(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760457
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 53/04 20060101AFI20150723BHJP
B65D 77/30 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
B65D53/04 A
B65D77/30 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-17069(P2011-17069)
(22)【出願日】2011年1月28日
(65)【公開番号】特開2012-158335(P2012-158335A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2013年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】三好 征記
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−197018(JP,A)
【文献】
米国特許第05810197(US,A)
【文献】
特開2010−143583(JP,A)
【文献】
特開2007−269370(JP,A)
【文献】
特開2009−280283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 53/04
B65D 77/30
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部をシール蓋で封止した包装容器であって、
前記開口部および底部を有する筒形状の容器本体と、
基材層および当該基材層に剥離可能に積層された保護フィルムからなり、前記開口部の周縁部に前記基材層がシールされて、前記容器本体を封止するシール蓋とを備え、
前記シール蓋は、周縁部の一部にタブを有し、
前記タブの前記基材層のうち、前記シール蓋と前記開口部の周縁部とのシール箇所より前記タブの先端側の部分に、前記タブを区画する複数のハーフカットが設けられており、
前記タブの前記基材層のうち、前記複数のハーフカットが設けられている部分が前記容器本体の側壁外面に部分的に接着されており、
前記ハーフカットの少なくとも一部が、前記タブと前記容器本体の側壁外面との接着箇所より前記タブの先端側の領域を通過して、前記タブを区画する、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体をシール蓋で封止する包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インスタントコーヒー等の粉末状の食品は、保存時の密閉性を保持できるように、一般に、キャップ付き瓶のような密閉性の高い包装容器に充填した状態で販売される。このような包装容器として、特許文献1では、より簡便に内容物の詰め替え作業が行える詰め替え用の包装容器が提案されている。
【0003】
図6に、このような、従来の包装容器900の縦断面図を示す。包装容器900は、円筒形状の容器本体920と、漏斗パーツ930と、シール蓋960とから構成されている。漏斗パーツ930は、漏斗931と、漏斗931の広口側の端部に接続された側壁932とから構成されている。側壁932は、容器本体920内部に嵌め込まれ、容器本体920の内面に接合されている。漏斗931は、容器本体920の開口部の外側に向けて径が狭まる形状となっている。容器本体920の内部には内容物950が充填された後、容器本体920の開口部を形成するフランジ939にシール蓋960がシールされ、容器本体920が封止される。
【0004】
図7に、シール蓋960の平面図を示す。シール蓋960の周縁の一部には、タブ991が設けられている。シール蓋960およびタブ991の材料は、保護フィルム層962と基材層963とを剥離可能に積層した積層フィルムが用いられており、シール蓋960とタブ991との接続部分の近傍には、基材層963側に、剥離開始用のハーフカット997が形成されている。また、シール蓋960の中心から放射状に延びる複数のミシン目999が、基材層963に形成されている。保護フィルム層962は、流通時や保管時に基材層963を保護しており、使用時には包装容器900から除去される。すなわち、包装容器900の内容物950の詰め替えを行う際は、タブ991をつまんで捲り上げ、保護フィルム層962を基材層963から剥離して除去した後、詰め替え先の容器の開口部に、包装容器900を逆さにした状態で、基材層963のみが残存したシール蓋960をあてがい、下方(詰め替え先の容器側)に力を加えて押し込むことで、ミシン目999に沿ってシール蓋960を破断させ、漏斗931を介して、容易に内容物の詰め替えを行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−280283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に、包装容器900のタブ991周辺(
