特許第5760658号(P5760658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760658
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】携帯型作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/02 20060101AFI20150723BHJP
   B24B 55/05 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   B25F5/02
   B24B55/05
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-102557(P2011-102557)
(22)【出願日】2011年4月29日
(65)【公開番号】特開2012-232379(P2012-232379A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095887
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿久保 伸一
(72)【発明者】
【氏名】村上 卓宏
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−276068(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0007435(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0023372(US,A1)
【文献】 米国特許第7063606(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 − 5/02
B24B 55/05
B28D 1/04
B23D 45/00 − 47/00
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源の動力が伝達されて回転するスピンドルと、
前記スピンドルを支持するスピンドル支持部と、
前記スピンドルに固定される作業用のホイールと、
前記ホイールを部分的に覆うものであって前記スピンドル支持部に対して所定の回転角だけ固定位置を移動できるホイルガードを備え、
前記ホイルガードが前記スピンドル支持部の保持部に第一の弾性部材を介して保持され、
前記第一の弾性部材には凹凸部が形成され、前記ホイルガードには前記凹凸部に対応する凸凹部が形成され、前記凹凸部と前記凸凹部が係合するように前記ホイルガードが前記スピンドル支持部に保持され
前記ホイルガードに前記ホイルガードの前記スピンドル支持部に対する回動範囲を制約するストッパーを設け、
前記ストッパーは、基台部分と、基台部分の外周の一部又は全部を覆うように取り付けられる第二の弾性部材を含んで構成されることを特徴とする携帯型作業機。
【請求項2】
前記ホイルガードの径方向最内周付近に前記第一の弾性部材と接触する円筒形のフランジを設け、
前記フランジの周部に凹凸部を形成し、
前記第一の弾性部材を前記フランジの周と側方の一部又は全部覆う形状とし、
前記第一の弾性部材の周部に前記フランジの凹凸部と対応する前記凸凹部を形成し、
前記第一の弾性部材を介在させて前記フランジを、前記スピンドル支持部と取付部材にて挟持することを特徴とする請求項1に記載の携帯型作業機。
【請求項3】
前記第一の弾性部材と前記スピンドル支持部、前記第一の弾性部材と前記取付部材の間にそれぞれ金属製のプレートを介在させ、
前記ホイルガードを前記スピンドル支持部に対して相対的に移動させる際には、前記第一の弾性部材と前記プレートと前記ホイルガードのいずれかの相対位置関係を変化させることを特徴とする請求項2に記載の携帯型作業機。
【請求項4】
前記ホイルガードは、前記ホイールの両側面を覆う2枚のプレートと、2枚の前記プレートを接続する覆い部と前記プレートのいずれかの側に固定される前記フランジを含んで構成され、
前記プレートと前記フランジは溶接又はボルト締結にて固定されることを特徴とする請求項3に記載の携帯型作業機。
【請求項5】
駆動源と、
前記駆動源の動力が伝達されて回転するスピンドルと、
前記スピンドルを支持するスピンドル支持部と、
前記スピンドルに固定される作業用のホイールと、
