特許第5760944号(P5760944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5760944
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】多層光記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/24038 20130101AFI20150723BHJP
   G11B 7/24035 20130101ALI20150723BHJP
   G11B 7/24 20130101ALI20150723BHJP
【FI】
   G11B7/24 522P
   G11B7/24 522A
   G11B7/24 535G
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-231611(P2011-231611)
(22)【出願日】2011年10月21日
(65)【公開番号】特開2012-109001(P2012-109001A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2014年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2010-236073(P2010-236073)
(32)【優先日】2010年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 素宏
(72)【発明者】
【氏名】菊川 隆
(72)【発明者】
【氏名】小須田 敦子
(72)【発明者】
【氏名】丑田 智樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 秀樹
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/037773(WO,A1)
【文献】 特開2009−070445(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013321(WO,A1)
【文献】 特開2011−060370(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0195474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/24038
G11B 7/24
G11B 7/24035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射によって情報が再生され得る記録再生層が、中間層を介して少なくとも6層以上積層される多層光記録媒体において、
積層順に連続する複数の前記記録再生層から構成され、光入射面に近い手前側から該光入射面に遠い奥側に向かって積層状態の反射率が減少する記録再生層群を、少なくとも2群以上有してなり、
前記中間層を挟んで隣り合う前記記録再生層群に関して、手前側の前記記録再生層群における最も奥側の前記記録再生層の積層状態の反射率と比較して、奥側の前記記録再生層群における最も手前側の前記記録再生層の積層状態の反射率が高いことを特徴とする多層光記録媒体。
【請求項2】
隣り合う前記記録再生層群の間に配置される前記中間層の膜厚は、前記記録再生層を挟んで両側に隣り合う他の中間層の膜厚よりも大きく設定されることを特徴とする請求項1に記載の多層光記録媒体。
【請求項3】
前記中間層は複数の膜厚が設定されており、
隣り合う前記記録再生層群の間に配置される前記中間層の膜厚は、前記複数の膜厚における最大膜厚に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層光記録媒体。
【請求項4】
前記記録再生層群内に配置される前記中間層は、前記記録再生層群内において略同じ膜厚に構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多層光記録媒体。
【請求項5】
第1膜厚となる第1中間層と、前記第1膜厚よりも大きい第2膜厚となる第2中間層が、前記記録再生層を挟んで交互に積層されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の多層光記録媒体。
【請求項6】
前記第2中間層が、隣り合う前記記録再生層群の間に配置されることを特徴とする請求項5に記載の多層光記録媒体。
【請求項7】
前記記録再生層群を3群以上有してなり、
最も手前側の前記記録再生層群及び最も奥側の前記記録再生層群を除いた残りの前記記録再生層群は、前記記録再生層を偶数層有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の多層光記録媒体。
【請求項8】
前記記録再生層群を2群有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の多層光記録媒体。
【請求項9】
少なくとも1つの前記記録再生層群は、前記記録再生層を4層以上有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の多層光記録媒体。
【請求項10】
光入射面側から最も遠い前記記録再生層群を構成する前記記録再生層の数が4層以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の多層光記録媒体。
【請求項11】
前記記録再生層が前記中間層を介して少なくとも8層以上積層されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の多層光記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射によって情報が再生され得る記録再生層が複数積層される多層光記録媒体に関し、特に、再生信号の品質を高める為の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体の分野では、レーザー光源の短波長化や光学系の高NA化によって、記録密度を高めてきているが、光源や光学系による努力は限界に達してきている。従って、記録容量を更に増大させる為には、光軸方向へ多重に情報を記録していく体積記録が求められており、例えばBlu−ray Disc(BD)規格の光記録媒体では、本出願時点において、記録再生層を2層有するものは既に商品化されており、3層構造や4層構造については規格化が進められている。また、試験研究レベルでは、再生専用の記録再生層を20層備える多層光記録媒体や、記録再生が可能な記録再生層を10〜16層備える多層光記録媒体が実証されている。
【0003】
多層光記録媒体では、記録再生層の情報を再生する際に、他の記録再生層の信号が漏れ込んだり、他の記録再生層の影響によって生じるノイズが漏れ込んだりする、いわゆるクロストークが問題となる。このクロストークはサーボ信号や記録信号の劣化につながる。
【0004】
このクロストークには、層間クロストークと共焦点クロストークの2種類が存在する。層間クロストークとは、再生中の記録再生層に隣接する記録再生層で反射した光が、再生光に漏れ込むことで生じる現象である。従って、2層以上の記録再生層を有する多層光記録媒体では必ず問題となる。層間距離を大きくすれば、この層間クロストークは小さくなる。
【0005】