図6の破線で囲んだ部分)の拡大断面図を示す。Aの位置にハーフカット997が位置する場合、ハーフカット997の近傍のシール蓋960側の領域が、フランジ939にシールされているため、タブ991をつまんで捲り上げると、タブ991から伝わる引っ張り力と、フランジ939とのシール箇所から伝わる抵抗力とが、ハーフカット997近傍のシール蓋960に対してほぼ垂直、かつ、互いに逆方向に作用し、保護フィルム層962を基材層963から引き剥がすことができる。しかし、Aよりタブ991の側にずれたBの位置にハーフカット997が位置する場合、タブ991をつまんで捲り上げても、ハーフカット997が、シール蓋960およびフランジ939のシール箇所から離れているため、引っ張り力およびシール箇所から伝わる抵抗力が、ハーフカット997の位置において、シール蓋960に対してほぼ水平方向に作用するため、保護フィルム層962を基材層963から引き剥がすことが困難となる。また、タブ991をつまんで捲り上げる際、剥離開始位置となるハーフカット997を誤って指でつまんで押さえてしまい、剥離のきっかけを失うおそれもある。一般に、ハーフカット997の位置が、シール箇所の端部から2〜3mm以上離れると、ハーフカット997を剥離開始位置として、保護フィルム層962を基材層963から引き剥がすことができなくなる。また、シールされる箇所であるCの位置にハーフカット997が位置する場合、剥離開始位置となるハーフカット997の両側がフランジ939にシールされた状態、さらにはシール蓋960がフランジ939にシールされる際に生じる熱などにより、ハーフカット997近傍の樹脂が溶融することでハーフカット997の切れ目が樹脂で埋められて、完全にシールされた状態となることで、剥離のきっかけが失われてしまうおそれがある。また、ハーフカット997を境に基材層963が両側に離間する(分断される)ためフランジ939におけるシール強度が低下し、包装容器の密封性が損なわれるおそれがある。このように、ハーフカット997は、シール蓋960およびフランジ939のシール箇所との関係で、適切な位置に配置されなければならない。
【0007】
しかしながら、上述のAの位置にハーフカット997を位置させるためには、シール蓋960へのハーフカット形成処理や、シール蓋960のフランジ939へのシール処理において、位置決めの精度を向上する必要があり、そのためには、設備変更等が必要になる。また、ハーフカット997を、複数設けたり、波線等の曲線形状にすることで、少なくとも一部の箇所が適切な位置に形成されるようにして、位置決め誤差を吸収することも考えられるが、この場合、ハーフカット997のシール蓋960寄りの一部が、上述のCの位置に形成され、包装容器900の密封性に問題が生じるおそれがある。
【0008】
それ故に、本発明の目的は、高精度の位置決めを行うことなく、また、密封性を損なうことなく、シール蓋のタブに、保護フィルム層および基材層の剥離開始位置として機能するハーフカットを形成した包装容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、開口部をシール蓋で封止した包装容器であって、開口部および底部を有する筒形状の容器本体と、基材層および当該基材層に剥離可能に積層された保護フィルムからなり、開口部
の周縁部に基材層がシールされ
て、容器本体を封止するシール蓋とを備える。シール蓋は、周縁部の一部
にタブを有し、
タブの基材層のうち、シール蓋と開口部の周縁部とのシール箇所よりタブの先端側の部分に、タブを区画する複数のハーフカットが設けられており、タブの基材層
のうち、
複数のハーフカットが設けられている部分が容器本体の側壁外面に部分的に接着されており、ハーフカットの少なくとも一部が、タブと容器本体
の側壁外面との接着箇所よりタブの先端側の領域を通過して、タブを区画する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高精度の位置決めを行うことなく、また、密封性を損なうことなく、シール蓋のタブに、保護フィルム層および基材層の剥離開始位置として機能するハーフカットを形成した包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の一実施形態に係る包装容器の縦断面図
【
図4】本発明の一実施形態に係る包装容器の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る包装容器100の斜視図である。
図2は、
図1に示したA−A´線に沿った断面図である。
図3は、シール蓋160の平面図である。
図2を参照すると、包装容器100は、円筒形状の容器本体120と、漏斗パーツ130と、シール蓋160と、とから構成されている。漏斗パーツ130は、漏斗131、および、漏斗131の広口側の端部に接続され、漏斗131の外面を取り囲む側壁132とから構成されている。側壁132は、容器本体120内部に嵌め込まれ、容器本体120の内面に接合されている。漏斗131は、容器本体120の開口部の外側に向けて径が狭まる形状となっている。容器本体120の内部には粉体等の内容物150が充填され、容器本体120の開口部を形成するフランジ139にシール蓋160がシールされ、容器本体120が封止される。
【0013】
図3を参照すると、シール蓋160の周縁の一部にはタブ191が設けられている。シール蓋160とタブ191は、基材層163と保護フィルム層162とを剥離ニスを介して貼り合わせたシートを打ち抜くことによって一体的に形成されている。シール蓋160の基材層163には、詰め替え時に押圧された際の破断を容易にするため、放射状のミシン目199が中心から所定の長さにわたって設けられている。また、タブ191の基材層163には、複数のハーフカット197が形成されている。ハーフカット197の各々は、タブ191を横断して、タブ191の先端部と、シール蓋191の中心側の部分とを区画している。
【0014】
図1および
図2を参照すると、タブ191の基材層163は、接着領域198において、容器本体120の側壁に接着されている。
