(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
作用について説明する。前方に先部材を有する軸筒の内部に、芯の把持・開放を行うチャック体を含む芯繰り出し手段が配置されたシャープペンシルであって、
前記先部材と前記軸筒とを螺着せしめ、芯を保持する芯保持部材とその芯保持部材の後方に配置された芯ガイドを前記先部材の内部に配置すると共に、その先部材に軸筒の軸芯方向に向かって傾斜したテーパー部を形成し、また、前記芯ガイドに軸筒の軸芯方向に向かって傾斜したテーパー部を形成し、それらテーパー部を当接させたので、芯ガイドが軸芯に案内され、芯ガイドが軸芯からずれず、芯の繰り出し操作を良好に行うことが出来る。
【0010】
ここで、本発明におけるテーパー部とは、直線からなる傾斜部(テーパー部)だけでなく、円弧からなるテーパー部など、種々のテーパー部を意味する。以下の各実施例及び変形例で示すように、本発明におけるテーパー部は、軸筒の軸芯方向に向かって傾斜していればよく、その形状は直線状でも円弧からなるものでも良い。
尚、以下では、軸筒前方に凸の円弧からなるテーパー部を円弧テーパー部、軸筒後方に凸の円弧からなるテーパー部を逆円弧テーパー部とする。
【0011】
本発明の実施例1を
図1〜
図9に示し、説明する。尚、図中下方を前方と言い、上方を後方という。本実施例は、本発明を後端ノック式のシャープペンシルに展開した例である。なお、本発明は、後端ノック式のシャープペンシルに限らず、サイドノック式のシャープペンシルや振り出し式のシャープペンシルなど、種々のシャープペンシルに適用することが出来る。
【0012】
軸筒1は、内部に芯保持部材2と芯ガイド37が圧入固定されている先部材3と、その先部材3の後端に着脱自在に螺着された前軸(第1の軸筒)4と、その前軸4の後端に螺着された後軸(第2の軸筒)5とから構成されており、それらによって構成される軸筒1の内部には芯繰り出し手段6が配置されている。
前記前軸4は、前方に縮径部7が形成されており、この縮径部7の外周には、熱可塑性エラストマーやシリコーンなどからなるグリップ8が配置されている。本実施例においては、グリップ8は、前軸4に挿着されており、そのグリップ8の前方は、その一部が前記先部材3の後部を被覆する構成となっている。一方、前記後軸5は、その後方外周面にクリップ9が一体に設けられている。このクリップ9は、その全体が湾曲した形状となっており、その前方(軸筒1の前方)側には、玉部10が形成されている。
【0013】
次に、前記芯繰り出し手段6について詳述する。本実施例の芯繰り出し手段6においては、芯Lを把持、開放するためのチャック体11が軸筒1の前方に配置されており、そのチャック体11にはチャック体11の開閉を行うチャックリング12が囲繞した状態で挿着されている。そして、チャック体11の後方には芯Lを収容する芯タンク13が圧入固定されている。その芯タンク13の圧入固定部、すなわち、芯タンク13の前方は、縮径部14となっており、この縮径部14により、芯タンク13の外周面には段部15が形成されている。一方、前軸4の前方内周面にも、段部16が形成されている。前記芯タンク13の段部15と前記前軸4の段部16の間には、芯繰り出し手段6を軸筒1の後方へ付勢する弾撥部材(コイルスプリング)17が張設されている。
【0014】
続いて、シャープペンシルの後方部について詳述する。前記芯タンク13の後方内周面には、段部18が形成されている。この芯タンク13の後方には、消しゴム19が挿入されているが、この消しゴム19は、前記芯タンク13の段部18によって位置決めされ、没入が規制されている。
また、前記芯タンク13の後方外周面には、鍔部20と凹部22が形成されている。その凹部22は、鍔部20より後方に位置している。そして、前記芯タンク13の後方には、消しゴム18を覆うように、押圧部材21が嵌合されている。この押圧部材21の内周面には、前記芯タンク13の凹部22と係合する凸部23が形成されており、これにより、芯タンク13と押圧部材21が嵌合出来るようになっている。さらに、押圧部材21の後方には、熱可塑性エラストマーやシリコーンなどからなる押圧部材カバー24が配置されており、また、押圧部材21の天面には、貫通孔25が形成されている。
【0015】
シャープペンシルを使用する際は、前記押圧部材21を軸筒1の前方に向けて押圧する。これにより、芯タンク13、その芯タンク13に圧入固定されているチャック体11が前方に押圧され、前進する。このとき芯Lをも前進せしめ、チャックリング12が先部材3の内周面に設けられた段部のうち、チャックリング12に最も近い段部26に当接し、チャック体11が拡開する。そして、チャック体11の拡開後も、チャック体11の前進動作が行われる。ここで押圧部材21の押圧操作を解除すると、芯タンク13とチャック体11が後退し、チャック体11がチャックリング12によって閉鎖せしめられ、再び芯Lを把持する。これで芯Lの繰り出し動作が完了する。
