特許第5760390号(P5760390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760390
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   F25B1/00 351Z
   F25B1/00 101F
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-246049(P2010-246049)
(22)【出願日】2010年11月2日
(65)【公開番号】特開2012-97962(P2012-97962A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 雅祐
(72)【発明者】
【氏名】三好 一雄
(72)【発明者】
【氏名】平田 淳
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 久和
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−268960(JP,A)
【文献】 特開平01−285745(JP,A)
【文献】 特開2004−309044(JP,A)
【文献】 特開昭63−131959(JP,A)
【文献】 特開平01−137159(JP,A)
【文献】 特開平03−059358(JP,A)
【文献】 特開2010−085004(JP,A)
【文献】 特開平08−219584(JP,A)
【文献】 特開2003−279178(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0288720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を高温熱源と熱交換させ前記熱媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発させた前記熱媒体を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された前記熱媒体を低温熱源と熱交換させ前記熱媒体を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器で凝縮させた前記熱媒体を膨張させて前記蒸発器に供給する膨張弁と、前記蒸発器と前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張弁とを順次ループ状に接続する熱媒体循環ラインと、を備え、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプにおいて、
前記熱媒体循環ラインに前記圧縮機をバイパスするように設けられた圧縮機バイパスラインと、該圧縮機バイパスラインに設けられた圧縮機バイパス弁と、前記凝縮器の下流側で、かつ前記蒸発器の上流側の前記熱媒体循環ラインに設けられると共に、前記熱媒体循環ラインの一部をバイパスするように設けられたポンプ用バイパスラインと、前記ポンプ用バイパスラインに設けられた循環ポンプと、前記ポンプ用バイパスラインでバイパスした前記熱媒体循環ラインに設けられたポンプ用バイパス弁と、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度を計測する高温熱源用温度計と、前記圧縮機と前記膨脹弁と前記圧縮機バイパス弁と前記循環ポンプと前記ポンプ用バイパス弁とを制御する制御器とを備え、
前記制御器は、前記圧縮機の運転を停止する際あるいは運転停止中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、前記圧縮機バイパス弁を開放し、前記膨張弁を開放すると共に、前記ポンプ用バイパス弁を閉じ、前記循環ポンプの運転を開始させて前記熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替える運転モード切替部を有し、
前記運転モード切替部は、前記強制循環待機運転モード中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満となったとき、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止する
ことを特徴とするヒートポンプ。
【請求項2】
前記運転モード切替部は、前記圧縮機の運転を停止する際に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満であるとき、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止する請求項1記載のヒートポンプ。
【請求項3】
前記運転モード切替部は、前記強制循環待機運転モードから通常運転に復帰する際、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機の運転を再開すると共に、前記圧縮機バイパス弁を閉じる請求項1または2記載のヒートポンプ。
【請求項4】
前記蒸発器の出口での前記熱媒体の温度を計測する熱媒体用温度計を備え、
前記運転モード切替部は、前記強制循環待機運転モード中に、前記熱媒体用温度計で検出した前記熱媒体の温度が前記熱媒体の蒸発温度未満となるように、前記循環ポンプの吐出量を調整する請求項1〜3いずれかに記載のヒートポンプ。
【請求項5】
熱媒体を高温熱源と熱交換させ前記熱媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発させた前記熱媒体を圧縮する圧縮機と、前記蒸発器よりも上方に配置され、該圧縮機で圧縮された前記熱媒体を低温熱源と熱交換させ前記熱媒体を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器で凝縮させた前記熱媒体を膨張させて前記蒸発器に供給する膨張弁と、前記蒸発器と前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張弁とを順次ループ状に接続する熱媒体循環ラインと、を備え、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプにおいて、
