特許第5760513号(P5760513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760513
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62L 3/00 20060101AFI20150723BHJP
   B62J 25/00 20060101ALI20150723BHJP
   B62K 19/38 20060101ALI20150723BHJP
   B62L 3/04 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   B62L3/00 A
   B62J25/00 Z
   B62K19/38
   B62L3/04 A
   B62L3/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-44121(P2011-44121)
(22)【出願日】2011年3月1日
(65)【公開番号】特開2012-180009(P2012-180009A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久
(74)【代理人】
【識別番号】100078802
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 俊三
(74)【代理人】
【識別番号】100130731
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 修
(74)【代理人】
【識別番号】100150957
【弁理士】
【氏名又は名称】松長 純
(72)【発明者】
【氏名】池田 佳弘
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−306171(JP,A)
【文献】 特開平09−071278(JP,A)
【文献】 米国特許第05476162(US,A)
【文献】 特開2010−023732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62L 3/00
B62J 25/00
B62K 19/38
B62L 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
この車体フレームに懸架されるエンジンと、
このエンジンの前下方に配置されて運転者の足が載せられるフートレストと、
このフートレストを前記車体フレームのダウンチューブに取り付けるフートレストブラケットと、
前記フートレストの近傍において前記フートレストブラケットに設けられた回動軸を中心として踏み力により回動するブレーキペダル、及びこのブレーキペダルにより作動するマスターシリンダ並びにマスターシリンダに作動油を供給するリザーバタンクを備えてなるブレーキ装置と、を有する鞍乗型車両において、
前記ブレーキ装置を構成するブレーキペダル、マスターシリンダ及び前記リザーバタンクのそれぞれが、フートレストブラケットに取り付けられ、
前記マスターシリンダは、前記フートレストブラケットの後部載置され、そのマスターシリンダのシリンダ部から進退自在に延びたプッシュロッドが車両前方を指向して設けられ、その少なくとも前半部の一部が、車両右側面視及び車両底面視において前記フートレストブラケットと重なるよう配置されるとともに、
前記マスターシリンダは、前記フートレストブラケットの後部であって、前記フートレストよりも低く、前記ダウンチューブの下部屈曲部よりも高く、さらに前記ブレーキペダルの回動軸よりも低い位置に取り付けられ、
前記リザーバタンクは、前記ブレーキペダルの回動軸よりも車両前方側に配置され、
前記ブレーキ装置はさらに前記マスターシリンダと前記リザーバタンクとを連結し、作動油が内部を通過する作動油ホースを有し、前記作動油ホースは、前記ブレーキペダルの回動軸の下方を通過して、この回動軸の後方側に配置した前記マスターシリンダと回動軸の前方側に配置した前記リザーバタンクとを連結したことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記マスターシリンダは、エンジンにおけるエンジンケースの一部よりも車両下方に配置され、且つ前記エンジンから延びるエキゾーストパイプの一部よりも車両内側に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記リザーバタンクは、前記フートレスト及び前記ブレーキペダルの車両内側で、車両右側面視において前記フートレスト及び前記ブレーキペダルと重なるように配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記フートレストブラケットは、垂直プレートと、第1水平プレート部と、第2水平プレート部と、ボス部とがそれぞれ設けられ、前記第1水平プレート部に前記フートレストが水平状態または垂直状態になるように回動可能に枢支され、前記第2水平プレート部に前記ブレーキ装置の前記マスターシリンダが着脱自在に取り付けられ、また前記フートレストブラケットの前記ボス部から一体に延出された取付片に前記ブレーキ装置の前記リザーバタンクが着脱自在に取り付けられ、更に、前記フートレストブラケットの前記ボス部に前記ブレーキペダルが回動自在に取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フートレストの近傍にブレーキ装置が配置される鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両としての、いわゆるクルーザタイプの自動二輪車では、運転者の足が載せられるフートレストが車両前下方に設置され、このフートレストの近傍にブレーキ装置が配置されたものが一般的である。このような自動二輪車では、特許文献1に示すように、ブレーキ装置のマスターシリンダが縦に配置され、このマスターシリンダに作動油を供給するリザーバタンクが、マスターシリンダ内への気泡の混入を防止するために、このマスターシリンダよりも上方に配置されたものがある。
【0003】
また、特許文献2に記載の自動二輪車では、ブレーキ装置のマスターシリンダ及びリザーバタンクを、フートレスト近傍に設置されたブレーキペダルよりも離れた位置、つまり車両後方側に配置したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−89382号公報
【特許文献2】特開2005−306171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の自動二輪車では、ブレーキ装置のマスターシリンダは縦に配置され、このマスターシリンダよりも上方にリザーバタンクが配置されるため、これらのマスターシリンダ及びリザーバタンクがエンジン及びエキゾーストパイプの側方領域から露出してしまい、車両の外観を損なう恐れがある。
【0006】
また、マスターシリンダをエンジンまたはエキゾーストパイプの近傍に配置した場合には、これらの発熱体からの熱によって作動油の温度が上昇してしまう恐れがある。
【0007】
また、マスターシリンダがフートレスト近傍に配置された場合には、前輪に近接するため、マスターシリンダが前輪により巻き上げられた飛来物(例えば飛び石、泥水、砂塵など)により損傷を蒙ったり汚染される恐れがある。
【0008】
一方、特許文献2に記載の自動二輪車では、ブレーキ装置のマスターシリンダがブレーキペダルから離間しているので、これらの間に動力伝達部材が必要になる。更に、ブレーキペダルを車体フレームに取り付けるブラケットとは別に、マスターシリンダ及びリザーバタンクを車体フレームに取り付けるブラケットが必要になる。これらの結果、部品点数が増大し、組付け作業が煩雑になって、自動二輪車の生産性が低下してしまう。
【0009】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、ブレーキ装置のマスターシリンダを、車両の外観を損なうことなくフートレスト近傍に配置できる鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車体フレームと、この車体フレームに懸架されるエンジンと、このエンジンの前下方に配置されて運転者の足が載せられるフートレストと、このフートレストを前記車体フレームのダウンチューブに取り付けるフートレストブラケットと、前記フートレストの近傍において前記フートレストブラケットに設けられた回動軸を中心として踏み力により回動するブレーキペダル、及びこのブレーキペダルにより作動するマスターシリンダ並びにマスターシリンダに作動油を供給するリザーバタンクを備えてなるブレーキ装置と、を有する鞍乗型車両において、前記ブレーキ装置を構成するブレーキペダル、マスターシリンダ及び前記リザーバタンクのそれぞれが、フートレストブラケットに取り付けられ、前記マスターシリンダは、前記フートレストブラケットの後部載置され、そのマスターシリンダのシリンダ部から進退自在に延びたプッシュロッドが車両前方を指向して設けられ、その少なくとも前半部の一部が、車両右側面視及び車両底面視において前記フートレストブラケットと重なるよう配置されるとともに、前記マスターシリンダは、前記フートレストブラケットの後部であって、前記フートレストよりも低く、前記ダウンチューブの下部屈曲部よりも高く、さらに前記ブレーキペダルの回動軸よりも低い位置に取り付けられ、前記リザーバタンクは、前記ブレーキペダルの回動軸よりも車両前方側に配置され、前記ブレーキ装置はさらに前記マスターシリンダと前記リザーバタンクとを連結し、作動油が内部を通過する作動油ホースを有し、前記作動油ホースは、前記ブレーキペダルの回動軸の下方を通過して、この回動軸の後方側に配置した前記マスターシリンダと回動軸の前方側に配置した前記リザーバタンクとを連結したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マスターシリンダがフートレストブラケットの後方に配置され、そのシリンダ軸線が略水平に設けられることで、このマスターシリンダをフートレストよりも低い位置に配置できる。更に、マスターシリンダの少なくとも前半部の一部が、車両右側面視及び車両底面視においてフートレストブラケットと重なるよう配置されたので、マスターシリンダの車両外側及び下側をフートレストブラケットにより隠すことができる。これらの結果、ブレーキ装置のマスターシリンダを、車両の外観を損なうことなくフートレスト近傍に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る鞍乗型車両の一実施形態が適用された自動二輪車を示す右側面図。
図2図1の自動二輪車のフートレスト及びブレーキ装置を示す右側面図。
図3図2のフートレスト及びブレーキ装置を示す斜視図。
図4図3のフートレスト及びブレーキ装置の分解斜視図。
図5図2のフートレスト周囲を拡大して示す右側面図。
図6図5のVI矢視図。
図7図5のVII矢視図。
図8図7のVIII−VIII線に沿う断面図。
図9図5のIX−IX線に沿う断面図。
図10図5においてフートレスト及びフートレストブラケットを取り外してブレーキ装置を示す右側面図。
図11図2のフートレスト及びブレーキ装置を拡大し、リザーバタンクを明瞭に示すよう右側面図。
図12図11のフートレスト及びフートレストブラケットを取り外してブレーキ装置を示す右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。尚、本実施形態において、前後、上下、左右の表現は、車両に乗車した乗員を基準にしたものである。
【0014】
図1には、鞍乗型車両としての自動二輪車10を示す。この図1に示すクルーザタイプ(アメリカンタイプ)と称される自動二輪車10は、鋼製あるいはアルミニウム合金材からなる車体フレーム11を備え、この車体フレーム11はヘッドパイプ12、左右一対のダウンチューブ13及び左右一対のタンクレール14等を有して構成される。
【0015】
ヘッドパイプ12には、左右に操舵可能に枢支されたフロントフォーク15が設けられる。フロントフォーク15の上端にはハンドルバー16が固定され、このハンドルバー16の車両幅方向両端にグリップ17が取り付けられる。フロントフォーク15の下端には、前輪18が回転自在に支持されると共に、この前輪18の上部を覆うようにフロントフェンダ19が固定される。
【0016】
左右一対のダウンチューブ13は、前端部がヘッドパイプ12に結合されると共に、このヘッドパイプ12から左右に分岐して下方に延び、その下部で屈曲して、略水平に車両後方へ延設される。このダウンチューブ13の後部には、後述のスイングアームブラケット28を介してスイングアーム(不図示)が揺動可能に枢支される。このスイングアームの後端に後輪20が回転可能に支持され、その上方にリアフェンダ21が配置される。
【0017】
左右一対のタンクレール14は、前端部がヘッドパイプ12に結合されると共に、このヘッドパイプ12から左右に分岐して車両斜め下後方に延設される。タンクレール14及びこのタンクレール14に連結されるシートレール(不図示)は、ティアドロップ型の燃料タンク22、シート23及び前記リアフェンダ21を車両前方から順次支持する。
【0018】
ダウンチューブ13とタンクレール14との間にエンジン24が搭載される。本実施の形態においてエンジン24は水冷式のV型2気筒エンジンであり、変速機をエンジンケース25内に収納して1つのユニットとして構成される。エンジン24にはエキゾーストパイプ26が接続され、このエキゾーストパイプ26は車両後方に延設され、その後端に排気マフラ27が接続される。エキゾーストパイプ26は、実際には、その略全長がエキゾーストパイプカバー29で覆われている。
