(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンのシリンダヘッド及びシリンダブロックの側面に固定され、クランクシャフトの回転力をカムシャフトに伝達する無端の索条を覆う索条カバー部と、エンジンマウントによって車体に吊り下げられた前記エンジンの荷重方向に対して直交するエンジンマウント締結面を備えたエンジンマウント固定部を有し、且つ、前記カムシャフトの軸心方向から見て前記シリンダヘッド及び前記シリンダブロックに跨って位置するサポートブラケット部が、一体に形成されている索条ケースにおいて、
前記サポートブラケット部を前記シリンダヘッドに固定するための第1ボルト孔及び第3ボルト孔と、前記サポートブラケット部を前記シリンダブロックに固定するための第2ボルト孔及び第4ボルト孔とを有しており、
前記第1ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面及び前記シリンダヘッドと前記シリンダブロックとの境界面よりもシリンダヘッド側に位置して索条ケースの縁のシール面に形成され、
前記第2ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面及び前記境界面よりもシリンダブロック側に位置して前記シール面に形成され、
前記第3ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面よりもシリンダブロック側に位置して前記索条の内側に形成され、
前記第4ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面よりもシリンダブロック側に位置して前記索条の外側で前記第2ボルト孔寄りに形成され、
前記第1ボルト孔の中心と前記第2ボルト孔の中心を結ぶ直線が、前記エンジンマウント締結面に交差している
ことを特徴とする索条ケース。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示す従来のチェーンケース1はサポートブラケット2が別体であり、しかも、チェーンケース1の材質がアルミニウム合金である一方、サポートブラケット2の材質が鉄であるため、製造コストが高くなり且つ重量が重くなるという問題点や、チェーンケース1とサポートブラケット2との熱膨張差によって歪みが生じるという問題点を有している。
【0007】
このため、現在、チェーンカバー部とサポートブラケット部を一体成型したチェーンケースの開発が行われている。このサポートブラケット一体型のチェーンケースでは、製造コストの低減や軽量化を図ることができ、更にはサポートブラケット部を含めたチェーンケース全体が同一の材質になるため、熱膨張差による歪みも生じ難い。
【0008】
そして、このようなサポートブラケット一体型のチェーンケースでは、エンジンマウントによって車体に吊り下げたエンジンの荷重を確実に支持するため、サポートブラケット部をボルトで確実にエンジンに固定する必要がある。一方、製造コストの低減などの観点からは、できるだけ少ない本数のボルトによって容易にサポートブラケット部をエンジンに固定することが望ましい。なお、上記の特許文献1にはサポートブラケット一体型のチェーンケースが開示されているが、サポートブラケット(エンジンマウントブラケット)部の固定点に関する工夫については示されていない。
【0009】
従って本発明は上記の事情に鑑み、サポートブラケット部をできるだけ少ない本数のボルトで確実且つ容易にエンジンに固定することなどが可能なチェーンケースなどの索条ケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1発明の索条ケースは、
エンジンのシリンダヘッド及びシリンダブロックの側面に固定され、クランクシャフトの回転力をカムシャフトに伝達する無端の索条を覆う索条カバー部と、エンジンマウントによって車体に吊り下げられた前記エンジンの荷重方向に対して直交するエンジンマウント締結面を備えたエンジンマウント固定部を有し、且つ、前記カムシャフトの軸心方向から見て前記シリンダヘッド及び前記シリンダブロックに跨って位置するサポートブラケット部が、一体に形成されている索条ケースにおいて、前記サポートブラケット部を
前記シリンダヘッドに固定するための第1ボルト孔及び