前記熱媒体循環ラインに前記圧縮機をバイパスするように設けられた圧縮機バイパスラインと、該圧縮機バイパスラインに設けられた圧縮機バイパス弁と、前記凝縮器の下流側で、かつ前記蒸発器の上流側の前記熱媒体循環ラインに入口が接続され、前記凝縮器の入口近傍の前記熱媒体循環ラインに出口が接続されたポンプ用バイパスラインと、前記ポンプ用バイパスラインに設けられた循環ポンプと、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度を計測する高温熱源用温度計と、前記圧縮機と前記膨脹弁と前記圧縮機バイパス弁と前記循環ポンプとを制御する制御器とを備え、
前記制御器は、前記圧縮機の運転を停止する際あるいは運転停止中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、前記圧縮機バイパス弁を開放すると共に、前記膨張弁を開放し、前記循環ポンプの運転を開始させて前記熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替える運転モード切替部を有し、
前記運転モード切替部は、前記強制循環待機運転モード中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満となったとき、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止する
ことを特徴とするヒートポンプ。
【請求項6】
熱媒体を高温熱源と熱交換させ前記熱媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発させた前記熱媒体を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された前記熱媒体を低温熱源と熱交換させ前記熱媒体を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器で凝縮させた前記熱媒体を膨張させて前記蒸発器に供給する膨張弁と、前記蒸発器と前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張弁とを順次ループ状に接続する熱媒体循環ラインと、を備え、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプの制御方法において、
前記熱媒体循環ラインに前記圧縮機をバイパスするように圧縮機バイパスラインを設けると共に、該圧縮機バイパスラインに圧縮機バイパス弁を設け、前記凝縮器の下流側で、かつ前記蒸発器の上流側の前記熱媒体循環ラインに前記熱媒体循環ラインの一部をバイパスするようにポンプ用バイパスラインを設けると共に、前記ポンプ用バイパスラインに循環ポンプを設け、前記ポンプ用バイパスラインでバイパスした前記熱媒体循環ラインにポンプ用バイパス弁を設け、かつ、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度を計測する高温熱源用温度計を設け、
前記圧縮機の運転を停止する際あるいは運転停止中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、前記圧縮機バイパス弁を開放し、前記膨張弁を開放すると共に、前記ポンプ用バイパス弁を閉じ、前記循環ポンプの運転を開始させて前記熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替え、
かつ、前記強制循環待機運転モード中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満となったとき、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止する
ことを特徴とするヒートポンプの制御方法。
【請求項7】
熱媒体を高温熱源と熱交換させ前記熱媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発させた前記熱媒体を圧縮する圧縮機と、前記蒸発器よりも上方に配置され、該圧縮機で圧縮された前記熱媒体を低温熱源と熱交換させ前記熱媒体を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器で凝縮させた前記熱媒体を膨張させて前記蒸発器に供給する膨張弁と、前記蒸発器と前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張弁とを順次ループ状に接続する熱媒体循環ラインと、を備え、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプの制御方法において、
前記熱媒体循環ラインに前記圧縮機をバイパスするように圧縮機バイパスラインを設けると共に、該圧縮機バイパスラインに圧縮機バイパス弁を設け、前記凝縮器の下流側で、かつ前記蒸発器の上流側の前記熱媒体循環ラインにポンプ用バイパスラインの入口を接続すると共に、前記凝縮器の入口近傍の前記熱媒体循環ラインに前記ポンプ用バイパスラインの出口を接続し、前記ポンプ用バイパスラインに循環ポンプを設け、かつ、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度を計測する高温熱源用温度計を設け、
前記圧縮機の運転を停止する際あるいは運転停止中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、前記圧縮機バイパス弁を開放すると共に、前記膨張弁を開放し、前記循環ポンプの運転を開始させて前記熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替え、
かつ、前記強制循環待機運転モード中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満となったとき、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止する
