(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る包装容器の斜視図であり、
図2は、
図1に示す包装容器の蓋体の一部を剥離している状態を示す斜視図である。
【0011】
図1に示す包装容器11は、カップ容器21と、当該カップ容器21の開口部を封止するシート状の蓋体31とを備える。
【0012】
カップ容器21は円形状の開口部を有する。また、カップ容器21の開口端25には外側に突出するフランジが形成されている。更に、カップ容器21には、開口端25からの深さが他の部分より浅い浅瀬部26が形成されている。当該浅瀬部26には複数の突起27が形成されている。カップ容器は、ポリスチレン、ポリプロピレン等の成形品が好適に用いられる。
【0013】
蓋体31は、カップ容器21にシールするためのシーラントを有するシート材よりなり、カップ容器21の開口部より一回り大きな略円形状に形成されている。また、蓋体31の外周縁の一部には、蓋体31をカップ容器21の開口部から剥離するためのタブ61と、蓋体31の一部を剥離して除去するためのタブ62及び切断線51とが設けられている(この蓋体の一部剥離については後述する)。
【0014】
図3は、
図2に示す包装容器のIII−IIIラインに沿った断面図であり、
図4は、
図3に示す包装容器のA部に相当する蓋体の拡大断面図である。
【0015】
図3及び4に示すように、蓋体31は、カップ容器21の開口部に貼着される側から順に、例えば、接着性樹脂、アルミニウム箔、ポリエチレン、紙を積層したシートからなる。また、蓋体31には、紙を貫通する深さで、当該蓋体31の平面方向に横断する切断線51が形成されている。そして当該切断線51によって、蓋体31は、外周縁の一部を含む領域41(右上がり斜線部)と、領域41以外の領域42(右下がり斜線部)とに区画されている。尚、接着性樹脂は、カップ容器21の材質によって適宜最適なものを選択すれば良く、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や、エチレンメタアクリル酸コポリマー(EMAA)、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)を用いることができる。また、切断線51は、例えば、ミシン目(切断線51のラインに沿って1本または複数本)やハーフカットにより形成される。尚、上記の蓋体31の層構成はあくまでも一例であり、当該蓋体31の層構成は、カップ容器21の開口部にシールされるシート状のものであれば、層数や材質については任意である。
【0016】
ここで、
図2及び3に示すように、蓋体31の領域41は、カップ容器21の浅瀬部26の一部に重なっている。また、突起27は、蓋体31の領域42にシールされている。
【0017】
包装容器11は、例えば、湯で戻すタイプの即席麺を包装するために用いられる。麺を食するに際しては、まず、湯を注ぐために、タブ61を摘まんで捲り上げることで蓋体31の一部をカップ容器21の開口部から剥離する。そして、開封された開口部からカップ容器21に熱湯を注いだ後、再度蓋体で開口部を覆い、麺を湯戻し調理する。所定時間が経過して麺の調理が完了した後に、タブ62を摘み、
図2の白抜き矢印方向に捲ると、切断線51に沿って、領域41の蓋体が領域42の蓋体と切り離され、領域41の蓋体がカップ容器21の開口部から剥離される。これによって、開封用のタブ61と反対側に、カップ容器21内の湯を排出するための排出口81が形成される。この時、排出口81からは浅瀬部26が露出している。そして、相対的に浅瀬部26が低くなるように、カップ容器21を傾けることで、カップ容器21内の湯は、浅瀬部26と蓋体31との隙間を通過して排出口81から排出される。前述したように、突起27が領域42の蓋体31にシールされているため、湯切り時において、蓋体31の撓みに起因する浅瀬部26と蓋体31との隙間の広がりが防止される。この結果、湯切り時における麺等の内容物の流出が効果的に防止される。
【0018】
このように、包装容器11を用いれば、切断線5に沿って蓋体31の一部(領域41)を分離することができるため、蓋体31をカップ容器21の開口部から剥離しすぎることがない。更に、浅瀬部26と領域42の蓋体31との隙間によって、湯切り時における麺の流出がより効果的に防止される。尚、包装容器11において、突起27を設けずに、浅瀬部26のみの構成を用いても良い。また、蓋体31の領域41の切断を容易にするために、切断線5の端部(タブ62側)に切り込みを形成しても良い。
