(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760575
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】車両用補機の取付け構造
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20150723BHJP
B60R 1/00 20060101ALI20150723BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
B60R11/02 Z
B60R1/00 A
B60R1/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-67025(P2011-67025)
(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2012-201198(P2012-201198A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】神田 恵子
(72)【発明者】
【氏名】原田 司
(72)【発明者】
【氏名】久常 晃裕
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/037500(WO,A1)
【文献】
特開2010−195113(JP,A)
【文献】
特開2005−112052(JP,A)
【文献】
特開2005−225459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60R 1/00
B60R 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラスの車幅方向中央部の上部に取り付けられた複数の車両用補機と、
該複数の車両用補機を一括して車室内側から覆うカバーと、を備え、
前記複数の車両用補機のうち車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法が最も小さい車両用補機は、残りの前記車両用補機に比べて車幅方向運転席側に配設され、
前記カバーは、前記車幅方向運転席側に配設された車両用補機を覆う部分の車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法が前記残りの車両用補機を覆う部分の車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法に比べて小さいことを特徴とする車両用補機の取付け構造。
【請求項2】
車両のフロントガラスの車幅方向中央部に取り付けられた複数の車両用補機と、
該複数の車両用補機を一括して車室内側から覆うカバーと、を備え、
前記フロントガラスの車幅方向中央に比べて運転席側に配設された前記車両用補機の後面視での車幅方向寸法は、助手席側に配設された前記車両用補機の後面視での車幅方向寸法よりも小さく、
前記カバーにおける前記フロントガラスの車幅方向中央よりも運転席側に配置された部分の後面視での車幅方向寸法は、該カバーにおける前記フロントガラスの車幅方向中央よりも助手席側に配置された部分の後面視での車幅方向寸法に比べて小さいことを特徴とする車両用補機の取付け構造。
【請求項3】
前記複数の車両用補機は、前記フロントガラスの車幅方向中央に配設された前方撮像用のカメラと、該カメラの車幅方向の両側にそれぞれ配設された他の2つの車両用補機とであり、
該2つの車両用補機のうち、車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法が小さい方の補機が、前記フロントガラスの車幅方向中央よりも運転席側に配設され、他方の補機が、前記フロントガラスの車幅方向中央よりも助手席側に配設されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用補機の取付け構造。
【請求項4】
前記フロントガラスに、ステーを介してインナミラーが取り付けられており、
該インナミラーの前方に前記複数の車両用補機が配設されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用補機の取付け構造。
【請求項5】
前記ステーは、前記カバーの車幅方向中央からずれた位置において該カバーの上部を貫くように配設されており、
前記カバーは、前記ステーを車幅方向両側から挟み込むようにして相互に接合される左右一対のカバー部材を備え、
前記ステーを挟み込む部分において、前記左右のカバー部材の車幅方向の幅は互いに異なり、下端部において、該左右のカバー部材の車幅方向の幅は略均等であることを特徴とする請求項4に記載の車両用補機の取付け構造。
【請求項6】
前記左右のカバー部材の境界線はジグザグに設けられていることを特徴とする請求項5に記載の車両用補機の取付け構造。
