(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対のガイドバーは、前記ホルダに固定されると共に前記丸鋸部の側面を通り、前記傾動軸と略平行で前方に延び、前記支持部材を前記ガイドバー上で摺動可能な構成としたことを特徴とする請求項1記載のスライド式卓上切断機。
前記回転摺動部材は、前記他方のガイドバーの長手方向と直交する方向における一方側に配置され、他方側には、前記他方のガイドバーを前記回転摺動部材側に押圧する押圧手段が設けられていることを特徴とする請求項6記載のスライド式卓上切断機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のスライド式卓上切断機は、支持部に摺動面を持つ2つの移動部材を当該させいるため、ガイドバーとの隙間を調整することはできるが、移動部材は摺動抵抗が大きいため、ガイドバーの芯間を詰め過ぎると移動部材への荷重が過大となることから、ガイドバーは適度な芯間が必要となる。
【0007】
このため、特にホルダから前方の延びるようにベース部上方にガイドバーを配置した構造の場合、丸鋸部はガイドバーの側面に配置されるため、直動ベアリング側を基準として滑り摺動の摺動部の一方に回転モーメントが発生することから、軽量化のためにガイドバーの芯間を詰めるのには限界があった。従って、ガイドバーの軸間(芯間)を詰めるとの前後の摺動荷重が重くなり円滑な摺動操作ができなくなるという問題があった。
【0008】
特許文献2に記載のスライド式卓上切断機は、2つの支持部に直動ベアリングを使用した場合には、直動ベアリングは転がり部の鋼球が直接、ガイドバーに点接触で当接しているため、高い面圧に耐えるためにガイドバーを熱処理して硬度を高めている。更に高価な直動ベアリングを2個使用する必要があった。
【0009】
このため、ガイドバーは熱処理し、更には高価な直動ベアリングを2個使用しているため、高価な構造となってしまう問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記欠点を解消し、小型化を図ると共に、安価で操作性の良いスライド式卓上切断機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、被加工材を載置可能なベース部と、電動機を収納し、該電動機の駆動により回動する丸鋸刃を回動可能に支持する丸鋸部と、前記丸鋸刃の軸方向と略平行な揺動軸により前記丸鋸部を揺動可能に支持する支持部材と、前記ベース部上面に対する前記丸鋸刃側面の角度を変更可能で、前記丸鋸刃の軸方向に略直交すると共に前記ベース部上面に対して略平行に延びる傾動軸により前記ベース部に対して傾動可能なホルダと、前記支持部材を前記傾動軸の軸方向に摺動可能に支持し、互いに略平行な一対のガイドバーと、を備え、前記丸鋸部を前記ガイドバーによって前記軸方向へ摺動可能としたスライド式卓上切断機において、前記支持部材は、前記一対のガイドバーが挿入される一対の支持部を有し、該一対の支持部のうち、一方の支持部は直動摺動部材を
有し、他方の支持部は前記一対のガイドバーの並び方向と略直交する方向へ前記一対のガイドバーの他方を挟みこむ方向において、前記他方のガイドバーの一方側に回転摺動部材
、他方側に押圧手段を
有し、前記回転摺動部材は前記支持部材に取付けられるダストカバーにより覆われることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、直動摺動部材側のガイドバーの隙間を最少にすることができ、安価な構成で高精度を維持でき、更にスライド動作をスムーズに行うことができると共に高い切断精度を得ることができる。
【0013】
また、前記一対のガイドバーは、前記ホルダに固定されると共に前記丸鋸部の側面を通り、前記傾動軸と略平行で前方に延び、前記支持部材を前記ガイドバー上で摺動可能な構成としたことを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、丸鋸部はガイドバーの側面配置となるため、直動摺動部材側を基準として滑り摺動の摺動部の一方に回転モーメントが発生し、反直動摺動部材側の支持部の左右からの荷重は一方向になることから、反直動摺動部材側の支持部の回転摺動部材は荷重が加わる側の一方に配置すればよい。よって、部品点数を増やすことなく安価に摺動性を向上することができる。