第3ボルト孔と、前記サポートブラケット部を前記シリンダブロックに固定するための第2ボルト孔
及び第4ボルト孔とを有しており、前記第1ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面及び前記シリンダヘッドと前記シリンダブロックとの境界面よりもシリンダヘッド側に位置し
て索条ケースの縁のシール面に形成され、前記第2ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面及び
前記境界面よりもシリンダブロック側に位置し
て前記シール面に形成され、前記第3ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面よりもシリンダブロック側に位置して前記索条の内側に形成され、前記第4ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面よりもシリンダブロック側に位置して前記索条の外側で前記第2ボルト孔寄りに形成され、前記第1ボルト孔の中心と前記第2ボルト孔の中心を結ぶ直線が、前記エンジンマウント締結面に交差していることを特徴とする。
【0012】
また、第
2発明の索条ケースは、第
1発明の索条ケースにおいて、
前記エンジンマウント締結面には複数本のスタッドボルトが立設されており、
前記第1ボルト孔は前記スタッドボルトの間に位置していることを特徴とする。
【0013】
また、第
3発明の索条ケースは、第
1又は第2発明の索条ケースにおいて、
前記サポートブラケット部における少なくとも前記第1ボルト孔と前記第2ボルト孔と前記第3ボルト孔によって囲まれた範囲の裏面には、前記エンジンマウント締結面と直交する方向に延びたリブが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明の索条ケースによれば、前記サポートブラケット部を
前記シリンダヘッドに固定するための第1ボルト孔及び
第3ボルト孔と、前記サポートブラケット部を前記シリンダブロックに固定するための第2ボルト孔
及び第4ボルト孔とを有しており、前記第1ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面及び前記シリンダヘッドと前記シリンダブロックとの境界面よりもシリンダヘッド側に位置し
て索条ケースの縁のシール面に形成され、前記第2ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面及び
前記境界面よりもシリンダブロック側に位置し
て前記シール面に形成され、前記第3ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面よりもシリンダブロック側に位置して前記索条の内側に形成され、前記第4ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面よりもシリンダブロック側に位置して前記索条の外側で前記第2ボルト孔寄りに形成され、前記第1ボルト孔の中心と前記第2ボルト孔の中心を結ぶ直線が、前記エンジンマウント締結面に交差していることを特徴としているため、サポートブラケット部の固定点がシリンダヘッド側とシリンダブロック側に分割される。このため、シリンダヘッドとシリンダブロックの間に介設するシリンダヘッドガスケットの面圧を低下させるおそれがない。
即ち、サポートブラケット部の固定点がシリンダヘッド側のみの場合には、エンジン(シリンダブロック)の重量やエンジンの振動によってシリンダヘッドガスケットの面圧が低下するおそれがある。これに対して本発明の索条ケースでは、第1ボルト孔
及び第3ボルト孔がシリンダ
ヘッド側に位置し第2ボルト孔
及び第4ボルト孔がシリンダブロック側に位置しているため、サポートブラケット部がシリンダヘッドだけでなくシリンダブロックにも固定される。このため、サポートブラケット部においてシリンダヘッドだけでなくシリンダブロックも確実に支持することができるため、エンジン(シリンダブロック)の重量やエンジンの振動によってシリンダヘッドガスケットの面圧が低下することはない。
