【実施例】
【0054】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下の実施例および比較例において、各種物性評価は、以下のように行った
【0055】
比誘電率εs
コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、アジレントテクノロジー社製4294Aを用いて、周波数1kHz、測定電圧1Vとし、静電容量Cを測定した。そして、比誘電率εs(単位なし)を、誘電体磁器組成物の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。本実施例では、εsが500以上を良好とした。
【0056】
静電容量温度特性
コンデンサ試料をDespatch社製恒温槽内に載置し、−55〜500℃の温度範囲で1Vの電圧での静電容量を測定し、+25℃での静電容量(C25)に対する静電容量(誘電率)の変化率(ΔC/C(%))を、ΔC/C={(C−C25)/C25}×100の式より算出した。本実施例では、静電容量変化率が±22%の範囲にあるものを良好とした(S特性)。
【0057】
画像解析による第一の相及び第二の相の領域の評価
焼成して得られた誘電体磁器組成物に対して、FIB(集束イオンビーム)を用いてマイクロ−サンプリングを行い、TEM試料を作製した。この試料に対しJEM2200FSを用いSTEM像観察を行いSTEM−EDSマッピング行った。観察視野は、3.0μm×3.0μmとし、各試料に対し5視野以上観察を行った。これらの方法で得られた組成マップを用いて、第一の相の元素であるK、Nbと第二の相の元素であるBa、Tiの領域を特定し、各5視野以上の結果の平均面積を用いて、a/bの割合を算出した。本実施例では、良好な容量の温度特性を得るために、1.2<a/b<5.7の範囲に制御した。
【0058】
実施例1
まず、出発粉として平均粒径が500nmの(K
0.75Na
0.25)NbO
3、および平均粒径が200nmのBaTiO
3およびBaの一部をCa,Sr,Mgで置換した(Ba
0.95Ca
0.05)TiO
3、(Ba
0.95Sr
0.05)TiO
3、(Ba
0.95Mg
0.05)TiO
3、さらに、Tiの一部をCo,Ta,Moで置換したBa(Ti
0.99Co
0.10)O
3、Ba(Ti
0.99Ta
0.10)O
3、Ba(Ti
0.99Mo
0.10)O
3を準備し、表1の組合せおよび配合比になるように、それぞれ秤量し、分散媒としての水を用いでボールミルにより17時間湿式混合した。その後、得られた混合物を乾燥して原料粉末を得た。
【0059】
表1に示している実験No.1〜6はBa一部およびTiの一部をその他の元素で置換したものである。なお、『※』のついたものは比較例である。実験No.7
※はBaおよびTiのどちらも置換していない比較例である。
【0060】
【表1】
【0061】
得られた原料粉末に対し、バインダ樹脂としてPVBを2重量%添加し、250MPaの圧力で成形することにより、直径10mm、厚さ約1mmの円盤状のグリーン成形体を得た。これを空気中で、700℃、10時間加熱して脱バインダ処理を行った。
【0062】
次いで、得られた脱バインダ後の成形体を、空気中で、1100〜1200℃、10時間、焼成することにより、円盤状の焼結体を得た。得られた円盤状の焼結体は、(K
0.75Na
0.25)NbO
3と(Ba
1−xM
x)(Ti
1−yL
y)O
3との固溶体相の生成量を調整するため、さらにアニール処理を行った。アニール条件は、空気中で、825℃、30分間、熱処理を行った。さらに、得られた焼結体を研磨し、その主表面にAg電極を塗布し、空気中、650℃で20分間焼付け処理を行うことによって、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
【0063】
各サンプルについて上記した特性の評価を行った。結果を表2に示す。また、表中の斜体で表した数値は本発明の目的物性の範囲を外れる数値を示している。
【0064】
【表2】
【0065】
表2に示すように、第二の相を構成するBaとTiの少なくともいずれかは他の元素により置換した実験No.1〜6のサンプルは、全く置換していない比較例である実験No.7
※のさんプルに対して、−55℃の静電容量の変化率が抑制されていることがわかる。これにより、−55℃から400℃という広い温度範囲で、静電容量変化率を±22%以内を満足する。