【0015】
また、前記押圧手段は、押しねじによって構成すると共に前記ガイドバー側に移動可能とし、 前記押しねじに対抗し前記ガイドバーに対して他方側から固定手段の押圧により前記摺動を固定可能にしたことを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、反回転摺動部材側の支持部において、隙間調整用の押圧手段を設けることにより、滑り軸受(回転摺動部材)の圧力調整ができ、スライド荷重を思い通りにすることができる。また、押圧手段に対抗し他方から固定手段の押圧により摺動を固定可能にしたことにより、固定手段の押圧でガイドバーに偏荷重がかかることがないので、固定手段の押圧で製品精度(切断制度)が変化することを抑制することができる。
【0017】
また、前記支持部は、前記ガイドバーの長手方向における前記回転摺動部材の少なくとも前後一方側に防塵部材を設けたことを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、切削で発生した切屑が、回転摺動部材とガイドバー間に侵入することを抑制することができるため、安定した丸鋸部の摺動が可能になる。
【0019】
また、前記回転摺動部材は、前記丸鋸刃の軸方向において、前記ガイドバーに対して前記丸鋸部と反対側の前記支持部材に設けられていることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、丸鋸部を傾斜させたときに受ける荷重が回転摺動部材にかかることになるため、摺動性を低下させることを抑制することができる。
【0021】
更に、本発明は、被加工材を載置可能なベース部と、電動機を収納し、該電動機の駆動により回動する丸鋸刃を回動可能に支持する丸鋸部と、該丸鋸部を前記ベース部上面と略平行な方向に摺動可能に支持する支持
部材と、を備え、該支持
部材は、一対のガイドバーと、該一対のガイドバーが挿入する一対の穴部を有するスライド式卓上切断機において、前記一対の穴部のうち、一方の穴部には前記ガイドバーの一方と接触する直動摺動部材
、他方の穴部には前記ガイドバーの他方と接触するように回転摺動部材
が設けられ、前記回転摺動部材は前記支持部材に取付けられるダストカバーにより覆われることを特徴とする。
【0022】
また、前記回転摺動部材は、前記他方のガイドバーの長手方向と直交する方向における一方側に配置され、他方側には、前記他方のガイドバーを前記回転摺動部材側に押圧する押圧手段を設けたことを特徴とする。
【0023】
また、前記一対のガイドバーは前記丸鋸部の揺動方向と略平行に配置されており、前記直動摺動部材は前記一対のガイドバーのうち、下側のガイドバーに接触するよう配置され、前記回転摺動部材は上側のガイドバーに接触するように配置されていることを特徴とする。
【0024】
また、前記回転摺動部材は、前記丸鋸刃の軸方向において、前記ガイドバーに対して前記丸鋸部と反対側の前記支持部材に設けられていることを特徴とする。
【0025】
更に、本発明は、被加工材を載置可能なベース部と、電動機を収納し、該電動機の駆動により回動する丸鋸刃を回動可能に支持する丸鋸部と、前記丸鋸刃の軸方向と略平行な揺動軸により前記丸鋸部を揺動可能に支持する支持部材と、前記丸鋸刃の軸方向に略直交すると共に前記ベース部上面に対して略平行に延びる傾動軸により前記ベース部に対して傾動可能なホルダと、一端側が該ホルダに固定され、前記支持部材を摺動可能に支持すると共に前記丸鋸刃の揺動方向と略平行に配置された一対のガイドバーと、を備え、前記支持部材を前記ガイドバー上で摺動することにより前記丸鋸部を摺動可能としたスライド式卓上切断機であって、前記支持部材は、前記一対のガイドバーが挿入される一対の穴部と、該一対の穴部の一方に設けられ前記一対のガイドバーの一方と接触して摺動可能に支持する直動ベアリングと、前記一対の穴部の他方に突出するように設けられ、前記一対のガイドバーの他方と接触して摺動可能に支持する回転ベアリングと、前記ガイドバーの配置方向と略直交する方向において、前記ガイドバーの他方に対して前記回転ベアリングの反対側に位置し前記ガイドバーの他方を前記回転ベアリング側に押圧する押圧手段