しかも、サポートブラケット部固定用である第1ボルト孔及び第2ボルト孔が、チェーンケースシール用のボルト孔と共用化される。従って、サポートブラケット部固定用であるボルトも、チェーンケースシール用のボルトと共用化されるため、ボルト孔の数やボルト本数を低減することができる。
また、比較的オイル漏れをし易い部分であるシリンダヘッドの側面とシリンダブロックの側面と索条ケースのシール面の3面合わせ部において、索条ケースのシール面を、第1ボルト孔と第2ボルト孔を用いてシリンダヘッドの側面とシリンダブロックの側面とに確実に固定することができるため、オイル漏れを確実に抑制することができる。
【0015】
また、第
1発明の索条ケースによれば、
前記第3ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面よりもシリンダブロック側に位置して前記索条の内側に形成され、前記第4ボルト孔は、前記エンジンマウント締結面よりもシリンダブロック側に位置して前記索条の外側で前記第2ボルト孔寄りに形成されていることを特徴としているため、索条の作動などによる索条ケースの膜振動によって放射音が発生するのを抑制することができる。
【0016】
第
2発明の索条ケースによれば、前記エンジンマウント締結面には複数本のスタッドボルトが立設されており、前記第1ボルト孔は前記スタッドボルトの間に位置していることを特徴としているため、スタッドボルトをエンジンマウント締結面から取り外すことなく、ボルトをスタッドボルトの間から第1ボルト孔に挿通してシリンダヘッドに固定することができる。このため、サポートブラケット部の固定作業が容易である。
【0017】
第
3発明の索条ケースによれば、前記サポートブラケット部における少なくとも前記第1ボルト孔と前記第2ボルト孔と前記第3ボルト孔によって囲まれた範囲の裏面には、前記エンジンマウント締結面と直交する方向に延びたリブが形成されていることを特徴としているため、このリブによってサポートブラケット部が補強されている。このため、より確実にエンジンの荷重を支持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1〜
図3に示すように、本発明の実施の形態例に係るチェーンケース10(索条ケース)は、チェーンカバー部11(索条カバー部)とサポートブラケット部12が一体に形成されたサポートブラケット一体型のものである。チェーンケース10はアルミダイキャストによって製造されており、サポートブラケット部12を含めた全体の材質がアルミニウム合金製となっている。従って、チェーンケース10は、別体のサポートブラケット2を取り付けた従来のチェーンケース1(
図6)に比べて、製造コストの低減や軽量化を図ることができ、且つ、熱膨張差による歪みも生じ難い。
【0021】
図1及び
図2に示す一点鎖線(仮想線)Bは、
図3に示すようにチェーンケース10をエンジン31のシリンダヘッド(C/H)32及びシリンダブロック(C/B)33の側面に固定したとき、チェーンケース10においてシリンダヘッド31側に位置する部分とシリンダブロック33側に位置する部分との境界線である。即ち、境界線Bの上側がチェーンケース10のシリンダヘッド側部分であり、境界線Bの下側がチェーンケース10のシリンダブロック側部分である。サポートブラケット部12は、カムシャフト54の軸心方向(
図1,
図2の紙面と直交する方向)から見てシリンダヘッド32とシリンダブロック33とに跨っている。
【0022】
また、
図2においてドットを施した部分は、チェーンケース10(チェーンカバー部11)の縁のシール面(シールライン)13である。このシール面13には、チェーンケースシール用のボルト14(
図3を参照)を挿通するための複数のボルト孔15が形成されている。
【0023】
図1及び
図3に示すように、サポートブラケット部12は、エンジン吊り下げ部品であるエンジンマウント21又は22(
図5(a),
図5(b)を参照)を固定するためのエンジンマウント固定部12aが表面に突設されている。エンジンマウント固定部12aの上面はエンジンマウント締結面12bとなっており、このエンジンマウント締結面12bには複数(図示例では3本)のスタッドボルト16が立設されている。スタッドボルト16は軸方向の両端部がねじ部16aとなっており、一方のねじ部16aをエンジンマウント締結面12bに形成されているねじ穴12cにねじ込むことによってエンジンマウント固定部12aに固定され、エンジンマウント締結面12bに対して垂直に延びている。
