(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一態様に係るタグを概略的に示す平面図である。
図2は、
図1に示すタグのII−II線に沿った断面図である。
図1及び
図2では、タグ1の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、タグ1の主面に垂直な方向をZ方向としている。
【0012】
図1及び
図2に示すタグ1は、基材11と、第1パターン12と、第2パターン13と、IC(Integrated Circuit)チップ14とを備えている。
【0013】
基材11の材料には、特に制限はない。基材11は、例えば、プラスチック又は紙からなる。
【0014】
第1パターン12は、基材11上に形成されている。第1パターン12は、例えば、アンテナパターンである。
【0015】
第1パターン12は、第1金属を含んでいる。第1金属は、後述する第2金属と比較して、イオン化傾向がより高い。第1金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、及び鉛(Pb)が挙げられる。典型的には、第1金属として、アルミニウム(Al)を用いる。こうすると、第1パターン12の錆び付きが比較的生じ難くなる。また、アルミニウムはイオン化傾向が高いため、第1金属としてアルミニウムを用いると、後述する無効化処理の効率が高くなる。
【0016】
第1パターン12は、例えば、エッチング法、インクジェット印字法、又はスクリーン印刷法を用いて形成することができる。
【0017】
第2パターン13は、第1パターン12が短絡しないように設けられている。
図1及び
図2に示す例では、第2パターン13と第1パターン12とは、互いに離間して隣り合っている。
【0018】
第2パターン13は、第2金属を含んでいる。第2金属は、上述した第1金属と比較して、イオン化傾向がより低い。第2金属としては、例えば、銅(Cu)、水銀(Hg)、銀(Ag)、白金(Pt)、及び金(Au)が挙げられる。
【0019】
第2パターン13は、例えば、エッチング法、インクジェット印字法、又はスクリーン印刷法を用いて形成することができる。
【0020】
ICチップ14は、第1パターン12に接続されている。ICチップ14に記録される情報には、特に制限はない。
【0021】
図3は、本発明の他の態様に係るタグを概略的に示す平面図である。
図4は、
図3に示すタグのIV−IV線に沿った断面図である。
図3及び
図4に示すタグ1は、第1パターン12と第2パターン13との位置関係が異なっていることを除いては、
図1及び
図2を参照しながら説明したものと同様の構成を有している。
【0022】
図3及び
図4に示すタグ1では、第2パターン13は、第1パターン12の一部を間に挟んで基材11と向き合っている。この場合、第1パターン12と第2パターン13との間に、絶縁層を更に設けてもよい。
【0023】
図1乃至
図4を参照しながら説明したタグ1は、第1パターン12、第2パターン13、及び/又はICチップ14を間に挟んで基材11と向き合った保護層を更に備えていてもよい。但し、この場合、第1パターン12の少なくとも一部及び第2パターン13の少なくとも一部が露出するように、保護層に開口を設けることが好ましい。或いは、保護層の材料として、後述する電解質溶液23が透過し易いものを用いることが好ましい。
【0024】
図5は、本発明の一態様に係る粘着シールを概略的に示す平面図である。
図6は、
図5に示す粘着シールのVI−VI線に沿った断面図である。
図5及び
図6に示す粘着シール2は、例えば、
図1乃至
図4を参照しながら説明したタグ1の無効化処理に用いられる。
【0025】
粘着シール2は、基材21と、マイクロカプセル22と、流速制御層24と、粘着層25とを備えている。マイクロカプセル22は、後述する通り、電解質溶液23を内包している。
【0026】
基材21の材料には、特に制限はない。基材21としては、例えば、樹脂からなるフィルム又はシートを用いる。この樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、及びトリアセチルセルロース(TAC)が挙げられる。基材21は、省略してもよい。