【0016】
尚、本実施例のシャープペンシルにおいては、前記先部材3の内部やチャック体11に芯Lが詰まってしまった場合には、前記先部材3を前軸4から取り外すことにより、芯Lを取り除くことができる。
チャック体11に芯Lが詰まった場合には、前軸4から後軸5を取り外し、チャック体11を含む芯繰り出し手段6を前軸1の後方から取り出すことによって、芯Lを取り除くことも考えられる。しかしながら、本実施例のシャープペンシルにおいては、それができないようになっている。チャック体11を囲繞するチャックリング12の外径が、前軸1の内部にある前方縮径部27の内径よりも大きく構成されているためである。このため、芯繰り出し手段6を前軸1の後方から取り出そうとしても、チャック体11及びチャックリング12の後方への移動が前軸4によって規制され、芯繰り出し手段6を取り出すことができない。芯繰り出し手段を軸筒から取り出すことが可能な構成のシャープペンシルでは、芯繰り出し手段を構成する各部材を固定し、ユニット化することにより、部材の紛失の危険性を減らしたり、再度の組立性をよくしたりしなければならないが、その場合には、部品点数が増加してしまう。しかしながら、本実施例のような構成とすることにより、部品点数を少なくすることが出来ると共に、芯繰り出し手段6が分解し、部材を紛失してしまうといった危険性を無くすことが出来る。
このように部材の紛失を防げるという良さがあるため、芯繰り出し手段6は前軸4から取り出せない構成としている。しかしながら、使用者がそれに気がつかず、万が一、芯繰り出し手段6を前軸4の後方から取り出そうと無理な力をかけてしまうと、芯の繰り出しに重要な部分である、チャック体11やチャックリング12などが損傷してしまう恐れがある。これを防ぐことができるように、後軸5を前軸4からも取り外せないようになっている。前述した芯タンク13の鍔部20の外径よりも、後軸5の一部の内径の小さくし、段部28を形成することにより、前軸4と後軸5の螺合を解除しても、後軸5の段部15が前記芯タンク13の鍔部20に当接し、引っかかることで、後軸2の後方への移動が規制され、取り外せないようになっているのである。この際、前軸4と後軸5の螺合が解除された後に、前記芯タンク13の鍔部20と後軸5の段部28とが当接するため、前軸4と後軸5のそれぞれの螺子部には負荷がかかることがない。よって、それら螺子部へのダメージを防ぐことができる。
この他、前軸4と後軸5を一体化することもできるが、その場合においても、また、本実施例のように構成した場合においても、ペアデザインのボールペンと後軸を共通化できるなどの良さがある。
【0017】
ここで、前記後軸5について詳述する。
前記後軸5には、前記前軸4の雌螺子部29と螺合する雄螺子部30が形成されているが、その雄螺子部30の前方から後方にかけて窓孔部31が形成されている。この窓孔部31があることにより、前記後軸5は、ボールペンの後軸と共通化することができる。ボールペンの場合には、前記窓孔部31に、押圧部材の前方に形成された突起が嵌まり込む構成となっており、それによって、前記押圧部材の抜け止めを行っているのである。
本実施例のシャープペンシルの場合には、この窓孔部31を利用してはいないが、窓孔部31があっても支障はなく、勿論、この窓孔部31がない後軸5を使用することも出来る。その場合には、万が一にも後軸5の雄螺子部30が撓んでしまうことがなく、また、後軸5と前軸4との螺着後に、後軸5が空転する恐れがなく、より確実に後軸5を前軸4に螺着することが出来る。
この他にも、前記窓孔部31を貫通孔ではなく、凹部としても良い。凹部とする場合には、前記窓孔部31の軸筒内方側全体に、薄膜を設けるようにして形成することが考えられる。このように凹部としても、窓孔部31がない後軸の場合と同様に、後軸5を前記前軸4に螺合した際、後軸5の前方部が内方に撓んでしまうことが万が一にもないため、より確実に後軸5を前軸4に螺着することが出来る。
【0018】
以下、先部材3の構造について、詳述する。
図4は、
図3における先部材3付近の縦断面拡大図である。先部材3の内周面には、前記段部26を含む複数の段部(以下、内周段部とする)が形成されている。その内周段部の一つである段部32は、先部材3の内周面に設けられ軸筒の軸線方向に長さを有する縦リブ部33の後端により形成されており、この縦リブ部33はその先部材3の周方向に等間隔に複数設けられている(
図8、