と、前記回転ベアリングを覆うダストカバーを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスライド式卓上切断機によれば、回転摺動部材が設けられた側のガイドバーと支持部間の隙間を最少にすることができ、安価な構成で小型化を図れると共に、高精度な切断作業を維持でき、更にはスライド動作をスムーズに行うことができる。
【0027】
更に、摺動部材(支持部材)において、回転モーメントが加わる部分に回転摺動部材を設けたため、安価な構成でスライド動作をスムーズに行うことができる。
【0028】
すなわち、ガイドバー間の距離を詰めた場合に生じる丸鋸部の回転モーメントを回転摺動部材が受けるように配置することで、摺動性を向上さえることができると共に小型化を図ることができる。回転摺動部材は、回転モーメントが加わる部分にのみ設ければ良いため、部品点数を増加することなく、安価な構成とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明となるスライド式卓上切断機の一実施の形態について
図1乃至
図9を用いて以下説明する。まず、本発明となるスライド式卓上切断機の構成を説明する。
【0031】
スライド式卓上切断機は、被加工材35を載置可能なベース部となるベース1及びターンテーブル2と、電動機であるモータ21を収納し、モータ21の駆動により回動する丸鋸刃14を鋸刃軸部15を中心に回動可能に支持する丸鋸部12と、丸鋸刃14の鋸刃軸部15の軸方向と略平行な揺動軸11により丸鋸部12を揺動可能に支持する支持部材8とを有し、支持部材8を前後方向(
図1の左右方向)に摺動可能に構成されている。
【0032】
ベース部は、床面等に載置可能なベース1と、ベース1に埋設されベース1上面と略面一となる上面を有し、上面に直交する図示しない回動軸を介してベース1と回動可能に連結されたターンテーブル2を有する構成をしている。作業時には、ベース部であるベース1及びターンテーブル2に被加工材35が載置可能となっている。
【0033】
ベース1にはベース上面と略直交する押さえ面3aを有する一対のフェンス3が設けられている。フェンス3は、断面が直角形状をしており、
図1に示すような被加工材35を切断加工する際にはフェンス3の押さえ面3aに被加工材35の一面を当接させた状態で切断作業を行うことにより、安定した切断作業を行うことができるようになっている。ハンドル2dを把持しターンテーブル2をベース1に対して回動させると、ターンテーブル2と連結されたホルダ5、ガイド部7、支持部材8及び丸鋸部12のフェンス3に対する位置が変化し、これによって、フェンス3の押さえ面3aと丸鋸刃14側面との角度が変化することとなり、フェンス3に当接された被加工材35を様々な角度で切断加工することができるようになっている。
【0034】
図1に示すようにターンテーブル2の後方側(
図1に示す左側)端部付近には、ベース部1から上方に立設するホルダ5が、丸鋸刃14側面及びターンテーブル2上面と略平行に延びた傾動軸4を介して接続されている。
図5及び
図6に示すように、傾動軸4を支点としてホルダ5はターンテーブル2に対して左右方向に傾動可能となっており、傾斜切断可能に構成されている。
【0035】
また、ターンテーブル2の後方側端部には上方に突出した突出部2aが設けられ、この突出部2aにホルダ5に設けられた傾動規制手段を構成するクランプレバー6が押接されることでベース1(ターンテーブル2)に対するホルダ5の傾動が規制(固定)される。このように、クランプレバー6の操作によってホルダ5とターンテーブル2との傾動を固定・解除可能となっている。なお、ターンテーブル2の突出部2aには、
図2に示すように傾動軸4を支点とした円弧状の長穴2cが設けられており、長穴2c内にホルダ5に取付けられたクランプレバー6の軸部が位置する構成となっている。それにより、ホルダ5を長穴2cの範囲でベース部に対して傾斜させることができ、所望の傾斜角度でクランプレバー6を締め付ければ種々の傾斜角度での傾斜切断が可能となる。