【請求項7】
前記2つの車両用補機は、雨滴センサと、該雨滴センサに比べて車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法が大きい前方障害物検出用の赤外線センサであり、
前記雨滴センサが前記カメラよりも運転席側に配設され、
前記赤外線センサが前記カメラよりも助手席側に配設されたことを特徴とする請求項3に記載の車両用補機の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントガラスにカメラや雨滴センサ等の複数の車両用補機が取り付けられる車両における車両用補機の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラスには、車両前方の車線等を撮像するためのカメラ、前方車両等の障害物を検出するための赤外線センサ、及び、フロントガラスに付着する雨滴の量を検出するための雨滴センサなどといった車両用補機が取り付けられることがある。
【0003】
例えば特許文献1には、前方撮像用のカメラが、インナミラーの近傍においてフロントガラスに取り付けられた構造が開示されている。また、特許文献2には、前方撮像用カメラがインナミラーに内蔵されることで、該インナミラーを介してフロントガラスに取り付けられた構造が開示されている。
【0004】
このように、フロントガラスにカメラ等の車両用補機を1つだけ取り付ける場合、該車両用補機を、運転者から見てインナミラーの裏側に配設したり、インナミラーに内蔵したりすることで、車両用補機により運転者の視界が妨げられることを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−260371号公報
【特許文献2】特開2004−82829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フロントガラスに複数の車両用補機を取り付ける場合、これらの車両用補機をインナミラーにより完全に覆い隠したり、インナミラーに内蔵したりすることは困難であるため、これらの車両用補機または該補機を覆うカバーが運転者の視界の妨げとなる問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、フロントガラスに複数の車両用補機が取り付けられる場合において、これらの補機による前方視界の悪化を抑制することができる車両用補機の取付け構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用補機の取付け構造は、次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
車両のフロントガラスの車幅方向中央部の上部に取り付けられた複数の車両用補機と、
該複数の車両用補機を一括して車室内側から覆うカバーと、を備え、
前記複数の車両用補機のうち
車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法が最も小さい車両用補機は、残りの前記車両用補機に比べて車幅方向運転席側に配設され、
前記カバーは、前記車幅方向運転席側に配設された車両用補機を覆う部分の
車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法が前記残りの車両用補機を覆う部分の
車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法に比べて小さいことを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項2に記載の発明は、
車両のフロントガラスの車幅方向中央部に取り付けられた複数の車両用補機と、
該複数の車両用補機を一括して車室内側から覆うカバーと、を備え、
前記フロントガラスの車幅方向中央に比べて運転席側に配設された前記車両用補機の後面視での車幅方向寸法は、助手席側に配設された前記車両用補機の後面視での車幅方向寸法よりも小さく、
前記カバーにおける前記フロントガラスの車幅方向中央よりも運転席側に配置された部分の後面視での車幅方向寸法は、該カバーにおける前記フロントガラスの車幅方向中央よりも助手席側に配置された部分の後面視での車幅方向寸法に比べて小さいことを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記複数の車両用補機は、前記フロントガラスの車幅方向中央に配設された前方撮像用のカメラと、該カメラの車幅方向の両側にそれぞれ配設された他の2つの車両用補機とであり、
該2つの車両用補機のうち、
車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法が小さい方の補機が、前記フロントガラスの車幅方向中央よりも運転席側に配設され、他方の補機が、前記フロントガラスの車幅方向中央よりも助手席側に配設されたことを特徴とする。