ことを特徴とするヒートポンプの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発器に供給される高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプ及びその制御方法に係り、特に、運転停止中のヒートポンプ全体の温度低下を抑制することで、通常運転に復帰する際の反応性および省エネルギー性を向上したヒートポンプ及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプとは、凝縮器、圧縮機、蒸発器、膨張弁を基幹部品とした閉ループと、閉ループ内に充填された熱媒体(熱媒)から構成される熱移動機器である。
【0003】
一般的に認知されているヒートポンプとしては、家庭用冷蔵庫、家庭用エアコンなどがある。なお、ヒートポンプという名称は、家庭用エアコンの冷房モードのように大気の高温熱源から室内の低温空気を生む冷却機器と、暖房モードのように大気の低温熱源から室内の高温空気を生む加熱機器の両方の意味を含有しているが、本明細書では、ヒートポンプを加熱機器としてのみ扱う。
【0004】
ヒートポンプでは、まず、蒸発器で高温熱源と熱交換(吸熱)を行い熱媒体を昇温し、熱媒体を蒸発させる。蒸発器にて蒸発した熱媒体は、圧縮機において圧縮され、昇温・昇圧される。その後、凝縮器において低温熱源と熱交換(放熱)を行い熱媒体を高圧のまま降温し、熱媒体を凝縮する。このとき、熱媒体の放熱により低温熱源に用いる媒体が加熱されるが、この凝縮器における放熱量は、蒸発器における吸熱量よりも大きくなる。凝縮器にて凝縮した熱媒体は、膨脹弁において膨脹(降圧)され、蒸発器に戻る。
【0005】
なお、ヒートポンプでは、蒸発器にて蒸発して気相となった熱媒体を圧縮機を介して凝縮器に供給し、凝縮器にて凝縮して液相となった熱媒体を膨脹弁を介して蒸発器に供給するが、熱媒体の循環をスムーズとするには、液相のときに下方(重力方向)に、気相のときに上方(重力方向と反対方向)に熱媒体を移動させるように構成することが好ましい。そのため、ヒートポンプでは、凝縮器を蒸発器よりも上方に配置することが一般的である。
【0006】
ヒートポンプにおいて、運転を停止する場合(凝縮器で放熱の必要性がない場合)には、膨脹弁を閉め、圧縮機の運転を停止することで熱媒体の循環(移動)を止めるのが一般的である。これは、膨脹弁を開放したままだと、運転停止中に凝縮器にて凝縮して液相となった熱媒体が下方の蒸発器に溜まっていき、蒸発器における液位(蒸発器内に存在する液相の熱媒体の液面の位置)が高く、つまり蒸発器における液相の熱媒体の保液量が多くなってしまい、この状態で通常運転を再開すると、液相の状態(ミスト状)の熱媒体が圧縮機に供給されて不具合が発生するおそれがあるためである。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−58147号公報
【特許文献2】特開2005−261703号公報
【特許文献3】特開2004−293905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、家庭用エアコンの暖房モードにおいては、蒸発器での高温熱源が環境温度(大気温度)となっているが、これに対して、例えば、蒸気の再加熱に用いられる産業用のヒートポンプでは、環境温度よりも高温の蒸気(例えば、100〜150℃の低温蒸気)を高温熱源として蒸発器に供給し、凝縮器にて低温蒸気を再加熱して高温蒸気(例えば150〜180℃の高温蒸気)とするものがある。
【0010】
しかしながら、蒸発器に供給される高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプ(以下、高温ヒートポンプと呼称する)においては、以下のような問題があった。
【0011】
上述のように、従来のヒートポンプでは、運転停止時に膨脹弁を閉じ、圧縮機を停止して熱媒体の循環を完全に停止させるが、運転停止中に熱媒体の熱が放熱(大気への放熱)され、系全体(ヒートポンプ全体)が環境温度に近い温度まで冷却される。なお、運転停止中に蒸発器に高温熱源が供給され続けている場合には、蒸発器周辺の温度は環境温度よりも高く維持されるが、蒸発器から離れた部分(例えば凝縮器周辺)では、蒸発器からの伝熱は多少あるものの、環境温度に近い温度まで冷却される。
【0012】
高温ヒートポンプでは、運転時の系全体(ヒートポンプ全体)の平均温度が例えば150℃以上と環境温度と比較して高温であるため、運転停止中に系(ヒートポンプ)の温度が環境温度に近い温度まで低下してしまうと、運転開始時に熱媒体を再び加熱するのに時間がかかってしまう、すなわち反応性が悪いという問題がある。また、通常運転に復帰する度に、配管など大きな熱容量の部材を含む系全体(ヒートポンプ全体)の温度を上昇させなければならないため、無駄が多く、省エネルギーの観点からも好ましくないという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、蒸発器に供給される高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプにおいて、通常運転に復帰する際の反応性および省エネルギー性を向上したヒートポンプ及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、熱媒体を高温熱源と熱交換させ前記熱媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発させた前記熱媒体を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された前記熱媒体を低温熱源と熱交換させ前記熱媒体を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器で凝縮させた前記熱媒体を膨張させて前記蒸発器に供給する膨張弁と、前記蒸発器と前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張弁とを順次ループ状に接続する熱媒体循環ラインと、を備え、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプにおいて、前記熱媒体循環ラインに前記圧縮機をバイパスするように設けられた圧縮機バイパスラインと、該圧縮機バイパスラインに設けられた圧縮機バイパス弁と、前記凝縮器の下流側で、かつ前記蒸発器の上流側の前記熱媒体循環ラインに設けられると共に、前記熱媒体循環ラインの一部をバイパスするように設けられたポンプ用バイパスラインと、前記ポンプ用バイパスラインに設けられた循環ポンプと、前記ポンプ用バイパスラインでバイパスした前記熱媒体循環ラインに設けられたポンプ用バイパス弁と、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度を計測する高温熱源用温度計と、前記圧縮機と前記膨脹弁と前記圧縮機バイパス弁と前記循環ポンプと前記ポンプ用バイパス弁とを制御する制御器とを備え、前記制御器は、前記圧縮機の運転を停止する際あるいは運転停止中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、前記圧縮機バイパス弁を開放し、前記膨張弁を開放すると共に、前記ポンプ用バイパス弁を閉じ、前記循環ポンプの運転を開始させて前記熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替える運転モード切替部を有し、前記運転モード切替部は、前記強制循環待機運転モード中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満となったとき、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止するヒートポンプである。
【0015】
前記運転モード切替部は、前記圧縮機の運転を停止する際に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満であるとき、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止してもよい。
【0017】
前記運転モード切替部は、前記強制循環待機運転モードから通常運転に復帰する際、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機の運転を再開すると共に、前記圧縮機バイパス弁を閉じてもよい。
【0018】
前記蒸発器の出口での前記熱媒体の温度を計測する熱媒体用温度計を備え、前記運転モード切替部は、前記強制循環待機運転モード中に、前記熱媒体用温度計で検出した前記熱媒体の温度が前記熱媒体の蒸発温度未満となるように、前記循環ポンプの吐出量を調整してもよい。
【0019】
また、本発明は、熱媒体を高温熱源と熱交換させ前記熱媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発させた前記熱媒体を圧縮する圧縮機と、前記蒸発器よりも上方に配置され、該圧縮機で圧縮された前記熱媒体を低温熱源と熱交換させ前記熱媒体を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器で凝縮させた前記熱媒体を膨張させて前記蒸発器に供給する膨張弁と、前記蒸発器と前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張弁とを順次ループ状に接続する熱媒体循環ラインと、を備え、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプにおいて、前記熱媒体循環ラインに前記圧縮機をバイパスするように設けられた圧縮機バイパスラインと、該圧縮機バイパスラインに設けられた圧縮機バイパス弁と、前記凝縮器の下流側で、かつ前記蒸発器の上流側の前記熱媒体循環ラインに入口が接続され、前記凝縮器の入口近傍の前記熱媒体循環ラインに出口が接続されたポンプ用バイパスラインと、前記ポンプ用バイパスラインに設けられた循環ポンプと、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度を計測する高温熱源用温度計と、前記圧縮機と前記膨脹弁と前記圧縮機バイパス弁と前記循環ポンプとを制御する制御器とを備え、前記制御器は、前記圧縮機の運転を停止する際あるいは運転停止中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、前記圧縮機バイパス弁を開放すると共に、前記膨張弁を開放し、前記循環ポンプの運転を開始させて前記熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替える運転モード切替部を有し、前記運転モード切替部は、前記強制循環待機運転モード中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満となったとき、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止するヒートポンプである。
【0020】
また、本発明は、熱媒体を高温熱源と熱交換させ前記熱媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発させた前記熱媒体を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された前記熱媒体を低温熱源と熱交換させ前記熱媒体を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器で凝縮させた前記熱媒体を膨張させて前記蒸発器に供給する膨張弁と、前記蒸発器と前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張弁とを順次ループ状に接続する熱媒体循環ラインと、を備え、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプの制御方法において、前記熱媒体循環ラインに前記圧縮機をバイパスするように圧縮機バイパスラインを設けると共に、該圧縮機バイパスラインに圧縮機バイパス弁を設け、前記凝縮器の下流側で、かつ前記蒸発器の上流側の前記熱媒体循環ラインに前記熱媒体循環ラインの一部をバイパスするようにポンプ用バイパスラインを設けると共に、前記ポンプ用バイパスラインに循環ポンプを設け、前記ポンプ用バイパスラインでバイパスした前記熱媒体循環ラインにポンプ用バイパス弁を設け、かつ、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度を計測する高温熱源用温度計を設け、前記圧縮機の運転を停止する際あるいは運転停止中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、前記圧縮機バイパス弁を開放し、前記膨張弁を開放すると共に、前記ポンプ用バイパス弁を閉じ、前記循環ポンプの運転を開始させて前記熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替え、かつ、前記強制循環待機運転モード中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満となったとき、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止するヒートポンプの制御方法である。
