(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の回転式圧縮機において、シリンダ部材およびピストン部材は、鏡板と歯部とが一体形成されているので、鏡板と歯部との隅角部に隅Rである円弧面が形成され、流体漏れが生ずるという問題があった。
【0005】
つまり、
図10に示すように、上記シリンダ部材(a)およびピストン部材(b)は、鏡板(c,e)に歯部(d,f)が突出形成されている。そして、上記シリンダ部材(a)は、比較
的柔らかい鋳物で形成される一方、上記ピストン部材(b)は、比較
的硬い鋼材で形成されている。したがって、上記シリンダ部材(a)における鏡板(c)と歯部(d)との隅角部は、45°の角部に形成されるものの、上記ピストン部材(b)における鏡板(e)と歯部(f)との隅角部には、円弧面(g)が形成される。
【0006】
そこで、上記シリンダ部材(a)の歯部(d)には、先端角部に45°面取りを施し、カット面(h)を形成していた。
【0007】
しかしながら、上記カット面(h)を形成すると、高圧の圧縮室から低圧の圧縮室へ流体の漏れが生じるという問題があった。
【0008】
また、上記カット面(h)が長さが不足する場合、例えば、
図11に示すように、カット面(h)を形成しない場合、上記シリンダ部材(a)の歯部(d)の先端が円弧面(g)に乗り上げ、上記シリンダ部材(a)の歯部(d)と上記ピストン部材(b)の鏡板(e)との間および上記ピストン部材(b)の歯部(h)と上記シリンダ部材(a)の鏡板(c)との間に隙間が生じ、高圧の圧縮室から低圧の圧縮室へ流体の漏れが生じるという問題があった。
【0009】
特に、流体が二酸化炭素(CO2)の場合、高圧と低圧の差圧が大きく、漏れの影響が大きくなり、圧縮機効率の低下を招くという問題があった。さらに、上記回転式圧縮機の場合、高圧の圧縮室と低圧の圧縮室とが隣り合っているので、流体漏れの影響が大きいという問題がある。
【0010】
一方、上記ピストン部材(b)の円弧面(g)が形成されないようにすると、加工工具の寿命が短くなり、部品コストが上昇するという問題があった。
【0011】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、鏡板と歯部との隅角部構造から生じる流体漏れを抑制し、且つ部品コストの上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、鏡板(31a)と、該鏡板(31a)の前面から突出形成された歯部(31b,31c)とを有し、少なくとも1つの環状のシリンダ室(30a)が形成されたシリンダ部材(31)と、鏡板(32a)と、該鏡板(32a)の前面から突出形成され且つ上記シリンダ室(30a)に配置される環状ピストンの歯部(32b)とを有するピストン部材(32)とを備え、上記シリンダ部材(31)とピストン部材(32)とが鏡板(31a,32a)の前面を互いに対面させて配置され、上記シリンダ部材(31)とピストン部材(32)とが互いに相手方部材(32,31)となって上記シリンダ部材(31)とピストン部材(32)とが相対的に偏心回転する回転式流体機械である。
【0013】
そして、上記シリンダ部材(31)は、上記ピストン部材(32)の歯部(32b)を内側から外側に亘って分断するように該歯部(32b)に形成された分断部(3b)を貫通し、上記シリンダ室(30a)を高圧側と低圧側とに区画するブレード(33)と、上記分断部(3b)に配置されて上記ブレード(33)をピストン部材(32)に揺動自在に支持する支持部材(34)とを備えている。
【0014】
さらに、上記ピストン部材(32)の鏡板(32a)と上記シリンダ部材(31)の鏡板(31a)との前面で且つピストン部材(32)とシリンダ部材(31)とが互いに摺接する前面の少なくとも一部には、表面がシリンダ室(30a)の端面(30b)と同一面となり且つ表面に相手方部材(31,32)が摺接するシート部材(60)が設けられている。
【0015】
上記第1の発明では、鏡板(32a,31a)にシート部材(60)を設けているので、該鏡板(32a,31a)と歯部(32b,31b,31c)との隅角部に生じる円弧面が覆われ、シート部材(60)と歯部(32b,31b,31c)との隅角部が45°の角部になる。この結果、上記円弧面による流体漏れが抑制される。
【0016】
また、上記第1の発明は、
上記構成において、上記シート部材(60)が、ピストン部材(32)の鏡板(32a)の前面における歯部(32b)の分断部(3b)に設けられ
ている。
【0017】
上記第
1の発明では、分断部(3b)において、支持部材(34)の端面全体がシート部材(60)に接するので、シリンダ室(30a)の外側作動室と内側作動室との間における分断部(3b)の流体漏れが抑制される。
【0018】
第
2の発明は、第
1の発明において、上記シート部材(60)が、ピストン部材(32)の鏡板(32a)の前面における歯部(32b)の外側に設けられた回転式流体機械である。
【0019】
上記第
2の発明では、シリンダ部材(31)の歯部(31b)の端面全体がシート部材(60)に接するので、シリンダ室(30a)の高圧側と低圧側との間における流体漏れが抑制される。
【0020】
第
3の発明は、第1
又は2の発明において、上記シート部材(60)が、ピストン部材(32)の鏡板(32a)の前面における歯部(32b)の内側に設けられた回転式流体機械である。