共焦点クロストークは、3層以上の記録再生層を有する多層光記録媒体に特有な現象であり、再生中の記録再生層で1回だけ反射した本来の再生光と、他の記録再生層で複数回反射した迷光との間で、互いの光路長が一致してしまうことによって生じる現象である。
【0006】
共焦点クロストークの発生原理について図15図18を用いて説明する。図15のような多層光記録媒体40において、再生または記録のためにL0記録再生層40dに集光されたビーム70は、記録再生層の半透過性により複数の光ビームに分岐してしまう。図16では、L0記録再生層40dの記録再生目的のビームから分岐したビーム71が、L1記録再生層40cで反射してL2記録再生層40bで焦点を結び、この反射光が再びL1記録再生層40cで反射して検出される現象が示されている。
【0007】
図17では、L0記録再生層40dの記録再生目的のビームから分岐したビーム72が、L2記録再生層40bで反射して光入射面40zで焦点を結び、この反射光が再びL2記録再生層40bで反射して検出される現象が示されている。この迷光現象は、光入射面の裏焦点光と呼ばれる。図18では、L0記録再生層40dの記録再生目的のビームから分岐したビーム73が、他の記録再生層で焦点を結ばないが、L1記録再生層40c、L3記録再生層40a、L2記録再生層40bの順で反射して検出される現象が示されている。
【0008】
ビーム70と比較して、迷光であるビーム71〜73の光量は小さいが、等しい光路長と等しい光束径で光検出器に入射するため干渉による影響は大きく、光検出器で受光した光量が、微少な層間厚みの変化で大きく変動し、安定な信号を検出することが困難となる。一方、迷光に関しては反射の回数が多いほど、各記録再生層の反射率の積となって光量が減少していくので、実用的には3回の多面反射の迷光を考慮すれば十分である。
【0009】
これら図15図18で示す現象において、例えば、T1=T2に設定すると、ビーム70とビーム71の光路長と光束径が一致してしまい、同時に光検出器(フォトディテクタ)に入射して検出される。同様に、T1+T2=T3+TCに設定するとビーム70とビーム72光路長と光束径が一致してしまい、またT3=T1に設定するとビーム70とビーム73の光路長と光束径が一致してしまう。従って、共焦点クロストークを避ける為には、全ての層間距離を異ならせる手法を採用するのが一般的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】I.Ichimura et.a1., Appl.Opt,45, 1974−1803(2006)
【非特許文献2】K.Mishima et.Al.,Proc.of SPIE,6282,628201(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
各記録再生層には、グルーブ/ランド等のトラッキング制御用の凹凸を形成しなければならない場合がある。この際、各中間層にスタンパを利用して凹凸を形成する必要が生じるので、中間層の膜厚には誤差が生じやすい。従って、この成膜誤差の影響を予め考慮して、各中間層の膜厚を互いに異ならせようとすると、膜厚差を大きめに設定する必要が生じるので、益々、多層光記録媒体の厚みが増大するという問題があった。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、記録再生層を多層化する際に、クロストークによる信号品質の劣化を抑制しつつ、多層光記録媒体の設計を簡潔化でき、更に、記録再生装置側の記録再生制御を簡略化できる多層光記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らの鋭意研究により、上記目的は以下の手段によって達成される。
【0014】
即ち、上記目的を達成する本発明は、光照射によって情報が再生され得る記録再生層が、中間層を介して少なくとも6層以上積層される多層光記録媒体において、積層順に連続する複数の前記記録再生層から構成され、光入射面に近い手前側から該光入射面に遠い奥側に向かって積層状態の反射率が減少する記録再生層群を、少なくとも2群以上有してなり、前記中間層を挟んで隣り合う前記記録再生層群に関して、手前側の前記記録再生層群における最も奥側の前記記録再生層の積層状態の反射率と比較して、奥側の前記記録再生層群における最も手前側の前記記録再生層の積層状態の反射率が高いことを特徴とする多層光記録媒体である。
【0015】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、隣り合う前記記録再生層群の間に配置される前記中間層の膜厚が、前記記録再生層を挟んで両側に隣り合う他の中間層の膜厚よりも大きく設定されることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、前記中間層は複数の膜厚が設定されており、隣り合う前記記録再生層群の間に配置される前記中間層の膜厚は、前記複数の膜厚における最大膜厚に設定されることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、前記記録再生層群内に配置される前記中間層が、各記録再生層群内において略同じ膜厚に構成されることを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、第1膜厚となる第1中間層と、前記第1膜厚よりも大きい第2膜厚となる第2中間層が、前記記録再生層を挟んで交互に積層されることを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、前記第2中間層が、隣り合う前記記録再生層群の間に配置されることを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、前記記録再生層群を3群以上有してなり、最も手前側の前記記録再生層群及び最も奥側の前記記録再生層群を除いた残りの前記記録再生層群は、前記記録再生層を偶数層有することを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、前記記録再生層群を2群有することを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、少なくとも1つの前記記録再生層群が、前記記録再生層を4層以上有することを特徴とする。
【0023】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、光入射面側から最も遠い前記記録再生層群を構成する前記記録再生層の数が4層以下であることを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成する多層光記録媒体は、上記発明において、前記記録再生層が前記中間層を介して少なくとも8層以上積層されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、多層光記録媒体において、層間・共焦点クロストークを抑制しながらも、多層光記録媒体の設計を簡潔化できる。また、記録再生装置側の記録再生制御も簡潔化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る多層光記録媒体とこれを記録再生する光ピックアップの概略構成を示す図である。
図2】同多層光記録媒体の積層構造を示す断面図である。
図3】同多層光記録媒体の反射率と吸収率を示す図表及びグラフである。