【0021】
また、本発明は、熱媒体を高温熱源と熱交換させ前記熱媒体を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器で蒸発させた前記熱媒体を圧縮する圧縮機と、前記蒸発器よりも上方に配置され、該圧縮機で圧縮された前記熱媒体を低温熱源と熱交換させ前記熱媒体を凝縮させる凝縮器と、該凝縮器で凝縮させた前記熱媒体を膨張させて前記蒸発器に供給する膨張弁と、前記蒸発器と前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張弁とを順次ループ状に接続する熱媒体循環ラインと、を備え、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度が環境温度よりも高いヒートポンプの制御方法において、前記熱媒体循環ラインに前記圧縮機をバイパスするように圧縮機バイパスラインを設けると共に、該圧縮機バイパスラインに圧縮機バイパス弁を設け、前記凝縮器の下流側で、かつ前記蒸発器の上流側の前記熱媒体循環ラインにポンプ用バイパスラインの入口を接続すると共に、前記凝縮器の入口近傍の前記熱媒体循環ラインに前記ポンプ用バイパスラインの出口を接続し、前記ポンプ用バイパスラインに循環ポンプを設け、かつ、前記蒸発器に供給される前記高温熱源の温度を計測する高温熱源用温度計を設け、前記圧縮機の運転を停止する際あるいは運転停止中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、前記圧縮機バイパス弁を開放すると共に、前記膨張弁を開放し、前記循環ポンプの運転を開始させて前記熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替え、かつ、前記強制循環待機運転モード中に、前記高温熱源用温度計で検出した前記高温熱源の温度が所定温度未満となったとき、前記循環ポンプの運転を停止し、前記ポンプ用バイパス弁を開放すると共に、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁の開度を調整して前記蒸発器の液位が所定の液位となるように制御した後、前記圧縮機バイパス弁と前記膨脹弁とを閉じて、前記熱媒体の循環を停止するヒートポンプの制御方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、通常運転に復帰する際の反応性および省エネルギー性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態に係るヒートポンプの概略構成図である。
図2図1のヒートポンプの制御方法のフローチャートである。
図3】本発明の一実施の形態に係るヒートポンプの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係るヒートポンプの概略構成図である。
【0026】
図1に示すように、ヒートポンプ1は、熱媒体を高温熱源と熱交換させ熱媒体を蒸発させる蒸発器2と、蒸発器2で蒸発させた熱媒体を圧縮する圧縮機3と、圧縮機3で圧縮された熱媒体を低温熱源と熱交換させ熱媒体を凝縮させる凝縮器4と、凝縮器4で凝縮させた熱媒体を膨張させて蒸発器2に供給する膨張弁5とを主に備えている。蒸発器2と圧縮機3と凝縮器4と膨張弁5とは、熱媒体循環ライン8により順次ループ状に接続されている。凝縮器4は、蒸発器2よりも上方(重力方向における上方)に配置される。
【0027】
蒸発器2には、蒸発器2に高温熱源を供給する高温熱源供給ライン6が接続される。また、凝縮器4には、凝縮器4に低温熱源を供給する低温熱源供給ライン7が接続される。高温熱源供給ライン6には、蒸発器2に供給される高温熱源の温度を計測する高温熱源用温度計9が設けられる。高温熱源用温度計9は、高温熱源を蒸発器2内に導入する導入口6a近傍の高温熱源供給ライン6に設けられる。なお、本実施の形態では、蒸発器2の外部に高温熱源用温度計9を設けているが、高温熱源用温度計9は蒸発器2の内部に設けられていてもよい。
【0028】
蒸発器2に供給される高温熱源の温度は、環境温度よりも高く、例えば、100〜150℃である。通常運転中の熱媒体の温度は、例えば、蒸発器2で100〜150℃、凝縮器4で150〜180℃である。ヒートポンプ1は、例えば、蒸気の再加熱等に用いられる産業用の高温ヒートポンプである。
【0029】
凝縮器4と膨脹弁5との間の熱媒体循環ライン8には、凝縮器4で凝縮した液相の熱媒体を貯留する中間液溜め10が設けられる。また、蒸発器2と圧縮機3との間の熱媒体循環ライン8には、液相の熱媒体を分離して気相の熱媒体のみを圧縮機3に供給すべく、気液分離器11が設けられる。
【0030】
ヒートポンプ1では、熱媒体循環ライン8に圧縮機3をバイパスするように設けられた圧縮機バイパスライン12を備えており、圧縮機バイパスライン12には、閉止兼吐出圧調節用の圧縮機バイパス弁13が設けられる。本実施の形態では、圧縮機バイパスライン12は、その一端が気液分離器11の下部に接続され、他端が圧縮機3と凝縮器4との間の熱媒体循環ライン8に接続される。
【0031】
また、ヒートポンプ1では、気液分離器11にて分離された液相の熱媒体を中間液溜め10に戻す液相戻しライン19が設けられ、その液相戻しライン19には、ストップバルブである液相戻しライン用二方弁20が設けられる。液相戻しライン19は、その一端が気液分離器11の下部(底部)に接続され、他端が凝縮器4と中間液溜め10との間の熱媒体循環ライン8に接続される。
【0032】