【0024】
エンジンマウント締結面12bは、車両のエンジン31をエンジンマウント21又は22(
図5(a),
図5(b))によって車体に吊り下げたときのエンジン31の荷重方向(即ち鉛直方向)に対して直交する面である。従って、このエンジンマウント締結面12bに立設されたスタッドボルト16は、その軸方向が前記荷重方向となっている。
【0025】
図2に示すように、チェーンケース10(チェーンカバー部11)の裏面側には無端のチェーン51が設けられている。即ち、チェーンケース10(チェーンカバー部11)は、
図3に示すようにエンジン31のシリンダヘッド32及びシリンダブロック33の側面に固定されることにより、チェーン51を覆うものである。
図2に示すようにチェーン51は、シリンダブロック側に配設されたクランクシャフト52に取り付けられているスプロケット53と、シリンダヘッド側に配設されたカムシャフト54に取り付けられているスプロケット55とに巻回されており、クランクシャフト52の回転力をカムシャフト54に伝達する。
【0026】
そして、
図1〜
図3に示すように、サポートブラケット部12の周縁部には、サポートブラケット部12をエンジン31のシリンダヘッド32及びシリンダヘッド33の側面に固定するボルト34を挿通するための4つのボルト孔41,42,43,44が形成されている。これらのボルト孔41,42,43,44は、エンジンマウント固定部12aの近傍に設けられている。サポートブラケット部固定用のボルト34は、チェーンケースシール用のボルト14に比べて軸の太いものを用いているため、サポートブラケット部固定用のボルト孔41,42,43,44の大きさ(内径)も、チェーンケースシール用のボルト孔15の大きさ(内径)に比べて大きくしている。
【0027】
第1ボルト孔41はエンジンマウント締結面12bの上方に形成されてシリンダヘッド側に位置しており、サポートブラケット部12をシリンダヘッド32に固定するためのものである。即ち、第1ボルト孔41は、前記荷重方向においてエンジンマウント締結面12b及びシリンダヘッド32とシリンダブロック33との境界面(境界線B)よりもシリンダヘッド側に位置している。第2ボルト孔42はエンジンマウント締結面12bの一方の側方に形成されてシリンダブロック側に位置しており、ポートブラケット部12をシリンダブロック33に固定するためのものである。即ち、第2ボルト孔42は、前記荷重方向においてエンジンマウント締結面12b及びシリンダヘッド32とシリンダブロック33との境界面(境界線B)よりもシリンダブロック側に位置している。しかも、第1ボルト孔41及び第2ボルト孔42は、チェーンケース10(チェーンカバー部11)の縁のシール面13に形成されている。また、第1ボルト孔41の中心と第2ボルト孔42の中心を結ぶ直線(仮想線)Eは、エンジンマウント締結面12bに交差している。更に、第1ボルト孔41は、スタッドボルト16の間に位置している(
図1)。
【0028】
第3ボルト孔43はエンジンマウント締結面12bの他方の側方に形成されてシリンダヘッド側に位置しており、サポートブラケット部12をシリンダヘッド32に固定するためのものである。即ち、第3ボルト孔43は、シリンダヘッド32とシリンダブロック33との境界面(境界線B)よりもシリンダヘッド側に位置している。また、第3ボルト孔43はチェーン51の内側に位置している(
図2)。即ち、サポートブラケット部12は、このチェーン51の内側の第3ボルト孔43においても、エンジン31(シリンダヘッド32)に固定される。3つのボルト穴41,42,43の中心を結ぶ線(仮想線)Gは、三角形状を成している(
図1)。
【0029】
第4ボルト孔44はエンジンマウント締結面12bの下方に形成されてシリンダブロック側に位置しており、サポートブラケット部12をシリンダブロック33に固定するためのものである。即ち、第4ボルト孔44は、エンジンマウント締結面12b及びシリンダヘッド32とシリンダブロック33との境界面(境界線B)よりもシリンダブロック側に位置している。エンジンマウント固定部12aの一部は、第1ボルト孔41と第2ボルト孔42と第3ボルト孔43とで囲まれる領域に位置し、また、第1ボルト孔41と第3ボルト孔43と第