図9)。そして、この縦リブ部33の後端により形成される段部32の後方に、チャックリング12が当接する前記段部26が形成されている。縦リブ部33の後端により形成されている段部32ではなく、前記段部26にチャックリング12を当接させる構成としているため、前記段部26における先部材3の内径は、チャックリング12の外径より小さく形成されている。
又、前記縦リブ部33の前方には、軸筒の軸芯方向に傾斜したテーパー部3bが形成されている(
図5)。このテーパー部3bは、前記芯ガイド37を圧入固定する際、その芯ガイド37の後述するテーパー面37cが当接し、圧入の前進を規制している。
尚、本実施例においては、チャックリング12の鍔部34を、前記先部材3の段部26に当接させているが、この時、チャックリング12の鍔部34のうち、2%程度を前記段部26に対して当接させる構成としている。この当接割合は、任意に設定することが出来、チャックリング12を先部材3の段部26に対して確実に当接させることが出来ると共に、チャック体11の拡開を確実に行うことが出来るようになっていれば良い。
【0019】
前記先部材3の縦リブ部33について、詳述する。
前記先部材3の縦リブ部33は、芯の繰り出し操作時にチャック体11が前後動する位置と対応する先部材3の内周面部に形成されている。そして、その縦リブ部33の長さは、少なくとも、押圧部材21が完全に押圧された際のチャック体11が最前進した位置から押圧部材21に対する押圧が解除された際のチャック体11が最後退した位置と同等以上としている。更に、前記縦リブ部33の内接円径は、チャック体11が拡開した際の最大外径(負荷がかかっていない場合のチャック体11の拡開時最大外径)よりも小さく形成している。このような構成とすることにより、押圧部材21を押圧し、チャック体11が拡開し、芯Lを開放している状態において、前記チャック体11が前記縦リブ部33の内周面に接触しながら前後動、即ち、摺動するようにしている(
図7〜
図9)。
【0020】
このように、本実施例においては、押圧部材21の押圧時、即ち、芯の繰り出し動作時に、前記先部材3の縦リブ部33に対してチャック体11が摺動する。このため、前記縦リブ部33とチャック体11の少ない接触面積でチャック体11の摺動を行う事ができ、チャック体11が、例えば凹凸がない曲面状の内径円筒部と全周で接触する構造よりも余分な摺動抵抗を抑える事が出来る。そして、その結果、芯の繰り出し荷重が軽くなり、芯の繰り出しを良好に行うことが出来る。
【0021】
また、本実施例においては、チャック体11の拡開時に、そのチャック体11が縦リブ部33に接触するため、チャック体11の必要以上の拡開が規制され、芯Lが軸芯からずれてしまい、適切な位置でチャック体11が芯Lを把持出来なくなってしまうことによる、芯の繰り出し不良を防ぐことが出来る。
ここで、前記適切な位置とは、チャック体11の芯把持部11aに芯Lが位置することである。チャック体11は、複数のチャック片35(本実施例においては、2つのチャック片)を有しており、チャック体11が拡開すると、チャック片35と別のチャック片35との間に隙間Sが形成される。この隙間Sは、前記芯把持部11aを除く部分におけるチャック片35間の隙間であり、チャック体11の頭部(前方部)36の前方ほど大きく、後方に行くに従って小さくなる。本実施例においては、チャック体11の頭部36の中央部から後方部における前記隙間Sを、使用する芯の直径(芯径)R以下とすることによって、チャック体11がその芯把持部11aにおいて芯Lを把持出来るようにしている(
図9)。
【0022】
更に、チャック体11の先部材3に対する摺動抵抗を減らす事で、チャック体11の外周部の摩耗を防ぎ、芯の繰り出し不良などの問題を改善し、より耐久性の高いシャープペンシルとすることが出来る。より詳細には、シャープペンシルの場合、上述した摺動抵抗(チャック体11と先部材3が擦れることによる抵抗)により、何度もチャック体11と先部材3がこすれ合う事でチャック体11の外周部が摩耗し、即ち、外径が小さくなってしまう可能性がある。そして、チャック体11の外径が小さくなることにより、チャック体11の拡開量が多くなり、チャック体11と把持している芯Lとの軸芯がずれてしまうことによる芯の繰り出し不良等が発生する可能性がある。本実施例では、そのようなことがなく、より耐久性の高いシャープペンシルとすることが出来る。
【0023】
尚、仮に、チャック体11が摺動する部分に対応する先部材3の内周面が、凹凸がない曲面状の内径円筒部であったとすると、その内径円筒部においては、肉厚(部品の樹脂厚)が厚くなるため、成形時に樹脂の流れが滞り、ヒケといった現象を引き起こす場合がある。先部材3の外径は、その前方部が後方部に比して縮径している形状であるため、その先部材3の肉厚は、後方に行くほど厚くなってしまい、そのために、部品成形時に肉厚部にヒケが起きやすくなってしまうのである。そのヒケ部分をチャック体11が摺動する事で摺動時に引っかかりなどを引き起こし、芯の繰り出しが重くなることや、芯が出ないなどの不具合を起こす可能性がある。しかし、本実施例のように、チャック体の摺動部分に対応する先部材の内周面をリブ部にする事で、ヒケの発生を抑え、チャック体11の摺動の際の不具合を抑える事が出来る。