前記ホイールを部分的に覆うものであって前記スピンドル支持部に対して所定の回転角だけ固定位置を移動できるホイルガードを備え、
前記ホイルガードが前記スピンドル支持部の保持部に第一の弾性部材を介して保持され、
前記ホイルガードと共に回動可能なストッパーを設け、
前記ストッパーは、前記ホイルガードの前記スピンドル支持部側の面から前記スピンドルの軸方向に突出して設けられ、前記ホイルガードが回動したとき、前記ストッパーと前記スピンドル支持部が当接することで前記ホイルガードの回動範囲を制約することを特徴とする携帯型作業機
【請求項6】
前記ストッパーと前記スピンドル支持部が第二の弾性部材を介して当接することを特徴とする請求項5に記載の携帯型作業機。
【請求項7】
前記ストッパーは、外周の一部又は全部に前記ストッパーと前記スピンドル支持部の当接に介在する前記第二の弾性部材を含んで構成されることを特徴とする請求項6に記載の携帯型作業機。
【請求項8】
前記ストッパーは周方向に離間した位置に2つ設けられることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の携帯型作業機。
【請求項9】
前記ホイルガードの前記スピンドル支持部側の面に、少なくても2つ以上の段付き部を設け、
前記段付き部に前記ホイルガードの前記スピンドル支持部に対する回動範囲を制約する前記ストッパーを設け、
前記ストッパーは、基台部分と、基台部分の外周の一部又は全部を覆うように取り付けられる前記第二の弾性部材を含んで構成されることを特徴とする請求項7に記載の携帯型作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯型作業機の構造に関し、特に回転型の先端工具たるホイールをガードするホイルガードを改良した携帯型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンカッタなどに代表される携帯型作業機においては、研削作業を行っている際に飛散する切削粉が周囲に飛散しないようにホイルガードが設けられる。ホイルガードは、研削作業中にホイールが破損し、ブレードの変形、割れ、破損等が生じてブレードの破片がホイルガードに衝突し、ホイルガードの位置がずれて回転してしまうことを防止する必要がある。
【0003】
このため、ホイルガードが必要以上に回転しないように、特許文献1のように回転防止のストッパーを取り付けることが一般的となっている。さらにホイルガードの肉厚を厚くしたり、強度の高い材料によってホイルガードを製造することが広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−86136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯型作業機に用いられるホイルガードの材質の軽量化を図るためにアルミ材等の非鉄金属や樹脂製とした場合は、強度低下の問題が生じてしまうのでその対策が重要である。また、強度を上げて破損を防止する構成としても、ブレード破損時にストッパーにブレードの衝突荷重が直接加わってストッパーの破損、塑性変形が生じるならば、ホイルガードの役割を果たせないことになる。さらに、ブレード破損時にホイルガードがストッパーを乗り上げて回動角度以上に回転してしまうことによる乗り上げ等が生じてしまうと、ホイルガードはストッパーで回転を防止できずに許容回動角度以上に回転してしまうことになり好ましくない。
【0006】
一方、上記問題を解決するためにホイルガードの材質を鉄等で強固に製造することも考えられるが、その場合はホイルガードの重量が重くなって、携帯型作業機の作業性を低下させる恐れがあった。また、ホイルガード自体の強度は十分となるものの、材質の変更だけではストッパーによるホイルガードの回転防止作用が不十分であり、回転防止機構自体を強固に構成する必要があった。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的はホイルガードの取付構造を改良して、不用意な回転が起きないようにした携帯型作業機を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、ホイルガードのストッパーの構成を改良した携帯型作業機を適用することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、ホイルガードの軽量化を図った携帯型作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