【0021】
上記第
3の発明では、シリンダ部材(31)の歯部(31c)の端面全体がシート部材(60)に接するので、シリンダ室(30a)の高圧側と低圧側との間における流体漏れが抑制される。
【0022】
第
4の発明は、
鏡板(31a)と、該鏡板(31a)の前面から突出形成された歯部(31b,31c)とを有し、少なくとも1つの環状のシリンダ室(30a)が形成されたシリンダ部材(31)と、鏡板(32a)と、該鏡板(32a)の前面から突出形成され且つ上記シリンダ室(30a)に配置される環状ピストンの歯部(32b)とを有するピストン部材(32)とを備え、上記シリンダ部材(31)とピストン部材(32)とが鏡板(31a,32a)の前面を互いに対面させて配置され、上記シリンダ部材(31)とピストン部材(32)とが互いに相手方部材(32,31)となって上記シリンダ部材(31)とピストン部材(32)とが相対的に偏心回転する回転式流体機械であって、上記シリンダ部材(31)は、上記ピストン部材(32)の歯部(32b)を内側から外側に亘って分断するように該歯部(32b)に形成された分断部(3b)を貫通し、上記シリンダ室(30a)を高圧側と低圧側とに区画するブレード(33)と、上記分断部(3b)に配置されて上記ブレード(33)をピストン部材(32)に揺動自在に支持する支持部材(34)とを備える一方、上記ピストン部材(32)の鏡板(32a)と上記シリンダ部材(31)の鏡板(31a)との前面で且つピストン部材(32)とシリンダ部材(31)とが互いに摺接する前面の少なくとも一部には、表面がシリンダ室(30a)の端面(30b)と同一面となり且つ表面に相手方部材(31,32)が摺接するシート部材(60)が設けられ、上記シート部材(60)は、ピストン部材(32)の鏡板(32a)の前面における歯部(32b)の分断部(3b)に設けられる分断用シート部材(63)と歯部(32b)の外側に設けられる外側シート部材(61)と歯部(32b)の内側に設けられる内側シート部材(62)とが一体に形成されて構成された回転式流体機械である。
【0023】
上記第
4の発明では、支持部材(34)の端面全体およびシリンダ部材(31)の歯部(31b,31c)の端面全体がシート部材(60)に接するので、シリンダ室(30a)の外側作動室と内側作動室との間における分断部(3b)の流体漏れおよびシリンダ室(30a)の高圧側と低圧側との間における流体漏れが抑制される。
【0024】
第
5の発明は、第1〜第
4の何れか1の発明において、上記シート部材(60)が、シリンダ部材(31)の鏡板(31a)の前面に設けられた回転式流体機械である。
【0025】
上記第
5の発明では、ピストン部材(32)の歯部(32b)の端面全体がシート部材(60)に接するので、シリンダ室(30a)の高圧側と低圧側との間における流体漏れが抑制される。
【0026】
第
6の発明は、第1〜第
5の何れか1の発明において、上記シート部材(60)の背面隅角部は、直線状に切除されたカット面(65)に形成された回転式流体機械である。
【0027】
上記第
6の発明では、シート部材(60)のカット面(65)によって鏡板(32a,31a)と歯部(32b,31b,31c)との隅角部に生じる円弧面とシート部材(60)との干渉が回避される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ピストン部材(32)の鏡板(32a)の前面およびシリンダ部材(31)の鏡板(31a)の前面の少なくとも一部にシート部材(60)を設けるようにしたために、鏡板(32a,31a)と歯部(32b,31b,31c)との隅角部に形成される円弧面(70)に起因して生ずる冷媒漏れを抑制することができる。
【0029】
つまり、例えば、従来、シリンダ部材(a)の歯部(d)における先端角部に45°面取りを施し、カット面(h)を形成していた場合、カット面(h)からの冷媒漏れが生じていた。しかしながら、本発明では、シート部材(60)を設けているので、シリンダ部材(31)の歯部(31b,31c)にカット面を形成する必要がないことから、冷媒漏れを抑制することができる。
【0030】
また、例えば、従来、シリンダ部材(a)の歯部(d)の先端が円弧面(g)に乗り上げ、シリンダ部材(a)の歯部(d)とピストン部材(b)の鏡板(e)との間およびピストン部材(b)の歯部(h)とシリンダ部材(a)の鏡板(c)との間に隙間が生じ、高圧の圧縮室から低圧の圧縮室へ流体の漏れが生じていた。しかしながら、本発明では、シート部材(60)を設けているので、歯部(31b,31c)がシート部材(60)に常時接していることから、冷媒漏れを抑制することができる。
【0031】
特に、冷媒が二酸化炭素(CO2)の場合、高圧と低圧の差圧が大きく、漏れの影響が大きくなるものの、この漏れを抑制することができるので、圧縮機効率の低下を抑制することができる。
【0032】
上記回転式圧縮機の場合、高圧室と低圧室とが隣り合っているので、冷媒漏れの影響が大きくなるものの、この漏れを抑制することができる。
【0033】
また、上記円弧面(70)の形成を許容し得るので、加工工具の寿命が長くなり、部品コストの上昇を抑制することができる。
【0034】
また、第
1の発明によれば、上記シート部材(60)が、ピストン部材(32)の鏡板(32a)の前面における歯部(32b)の分断部(3b)に設けられているので、外側作動室と内側作動室との間の冷媒漏れを確実に抑制することができる。