図1に示すように、接着領域198は、タブ191の最も先端側に形成されたハーフカット197より、シール蓋191の中心側に設けられている。この結果、ハーフカット197の一部は、接着領域198よりタブ191の先端側の領域を通過している。接着の方法としては、ホットメルト、接着剤、溶着等による方法が挙げられるが、基材層163や容器本体120の側壁の材質等に応じて適宜選択すればよい。
【0015】
図4の(a)は、包装容器100の接着領域198を含む部分(
図2の破線で囲んだ部分)の拡大断面図である。タブ191をつまんで接着領域198から引き離す方向に引っ張ると、接着領域198の近傍のうち、タブ191の先端側の領域において、タブ191から伝わる引っ張り力と、容器本体120の側壁から伝わる抵抗力とが発生する。これらの力が、当該領域において保護フィルム層162および基材層163に、ほぼ垂直で互いに逆方向の剥離力として作用する。そのため、
図4の(b)に示すように、ハーフカット197の当該領域に形成された部分を剥離開始位置として、保護フィルム層162を基材層163から剥離することができる。
【0016】
ハーフカット197の位置、本数、形状等は、形成処理における位置精度を考慮し、ハーフカット197が、シール蓋160のフランジ139へのシール箇所に形成されないように、決定される。また、接着領域198の大きさは、同様にハーフカット197の形成処理における位置精度を考慮し、ハーフカット197の少なくとも一部が、接着領域198よりタブ191の先端側にある部分を通過できるように決定される。また、接着する領域の形状は円のほか、楕円や多角形や線状であってもよく、ハーフカット197の本数や形状に応じて適した形状を選択すればよい。
【0017】
図5の(a)および(b)に、タブ191に形成されるハーフカット197の形状の他の例を示す。
図5の(a)に示す形状は、ハーフカット197をタブ191の先端側に凸の曲線状に形成したものである。また
図5の(b)に示す形状は、ハーフカット197をほぼU字型となるようにし、ハーフカット197の一部がタブ191の長手方向(図面の縦方向)に延びるよう形成したものである。いずれの場合でも、少なくとも1本のハーフカットが、接着領域198よりタブ191の先端側の部分を通過している。また、
図5(b)の例では更に、ハーフカット197が接着領域198の外方側を取り囲むように延びている。
図1で示した位置にタブを設けた場合、使用者は、タブの先端を持って斜め方向に引き上げる場合がある。この
図5のハーフカット形状の場合、タブ191を真っ直ぐに(容器の軸方向に)引き上げる場合はもちろん、横方向や斜め方向にタブ191を捲っても、保護フィルム層162の剥離が可能となる。ハーフカット197の形状は、いずれの箇所から剥離が開始しても、その後の保護フィルム層162の剥離が円滑に進行するように形成されればよく、これらのバリエーションに限定されない。なお、ハーフカット197の本数は、概ね3本以上とすることが好ましい。
【0018】
容器本体120の材料としては、外面から順に、LDPE(低密度ポリエチレン)/紙/LDPE/アルミニウム/接着剤/PET/接着剤/LDPEの層構成を持つ材料が挙げられる。漏斗パーツ130の材料としては、HDPE(高密度ポリエチレン)、ポリプロピレンが挙げられる。
【0019】
シール蓋160の保護フィルム層162の材質としては、包装容器100の外側から、基材層163側に向かって順に、紙/LDPE(低密度ポリエチレン)/剥離ニスの層構成を有する積層体が挙げられる。また、シール蓋160の基材層163の材質としては、保護フィルム層162側から、包装容器100の内側に向かって順に、アルミ箔/LDPE/PET/LDPE/LLDPE(線状低密度ポリエチレン)の層構成を有する積層体が挙げられる。ここでLLDPEは、シーラント層として機能する。
【0020】
以上のように、本発明の一実施形態に係る包装容器100においては、タブ191に複数本のハーフカット197が形成されているので、接着領域198の位置が若干ずれたとしても、いずれかのハーフカットの少なくとも一部を接着領域198より先端側に位置させることができる。したがって、シール蓋160のタブ191に、包装容器100の密封性を損なうおそれなく、剥離開始位置として有効に機能するハーフカット197を形成することができる。また、これにより、包装容器100の製造にあたり、位置決め精度の高い新たな設備を導入する必要がなくなる。例えば、シール蓋160を容器本体100のフランジ139にシール処理する際、高精度の枚葉ラベラーを導入すると、設備コストがかかるうえ、シール蓋160のカールを抑制する必要が生じ、工程が複雑となる。これに対し、本発明においては、既存のロールラベラーを用いることができ、これらのコストを抑制できる。
【0021】
包装容器100は、容器本体120をシール蓋160で封止する態様であればよく、漏斗パーツ130を備えていなくてもよい。本発明は、流通時や保管時には保護層によってシール蓋を保護し、使用時には保護層を除去するタイプの包装容器であれば、多様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、容器本体をシール蓋で封止する包装容器等に有用である。
【符号の説明】
【0023】
100、900 包装容器
120、920 容器本体
130、930 漏斗パーツ
131、931 漏斗
132、932 側壁
139、939 フランジ
150、950 内容物
160、960 シール蓋
162、962 保護フィルム層
163、963 基材層
191、991 タブ
197、997 ハーフカット
198 接着領域
199、999 ミシン目