【0012】
またさらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
前記フロントガラスに、ステーを介してインナミラーが取り付けられており、
該インナミラーの前方に前記複数の車両用補機が配設されたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載の発明において、
前記ステーは、前記カバーの車幅方向中央からずれた位置において該カバーの上部を貫くように配設されており、
前記カバーは、前記ステーを車幅方向両側から挟み込むようにして相互に接合される左右一対のカバー部材を備え、
前記ステーを挟み込む部分において、前記左右のカバー部材の車幅方向の幅は互いに異なり、下端部において、該左右のカバー部材の車幅方向の幅は略均等であることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の発明において、
前記左右のカバー部材の境界線はジグザグに設けられていることを特徴とする。
【0015】
またさらに、請求項7に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、
前記2つの車両用補機は、雨滴センサと、該雨滴センサに比べて
車両に取り付けられた状態での車両に対しての上下方向の寸法が大きい前方障害物検出用の赤外線センサであり、
前記雨滴センサが前記カメラよりも運転席側に配設され、
前記赤外線センサが前記カメラよりも助手席側に配設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、フロントガラスの車幅方向中央部に取り付けられる複数の車両用補機のうち上下方向の寸法が最も小さい補機が、残りの補機に比べて車幅方向の運転席側に配設され、前記複数の車両用補機を一括して車室内側から覆うカバーは、前記車幅方向運転席側に配設された補機を覆う部分の上下方向の寸法が前記残りの補機を覆う部分の上下方向の寸法に比べて小さいため、車両用補機による運転者の前方視界の悪化を抑制することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、フロントガラスの車幅方向中央部に取り付けられる複数の車両用補機のうち、車幅方向中央よりも運転席側に配設された補機の後面視での車幅方向寸法が、車幅方向中央よりも助手席側に配設された補機の後面視での車幅方向寸法よりも小さく、前記複数の車両用補機を一括して車室内側から覆うカバーは、そのフロントガラスの車幅方向中央よりも運転席側に配置された部分の後面視での車幅方向寸法が、助手席側に配置された部分の後面視での車幅方向寸法に比べて小さいため、車両用補機による運転者の前方視界の悪化を抑制することができる。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、フロントガラスに取り付けられる前記複数の車両用補機が、フロントガラスの車幅方向中央に配設された前方撮像用のカメラと、該カメラの車幅方向の両側にそれぞれ配設された他の2つの車両用補機とである場合において、該2つの補機のうち上下方向の寸法が小さい方の補機がフロントガラスの車幅方向中央よりも運転席側に配設され、他方の補機がフロントガラスの車幅方向中央よりも助手席側に配設されるため、前記カメラによるフロントガラスの車幅方向中央からの前方撮像を可能にしつつ、車両用補機による運転者の前方視界の悪化を軽減することができる。
【0019】
またさらに、請求項4に記載の発明によれば、インナミラーの前方に前記複数の車両用補機が配設されるため、車両用補機が前方視界に与える悪影響を極力小さくすることができる。
【0020】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記カバーを構成する左右のカバー部材の下端部が、車幅方向において略均等な幅を有するため、左右いずれのカバー部材についても、その下端部を容易に把持することができ、これらのカバー部材の着脱時において良好な作業性を得ることができる。
【0021】
さらに、請求項6に記載の発明を請求項5に記載の発明に適用すれば、前記左右のカバー部材の境界線がジグザグに設けられるため、該境界線が直線状に設けられる場合に比べて、カバー部材同士の接合強度を高めることができる。
【0022】
またさらに、請求項7に記載の発明を請求項3に記載の発明に適用すれば、車幅方向中央のカメラの両側に雨滴センサと赤外線センサとを配設する場合において、上下方向の寸法が小さい方の雨滴センサが車幅方向の運転席側に配設されることで、前方視界の悪化抑制を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】フロントガラスに対する車両用補機の取付け位置を示す平面図である。
【
図2】
図1の車両用補機を車室内側から見た図である。
