(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760467
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ボウル設備
(51)【国際特許分類】
E03C 1/22 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
E03C1/22 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-22917(P2011-22917)
(22)【出願日】2011年2月4日
(65)【公開番号】特開2012-162887(P2012-162887A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅子
(72)【発明者】
【氏名】三中西 洋一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢一
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−126974(JP,U)
【文献】
特開2002−000479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
A47K 1/00−1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面から筒状の排水孔部が下方に突設されたボウルと、
該排水孔部が上方から差し込まれた排水器具と、
該排水器具と該排水孔部との間を封じるパッキンと
を有するボウル設備において、
該排水器具が建物床面又は建物壁面に対し支持部材によって支持されており、
該支持部材には該排水器具が挿入された開口又は切欠よりなる挿通部が設けられており、
該排水器具には、該挿通部の上縁に当接した当接部が設けられていることを特徴とするボウル設備。
【請求項2】
請求項1において、前記支持部材は、開口又は切欠を有した天板と、該開口又は切欠を覆うように該天板に取り付けられた支持板とを有しており、
該挿通部の内周面と前記排水器具の外周面との間にスペースがあいていることを特徴とするボウル設備。
【請求項3】
請求項1において、前記支持部材は天板を有しており、
該挿通部の内周面と前記排水器具の外周面との間にスペースがあいていることを特徴とするボウル設備。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
該当接部は、排水器具から少なくとも放射3方向に延設されていることを特徴とするボウル設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面器、手洗器、掃除流しなどのボウル設備に関するものであり、詳しくは、洗面鉢又は手洗鉢などのボウル(鉢)の排水孔部と排水器具とを接続したボウル設備に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面器、手洗器、掃除流しなどの排水口と排水管とを接続するには、排水口にフランジ付きアダプタ(管状体)を上方から差し込み、該アダプタ上端の該フランジを該排水口の上縁に係合させ、該アダプタに下方からナットを締め込み、該アダプタを該洗面器又は手洗器に固定し、このアダプタに排水管を接続することが広く行われている。
【0003】
この接続構造では、フランジが洗面器又は手洗器等の鉢(ボウル)内に露呈するので、フランジと鉢との境界にゴミが溜ったり、フランジが腐食したりすることにより見栄えが悪くなることがあった。
【0004】
かかる短所を解決するものとして、ボウル底面から下方に短い筒状の排水孔部を突設しこの排水孔部をボウル下側の排水器具に上方から差し込み、パッキンでシールする構造が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−126974
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のボウル排水孔部と排水器具との接続構造では、排水器具に下向きに大きな力が加えられると排水器具が排水孔部から外れるおそれがある。
【0007】
本発明は、ボウルの排水孔部をボウル下側の排水器具に差し込んでパッキンでシールしたボウル設備において、この排水器具が排水孔部から外れることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のボウル設備は、底面から筒状の排水孔部が下方に突設されたボウルと、該排水孔部が上方から差し込まれた排水器具と、該排水器具と該排水孔部との間を封じるパッキンとを有するボウル設備において、該排水器具が建物床面又は建物壁面に対し支持部材によって支持されており、該支