【0011】
本発明の一つの特徴によれば、2サイクルまたは4サイクル等のエンジン(駆動源)と、駆動源の動力が伝達されて回転するスピンドルと、スピンドルを支持するスピンドル支持部と、スピンドルに固定される作業用のホイールと、ホイールを部分的に覆うものであってスピンドル支持部に対して所定の回転角だけ固定位置を移動できるホイルガードを備え、ホイルガードがスピンドル支持部の保持部に弾性部材を介して保持され、弾性部材には凹凸部が形成され、ホイルガードには凹凸部に対応する凸凹部が形成され、凹凸部と凸凹部が係合するようにホイルガードがスピンドル支持部に保持される。凹凸部と凸凹部は、お互いが嵌合するような対称形状であるという意味であり、片側を凹部、他方を凸部とするような単純な形状でも良いし、複雑な凹凸形状の組み合わせであっても良い。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、ホイルガードの径方向最内周付近に弾性部材と接触する円筒形のフランジを設け、フランジの周部に凹凸部を形成し、弾性部材をフランジの周と側方の一部又は全部覆う形状とし、弾性部材の周部にフランジの凹凸部と対応する凸凹部を形成し、弾性部材を介在させてホイルガードをスピンドル支持部と取付部材にて挟持するようにした。弾性部材とスピンドル支持部、弾性部材と取付部材の間にそれぞれ金属製のプレートを介在させ、ホイルガードをスピンドル支持部に対して相対的に移動させる際には、弾性部材とプレートとホイルガードのいずれかの相対位置関係を変化させるように構成した。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、ホイルガードは、ホイールの両側面を覆う2枚のプレートと、2枚のプレートを接続する覆い部とプレートのいずれかの側に固定されるフランジを含んで構成され、プレートとフランジは溶接又はボルト締結にて固定されるように構成した。プレートの外周面および内周面に対するフランジの幅を、フランジとプレートの溶接肉盛り高さよりも大きくした。フランジ外周部を段付き形状として、プレートの外周面、および内周面からフランジが突出する突出量をフランジとプレートの溶接肉盛り高さよりも高くし、かつ、フランジ内周部の上端面と下端面の形状を同一とした凹凸形状を設けた構成とした。
【0014】
本発明のさらに他の特徴によれば、フランジが取り付けられるプレートに、少なくても2つ以上の段付き部を設け、この段付き部にホイルガードのスピンドル支持部に対する回動範囲を制約するためのストッパーを設けた。ストッパーは、基台部分と、基台部分の外周の一部又は全部を覆うように取り付けられる弾性部材を含んで構成した。基台部分には周方向に連続した溝を設け、弾性部材は溝に係合させるストッパーリングであり、ホイルガードが回転した際にストッパーリングがスピンドル支持部と最初に接触するように配置した。例えば基台部分の最外径がストッパーリングの最外径よりも小さくなるようにする。
【発明の効果】
【0015】
発明によれば、弾性部材を介在させてホイルガードをスピンドル支持部と取付部材にて挟持するので、ホイルガードが不慮の力で回転してしまった場合にストッパーに加わる衝突荷重を低減させることで可能となる。このため、アルミ等の非鉄材をホイルガードの母材として使用した場合においてもホイルガードを回動角度以上に回転してしまうことを効果的に回避することができる。また、弾性部材とホイルガードに凹凸部とそれに対応する凸凹部を設けているので、弾性部材がホイルガードに対して滑ってしまうことを防止できる。
【0016】
発明によれば、弾性部材を介在させてホイルガードをスピンドル支持部と取付部材にて挟持するので、ホイルガードをスピンドル支持部にしっかり保持させつつ、携帯型作業機の停止時にホイルガードをスピンドル支持部に対して可動可能となる。
【0017】
発明によれば、弾性部材とスピンドル支持部、弾性部材と取付部材の間にそれぞれ金属製のプレートを介在させるので、弾性部材とスピンドル支持部の摺動をスムーズに行うことができる上に、ホイルガードに急激な力が加わった場合には弾性部材の弾性力により急激にホイルガードが動いてしまうことを防止できる。
【0018】