【
図3】
図2の車両用補機を覆うカバーを車室内側から見た図である。
【
図4】
図3のカバーを構成する左右のカバー部材をカバーの内側から見た図である。
【
図5】カバーの上下方向の寸法と前方視界における該カバーによる死角との関係を説明するための側面図である。
【
図6】車幅方向各部における車両用補機とカバーの各上下方向寸法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「前後」、「右」、「左」、「左右」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の進行方向を「前」とした場合の方向を指すものとする。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用補機の取付け構造が適用される車両1において、フロントガラス4における車両用補機30,40,50の取付け位置を示す平面図である。
【0026】
図1に示す車両1では、フロントガラス4の車幅方向中央部の上部に複数の車両用補機30,40,50が例えば接着により取り付けられている。具体的に、これらの車両用補機30,40,50は、車両前方の車線または対向車両等を撮像するために使用される前方撮像用カメラ30と、フロントガラス4に付着した雨滴の量を検出するための雨滴センサ40と、車両前方の車両等の障害物を検出するための赤外線センサ50とである。
【0027】
前方撮像用カメラ30により車両前方の車線を撮像する場合、車両1が車線を逸脱したときに、これを検出して乗員に対して所定の警報を発することが可能となる。また、前方撮像用カメラ30により車両前方の対向車両を撮像する場合、対向車両の存在を検出したときに、前照灯のハイビームを規制することが可能となる。
【0028】
雨滴センサ40によりフロントガラス4に付着した雨滴の量を検出すると、この検出値に基づいてフロントガラス用のワイパーの動作間隔を制御することが可能となる。したがって、雨滴センサ40は、フロントガラス4におけるワイパーによる拭き取り部分に配設される。
【0029】
赤外線センサ50により前方車両等の障害物を検出する場合、この検出結果に基づいて、前方衝突を回避するように緊急停止させたり前方車両との車間距離を所定距離以上に維持したりするように車両1の走行を制御することが可能となる。
【0030】
前方撮像用カメラ30、雨滴センサ40及び赤外線センサ50は、カバー60により一括して車室内側から覆われている。このカバー60は、フロントガラス4に例えば接着により取り付けられたベースプレート20の周縁部に係合することで、該ベースプレート20を介してフロントガラス4に取り付けられている。
【0031】
また、フロントガラス4の車幅方向中央部の上部には、インナミラー6がステー8を介して取り付けられており、該インナミラー6の前方に、上記の前方撮像用カメラ30、雨滴センサ40、赤外線センサ50及びこれらの補機を覆うカバー60が配設されている。これにより、カバー60は、運転席2の着座乗員から見てインナミラー6と重複して配設されている。この点に関して、運転席2の着座乗員から見てカバー60とインナミラー6とが重複する量が多くなるような配置とすることが好ましく、これにより、運転者の前方の視界において、インナミラー6による死角部分からはみ出して配置されるカバー60部分を少なくすることができる。したがって、フロントガラス4に補機30,40,50とカバー60を取り付けることによる前方視界の悪化を極力抑制することができる。
【0032】
図2は、カバー60を取り外した状態で上記の補機30,40,50とベースプレート20とを車室内側から見た図である。また、
図2において、中心線Pは、フロントガラス4の車幅方向中央の位置を示しており、中心線Pよりも左側が車幅方向運転席側、中心線Pよりも右側が車幅方向助手席側となっている。
【0033】
図2に示すように、ベースプレート20には、フロントガラス4の車幅方向中央から運転席側にずれた位置に、インナミラー6のステー8の基部10との干渉を避けるための開口部22が形成されている。
【0034】
前方撮像用カメラ30は、ベースプレート20の前記開口部22の下側に配設されている。該カメラ30のレンズ32は、フロントガラス4の車幅方向中央に配設されており、これにより、カメラ30による車線または対向車両等の撮像対象物の位置を正確に検出できるようになっている。
【0035】
また、雨滴センサ40は、ベースプレート20の前記開口部22及び前方撮像用カメラ30よりも車幅方向運転席側に配設されており、赤外線センサ50は、ベースプレート20の前記開口部22及び前方撮像用カメラ30よりも車幅方向助手席側に配設されている。
【0036】
図3は、カバー60を、該カバー60の外側すなわち車室内側から見た図である。
図3においても、中心線Pは、フロントガラス4の車幅方向中央の位置を示しており、中心線Pよりも左側が車幅方向運転席側、中心線Pよりも右側が車幅方向助手席側となっている。