図4】同多層光記録媒体の膜厚構成を示す図である。
図5】第2実施形態に係る多層光記録媒体の膜厚構成を示す図である。
図6】同多層光記録媒体の反射率と吸収率を示す図表及びグラフである。
図7】第3実施形態に係る多層光記録媒体の膜厚構成を示す図である。
図8】同多層光記録媒体の反射率と吸収率を示す図表及びグラフである。
図9】第4実施形態に係る多層光記録媒体の膜厚構成を示す図である。
図10】同多層光記録媒体の反射率と吸収率を示す図表及びグラフである。
図11】第5実施形態に係る多層光記録媒体の膜厚構成を示す図である。
図12】本発明の実施例Bに係る多層光記録媒体の反射率と吸収率を示す図表及びグラフである。
図13】本発明の比較例A、及び実施例Bに係る多層光記録媒体の記録条件と再生信号品質を示す図表及びグラフである。
図14】本発明の比較例A、及び実施例Bに係る多層光記録媒体のL0記録再生層の記録信号波形を示す図である。
図15】多層光記録媒体における再生光と迷光の状態を示す図である。
図16】多層光記録媒体における再生光と迷光の状態を示す図である。
図17】多層光記録媒体における再生光と迷光の状態を示す図である。
図18】多層光記録媒体における再生光と迷光の状態を示す図である。
図19】参考例となる多層光記録媒体の反射率と吸収率を示す図表及びグラフである。
図20】参考例となる多層光記録媒体の反射率と吸収率を示す図表及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0028】
図1には、第1実施形態に係る多層光記録媒体10と、この多層光記録媒体10の記録再生に用いられる光ピックアップ700の構成が示されている。
【0029】
光ピックアップ700は光学系710を備える。この光学系710は、多層光記録媒体10の記録再生層群14に対して記録・再生を行う光学系となる。光源701から出射された比較的短い青色波長380〜450nm(ここでは405nm)となる発散性のビーム770は、球面収差補正手段793を備えたコリメートレンズ753を透過し、偏光ビームスプリッタ752に入射する。偏光ビームスプリッタ752に入射したビーム770は、偏光ビームスプリッタ752を透過して、更に4分の1波長板754の透過によって円偏光に変換された後、対物レンズ756で収束ビームに変換される。このビーム770は、多層光記録媒体10の内部に形成された複数の記録再生層群14のいずれか記録再生層の上に集光される。
【0030】
偏光ビームスプリッタ752で反射されたビーム770は、集光レンズ759を透過して収束光に変換され、シリンドリカルレンズ757を経て、光検出器732に入射する。ビーム770には、シリンドリカルレンズ757を透過する際、非点収差が付与される。光検出器732は、図示しない4つの受光部を有し、それぞれ受光した光量に応じた電流信号を出力する。これら電流信号から、非点収差法によるフォーカス誤差(以下FEとする)信号、再生時に限定されるプッシュプル法によるトラッキング誤差(以下TEとする)信号、多層光記録媒体10に記録された情報の再生信号等が生成される。FE信号およびTE信号は、所望のレベルに増幅および位相補償が行われた後、アクチュエータ791および792にフィードバック供給されて、フォーカス制御およびトラッキング制御がなされる。
【0031】
図2には、この多層光記録媒体10の断面構造が拡大して示されている。
【0032】
この多層光記録媒体10は、外径が約120mm、厚みが約1.2mmの円盤形状となっており、記録再生層を6層以上備える構成となっている。この多層光記録媒体10は、光入射面10A側から、カバー層11、第2記録再生層群13B、第1記録再生層群13A及び中間層群16、支持基板12を備えて構成される。
【0033】
支持基板12にはトラックピッチ0.32umのグルーブが設けられている。なお、支持基板12の材料としては種々の材料を用いることが可能であり、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂を利用できる。これらのうち成型の容易性の観点から樹脂が好ましい。樹脂としてはポリカーボネイト樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、加工性などの点からポリカーボネイト樹脂やオレフィン樹脂が特に好ましい。なお、支持基板12は、ビーム770の光路とならないことから、高い光透過性を有している必要はない。
【0034】
第1、第2記録再生層群13A、13Bは、それぞれ、積層順に連続する複数の記録再生層を備えて構成される。各記録再生層群13A、13B内において、これに属する記録再生層は、光入射面に近い手前側から、光入射面に遠い奥側に向かって、各記録再生層の積層状態の反射率(以下、積層反射率という)が減少するようになっている。
【0035】
具体的に第1記録再生層群13Aは、L0〜L3記録再生層14A〜14Dを備えた4層構成となっており、第2記録再生層群13Bは、L4〜L9記録再生層14E〜14Jを備えた6層構成となっている。従って、第1記録再生層群13Aでは、光入射面に最も近いL3記録再生層14Dの積層反射率が最も高く、L0記録再生層13Aの積層反射率が最も低くなる。同様に、第2記録再生層群13Bでは、光入射面に最も近いL9記録再生層14Jの積層反射率が最も高く、L4記録再生層14Eの積層反射率が最も低い。
【0036】
また、この第1記録再生層群13Aと第2記録再生層群13Bは、中間層を挟んで隣り合うことになるが、この隣り合う記録再生層群13A、13Bに関して、光入射面の手前側となる第2記録再生層群13Bにおける最も奥側のL4記録再生層14Eの積層反射率と比較して、奥側の第1記録再生層群13Aにおける最も手前側のL3記録再生層14Dの積層反射率が高い。即ち、光入射面側から順番に考えると、L9記録再生層14JからL4記録再生層14Eまでは、積層順に、積層反射率が低下していくが、L3記録再生層14Dで積層反射率が一旦増加に転じ、その後再び、L0記録再生層14Aまで積層順に積層反射率が低下するようになっている。
【0037】
上述のような積層反射率を実現するための膜設計として、L0〜L9記録再生層14A〜14Jは、光学系710における青色波長領域のビーム770に対応させて、単層状態の光反射率・吸収率等が最適化されている。
【0038】
具体的には図3に示されるように、光入射面側に遠い側に位置する第1記録再生層群13Aに関して、これに属するL0〜L3記録再生層14A〜14Dは、単層状態での反射率(以下、単層反射率という)として第1単層反射率が設定され、単層状態での吸収率(以下、単層吸収率)として第1単層吸収率が設定されている。具体的に第1単層反射率は1.9%に設定され、第1単層吸収率は6.5%に設定される。
【0039】
また、光入射面側に近い側に位置する第2記録再生層群13Bに関して、これに属するL4〜L9記録再生層14E〜14Jは、第1単層反射率・第1単層吸収率よりも小さい第2単層反射率・第2単層吸収率が設定されている。具体的に第2単層反射率は1.1%に設定され、第2単層吸収率は4.5%に設定されている。このように本実施形態では、第1記録再生層群13AのL0〜L3記録再生層14A〜14Dは、互いに略同じ単層反射率・単層吸収率に設定され、また、第2記録再生層群13BのL4〜L9記録再生層14E〜14Jは、互いに略同じ単層反射率・単層吸収率に設定される。この結果、第1記録再生層群13A、第2記録再生層群13B共に、光入射面側から順番に積層反射率が低下していくことになる。また、第2記録再生層群13Bと比較して第1記録再生層群13Aの単層反射率が高いので、L4記録再生層14Eの積層反射率と比較してL3記録再生層14Dの積層反射率が高くなる。