さらに、ヒートポンプ1では、凝縮器4の下流側で、かつ蒸発器2の上流側の熱媒体循環ライン8に、熱媒体循環ライン8の一部をバイパスするようにポンプ用バイパスライン21が設けられる。本実施の形態では、中間液溜め10と膨張弁5との間の熱媒体循環ライン8に、ポンプ用バイパスライン21を設けた。ポンプ用バイパスライン21には、循環ポンプ22が設けられ、ポンプ用バイパスライン21でバイパスした熱媒体循環ライン8には、ストップバルブであるポンプ用バイパス弁23が設けられる。
【0033】
さて、本実施の形態に係るヒートポンプ1は、圧縮機3、膨脹弁5、圧縮機バイパス弁13、液相戻しライン用二方弁20、循環ポンプ22、ポンプ用バイパス弁23を制御する制御器15を備えている。制御器15は、制御ライン18により、圧縮機3、膨脹弁5、圧縮機バイパス弁13、液相戻しライン用二方弁20、循環ポンプ22、ポンプ用バイパス弁23、および高温熱源用温度計9に接続されている。なお、図1では、図の複雑化を避けるため、圧縮機3に接続される制御ライン18を省略している。
【0034】
制御器15は、圧縮機3を駆動・停止する圧縮機制御部16を有している。本実施の形態では、制御器15に図示しない運転スイッチと停止スイッチを設け、圧縮機3の停止中に運転スイッチがオンされたときに圧縮機制御部16が圧縮機3を駆動し、圧縮機3の運転中に停止スイッチがオンされたときに圧縮機制御部16が圧縮機3を停止するように構成した。つまり、ヒートポンプ1では、圧縮機3を運転/停止させる手段として、運転スイッチと停止スイッチを用いているが、圧縮機3を運転/停止させる手段については特に限定されるものではない。
【0035】
なお、本明細書において、ヒートポンプ1の運転停止とは圧縮機3の運転を停止することを意味し、通常運転への復帰とは、運転停止状態から圧縮機3の運転を再開することを意味することとする。
【0036】
制御器15は、以下の2つの条件を満たすときに、圧縮機バイパス弁13を開放し、膨脹弁5を開放すると共に、ポンプ用バイパス弁23を閉じ、循環ポンプ22の運転を開始させて熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替える運転モード切替部17を有する。
【0037】
(1)圧縮機3の運転を停止する際あるいは運転停止中(つまりヒートポンプ1の運転停止時あるいは運転停止中)であること。
【0038】
(2)高温熱源用温度計9で検出した高温熱源の温度が所定温度以上であること。
【0039】
なお、条件(2)における所定温度とは、少なくとも環境温度よりも高い温度であればよく、例えば、高温熱源の温度をT、環境温度をTaとすると、Ta<Tを満たすとき、すなわち高温熱源の温度Tが環境温度Taよりも高いときに、条件(2)を満たすとしてもよい。ただし、高温熱源の温度Tが環境温度Taに近い場合には十分な予熱の効果が得られず、循環ポンプ22を駆動するエネルギーが無駄になるので、本実施の形態では、下式(1)
(Ta+k)≦T ・・・(1)
を満たすときに、条件(2)を満たすとした。式(1)におけるkは、循環ポンプ22を駆動するエネルギーが無駄にならず、十分な予熱の効果が得られる値に適宜決定すればよい。
【0040】
また、運転モード切替部17は、圧縮機3の運転を停止する際(ヒートポンプ1の運転停止時)に、上述の条件(2)を満たさないときは、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5とを閉じて、強制循環待機運転モードに切り替えることなく、熱媒体の循環を停止するようにされる。以下、圧縮機3を停止し、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5とを閉じて熱媒体の循環を停止した運転モードを運転停止モードと呼称する。
【0041】
さらに、運転モード切替部17は、強制循環待機運転モード中(ヒートポンプ1の運転停止中)に、上述の条件(2)を満たさなくなったとき、循環ポンプ22の運転を停止し、ポンプ用バイパス弁23を開放すると共に、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5の開度を調整して蒸発器2の液位が所定の液位となるように制御した後、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5とを閉じて、熱媒体の循環を停止するようにされる。以下、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5の開度を調整して蒸発器2の液位が所定の液位となるように制御する運転モードを液位調整モードと呼称する。つまり、運転モード切替部17は、強制循環待機運転モード中に条件(2)を満たさなくなったとき、液位調整モードに切り替えて蒸発器2の液位を調整した後、運転停止モードに切り替える。
【0042】
なお、本実施の形態では、運転停止モードにおける蒸発器2内での熱媒体の液位hlは、蒸発器高さ(蒸発器2の出口の高さ)をheとすると、下式(2)
hl≦0.25he ・・・(2)
を満たすこととする。これは、運転停止状態から通常運転に復帰する際、圧縮機3が作動すると圧縮機3の前後で圧力差がつくために、熱媒体の液位hlが急激に変動するが、運転停止中の熱媒体の液位hlが蒸発器高さheの0.25倍を超えていると、液相のままの熱媒体が圧縮機3に導入され、最悪の場合には圧縮機3が故障してしまう場合があるためである。このような不具合を防ぐために、本実施の形態では、運転停止モードでは蒸発器2内での熱媒体の液位hlを低い位置に保持し、熱媒体の液位hlが急激に変化しても、蒸発器2の出口においては熱媒体が気相となるようにしている。
【0043】
さらにまた、運転モード切替部17は、強制循環待機運転モードから通常運転に復帰する際、循環ポンプ22の運転を停止し、ポンプ用バイパス弁23を開放すると共に、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5の開度を調整して蒸発器2の液位が所定の液位となるようにした後、圧縮機制御部16を介して圧縮機3の運転を再開させると共に、圧縮機バイパス弁13を閉じるようにされる。以下、圧縮機3が運転しており、圧縮機バイパス弁13を閉じた通常の運転モード、すなわちヒートポンプ1が通常に稼働している運転モードを通常運転モードと呼称する。つまり、運転モード切替部17は、強制循環待機運転モードから通常運転に復帰する際、液位調整モードに切り替えて蒸発器2の液位を調整した後、通常運転モードに切り替える。
【0044】