【0037】
図3に示すように、インナミラー6のステー8は、カバー60の車幅方向中央から運転席側にずれた位置において該カバー60の上部を貫くように配設されており、カバー60は、ステー8を車幅方向両側から挟み込むようにして相互に接合される左右一対のカバー部材62,64を備えている。
【0038】
図4は、左右のカバー部材62,64を、カバー60の内側すなわち車室外側から見た図である。
【0039】
図4に示すように、助手席側のカバー部材64における運転席側のカバー部材62との接合部には、複数の係止用突起72が設けられており、運転席側のカバー部材62における助手席側のカバー部材64との接合部には、助手席側のカバー部材64の係止用突起72を係止するための複数の係止部74と、該係止部74に係止用突起72を案内するための複数のガイド部76とが設けられている。また、各カバー部材62,64の接合部には、ステー8との干渉を避けるための略半円形の切り欠き部68,70が設けられている。さらに、各カバー部材62,64の周縁部には、ベースプレート20の周縁部に係止するための複数のベース係止部80が設けられている。
【0040】
フロントガラス4にカバー60を取り付ける際は、左右のカバー部材62,64のベース係止部80をベースプレート20の周縁部に係止するとともに、左右のカバー部材62,64でステー8を挟み込みながら、運転席側のカバー部材62の係止部74に助手席側のカバー部材64の係止用突起72を係止することで、左右のカバー部材62,64が互いに接合されて、これにより、カバー60がベースプレート20を介してフロントガラス4に取り付けられる。
【0041】
図3に戻って、カバー60には、左右のカバー部材62,64の切り欠き68,70で構成された略円形の開口部72が設けられ、この開口部72にステー8が通されるようになっている。また、左右のカバー部材62,64の境界線66はジグザグに設けられており、これにより、該境界線が直線状に設けられる場合に比べて、カバー部材62,64同士の接合強度が高められている。
【0042】
上述した通り、ステー8は、カバー60の車幅方向中央から運転席側にずれた位置において該カバー60の上部を貫くように配設されているため、ステー8を挟み込む部分における車幅方向の幅は、助手席側のカバー部材64が運転席側のカバー部材62よりも大きくなっている。そのため、この部分において、助手席側のカバー部材64を把持し難くなっている。
【0043】
しかしながら、両カバー部材62,64の境界線66が上記のようにジグザグに設けられており、下端部においては、左右のカバー部材62,64の車幅方向の幅は略均等となっている。そのため、左右いずれのカバー部材62,64についても、その下端部を容易に把持することができ、これにより、カバー部材62,64の着脱時において良好な作業性が得られるようになっている。
【0044】
続いて、
図5を参照しながら、カバー60の上下方向の寸法が運転者の前方の視界に与える影響について説明する。
【0045】
図5に示すように、フロントガラス4は上側に向かって後方へ傾斜して設けられており、このように傾斜したフロントガラス4にカバー60が取り付けられる。また、カバー60は、フロントガラス4の上部に取り付けられるため、運転者から見て前上方にカバー60が配設されることとなる。そして、カバー60の上下方向の寸法がLxである場合において、運転者が前方を見たときのカバー60による死角の領域をDとすると、カバー60の上下方向の寸法がLxよりも大きなLyである場合には、運転者が前方を見たときのカバー60による死角の領域が前記の領域Dよりも大きくなってしまう。よって、カバー60の上下方向の寸法が大きいほど運転者の前方の視界が悪化すると言える。
【0046】
ところで、カバー60は、該カバー60により覆われる車両用補機30,40,50の上下方向の寸法に追従する上下方向の寸法を有しており、これにより、可及的にコンパクトに形成されている。また、カバー60は、車幅方向の位置によって異なる補機30,40,50を覆っているため、カバー60の上下方向の寸法は、車幅方向の各部において異なる大きさを有する。
【0047】
図6を参照しながら、車幅方向各部における車両用補機30,40,50の上下方向の寸法L1,L2,L3とカバー60の上下方向の寸法La,Lb,Lcとについて説明する。
【0048】
図6(a)は、
図1のA−A線断面図であり、雨滴センサ40の上下方向の寸法L1と、該雨滴センサ40を覆う部分におけるカバー60の上下方向の寸法Laとを示している。雨滴センサ40は、フロントガラス4に取り付けられた補機30,40,50のうち上下方向の寸法が最も小さい。そのため、雨滴センサ40を覆う部分におけるカバー60の上下方向の寸法Laは、他の補機30,50を覆う部分に比べて小さくなっている。
【0049】
図6(b)は、