【0040】
この膜設計を採用する結果、L0〜L3記録再生層14A〜14Dは、互いに殆ど同じ膜材料及び膜厚で形成することが可能となり、またL4〜L9記録再生層14E〜14Jは、互いに殆ど同じ膜材料及び膜厚で形成することが可能となる。これにより製造コストの大幅な削減が実現される。
【0041】
なお。L0〜L9記録再生層14A〜14Jは、それぞれ、追記型記録膜の両外側に誘電体膜等を積層した3〜5層構造となっている(図示省略)。各記録再生層の誘電体膜等は、追記型記録膜を保護するという基本機能に加えて、記録マークの形成前後における光学特性の差を拡大させたり、記録感度を向上させたりする役割を果たす。
【0042】
なお、本実施形態では、連続した記録再生層を備えており、かつ光入射面側から順番に積層反射率が低下していく記録再生層群を2群有している構造を例示しているが、少なくとも2群以上有していれば良く、3群以上有していることも好ましい。
【0043】
なお、ビーム770を照射した場合に、誘電体膜に吸収されるエネルギーが大きいと記録感度が低下しやすい。従って、これを防止するためには、これらの誘電体膜の材料として、380nm〜450nm(特に405nm)の波長領域において低い吸収係数(k)を有する材料を選択することが好ましい。なお、本実施の形態においては、誘電体膜の材料としてTiO2を用いている。
【0044】
誘電体膜に挟まれる追記型記録膜は不可逆的な記録マークが形成される膜であり、記録マークが形成された部分とそれ以外の部分(ブランク領域)は、ビーム770に対する反射率が大きく異なる。この結果、データの記録・再生を行うことができる。
【0045】
追記型記録膜は、Bi及びOを含む材料を主成分として形成される。この追記型記録膜は、無機反応膜として機能し、レーザー光の熱による化学的又は物理的な変化で反射率が大きく異なるようになっている。具体的な材料としては、Bi−Oを主成分とするか、又は、Bi−M−O(ただしMは、Mg、Ca、Y、Dy、Ce、Tb、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Zn、Al、In、Si、Ge、Sn、Sb、Li、Na、K、Sr、Ba、Sc、La、Nd、Sm、Gd、Ho、Cr、Co、Ni、Cu、Ga、Pbの中から選択される少なくとも1種の元素)を主成分とすることが好ましい。なお、本実施形態では、追記型記録膜の材料として、Bi−Ge−Oを用いている。
【0046】
なお、ここではL0〜L9記録再生層14A〜14Jにおいて追記型記録膜を採用する場合を示したが、繰り返し記録が可能な相変化記録膜を採用することも可能である。この場合の相変化記録膜は、SbTeGeとすることが好ましい。
【0047】
図4に示されるように、中間層群16は、光入射面10Aの遠い側から順番に第1〜第9中間層16A〜16Iを有している。これらの第1〜第9中間層16A〜16Iは、L0〜L9記録再生層14A〜14Jの間に積層される。各中間層16A〜16Iは、アクリル系またはエポキシ系の紫外線硬化型樹脂によって構成される。この中間層16A〜16Iの膜厚は、10μm以上となる第1距離T1と、この第1距離よりも3μm以上大きい第2距離T2が交互に設定されている。具体的に第1距離T1と第2距離T2は、3μm〜5μmの差を有していることが好ましく、更に好ましくは、4μm以上の差を有するようにする。
【0048】
この多層光記録媒体10では、第1距離T1として12μm、第2距離T2として16μmを採用しており、奥側から順に第1中間層16Aが12μm、第2中間層16Bが16μm、第3中間層16Cが12μm、第4中間層16Dが16μm、第5中間層16Eが12μm、第6中間層16Fが16μm、第7中間層16Gが12μm、第8中間層16Hが16μm、第9中間層16Iが12μmとなっている。つまり、2種類の膜厚(16μm、12μm)の中間層が交互に積層されている。詳細は後述するが、このようにすると層間クロストーク及び共焦点クロストークの双方を低減させることができる。
【0049】
特に本実施形態では、第1記録再生層群13Aと第2記録再生層群13Bの間に介在する第4中間層16Dが、膜厚の大きい側の第2距離T2(16μm)に設定される。従って、この第4中間層16Dに関しては、L3記録再生層14Dを挟んで隣り合う第3中間層16Cや、L4記録再生層14Eを挟んで隣り合う第5中間層16Eの膜厚よりも大きく設定される。
【0050】
既に述べたように、第1記録再生層群13Aと第2記録再生層群13Bの間で隣り合うことになるL3記録再生層14DとL4記録再生層14Eの間では、奥側のL3記録再生層14D積層反射率が高くなる(逆転する)。従って、手前側のL4記録再生層14Eを再生する際に、奥側のL3記録再生層14Dで反射した光が再生光に漏れ込みやすい。そこで、第1記録再生層群13Aと第2記録再生層群13Bの間に介在する第4中間層16Dの膜厚を大きくすることで、層間クロストークを低減させることが可能となる。
【0051】
カバー層11は、中間層群16と同様に光透過性のアクリル系の紫外線硬化型樹脂により構成されており、50μmの膜厚に設定されている。
【0052】
次に、この多層光記録媒体10の製造方法について説明する。まず、金属スタンパを用いることによる、ポリカーボネート樹脂の射出成型法により、グルーブおよびランドが形成された支持基板12を作製する。なお、支持基板12の作製は射出成型法に限られず、2P法や他の方法によって作製しても構わない。
【0053】
その後、支持基板12におけるグルーブ及びランドが設けられた側の表面にL0記録再生層14Aを形成する。
【0054】
具体的には、誘電体膜、追記型記録膜、誘電体膜の順に気相成長法を用いて形成する。中でもスパッタリング法を用いることが好ましい。その後、L0記録再生層14Aの上に第1中間層16Aを形成する。第1中間層16Aは、例えば、粘度調整された紫外線硬化型樹脂をスピンコート法等により皮膜し、その後、この紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射して硬化することにより形成する。この手順を繰り返すことで、L1記録再生層14B、第2中間層16B、L2記録再生層14C、第3中間層16C・・・と順番に積層していく。
【0055】
L9記録再生層14Jまで完成したら、その上にカバー層11を形成することで多層光記録媒体10が完成する。なおカバー層11は、例えば、粘度調整されたアクリル系またはエポキシ系の紫外線硬化型樹脂をスピンコート法等により皮膜し、これに対して紫外線を照射して硬化することにより形成する。なお、本実施形態では上記製造方法を説明したが、本発明は上記製造方法に特に限定されるものではなく、他の製造技術を採用することもできる。
【0056】
次に、この多層光記録媒体10の作用について説明する。
【0057】
この多層光記録媒体10は、第1、第2記録再生層群13A、13Bを備えており、それぞれの記録再生層の積層反射率が、光入射面に近い手前側から奥側に向かって減少する。更に、この第1、第2記録再生層群13A、13Bに関して、第2記録再生層群13Bにおける最も奥側のL4記録再生層14Eの積層反射率と比較して、奥側の第1記録再生層群13Aにおける最も手前側のL3記録再生層14Dの積層反射率が高くなっている。