【0035】
また、第
4の発明によれば、分断用シート部材(63)と上記外側シート部材(61)と上記内側シート部材(62)とを一体に形成しているので、冷媒漏れをより確実に抑制することができると共に、構造の簡素を図ることができる。
【0036】
また、第
5の発明によれば、上記シリンダ部材(31)にシリンダ用シート部材(64)を設けると、シリンダ部材(31)を比較
的硬い鋼材で形成した場合、流体漏れを確実に抑制することができる。
【0037】
また、第
6の発明によれば、シート部材(60)にカット面(65)を形成しているので、鏡板(32a,31a)と歯部(32b,31b,31c)との隅角部に生じる円弧面とシート部材(60)との干渉を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の回転式圧縮機(10)は、回転式流体機械であって、例えば、空気調和装置の冷媒回路に設けられ、蒸発器から吸入した冷媒を圧縮して凝縮器へ吐出するものである。
【0041】
上記回転式圧縮機(10)は、縦長の密閉容器状のケーシング(11)を備えている。該ケーシング(11)は、縦長の円筒状に形成された胴部(12)と、該胴部(12)の両端に設けられた一対の端板(13,13)とを備えている。上記ケーシング(11)の内部には、電動機(20)と、低段側の第1圧縮機構(30)および高段側の第2圧縮機構(40)を備えて冷媒を二段圧縮する圧縮機部(50)とが収容されている。
【0042】
上記ケーシング(11)の胴部(12)には、低段側の第1圧縮機構(30)に接続される第1吸入管(14)および第1吐出管(15)と、高段側の第2圧縮機構(40)に接続される第2吸入管(16)とが胴部(12)を貫通して設けられている。上記第1吐出管(15)と第2吸入管(16)とは、図示しないが、ケーシング(11)の外部において接続されている。
【0043】
上記回転式圧縮機(10)は、高段側の第2圧縮機構(40)において圧縮された冷媒がケーシング(11)の内部空間(S10)に吐出され、第2吐出管(17)を介してケーシング(11)の外部へ排出されるように構成され、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機に構成されている。
【0044】
上記ケーシング(11)の内部には、胴部(12)と平行に延びる駆動軸(23)が設けられている。上記電動機(20)および圧縮機部(50)は、上記駆動軸(23)を介して連結されている。また、上記ケーシング(11)の底部には、圧縮機部(50)の各摺動部に供給される潤滑油を貯留する油溜まり(18)が形成されている。
【0045】
上記駆動軸(23)は、主軸部(24)と上側偏心部(25)および下側偏心部(26)と
を備えている。上記両偏心部(25,26)は、主軸部(24)よりも大径の円柱状に形成され、それぞれ軸心が主軸部(24)の軸心より偏心している。また、上側偏心部(25)と下側偏心部(26)とは、主軸部(24)の軸心を中心として互いに180°位相がずれるように形成されている。
【0046】
上記駆動軸(23)の下端には、油溜まり(18)に浸漬する給油ポンプ(28)が設けられている。また、上記駆動軸(23)の内部には、軸方向に延びて上記給油ポンプ(28)が吸い上げられた潤滑油が流通する給油路(図示省略)が形成されている。
【0047】
上記電動機(20)は、ステータ(21)とロータ(22)とを備えている。上記ステータ(21)は、ケーシング(11)の胴部(12)に固定されている。一方、上記ロータ(22)は、ステータ(21)の内側に配置され、駆動軸(23)の主軸部(24)に連結されている。
【0048】
上記圧縮機部(50)は、電動機(20)の下方に配置され、第1圧縮機構(30)と、第2圧縮機構(40)と、両圧縮機構(30,40)の間に設けられたミドルプレート(51)とを有している。
【0049】
図2〜
図7に示すように、上記第1圧縮機構(30)は、1つの環状の第1シリンダ室(30a)を形成する第1シリンダ部材(31)と、該第1シリンダ室(30a)内に位置して該第1シリンダ室(30a)を作動室である外側圧縮室(S11)と内側圧縮室(S12)とに区画する歯部(32b)を有する第1ピストン部材(32)とを備えている。そして、上記第1シリンダ部材(31)は、外側圧縮室(S11)と内側圧縮室(S12)とを高圧室(S11H,S12H)と低圧室(S11L,S12L)とに区画する第1ブレード(33)を備えている。上記第1シリンダ部材(31)と第1ピストン部材(32)とは、互いに相手部材となり、相対的に偏心回転運動をするように構成されている。また、本実施形態において、上記第1シリンダ部材(31)が第1圧縮機構(30)の固定部材を構成し、第1ピストン部材(32)が第1圧縮機構(30)の可動部材を構成している。
【0050】
上記第1シリンダ部材(31)は、中央に軸受部が形成された平板状の鏡板(31a)と、該鏡板(31a)の前面(上面)から上方に突出するように形成された筒状の外側歯部(31b)および内側歯部(31c)とを備えている。上記第1シリンダ部材(31)は、鏡板(31a)および外側歯部(31b)がケーシング(11)の胴部(12)の内面に固定されている。また、上記鏡板(31a)の軸受部には、駆動軸(23)の主軸部(24)が挿通されている。
【0051】