発明によれば、ホイールの両側面を部分的に覆う2枚のプレートと、2枚のプレートを接続する覆い部とプレートのいずれかの側に固定されるフランジを含んで構成され、プレートとフランジは溶接又はボルト締結にて固定されるので、共通のフランジを用いて径や材質の異なるホイルガードを容易に製造できる。
【0023】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例に係る携帯型作業機の側面図であり、一部を断面図で示したものである。
図2】本発明の実施例に係る携帯型作業機の上面図であり、一部に図1のA−A部の断面を示す図である。
図3図1のホイルガード30の取付構造を示す部分斜視図である。
図4図1のB−B部の断面図である。
図5図4のスピンドル付近の拡大断面図である。
図6】本発明の実施例に係る携帯型作業機の側面図であり、通常の状態を示す図である。
図7】本発明の実施例に係る携帯型作業機のホイルガードが回転してストッパーとアームが衝突した時の状態を示す側面図である。
図8】本発明の第2の実施例に係るホイルガード60の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本実施例では回転工具を用いる携帯型作業機の例としてエンジンカッタを用いて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0026】
エンジンカッタ1は、2サイクルまたは4サイクル等のエンジン(駆動源)による動力を用いて先端工具たるブレード7を回転させる作業機械である。エンジンカッタ1の前方側には、回転式のブレード(ホイール)7が設けられ、後方側には動力源たるエンジンが設けられる。ここでブレード7の回転軸(後述するスピンドル)はエンジンのクランクシャフト4と平行に設けられる。実施例のエンジンは、シリンダ2が鉛直となるようにクランクケース5に取り付けられるもので、シリンダ2の内部でピストン3が上下方向に往復する。クランクシャフト4はブレード7の回転軸と平行になるように配置され、その一方の端部から駆動力が取り出され、後述する遠心クラッチを介してブレード7に駆動力が伝達される。本実施例におけるエンジンは、混合燃料を用いる2サイクルエンジンであり、シリンダ2の上部には混合気を燃焼させるための点火プラグ13が設けられる。エンジンのクランクケース5には、前方側に延びるアーム6(スピンドル支持部)が取り付けられ、アーム6は前端付近で後述するスピンドルに固定されるブレード7が回転可能なように保持する。
【0027】
エンジンは合成樹脂等で形成されるハウジング9に収容され、ハウジング9の後方側には作業者が把持するためのリアハンドル11が設けられる。リアハンドル11は作業者が例えば右手で把持するもので、合成樹脂によりハウジング9と一体に構成される。リアハンドル11の下側にはエンジンの回転数を調整するためのスロットルトリガ14が設けられ、上側にはロックレバー15が設けられる。スロットルトリガ14は、リアハンドル11が把持されロックレバー15が押された状態でのみ引き操作が可能となっている。ハウジング9の前方側にはフロントハンドル10が取り付けられる。フロントハンドル10は作業者が例えば左手で把持するためのハンドルであり、エンジンカッタ1を正立状態だけでなく左右に斜めにしたり横向きにしたりして作業することがあり得るため、把持する位置の自由度を増やすためにハウジング9の左下側からホイルガード30の後方側の周囲を囲むように延在してハウジング9の右側部分で固定される。
【0028】
シリンダ2の後方であってハウジング9の後部にはキャブレタ12が設けられる。キャブレタ12の上方付近には、図示していないが吸入空気を浄化するためのエアクリーナが設けられる。シリンダ2の前方側であってブレード7との間にはマフラー8が設けられる。マフラー8は、シリンダ2の排気ポートにボルト等で直接固定される消音装置であって、マフラー8には、前方斜め下方向に排気ガスを排出するための排出口8aが設けられる。排気ガスの流れる方はホイルガード30の外周部の接線方向である。このように排気ガスの排出方向を設定することによって、排気ガスを作業者から離れる側に排出することができる。
【0029】