【0066】
実施例2
まず、出発粉として平均粒径が500nmの(K
0.75Na
0.25)NbO
3、および平均粒径が200nmの(Ba
0.95Ca
0.05)TiO
3、Ba(Ti
0.99Zr
0.10)O
3を準備し、表3の組合せおよび配合比になるように、それぞれ秤量し、分散媒としての水を用いでボールミルにより17時間湿式混合した。その後、得られた混合物を乾燥して原料粉末を得た。
【0067】
表3に示している実験No.9〜11および14〜16は本実施例の範囲内のサンプルであり、実験No.8
※、13
※は、相の割合であるa/bが0.7以下、実験No.12
※、17
※は、相の割合であるa/bが5.7以上の比較例である。
【0068】
【表3】
【0069】
得られた原料粉末に対し、バインダ樹脂としてPVBを2重量%添加し、250MPaの圧力で成形することにより、直径10mm、厚さ約1mmの円盤状のグリーン成形体を得た。これを空気中で、700℃、10時間加熱して脱バインダ処理を行った。
【0070】
次いで、得られた脱バインダ後の成形体を、空気中で、1100〜1200℃、10時間、焼成することにより、円盤状の焼結体を得た。得られた円盤状の焼結体は、(K
0.75Na
0.25)NbO
3と(Ba
1−xM
x)(Ti
1−yL
y)O
3との固溶体相の生成量を調整するため、さらにアニール処理を行った。アニール条件は、空気中で、825℃、30分間、熱処理を行った。さらに、得られた焼結体を研磨し、その主表面にAg電極を塗布し、空気中、650℃で20分間焼付け処理を行うことによって、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
【0071】
各サンプルについて上記した特性の評価を行った。結果を表4に示す。また、表中の斜体で表した数値は本発明の目的物性の範囲を外れる数値を示している。
【0072】
【表4】
【0073】
表4に示すように、第一の相である(K
0.75Na
0.25)NbO
3と、第二の相である(Ba
1−xM
x)(Ti
1−yL
y)O
3の割合を、本実施例の範囲内、1.2<a/b<5.7の範囲にすることにより、静電容量の変化率を±22%以内に制御できることが確認できる。比較例である実験No.8
※、12
※13
※、17
※は、静電容量の変化率が±22%以内を満足していない。
【0074】
実施例3
まず、出発粉として平均粒径が500nmの(K
0.75Na
0.25)NbO
3、および平均粒径が200nmの(Ba
1−xCa
x)TiO
3(x=0〜0.15)を準備し、表5の組合せおよび配合比になるように、それぞれ秤量し、分散媒としての水を用いでボールミルにより17時間湿式混合した。その後、得られた混合物を乾燥して原料粉末を得た。
【0075】
表5に示している実験No.19〜22は本実施例の範囲内のサンプルであり、実験No.18
※、23
※は、比較例である。
【0076】
【表5】
【0077】
得られた原料粉末に対し、バインダ樹脂としてPVBを2重量%添加し、250MPaの圧力で成形することにより、直径10mm、厚さ約1mmの円盤状のグリーン成形体を得た。これを空気中で、700℃、10時間加熱して脱バインダ処理を行った。
【0078】
次いで、得られた脱バインダ後の成形体を、空気中で、1100〜1200℃、10時間、焼成することにより、円盤状の焼結体を得た。得られた円盤状の焼結体は、(K
0.75Na
0.25)NbO
3と(Ba
1−xCa
x)TiO
3(x=0〜0.15)との固溶体相の生成量を調整するため、さらにアニール処理を行った。アニール条件は、空気中で、825℃、30分間、熱処理を行った。さらに、得られた焼結体を研磨し、その主表面にAg電極を塗布し、空気中、650℃で20分間焼付け処理を行うことによって、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
【0079】
各サンプルについて上記した特性の評価を行った。結果を表6に示す。また、表中の斜体で表した数値は本発明の目的物性の範囲を外れる数値を示している。
【0080】
【表6】
【0081】
表6に示すように、第二の相であるBaの置換量xが本実施例の範囲にした実験No.19〜22は、静電容量の変化率を±22%以内に制御できることが確認できる。比較例である実験No.18