【0019】
尚、ダウンチューブ13とタンクレール14は、それぞれ左右において複数のクロスメンバーにより連結されると共に、車両上下方向においてスイングアームブラケット28やシートピラー(不図示)により連結される。また、ダウンチューブ13には、その前端側を車両の左右両側から覆うフレームカバー30が設けられ、このフレームカバー30の車両前方あるいはヘッドパイプ12の車両前方にヘッドランプユニット31が支持される。
【0020】
ところで、エンジン24の前下方に相当するダウンチューブ13の下部屈曲部13A周辺には、図2にも示すように、車両幅方向外側に突設されて運転者の足が載せられるフートレスト32と、車両を制動させるためのブレーキ装置33とがフートレストブラケット34を用いて設置されている。
【0021】
前記フートレスト32は、図2図4に示すように、ステッププレートと称される板状のフートレストであり、車両前後方向に延設される。また、ブレーキ装置33は、フートレスト32近傍に設けられ運転者の踏み力が作用することで回動するブレーキペダル35と、このブレーキペダル35の回動により作動するマスターシリンダ36と、このマスターシリンダ36に作動流体としての作動油を供給するリザーバタンク37と、このマスターシリンダ36とリザーバタンク37とを連結し、作動油が内部を通過する作動油ホース38と、を有して構成される。
【0022】
フートレストブラケット34は、図3及び図4に示すように、垂直プレート部40の両側に第1水平プレート部41と第2水平プレート部42とが、それぞれ反対方向に一体に延設され、更に垂直プレート部40にボス部43が直交して貫通し一体化されてなる。このボス部43は、垂直プレート部40と、第1水平プレート部41から立設された支持プレート44とにより支持される。垂直プレート部40の下部が、図5及び図6に示すように、ダウンチューブ13の下部屈曲部13Aに図示しない取付ボルトなどを用いて固定される。
【0023】
上記フートレストブラケット34にフートレスト32が取り付けられると共に、ブレーキ装置33のブレーキペダル35、マスターシリンダ36及びリザーバタンク37のそれぞれが取り付けられる。
【0024】
つまり、図3図4及び図5に示すように、フートレストブラケット34の第1水平プレート部41にフートレスト32が、車両に対し略水平(正確には水平よりも若干後下がり)に取り付けられる。このフートレスト32は、第1水平プレート部41に水平状態または垂直状態になるように回動可能に枢支される。また、図3図4及び図7に示すように、フートレストブラケット34の第2水平プレート部42にブレーキ装置33のマスターシリンダ36が、ボルトなどにより着脱自在に固定して取り付けられる。更に、フートレストブラケット34のボス部43から一体に延出された取付片45に、ブレーキ装置33のリザーバタンク37がボルトなどを用いて着脱自在に固定して取り付けられる。また、フートレストブラケット34のボス部43に、ブレーキペダル35が回動自在に支持される。
【0025】
このブレーキペダル35は、図3及び図4に示すように、ロッドアーム部46及びペダルアーム部47を有してなる。ロッドアーム部46は、フートレストブラケット34のボス部43に回動自在に挿通される回動軸48と、この回動軸48に回転一体に結合されてマスターシリンダ36のヨーク55(後述)に連結される作動レバー49と、を備えてなる。また、ペダルアーム部47は、運転者の足から踏み力を受ける踏み板50と、この踏み板50に一端が連結されたアーム部材51と、このアーム部材51の他端に結合されて回動軸48に回転一体に着脱可能に固定される固定部材52と、を備えてなる。
【0026】
ロッドアーム部46の作動レバー49は、ペダルアーム部47の踏み板50に対し、回動軸48の軸方向において車両内側に寸法Tだけオフセットして配置されている。また、ロッドアーム部46の回動軸48は、図8にも示すように、作動レバー49とペダルアーム部47の固定部材52とに挟まれた領域において、フートレストブラケット34のボス部43に回動自在に枢支される。そして、このボス部34に作用する荷重が、垂直プレート部40に直接、且つ支持プレート44を介して第1水平プレート部41に支持される。
【0027】
