(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非水系電解液100質量%中の炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートの含有量が、0.01〜30質量%であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0022】
1.非水系電解液
1−1.電解質
<リチウム塩>
電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
例えば、LiPF
6 、LiBF
4 、LiClO
4 、LiAlF
4 、LiSbF
6 、LiTaF
6 、LiWF
7 等の無機リチウム塩;
LiPO
3 F、LiPO
2 F
2 等のフルオロリン酸リチウム類;
LiWOF
5 等のタングステン酸リチウム類;
HCO
2 Li、CH
3 CO
2 Li、CH
2 FCO
2 Li、CHF
2 CO
2 Li、CF
3
CO
2 Li、CF
3 CH
2 CO
2 Li、CF
3 CF
2 CO
2 Li、CF
3 CF
2 CF
2 CO
2 Li、CF
3 CF
2 CF
2 CF
2 CO
2 Li等のカルボン酸リチウム塩類;
FSO
3 Li、CH
3 SO
3 Li、CH
2 FSO
3 Li、CHF
2 SO
3 Li、CF
3
SO
3 Li、CF
3 CF
2 SO
3 Li、CF
3 CF
2 CF
2 SO
3 Li、CF
3 CF
2 CF
2 CF
2 SO
3 Li等のスルホン酸リチウム塩類;
LiN(FCO)
2 、LiN(FCO)(FSO
2 )、LiN(FSO
2 )
2 、LiN(FSO
2 )(CF
3 SO
2 )、LiN(CF
3 SO
2 )
2 、LiN(C
2 F
5 SO
2 )
2 、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF
3 SO
2 )(C
4 F
9 SO
2
)等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO
2 )
3 、LiC(CF
3 SO
2 )
3 、LiC(C
2 F
5 SO
2 )
3 等のリチウムメチド塩類;
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラトフォスフェート塩類;
その他、LiPF
4 (CF
3 )
2 、LiPF
4 (C
2 F
5 )
2 、LiPF
4 (CF
3 SO
2 )
2 、LiPF
4 (C
2 F
5 SO
2 )
2 、LiBF
3 CF
3 、LiBF
3 C
2 F
5 、LiBF
3 C
3 F
7 、LiBF
2 (CF
3 )
2 、LiBF
2 (C
2 F
5 )
2 、LiBF
2
(CF
3 SO
2 )
2 、LiBF
2 (C
2 F
5 SO
2 )
2 等の含フッ素有機リチウム塩類;等が挙げられる。
【0023】
中でも、LiPF
6 、LiBF
4 、LiSbF
6 、LiTaF
6 、LiPO
2 F
2 、FSO
3 Li、CF
3 SO
3 Li、LiN(FSO
2 )
2 、LiN(FSO
2 )(CF
3 SO
2 )、LiN(CF
3 SO
2 )
2 、LiN(C
2 F
5 SO
2 )
2 、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO
2 )
3 、LiC(CF
3 SO
2 )
3 、LiC(C
2
F
5 SO
2 )
3 、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビスオキサラトフォスフェート、LiBF
3 CF
3 、LiBF
3 C
2 F
5 、LiPF
3 (CF
3 )
3
、LiPF
3 (C
2 F
5 )
3 等が出力特性やハイレート充放電特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。
【0024】
これらのリチウム塩は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の好ましい一例は、LiPF
6 とLiBF
4 や、LiPF
6 とFSO
3 Li、LiPF
6 とLiPO
2 F
2 等の併用であり、負荷特性やサイクル特性を向上させる効果がある。これらの中では、LiPF
6 とFSO
3 Li、LiPF
6 とLiPO
2 F
2 の併用がその効果が顕著である理由から好ましく、その中でもLiPF
6 とLiPO
2 F
2 の併用が微量の添加で著しい効果が発現する為に特に好ましい。
【0025】
LiPF
6 とLiBF
4 、LiPF
6 とFSO
3 Liを併用する場合、非水系電解液全体100質量%に対するLiBF
4 或いはFSO
3 Liの濃度は配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、一方その上限は通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。一方、LiPF
6 とLiPO
2 F
2 の併用の場合においても非水系電解液全体100質量%に対するLiPO
2 F
2 の濃度は配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上であり、一方その上限は、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。この範囲であれば、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温特性等の効果が向上する。一方で多すぎる場合は、低温において析出して電池特性を低下させる場合があり、少なすぎる場合は、低温特性やサイクル特性、高温保存特性等の向上効果が低下する場合がある。
【0026】
ここで、LiPO
2 F
2 を電解液中に含有させる場合の電解液の調製は、別途公知の手法で合成したLiPO
2 F
2 をLiPF
6 を含む電解液に添加する方法や後述する活物質や極板等の電池構成要素中に水を共存させておき、LiPF
6 を含む電解液を用いて電池を組み立てる際に系中でLiPO
2 F
2 を発生させる方法が挙げられ、本発明においてはいずれの手法を用いても良い。
【0027】
上記の非水系電解液、および非水系電解液電池中におけるLiPO
2 F
2 の含有量を測定する手法としては、特に制限がなく、公知の手法であれば任意に用いることができるが、具体的にはイオンクロマトグラフィーや、F核磁気共鳴分光法(以下、NMRと省略する場合がある)等が挙げられる。
また、他の一例は、無機リチウム塩と有機リチウム塩との併用であり、この両者の併用は、高温保存による劣化を抑制する効果がある。有機リチウム塩としては、CF
3 SO
3
Li、LiN(FSO
2 )
2 、LiN(FSO
2 )(CF
3 SO
2 )、LiN(CF
3 SO
2 )
2 、LiN(C
2 F
5 SO
2 )
2 、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO
2 )
3 、LiC(CF
3 SO
2 )
3 、LiC(C
2 F
5 SO
2 )
3 、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビスオキサラトフォスフェート、LiBF
3 CF
3 、LiBF
3 C
2 F
5 、LiPF
3 (CF
3 )
3 、LiPF
3 (C
2 F
5 )
3 等であるのが好ましい。この場合には、非水系電解液全体100質量%に対する有機リチウム塩の割合は、好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上、好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0028】
非水系電解液中のこれらのリチウム塩の濃度は、本発明の効果を損なわない限り、その含有量は特に制限されないが、電解液の電気伝導率を良好な範囲とし、良好な電池性能を確保する点から、非水系電解液中のリチウムの総モル濃度は、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、さらに好ましくは0.5mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、さらに好ましくは2.0mol/L以下である。この範囲であれば、低温特性、サイクル特性、高温特性等の効果が向上する。一方でリチウムの総モル濃度が低すぎると、電解液の
電気伝導率が不十分の場合があり、一方、濃度が高すぎると、粘度上昇のため電気伝導度が低下する場合があり、電池性能が低下する場合がある。
【0029】
1−2.溶媒
非水溶媒としては、飽和環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状及び鎖状カルボン酸エステル、エーテル化合物、スルホン系化合物等を使用することが可能である。
【0030】
<飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、炭素数2〜4のアルキレン基を有するものが挙げられる。
具体的には、炭素数2〜4の飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
【0031】
飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の配合量の下限は、非水溶媒100体積%中、5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また上限は、95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは85体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の負荷特性を良好な範囲としやすくなる。
【0032】
また、飽和環状カーボネートの2種以上を任意の組み合わせで用いる場合の好ましい組合せの一つは、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートに組み合わせである。この場合のエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比は、99:1〜40:60が好ましく、特に好ましくは95:5〜50:50である。更に、非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの量を、0.1体積%以上、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上、また上限は、通常20体積%以下、好ましくは8体積%以下、より好ましくは5体積%以下である。この範囲でプロピレンカーボネートを含有すると、エチレンカーボネートとジアルキルカーボネート類との組み合わせの特性を維持したまま、更に低温特性が優れるので好ましい。
【0033】
<フッ素原子を有する環状カーボネート>
フッ素原子を有する環状カーボネート(以下、「フッ素化環状カーボネート」と略記する場合がある)としては、フッ素原子を有する環状カーボネートであれば、特に制限はない。
フッ素化環状カーボネートとしては、炭素原子数2〜6のアルキレン基を有する環状カーボネート及びその誘導体のフッ素化物が挙げられ、例えばエチレンカーボネート及びその誘導体のフッ素化物である。フッ素原子を有するエチレンカーボネート及びその誘導体としては、例えば、エチレンカーボネート又はアルキル基(例えば、炭素原子数1〜4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられ、中でもフッ素原子が1〜8個のものが好ましい。
【0034】
具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレン
カーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0035】
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5- ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
フッ素化環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。フッ素化環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系溶媒100体積%中、好ましくは0.01体積%以上、より好ましくは0.1体積%以上、さらに好ましくは0.2体積%以上であり、また、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下である。この範囲であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、高温保存特性の低下や、ガス発生量の増加により、放電容量維持率が低下することを回避しやすい。
【0036】
尚、フッ素原子を有する環状カーボネートは、溶媒のみならず下記1−3に記載の助剤としても有効な機能を発現する。フッ素原子を有する環状カーボネート溶媒兼助剤として用いる場合の配合量に明確な境界は存在せず、前記の配合量の範囲内において用いることができる。
【0037】
<鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、炭素数3〜7のものが好ましい。
具体的には、炭素数3〜7の鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t−ブチルメチルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t−ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
【0038】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
【0039】
フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体としては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0040】
フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体としては、エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル−2'−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジ
フルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2'−フルオロエチ
ルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2',2'−ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0041】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
鎖状カーボネートの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。このように下限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。また、鎖状カーボネートは、非水溶媒100体積%中、90体積%以下、より好ましくは85体積%以下であることが好ましい。このように上限を設定することにより、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0042】
特定の鎖状カーボネートに対して、環状カーボネート及び/またはフッ素原子を有する環状カーボネートを特定の配合量で組み合わせることにより、電池性能を著しく向上させることができる。
例えば、特定の鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネート、またはエチルメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートを選択した場合、環状カーボネート及び/またはフッ素原子を有する環状カーボネートの配合量が10体積%以上、好ましくは15体積%以上、80体積%以下、好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは35体積%以下、ジメチルカーボネート、またはエチルメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートの配合量が20体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは65体積%以上、90体積%以下、好ましくは85体積%以下であることが好ましい。このような配合量を選択することで、電解質の低温析出温度を低下させながら、非水系電解液の粘度も低下させてイオン伝導度を向上させ、低温でも高出力を得ることができる。
【0043】
特定の鎖状カーボネートを2種類以上併用することも好ましい。特定の鎖状カーボネートにジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを併用して用いる場合、環状カーボネート及び/またはフッ素原子を有する環状カーボネートの配合量が10体積%以上、好ましくは15体積%以上、60体積%以下、ジメチルカーボネートの配合量が10体積%以上、70体積%以下、エチルメチルカーボネートの配合量が10体積%以上、80体積%以下であるものが特に好ましい。また、特定の鎖状カーボネートにジメチルカーボネートとジエチルカーボネートを併用して用いる場合、環状カーボネート及び/またはフッ素原子を有する環状カーボネートの配合量が10体積%以上、好ましくは15体積%以上、60体積%以下、ジメチルカーボネートの配合量が10体積%以上、70体積%以下、ジエチルカーボネートの配合量が10体積%以上、70体積%以下であるものが特に好ましい。更に、特定の鎖状カーボネートにエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートを併用して用いる場合、環状カーボネート及び/またはフッ素原子を有する環状カーボネートの配合量が10体積%以上、好ましくは15体積%以上、60体積%以下、エチルメチルカーボネートの配合量が10体積%以上、80体積%以下、ジエチルカーボネートの配合量が10体積%以上、70体積%以下であるものが特に好ましい。
【0044】
また、上記環状カーボネート及び/またはフッ素原子を有する環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5- ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネートが好ましい。
【0045】
<環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素原子数が3〜12のものが挙げられる。
具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
環状カルボン酸エステルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。このように下限を設定することにより、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの配合量は、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0046】
<鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素数が3〜7のものが挙げられる。
具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸−t−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸−n−プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。
【0047】
中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上の点から好ましい。
鎖状カルボン酸エステルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上である。このように下限を設定することで、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、鎖状カルボン酸エステルの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下である。このように上限を設定することで、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液電池の大電流放電特性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。
【0048】
<エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、一部の水素がフッ素にて置換されていても良い炭素数3〜10の鎖状エーテル、及び炭素数3〜6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3〜10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2−フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2−フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチル(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2−フルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2−フルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2,2,2−トリフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−プロピルエーテル、(n−プロピル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2−フルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2−フルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0049】
炭素数3〜6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましく、特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
【0050】
エーテル系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上、また、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下である。この範囲であれば、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすく、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入されて容量が低下するといった事態を回避しやすい。
【0051】
<スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、炭素数3〜6の環状スルホン、及び炭素数2〜6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
【0052】
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と略記する場合がある)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
中でも、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2−フルオロスルホラン、3−フルオロスルホラン、2,2−ジフルオロスルホラン、2,3−ジフルオロスルホラン、2,4−ジフルオロスルホラン、2,5−ジフルオロスルホラン、3,4−ジフルオロスルホラン、2−フルオロ−3−メチルスルホラン、2−フルオロ−2−メチルスルホラン、3−フルオロ−3−メチルスルホラン、3−フルオロ−2−メチルスルホラン、4−フルオロ−3−メチルスルホラン、4−フルオロ−2−メチルスルホラン、5−フルオロ−3−メチルスルホラン、5−フルオロ−2−メチルスルホラン、2−フルオロメチルスルホラン、3−フルオロメチルスルホラン、2−ジフルオロメチルスルホラン、3−ジフルオロメチルスルホラン、2−トリフルオロメチルスルホラン、3−トリフルオロメチルスルホラン、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、3−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、5−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0053】
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、n−プロピルエチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、t−ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル−n−プロピルスルホン、ジフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−t−ブチルスルホン等が挙げられる。
【0054】
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−t−ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0055】
スルホン系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上であり、また、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下である。この範囲であれば、サイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られやすく、また、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することができ、非水系電解液電池の充放電を高電流密度で行う場合に、充放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0056】
1−3.一般式(1)で表される化合物
本発明は、炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネートを少なくとも1種類以上と、
下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種類以上とを含有することを特徴とし
ている。
【0058】
(式中、XとZはCR
12、C=O、C=N−R
1 、C=P−R
1 、O、S、N−R
1 、P−R
1 を表し、同一でも異なっていても良い。YはCR
12、C=O、S=O、S(=O)
2、P(=O)−R
2 、P(=O)−OR
3 を表す。式中、R及びR
1 は水素、ハロゲン
、または、置換基を有しても良い炭素数1から20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていても良い。R
2 は置換基を有しても良い炭素数1から20の炭化水素基である。R
3 は、Li、NR
44または、置換基を有しても良い炭素数1から20の炭化水素基である。R
4 は置換基を有しても良い炭素数1から20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていても良い。nおよびmは0以上の整数を表す。Wは上記Rと同義であり、上記Rと同一でも異なっていても良い。)
式中、XとZは、一般式(1)に記載の範囲であれば特に限定されないが、好ましくはCR
12、O、S、N−R
1 である。また、Yも一般式(1)に記載の範囲であれば特に限定されないが、好ましくはC=O、S=O、S(=O)
2 、P(=O)−R
2 、P(=O)−OR
3 である。RとR
1 は、一般式(1)に記載の範囲であれば特に限定されないが、好ましくは、水素、フッ素、置換基を有しても良い飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有しても良い不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基があげられる。
【0059】
R
2 およびR
4 は、一般式(1)に記載の範囲であれば特に限定されないが、好ましくは、置換基を有しても良い飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有しても良い不飽和脂肪族炭化水素、置換基を有しても良い芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環があげられる。
R
3 は、一般式(1)に記載の範囲であれば特に限定されないが、好ましくは、Li、置換基を有しても良い飽和脂肪族炭化水素、置換基を有しても良い不飽和脂肪族炭化水素、置換基を有しても良い芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環があげられる。
【0060】
置換基を有しても良い飽和脂肪族炭化水素、置換基を有しても良い不飽和脂肪族炭化水素、置換基を有しても良い芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の、置換基としては特に限定はされないが、好ましくは、ハロゲン、カルボン酸、炭酸、スルホン酸、リン酸、亜リン酸等の置換基を有しても良い飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有しても良い不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基のエステル等があげられ、さらに好ましくは、ハロゲン、最も好ましくはフッ素が好ましい。
【0061】
好ましい飽和脂肪族炭化水素として、具体的には、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1,1、2−トリフルオロエチル基、1,2、2−トリフルオロエチル基、2、2、2−トリフルオロエチル基フェニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル
基が好ましい。
【0062】
好ましい不飽和脂肪族炭化水素としては、具体的には、エテニル基、1−フルオロエテニル基、2−フルオロエテニル基、1−メチルエテニル基、2−プロペニル基、2−フルオロ−2−プロペニル基、3−フルオロ−2−プロペニル基、エチニル基、2−フルオロエチニル基、2−プロピニル基、3−フルオロ−2プロピニル基、が好ましい。
好ましい芳香族炭化水素としては、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2、4−ジフルオロフェニル基、2、6−ジフルオロフェニル基、3、5−ジフルオロフェニル基、2、4、6−トリフルオロフェニル基、が好ましい。
【0063】
好ましい芳香族ヘテロ環としては、2−フラニル基、3−フラニル基、2−チオフェニル基、3−チオフェニル基、1−メチル−2−ピロリル基、1−メチル−3−ピロリル基、が好ましい。
これらの中でも、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2、2、2−トリフルオロエチル基、エテニル基、エチニル基、フェニル基、が好ましい。