なお、本実施の形態では、通常運転モードにおける蒸発器2内での熱媒体の液位hlは、下式(3)
0.5he≦hl<0.75he ・・・(3)
を満たすようにしている。熱媒体の液位hlを蒸発器高さheの0.5倍以上とすることは一般的によく行われており、できるだけ大きな熱量を熱媒体に与えるべく、蒸発器2の半分以上が液相の熱媒体で満たされるようにされる。また、熱媒体の液位hlを蒸発器高さheの0.75倍より小さくするのは、圧縮機3に液相のままの熱媒体が送られないようにするためである。
【0045】
次に、ヒートポンプ1の制御方法を図2を用いて説明する。
【0046】
図2に示すように、ヒートポンプ1では、まず、制御器15の運転モード切替部17が、通常運転中(通常運転モード)であるか否かを判断する(ステップS1)。通常運転モードであるか否かの判断は、例えば、圧縮機3が運転されているか否かにより判断するとよい。ステップS1にて通常運転中と判断された場合、ステップS2に進み、通常運転中でない(つまり運転停止中)と判断された場合、ステップS4に進む。
【0047】
ステップS2では、停止スイッチがオンとなるまで待つ。停止スイッチがオンとなったら、圧縮機制御部16が圧縮機3の運転を停止し(ステップS3)、ステップS4に進む。
【0048】
ステップS4では、運転モード切替部17が、高温熱源用温度計9で検出した高温熱源の温度Tが所定温度T(T=Ta+k)以上であるか判断する。ステップS4にて高温熱源の温度Tが所定温度T以上であると判断された場合、ステップS5に進み、通常運転モードあるいは運転停止モードから強制循環待機運転モードに切り替える。ステップS4にて高温熱源の温度Tが所定温度T以上でないと判断された場合、ステップS10に進み、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5とを閉じて熱媒体の循環を停止し、運転停止モードとする。
【0049】
ステップS5では、圧縮機バイパス弁13を開放し、膨脹弁5を開放すると共に、ポンプ用バイパス弁23を閉じ、循環ポンプ22の運転を開始することで、強制循環待機運転モードに切り替える。これにより、蒸発器2にて加熱された液相の熱媒体が循環ポンプ22により強制的に循環され、加熱された熱媒体によりヒートポンプ1全体が予熱される。なお、ヒートポンプ1では、圧縮機3の前段に気液分離器11を設けており、この気液分離器11に圧縮機バイパスライン12を接続しているため、液相の熱媒体は気液分離器11から圧縮機バイパスライン12に導入されることとなり、液相の熱媒体が圧縮機3に供給されることはない。
【0050】
ステップS5で強制循環待機運転モードに切り替えた後、運転モード切替部17は、高温熱源用温度計9で検出した高温熱源の温度Tが所定温度T以上であるか判断する(ステップS6)。ステップS6にて高温熱源の温度Tが所定温度T以上でないと判断された場合、ステップS8に進み、強制循環待機運転モードから液位調整モードに切り替える。液位調整モードでは、循環ポンプ22の運転を停止し、ポンプ用バイパス弁23を開放すると共に、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5の開度を調整して蒸発器2の液位が所定の液位となるように制御する。また、液位調整モードでは、液相戻しライン用二方弁20を開放し、気液分離器11に溜まった液相の熱媒体を、液相戻しライン19を介して中間液溜め10に戻すようにされる。
【0051】
ステップS8にて蒸発器2の液位を調整した後、ステップS10に進み、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5とを閉じて熱媒体の循環を停止し、運転停止モードに切り替える。なお、運転停止モードでは、液相の熱媒体をできるだけ中間液溜め10に戻しておくために、液相戻しライン用二方弁20は開放される。
【0052】
ステップS6にて高温熱源の温度Tが所定温度T以上であると判断された場合、運転モード切替部17は、運転スイッチがオンとなっているかを判断する(ステップS7)。ステップS7にて運転スイッチがオンとなっていないと判断された場合、ステップS5に戻り、強制循環待機運転モードを継続する。ステップS7にて運転スイッチがオンとなっていると判断された場合、ステップS9に進み、強制循環待機運転モードから液位調整モードに切り替え、蒸発器2の液位を調整した後、ステップS13に進む。
【0053】
ステップS13では、圧縮機制御部16が圧縮機3を駆動すると共に、運転モード切替部17が圧縮機バイパス弁13を閉じ、通常運転モードに切り替える。通常運転モードに切り替えた後、ステップS2に戻る。なお、圧縮機3を駆動するとき、液相戻しライン用二方弁20を開放したままだと、圧力差により熱媒体が液相戻しライン19を逆流してしまうので、通常運転モードに切り替える際には、液相戻しライン用二方弁20を閉じるようにされる。
【0054】
なお、ステップS8,S9の液位調整モードでは、より具体的には、圧縮機バイパス弁13を開放すると共に、膨脹弁5を閉じて凝縮器4から蒸発器2への液相の熱媒体の供給を停止するか、あるいは膨脹弁5の開度を小さくして凝縮器4から蒸発器2への液相の熱媒体の供給量を少なくする。すると、蒸発器2に溜まった液相の熱媒体が凝縮器4側(中間液溜め10)に移動し、蒸発器2の液位がだんだん下がってくるので、所望の液位となったときに、液位調整モードを終了して運転停止モード、あるいは通常運転モードに切り替える。蒸発器2の液位が所望の液位となったか否かは、例えば、蒸発器2に液位を検出する任意のセンサを設け、そのセンサを用いて蒸発器2の液位を検出すればよい。なお、蒸発器2の液位の検出を行わず、液位調整モードを開始してから予め設定した時間を経過したときに、蒸発器2の液位が所望の液位になったとして、液位調整モードを終了するようにしてもよい。
【0055】
ステップS10に進み、運転停止モードに切り替えた場合、その後、運転モード切替部17は、高温熱源用温度計9で検出した高温熱源の温度Tが所定温度T以上であるか判断する(ステップS11)。ステップS11にて高温熱源の温度Tが所定温度T以上であると判断された場合、ステップS5に進み、運転停止モードから強制循環待機運転モードに切り替える。
【0056】