【0036】
ホルダ5の上端部付近には、
図7に示すように、丸鋸刃14の側面及びベース部の上面に略平行に配列された穴部5cが2個形成されている。ホルダ5の各穴部5cには、略同径或いは若干大径のパイプ材からなるガイド部である一対のガイドバー7a、7jの一端が挿入されている。本発明となるスライド式卓上切断機においては、ホルダ5に対するガイドバー7a、7jの抜け及び回転を防止するために、ホルダ5の穴部5c内に突出可能なボルトやねじ等からなる固定手段5dが設けられている。ガイドバー7a、7jは固定手段5dによりホルダ5に対して摺動不能に固定されている。
【0037】
ホルダ5の穴部5c内に挿入される本発明のガイド部7である2本のガイドバー7a、7jは、略同じ長さ寸法のものであり、長さ寸法はターンテーブル2の長手方向(
図7の左右方向)よりも短いものである。また、ガイドバー7a、7jは互いに平行に上下方向(
図1の上下方向)に並んでいると共に、丸鋸刃14の側面と平行に延在してベース部上方に配置されている。
【0038】
ガイドバー7a、7jの他端(
図7に示す右側の前方端部)には、丸鋸刃14の側面及びベース部の上面に略平行に配列された2個の穴部9aが設けられた係合部材であるサポート9が取り付けられている。サポート9は穴部9a内に突出可能な固定手段9bが各穴部9aに対して設けられており、固定手段9bによってガイドバー7a、7jに対するサポート9の抜け及びガイドバー7a、7jの回転を防止している。
【0039】
2本のガイドバー7a、7jのホルダ5と反対側の端面には上述した2本のガイドバー7a、7jと係合する係合部材であるサポート9が設けられている。従って、支持部材8はガイドバー7a、7j上を摺動してホルダ5に当接することで丸鋸部12のホルダ5側への摺動が規制され、サポート9に当接することでホルダ5から離れる方向への摺動が規制される構成となっており、容易に支持部材8及び丸鋸部12のガイドバー7a、7jからの抜け止めを行うことができるように構成されている。
【0040】
図3に示すように、支持部材8にはガイドバー7a、7jの軸方向と直交する方向に延びる揺動軸11が固定され、
図1及び
図7に示すように、揺動軸11を介して支持部材8には丸鋸部12が連結されている。
【0041】
図1及び
図3に示すように、支持部材8の揺動軸11の下方には凹部8eが設けられおり、凹部8e内にはレーザー発振器40が設けられている。レーザー発振器40は、少なくとも丸鋸刃14の鋸刃軸15の軸方向に移動調整可能な構成をしており、丸鋸刃14の延長線上すなわち被加工材35の切断箇所にレーザー光を照射可能になっている。なお、レーザー発振器40はノブ40aを操作することにより鋸刃軸15の軸方向に移動可能に構成されているため、作業に応じて調整可能であり、レーザー光の照射位置を丸鋸刃14の側面に沿って、或いは、丸鋸刃14の刃幅内に照射することができ、例えば被加工材35の表面に記された墨線にレーザー光を合わせること正確に所望の箇所を切断することができる。
【0042】
また、揺動軸11の外周にはスプリング13が設けられ、スプリング13によって丸鋸部12は常時、ベース部から丸鋸刃14が離れる方向(
図1の上方側)に揺動するよう付勢されており、通常時には図示しないストッパ機構によって
図1に示す最も上方側(反ベース部側)に揺動した位置となる。切断加工時には、スプリング13の付勢力に抗して丸鋸部12を揺動軸11を支点として下方(ベース部側)に揺動させることにより行なわれる。
【0043】
丸鋸部12を下方側(ベース部側)に揺動させると、丸鋸刃14はターンテーブル2に設けられた溝部2A(
図8)内に侵入し、所定量侵入した状態で図示しないストッパ機構によって
図1(丸鋸刃14の二点破線)や
図7に示すように揺動が規制される。
【0044】
本発明となるスライド式卓上切断機は、
図7に示すように、丸鋸部12をベース部側に揺動させた状態からハンドル部26を把持して丸鋸部12をホルダ5側に押すことで、丸鋸部12と揺動軸11によって連結された支持部材8がガイドバー7a、7j上を摺動し、丸鋸部12及び丸鋸刃14がホルダ5側に移動しながら幅広の被加工材35の切断加工を行うことができる。