【0027】
マイクロカプセル22は、基材21上に保持されている。マイクロカプセル22は、例えば、高分子からなる壁膜を有している。この高分子は、典型的には、合成高分子である。この高分子としては、例えば、アミノアルデヒド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリアミド樹脂が挙げられる。
【0028】
マイクロカプセル22は、電解質溶液23を内包している。即ち、マイクロカプセル22には、電解質溶液23が封入されている。
【0029】
電解質溶液23は、陽イオンと陰イオンとを含んでいる。陽イオンとしては、例えば、H
+、Li
+、Na
+、K
+、Cs
+、及びNH
4+が挙げられる。陰イオンとしては、例えば、OH
−、F
−、Cl
−、及びI
−が挙げられる。
【0030】
電解質溶液23を内包したマイクロカプセル22は、例えば、分散媒中に分散させて用いる。このマイクロカプセル22は、例えば、分散媒中に分散させた状態で基材21上に塗工される。これにより、マイクロカプセル22を基材21上に保持することが可能となる。
【0031】
分散媒としては、例えば、スクリーンインキワニスが挙げられる。分散媒は、例えば、水分散性樹脂、水溶性樹脂、及び水溶性有機溶剤の少なくとも1つを含んでいる。
【0032】
水分散性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びウレタン系樹脂が挙げられる。水溶性樹脂としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシセルロース、及びヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;リグニンスルホン酸塩及びセラックなどの天然高分子;ポリアクリル酸の塩、スチレン−アクリル酸共重合体の塩、及びビニルナフタレン−アクリル酸共重合体の塩などのアクリル系樹脂;ビニルナフタレン酸重合体の塩、及びβ−ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩などの陰イオン性高分子;ポリビニルアルコール;並びにポリビニルピロリドンが挙げられる。水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール及びn−プロパノールなどのアルコール、ジエチレングリコール及びグリセリンなどの多価アルコール、並びに、ピロリドン類などの溶媒が挙げられる。
【0033】
マイクロカプセル22は、破壊されることによって電解質溶液23を放出するように構成されている。放出された電解質溶液23は、後で詳しく説明するように、タグ1の無効化に寄与する。
【0034】
流速制御層24は、マイクロカプセル22と後述する粘着層25との間に位置している。流速制御層24は、放出された電解質溶液23の流速を制御するための層である。流速制御層24を設けると、例えば、電解質溶液23の流出及び蒸発を防止することも可能となる。また、流速制御層24を設けると、放出された電解質溶液23を、後述する粘着層25側に、比較的均一に浸透させることも可能となる。
【0035】
流速制御層24は、例えば、多孔質材料を含んでいる。多孔質材料としては、例えば、多孔質顔料を用いる。多孔質顔料の例としては、多孔質シリカ、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、アパタイト、多孔質ガラス、及び多孔質カーボンが挙げられる。流速制御層24は、典型的には、多孔質材料とバインダとを含んでいる。この場合、バインダに対する多孔質材料の質量比は、例えば50質量%以上とする。流速制御層24は、省略してもよい。
【0036】
粘着層25は、マイクロカプセル22を保持している。
図5及び
図6に示す例では、粘着層25は、マイクロカプセル22を間に挟んで、基材21と向き合っている。
【0037】
粘着層25の材料には、特に制限はない。粘着層25の材料としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系樹脂、ブチルゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂、シリコン系樹脂、及びポリイソブチル系樹脂が挙げられる。