上記第1シリンダ部材(31)の鏡板(31a)には、外周面から径方向の内側向きに延びる第1吸入ポート(14a)が形成されている。該第1吸入ポート(14a)の一端は、外側圧縮室(S11)および内側圧縮室(S12)に挿通し、他端は、上記第1吸入管(14)が接続されている。
【0052】
また、上記第1シリンダ部材(31)の鏡板(31a)には、外周面から径方向の内側向きに延びる第1吐出ポート(15a)が形成されている。該第1吐出ポート(15a)の一端は、外側圧縮室(S11)および内側圧縮室(S12)に連通し、他端は、上記第1吐出管(15)が接続されている。具体的に、第1吐出ポート(15a)には、外側圧縮室(S11)および内側圧縮室(S12)の吐出口(35,36)が開口し、該両吐出口(35,36)には吐出弁(37,38)が設けられている。
【0053】
上記外側歯部(31b)の内周面と内側歯部(31c)の外周面とは、互いに同一中心上に配置された円筒面に形成されている。上記第1ピストン部材(32)の歯部(32b)の外周面と上記第1シリンダ部材(31)の外側歯部(31b)の内周面との間には外側圧縮室(S11)が形成され、上記第1ピストン部材(32)の歯部(32b)の内周面と上記第1シリンダ部材(31)の内側歯部(31c)の外周面との間には内側圧縮室(S12)が形成されている。
【0054】
上記第1ピストン部材(32)は、平板状の鏡板(32a)と、該鏡板(32a)の前面(下面)から下方に吐出形成された環状ピストンの歯部(32b)と、該歯部(32b)より内側に形成された筒状の軸受部(32c)とを備えている。上記歯部(32b)は、
図4等に示すように、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されて分断部(3b)が形成されている。上記軸受部(32c)には、駆動軸(23)の下側偏心部(26)が摺動自在に嵌め込まれている。上記軸受部(32c)と内側歯部(31c)との間に空間(3a)が形成されるが、この空間(3a)では冷媒の圧縮は行われない。
【0055】
上記第1ブレード(33)は、第1シリンダ室(30a)の径方向に、外側歯部(31b)の内周面から内側歯部(31c)の外周面に亘って延びている。そして、上記第1ブレード(33)は、上記第1ピストン部材(32)の歯部(32b)の分断部(3b)を挿通して第1シリンダ室(30a)を高圧室(S11H,S12H)と低圧室(S11L,S12L)とに区画するように構成されている。尚、本実施形態において、上記第1ブレード(33)は、外側歯部(31b)および内側歯部(31c)と一体形成されているが、両歯部(31b,31c)と別部材として形成し、これらに固定するものであってもよい。
【0056】
上記第1シリンダ部材(31)は、歯部(32b)の分断部(3b)に設けられ、第1ピストン部材(32)と第1ブレード(33)とを揺動自在に支持する第1ブッシュ(34)を備えている。該第1ブッシュ(34)は、支持部材を構成し、第1ブレード(33)に対して高圧室(S11H,S12H)側に位置する吐出側と、第1ブレード(33)に対して低圧室(S11L,S12L)側に位置する吸入側とに設けられている。上記第1ブッシュ(34)は、断面形状が略半円形に形成されている。上記両第1ブッシュ(34,34)の対向面の間には、上記第1ブレード(33)が進退自在に挟まれている。そして、第1ブッシュ(34)は、第1ブレード(33)を挟み込んだ状態において、第1ピストン部材(32)に対して揺動可能に形成されている。尚、上記第1ブッシュ(34,34)は一部において連結されて一体形成されていてもよい。
【0057】
そして、上記第1圧縮機構(30)は、第1ピストン部材(32)が第1シリンダ部材(31)に対して偏心回転運動を行う。その偏心回転運動において、第1ピストン部材(32)の歯部(32b)の外周面と第1シリンダ部材(31)の外側歯部(31b)の内周面とが実質的に1点で摺接し、その摺接点と位相が180°ずれた位置において第1ピストン部材(32)の歯部(32b)の内周面と第1シリンダ部材(31)の内側歯部(31c)の外周面とが実質的に1点で摺接するように構成されている。
【0058】
上記第2圧縮機構(40)は、上記第1圧縮機構(30)と同様の機械要素によって構成されている。また、上記第2圧縮機構(40)は、ミドルプレート(51)を挟んで第1圧縮機構(30)を反転させた状態で設けられている。尚、
図2等では、第2圧縮機構(40)の構成要素に関する符号を括弧内に示している。上記ミドルプレート(51)は、ケーシング(11)の胴部(12)に固定されている。
【0059】
そこで、上記第2圧縮機構(40)について、第1圧縮機構(30)とほぼ構成であるので、第1圧縮機構(30)を用いて概略を説明する。
【0060】
上記第2圧縮機構(40)は、第1圧縮機構(30)と同様に、第2シリンダ室(40a)を形成する第2シリンダ部材(41)と、該第2シリンダ室(40a)を外側圧縮室(S21)と内側圧縮室(S22)とに区画する歯部(42b)を有する第2ピストン部材(42)とを備えている。上記第2シリンダ部材(41)は、第2シリンダ室(40a)を高圧室(S21H,S22H)と低圧室(S21L,S22L)とに区画する第2ブレード(43)を備えている。上記第2シリンダ部材(41)と第2ピストン部材(42)とは、互いに相手部材となり、相対的に偏心回転運動をするように構成されている。
【0061】