ここで、図3及び図7に示すように、マスターシリンダ36は、シリンダ部53からプッシュロッド54が進退自在に延び、このプッシュロッド54の先端にヨーク55が結合される。また、シリンダ部53には、プッシュロッド54に摺接する防塵用のダストカバー(ブーツ)56が装着されている。また、シリンダ部53は、弾性管体としての作動油ホース38(図2)を用いてリザーバタンク37に接続されると共に、油圧ホース(不図示)を用いて後輪20側のブレーキキャリパ(不図示)に接続される。
【0028】
図3及び図4に示すブレーキペダル35における踏み板50に踏み力が作用すると、回動軸48が回動し作動レバー49が回動して、マスターシリンダ36のプッシュロッド54をシリンダ部53側へ移動させる。これにより、マスターシリンダ36に油圧が発生し、油圧ホースを経て後輪20側のブレーキキャリパへ作動油が圧送され、後輪20が制動される。
【0029】
ところで、ブレーキ装置33のマスターシリンダ36は、図5図6及び図7に示すように、フートレストブラケット34の後方に、ヨーク55側を車両前方に指向させて配置され、シリンダ軸線O(図5)が略水平に配置されている。
【0030】
更に、マスターシリンダ36は、少なくとも前半部の一部、本実施形態ではマスターシリンダ36のダストカバー56、プッシュロッド54及びヨーク55が、車両右側面視(図5)においてフートレストブラケット34と重なるように配置されて、このフートレストブラケット34により覆われる。また、マスターシリンダ36は、少なくとも前半部の一部、本実施形態ではマスターシリンダ36のダストカバー56、プッシュロッド54及びヨーク55を含む大部分が、車両底面視(図6)においてフートレストブラケット34及びダウンチューブ13と重なるように配置されて、これらのフートレストブラケット34及びダウンチューブ13により覆われる。
【0031】
マスターシリンダ36は、また、フートレスト32に対しては車両内側に設けられ、図5に示す車両右側面視において、フートレスト32の車両下方に配置されている。更に、マスターシリンダ36は、図9に示すように、エンジン24におけるエンジンケース25の一部よりも車両下方に配置され、且つエンジン24から延びるエキゾーストパイプ26の一部よりも車両内側に配置されている。また、マスターシリンダ36は、図10に示すように、ブレーキペダル35の回動軸48よりも車両下方に配置されている。
【0032】
ブレーキ装置33のリザーバタンク37は、図7及び図11に示すように、フートレスト32及びブレーキペダル35の車両内側で、少なくとも一部が車両右側面視においてフートレスト32及びブレーキペダル35に重なるように配置される。また、リザーバタンク37は、図12に示すように、ブレーキペダル35の回動軸48よりも車両前方側で、ダウンチューブ13に略沿う位置に配置される。更に、リザーバタンク37は、その最上面37Aが、ブレーキペダル35の踏み代における最下位置よりも下方になるように配置されることが好ましい。また、作用油ホース38は、マスターシリンダ36とリザーバタンク37との中間に支持部材を用いて支持されてもよく、その支持部材がフートレストブラケット34に固定されてもよい。
【0033】
以上のように構成されたことから、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(10)を奏する。
【0034】
(1)図5及び図6に示すように、ブレーキ装置33のマスターシリンダ36がフートレストブラケット34の後方に配置され、そのシリンダ軸線Oが略水平に設けられることで、このマスターシリンダ36をフートレスト32よりも低い位置に配置できる。更に、マスターシリンダ36の少なくとも前半部の一部が、車両右側面視(図5)及び車両底面視(図6)においてフートレストブラケット34と重なるように配置されたので、マスターシリンダ36の車両外側及び下側をフートレストブラケット34により隠すことができる。これらの結果、ブレーキ装置33のマスターシリンダ36を、車両の外観を損なうことなくフートレスト32近傍に配置できる。
【0035】
(2)マスターシリンダ36のプッシュロッド54及びダストカバー56を含む前半部の一部が、車両右側面視(図5)及び車両底面視(図6)においてフートレストブラケット34に重なり、従ってこのフートレストブラケット34に覆われている。このため、マスターシリンダ36の特にプッシュロッド54及びダストカバー56など耐久性の低い部位を、車両前方及び車両斜め下方から飛来した飛来物(例えば飛び石、泥水、砂塵など)に対して保護できる。
【0036】