※、22
※は、静電容量の変化率が±22%以内を満足していない。
【0082】
実施例4
まず、出発粉として平均粒径が500nmの(K
0.75Na
0.25)NbO
3、および平均粒径が200nmのBa(Ti
1−yZr
y)O
3(y=0〜0.25)を準備し、表7の組合せおよび配合比になるように、それぞれ秤量し、分散媒としての水を用いでボールミルにより17時間湿式混合した。その後、得られた混合物を乾燥して原料粉末を得た。
【0083】
表7に示している実験No.25〜28は本実施例の範囲内のサンプルであり、実験No.24
※、29
※は、比較例である。
【0084】
【表7】
【0085】
得られた原料粉末に対し、バインダ樹脂としてPVBを2重量%添加し、250MPaの圧力で成形することにより、直径10mm、厚さ約1mmの円盤状のグリーン成形体を得た。これを空気中で、700℃、10時間加熱して脱バインダ処理を行った。
【0086】
次いで、得られた脱バインダ後の成形体を、空気中で、1100〜1200℃、10時間、焼成することにより、円盤状の焼結体を得た。得られた円盤状の焼結体は、(K
0.75Na
0.25)NbO
3とBa(Ti
1−yZr
y)O
3(y=0〜0.25)との固溶体相の生成量を調整するため、さらにアニール処理を行った。アニール条件は、空気中で、825℃、30分間、熱処理を行った。さらに、得られた焼結体を研磨し、その主表面にAg電極を塗布し、空気中、650℃で20分間焼付け処理を行うことによって、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
【0087】
各サンプルについて上記した特性の評価を行った。結果を表8に示す。また、表中の斜体で表した数値は本発明の目的物性の範囲を外れる数値を示している。
【0088】
【表8】
【0089】
表8に示すように、第二の相であるTiの置換量yが本実施例の範囲にした実験No.25〜28は、静電容量の変化率を±22%以内に制御できることが確認できる。また、比較例である実験No.24
※、29
※は、静電容量の変化率が±22%以内を満足していない。
【0090】
実施例5
まず、出発粉として平均粒径が500nmのKNbO
3、(K
0.75Na
0.25)NbO
3、(K
0.75Li
0.25)NbO
3、(K
0.75Na
0.15Li
0.10)NbO
3、および平均粒径が200nmの(Ba
0.95Ca
0.05)TiO
3、Ba(Ti
0.90Zr
0.10)O
3を準備し、表9の組合せおよび配合比になるように、それぞれ秤量し、分散媒としての水を用いでボールミルにより17時間湿式混合した。その後、得られた混合物を乾燥して原料粉末を得た。
【0091】
表9に示している実験No.30〜33は第二の相(Ba
0.95Ca
0.05)TiO
3との組合せた場合の実施例であり、実験No.34〜37は第二の相Ba(Ti
0.90Zr
0.10)O
3との組合せた場合の実施例である。
【0092】
【表9】
【0093】
得られた原料粉末に対し、バインダ樹脂としてPVBを2重量%添加し、250MPaの圧力で成形することにより、直径10mm、厚さ約1mmの円盤状のグリーン成形体を得た。これを空気中で、700℃、10時間加熱して脱バインダ処理を行った。
【0094】
次いで、得られた脱バインダ後の成形体を、空気中で、1100〜1200℃、10時間、焼成することにより、円盤状の焼結体を得た。得られた円盤状の焼結体は、(K
0.75A
0.25)NbO
3と(Ba
1−xM
x)(Ti
1−yL
y)O
3との固溶体相の生成量を調整するため、さらにアニール処理を行った。アニール条件は、空気中で、825℃、30分間、熱処理を行った。さらに、得られた焼結体を研磨し、その主表面にAg電極を塗布し、空気中、650℃で20分間焼付け処理を行うことによって、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
【0095】
各サンプルについて上記した特性の評価を行った。結果を表10に示す。
【0096】
【表10】
【0097】
表10に示すように、第一の相であるKNbO
3のKの一部をLiおよびNaから選択される少なくとも1種類に適量置換しても、実験No.30〜37に示すように、静電容量の変化率を±22%以内に制御できることが確認できる。