【0064】
さらに好ましくは、メチル基、エチル基、エチニル基、が好ましい。
nおよびmは一般式(1)に記載の範囲であれば特に限定されないが、好ましくは、0または1であり、さらに好ましくは、n=m=1またはn=1、m=0である。
また、分子量は、好ましくは50以上である。また、好ましくは500以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネートの
溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。これら好ましい化合物の具体例は以下のものが挙げられる。
【0118】
これらの中でも、その反応性と安定性の両面からRが水素、フッ素またはエチニル基であることが好ましい。他の置換基である場合、反応性が低下し、期待する特性が低下する恐れが有る。また、フッ素以外のハロゲンで有る場合は、反応性が高すぎて副反応が増加する恐れが有る。
【0119】
また、Rにおけるフッ素またはエチニル基の数は合わせて2つ以内で有ることが好ましい。これらの数が多すぎると、電解液との相溶性が悪化する恐れがあり、また、反応性が高すぎて副反応が増加する恐れが有る。
また、これらの中でも、n=1、m=0が好ましい。双方が0である場合、環のひずみから安定性が悪化し、反応性が高くなりすぎて副反応が増加する恐れが有る。また、n=2以上、またはn=1であっても、m=1以上で有る場合、環状より鎖状である方が安定となる恐れがあり、初期の特性を示さない恐れが有る。
【0120】
さらに、式中、XとZは、CR
12またはOがより好ましい。これら以外の場合、反応性が高すぎて副反応が増加する恐れが有る。
また、分子量は、より好ましくは100以上であり、また、より好ましくは200以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する一般式(1)の溶解性をさらに確保しやすく、本発明の効果が十分にさらに発現されやすい。
【0121】
さらに好ましい化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0127】
さらに好ましくは、Rが全て水素である場合である。この場合、期待される特性を維持しつつ、副反応が最も抑制される可能性が高い。また、YがC=OまたはS=Oの場合、XおよびZのいずれか一方がOである事が、YがS(=O)
2 、P(=O)−R
2 、P(=O)−OR
3 の場合XとZが共にOまたはCH
2 であるか、XとZのいずれか一方がOであり、もう一方がCH
2 で有ることが好ましい。YがC=OまたはS=Oの場合、XとZが共にCH
2 であると、反応性が高すぎて副反応が増加する恐れが有る。
【0128】
これらの化合物として具体的には以下のものが挙げられる。
【0130】
一方、一般式(2)であらわされる化合物が、工業的な製造の容易さの観点から、好ましい。
【0132】
(式(2)中YはC=O、S=O、S(=O)
2 、P(=O)−R
2 、P(=O)−OR
3 を表す。R
2 は置換基を有しても良い炭素数1から20の炭化水素基である。R
3 は、Li、NR
44または、置換基を有しても良い炭素数1から20の炭化水素基である。R
4 は置換基を有しても良い炭素数1から20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異っていても良い。)
式(2)で表される化合物のうち好ましい化合物としては、具体的には以下に挙げられる。
【0134】
一般式(1)であらわされる化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み
合わせ及び比率で併有してもよい。また、一般式(1)であらわされる化合物の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。一般式(1)であらわされる化合物の配合量は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0135】
1−4.炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネート
炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネートとしては、例えば以下に示される、炭素
−炭素二重結合を有する環状カーボネートが挙げられ、フッ素原子を含有してもよい。
炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートとしては、炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する環状カーボネートも、炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートに包含されることとする。
【0136】
炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコールカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4, 5−ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4, 5−ジアリルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0137】
芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、4−フェニル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0138】
中でも、好ましい炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4, 5−ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4, 5−ジアリルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
【0139】
炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、86以上、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートの分子量は、より好ましくは150以下である。炭素−炭素二重結合を有するカーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に
選択して製造することが可能である。
【0140】
炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。不飽和環状カーボネートの配合量は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。この範囲内であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0141】
フッ素原子を含有する、炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネートの場合、フッ素
原子の数は1以上であれば、特に制限されない。中でもフッ素原子が通常6以下、好ましくは4以下であり、1個又は2個のものが最も好ましい。
フッ素原子を含有する、炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネートとしては、フッ
素化ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
【0142】
フッ素化ビニレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0143】
中でも、特に好ましいフッ素原子を含有する、炭素-炭素二重結合を有する環状カーボ
ネートとしては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
【0144】
上記フッ素原子を含有する、炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネートの分子量は
、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、86以上であり、また、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。炭素-炭素二重結合を有するフッ素化環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。分子量は、より好ましくは200以下である。
【0145】
上記フッ素原子を含有する、炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネートは、1種を
単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、炭素-炭素二重結合を有するフッ素化環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発
明の効果を著しく損なわない限り任意である。フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、通常、非水系電解液100質量%中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0146】
本発明の非水系電解液は、炭素-炭素二重結合を有する環状カーボネートの合計含有質
量を[A]、一般式(1)で表される化合物の合計含有質量を[B]としたときに、[B]/[
A]が100〜0.01であることが好ましく、20〜0.01であることがより好まし
く、10〜0.01であることが更に好ましく、8〜0.03であることが特に好ましい。この範囲であれば負極表面に複合皮膜が形成され、十分なサイクル特性向上効果を発現しやすい。
【0147】
1−5.助剤
本発明の非水系電解液電池において、一般式(1)の化合物と炭素-炭素二重結合を有
する環状カーボネート以外に、目的に応じて適宜助剤を用いても良い。助剤としては、以下に示される、過充電防止剤、その他の助剤、等が挙げられる。
<過充電防止剤>
本発明の非水系電解液において、非水系電解液電池が過充電等の状態になった際に電池の破裂・発火を効果的に抑制するために、過充電防止剤を用いることができる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物が好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
【0148】