ブレード7は、円形の基板7cの外周付近側面にダイヤ層7aを形成したダイヤモンドカッター(ダイヤモンドホイール)であり、冷却効果を高めるために基板7cの径方向外側にスリット7bが等間隔で複数形成される。ブレード7の側方面の略半分は金属製のホイルガード30により覆われ、切削粉が作業者にあたることを防止する。ホイルガード30はアーム6に固定されるが、ブレード7と同軸に所定角度だけ回転可能なように保持される。ホイルガード30は、角度調整レバー18を回転方向に移動させることによって、例えば図1のホイルガード30の位置からブレード7の回転と同方向側に約30度、反対方向側に約60度の移動が可能である。尚、ストッパー50、55の大きさ(特に径方向)、取付位置、アーム6の幅を調節することにより、さらに回動角度を大きくすることも可能である。またホイルガード30の左側プレートの径方向中心付近は、ブレード7のホイルワッシャ21aを貫通する取付ボルト(後述)の固定のために、半円形状にくり貫かれている。
【0030】
図2は本発明の実施例に係る携帯型作業機の上面図であり、一部に図1のA−A部の断面を示す図である。ブレード7を回転可能なように保持するアーム6は、2つのボルト20によってエンジン又はハウジング9に固定される。アーム6の先端には、2組のベアリングを介してスピンドル16が回転可能に保持される。スピンドル16の右側の端部にはプーリー26が設けられ、クラッチハウジング24の端部に設けられたプーリー24aとの間にかけられたベルト27によってクランクシャフト4の回転力が所定の減速比で減速されてスピンドル16に伝達される。
【0031】
スピンドル16の左側の端部にはブレード7が取付ボルト17によって固定される。ブレード7の形状は、円形の基板7cの中心に、取付ボルト17を貫通させるための貫通孔が形成されたものである。ブレード7は、貫通穴の周囲であって左右両方に2枚の円盤状のホイルワッシャ21a、21bにより挟み込まれることで固定される。ホイルワッシャ21a、21bは例えば鉄等の金属製やアルミニウム製のものがある。
【0032】
ブレード7の後側略半分はホイルガード30により側面部及び外周部が覆われる。ホイルガード30は、ブレード7の右側側面を覆う右側プレート31と、ブレード7の左側側面を覆う左側プレート32と、ブレード7の外周部を覆うと共に右側プレート31と左側プレート32を連結する外周連結部33の3つの部材によって主に構成される。右側プレート31、左側プレート32、外周連結部33は、例えば鉄等の金属板をプレス加工して製造することができ、これらをロウ付けまたは溶接により接合する。左側プレート32の円周方向には6箇所の段付き部32a(全体形状は図1参照)が形成される。段付き部32aは、左側プレート32の表面の一部を凸状または凹状に形成することにより全体の強度を向上させるために形成される。本実施例では、左側プレート32から部分的にブレード7側(左側プレートから見たら内側)に突出させて、左側プレート32の外側(左側)から見た際に凹状に形成したが、これを逆にして左側プレート32の外側(左側)から見た際に凸状に形成しても良い。
【0033】
同様にして右側プレート31の円周方向には6箇所の段付き部31a(全体形状は図6参照)が形成される。段付き部31aは、右側プレート31の外側(右側)から見た際に凸状に形成すると好ましい。これは段付き部31aに後述するストッパー50、56を取り付けるためである。ここで、図から理解できるようにピストン3は鉛直方向(上下方向)に移動し、クランクシャフト4は左右に延びるように水平に配置され、スピンドル16はクランクシャフト4と平行になるように水平に配置される。このようにスピンドル16とクランクシャフト4の位置関係を設定することでプーリー24a及び26間に渡されたベルト27によってエンジンによる駆動力をスピンドル16に容易に伝達することができる。クランクシャフト4の回転力は、クラッチハウジング24の内部に配置される図示しない遠心クラッチによって接続又は遮断される。
【0034】
図3はホイルガード30の取付構造を示す側面図である。ホイルガード30は、右側プレート31に固定されるフランジ34を介してアーム6に取り付けられる。フランジ34は、径方向の断面形状が略L型の金属製の部材であって、内周壁34aの周方向の複数箇所に凹凸部たる凹部34bが形成されたものである。このフランジ34の右側には右側ゴムダンパ35が装着される。右側ゴムダンパ35は径方向の断面形状が略L字状であって、径方向に所定の面積を有する円環部35aと、円環部35aの内周部から軸方向に延びて円筒形の部分を形成する円筒部35bと、円筒部の外周側であって、周方向に複数設けられた凸部35cにより構成される。凸部35cはフランジ34の凹部34bに対応して形成される凸凹部であって、これらの凹部または凸部の作用によって右側ゴムダンパ35がフランジ34に対して相対的に回転しないように保持される。