【0024】
この他、本実施例においては、先部材3をポリカーボネート(PC)樹脂で形成しており、前記先部材3の縦リブ部33を、その先部材3の周方向に等間隔に6本形成している。
前記縦リブ部33をその本数に関係なく、周方向に等間隔に形成することにより、先部材3を前軸4に螺合した際のその螺合完了位置によらず、チャック体11は常に一定の拡開量を得る事が出来る。
また、前記縦リブ部33の本数は、偶数本としても、奇数本としても良いが、本実施例のような2つのチャック片35からなる二つ割りチャック体の場合、前記先部材3の縦リブ部33の本数を偶数本とすると、前記縦リブ部33によって規制された際のチャック体11の2つのチャック片35の拡開量が、どちらも同じになる。即ち、チャック体11の拡開時には、チャック体11の最大外径部(2つのチャック片35の前方部)が、前記縦リブ部33に当接するか、若しくは、前記縦リブ部33の間に入る構成となる。このため、2つのチャック片35のチャック体11の閉鎖時からの拡開量がそれぞれ同じ量となる(
図8、
図9)。そして、チャック体11は片開きする事がなく、片開きが頻繁に発生すると起こり得る芯噛み部の芯ズレによる芯出ず不良などの不具合を未然に防ぐ事が出来る。
尚、前記縦リブ部33は、任意の本数を設けることが出来るが、4本以上が望ましい。縦リブ部の本数が少ないほど、チャック体の拡開量は大きくなっていく。これは、チャック体の最大外径部が縦リブ部間に入り込む際の入り込み量が、縦リブ部の本数が少ないほど大きくなっていくためである。4本以上が好ましいとする理由は、4本以上の場合には、チャック体の拡開時に、チャック片が確実に縦リブ部に当接することとなり、結果、チャック体の拡開量が安定するためである。
【0025】
ここで、先部材3を成形する際の金型について詳述する。
前記段部26は、金型の構造上、螺子部(本実施例では、雌螺子部3a)を形成する螺子コアにより形成されるが、この螺子コアにより形成される雌螺子部3aは前軸4に形成された雄螺子部4aと螺合される為、厳しい寸法精度を要する部分となっている。一方、前記縦リブ部33に関しては、金型の構造上、螺子コアの内側にリブ部を形成したリブコアを挿入することで形成される。即ち、前記螺子コアとリブコアにより、先部材3の形状を形成しているのである(
図4、
図5参照)。
以上のように、螺子コアとリブコアとを用いて先部材3を形成するが、本実施例においては、螺子コアにより形成される前記段部26よりも前方に、リブコアにより形成される前記段部32が位置する構成となっている。このため、先部材3の成形時において、リブコアの位置が多少前後してしまったとしても、前記段部26が影響を受けない。即ち、チャックリングが当接する前記段部26の位置が常に同じ位置に形成される。
このため、前記段部26にチャックリングが当接することによりチャック体11が拡開する本実施例の構成においては、芯の出長さが常に一定のシャープペンシルが形成される。シャープペンシルは、その構造上、チャックリング12が先部材内の段部に当接するタイミング、即ち、チャック体が拡開する事で芯を開放するタイミングによって芯の出長さが変わってくる。本実施例のように螺子コアにより前記段部26を形成することにより、前記先部材3の段部26の形成位置については、成形時のキャビティー(内部にコアを有する、溶融物が流れ込み、成形品を形作る空間)間のばらつきは、ほぼなくなる。そして、その先部材3を用いてシャープペンシルを形成し、芯の繰り出し操作を行うと、前記チャックリング12が先部材3内の段部26に当接するタイミングが、組み立てたシャープペンシルのそれぞれによりばらつくことなく、ほぼ同一となり、よって、芯の出長さが常にほぼ一定であり、安定したシャープペンシルが製造出来るのである。
【0026】
尚、仮に、前記縦リブ部33の後端が、前記段部26と同じ位置になるように先部材3の内周面を形成したとすると、螺子コアとリブコアが別体であるが故に、縦リブ部の後端位置がバラツキやすくなってしまう。そして、そのような先部材3を用いた場合には、チャックリング12が当接する位置が縦リブ部の後端位置により左右されてしまい、芯の出長さが不安定となってしまう。これを避けるためには、螺子コアとリブコアとの位置関係を厳しく定める必要があるが、金型の調整が困難となり、生産性が落ちてしまうものとなった。