過充電防止剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意
である。過充電防止剤は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.1質量%以上であり、また、5質量%以下である。この範囲でれば、過充電防止剤の効果を十分に発現させやすく、また、高温保存特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。過充電防止剤は、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0149】
<その他の助剤>
本発明の非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1−ブテン−1,4−スルトン、3−ブテン−1,4−スルトン、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル2−メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3−メチルクロトノニトリル、2−メチル−2−ブテン二トリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル、2−ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2−フルオロプロピオニトリル、3−フルオロプロピオニトリル、2 ,2−ジフルオロプロピオニトリル、2,3−ジフルオロプロピオニトリル、3 ,3−ジフルオロプロピオニトリル、2 ,2 ,3−トリフルオロプロピオニトリル、3 ,3 ,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3'−オキシジプロピオニトリル、3,3'−チオジプロピオニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等のシアノ基を1つ有する化合物;マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、トリメチルスクシノニトリル、テトラメチルスクシノニトリル3,3'−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3'−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物;1,12−ジイソシアナトドデカン、1,11−ジイソシアナトウンデカン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,9‐ジイソシアナトノナン、1,8−ジイソシアナトオクタン、1,7−イソシアナトヘプタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン等のイソシアネート基を2つ有する化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
【0150】
その他の助剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、5質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高負荷放電特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。その他の助剤の配合量は、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0151】
以上に記載してきた非水系電解液は、本発明に記載の非水系電解液電池の内部に存在するものも含まれる。具体的には、リチウム塩や溶媒、助剤等の非水系電解液の構成要素を別途合成し、実質的に単離されたものから非水系電解液を調整し、下記に記載する方法にて別途組み立てた電池内に注液して得た非水系電解液電池内の非水系電解液である場合や、本発明の非水系電解液の構成要素を個別に電池内に入れておき、電池内にて混合させることにより本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合、更には、本発明の非水系電解液を構成する化合物を該非水系電解液電池内で発生させて、本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合も含まれるものとする。
【0152】
2.電池構成
本発明の非水系電解液電池は、非水系電解液電池の中でも二次電池用、例えばリチウム二次電池用の電解液として用いるのに好適である。以下、本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液電池について説明する。
本発明の非水系電解液電池は、公知の構造を採ることができ、典型的には、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出可能な負極及び正極と、上記の本発明の非水系電解液とを備える。
【0153】
2−1.負極
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0154】
<負極活物質>
負極活物質としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400〜3200℃の範囲で1回以上熱処理した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる結晶性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる配向性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよく好ましい。また、(1)〜(4)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0155】
上記(2)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
【0156】
負極活物質として用いられる合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料であることが好ましく、より好ましくはアルミニウム、ケイ素及びスズ(以下、「特定金属元素」と略記する場合がある)の単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物である。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0157】
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質としては、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、及びその化合物の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
【0158】
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も挙げられる。具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。例えば、スズの場合、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
【0159】
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位質量当りの容量が大きいことから、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物、炭化物、窒化物等が好ましく、特に、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
【0160】
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に制限されないが、高電流密度充放電特性の点からチタン及びリチウムを含有する材料が好ましく、より好ましくはチタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、さらにリチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する場合がある)である。即ちスピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、非水系電解液電池用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
【0161】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
上記金属酸化物が、一般式(A)で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、一般式
(A)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。
【0162】
Li
x Ti
y M
z O
4 ・・・(A)
[一般式(A)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。]
上記の一般式(A)で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
【0163】
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi
4/3 Ti
5/3 O
4 、(b)ではLi
1 Ti
2 O
4 、(c)ではLi
4/5 Ti
11/5O
4 である。また、Z≠0の構造については、例えば、Li
4/3 Ti
4/3 Al
1/3 O
4 が好ましいものとして挙げられる。
【0164】
<炭素質材料の物性>
負極活物質として炭素質材料を用いる場合、以下の物性を有するものであることが望ましい。
(X線パラメータ)
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましく、また、通常0.360nm以下であり、0.350nm以下が好ましく、0.345nm以下がさらに好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上であることが好ましく、中でも1.5nm以上であることがさらに好ましい。
【0165】
(体積基準平均粒径)
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
【0166】
体積基準平均粒径が上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20量体)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
