における相対的な移動方向を算出することもできる。
【0082】
また、測位装置の保持状態の判別方法も、加速度の水平成分と鉛直成分の変動量の比率に基づく方法に限られず、たとえば、やや精度が低下するが、加速度の水平成分の変動量の大きさのみに基づいて判別するように構成することもできる。
【0083】
その他、実施形態で示した細部構成および細部方法は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。