【0045】
丸鋸部12は、
図9に示すように、ギヤ16と回転固定された鋸刃軸部15をギヤ16の両側に配置されたベアリングにより回転可能に支持し、鋸刃軸部15上に丸鋸刃14をフランジにより回転固定されるよう取り付けて構成されている。また、ギヤ16と噛合うピニオン17aを有するプーリ軸17と、プーリ軸17と回転固定されたプーリ18と、丸鋸刃14の回転軸となる鋸刃軸部15と平行に延びたモータ軸22を有し、丸鋸刃14側面の延長線と交差するように配置されたモータ21と、モータ軸22と回転固定されたプーリ23と、プーリ18及びプーリ23に巻き付きモータ21(モータ軸22)の回転力をプーリ18に伝達する伝達ベルト24とを有している。本発明のベルト機構は伝達ベルト24、プーリ18及び23によって構成される。
【0046】
また、丸鋸部12は、丸鋸刃14の一部外周を覆うと共に鋸刃軸部15を覆う形状をしたソーカバー20と、ソーカバー20と連結し、鋸刃軸部15、ギヤ16、プーリ軸17、プーリ18、プーリ23等を覆う形状をしたギヤカバー28と、ギヤカバー28と連結しモータ21、モータ軸22を覆う形状をしたモータハウジング25とから構成される。
【0047】
また、ソーカバー20内にはソーカバー20から露出する丸鋸刃14の部分の外周を覆う形状をした鋸カバー19が鋸刃軸部15を中心に回動可能に設けられている。鋸カバー19は、
図1に示すように、丸鋸部12が上方に揺動している状態では、ソーカバー20から露出する丸鋸刃14の部分の外周を覆う位置に回動しており、
図7に示すように、丸鋸部12が下方に揺動している状態では図示しないリンク機構によってソーカバー20内に収納され、ソーカバー20から丸鋸刃14の一部外周を露出する位置に回動する。ソーカバー20から露出する丸鋸刃14により被加工材35を切断可能に構成されている。
【0048】
モータハウジング25には丸鋸刃14側面の延長線上に位置するハンドル部26が一体的に設けられており、ハンドル部26にはモータ21の駆動を制御するスイッチ27が設けられている。ハンドル部26を丸鋸刃14側面の延長線上に設けることにより、切断加工時(揺動時)に丸鋸刃14を介して丸鋸部12に加わる反力を丸鋸部12に傾き等の力を生じさせることなく受けることができる。
【0049】
また、モータハウジング25には丸鋸部12が
図7に示すように最もベース部側に近づくように揺動した際に、把持部がガイドバー7a、7jの軸方向と略平行となる形状をしたサブハンドル36が設けられていると共に、丸鋸部12を下方に揺動した状態で支持部材8と丸鋸部12との揺動を固定(規制)する図示しない固定手段が設けられている。この固定手段を動作させ、サブハンドル36を持って持ち運びを行えば持ち運びを容易に行うことができる。
【0050】
モータハウジング25内に収容されたモータ21は上述したように丸鋸刃14側面の延長線と交差する部分を有するよう配置され、丸鋸部12はモータ21の回転力を丸鋸刃14に伝達するためのベルト機構を有する構成となっていることによって、丸鋸部12における丸鋸刃14の鋸刃軸部15の軸方向の寸法を小さくすることができるようになる。これによって、
図5に示すように、ホルダ5及び丸鋸部12をガイドバー7a、7j側に傾斜可能な構成とすることができ、更に、
図6に示すようにホルダ5及び丸鋸部12を反ガイドバー7a、7j側に傾斜可能な構成とすることができ、左右方向に45度傾斜可能な構成となっている。
【0051】
なお、
図2、
図5及び
図6に示すように、ホルダ5のベース部側部分には傾斜時の位置決め手段であるストッパ5a、5bが設けられ、ターンテーブル2上面にはストッパ5a、5bの移動軌跡上に位置する傾斜微調整手段であるストッパボルト30、31が垂直方向にねじ嵌合している。ホルダ5を傾動軸4を支点として傾斜させると、所定の傾斜角度(最大傾斜角度)でストッパ5a、5bがストッパボルト30、31の各々の頭部に当接し、丸鋸部12の傾動位置が位置決め(規制)される。ストッパボルト30は、ホルダ5が左方向に45度の位置に傾斜したときにストッパ5aに係合するように設けられている(