持部材には該排水器具が挿入された開口又は切欠よりなる挿通部が設けられており、該排水器具には、該挿
通部の上縁に当接した当接部が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2のボウル設備は、請求項1において、前記支持部材は、開口又は切欠を有した天板と、該開口又は切欠を覆うように該天板に取り付けられた支持板とを有しており
、該挿通部の内周面と前記排水器具の外周面との間にスペースがあいていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3のボウル設備は、請求項1において、前記支持部材は天板を有しており
、該挿通部の内周面と前記排水器具の外周面との間にスペースがあいていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4のボウル設備は、請求項
1ないし3のいずれか1項において
、該当接部は、排水器具から少なくとも放射3方向に延設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のボウル設備にあっては、排水器具が支持部材によって建物床面又は建物壁面に支持されているので、排水器具に大きな力が加えられても排水器具の外れが防止される。
【0013】
本発明の一態様(請求項2)では、支持部材は、開口又は切欠を有した天板と、該開口又は切欠を覆うように該天板に取り付けられた支持板とを備え
、該挿通部の内周面と前記排水器具の外周面との間にスペースがあいている。本発明の別の一態様(請求項3)では、支持部材は天板であり
、該挿通部の内周面と前記排水器具の外周面との間にスペースがあいている。
【0014】
このように挿通部の内周面と排水器具の外周面との間にスペースをあけておくことにより、排水器具の位置調節が容易である。特に、ボウルが陶器製の場合、寸法公差が比較的大きいので、ボウルを支持板に設置したときに排水孔部の位置が設計上の予定位置からずれることがある。請求項2の態様によれば、排水孔部の位置に合わせて排水器具の位置を容易に調節することができる。これにより、該排水器具に設けられたパッキンに局部的に大きな変形が生じることが防止される。
【0015】
排水器具に設けた当接部をこの挿通部の上縁に当接させることにより、排水器具を支持部材に安定して支持させることができる。また、当接部を少なくとも放射3方向に延設することにより、排水器具を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係るボウル設備を示す縦断面図である。
【
図2】実施の形態に係るボウル設備を示す分解拡大図である。
【
図3】実施の形態に係るボウル設備を示す分解斜視図である。
【
図6】別の実施の形態を示す分解拡大断面図である。
【
図7】排水器具と排水管との接続例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0018】
図1〜5は第1の実施の形態を示すものである。
図1の通り、キャビネット1の天板2の上側に陶器製の手洗器3が設置されている。この手洗器3の鉢部(ボウル)底面から下方に短い筒状の排水孔部3aが突設されている。この排水孔部3aが排水器具4に上方から差し込まれ、パッキン5によってシールされている。
【0019】
図2,3の通り、天板2の前縁から切欠部2aが設けられ、この切欠部2aを下側から覆うように支持部材としての支持板6が設けられている。この支持板6は好ましくは鋼板など高強度金属板にて構成され、ビス8(
図1)によって天板2に留め付けられている。この支持板6には排水器具4の挿通部6aが設けられている。この実施の形態では、挿通部6aはキャビネット前後方向に長い長孔よりなる。なお、天板2には、手洗器3を天板2に固定するボルト(図示略)の挿通孔2bが設けられている。
【0020】
図4,5にも示される通り、排水器具4は、上下方向に等径の管状部4aを有し、この管状部4aの上側に管状部4aよりも大径の椀部4bが連なっている。椀部4bの外周には環状体4cが設けられている。椀部4bと環状体4cとの間の隙間にパッキン5が差し込まれている。そのため、パッキン5は側方から視認されないので、意匠性が良好である。
【0021】
椀部4bの下側には、排水器具4の軸心から見て放射4方向に延在する当接部としてのヒレ部4dが設けられている。このヒレ部4dは、板面を上下方向とした略三角形板状である。各ヒレ部4dの下面は同一高さにある。ヒレ部4dの下面レベルにおける椀部4bの外径は、挿通部6aの短径よりも小さいものとなっている。この実施の形態では、各ヒレ部4dの放射方向先端側は環状体4cと等半径位に位置している。即ち、環状体4cの外径と、各ヒレ部4dの放射方向先端側を結ぶ円の直径は等しく、この外径及び直径は、挿通部6aの短径よりも十分に大きい(例えば1.5〜2倍程度)ものとなっている。