【0035】
同様にして、フランジ34の左側には左側ゴムダンパ36が設けられる。右側ゴムダンパ35と左側ゴムダンパ36は同一形状であって、左右方向に反対に配置することによって同一部材を共通に用いることができる。左側ゴムダンパ36は、円環部36aと円筒部36bと凸部36cにより構成される。このようにフランジ34を両側のゴムダンパ部材にて挟み込む挟持することによって第一の弾性部材(ゴムダンパ)を介してホイルガード30をアーム6に固定できる。また、フランジ34の凹部34bと右側ゴムダンパ35と左側ゴムダンパ36の凸部35c、36cが嵌合することにより、ホイルガード30を回動させた時に右側ゴムダンパ35と左側ゴムダンパ36も同期して移動する。
【0036】
図4図1のB−B部の断面図である。尚、図4では角度調整レバー18の記載は省略している。ホイルガード30はフランジ34、右側プレート31、左側プレート32、外周連結部33を含んで構成され、右側プレート31の段付き部31aには2つのストッパー50、55が取り付けられる。ストッパー50は円柱形の基台部分となるブッシュ(A)51、ブッシュ(B)56の外周部に円環状の円環溝51a、56aが形成され、この円環溝51a、56aにゴム製のOリング等のストッパーリング52、57が装着される。ブッシュ(A)51、ブッシュ(B)56の左側には段差部が設けられてストッパーリング52、57が装着される径部分よりも細い細径部が形成される。細径部は段付き部31aに設けられた貫通穴31cに細径部が挿入された後に溶接53、54がされることによりブッシュ(A)51、ブッシュ(B)56が右側プレート31に強固に固定される。
【0037】
ストッパーリング52、57はゴム等の弾性部材により構成され、ブレード7の回転作業中にホイルガード30が予期せぬ力を受けてアーム6に対して回動してしまった場合に、ストッパーリング52、57のいずれかがアーム6に当接することによってホイルガード30の回転範囲を制限する。ここで図から理解できるように、ストッパーリング52、57のブッシュ(A)51、ブッシュ(B)56の外径よりもストッパーリング52、57の外径の方が大きい。従ってホイルガード30が回転してアーム6に衝突するとストッパー50、55のうちストッパーリング52、57が最初にアーム6に衝突することになる。ストッパーリング52、57はゴム等の弾性部材(第二の弾性部材)で構成されるために、この衝突の衝撃を効果的に吸収することができる。尚、この衝撃のエネルギーがさらに大きくてストッパーリング52、57による吸収が不十分であるとしても、ストッパーリング52、57の変形後にブッシュ(A)51、ブッシュ(B)56がアーム6と衝突するのでストッパー50、55として十分な回転防止作用を果たすことができる。尚、アーム6は、アームフレーム46と、アームフレーム46の外側から取り付けられてベルト27を覆う樹脂製のアームカバー49により構成されている。ホイルガード30が衝突するアーム6の接触領域の幅(図4のW1)は、ストッパー50、55のホイルガード30からの右方向への突出長(図4のW2)よりも大きくなっているため、アームフレーム46より強度の弱いアームカバー49を痛めないようになっている。
【0038】
ストッパー50、55は右側プレート31から凸状にアーム6に対して接近している部分となる段付き部31aに溶接される。このため、ストッパー50、55の長さ(図中の左右方向の長さ)を短くすることができるため、衝突時に右側プレートに加わる曲げモーメントが小さくて済み、ストッパー50、55の溶接53、54、58、59による固定を強固にすることができる。
【0039】
ホイルガード30のアーム6への取付けは、図3で示したように右側ゴムダンパ35と左側ゴムダンパ36でフランジ34を挟み込み、その両側から金属製の右側リングプレート37と左側リングプレート38によってさらに挟み込む。これらの部材をアーム6を保持するアームフレーム46の段差部分46a(図5参照)に装着する。その後、プレート保持具42を左側から右側(アーム6側)に取り付けることによってフランジ34を押さえて、取付ボルト43にてネジ止め固定する。断面位置の関係から取付ボルト43は2本しか見えないが、必要に応じて2〜6本程度用いれば安定して固定することができる。取付ボルト43とアームフレーム46の間にはスプリング44を介して、右側ゴムダンパ35と左側ゴムダンパ36に対して適切な締め付け力が働き、必要以上に締め付けない程度に維持されるので、ホイルガード回動時の荷重低減、振動低減を効果的に図ることができる。