ステップS11にて高温熱源の温度Tが所定温度T以上でないと判断された場合、運転モード切替部17は、運転スイッチがオンとなっているかを判断する(ステップS12)。ステップS12にて運転スイッチがオンとなっていないと判断された場合、ステップS10に戻り、運転停止モードを継続する。ステップS12にて運転スイッチがオンとなっていると判断された場合、ステップS13に進み、圧縮機制御部16が圧縮機3を駆動すると共に、運転モード切替部17が圧縮機バイパス弁13を閉じて、通常運転モードに切り替え、ステップS2に戻る。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態に係るヒートポンプ1では、圧縮機3の運転を停止する際あるいは運転停止中に、高温熱源用温度計9で検出した高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、圧縮機バイパス弁13を開放し、膨脹弁5を開放すると共に、ポンプ用バイパス弁23を閉じ、循環ポンプ22の運転を開始させることで、熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替えるようにしている。
【0058】
これにより、ヒートポンプ1の運転停止中であっても、蒸発器2に供給されている高温熱源からの熱をヒートポンプ1全体に伝えることが可能となるため、ヒートポンプ1全体の平均温度を環境温度以上に保持することが可能となる。よって、運転開始時に熱媒体を加熱する時間を短縮でき反応性を向上できると共に、ヒートポンプ1全体の温度を上昇させるのに必要な熱量も少なくなるので省エネルギー性も向上できる。
【0059】
また、ヒートポンプ1では、強制循環待機運転モード中に、高温熱源の温度が所定温度未満となったとき、循環ポンプ22の運転を停止し、ポンプ用バイパス弁23を開放すると共に、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5の開度を調整して蒸発器2の液位が所定の液位となるように制御した後、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5とを閉じて、熱媒体の循環を停止するようにしている。
【0060】
これにより、運転停止モードから通常運転モードに復帰するときに、蒸発器2の液位が高すぎて、圧縮機3に液相(ミスト状)の熱媒体が供給されて不具合が発生してしまうことを防止できる。
【0061】
さらに、ヒートポンプ1では、強制循環待機運転モードから通常運転モードに復帰する際、循環ポンプ22の運転を停止し、ポンプ用バイパス弁23を開放すると共に、圧縮機バイパス弁13と膨脹弁5の開度を調整して蒸発器2の液位が所定の液位となるようにした後、圧縮機3の運転を再開すると共に、圧縮機バイパス弁13を閉じるようにしている。
【0062】
これにより、強制循環待機運転モードから通常運転モードに復帰するときに、蒸発器2の液位が高すぎて、圧縮機3に液相(ミスト状)の熱媒体が供給されて不具合が発生してしまうことを防止できる。
【0063】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0064】
図3に示すヒートポンプ31は、図1のヒートポンプ1において、ポンプ用バイパスライン21の出口を凝縮器4の入口近傍の熱媒体循環ライン8に接続するようにし、ポンプ用バイパス弁23を省略したものである。
【0065】
ヒートポンプ31では、運転モード切替部17は、圧縮機3の運転を停止する際あるいは運転停止中に、高温熱源用温度計9で検出した高温熱源の温度が所定温度以上であるとき、圧縮機バイパス弁13を開放すると共に、膨張弁5を開放し、循環ポンプ22の運転を開始させて熱媒体を強制循環させる強制循環待機運転モードに切り替えるよう構成される。
【0066】
ヒートポンプ31では、強制循環待機運転モードにおいては、膨張弁5の開放により、中間液溜め10の下方、すなわち、中間液溜め10と蒸発器2との間の熱媒体循環ライン8を構成する配管や、熱源である蒸発器2の下部に液相の熱媒体が溜まる。よって、蒸発器2の下部にて加熱された熱媒体2が対流を起こし、さらに配管類からの伝熱も加わって、熱媒体2全体が加熱され、加熱された熱媒体がポンプ22により強制循環され、凝縮器4の入口に供給されることになる。
【0067】
なお、ヒートポンプ31では、装置全体ではなく、凝縮器4とその周辺の配管のみを予熱することになるが、ヒートポンプ31の各構成要素のうち最も温まりにくい凝縮器4とその周辺の配管を十分に予熱することで、定格運転に到達させる時間を短縮する効果は十分に得られる。また、ヒートポンプ31によれば、ポンプ用バイパス弁23を省略できるので、装置の簡略化およびコスト削減が可能となる。
【0068】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0069】
例えば、上記実施の形態では、運転モード切替部17で循環ポンプ22のオンオフのみを制御する場合を説明したが、運転モード切替部17で循環ポンプ22の吐出量を調整するようにしてもよい。
【0070】
より具体的には、蒸発器2の出口での熱媒体の温度を計測する熱媒体用温度計をさらに備え、運転モード切替部17を、強制循環待機運転モード中に、熱媒体用温度計で検出した熱媒体の温度が熱媒体の蒸発温度未満となるように、循環ポンプ22の吐出量(すなわち熱媒体の流量)を調整するよう構成してもよい。
【0071】
蒸発器2に供給される高温熱源の温度が高く、蒸発器2における熱媒体の蒸発量が多くなると、熱媒体を循環させる効率が悪化するが、上述のように構成することにより、蒸発器2における熱媒体の蒸発を抑制し、熱媒体を効率よく循環させることが可能となる。
【0072】
なお、蒸発器2における熱媒体の蒸発を抑制する制御は、これに限らず、例えば、蒸発器2に供給する高温熱源の流量や温度を調整することで、蒸発器2で高温熱源から熱媒体に与えられる熱量を低減し、熱媒体の蒸発を抑制することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 ヒートポンプ
2 蒸発器
3 圧縮機
4 凝縮器
5 膨張弁
8 熱媒体循環ライン
9 高温熱源用温度計
12 圧縮機バイパスライン
13 圧縮機バイパス弁
15 制御器
17 運転モード切替部
21 ポンプ用バイパスライン
22 循環ポンプ
23 ポンプ用バイパス弁
図1
図2
図3