【0022】
椀部4bの内部には、異物の落下防止片4eが設けられている。椀部4bの内径は、手洗器3の排水孔部3aの外径よりも大きい。
【0023】
パッキン5は柔軟に伸縮し、耐久性の高いブチルゴム等よりなる。このパッキン5は、椀部4bと環状体4cとの間に上方から差し込まれる外周環部5aと、該外周環部5aの上端に連なる円板状部5bと、円板状部5bの中心部の開口5cとを有している。この円板状部5bは、中心側ほど下位となるように若干のテーパがつけられている。円板状部5bの下面には、開口5cを取り巻く補強用リブ5d(
図2)が周設されている。開口5cの直径は、手洗器3の排水孔部3aよりも小さい。
【0024】
手洗器3を支持板6付きの天板2の上に設置するのに先立って、排水器具4を挿通部6aに上方から差し込み、ヒレ部4dを支持板6の上面に当接させておく。排水器具4には予めパッキン5を装着しておく。
【0025】
次いで、手洗器3を天板2の上に降ろし、この際、排水孔部3aをパッキン5の開口5cを通して椀部4b内に挿入する。排水孔部3aをパッキン5の開口5cに差し込むと、該開口5cの内周面は排水孔部3aの外周面に水密的に密着する。手洗器3の位置決め後、ボルト(図示略)をボルト挿通孔2bの下側から通し、手洗器3を天板2に固定する。排水器具4の外周面と挿通部6aの内周面との間には第2図の通りスペースがあいているので、この手洗器3の位置決めに際して手洗器3を前後左右に動かしたときに、排水器具4も手洗器3と一体に移動できる。特に、挿通部6aを前後に長い長孔としているので、手洗器3の前後方向に大きく移動させることができる。
【0026】
また、排水器具4にヒレ部4dが放射4方向に延設され、各ヒレ部4dが支持板6の上面に載っているので、排水器具4の姿勢が安定している。例えば、排水器具4を前後左右に動かしても排水器具4が傾くことがない。なお、各ヒレ部4dは放射3方向に設けられてもよく、5方向以上に設けられてもよいが、3〜6方向程度が好ましい。
【0027】
このように排水器具4及び手洗器3を設置した後、該排水器具4を床や壁の排水管に対し接続する。この接続構造は従来と同様であり、特に限定されるものではないが、その一例を
図7に示す。排水器具4に対し下方から直管状の接続管10を外嵌させる。該接続管10の上端の袋ナット(ユニオンナット)11を締めると、該接続管10に設けておいたリング状パッキン(図示略)が縮径し、接続管10と排水器具4とが水密的に連結される。接続管10はトラップ管12及びJ字形の立下り管15を介して床排水管(図示略)に接続される。トラップ管12と接続管10、立下り管15とはそれぞれ袋ナット13,14によって接続固定される。このように排水管に接続された手洗器設備において、排水器具4に下向き又は横向きに大きな力が加えられても、排水器具4が支持板6によって支持されているので、排水器具4が排水孔部3aから外れることがない。
【0028】
この実施の形態では、椀部4bの縦断面形状が上方に向って湾曲しながら拡径するものとなっており、椀部4bに水が溜る隅角部が存在しない。そのため、黴などの発生が防止される。
【0029】
図7では床排水管に接続しているが、壁排水管に接続してもよい。
【0030】
<別の実施の形態>
上記実施の形態では、挿通部6aは前後方向に長い長孔であるが、左右方向に長い長孔としてもよく、管状部4aよりも大きい略円形の孔であってもよい。また、挿通部6aは孔ではなく、支持板6の前縁から切り込まれた切欠部であってもよい。
【0031】
上記実施の形態では、支持板6を用いているが、
図6の実施の形態のように、支持板6を省略し、前記天板2と同一構成の天板2’に設けた孔状挿通部2a’を前記支持板6の挿通部6aと同様の形状及び大きさのものとし、排水器具4のヒレ部4dを該孔状挿通部2a’の上縁に載荷させる構成としてもよい。即ち、天板2’を排水器具4の支持部材として利用するものである。孔状挿通部2a’は前記天板2の切欠部2aと同様の切欠部であってもよい。
【0032】
本発明では、支持板6や天板2’とは別個に建物の壁や床に支持部材としてのブラケットを取り付け、このブラケットによって排水器具4を支持するようにしてもよい。なお、このブラケットに孔状又は切欠状の排水器具挿通部を設けておく。
【0033】
本発明は手洗器以外の洗面器、掃除流しなどのボウルの排水孔部と排水器具との接続にも適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 キャビネット
2 天板
2’ 天板(支持部材)
2a’ 孔状挿通部
3 手洗器
4 排水器具
4a 管状部
4b 椀部
4c 環状体
4d ヒレ部(当接部)
5 パッキン
6 支持板
6a 挿通部