【0040】
また、右側ゴムダンパ35とアームフレーム46との間には右側リングプレート37が介在され、左側ゴムダンパ36とプレート保持具42との間には左側リングプレート38が介在されるため、ホイルガード30の回動時に摺動するのはアームフレーム46と右側リングプレート37の間、及び、プレート保持具42と左側リングプレート38との間となるので、フランジ34と右側ゴムダンパ35又は左側ゴムダンパ36との間の摺動による磨耗が効果的に防止できる。同様にして、右側リングプレート37と右側ゴムダンパ35との間の摺動による磨耗、及び、左側リングプレート38と左側ゴムダンパ36との間の摺動による磨耗を防止することができる。
【0041】
図5図4のスピンドル付近の拡大断面図である。図3で示したフランジ34は断面形状が略L字型とされて太い直径部分と細い直径部分が段差によって接続される形状とされる。この細い直径部分と右側プレート31の内径がほぼ同じであって、段差部分に右側プレート31の円形の貫通穴を押し当てて溶接39a、39bによって右側プレート31とフランジ34を固定する。溶接箇所は円周方向に連続させて全周に渡っておこなっても良いし、複数箇所をスポット的に溶接しても良い。また、右側プレート31とフランジ34の固定は溶接だけでなく、ロウ付けや、接着剤による固定でも良いし、その他の公知の固定方法であっても良い。
【0042】
尚、プレート保持具42の外周面と左側ゴムダンパ36の内周面の接触部分(矢印C付近)には金属製のリング等が介在しないので、これらが摺動することになる。しかしながら、左側リングプレート38とプレート保持具42との接触面積にくらべて十分小さいことと、接触面が取付ボルト43の締め付け方向とは垂直方向となるため、この部分の摺動抵抗はあまり問題とならない。
【0043】
次に図6及び図7を用いてホイルガード30とアーム6が衝突した時の状態を説明する。図6は本発明の実施例に係る携帯型作業機の側面図であり、通常の状態を示す図である。ホイルガード30は角度調整レバー18を矢印Cの方向に動かすことによって任意の位置に保持させることができる。角度調整レバー18は取付ネジ19によってホイルガード30の外周側の任意の位置に取り付けられるものである。通常、作業中にホイルガード30が勝手に動かないように、この矢印Dの方向への移動は大きな力が必要なように設定しておくと良い。この状態において、仮にブレード7が高速回転中に破損すると、ホイルガード30には大きな衝撃荷重が加わることでホイルガード30が回動するかもしれない。このホイルガード30が回転してストッパー50とアーム6が衝突した時の状態を示すのが図7である。
【0044】
図7のようにホイルガード30がE方向に回転してストッパー50とアーム6が衝突した場合、先ずストッパー50の外周面に設けられたストッパーリング52(図4参照)とアーム6が最初に接触する。この際、ストッパーリング52の材質であるゴムの弾性力で衝撃荷重が大きく低減される。この衝撃荷重が大きい場合には、ゴムの弾性力だけではその荷重を吸収しきれずにストッパー50のブッシュ(A)51(図4参照)とアーム6が接触することになり、ストッパーリング52にはそれ必要以上の衝撃荷重は加わらない。このように構成したことにより、衝突によるストッパーリング52の破断を効果的に防止することができる。また、ストッパー55のストッパーリング57についても同様の効果を期待することができる。尚、ストッパーリング52、57は、ストッパー50、55がアーム6に接触した状態でブレード7を回転させた場合において、ホイルガード30とアーム6との間での振動の伝達を絶縁するという効果も有している。
【0045】
以上説明したように本発明の実施例によれば、ホイルガード30のアーム6への取付けは、先ず、ゴムダンパとリングプレートでホイルガードのフランジを挟み込み、スプリングとボルトでアームに固定する構成としたので、ホイルガード回動時の荷重低減、振動低減などが図ることができる。また、右側プレートは、左側プレートとフランジとストッパーが溶接されて、このストッパーの凹部にストッパーリングが取り付けられる。フランジは中空円筒形状になっており、その内周部には少なくても1個以上の凹部が形成されており、フランジの凹部とゴムダンパの凸部が嵌合することにより、ホイルガード30を回動させた時にゴムダンパも同期して動くことができる。また、ゴムダンパとアームおよびフランジとの間にはリングプレートが取り付けてあるため、ホイルガード回動時に摺動するのはアームとリングプレート間、フランジとリングプレート間となるため、ゴムダンパの摺動による磨耗を防止することができる。さらに、ストッパーは右側プレートの凸部に溶接されているため、構造上ストッパーの高さを短くすることができ、ストッパーに曲げモーメントが加わりにくく、ストッパーの溶接部を強固にすることができる。