図1のB−B線断面図であり、前方撮像用カメラ30の上下方向の寸法L2と、該前方撮像用カメラ30を覆う部分におけるカバー60の上下方向の寸法Lbとを示している。前方撮像用カメラ30の上下方向の寸法L2は、雨滴センサ40の上下方向の寸法L1に比べて大きいため、該カメラ30を覆う部分におけるカバー60の上下方向の寸法Lbは、雨滴センサ40を覆う部分における寸法Laよりも大きくなっている。
【0050】
図6(c)は、
図1のC−C線断面図であり、赤外線センサ50の上下方向の寸法L3と、該赤外線センサ50を覆う部分におけるカバー60の上下方向の寸法Lcとを示している。赤外線センサ50は、フロントガラス4に取り付けられた補機30,40,50のうち上下方向の寸法が最も大きい。そのため、赤外線センサ50を覆う部分におけるカバー60の上下方向の寸法Lcは、他の補機30,40を覆う部分に比べて大きくなっている。
【0051】
このように、補機30,40,50を覆う3箇所におけるカバー60の上下方向の寸法La,Lb,Lcを比較すると、3つの補機30,40,50のうち車幅方向において最も運転席側に配設された雨滴センサ40を覆う部分の寸法Laが最も小さくなっている。そのため、運転者が前方を見たとき、該運転者に最も近い部分においてカバー60による死角を狭めることができ、これにより、フロントガラス4に補機30,40,50とカバー60を取り付けることによる前方視界の悪化を最小限に抑えることができる。
【0052】
また、カバー60の上記各部における上下方向の寸法La,Lb,Lcのうち最も寸法が大きい部分は、3つの補機30,40,50のうち運転席から最も離れた赤外線センサ50を覆う部分である。これにより、比較的大きな死角領域を形成するカバー60部分が運転席から遠ざけて配置されることとなるため、前方視界の悪化を一層効果的に抑制することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、前方撮像用カメラ30に比べて上下方向の寸法が大きい赤外線センサ50が使用されているが、前方撮像用カメラ30に比べて上下方向の寸法が小さい赤外線センサ50を使用する場合であっても、前方撮像用カメラ30による撮像の正確性を確保するために、該カメラ30をフロントガラス4の車幅方向中央に配設して、該カメラ30よりも助手席側に赤外線センサ50を配設することが好ましい。
【0054】
図7は、カバー60を後方から見た図である。なお、
図7において、インナミラー6及びステー8の図示は省略している。また、
図7においても、
図2と同様、中心線Pは、フロントガラス4の車幅方向中央の位置を示しており、中心線Pよりも左側が車幅方向運転席側、中心線Pよりも右側が車幅方向助手席側となっている。
【0055】
図7に示すように、フロントガラス4の車幅方向中央よりも運転席側に配設された雨滴センサ40の車幅方向寸法L4は、フロントガラス4の車幅方向中央よりも助手席側に配設された赤外線センサ50の車幅方向寸法L5よりも小さくなっている。また、これに追従するように、カバー60におけるフロントガラス4の車幅方向中央よりも運転席側に配置された部分の車幅方向寸法Ldは、該カバー60におけるフロントガラス4の車幅方向中央よりも助手席側に配置された部分の車幅方向寸法Leに比べて小さくなっている。
【0056】
そのため、運転者が前方を見たときにカバー60により生じる死角の領域を、フロントガラス4の車幅方向中央よりも運転席側の部分において一層小さくすることができる。これにより、フロントガラス4の車幅方向中央部の上部に複数の車両用補機30,40,50を取り付ける場合において、運転者の前方視界の悪化を効果的に抑制し得る補機30,40,50の配置を実現することができる。
【0057】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0058】
例えば、上述の実施形態では、車両用補機として、前方撮像用カメラ30、雨滴センサ40及び赤外線センサ50を設置する場合について説明したが、本発明では、フロントガラス4の車幅方向中央部の上部に複数の車両用補機を取り付ける構成であれば、車両用補機の種類は特に限定されるものでなく、また、同じ種類の車両用補機が複数取り付けられる場合にも本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明によれば、フロントガラスに複数の車両用補機が取り付けられる場合において、これらの補機による前方視界の悪化を抑制することが可能となるから、フロントガラスにカメラや各種センサが取り付けられる自動車の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0060】
1:車両、2:運転席、4:フロントガラス、6:インナミラー、8:ステー、30:前方撮像用カメラ、40:雨滴センサ、50:赤外線センサ、60:カバー、62,64:左右のカバー部材、66:カバー部材の境界線。