(3)マスターシリンダ36の前半部の一部が車両右側面視及び車両底面視においてフートレストブラケット34に覆われて、マスターシリンダ36の耐久性の低い部位が飛来物から保護されたので、マスターシリンダ36の車幅方向における配置位置の自由度が向上する。このため、図3及び図7に示すように、マスターシリンダ36のシリンダ軸線O上に位置するブレーキペダル35の作動レバー49と踏み板50とのオフセットの寸法Tを減少させることができる。この結果、ブレーキペダル35の回動軸48に直交する軸まわりのモーメントM(図8)が減少し、この回動軸48を支持するフートレストブラケット34の剛性を高く設定する必要がない。従って、このフートレストブラケット34の小型且つ軽量化を実現できる。
【0037】
(4)マスターシリンダ36は、図9に示すように、エンジン24のエンジンケース25の一部よりも車両下方に配置され、且つエキゾーストパイプ26及びエキゾーストパイプカバー29の一部よりも車両内側に配置されている。このため、これらのエンジンケース25、エキゾーストパイプ26及びエキゾーストパイプカバー29によりマスターシリンダ36が囲まれて露出しにくくなるので、車両の外観を向上させることができる。
【0038】
(5)更に、マスターシリンダ36が、図5及び図7に示すように、車両右側面視において、フートレスト32に対して車両内側で且つ車両下方に配置されていることからも、このフートレスト32によってマスターシリンダ36を隠すことができるので、車両の外観を向上させることができる。
【0039】
(6)マスターシリンダ36は、図10に示すように、そのシリンダ軸線Oがブレーキペダル35の回動軸48よりも車両下方に配置されている。このため、ブレーキペダル35の踏み板50に作用する踏み力をマスターシリンダ36に効率よく伝達することができ、ブレーキペダル35とマスターシリンダ36との間に動力伝達部材を介在させる必要がない。この点から、自動二輪車10の重量を低減できると共に、生産性を向上させることができる。
【0040】
(7)ブレーキ装置33のリザーバタンク37は、図7及び図11に示すように、フートレスト32及びブレーキペダル35の車両内側で、少なくとも一部が車両右側面視においてフートレスト32及びブレーキペダル35と重なるように、フートレスト32近傍に配置されている。このため、この比較的大型のリザーバタンク37を低い位置に設置して、フートレスト32及びブレーキペダル35により隠すことができるので、車両の外観を向上させることができる。
【0041】
(8)更に、図12に示すように、リザーバタンク37がブレーキペダル35の回動軸48よりも車両前方側で、ダウンチューブ13に略沿う位置に配置されている。このため、リザーバタンク37が、発熱体であるエンジン24及びエキゾーストパイプ26に対して離間して配置されるので、リザーバタンク37内の作動油の温度上昇を抑制できる。
【0042】
(9)また、リザーバタンク37の最上面37Aが、ブレーキペダル35における踏み代の最下位置よりも下方に配置されたので、運転者がブレーキペダル35の踏み板50を踏み操作する際に、この操作の支障になる突起物が存在しなくなり、ブレーキの操作性を向上させることができる。
【0043】
(10)図3及び図4に示すように、ブレーキ装置33を構成するブレーキペダル35、マスターシリンダ36及びリザーバタンク37が、フートレストブラケット34に集約して取り付けられたので、ブレーキ装置33を車体フレーム11に組み付ける前にモジュール化できる。これにより、ブレーキ装置33の組付け作業性、及び組付け精度を向上させることができる。更に、ブレーキ装置33を車体フレーム11に組み付けるために専用のブラケットを必要としないので、部品点数が減少すると共に、自動二輪車10の生産性を高めることができる。
【0044】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。例えば、本実施形態では鞍乗型車両として、クルーザタイプの自動二輪車の場合を述べたが、4輪または3輪タイプの鞍乗型車両(所謂バギー車など)に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 自動二輪車(鞍乗型車両)
11 車体フレーム
13 ダウンチューブ
24 エンジン
25 エンジンケース
26 エキゾーストパイプ
32 フートレスト
33 ブレーキ装置
34 フートレストブラケット
35 ブレーキペダル
36 マスターシリンダ
37 リザーバタンク
48 回動軸
54 プッシュロッド
55 ヨーク
56 ダストカバー
O シリンダ軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12