4ボルト孔
44とで囲まれる領域にも位置している。第1ボルト孔41の中心と第4ボルト孔44の中心とを結ぶ直線(仮想線)Cは、エンジンマウント締結面12bに対してほぼ直交している。前記直線Cがエンジンマウント締結面12bに対して直交するように第1ボルト孔41と第
4ボルト孔
44を配設することが望ましいが、第1ボルト孔41や第
4ボルト孔
44の配置上の制約から直交させることができなくても、ほぼ直交していればよい。第2ボルト孔42は、直線Cを挟んで第3ボルト孔43と反対側に位置している。
【0030】
第2ボルト孔42の中心と第3ボルト孔43の中心とを結ぶ直線(仮想線)Dは、第1ボルト孔41の中心と第
4ボルト孔
44の中心とを結ぶ直線Cと交差している(即ち第1ボルト孔41と第4ボルト孔44の間を通過している)。また、4つのボルト孔41,42,43,44の中心を結ぶ四角形状の線(仮想線)Fは、サポートブラケット部12におけるエンジンマウント固定部12a(エンジンマウント締結面12b)を概ね包括している。
【0031】
更に、
図2に示すように、サポートブラケット部12の裏面には、格子状のリブ61a,61bが形成されている。一方のリブ61aは、エンジンマウント締結面12bと直交する方向に延びている。他方のリブ61bは、一方のリブ61aと直交しており、エンジンマウント締結面12bと平行に延びている。スタッドボルト16がねじ込まれているねじ穴12cは、リブ61aに繋がっている。
【0032】
なお、図示例ではサポートブラケット部
12における第1ボルト孔41と第2ボルト孔42と第3ボルト孔43によって囲まれた範囲(前記三角形状の線Gの内側の範囲)の裏面にリブ61a,61bを形成しているが、これに限定するものではなく、リブ61a,61bは第1ボルト孔41と第2ボルト孔42と第3ボルト孔43によって囲まれた範囲の外側にまで延びていてもよい。
【0033】
また、図示例ではサポートブラケット部
12の裏面にリブ
61c,
61dも形成されている。リブ61cは第3ボルト孔43と第4ボルト孔44に繋がっており(即ちボルト34の座面に繋がっており)、リブ61a,61bにも繋がっている。リブ61dは第1ボルト孔41と第3ボルト孔43に繋がっており(即ちボルト34の座面に繋がっており)、リブ61a,61bにも繋がっている。
【0034】
また、図示例では第1ボルト孔41と第2ボルト孔42と第3ボルト孔43と第4ボルト孔44で囲まれた範囲がサポートブラケット部12になっているが、必ずしもこれに限定するものではなく、サポートブラケット部12は第1ボルト孔41と第2ボルト孔42と第3ボルト孔43と第4ボルト孔44とで囲まれた範囲の外側にまで拡がっていてもよい。
【0035】
また、
図4に示すように、チェーンケース10は、その上部及び下部の肉厚t1に比べて、その中央部の肉厚t2を厚くしている。このチェーンケース10の中央部はボルトよってエンジン31に固定されていない部分である。
【0036】
次に、
図5(a)及び
図5(b)に基づき、チェーンケース10のサポートブラケット部12へのエンジンマウント21,22の取り付けについて説明する。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、まず、ボルト孔15に挿通したチェーンケースシール用のボルト14と、ボルト孔41〜44(
図1参照)に挿通したサポートブラケット部固定用のボルト34とを、エンジン31のシリンダヘッド32及びシリンダブロック33の側面に形成されたねじ穴(図示せず)にねじ込むことにより、チェーンケース10をシリンダヘッド32及びシリンダブロック33の側面に固定する。なお、シリンダヘッド32とシリンダブロック33の間にはシリンダヘッドガスケット35が介設されている。
【0037】
チェーンケース10を固定後、慣性主軸方式のエンジンマウント21又はペンデュラム方式のエンジンマウント22を、スタッドボルト16に装着する。この状態でナット71をスタッドボルト16のねじ部16aに螺合する。その結果、エンジンマウント21又は22は、エンジンマウント締結面12bに締結されてエンジンマウント固定部12aに固定される。なお、図示は省略するが、エンジン31のチェーンケース10と反対側にはトランスミッションが設けられており、このトランスミッションにもエンジンマウント21又は22が取り付けられている。従って、エンジン31はトランスミッションとともに両側のエンジンマウント21又は22によって車体に吊り下げられる。