しかしながら、上述した本実施例の構成にすることにより、螺子コアとリブコアの位置関係を厳しく定める必要がなく、金型の調整が容易になり、生産性の向上につながる。そして、螺子コアによって形成される段部に当接させる事で、位置関係を厳しく定めてあるため、キャビティー間のばらつきは最小限に抑えることが出来る。
【0027】
この他にも、本実施例においては、チャックリング12が前記段部26に当接する際には、そのチャックリング12が凹凸のない段部26に対して面で当接する構成となっている。このため、チャックリング12の当接によりチャックリング12を押しつける力が加わっても、その押圧力が分散され、段部26が損傷してしまう恐れがなく、確実に芯を繰り出すことが出来るものとなっている。
仮に、チャックリングを、リブ部の後端面により形成される段部に当接させる構成としたとすると、全周に面のある凹凸のない段部に対してチャックリングが当接する場合と比較して、チャックリングとリブ部の後端面により形成される段部との接触面積が少なくなり、当接面への押圧力が分散されることなく加わってしまう。この為、リブ部の削れや割れ、圧縮等の問題が発生し、芯の出長さが不安定となったり、芯が出ないといった不具合が発生してしまったりする可能性が高くなる。しかしながら、本実施例のように、全周に面のある段部26にチャックリング12を当接させる構成とすることで、そのような不具合を無く、安定した芯の出長さを確保することが出来ると共に、確実に芯の繰り出しを行うシャープペンシルを提供することが出来る。
【0028】
ここで、前記芯ガイド37について詳述する。
本実施例では、前述したように先部材3の内部に芯ガイド37を配置し、固定している。この芯ガイド37があることにより、芯の繰り出し操作の際、芯を把持しているチャック体11がチャックリング12から外れる衝撃による芯の湾曲や揺動、傾斜が防止され、芯の繰り出し操作を良好に保つことが出来る。
この芯ガイド37には、前記先部材3の前記縦リブ部33に圧入される大径部37aと、その縦リブ部33の内接円径よりも、若干、小さい縮径部37bと、その縮径部37bの前方に位置するテーパー部37cが形成されている。
芯ガイド37を前記先部材3に圧入固定する際、前記芯ガイド37のテーパー部37cと、前記先部材3のテーパー部3bとが当接することにより、圧入時における芯ガイド37の前進が規制される。ここで、前記先部材3のテーパー部3b、及び、前記芯ガイド37のテーパー部37cは、いずれも、軸筒の軸芯方向に傾斜したテーパー部となっている。先部材3のテーパー部3cと芯ガイド37のテーパー部37cの傾斜角度は、本実施例においては、略同一としている。
尚、前記芯ガイド37の内径は、芯Lの外径より、若干、大きく形成している(内径部37d)。具体的には、この芯ガイド37の内径部37dの内径は、芯Lの外径よりも大きいが、芯が2本入らない大きさとなっている。これは、芯Lの湾曲や揺動、傾斜を防止し、芯の繰り出しを確実に行うためである。但し、芯ガイド37の内径部37dの後方部、即ち、芯ガイド37のチャック体11側の内径部には、芯が挿通されやすいように内径が内径部37dよりも大きくなっている案内部37eが形成されている。この案内部37eよりも後方は、芯ガイド37の後端部に向かって大径となっていくテーパー部が形成されており、また、案内部37eよりも前方であって、前記内径部37dまでは、案内部37eと内径部37dを繋ぐテーパー部が形成されている。このテーパー部がそれぞれ設けられていることにより、芯ガイド37内の内径部37dと案内部37eに芯Lが挿通され易くなる。
【0029】
このように、本実施例においては、前記先部材3の前記テーパー部3bと、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cのテーパー部同士が当接するので、芯ガイド37は、前記先部材3の軸芯に案内され、軸芯からずれない。より詳細には、先部材3に対して芯ガイド37が圧入されていく過程で、仮に芯ガイド37が軸芯に対して傾斜して挿入されていったとしても、前記先部材3のテーパー部3bと前記芯ガイド37のテーパー部37cが当接することにより、芯ガイド37の挿入方向が軸芯に対しての平行となるように案内される。結果、組み立て完了時には、先部材3と芯ガイド37との軸芯が揃い、芯ガイド37が軸芯からずれない。また、本実施例においては、前記先部材3の前記縦リブ部33に前記芯ガイド37の前記大径部37aが圧入されるので、芯ガイド37は、その前方が前記先部材3のテーパー部3bによって、また、後方が前記先部材3の縦リブ部33によって支持される。即ち、芯ガイド37の全長を使用した2点支持になるので、これも軸芯に対するずれに有効である。そして、前記芯保持部材2、及び、前記芯ガイド37が、同じ前記先部材3に圧入固定されているので、芯保持部材2と芯ガイド37の軸芯が確実に揃うこととなる。即ち、前記芯保持部材2と前記芯ガイド37が、軸芯からずれない。