上記第2シリンダ部材(41)は、平板状の鏡板(41a)と、外側歯部(41b)および内側歯部(41c)とを備え、ケーシング(11)に固定されている。
【0062】
上記第2シリンダ部材(41)の鏡板(41a)には、第2吸入ポート(16a)が形成されている。この第2吸入ポート(16a)の一端は、外側圧縮室(S21)および内側圧縮室(S22)に連通し、他端は、上記第2吸入管(16)が接続されている。
【0063】
また、上記第2シリンダ部材(41)の鏡板(41a)には、第2吐出ポート(17a)が形成されている。この第2吐出ポート(17a)の一端は、外側圧縮室(S21)および内側圧縮室(S22)に連通し、他端は、上記第1シリンダ部材(31)と異なり、ケーシング(11)の内部空間(S10)に開口している。上記第2吐出ポート(17a)には、外側圧縮室(S21)および内側圧縮室(S22)の吐出口(45,46)が開口し、両吐出口(45,46)には吐出弁(47,48)が設けられている。
【0064】
そして、上記第2ピストン部材(42)の歯部(42b)の外周面と上記第2シリンダ部材(41)の外側歯部(41b)の内周面との間には外側圧縮室(S21)が形成され、上記第2ピストン部材(42)の歯部(42b)の内周面と上記第2シリンダ部材(41)の内側歯部(41c)の外周面との間には内側圧縮室(S22)が形成されている。
【0065】
上記第2ピストン部材(42)は、鏡板(42a)と歯部(42b)と軸受部(42c)とを備えている。上記歯部(42b)は、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されて分断部(4b)が形成されている。上記軸受部(42c)には、駆動軸(23)の上側偏心部(25)が摺動自在に嵌め込まれている。上記軸受部(42c)と内側歯部(41c)との間に空間(4a)が形成されるが、この空間(4a)では冷媒の圧縮は行われない。
【0066】
上記第2ブレード(43)は、第2ピストン部材(42)の分断部(4b)を貫通し、外側歯部(41b)の内周面から内側歯部(41c)の外周面に亘って延びている。上記第2ブレード(43)は、外側歯部(41b)および内側歯部(41c)と一体形成されているが、両歯部(41b,41c)と別部材として形成し、これらに固定するものであってもよい。
【0067】
上記第2シリンダ部材(41)は、第2ピストン部材(42)と第2ブレード(43)とを揺動自在に支持する第2ブッシュ(44)を備えている。該第2ブッシュ(44)は、支持部材を構成し、第2ブレード(43)の吐出側と吸入側と設けられている。上記第2ブッシュ(44)は、断面形状が略半円形に形成されている。2つの上記第2ブッシュ(44)は一部において連結されて一体的に形成されていてもよい。
【0068】
そして、上記第2圧縮機構(40)は、第2ピストン部材(42)が第2シリンダ部材(41)に対して偏心回転運動を行う。その偏心回転運動では、第2ピストン部材(42)の歯部(42b)の外周面と第2シリンダ部材(41)の外側歯部(41b)の内周面とが実質的に1点で摺接し、その摺接点と位相が180°ずれた位置において第2ピストン部材(42)の歯部(42b)の内周面と第2シリンダ部材(41)の内側歯部(41c)の外周面とが実質的に1点で摺接するように構成されている。
【0069】
本実施形態の特徴として、
図4〜
図7に示すように、上記第1圧縮機構(30)は、第1ピストン部材(32)の鏡板(32a)と第1シリンダ部材(31)の鏡板(31a)との前面にシート部材(60)が設けられ、上記第2圧縮機構(40)は、第1圧縮機構(30)と同様に、第2ピストン部材(42)の鏡板(42a)と第2シリンダ部材(41)の鏡板(41a)との前面にシート部材(60)が設けられている。したがって、以下、上記第1ピストン部材(32)および第2ピストン部材(32)は、単にピストン部材(32,42)といい、第1シリンダ部材(31)および第2シリンダ部材(31)は、単にシリンダ部材(31,41)という。
【0070】
上記シート部材(60)は、ピストン部材(32,42)に設けられる外側シート部材(61)と内側シート部材(62)と分断用シート部材(63)と、シリンダ部材(31,41)に設けられるシリンダ用シート部材(64)との少なくとも何れか1つで構成されている。
【0071】
つまり、上記シート部材(60)が上記各圧縮機構(30,40)に設けられる態様は次の通りである。
【0072】
(1)圧縮機構(30,40)は、分断用シート部材(63)のみを備えている。
【0073】
(2)圧縮機構(30,40)は、外側シート部材(61)のみを備えている。
【0074】
(3)圧縮機構(30,40)は、内側シート部材(62)のみを備えている。
【0075】
(4)圧縮機構(30,40)は、シリンダ用シート部材(64)のみを備えている。
【0076】
(5)圧縮機構(30,40)は、上記(1)〜(4)の組み合わせのシート部材(60)を備えている。したがって、上記外側シート部材(61)と内側シート部材(62)と分断用シート部材(63)とシリンダ用シート部材(64)の全てが設けられている場合もある。
【0077】
そこで、上記分断用シート部材(63)、外側シート部材(61)、内側シート部材(62)およびシリンダ用シート部材(64)について順に説明する。
【0078】
上記分断用シート部材(63)は、