【0038】
粘着層25は、添加剤を更に備えていてもよい。この添加剤としては、例えば、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、及びビニルモノマーなどの凝集成分;不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、及びアクリルニトリルなどの改質成分;重合開始剤;可塑剤;硬化剤;硬化促進剤;並びに酸化防止剤が挙げられる。
【0039】
図5及び
図6に示す例では、粘着層25は、流速制御層24上に、網点状に形成されている。即ち、粘着層25は、隙間を有している。こうすると、放出された電解質溶液23が粘着層25を通過し易くなる。
【0040】
上記の隙間の設け方には、特に制限はない。例えば、粘着層25は、格子状に設けられていてもよい。この場合にも、粘着層24が網点状に設けられている場合と同様の効果を達成できる。
【0041】
粘着層25は、隙間を有していなくてもよい。この場合、放出された電解質溶液23は、例えば、粘着層25中を浸透する。或いは、放出された電解質溶液23は、粘着シール2の側面から漏れ出てもよい。
【0042】
粘着シール2は、粘着層25を間に挟んでマイクロカプセル22と向き合った離型層を更に備えていてもよい。こうすると、粘着シール2の単体での保存が容易となる。
【0043】
粘着シール2は、上述した通り、タグ1の無効化処理に使用できる。
図7は、粘着シールが貼付されたタグの一例を示す平面図である。
図8は、
図7に示すタグのVIII−VIII線に沿った断面図である。
図9は、粘着シールの使用法の一例を概略的に示す断面図である。
【0044】
この方法では、まず、粘着シール2をタグ1に貼付する。
図7及び
図8に示すタグ1において、粘着シール2は、第1パターン12の少なくとも一部及び第2パターン13の少なくとも一部と向き合っている。なお、
図8では、理解を容易にするため、タグ1と粘着シール2とを互いに離間させて描いている。
【0045】
次に、
図9に示すように、粘着シール2から、基材21を剥離する。これに伴って、マイクロカプセル22の少なくとも一部が破壊され、電解質溶液23が放出される。なお、
図9では、理解を容易にするため、粘着層25の一部を省略している。
【0046】
放出された電解質溶液23は、第1パターン12の少なくとも一部及び第2パターン13の少なくとも一部に接触する。その結果、以下の化学反応が生じる。即ち、第1パターン12を構成している第1金属と、第2パターン13を構成している第2金属とが、電解質溶液23を介して、電池を形成する。それゆえ、第2金属と比較してイオン化傾向がより高い第1金属は、電解質溶液23中にイオンとして溶け出す。これにより、第1金属の一部が腐食され、一定時間経過後に、第1パターン12の少なくとも一部が断線する。即ち、これにより、例えばタグ1の通信機能が消失し、タグ1が無効化される。
【0047】
図10は、粘着シールの使用によって無効化されたタグの一例を示す平面図である。
図11は、
図10に示すタグのXI−XI線に沿った断面図である。
【0048】
図10及び
図11に示すタグ1では、第2パターン13が設けられた部分の付近において、第1金属が腐食され、第1パターン12が断線している。即ち、このタグ1は、無効化されている。
【0049】
上述した電池反応に基づく第1パターン12の断線は、典型的には、マイクロカプセル22が破壊されてから一定の時間が経過した後に生じる。即ち、上述した方法を用いると、一定の期間は有効に機能し、その後に無効化されるシステムを構築することができる。それゆえ、上述した方法を用いると、例えば、一定の期間内に限り再入場を可能とする自動化された入場システムを構築することができる。
【0050】
また、この方法では、第1パターン12自体が断線される。それゆえ、たとえタグ1のロジックが不法に改ざんされていたとしても、タグ1を確実に無効化することができる。したがって、上述した方法を用いると、タグ1の悪用を効果的に防止することが可能となる。
【0051】