以上のように、芯ガイド37の軸芯が、先部材、ひいては、軸筒の軸芯からずれないため、芯の繰り出し操作を良好に行うことが出来る。即ち、芯が湾曲、或いは、揺動、傾斜しないので、芯が折損してしまうことがなく、芯の繰り出し操作を良好に行うことが出来る。また、1本目芯が短芯(チャックから離れた芯)で前記芯保持部材2に保持されているとき、2本目芯がずれることなく、前記チャック体11から前記芯ガイド37に挿通され、2本目芯の繰り出しを良好に行うことが出来る。
更に、先部材3と芯ガイド37の軸芯方向へ傾斜したテーパー部同士が当接することから、くさび効果により、芯ガイド37の先部材3からの脱落防止の効果も期待できる。
【0030】
本発明の実施例2を
図10〜
図12に示し、説明する。先部材3に対する芯ガイド38の固定を嵌合による圧入によってなした例である。尚、実施例1と同一の部材は同一の符号を付してその説明を省略する。
前記先部材3の周方向に等間隔に6本形成している前記縦リブ部33の内、1つおきの3本について、前方に嵌合突起(凸部)3cを形成する。
芯ガイド38の後方部には、前記先部材3の前記縦リブ部33の内接円径よりも、若干、小さい外径部38aが形成されている。その外径部38aの前方には、全周の嵌合突起(凸部)38bが形成されており、この嵌合突起(凸部)38bの前方には、テーパー部38cが形成されている。このテーパー部38cは、前記芯ガイド38を前記先部材3に圧入固定する際、該先部材3のテーパー部3bに当接し、圧入の前進を規制している。
尚、前記芯ガイド38の内径は、芯Lの外径より、若干、大きく形成している(内径部38d)。具体的には、この芯ガイド38の内径部38dの内径は、芯Lの外径よりも大きいが、芯が2本入らない大きさとなっている。これは、芯Lの湾曲や揺動、傾斜を防止し、芯の繰り出しを確実に行うためである。また、この内径部38dは、前方に向かって徐々に縮径するような形状となっており、これにより、芯Lを軸芯に案内し、前記芯保持部材2に挿通させやすくすると共に、成形上、金型のコアピンを抜けやすくするといった効果を有している。この内径部38dの後方は、芯ガイド38の後端部に向かって大径となっていくテーパー案内部38eが形成されている。このテーパー案内部38eが設けられていることにより、芯ガイド38内の内径部38dに芯Lが挿通され易くなっている。
【0031】
このように、本実施例においては、前記芯ガイド38の嵌合突起(凸部)38bが、前記先部材3の嵌合突起(凸部)3cを乗り越えて嵌合し、圧入状態となる。そして、この時、前記先部材3の前記テーパー部3bと、前記芯ガイド38の前記テーパー部38cのテーパー部同士が当接するので、前記芯ガイド37は、前記先部材3の軸芯に案内され、軸芯からずれない。即ち、先部材3と芯ガイド37との乗り越え嵌合時に、仮に芯ガイド37が軸芯に対して傾斜して挿入されていったとしても、前記先部材3のテーパー部3bと前記芯ガイド37のテーパー部37cが当接することにより、芯ガイド37の挿入方向が軸芯に対しての平行となるように案内される。結果、組み立て完了時には、先部材3と芯ガイド37との軸芯が揃い、芯ガイド37が軸芯からずれない。尚、本実施例においては、乗り越え嵌合後においては、芯ガイド38のテーパー部38cは、先部材3のテーパー部3bに押し付けられる状態となっている。
【0032】
ここで、本実施例においては、芯ガイド38の効果(芯の湾曲、或いは、揺動、傾斜の防止)を最大限に得るために、芯ガイド38の前方を、芯保持部材2の後端面に当接させている。より具体的には、芯保持部材2の後端面は、芯ガイド38の前端部によって圧接されている。芯ガイド38と芯保持部材2との間の空間(隙間)をなくすことにより、芯ガイド38の前端部付近においても、チャック体11に把持されている芯Lの湾曲、或いは、揺動、傾斜の防止が確実になされた状態となる。
このように、芯が湾曲、或いは、揺動、傾斜しないので、1本目芯が短芯でその保持部材2に保持されているとき、2本目芯がずれることなく、前記チャック体11から芯ガイド38に2本目芯が挿通され、2本目芯の繰り出しを良好に行うことが出来る。
【0033】
この他、前記先部材3の周方向に等間隔に6本形成している前記縦リブ部33の内、1つおきの3本について、嵌合突起(凸部)3cを形成したのは、適度な入れ嵌合力と安定感が得られるからである。嵌合及び圧入によって先部材3と芯ガイド38とを固定しているため、万が一にも芯ガイド38が先部材3から脱落することもない。