図6)。また、ストッパボルト31は、ホルダ5が右方向に45度の位置に傾斜したときにストッパ5bに係合するように設けられている(
図5)。
【0052】
更に、
図1に示すように、ターンテーブル2上方のホルダ5には貫通孔2bが設けられると共に、貫通孔2b内には
図2に示す直角時(傾斜していない状態)の位置決め手段となるピン32が前後に水平移動自在に設けられている。
図2に示すように、ホルダ5にはピン32の移動軌跡上に位置するようにストッパボルト33がピン32の移動方向に対して垂直方向にねじ嵌合しており、ホルダ5が直角切断位置になったとき、ストッパボルト33の先端とピン32の外径部が接触する。
【0053】
次に、本発明となるスライド式卓上切断機を用いた切断作業について説明する。切断作業には、丸鋸刃14がベース部上面及びフェンス面3aに対して垂直となる直角切断、丸鋸刃14がベース部上面に対して垂直且つフェンス面3aに対して傾斜する角度切断、丸鋸刃14がフェンス面3aに対して垂直且つベース部上面に対して傾斜する傾斜切断、及び各切断方法を組み合わせた複合切断、更には、幅広の被加工材35を切断するスライド切断等がある。
【0054】
丸鋸部12を垂直位置に設定し被加工材35を直角切断するには、ピン32を前方へ移動させた状態でホルダ5を傾動させ、ストッパボルト33の先端とピン32の外径部が接触する位置に傾動した際に、クランプレバー6を締め付けホルダ5の傾動位置(直角位置)を固定する。
【0055】
また、左右何れかに傾斜させて傾斜切断するには、以下のように行う。クランプレバー6を緩めホルダ5の固定状態を解除すると共にピン32を後方へ移動させた状態でホルダ5を傾動軸4を支点として左または右方向へ所望の傾斜角度に傾斜させた後にクランプレバー6を締め付ける。このとき、モータ21の重心は傾動軸4の略真上に位置するため、丸鋸部12を左傾斜、右傾斜のどちら側でも略一定の力で傾斜させることができる。最大傾斜させるには、クランプレバー6を緩めホルダ5の固定状態を解除すると共にピン32を後方へ移動させた状態で、
図6に示すようにホルダ5を左方向へ傾動させると、ストッパ5aがストッパボルト30に当接し、丸鋸部12は左傾斜45度の状態に位置決めされる。逆に
図5に示すように右方向へ傾斜させると、ストッパ5bがストッパボルト31に当接し、丸鋸部12は右傾斜45度の状態に位置決めされる。これらの状態で、クランプレバー6を締めホルダ5の傾斜位置を固定する。その後は上述した切断方法で加工材35の切断作業を行う。
【0056】
角度切断をする場合は、ハンドル2dを回転させてベース1との固定を解除する。ターンテーブル2をベース1に対して所望の角度に回転させてベース1に固定する。ターンテーブル2のベース1に対する固定はターンテーブル2の前端に設けられたハンドル2dにより行い、ベース1に対してターンテーブル2を所望の位置に回転させた後にハンドル2dを回してハンドル2dの先端をベース1に押し付けることで固定する。
【0057】
被加工材35を切断するには、上述した所望の切断角度を設定した後、ハンドル部26に設けたスイッチ27を操作し、モータ21を回転駆動させ、ベルト機構を介して丸鋸刃14を回転させる。この状態で、ハンドル2部6を把持しスプリング13の付勢力に抗して丸鋸部12を押し下げ、被加工材35を切断する。丸鋸刃14がターンテーブル2の溝部2A内へ侵入し被加工材35の切断が完了した時点で、丸鋸部12への押し下げ力を解除すると、スプリング13の付勢力によって元の上限位置に復帰する。
【0058】
更に、直角切断、角度切断、傾斜切断で幅の広い被加工材35を切断する場合には、フェンス面3aに被加工材35を押し付けて固定した後、支持部材8のノブ10を緩めて、ハンドル部26を把持して丸鋸部12を手前側(
図1の右方向)に引くと、支持部材8及び丸鋸部12は一体となってガイドバー7a、7j上を摺動して移動する。
【0059】
ハンドル部26を押し下げ被加工材35に切り込みを与えたあと、ホルダ5側に丸鋸部12を摺動させながら切断を行う(
図7の状態)。切断終了後、丸鋸部12への押し下げ力を解除すると、スプリング13の付勢力によって丸鋸部12は元の上限位置に復帰する。
【0060】