マイクロカプセル22が破壊されてから第1パターン12が断線するまでの時間は、種々のパラメータにより調整することができる。例えば、第1金属と第2金属とのイオン化傾向の差が大きいほど、上記の時間は短くなる。また、粘着層25に設けられている隙間が大きいほど、上記の時間は短くなる。更には、電解質溶液23の濃度が高いほど、上記の時間は短くなる。加えて、上記の時間は、流速制御層24の構成によっても制御できる。例えば、流速制御層24が多孔質材料を含んでいる場合、その平均細孔径が大きいほど、上記の時間は短くなる。
【0052】
マイクロカプセル22の破壊は、他の方法で行ってもよい。
図12は、粘着シールの使用法の他の例を概略的に示す断面図である。
図12に示す使用例では、粘着シール2を貼付した後に、粘着シール2をプレスすることにより、マイクロカプセル22を破壊している。
【0053】
マイクロカプセル22の破壊は、粘着シール2を、爪やコインなどで擦って加圧することによって行ってもよい。或いは、マイクロカプセル22の破壊は、粘着シール2を加熱することによって行ってもよい。
【実施例】
【0054】
<タグ1の製造>
図1及び
図2を参照しながら説明したタグ1を、以下のようにして製造した。
まず、アルミエッチングによって作成された第1パターン(アンテナパターン)12とICチップ14とを備えたRFIDタグを準備した。次に、第1パターン12と接触しないように、銀ペーストを、スクリーン印刷法によってパターン状に設けた。このようにして、第2パターン13を設けた。第2パターン13の乾燥膜厚は、5μmとした。
【0055】
<粘着シール2の製造>
図5及び
図6を参照しながら説明した粘着シール2を、以下のようにして製造した。
まず、電解質溶液23として5%塩化ナトリウム水溶液が内包されたマイクロカプセル22を準備した。このマイクロカプセル22を用いて、以下の組成を有するインキAを作製した。
【0056】
[インキAの組成]
・電解質溶液内包マイクロカプセル(平均粒子径10μm) 50質量部
・PVA樹脂(ポバールPVA−117:クラレ(株)社製) 5質量部
・水 45質量部
次に、このインキAを、50μmの厚みを有する白色PETフイルム上に、スクリーン印刷法で設けた。このようにして、マイクロカプセル22を含んだ層を刑成した。この層の乾燥膜厚は、20μmとした。
【0057】
次いで、以下の組成を有するインキBを、マイクロカプセル22を含んだ層の上に、スクリーン印刷法で設けた。このようにして、流速制御層24を刑成した。この層の乾燥膜厚は、10μmとした。
【0058】
[インキBの組成]
・多孔質シリカ(サイロページ#720:富士シリシア化学(株)社製) 50質量部
・水性ウレタン樹脂(ハイドランAP−60LM:DIC(株)社製) 50質量部
続いて、以下の組成を有する粘着剤を、流速制御層24の上に、スクリーン印刷法で、75メッシュ20%の網点状に設けた。このようにして、粘着層25を刑成した。この層の乾燥膜厚は、20μmとした。
【0059】
[粘着剤の組成]
・アクリル系粘着剤(オリバインBPS−5127:東洋インキ製造(株)社製)
80質量部
・MEK溶剤 10質量部
・トルエン溶剤 10質量部
その後、粘着層25の上に、離型紙を貼り付けた。これを所定の大きさに切断して、粘着シール2を得た。
【0060】
<タグ1への粘着シール2の貼付>
離型紙を剥がした粘着シール2を、タグ1上に貼付した。より具体的には、粘着シール2を、第1パターン12の一部及び第2パターン13の全体を覆うように貼付した。
この状態のタグ1について、以下の無効化処理A及びBを行った。
【0061】
<無効化処理A>
基材21を剥離することにより、マイクロカプセル22を破壊した。これにより、電解質溶液23を放出させ、これを流速制御層24に染み込ませた。
【0062】
この状態で、タグ1を使用したところ、使い始めは、タグ1の通信機能が作動していた。しかしながら、約1日後には、タグ1の第1パターン12が断線し、通信機能が作動しなくなった。
【0063】
<無効化処理B>
粘着シール2を爪で擦ることによって加圧し、マイクロカプセル22を破壊した。これにより、電解質溶液23を放出させ、これを流速制御層24に染み込ませた。
【0064】
この状態で、タグ1を使用したところ、使い始めは、タグ1の通信機能が作動していた。しかしながら、約1日後には、タグ1の第1パターン12が断線し、通信機能が作動しなくなった。