仮に、この先部材3の縦リブ部33全てに、嵌合突起(凸部)3cを6個形成すると、先部材3に芯ガイド38を入れる際の嵌合力が高くなることが考えられる。そして、嵌合力が高くなる分、嵌合突起を乗り越える時の勢い(乗り越え速度)が増し、乗り越え後に戻り止めと衝突することになるので、戻り止めの軸芯ズレ、変形が起きるといった問題が考えられる。また、仮に、前記先部材3の周方向に等間隔に6本形成している前記縦リブ部33の内、2個以下の嵌合突起(凸部)3cとすると、先部材3と芯ガイド38との嵌合力が弱く、前記芯ガイド38が脱落する可能性もあり、安定感も悪い。しかしながら、本実施例のように、乗り越え嵌合によって先部材3と芯ガイド38とを固定すると、圧入(先部材3の嵌合突起(凸部)3cの乗り越え)後は、圧入力が減って芯ガイド38を解放させることができる。そして、嵌合突起(凸部)同士の引っかけで芯ガイド38の先部材3からの脱落を防止できる。先部材3の材質によっては、常時、強い圧入力(応力)が掛かっていると割れの発生が起きる場合があるため、乗り越え嵌合は有効である。本実施例では、先部材3をポリカーボネート樹脂によって、形成している。
また更には、6本形成されている縦リブ部33のうち、1つおきの3本に嵌合突起(凸部)3cを形成していることにより、芯ガイド38の軸芯が先部材3の軸芯と確実に同軸となる。より詳細には、本実施例では、3つの嵌合突起(凸部)3cは、軸芯から均等な位置であって、周方向にも等間隔な位置に配置されている。このため、芯ガイド38にかかる嵌合力が安定して伝わることとなり、芯ガイド38の軸芯が先部材3の軸芯と確実に同軸となる。
【0034】
この他、本実施例においては、先部材3をポリカーボネート(PC)樹脂で形成しており、前記先部材3の縦リブ部33を、その先部材3の周方向に等間隔に6本形成している。
前記縦リブ部33をその本数に関係なく、周方向に等間隔に形成することにより、先部材3を前軸4に螺合した際のその螺合完了位置によらず、チャック体11は常に一定の拡開量を得る事が出来る。
また、前記縦リブ部33の本数は、偶数本としても、奇数本としても良いが、本実施例のような2つのチャック片35からなる二つ割りチャック体の場合、前記先部材3の縦リブ部33の本数を偶数本とすると、前記縦リブ部33によって規制された際のチャック体11の2つのチャック片35の拡開量が、どちらも同じになる。即ち、チャック体11の拡開時には、チャック体11の最大外径部(2つのチャック片35の前方部)が、前記縦リブ部33に当接するか、若しくは、前記縦リブ部33の間に入る構成となる。このため、2つのチャック片35のチャック体11の閉鎖時からの拡開量がそれぞれ同じ量となる(
図8、
図9)。そして、チャック体11は片開きする事がなく、片開きが頻繁に発生すると起こり得る芯噛み部の芯ズレによる芯出ず不良などの不具合を未然に防ぐ事が出来る。
尚、前記縦リブ部33は、任意の本数を設けることが出来るが、4本以上が望ましい。縦リブ部の本数が少ないほど、チャック体の拡開量は大きくなっていく。これは、チャック体の最大外径部が縦リブ部間に入り込む際の入り込み量が、縦リブ部の本数が少ないほど大きくなっていくためである。4本以上が好ましいとする理由は、4本以上の場合には、チャック体の拡開時に、チャック片が確実に縦リブ部に当接することとなり、結果、チャック体の拡開量が安定するためである。
【0035】
更に、実施例1における先部材3と芯ガイド38の各テーパー部の変形例を
図13〜
図20に種々挙げ説明する。
実施例1においては、前記先部材3の前記テーパー部3bと、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cのテーパー部同士が当接するので、前記芯ガイド37は、前記先部材3の軸芯に案内され、軸芯からずれない構成となっている。
尚、以下で示す実施例1の変形例は、実施例1に限らず、実施例2に示したように、芯ガイド38を先部材3に嵌合によって固定する場合にも適用出来る。
【0036】
まず、先部材と芯ガイドの当接部を、それぞれ略同形状の円弧テーパー部から形成した変形例を示す。
図13(第1変形例)は、前記先部材3の前記テーパー部3bの代わりに、逆円弧テーパー部3dを前記先部材3に形成し、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cの代わりに、逆円弧テーパー部37hを前記芯ガイド37に形成した例である。円弧部半径が、略同じなので、径方向でのずれは発生し難くなり、芯ガイド37の軸芯ずれはなくなる。
図14(第2変形例)は、前記先部材3の前記テーパー部3bの代わりに、円弧テーパー部3eを前記先部材3に形成し、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cの代わりに、円弧テーパー部37iを前記芯ガイド37に形成した例である。円弧部半径が、略同じなので、径方向でのずれは発生し難くなり、芯ガイド37の軸芯ずれはなくなる。