【0058】
このようにすることで、各記録再生層群13A、13Bでは、各記録再生層の積層反射率が奥側に向かって順番に低減しているので、特定の記録再生層の再生中に、その奥側に隣接する記録再生層の反射光が再生光に漏れ込むことを抑制できる。この結果、中間層の厚さを小さくすることが可能となるので、記録再生層群13A、13B内における記録再生層の積層数を増大させることができる。
【0059】
一方で、例えば、図19の参考例に示されるように、L0〜L9記録再生層14A〜14Jの全てについて、光入射面側から順番に積層反射率を低減させようとすると、光入射面に最も近いL9記録再生層14Jと、光入射面から最も遠いL0記録再生層14Aの積層反射率の差が大きくなりすぎてしまい、積層数を増大させることが困難になりやすい。
【0060】
また、例えば図20の参考例に示されるように、L0〜L9記録再生層14A〜14Jの全てについて、積層反射率を互いに近似させようとすると、L0〜L9記録再生層14A〜14Jの単層反射率や吸収率をばらばらに設定する必要があり、製造工程が極めて複雑化する。結果、製造誤差の影響も受けやすく、誤差を含めた余裕をもった設計が必要となり、積層数を増大させることが困難となる。
【0061】
そこで本実施形態では、L0〜L9記録再生層14A〜14Jを、複数の記録再生群13A、13Bにグループ化し、各記録再生層群13A、13B内では、光入射面の手前から奥に向かって積層反射率を順番に低減させているが、記録再生層群13A、13Bの境界で隣り合うL4記録再生層14EとL3記録再生層14Dに関しては、奥側のL3記録再生層14Dの積層反射率が高くなっている。結果、第1記録再生層群13Aでは、積層反射率が高く設定されたL3記録再生層14Dを基準に、奥側に向かって積層反射率を順番に低減させることができるので、光入射面に最も近いL9記録再生層14Jと、光入射面から最も遠いL0記録再生層14Aの積層反射率の差を小さくすることが出来る。具体的にL0〜L9記録再生層14A〜14Jの全てに関して、その中の最も大きい積層反射率が、最も小さい積層反射率の5倍以内に収まるようになっている。好ましくは4倍以内、望ましくは3倍以内に収まるようにする。ここでは実際に10層を積層しているにもかかわらず、3倍未満(2.5倍以下)となっている。
【0062】
また、この積層構造を採用することで、各記録再生層群13A、13B内では、同じ膜材料及び膜厚となる記録再生層を積層することができるので、記録再生層毎にばらばらの成膜条件が不要となり、設計負担、製造負担を大幅に軽減できる。また、記録再生装置側においても、各記録再生層群13A、13B内では、略同様な記録再生層が積層されているので、記録再生条件のばらつきが小さくなり、記録再生制御(記録ストラテジ)を簡潔化することが可能になる。ちなみに、単層反射率・単層吸収率が異なるような様々な記録再生層が複雑に重なり合うと、最適な記録再生制御を経験的に見つけ出さなければならないので、相当の困難が伴う。
【0063】
また、積層反射率が逆転しているL4記録再生層14EとL3記録再生層14Dの間は、上述の通り層間クロストークが生じやすいが、本実施形態では、第1記録再生群13Aと第2記録再生層群13Bの間に位置する第4中間層16Dが、2種類の膜厚の中間層の中でも厚い方となる16μmに設定されている。従って、第4中間層16Dの膜厚によっても、層間クロストークを抑制することが可能となっている。
【0064】
更にこの多層光記録媒体10では、第1膜厚(12μm)となる中間層と、第1膜厚よりも大きい第2膜厚(16μm)となる中間層が、記録再生層14A〜14Jを挟んで交互に積層されている。
【0065】
また、図15図18で示したような共焦点クロストーク現象を利用して説明すると、例えば、ビーム70と比較して、多面反射光であるビーム71〜73の光量は小さいのが一般的であるが、等しい光路長と等しい光束径で光検出器に入射するため、干渉による影響は比較的大きい。従って、光検出器で受光される光量は、微少な層間厚みの変化で大きく変動するので、安定な信号を検出することが困難となる。
【0066】
次に、この多層光記録媒体10の設計手法について説明する。
【0067】
この多層光記録媒体10では、10μm以上の範囲で2種類の膜厚となる中間層を交互に用いる事によって、層間クロストークと、共焦点クロストークの影響を同時に低減させる。また、この2種類の膜厚における厚い側の中間層を利用して、第1記録再生層群13Aと第2記録再生層群13Bの境界における層間クロストークも低減させる。従って、各記録再生層群13A、13Bに属させる記録再生層の積層数と、中間層の数を考慮して、2種類の中間層を交互に配置しながらも、記録再生層群13A、13Bの間に位置する中間層は、膜厚の大きい側が位置するように設計する。
【0068】
また、光入射面側に近いL4記録再生層14E〜L9記録再生層14Jについては、同じ構成の記録再生層を用いることで利便性を高める。一方、光入射面側から遠いL0記録再生層14A〜L3記録再生層14Dについても、手前側の6層と比較して単層反射率が高くなるように設計しながらも、この4層共に同じ構成の記録膜を用いることで利便性を高める。同じ構成の記録再生層を積層した場合、当然、積層された状態で各記録再生層から光検出器732へ戻る反射光量は、光入射面から奥側になる程、記録再生層の透過の2乗に比例して減少し、更に、各記録再生層に到達するレーザーパワーも透過に比例して減少する。
【0069】
記録再生層群によるグループ化の例について説明する。まず、光入射面側の記録再生層について特定の成膜条件(第2成膜条件)を設計し、光入射面側から順番に積層していく。この記録再生層の積層数は、再生劣化が起きない程度の再生パワーを記録再生層に照射した際に、各記録再生層からの反射によって光検出器732に戻ってくる反射光量が、評価装置で取り扱うことができる限界値に近くなるまで、または、記録再生層における記録マークの形成(記録層の変性)に必要なレーザーパワーの限界値(即ち記録感度の限界値)に近くなるまで、増加させることができる。そして、奥側の記録再生層がこれらの反射光量と記録感度の限界値に達したら、まず、これらの記録再生層を記録再生層群としてグループ化する。本実施形態では、L9記録再生層14J〜L4記録再生層14Eまでを、第2記録再生層群13Bとしてグループ化している。
【0070】
次に、第2記録再生層群13Bよりも奥側に積層する記録再生層の設計を行う。第2記録再生層群13Bと同じ成膜条件のままでは、上記反射光量と記録感度の限界値を超えてしまう。従って、これを超えないようにするために、単層の状態の反射率と吸収率が高くなる次の成膜条件(第1成膜条件)を設計する。この成膜条件を採用した記録再生層を、奥側に向かって順番に積層していく。記録再生層の積層数は、上記第2記録再生層群13Bと同様に、評価装置上のハンドル出来る反射光量、若しくはレーザーパワーの限界値になるまで、又は目標とする積層数に達するまで増加させることができる。上記目的に達したら、これらの記録再生層を記録再生層群としてグループ化する。本実施形態では、L3記録再生層14D〜L0記録再生層14Aまでを、第1記録再生層群13Aとしてグループ化している。なお、第1実施形態では、10層が目標であることから、第1記録再生層群13Aまでグループ化すれば良い。詳細は後述するが、更に多い積層数を目指す場合には、単層の状態の反射率と吸収率が、更に高くなるような新たな成膜条件を決定して、更に奥側に積層していき、新たな記録再生層群をグループ化する。