図4に示すように、ピストン部材(32,42)の歯部(32b,42b)の分断部(3b,4b)に設けられている。該分断用シート部材(63)は、ブレードおよびブッシュに対応した円盤状に形成され、ピストン部材(32,42)の鏡板(32a)における歯部(32b,42b)の分断部(3b,4b)に嵌め込まれている。そして、上記ピストン部材(32,42)の鏡板(32a,42a)は、分断用シート部材(63)のみを設ける場合、分断部(3b,4b)の底面(鏡板(32a,42a)の前面)が他の鏡板(32a,42a)の前面よりも分断用シート部材(63)の厚み分だけ深く形成されている。したがって、上記分断用シート部材(63)は、表面がシリンダ室(30a,40a)の軸方向の端面(30b,40b)、つまり、シリンダ室(30a,40a)の上面または下面と同一面となるように形成されると共に、相手部材であるシリンダ部材(31,41)のブレード(33,43)およびブッシュ(34,44)が摺接するように形成されている。
【0079】
上記外側シート部材(61)は、
図5に示すように、ピストン部材(32,42)の歯部(32b,42b)の外側に設けられている。該外側シート部材(61)は、外側圧縮室(S11,S21)に対応したドーナツ板状に形成され、ピストン部材(32,42)の鏡板(32a,42a)における歯部(32b,42b)の外側に嵌め込まれている。そして、上記ピストン部材(32,42)の鏡板(32a,42a)は、外側シート部材(61)のみを設ける場合、歯部(32b,42b)の外側の前面が他の鏡板(32a,42a)の前面よりも外側シート部材(61)の厚み分だけ深く形成されている。したがって、上記外側シート部材(61)は、表面がシリンダ室(30a,40a)の軸方向の端面(30b,40b)と同一面となるように形成されると共に、相手部材であるシリンダ部材(31,41)の外側歯部(31b,41b)が摺接するように形成されている。
【0080】
上記内側シート部材(62)は、
図6に示すように、ピストン部材(32,42)の歯部(32b,42b)の内側に設けられている。該内側シート部材(62)は、内側圧縮室(S12,S22)に対応したドーナツ板状に形成され、ピストン部材(32,42)の鏡板(32a,42a)における歯部(32b,42b)と軸受部(32c,42c)との間に嵌め込まれている。そして、上記ピストン部材(32,42)の鏡板(32a,42a)は、内側シート部材(62)のみを設ける場合、歯部(32b,42b)の内側の前面が他の鏡板(32a,42a)の前面よりも内側シート部材(62)の厚み分だけ深く形成されている。さらに、上記内側シート部材(62)は、表面がシリンダ室(30a,40a)の軸方向の端面(30b,40b)と同一面となるように形成されると共に、相手部材であるシリンダ部材(31,41)の内側歯部(31c,41c)が摺接するように形成されている。
【0081】
上記シリンダ用シート部材(64)は、
図7に示すように、シリンダ部材(31,41)の外側歯部(31b,41b)と内側歯部(31c,41c)との間に設けられている。該シリンダ用シート部材(64)は、内側圧縮室(S12,S22)から外側圧縮室(S11,S21)に亘るドーナツ板状に形成され、シリンダ部材(31,41)の鏡板(31a,41a)における外側歯部(31b)と内側歯部(31c)との間に嵌め込まれている。そして、上記シリンダ部材(31,41)の鏡板(31a,41a)は、シリンダ用シート部材(64)のみを設ける場合、外側歯部(31b,41b)と内側歯部(31c,41c)との間の前面がシリンダ用シート部材(64)の厚み分だけ深く形成されている。また、上記シリンダ用シート部材(64)には、第1吸入ポート(14a)および第2吸入ポート(16a)の開口(64a)が形成されると共に、吐出口(35,36,45,46)の開口(64b)が形成されている。さらに、上記シリンダ用シート部材(64)は、表面がシリンダ室(30a,40a)の軸方向の端面(30b,40b)と同一面となるように形成されると共に、相手部材であるピストン部材(32,42)の歯部(32b,42b)が摺接するように形成されている。
【0082】
つまり、上記シート部材(60)は、表面がシリンダ室(30a,40a)の軸方向の端面(30b,40b)と同一面となり且つ表面に相手方部材であるピストン部材(32,42)またはシリンダ部材(31,41)が摺接するように設けられている。
【0083】
また、上記シート部材(60)は、
図8に示すように、分断用シート部材(63)と外側シート部材(61)と内側シート部材(62)とを一体に形成してもよい。
【0084】
また、上記シート部材(60)は、
図9に示すように、背面隅角部は、直線状に切除されたC面加工が施されてカット面(65)が形成されている。このカット面(65)を形成した理由は、鏡板(32a,42a,…)と歯部(32b,42b,…)との隅角部には、隅Rである円弧面(70)が形成されることから、この円弧面(70)を避けるようにしたものである。なお、
図9は、第2シリンダ部材(41)および第2ピストン部材(42)のみを示している。
【0085】
−運転動作−
次に、上記回転式圧縮機(10)の運転動作について説明する。まず、第1圧縮機構(30)では、低圧冷媒が圧縮されて中間圧の冷媒となる。
【0086】
電動機(20)を起動すると、第1ピストン部材(32)の歯部(32b)が第1ブレード