【0037】
次に、先部材と芯ガイドの当接部を、それぞれ異なるテーパー部からなした変形例を示す。
図15(第3変形例)は、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cの代わりに、逆円弧テーパー部37gを前記芯ガイド37に形成した例である。前記先部材3の前記テーパー部3bは、実施例1と同一の形状である。逆円弧テーパー部37gの端点2点が、前記先部材3のテーパー部3bに当接するので、端点付近が有する若干の弾性力による前記テーパー部3bへの密着、或いは、前記テーパー部3bへの喰い込みがあり、一旦、芯ガイド37が軸芯に案内されると、ずれ難くなるという効果がある。
図16(第4変形例)は、前記先部材3の前記テーパー部3bの代わりに、逆円弧テーパー部3dを前記先部材3に形成し、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cの代わりに、逆円弧テーパー部37gを前記芯ガイド37に形成した例である。より詳細には、本変形例では、芯ガイド37の逆円弧テーパー部37gの曲率半径を、先部材3の逆円弧テーパー部3dの曲率半径よりも小さく形成している。逆円弧テーパー部37gの端点2点が、前記先部材3の逆円弧テーパー部3dに当接するので、端点付近が有する若干の弾性力による前記逆円弧テーパー部3dへの密着、或いは、逆円弧テーパー部3dへの喰い込みがあり、一旦、芯ガイド37が軸芯に案内されると、ずれ難くなるという効果がある。
図17(第5変形例)は、前記先部材3の前記テーパー部3bの代わりに、円弧テーパー部3eを前記先部材3に形成した例である。前記芯ガイド37の前記テーパー部37cは、実施例1と同一の形状である。テーパー部37cの端点2点が、前記円弧テーパー部3eに当接するので、前記円弧テーパー部3eへの喰い込みが期待でき、一旦、軸芯に案内されると、ずれ難くなるという効果がある。
図18(第6変形例)は、前記先部材3の前記テーパー部3bの代わりに、円弧テーパー部3eを前記先部材3に形成し、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cの代わりに、逆円弧テーパー部37gを前記芯ガイド37に形成した例である。逆円弧テーパー部37gの端点2点が、前記円弧テーパー部3eに当接するので、端点付近が有する若干の弾性力による前記円弧テーパー部3eへの密着、或いは、円弧テーパー部3eへの喰い込みがあり、一旦、軸芯に案内されると、ずれ難くなるという効果がある。
【0038】
この他にも、次のような変形例が考えられる。以下に述べる場合にも、芯ガイドと先部材との当接が、テーパー部同士の当接部によりなされるため、芯ガイドが軸芯に案内される。そして、芯の繰り出しを良好に行うことが出来る。
図19(第7変形例)は、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cの代わりに、円弧テーパー部37fを前記芯ガイド37に形成した例である。前記先部材3の前記テーパー部3bは、同一である
図20(第8変形例)は、前記先部材3の前記テーパー部3bの代わりに、円弧テーパー部3dを前記先部材3に形成した例である。前記芯ガイド37の前記テーパー部37cは、同一である。
図21(第9変形例)は、前記先部材3の前記テーパー部3bの代わりに、逆円弧テーパー部3dを前記先部材3に形成し、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cの代わりに、円弧テーパー部37fを前記芯ガイド37に形成した例である。
図22(第10変形例)は、前記先部材3の前記テーパー部3bの代わりに、円弧テーパー部3eを前記先部材3に形成し、前記芯ガイド37の前記テーパー部37cの代わりに、円弧テーパー部37fを前記芯ガイド37に形成した例である。より詳細には、本変形例では、芯ガイド37の円弧テーパー部37fの曲率半径を、先部材3の円弧テーパー部3eの曲率半径よりも小さく形成している。
【0039】
いずれの変形例においても、変形テーパー部同士が当接するので、前記芯ガイドは、前記先部材の軸芯に案内され、軸芯からずれない構成となっている。よって、芯が湾曲、或いは、揺動、傾斜しないので、芯が折損することがなく芯の繰り出しを良好に行うことが出来る。また、1本目芯が短芯で前記保持部材2に保持されているとき、2本目芯がずれることなく、前記チャック体11から前記芯ガイド37に挿通され、2本目芯の繰り出しを良好に行うことが出来る。