【0038】
以上のように、本実施の形態例のチェーンケース10によれば、サポートブラケット部12を固定するための第1ボルト孔41及び第2ボルト孔42を有しており、第1ボルト孔41は、エンジンマウント締結面12b及びシリンダヘッド32とシリンダブロック33との境界面よりもシリンダヘッド側に位置し、第2ボルト孔42は、エンジンマウント締結面12b及びシリンダヘッド32とシリンダブロック33との境界面よりもシリンダブロック側に位置し、且つ、第1ボルト孔41及び第2ボルト孔42はチェーンケース10(チェーンカバー部11)の縁のシール面13に形成され、第1ボルト孔41の中心と第2ボルト孔42の中心を結ぶ直線Eが、エンジンマウント締結面12bに交差していることを特徴としているため、サポートブラケット部12の固定点がシリンダヘッド側とシリンダブロック側に分割される。このため、シリンダヘッド32とシリンダブロック33の間に介設するシリンダヘッドガスケット35の面圧を低下させるおそれがない。
即ち、サポートブラケット部12の固定点がシリンダヘッド側のみの場合には、エンジン31(シリンダブロック33)の重量やエンジン31の振動によってシリンダヘッドガスケット35の面圧が低下するおそれがある。これに対して本実施の形態例のチェーンケース10では、第1ボルト孔41がシリンダ
ヘッド側に位置し第2ボルト孔42がシリンダブロック側に位置しているため、サポートブラケット部12がシリンダヘッド32だけでなくシリンダブロック33にも固定される。このため、サポートブラケット部12においてシリンダヘッド32だけでなくシリンダブロック33も確実に支持することができるため、エンジン31(シリンダブロック33)の重量やエンジンの振動によってシリンダヘッドガスケット35の面圧が低下することはない。
しかも、サポートブラケット部固定用である第1ボルト孔41及び第2ボルト孔42が、チェーンケースシール用のボルト孔と共用化される。従って、サポートブラケット部固定用であるボルト34も、チェーンケースシール用のボルトと共用化されるため、ボルト孔の数やボルト本数を低減することができる。
また、比較的オイル漏れをし易い部分であるシリンダヘッド32の側面とシリンダブロック33の側面とチェーンケース10のシール面13の3面合わせ部において、チェーンケース
10のシール面13を、第1ボルト孔41と第2ボルト孔42を用いてシリンダヘッド32の側面とシリンダブロック33の側面とに確実に固定することができるため、オイル漏れを確実に抑制することができる。
【0039】
また、第2ボルト孔42はエンジンマウント締結面12bの一方の側方に位置し、エンジンマウント締結面12bの他方の側方に形成されサポートブラケット部12を固定し、チェーン51の内側に位置している第3ボルト孔43を有していることを特徴としているため、チェーン51の作動などによるチェーンケース10の膜振動によって放射音が発生するのを抑制することができる。
【0040】
また、エンジンマウント締結面12bには複数本のスタッドボルト16が立設されており、第1ボルト孔41はスタッドボルト16の間に位置していることを特徴としているため、スタッドボルト16をエンジンマウント締結面12bから取り外すことなく、ボルト34をスタッドボルト16の間から第1ボルト孔41に挿通してシリンダヘッド32に固定することができる。このため、サポートブラケット部12の固定作業が容易である。
【0041】
また、サポートブラケット部12における少なくとも第1ボルト孔41と第2ボルト孔42と第3ボルト孔43によって囲まれた範囲の裏面には、エンジンマウント締結面12bと直交する方向に延びたリブ61aが形成されていることを特徴としているため、このリブ61aによってサポートブラケット部12が補強されている。このため、より確実にエンジン31の荷重を支持することができる。
【0042】