【0019】
(第1の実施形態の変形例)
尚、第1の実施形態に係る包装容器において、
図5に示すように、カップ容器の浅瀬部及び突起がない形状を採用しても良い。この場合でも、蓋体の領域41の大きさを調整することで、湯切り時に麺の流出を防止しつつ、良好な湯切りを実現することが可能である。
【0020】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る蓋体でカップ容器を封止した状態を示す斜視図である。
【0021】
蓋体32の外周縁の一部には、蓋体32を開口部から剥離するためのタブ63と、湯切りのための排出口を形成する際に蓋体の表層の一部(右上がり斜線部)を部分剥離させるためのタブ64とが設けられている。
【0022】
図7は、
図6に示す蓋体及びカップ容器のVII−VII線に沿った断面図であり、
図8は、
図7に示す包装容器のB部の拡大断面図である。
【0023】
蓋体32は、カップ容器にシールされる基材35と、基材35に剥離可能に積層される表面材36とからなる。基材35として、例えば、開口部に貼着される側から順に、接着性樹脂、アルミニウム箔、ポリエチレンが積層された積層シートを使用できる。尚、接着性樹脂としては、前述した第1の実施形態と同様のものを用いることができる。また、表面材36は、例えば、紙よりなる。紙の表面には更に、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂フィルムを設けても良い。そして、基材35と表面材36とは、剥離ニスを介して剥離可能に積層されている。剥離ニスは、例えば、ワックス系、ポリアミド系、シリコン系、アクリル系の樹脂系のものが好適に用いられる。当該剥離ニスは、ポリエチレンと紙との界面に、全面または部分的(ドットパターン等)に塗布される。また、剥離ニスの紙への含浸を防止するために、剥離ニスと紙との間に目止めミスを介在させても良い。目止めニスは、例えば、硝化綿系、ウレタン系、ワックス系、ポリアミド系、シリコン系、アクリル系の樹脂系のものが好適に用いられる。尚、上記の蓋体32の層構成は、あくまで一例であり、カップ容器の開口部にシールされ、表面材と基材とが剥離可能に積層されるものであれば良く、表面材及び基材の層数や材質は任意である。
【0024】
また、蓋体32には、
図6に示すように、蓋体32を縦断する直線状の切断線52(ハーフカット)が形成されている。そして、この切断線52によって、蓋体32は、領域43(右上がり斜線部)と領域44(右下がり斜線部)とに区画される。
【0025】
切断線52は、
図8に示すように、表面材36と剥離ニスを貫通し、基材35のポリエチレンの内部に達するように形成されている。また、排出口82を形成する為の複数の円状(蓋体の平面方向において)の切断線53が、基材35と剥離ニスとを貫通し、表面材36を構成する紙の内部にまで達するように形成されている。更に、カップ容器22の径方向において、開口部の外側に位置し、かつ、タブ64を横断する切断線54(ハーフカット)が形成されている。切断線54は、切断線53と同様に、基材35と剥離ニスを貫通し、表面材36を構成する紙の内部に達するように形成されている。
【0026】
図9は、
図6に示す包装容器の蓋体の表面材を剥離している状態を示す斜視図である。
【0027】
蓋体32で封止したカップ容器22において、前述の第1の実施形態と同様に熱湯を注いで湯戻し調理し、所定時間経過による調理完了後に湯切りを行うには、タブ64を摘み、
図9の白抜き矢印方向に捲る。これにより、切断線52に沿って、切断線54を起点に、領域43における表面材36が基材35から剥離され、排出口82(
図6に示す切断線53で囲まれる部分の貫通孔)が露出する。そして、当該排出口82から湯を排出する。
【0028】
尚、排出口82の各々の面積は、0.5〜75mm
2であることが好ましい。排出口82の面積が0.5mm
2未満になると湯切りに時間が掛かり過ぎてしまう。逆に、排出口82の面積が75mm
2を超えると、湯切り時に麺の流出が発生する。また、排出口82の個数は、1〜20個であることが好ましい。更に、排出口82は円形状であるが、特にこれに限定されない。例えば、角状の切断線を設けることで角型の排出口を採用しても良いし、線状の切断線を設けることで、湯切り時に瞳状に広がる排出口を採用しても良い。
【0029】