【0071】
この結果として、記録再生層の材料構成が切り替わる前後の記録再生層、例えば、L4記録再生層14EとL3記録再生層14Dを比較すると、その各記録再生層から光検出器732に戻ってくる反射光量は、L4記録再生層14EよりもL3記録再生層14Dの方が高くなる。また、この反射光量の差は、各記録再生層群13A、13B内の同じ成膜条件で構成されている記録再生層同士の差と比較して大きくなる。記録再生層の材料構成が切り替わる前後の記録再生層の反射光量差を大きくすることで、奥側の第1記録再生層群13Aにおいて、多くの記録再生層をグループ化できることにつながる。一方で、反射光量の低いL4記録再生層14Eでは、単層反射率及び光検出器732への戻り光量が大きいL3記録再生層14Dから受ける層間迷光によって、信号品質やサーボ特性への影響が著しく大きくなる。従って、上記反射光量の差は、光入射面側の第2記録再生層群13B内の最大積層反射率と最小積層反射率の差よりも小さくしておくことも重要となる。また層間クロストークを見越して、本実施形態では、2種類の中間層の膜厚の内、厚い膜厚設定である16μmの中間層を、L4記録再生層14EとL3記録再生層14Dの間に配置している。
【0072】
次に、本発明の第2実施形態に係る多層光記録媒体110について、図5及び図6を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる部材の符号については、第1実施形態の多層光記録媒体の説明で用いた符号と下二桁を一致させることで、断面構造等の図示を省略する。
【0073】
この多層光記録媒体110は、光入射面の奥側から順番に、16層となるL0〜L15記録再生層114A〜114Pが積層されている。また、これらのL0〜L15記録再生層114A〜114Pの間に、第1〜第15中間層116A〜116Oが積層されている。
【0074】
更に、この多層光記録媒体110は、第1、第2記録再生層群113A、113Bを備えている。第1、第2記録再生層群113A、113Bは、それぞれ、積層順に連続する複数の記録再生層を備えて構成され、光入射面に近い手前側から、光入射面に遠い奥側に向かって、各記録再生層の積層反射率が減少するようになっている。
【0075】
具体的に第1記録再生層群113Aは、L0〜L4記録再生層114A〜114Eを備えた5層構成となっており、第2記録再生層群113Bは、L5〜L15記録再生層114F〜114Pを備えた11層構成となっている。
【0076】
この第1記録再生層群113Aと第2記録再生層群113Bは、中間層を挟んで隣り合うことになる。この隣り合う記録再生層群113A、113Bに関して、光入射面の手前側となる第2記録再生層群113Bにおける最も奥側のL5記録再生層114Fの積層反射率と比較して、奥側の第1記録再生層群113Aにおける最も手前側のL4記録再生層114Eの積層反射率が高い。
【0077】
このような積層反射率を実現するための膜設計として、第1記録再生層群113Aに属するL0〜L4記録再生層114A〜114Eは、単層状態での反射率(以下、単層反射率という)として第1単層反射率が設定され、単層状態での吸収率(以下、単層吸収率)として第1単層吸収率が設定されている。具体的に第1単層反射率は1.5%に設定され、第1単層吸収率は6.9%に設定される。
【0078】
また、光入射面側に近い側に位置する第2記録再生層群113Bに関して、これに属するL5〜L15記録再生層114F〜114Pは、第1単層反射率・第1単層吸収率よりも小さい第2単層反射率・第2単層吸収率が設定されている。具体的に第2単層反射率は0.7%に設定され、第2単層吸収率は4.5%に設定されている。
【0079】
このように本実施形態では、第1記録再生層群113AのL0〜L4記録再生層114A〜114Eは、互いに略同じ単層反射率・単層吸収率に設定され、また、第2記録再生層群113BのL5〜L15記録再生層114F〜114Pは、互いに略同じ単層反射率・単層吸収率に設定される。この結果、第1記録再生層群113A、第2記録再生層群113B共に、光入射面側から順番に積層反射率が低下していくことになる。第2記録再生層群113Bと比較して第1記録再生層群113Aの単層反射率が高いので、L5記録再生層114Fの積層反射率と比較してL4記録再生層114Eの積層反射率が高くなる。
【0080】
中間層116A〜116Iの膜厚は、10μm以上となる第1距離T1(12μm)と、この第1距離よりも3μm以上大きい第2距離T2(16μm)が交互に設定されている。この多層光記録媒体110では、奥側から順に第1中間層116Aが16μm、第2中間層116Bが12μm、第3中間層116Cが16μm、第4中間層116Dが12μm、第5中間層116Eが16μm、第6中間層116Fが12μm、・・・と続くようにして、2種類の膜厚(16μm、12μm)の中間層が交互に積層されている。
【0081】
更に、第2実施形態では、第1記録再生層群113Aと第2記録再生層群113Bの間に介在する第5中間層116Eが、膜厚の大きい側の第2距離T2(16μm)に設定される。従って、この第5中間層116Eに関しては、L4記録再生層114E又はL5記録再生層114Fを挟んで両側に隣り合う第4中間層116D、第6中間層116Fの膜厚よりも大きく設定される。既に述べたように、L4記録再生層114EとL5記録再生層114Fの間では、奥側のL4記録再生層114Eの積層反射率が高くなる(逆転する)ので層間クロストークが生じやすい。そこで、この間に介在する第5中間層116Eの膜厚を大きくすることで、層間クロストークを低減させている。
【0082】
この第2実施形態では、光入射面に最も近いL15記録再生層114Pと、光入射面から最も遠いL0記録再生層114Aの積層反射率の差が小さくなっている。具体的にL0〜L15記録再生層114A〜114Pの全てに関して、その中の最も大きい積層反射率が、最も小さい積層反射率の5倍以内に収まるようになっている。好ましくは4倍以内、望ましくは3倍以内に収まるようにする。実際には、16層構成にも拘わらず4倍未満に収まっている。
【0083】
また、この積層構造を採用することで、各記録再生層群113A、113B内では、同じ膜材料及び膜厚となる記録再生層を積層できるので、設計負担、製造負担を大幅に軽減することができる。また、記録再生装置側においても、各記録再生層群113A、113B内では、ほとんど同じ特性の記録再生層が積層されているので、記録再生条件のばらつきが小さくなり、記録再生制御を簡潔化することが可能になる。
【0084】
次に、本発明の第3実施形態に係る多層光記録媒体210について、図7及び図8を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる部材の符号については、第1実施形態の多層光記録媒体の説明で用いた符号と下二桁を一致させることで、断面構造等の図示を省略する。
【0085】
この多層光記録媒体210は、光入射面の奥側から順番に20層となるL0〜L19記録再生層214A〜214Tが積層されている。また、これらのL0〜L19記録再生層214A〜214Tの間に、第1〜第19中間層216A〜216Sが積層されている。
【0086】
更に、この多層光記録媒体210は、第1、第2記録再生層群213A、213Bを備えている。第1、第2記録再生層群213A、213Bは、それぞれ、積層順に連続する複数の記録再生層を備えて構成され、光入射面に近い手前側から、光入射面に遠い奥側に向かって、各記録再生層の積層反射率が減少するようになっている。