上記したように、本発明のスライド式卓上切断機によれば、スライド切断、直角切断、角度切断、傾斜切断、或いは、上述した角度切断と傾斜切断等を組み合わせた複合切断が可能である。
【0061】
次に、本発明のスライド式卓上切断機のスライド機構について詳細に説明する。本実施の形態では、ガイド部7であるガイドバー7a、7j上を支持部材8が摺動するスライドタイプについて説明するが、ガイドバー7a、7jが支持部材8と共にホルダ5に対して摺動するスライドタイプであっても同様に適用可能である。
【0062】
ガイドバー7a、7j上であってホルダ5とサポート9との間には、丸鋸部12の揺動軸11を支持する支持部材8がガイドバー7a、7b上を摺動可能に設けられている。支持部材8がホルダ5側に位置する
図1の状態と、支持部材8がサポート9側に位置する
図7の状態との間でスライド可能に構成されている。
【0063】
図3に示すように、支持部材8にはガイドバー7a、7jと略同心の穴部8a、8jが形成されており、一方の穴部8a内にはガイドバー7aの外径寸法と略同寸法の内径を有し、ガイドバー7aの外径部に当接可能な直動摺動部材である直動ベアリング8bが設けられている。他方の穴部8jの側面にはガイドバー7jの外周の一部に接触して回転する回転ベアリング8fと回転ベアリング8fを回転可能に支持するピン8hが支持部材8に設けられている。穴部8jの内周とガイドバー7jの外周間には隙間があり、この隙間により、ガイドバーの芯間のガタ(寸法誤差)を調整可能になっている。なお、回転ベアリング8fはガイドバー7jに対して反丸鋸部12側に設けられている。また、各穴部を含み各ガイドバーを支持する支持部材8の部分を支持部とし、支持部材8はガイドバー7a、7jを支持するために2つの支持部を有する。
【0064】
穴部8j内にはガイドバー7jの外周と穴部8jの内周との間に摺動部材である移動部材となる巻き形のブッシュ8cがガイドバー7jの外周の一部を覆う形で設けられており、このブッシュ8cは支持部材8に螺合した押圧手段となる押しねじ8dの先端によってガイドバー7j側へ押圧されて移動調整可能となっている。これにより、ガイドバーの芯間のガタをなくすことができる。なお、回転ベアリングとは、ピン8hを中心に回転するベアリングを示す。
【0065】
更に、
図4に示すように、支持部材8の回転ベアリング8fの後方(
図4の上方側)にはスリーブ51に保持された防塵部材となるOリング50がガイドバー7jの外周に密着するように配置され、ダストカバー52で覆われており、丸鋸刃14によって被加工材35を切断した際に生じる切屑が穴部8j内へ侵入することを防止している。
【0066】
また、支持部材8には、穴部8jに対して押しねじ8dに対向しその先端が穴部8j内に突出可能な固定手段であるノブ10が設けられており、ノブ10の先端がブッシュ8cを介してガイドバー7jの外径部を押圧することによって、ガイドバー7a、7j上の任意の位置で支持部材8を固定可能に構成されている。なお、ノブ10は回転ベアリング8fに対してスライドバー7jの軸方向にオフセットして配置されている。
【0067】
押しねじ8dの操作(回転)によってブッシュ8cの位置を調整することにより、ブッシュ8cとガイドバー7jの圧力(押圧力)を調整することができる。これにより支持部材8の摺動荷重を加減調整することができる。
【0068】
直角切断の場合、丸鋸部12の荷重は、丸鋸部12の下方に加わることになる。ガイド部7に対する支持部材8の荷重もガイド部7の略下方に加わり、その多くの荷重が直動ベアリング8bに加わり、上側ガイドバー7jに加わる回転モーメントは小さい。従って、摺動性を低下することなくスライド切断が可能となる。丸鋸部12はガイド部7に対して左側(
図3等)に位置する、すなわちガイド部7に対して丸鋸部12が横方向にオフセットされて配置されているため、下側ガイドバー7aを中心に丸鋸部12はガイド部7に対して
図3において反時計周りに回転モーメントがかかる。上側ガイドバー7jには図中右側すなわち回転ベアリング8f側で回転モーメントを受けることになるため、摺動性が低下することを抑制することができる。
【0069】