【0167】
(ラマンR値、ラマン半値幅)
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0168】
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電
極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。特に、ラマンR値が0.1以上であると、負極表面に好適な被膜を形成し、これにより保存特性やサイクル特性、負荷特性を向上させることができる。
【0169】
一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
また、炭素質材料の1580cm
-1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm
-1以上であり、15cm
-1以上が好ましく、また、通常100cm
-1以下であり、80cm
-1以下が好ましく、60cm
-1以下がさらに好ましく、40cm
-1以下が特に好ましい。
【0170】
ラマン半値幅が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
【0171】
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm
-1付近のピークP
A の強度I
A と、1360cm
-1付近のピークP
B の強度I
B とを測定し、その強度比R(R=I
B /I
A )を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明の炭素質材料のラマンR値と定義する。また、得られるラマンスペクトルの1580cm
-1付近のピークP
A の半値幅を測定し、これを本発明の炭素質材料のラマン半値幅と定義する。
【0172】
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm
-1
・測定範囲 :1100cm
-1〜1730cm
-1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
【0173】
(BET比表面積)
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m
2 ・g
-1以上であり、0.7m
2 ・g
-1以上が好ましく、1.0m
2 ・g
-1以上がさらに好ましく、1.5m
2 ・g
-1以上が特に好ましく、また、通常100m
2 ・g
-1以下であり、25m
2 ・g
-1以下が好ましく、15m
2 ・g
-1以下がさらに好ましく、10m
2 ・g
-1以下が特に好ましい。
BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、安定性が低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
【0174】
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い
て、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本発明の炭素質材料のBET比表面積と定義する。
【0175】
(円形度)
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
【0176】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本発明の炭素質材料の円形度と定義する。
【0177】
円形度を向上させる方法は、特に制限されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダーもしくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
【0178】
(タップ密度)
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm
-3以上であり、0.5g・cm
-3以上が好ましく、0.7g・cm
-3以上がさらに好ましく、1g・cm
-3以上が特に好ましく、また、2g・cm
-3以下が好ましく、1.8g・cm
-3以下がさらに好ましく、1.6g・cm
-3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
【0179】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm
3 のタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明の炭素質材料のタップ密度として定義する。
【0180】
(配向比)
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上がさらに好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
【0181】
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m
-2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される配向比を、本発明の炭素質材料の配向比と定義する。
【0182】
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
【0183】
(アスペクト比(粉))
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(A/B)を、本発明の炭素質材料のアスペクト比と定義する。
【0184】
<負極の構成と作製法>
電極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
また、合金系材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
【0185】
(集電体)
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0186】
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、さらに好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがあるためである。
【0187】
(集電体と負極活物質層との厚さの比)
集電体と負極活物質層の厚さの比は特に制限されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上がさらに好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0188】
(結着剤)
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0189】
負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
【0190】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
【0191】
(スラリー形成溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒としては、水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0192】
(増粘剤)
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限されないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0193】
さらに増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
【0194】
(電極密度)
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm
-3以上が好ましく、1.2g・cm
-3以上がさらに好ましく、1.3g・cm
-3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm
-3以下が好ましく、2.1g・cm
-3以下がより好ましく、2.0g・cm
-3以下がさらに好ましく、1.9g・cm
-3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
【0195】
(負極板の厚さ)
負極板の厚さは用いられる正極板に合わせて設計されるものであり、特に制限されないが、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは280μm以下、より好ましくは250μm以下が望ましい。
【0196】
(負極板の表面被覆)
また、上記負極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0197】
2−2.正極
<正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について述べる。
(組成)
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特
に制限されないが、例えば、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
【0198】
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiCoO
2 等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO
2 等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO
2 、LiMn
2 O
4
、Li
2 MnO
4 等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の元素で置換したもの等が挙げられる。置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi
0.5 Mn
0.5 O
2 、LiNi
0.85Co
0.10Al
0.05O
2 、LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2 、LiNi
0.45Co
0.10Al
0.45O
2 、LiMn
1.8 Al
0.2 O
4 、LiMn
1.5 Ni
0.5 O
4 等が挙げられる。
【0199】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO
4 、Li
3 Fe
2 (PO
4 )
3 、LiFeP
2 O
7 等のリン酸鉄類、LiCoPO
4 等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の元素で置換したもの等が挙げられる。
【0200】
また、正極活物質にリン酸リチウムを含ませると、連続充電特性が向上するので好ましい。リン酸リチウムの使用に制限はないが、前記の正極活物質とリン酸リチウムを混合して用いることが好ましい。使用するリン酸リチウムの量は前記正極活物質とリン酸リチウムの合計に対し、下限が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、上限が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0201】
(表面被覆)
また、上記正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0202】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により該正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることもできる。
【0203】
表面付着物質の量としては、該正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上、上限として、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
本発明においては、正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものも「正極活物質」に含まれる。
【0204】
(形状)
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成していてもよい。
【0205】
(タップ密度)
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g/cm
3 以上、より好ましくは0.8g/cm
3 以上、さらに好ましくは1.0g/cm
3 以上である。該正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく、特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、上限は、好ましくは4.0g/cm
3 以下、より好ましくは3.7g/cm
3 以下、さらに好ましくは3.5g/cm
3 以下である。
なお、本発明では、タップ密度は、正極活物質粉体5〜10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/ccとして求める。
【0206】
(メジアン径d
50)
正極活物質の粒子のメジアン径d
50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上であり、上限は、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、さらに好ましくは25μm以下、最も好ましくは22μm以下である。上記下限を下回ると、高タップ密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作成、即ち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d
50をもつ該正極活物質を2種類以上混合することで、正極作成時の充填性をさらに向上させることができる。
なお、本発明では、メジアン径d
50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA−920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
【0207】
(平均一次粒子径)
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、該正極活物質の平均一次粒子径としては、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上であり、上限は、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。
なお、本発明では、一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の
左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0208】
(BET比表面積)
正極活物質のBET比表面積は、好ましくは0.1m
2 /g以上、より好ましくは0.2m
2 /g以上、さらに好ましくは0.3m
2 /g以上であり、上限は50m
2 /g以下、好ましくは40m
2 /g以下、さらに好ましくは30m
2 /g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質層形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
なお、本発明では、BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
【0209】
(正極活物質の製造法)
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li
2 CO
3 、LiNO
3 等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
【0210】
正極の製造のために、前記の正極活物質を単独で用いてもよく、異なる組成の1種以上を、任意の組み合わせ又は比率で併用してもよい。この場合の好ましい組み合わせとしては、LiCoO
2 とLiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2 などのLiMn
2 O
4 若しくはこのMnの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせ、あるいは、LiCoO
2 若しくはこのCoの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせが挙げられる。
【0211】
<正極の構成と作製法>
以下に、正極の構成について述べる。本発明において、正極は、正極活物質と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製することができる。正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成されることにより正極を得ることができる。
【0212】
正極活物質の、正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が低いと電気容量が不十分となる場合がある。逆に含有量が高すぎると正極の強度が不足する場合がある。
【0213】
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、下限として好ましくは1.5g/cm
3 以上、より好ましくは2g/cm
3 、さらに好ましくは2.2g/cm
3 以上であり、上限としては、好ましくは5g/cm
3 以下、より好ましくは4.5g/cm
3 以下、さらに好ましくは4g/cm
3 以下の範囲である。この範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下し高出力が得られない場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し高出力が得られない場合がある。
【0214】
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また上限は、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量がこの範囲よりも低いと導電性が不十分となる場合がある。逆に、含有量がこの範囲よりも高いと電池容量が低下する場合がある。
【0215】
(結着剤)
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であればよいが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0216】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、上限は、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
【0217】
(スラリー形成溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系媒体としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0218】
特に水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに増粘剤を添加する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、上限としては5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題が生じる場合がある。
【0219】
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限されず、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0220】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また上限は、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。薄膜がこの範囲よりも薄いと集電体として必要な強度が不足する場合がある。逆に、薄膜がこの範囲よりも厚いと取り扱い性が損なわれる場合がある。
【0221】
また、集電体の表面に導電助剤が塗布されていることも、集電体と正極活物質層の電子接触抵抗を低下させる観点で好ましい。導電助剤としては、炭素や、金、白金、銀等の貴金属類が挙げられる。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、最も好ましくは10以下であり、下限は、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0222】
(電極面積)