【0087】
具体的に第1記録再生層群213Aは、L0〜L5記録再生層214A〜214Fを備えた6層構成となっており、第2記録再生層群213Bは、L6〜L19記録再生層214G〜214Tを備えた14層構成となっている。
【0088】
この第1記録再生層群213Aと第2記録再生層群213Bは、中間層を挟んで隣り合うことになる。この隣り合う記録再生層群213A、213Bに関して、光入射面の手前側となる第2記録再生層群213Bにおける最も奥側のL6記録再生層214Gの積層反射率と比較して、奥側の第1記録再生層群213Aにおける最も手前側のL5記録再生層214Fの積層反射率が高い。
【0089】
この積層反射率を実現するための膜設計として、第1記録再生層群213Aに属するL0〜L5記録再生層214A〜214Fは、単層状態での反射率(以下、単層反射率という)として第1単層反射率が設定され、単層状態での吸収率(以下、単層吸収率)として第1単層吸収率が設定されている。具体的に第1単層反射率は1.7%に設定され、第1単層吸収率は6.9%に設定される。
【0090】
また、光入射面側に近い側に位置する第2記録再生層群213Bに関して、これに属するL6〜L19記録再生層214G〜214Tは、第1単層反射率・第1単層吸収率よりも小さい第2単層反射率・第2単層吸収率が設定されている。具体的に第2単層反射率は0.7%に設定され、第2単層吸収率は3.7%に設定されている。このように本実施形態では、第1、第2記録再生層群213A、213Bのそれぞれの群内において、略同じ単層反射率・単層吸収率に設定される。この結果、第1記録再生層群213A、第2記録再生層群213B共に、光入射面側から順番に積層反射率が低下していくことになる。また、第2記録再生層群213Bと比較して第1記録再生層群213Aの単層反射率が高いので、L6記録再生層214Gの積層反射率と比較してL5記録再生層214Fの積層反射率が高くなる。
【0091】
中間層216A〜216Sの膜厚は、10μm以上となる第1距離T1(12μm)と、この第1距離よりも3μm以上大きい第2距離T2(16μm)が交互に設定されている。この多層光記録媒体210では、奥側から順に第1中間層216Aが12μm、第2中間層216Bが16μm、第3中間層216Cが12μm、第4中間層216Dが16μm、第5中間層216Eが12μm、第6中間層216Fが16μm、・・・と続くようにして、2種類の膜厚(16μm、12μm)の中間層が交互に積層されている。
【0092】
更に、第3実施形態では、第1記録再生層群213Aと第2記録再生層群213Bの間に介在する第6中間層216Fが、膜厚の大きい側の第2距離T2(16μm)に設定される。既に述べたように、L5記録再生層214FとL6記録再生層214Gの間では、奥側のL5記録再生層214Fの積層反射率が高くなる(逆転する)ことから、層間クロストークが生じやすい。そこで、これらの間に介在する第6中間層216Fの膜厚を大きくすることで、層間クロストークを低減させている。
【0093】
この第3実施形態では、光入射面に最も近いL19記録再生層214Tと、光入射面から最も遠いL0記録再生層214Aの積層反射率の差を小さくすることが出来る。具体的にL0〜L19記録再生層214A〜214Tの全てに関して、その中の最も大きい積層反射率が、最も小さい積層反射率の5倍以内に収まるようになっている。好ましくは4倍以内、望ましくは3倍以内に収まるようにする。実際には、20層構造にも拘わらず、4倍未満となっている。
【0094】
また、この積層構造を採用することで、各記録再生層群213A、213B内では、同じ膜材料及び膜厚となる記録再生層を積層することができるので、設計負担、製造負担を大幅に軽減することができる。また、記録再生装置側においても、各記録再生層群213A、213B内では、略同様な記録再生層が積層されているので、記録再生条件のばらつきが小さくなり、記録再生制御を簡潔化することが可能になる。
【0095】
次に、本発明の第4実施形態に係る多層光記録媒体310について、図9及び図10を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる部材の符号については、第1実施形態の多層光記録媒体の説明で用いた符号と下二桁を一致させることで、断面構造等の図示を省略する。
【0096】
この多層光記録媒体310は、光入射面の奥側から順番に20層となるL0〜L19記録再生層314A〜314Tが積層されている。また、これらのL0〜L19記録再生層314A〜314Tの間に、第1〜第19中間層316A〜316Sが積層されている。
【0097】
更に、この多層光記録媒体310は、第1、第2、第3記録再生層群313A、313B、313Cを備えている。第1〜第3記録再生層群313A〜313Cは、それぞれ、積層順に連続する複数の記録再生層を備えて構成され、光入射面に近い手前側から、光入射面に遠い奥側に向かって、各記録再生層の積層反射率が減少するようになっている。
【0098】
具体的に第1記録再生層群313Aは、L0〜L3記録再生層314A〜314Dを備えた4層構成となっており、第2記録再生層群313Bは、L4〜L9記録再生層314E〜314Jを備えた6層構成となっており、第3記録再生層群313Cは、L10〜L19記録再生層314K〜314Tを備えた10層構成となっている。
【0099】
この第1記録再生層群313Aと第2記録再生層群313Bは、第4中間層316Dを挟んで隣り合うことになる。この隣り合う記録再生層群313A、313Bに関して、光入射面の手前側となる第2記録再生層群313Bにおける最も奥側のL4記録再生層314Eの積層反射率と比較して、奥側の第1記録再生層群313Aにおける最も手前側のL3記録再生層314Dの積層反射率が高い。また、第2記録再生層群313Bと第3記録再生層群313Cは、第10中間層316Jを挟んで隣り合うことになるが、この隣り合う記録再生層群313B、313Cに関して、光入射面の手前側となる第3記録再生層群313Cにおける最も奥側のL10記録再生層314Kの積層反射率と比較して、奥側の第2記録再生層群313Bにおける最も手前側のL9記録再生層314Jの積層反射率が高い。
【0100】
なお、このような積層反射率を実現するための膜設計として、第1記録再生層群313Aに属するL0〜L3記録再生層314A〜314Dは、単層状態での反射率(以下、単層反射率という)として第1単層反射率が設定され、単層状態での吸収率(以下、単層吸収率)として第1単層吸収率が設定されている。具体的に第1単層反射率は1.6%に設定され、第1単層吸収率は6.9%に設定される。また、第2記録再生層群313Bに関して、これに属するL4〜L9記録再生層314E〜314Jは、第1単層反射率・第1単層吸収率よりも小さい第2単層反射率・第2単層吸収率が設定されている。具体的に第2単層反射率は0.9%に設定され、第2単層吸収率は4.4%に設定されている。更に、第3記録再生層群313Cに関して、これに属するL10〜L19記録再生層314K〜314Tは、第2単層反射率・第2単層吸収率よりも小さい第3単層反射率・第3単層吸収率が設定されている。具体的に第3単層反射率は0.5%に設定され、第3単層吸収率は3.0%に設定されている。
【0101】