更に、本実施の形態例のチェーンケース10では、エンジンマウント固定部12aの近傍に第1ボルト孔41及び第4ボルト孔44を有しており、第1ボルト孔41は、前記荷重方向においてエンジンマウント締結面12b及びシリンダヘッド32とシリンダブロック33との境界面よりもシリンダヘッド側に位置し、第4ボルト孔44は、前記荷重方向においてエンジンマウント締結面12b及び前記境界面よりもシリンダブロック側に位置し、第1ボルト孔41の中心と第4ボルト孔44の中心とを結ぶ直線Cが、エンジンマウント締結面12bに対してほぼ直交していることを特徴としているため、エンジンマウント固定部12aの近傍に2つのボルト孔41,44を設置したことで、サポートブラケット部12をチェーンカバー部11及びエンジン31に対して強固に固定することができる。
更に、それら2つの固定点がシリンダヘッド側とシリンダブロック側に分割されているため、シリンダヘッド32とシリンダブロック33の間に介設するシリンダヘッドガスケット35の面圧を低下させるおそれがない。しかも、第1ボルト孔41の中心と第4ボルト孔44の中心とを結ぶ直線Cが、エンジンマウント締結面12bに対してほぼ直交(直交の場合も含む)しているため、エンジン31の荷重を確実に支持することができる。
【0043】
また、エンジンマウント固定部12aの少なくとも一部は、第1ボルト孔41と第2ボルト孔42と第3ボルト孔43とで囲まれる領域に位置し、又は、第1ボルト孔41と第3ボルト孔43と第
4ボルト孔
44とで囲まれる領域に位置していることを特徴としているため、エンジンマウント固定部12aを、より確実にチェーンカバー部11及びエンジン31に対して固定することができる。
【0044】
また、第3ボルト孔43は、前記境界面よりもシリンダヘッド側に位置し、第2ボルト孔42は、前記境界面よりもシリンダブロック側で、且つ、直線Cを挟んで第3ボルト孔43と反対側に位置し、第2ボルト孔42の中心と第3ボルト孔43の中心とを結ぶ直線Dが、第1ボルト孔41と第4ボルト孔44の間を通過していることを特徴としているため、4つのボルト孔41〜44によってサポートブラケット部12におけるエンジンマウント固定部12aを概ね包括することができる。そのため、より確実にエンジンマウント固定部12aをエンジン31(シリンダヘッド32、シリンダブロック33)に固定することができる。
【0045】
また、サポートブラケット部12における少なくとも第1ボルト孔41と第2ボルト孔42と第3ボルト孔43によって囲まれた範囲の裏面には、エンジンマウント締結面12bと平行なリブ61bも形成されていることを特徴としているため、このリブ61bによってサポートブラケット部12の水平方向の強度が補強されている。このため、エンジン31の作動によって生じる水平方向の振動に対しても、より確実に耐えることができる。
【0046】
また、スタッドボルト16がねじ込まれているねじ穴12cが、リブ61aに繋がっていることを特徴としているため、より確実にエンジン31の荷重を支持することができる。
【0047】
また、ボルト孔41,42,43に繋がっているリブ61c,61dも形成されていることを特徴としているため、サポートブラケット部12の強度をより一層高めることがでる。
【0048】
また、チェーンケース10の上部及び下部の肉厚t1に比べて、チェーンケース10の中央部の肉厚t2を厚くしたことを特徴としているため、チェーンケース10の中央部が補強され、チェーンケース10の中央部の膜振動による放射音の発生を抑制することができる。また、チェーンケース10の中央部の肉厚t2を厚くするという補強方法は、リブによる補強方法に比べて、他の構造部品と干渉する懸念が少ないため、小スペース化を図ることができる。しかも、チェーンケース10の中央部の肉厚t2が厚いため、アルミダイキャストによってチェーンケース10を製造する際、例えばサポートブラケット部12側からアルミニウム合金を注湯する場合でも、チェーンケース10の中央部へのアルミニウム合金の湯流れがよい。このため、生産性にも優れている。
【0049】
なお、上記ではチェーン51によってクランクシャフト52の回転力をカムシャフト54に伝達する場合について説明したが、これに限定するものでなく、チェーン以外の索条(例えばベルト)によってクランクシャフト52の回転力をカムシャフト54に伝達する場合にも本発明を適用することができる。即ち、本発明はチェーンケースだけでなく、チェーンケース以外の索条ケース(例えばベルトケース)にも適用することができる。