【実施例2】
【0046】
次に図8を用いて本発明の第2の実施例を説明する。第2の実施例に係るホイルガード60において第1の実施例と異なる部分は右側プレート61とフランジ64であって、これらが溶接でなくボルト69aと2つのナット69bによって固定されることである。このため右側プレート61とフランジ64を別の材料によって製造することが可能であり、例えばフランジ64を鉄系の金属として十分な強度を保ったままホイルガード60をアルミ合金等の軽金属製や樹脂製で構成できる。また、ボルト止めすることによって異なる径のブレード様に様々なサイズのホイルガード60を準備する際にも共通のフランジ64やゴムダンパを利用できるので、部品の共用化によるコストダウンを図ることができる。
【0047】
その他の部分は第1の実施例の構成と同じであり、右側プレート61には貫通穴が設けられて2つのストッパー50と55が取り付けられる。本実施例では右側プレート61とストッパー50、55のブッシュ(A)51、ブッシュ(B)56が鉄系の材料で形成されるため溶接にて固定されるが、これらの固定方法は溶接に限定されず、十分な強度を持って右側プレート61にブッシュ(A)51、ブッシュ(B)56を固定できるならばその他の任意の固定方法でも良い。
【0048】
以上、本発明の第2の実施例によればブレード破損時におけるホイルガードの回転を防止しながら、ホイルガードの軽量化を図った携帯型作業機を実現できる。さらに、フランジとホイルガードを任意の別部材で構成できるので、設計上の自由度が増して、使いやすい携帯型作業機を実現することができる。
【0049】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。上述の実施例では携帯型作業機の例としてエンジンカッタを用いたが、これだけに限られずに電気モータ等の他の動力源を用いた回転工具であっても良い。さらに、上述の実施例では作業機の一例としてカッタを用いたが、カッタだけでなく丸のこやその他の回転式のホイールを用いる作業機であっても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 エンジンカッタ 2 シリンダ 3 ピストン
4 クランクシャフト 5 クランクケース 6 アーム
7 ブレード 7a ダイヤ層 7b スリット
7c 基板 8 マフラー 8a 排出口
9 ハウジング 10 フロントハンドル
11 リアハンドル 12 キャブレタ 13 点火プラグ
14 スロットルトリガ 15 ロックレバー 16 スピンドル
17 取付ボルト 18 角度調整レバー 19 取付ネジ
20 ボルト 21a、21b ホイルワッシャ
24 クラッチハウジング 24a プーリー
26 プーリー 27 ベルト 30 ホイルガード
31 右側プレート 31a 段付き部 31b 段差部
31c 貫通穴 32 左側プレート 32a 段付き部
32b 折り返し部 33 外周連結部 34 フランジ
34a 内周壁 34b 凹部 35 右側ゴムダンパ
35a 円環部 35b 円筒部 35c 凸部
36 左側ゴムダンパ 36a 円環部 36b 円筒部
36c 凸部 37 右側リングプレート
38 左側リングプレート 39a、39b 溶接
40a、40b ベアリング 41 ボルト
42 プレート保持具 43 取付ボルト 44 スプリング
46 アームフレーム 46a 段差部分 49 アームカバー
50 ストッパー 51 ブッシュ(A) 51a 円環溝
51b 段差部 52 ストッパーリング
53、54 溶接 55 ストッパー 56 ブッシュ(B)
56a 円環溝 56b 段差部 57 ストッパーリング
58、59 溶接 60 ホイルガード 61 右側プレート
61a 段付き部 61b 段差部 64 フランジ
69a ボルト 69b ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8