図5に示す右傾斜切断の場合、丸鋸部12の重心は略下側ガイドバー7a延長上、或いは下側ガイドバー7a上方近傍に位置するため、丸鋸部12の荷重は略下側ガイドバー7a(直動ベアリング8a)にかかる。更に、丸鋸部12の重心が下側ガイドバー7a延長上にあれば回転モーメントが発生せず上側ガイドバー7jにかかることがない。従って、丸鋸部12の荷重を直動ベアリング8aで受けることになるため摺動性が低下することがない。
【0070】
一方、
図6に示す左傾斜切断の場合、丸鋸部12の荷重はベース部方向にかかるが、下側ガイドバー7aを中心に丸鋸部12にはガイド部7に対して反時計周りに回転モーメントがかかる。このとき、上側ガイドバー7j側にも外側(図中のガイドバー7jの右側方側)にモーメントがかかるが、その位置には回転ベアリング8fが設けられているため、回転ベアリング8fがガイドバー7jに押圧されることになり、摺動性が低下することを抑制することができる。
【0071】
すなわち、本実施の形態によれば、丸鋸部12に生じる回転モーメントを受ける支持部材8の位置、すなわち、ガイド部7に対して丸鋸部12と反対側の支持部材8に摺動性を高めることができる回転摺動部材となる回転ベアリング8fを配置したため、モーメントが加わった場合であっても回転ベアリング8fによりその力を受けることができるため、摺動性が低下することなくスライド切断が可能となる。更に、ガイドバー7a、7jの芯間を詰めた場合、丸鋸部12により支持部材8にかかる回転モーメントは大きくなるが、回転ベアリング8fによりそのモーメントを受けることができるため、摺動性が低下することを抑制できる、従って、摺動性を維持したままガイドバー間の距離を小さくでき、小型化することができる。更に、大きなモーメントがかかる箇所にのみ回転ベアリング8fを配置すればよいため、高価な直動ベアリング8bを上側ガイドバー7j用に設ける必要がなく、安価な構成とすることができる。
【0072】
本実施の形態では、モータ21を丸鋸刃14の上方に配置しベルト機構によりモータ21の回転を丸鋸刃14に伝達するように構成したが、モータ21を丸鋸刃14の右側面側に配置した場合には、ガイド部7が邪魔となるためガイド部7は丸鋸刃14の左側に配置することになる。この場合、ガイド部7と丸鋸部12の位置関係が本実施の形態とは逆になるため、回転モーメントがかかる方向も逆となる。従って、この場合には回転ベアリング8fをガイド部7の反丸鋸刃側の支持部材8の側面に設けることになる。
【0073】
本実施の形態では左右方向へ傾斜可能な両傾斜の構成としたが片傾斜の構成としても良い。更に、丸鋸刃14の右側に動力を伝達するギヤ16やプーリ18、23及びガイドバー7a、7jを配置させたが、本実施の形態とは逆の左側に各部材を配置した構成としても良い。さらには、ベース部がターンテーブル2を有さないベース1のみの構成であっても良い。
【0074】
また、本実施の形態ではガイド部7上を支持部材8が摺動可能な構成としたが、ホルダ5に対してガイド部7及び支持部材8が摺動可能な構成であっても良い。この場合、ガイド部7の他端に支持部材8を固定して両者が一体となってホルダ5に対して摺動する構成とする。ガイド部7の一端はホルダ5の穴部5cに挿入された状態で摺動可能に構成される。一方の穴部5cにはガイドバー7jの外周と穴部5cの内周間にブッシュ8cを設けると共に、ホルダ5にガイドバー7jと当接する回転ベアリング8fをピン8hにより回転可能に支持する。他方の穴部5cにはガイドバー7aと当接する直動ベアリング8bを設ける。このような構成により、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施の形態では、回転ベアリング8fを一箇所、ガイドバー7jに対して反丸鋸刃14側の上側ガイドバー7j側面に設けたが、ガイドバー7jに対して対称に一対(2個)、或いは、複数個設けても良い。更に、上側ガイドバー7jではなく、下側ガイドバー7a側面、或いは両ガイドバー側面に設けても良い。しかしながら、本実施の形態のように、上側ガイドバー7jの外側側面に設けることが最も摺動性を低下させることなくスライド切断が可能になる。すなわち、ガイド部7に対して反丸鋸部12側の側面に設けることが最も良い。