このように蓋体32を用いれば、湯切り時に蓋体32をカップ容器22から剥離することなく、排出口82から湯切りを行うことができる。これによって、湯切りの際に、麺が流出することがない良好な湯切りが実現される。
【0030】
尚、上記の第1及び第2の実施形態に係るカップ容器では、開口形状は円状であるが、特にこれに限定されない。例えば、開口の形状が角型のカップ容器を用いても良い。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を具体的に実施した実施例について説明する。
【0032】
(実施例1)
実施例1に係る包装容器は、
図1に示したものと同様の構成を備える。蓋体31の層構成は、カップ容器21の開口部に貼着される側から順に、厚み25μmのEMAA系のポリスチレン樹脂と、厚み7μmのアルミニウム箔と、厚み13μmのポリエチレンと、表面に指定の絵柄を印刷した秤量79.1g/m
2の片アート紙とを積層したものである。また、切断線51は、ミシン目を、切断線51のラインに沿って、3列に形成したものである。
【0033】
(実施例2)
実施例2に係る包装容器は、
図6に示したものと同様の構成を備える。蓋体32は、基材35として、カップ容器22の開口部に貼着される側から順に、厚み20μmのEMAA系のポリスチレン樹脂、厚み9μmのアルミニウム箔、厚み13μmの押出低密度ポリエチレン(LDPE)を積層したものを用いた。また、表面材36として、表面に指定の絵柄を印刷した秤量79.1g/m
2の片アート紙を用いた。基材35と表面材36とは、LDPE側の基材35上に剥離ニス(全面)及び目止めニス(ドット状)を介在させた状態で、貼着されている。切断線52は、切断線52のラインに沿う3列のミシン目によって形成した。切断線53及び54はハーフカットで形成した。
【0034】
(比較例1)
比較例1に係る包装容器は、
図10及び11に示すものを用いた。包装容器13における蓋体33は、シート成形された樹脂成形品からなり、円状の天板37と、天板37の外周縁から
図11の下方向に垂直に延びる円筒状の側壁38とを有する。側壁38が開口部側のカップ容器23のフランジに嵌合することで、蓋体33がカップ容器23に固定されている。また、天板37には、当該天板37を貫通するU字状の切込みによって、ツメ39が形成されている。そして、当該ツメ39を
図10の上側に折り曲げることで、排出口83が形成される。
【0035】
(比較例2)
比較例2に係る包装容器は、
図12に示すものを用いた。包装容器14は、カップ容器24の開口部に蓋体34を貼着したものである。また、カップ容器24には、側壁の一部に底部から開口部に向かって延びる複数の溝28が形成されている。溝28は、湯切り時に湯の流れを誘導するために設けられている。タブ65を摘まんで蓋体34の一部をカップ容器24の開口部から剥離すると、排出口84が形成される。そして、当該排出口84からは溝28が露出している。
【0036】
実施例1及び2、比較例1及び2に係る包装容器に内容物(麺、具材等)をいれ、各包装容器に湯を入れて、所定時間経過後、排出口から湯を排出する試験を行った。当該試験結果について以下の項目の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0037】
[湯切り性]
湯切りを行った際に、湯切りに要する時間について、「○:湯切りに要する時間が短い△:湯切りに要する時間が「○」の場合ほど短くはないが、実用上問題なし、×:湯切りに要する時間が長い」で評価した。
【0038】
[麺の流出防止]
蓋が外れるなどの不具合が生じた場合も含め、湯切りを行った際における麺等の流出の有無について、「○:麺等の流出が無かった、△:麺等の流出が少しあった、×:麺等の流出が多くあった」で評価した。
【0039】
[蓋体の生産性]
蓋体を製造するためのスピードや工程数といった生産効率を考慮した蓋体の生産の容易さについて、「○:生産が容易である、△:やや生産が容易でない、×:生産が容易でない」で評価した。
【0040】
[蓋体のコスト]
蓋体の製造コストについて、相対的に、「○:コストが低い、△:普通、×:コストが高い」で評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1より、実施例1及び2に係る包装容器では、湯切り性が良好であり、かつ、湯切り時における麺の流出を防止できることが確認された。また、実施例1に係る包装容器の蓋体は、生産が容易であり、かつ、低コストでの作製が可能である。