本発明の非水系電解液を用いる場合、高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する正極の電極面積の総和が面積比で15倍以上とすることが好ましく、さらに40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
【0223】
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、上限としては、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
【0224】
(正極板の表面被覆)
また、上記正極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0225】
2−3.セパレータ
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0226】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0227】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、8μm以上がさらに好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0228】
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がさらに好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がさらに好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0229】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
【0230】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0231】
2−4.電池設計
<電極群>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
【0232】
電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0233】
<集電構造>
集電構造は、特に制限されないが、本発明の非水系電解液による高電流密度の充放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
【0234】
電極群が上記の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。一枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が上記の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0235】
<外装ケース>
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0236】
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0237】
<保護素子>
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0238】
<外装体>
本発明の非水系電解液電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
【0239】
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【実施例】
【0240】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜3、比較例1〜2、及び参考例1]
[負極の作製]
炭素質材料98質量部に、増粘剤及びバインダーとして、それぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100質量部及びスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出し、それぞれ実施例1〜3、比較例1〜2、及び参考例1に用いる負極とした。
【0241】
[正極の作製]
正極活物質としてLiCoO
2 を90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、厚さ15μmのアルミ箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出し、正極とした。
【0242】
[電解液の製造]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との混合物(体積比30:70)に乾燥したLiPF
6 を1mol/Lの割合となるように溶解して基本電解液を調製した。この基本電解液に、表1に記載の割合で化合物を混合し、それぞれ実施例1〜3、比較例1〜2、及び参考例1に用いる電解液とした。
【0243】
[リチウム二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。
この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフ
ィルムからなる袋内に正極と負極の端子を突設させながら挿入した後、表1に記載の電解液をそれぞれ袋内に注入し、真空封止を行い、シート状電池を作製し、それぞれ実施例1〜3、比較例1〜2、及び参考例1に用いる電池とした。
【0244】
[容量確認]
リチウム二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.2Cに相当する定電流で充放電を行い、容量確認を行った。
[サイクル特性の評価]
リチウム二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において0.2Cに相当する定電流で容量確認を行った後、45℃において、0.5Cの定電流で充電後、0.5Cの定電流で放電する過程を1サイクルとして、50サイクル実施した。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.5Cとはその1/2倍の電流値を、また0.2Cとはその1/5の電流値を表す。(50サイクル目の放電容量)÷(1サイクル目の放電容量)×100の計算式から、放電容量維持率を求めた。
【0245】
[高温保存特性の評価]
リチウム二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において0.2Cに相当する定電流で容量確認を行った後、これを85℃で24時間保存し、電池を室温まで冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、高温保存前後の体積変化から発生したガス量を求めた。評価結果を表1に示す。
【0246】
【表1】
【0247】
表1から明らかなように、本発明に係る非水系電解液を用いた電池(実施例1〜3)は、本発明に係る非水系電解液でないものを用いた電池(比較例1〜2および参考例1)に比べて、サイクル容量維持率に優れる。また、本発明に係る非水系電解液を用いた電池(実施例2〜3)は、本発明に係る非水系電解液でないものを用いた電池(比較例1〜2)に比べて高温保存時の発生ガス量において優れる。
【0248】
[実施例4〜5]
実施例1〜3と同様に、負極の作製、およびLi二次電池の製造を行った。
[正極の作製]
正極活物質としてLi(Ni
1/3 Mn
1/3 Co
1/3 )O
2 を90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、予め導電助剤を塗布した厚さ15μmのアルミ箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出し、正極とした。
【0249】
[電解液の製造]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比30:30:40)に乾燥したLiPF
6 を1mol/Lの割合となるように溶解して基本電解液を調製した。この基本電解液に、表2、表3に記載の割合で化合物を混合し、それぞれ実施例4〜5及び比較例3〜6に用いる電解液とした。
【0250】
[サイクル特性の評価]
リチウム二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.2Cに相当する定電流で容量確認を行った後、60℃において、2Cの定電流で充電後、2Cの定電流で放電する過程を1サイクルとして、100サイクル実施した。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、2Cとはその2倍の電流値を表す。最後に、(100サイクル目の放電容量)÷(1サイクル目の放電容量)×100の計算式から、放電容量維持率を求めた。評価結果を表2に示す。
【0251】
[高温保存特性の評価]
容量確認が終了した電池を25℃において、0.2Cの定電流で充電した後、これを75℃で72時間保存し、電池を室温まで冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、高温保存前後の体積変化から発生したガス量を求めた。電池評価結果を表3に示す。
【0252】
【表2】
【0253】
【表3】
【0254】
表2から明らかなように、本発明に係る非水系電解液電池(実施例4)は、高電圧電池評価における60℃100サイクルでの放電容量維持率に優れる。一方、本発明に係る非水系電解液電池でない場合(比較例3〜4)はサイクル容量維持率に劣る。
表3から明らかなように、本発明に係る非水系電解液電池(実施例5)は、高温保存時の発生ガス量において優れる。一方、本発明に係る非水系電解液電池でない場合(比較例5〜6)は高温保存時の発生ガス量において劣る。
【0255】
[実施例6〜13]
実施例1〜3と同様に、負極の作製、およびLi二次電池の製造を行った。
[電解液の製造]
乾燥アルゴン雰囲気下、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)とジメチルカーボネート(DMC)との混合物(体積比30:70)に乾燥したLiPF
6 を1mol/Lの割合となるように溶解して基本電解液を調製した。この基本電解液に、表4に記載の割合で化合物を混合し、それぞれ実施例6〜13、比較例7、8および参考例1に用いる電解液とした。
【0256】
[容量確認]
実施例1〜3と同様の条件で行った。
[サイクル特性の評価]
実施例1〜3と同様の条件で行い、放電容量維持率を求めた。評価結果を表4に示す。
【0257】
【表4】
【0258】
表4から明らかなように、本発明に係る非水系電解液を用いた電池(実施例6〜13)は、本発明に係る非水系電解液でないものを用いた電池(比較例7、8および参考例2)に比べて、サイクル容量維持率に優れる。