(33)に沿って往復運動(進退動作)を行うと共に揺動動作を行う。そして、第1ピストン部材(32)の歯部(32b)が第1シリンダ部材(31)の外側歯部(31b)および内側歯部(31c)に対して揺動しながら公転し、第1圧縮機構(30)が圧縮動作を行う。
【0087】
具体的には、外側圧縮室(S11)では、
図2(B)の状態で低圧室(S11L)の容積が
ほぼ最小となり、ここから駆動軸(23)が図の矢印方向に回転して
図2(C)〜
図2(A)の状態へ変化するのに伴って低圧室(S11L)の容積が増大し、第1吸入ポート(14a)の冷媒が外側圧縮室(S11)の低圧室(S11L)に吸入される。
【0088】
上記駆動軸(23)が一回転して再び
図2(B)の状態になると、上記低圧室(S11L)への冷媒の吸入が完了する。そして、該低圧室(S11L)は、冷媒が圧縮される高圧室(S11H)となり、第1ブレード(33)を隔てて新たな低圧室(S11L)が形成される。上記駆動軸(23)がさらに回転すると、低圧室(S11L)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(S11H)の容積が減少し、該高圧室(S11H)で冷媒が圧縮される。高圧室(S11H)の圧力が所定値となって第1吐出ポート(15a)との差圧が設定値に達すると、吐出弁(37)が開き、高圧室(S11H)の中間圧の冷媒が第1吐出ポート(15a)を通じて第1吐出管(15)へ流出する。
【0089】
上記内側圧縮室(S12)では、
図2(F)の状態で低圧室(S12L)の容積がほぼ最小となり、ここから駆動軸(23)が図の矢印の方向に回転して
図2(G)〜
図2(E)の状態へ変化するのに伴って、該低圧室(S12L)の容積が増大し、第1吸入ポート(14a)の冷媒が内側圧縮室(S12)の低圧室(S12L)へ吸入される。
【0090】
そして、上記駆動軸(23)が一回転して再び
図2(F)の状態になると、上記低圧室(S12L)への冷媒の吸入が完了する。そして、該低圧室(S12L)は、冷媒が圧縮される高圧室(S12H)となり、第1ブレード(33)を隔てて新たな低圧室(S12L)が形成される。駆動軸(23)がさらに回転すると、低圧室(S12L)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(S12H)の容積が減少し、該高圧室(S12H)で冷媒が圧縮される。高圧室(S12H)の圧力が所定値となって第1吐出ポート(15a)との差圧が設定値に達すると、吐出弁(38)が開き、高圧室(S12H)の中間圧の冷媒が第1吐出ポート(15a)を通じて第1吐出管(15)へ流出する。
【0091】
上記外側圧縮室(S11)では、ほぼ
図2(E)のタイミングで冷媒の吐出が開始され、内側圧縮室(S12)でほぼ
図2(A)のタイミングで吐出が開始される。つまり、外側圧縮室(S11)と内側圧縮室(S12)とでは、吐出のタイミングが略180°ずれている。第1吐出管(15)へ流出した中間圧の冷媒は、第2吸入管(16)に流入して第2圧縮機構(40)に吸入される。
【0092】
第2圧縮機構(40)では、第1圧縮機構(30)とほぼ同様にして中間圧の冷媒が圧縮されて高圧冷媒となる。
【0093】
電動機(20)を駆動すると、第2ピストン部材(42)の歯部(42b)が第2ブレード(43)に沿って往復運動(進退動作)を行うと共に揺動運動を行う。そして、第2ピストン部材(42)の歯部(42b)が第2シリンダ部材(41)の外側歯部(41b)および内側歯部(41c)に対して揺動しながら公転し、第2圧縮機構(40)が圧縮動作を行う。
【0094】
具体的には、外側圧縮室(S21)では、
図2(B)の状態で低圧室(S21L)の容積がほぼ最小となり、ここから駆動軸(23)が図の矢印の方向に回転して
図2(C)〜
図2(A)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(S21L)の容積が増大し、第2吸入ポート(16a)の冷媒が外側圧縮室(S21)の低圧室(S21L)に吸入される。
【0095】
そして、上記駆動軸(23)が一回転して再び
図2(B)の状態になると、上記低圧室(S21L)への冷媒の吸入が完了する。そして、該低圧室(S21L)は、冷媒が圧縮される高圧室(S21H)となり、第2ブレード(43)を隔てて新たな低圧室(S21L)が形成される。駆動軸(23)がさらに回転すると、低圧室(S21L)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(S21H)の容積が減少し、該高圧室(S21H)で冷媒が圧縮される。高圧室(S21H)の圧力が所定値となって第2吐出ポート(17a)との差圧が設定値に達すると、吐出弁(47)が開き、高圧室(S21H)の高圧冷媒が第2吐出ポート(17a)を通じてケーシング(11)内の内部空間(S10)へ流出する。
【0096】
上記内側圧縮室(S22)では、
図2(F)の状態で低圧室(S22L)の容積がほぼ最小となり、ここから駆動軸(23)が図の矢印の方向に回転して
図2(G)〜
図2(E)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(S22L)の容積が増大し、第2吸入ポート(16a)の冷媒が内側圧縮室(S22)の低圧室(S22L)に吸入される。
【0097】
そして、上記駆動軸(23)が一回転して再び
図2(F)の状態になると、上記低圧室(S22L)への冷媒の吸入が完了する。そして、該低圧室(S22L)は、冷媒が圧縮される高圧室(S22H)となり、第2ブレード(43)を隔てて新たな低圧室(S22L)が形成される。駆動軸(23)がさらに回転すると、低圧室(S22L)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(S22H)の容積が減少し、該高圧室(S22H)で冷媒が圧縮される。高圧室(S22H)の圧力が所定値となって第2吐出ポート(17a)を通じてケーシング(11)内の内部空間(S10)へ流出する。
【0098】
上記外側圧縮室(S21)では、ほぼ
図2(E)のタイミングで冷媒の吐出が開始され、内側圧縮室(S22)でほぼ
図2(A)のタイミングで吐出が開始される。つまり、外側圧縮室(S21)と内側圧縮室(S22)とでは、吐出のタイミングが略180°ずれている。ケーシング(11)内の内部空間(S10)へ流出した高圧冷媒は、第2吐出管(17)から吐出される。尚、冷媒回路において、回転式圧縮機(10)から吐出された冷媒は、凝縮工程および蒸発工程を経て、再び該回転式圧縮機(10)に吸入される。
【0099】
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態は、ピストン部材(32,42)の鏡板(32a,42a)の前面およびシリンダ部材(31,41)の鏡板(31a,41a)の前面の少なくとも一部にシート部材(60)を設けるようにしたために、鏡板(32a,42a,…)と歯部(32b,42b,…)との隅角部に形成される円弧面(70)に起因して生ずる冷媒漏れを抑制することができる。
【0100】
つまり、上記鏡板(32a,31a)と歯部(32b,31b,31c)との隅角部に生じる円弧面(70)がシート部材(60)によって覆われ、該シート部材(60)と歯部(32b,31b,31c)との隅角部が45°の角部になる。この結果、上記円弧面(70)による流体漏れが抑制される。
【0101】
具体的に、例えば、従来、シリンダ部材(a)の歯部(d)における先端角部に45°面取りを施し、カット面(h)を形成していた場合、カット面(h)からの冷媒漏れが生じていた。しかしながら、本実施形態では、シート部材(60)を設けているので、シリンダ部材(31,41)の歯部(31b,31c,…)にカット面を形成する必要がないことから、冷媒漏れを抑制することができる。
【0102】
また、例えば、従来、シリンダ部材(a)の歯部(d)の先端が円弧面(g)に乗り上げ、シリンダ部材(a)の歯部(d)とピストン部材(b)の鏡板(e)との間およびピストン部材(b)の歯部(h)とシリンダ部材(a)の鏡板(c)との間に隙間が生じ、高圧の圧縮室から低圧の圧縮室へ流体の漏れが生じていた。しかしながら、本実施形態では、シート部材(60)を設けているので、歯部(31b,41b,…)がシート部材(60)に常時接していることから、冷媒漏れを抑制することができる。
【0103】
特に、冷媒が二酸化炭素(CO2)の場合、高圧と低圧の差圧が大きく、漏れの影響が大きくなるものの、この漏れを抑制することができるので、圧縮機効率の低下を抑制することができる。
【0104】
上記回転式圧縮機(10)の場合、高圧室と低圧室とが隣り合っているので、冷媒漏れの影響が大きくなるものの、この漏れを抑制することができる。
【0105】
また、上記円弧面(70)の形成を許容し得るので、加工工具の寿命が長くなり、部品コストの上昇を抑制することができる。
【0106】
また、上記シート部材(60)が、ピストン部材(32,42)の鏡板(32a,42a)の前面における歯部(32b,42b)の分断部(3b,4b)に設けられた場合、外側圧縮室(S11,S21)と内側圧縮室(S12,S22)との間の冷媒漏れを確実に抑制することができる。
【0107】
また、上記分断用シート部材(63)と上記外側シート部材(61)と上記内側シート部材(62)とを一体に形成すると、冷媒漏れをより確実に抑制することができると共に、構造の簡素を図ることができる。
【0108】
また、上記シリンダ用シート部材(64)を設けると、シリンダ部材(31,41)を比較
的硬い鋼材で形成した場合、冷媒漏れを確実に抑制することができる。
【0109】
また、上記シート部材(60)にカット面(65)を形成しているので、鏡板(32a,42a,…)と歯部(32b,42b,…)との隅角部に生じる円弧面(70)とシート部材(60)との干渉を回避することができる。
【0110】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1について、以下のような構成としてもよい。
【0111】
上記実施形態は、回転式圧縮機(10)について説明したが、回転式流体機械は、膨張機などであってもよい。
【0112】
また、上記回転式圧縮機(10)は、第1圧縮機構(30)または第2圧縮機構(40)の何れか1つを備えているものであってもよい。
【0113】
また、上記回転式圧縮機(10)である回転式流体機械は、上記軸受部(32c,42c)と内側歯部(31c,41c)との間に空間(3a,4a)を圧縮室などの作動空間に形成してもよい。つまり、上記回転式流体機械は、2つ以上のシリンダ室を備えていてもよい。
【0114】
また、上記ピストン部材(32,42)の鏡板(32a,42a)の外側には、さらに圧縮室などの作動空間に形成してもよい。
【0115】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。