このように本実施形態では、第1〜第3記録再生層群313A〜313Cのそれぞれにおいて、群内では、互いに略同じ単層反射率・単層吸収率に設定される。この結果、各記録再生層群313A〜313C内では、光入射面側から順番に積層反射率が低下していく。
【0102】
また、第3記録再生層群313Cと比較して第2記録再生層群313Bの単層反射率が高く、更に、第2記録再生層群313Bと比較して第1記録再生層群313Aの単層反射率が高く設定されているので、記録再生層群313A〜313Cの境界部分では、手前側の積層反射率と比較して奥側の積層反射率が高くなる。
【0103】
また、中間層316A〜316Sの膜厚は、10μm以上となる第1距離T1(12μm)と、この第1距離よりも3μm以上大きい第2距離T2(16μm)が交互に設定されている。この多層光記録媒体310では、奥側から順に、第1中間層316Aが12μm、第2中間層316Bが16μm、第3中間層316Cが12μm、第4中間層316Dが16μm、第5中間層316Eが12μm、第6中間層316Fが16μm、・・・と続くようにして、2種類の膜厚(16μm、12μm)となる中間層が交互に積層されている。
【0104】
更にこの実施形態では、第1記録再生層群313Aと第2記録再生層群313Bの間に介在する第4中間層316Dが、膜厚の大きい側の第2距離T2(16μm)に設定される。また、第2記録再生層群313Bと第3記録再生層群313Cの間に介在する第10中間層316Jも、膜厚の大きい側の第2距離T2(16μm)に設定される。これを実現する為には、最も奥側に位置する第1記録再生層群313Aと、最も手前側に近い第3記録再生層群313Cを除いて、中間に位置する第2記録再生層群313Bの積層数が、偶数(本実施形態では6層)であることが好ましい事が分かる。
【0105】
既に述べたように、L3記録再生層314DとL4記録再生層314Eの間では、奥側のL3記録再生層314Dの積層反射率が高くなる(逆転する)ことから、層間クロストークが生じやすい。同様に、L9記録再生層314JとL10記録再生層314Kの間では、奥側のL9記録再生層314Jの積層反射率が高くなる(逆転する)ことから、層間クロストークが生じやすい。そこで、これらの間に介在する第4中間層316Dと第10中間層316Jの膜厚を大きくすることで、層間クロストークを積極的に低減させることができる。
【0106】
特に実施形態では、20層も積層しながらも、光入射面に最も近いL19記録再生層314Tと、光入射面から最も遠いL0記録再生層314Aの積層反射率の差を小さくすることが出来る。具体的にL0〜L19記録再生層314A〜314Tの全てに関して、その中の最も大きい積層反射率が、最も小さい積層反射率の5倍以内に収まるようになっている。好ましくは4倍以内、望ましくは3倍以内に収まるようにする。特に、記録再生層群を3群にしていることから、20層構造にもかかわらず3倍未満となっている。
【0107】
また、この積層構造を採用することで、各記録再生層群313A、313B、313C内では、同じ膜材料及び膜厚となる記録再生層を積層することができるので、設計負担、製造負担を大幅に軽減することができる。また、記録再生装置側においても、各記録再生層群313A、313B、313C内では、略同様な記録再生層が積層されているので、記録再生条件のばらつきが小さくなり、記録再生制御を簡潔化することが可能になる。
【0108】
次に、本発明の第5実施形態に係る多層光記録媒体410について、図11を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる部材の符号については、第1実施形態の多層光記録媒体の説明で用いた符号と下二桁を一致させることで、断面構造等の図示を省略する。
【0109】
この多層光記録媒体410は、光入射面の奥側から順番に、16層となるL0〜L15記録再生層414A〜414Pが積層されている。また、これらのL0〜L15記録再生層414A〜414Pの間に、第1〜第15中間層416A〜416Oが積層されている。
【0110】
更に、この多層光記録媒体410は、第1、第2記録再生層群413A、413Bを備えている。第1、第2記録再生層群413A、413Bは、それぞれ、積層順に連続する複数の記録再生層を備えて構成され、光入射面に近い手前側から、光入射面に遠い奥側に向かって、各記録再生層の積層反射率が減少するようになっている。
【0111】
具体的に第1記録再生層群413Aは、L0〜L4記録再生層414A〜414Eを備えた5層構成となっており、第2記録再生層群413Bは、L5〜L15記録再生層414F〜414Pを備えた11層構成となっている。
【0112】
この第1記録再生層群413Aと第2記録再生層群413Bは、中間層を挟んで隣り合うことになるが、この隣り合う記録再生層群413A、413Bに関して、光入射面の手前側となる第2記録再生層群413Bにおける最も奥側のL5記録再生層414Fの積層反射率と比較して、奥側の第1記録再生層群413Aにおける最も手前側のL4記録再生層414Eの積層反射率が高い。なお、特に図示しないが、このような積層反射率を実現するための膜設計として、第1記録再生層群413Aに属するL0〜L4記録再生層414A〜414Eは単層反射率は1.5%に設定され、単層吸収率は6.9%に設定される。
【0113】
また、光入射面側に近い側に位置する第2記録再生層群413Bに関して、これに属するL5〜L15記録再生層414F〜414Pは、単層反射率は0.7%に設定され、単層吸収率は4.5%に設定されている。このように本実施形態では、第1記録再生層群413AのL0〜L4記録再生層414A〜414Eは、互いに略同じ単層反射率・単層吸収率に設定され、また、第2記録再生層群413BのL5〜L15記録再生層414F〜414Pは、互いに略同じ単層反射率・単層吸収率に設定される。この結果、第1記録再生層群413A、第2記録再生層群413B共に、光入射面側から順番に積層反射率が低下していくことになる。第2記録再生層群413Bと比較して第1記録再生層群413Aの単層反射率が高いので、L5記録再生層414Fの積層反射率と比較してL4記録再生層414Eの積層反射率が高くなる。
【0114】
中間層416A〜416Oの膜厚は、10μm以上となる第1距離T1(12μm)と、この第1距離よりも3μm以上大きい第2距離T2(16μm)が採用されている。
【0115】
特にこの多層光記録媒体410では、第1記録再生層群413Aと第2記録再生層群413Bの間に介在する第5中間層416Eに限って、膜厚の大きい第2距離T2(16μm)に設定される。他の中間層の膜厚は第1距離T1(12μm)に設定される。即ち、各記録再生層群413A、413Bの内部の中間層の膜厚は、全て12μmで統一されている。
【0116】
結果、第5中間層416Eの膜厚は、L4記録再生層414E又はL5記録再生層414Fを挟んで両側に隣り合う第4中間層16D及び第6中間層16Fよりも大きく設定される。既に述べたように、L4記録再生層414EとL5記録再生層414Fの間では、奥側のL4記録再生層414Eの積層反射率が高くなる(逆転する)ので層間クロストークが生じやすい。そこで、これらの間に介在する第5中間層416Eの膜厚を大きくすることで、層間クロストークを低減させる。
【0117】
<実施例及び比較例>
【0118】
第1実施形態に係る多層光記録媒体10(管理記号B/2 Blockタイプ)について、手前6層を構成する記録膜の単層状態での反射率を0.7%、吸収率を4.5%、奥4層を構成する記録膜の単層での反射率を1.4%、吸収率を6.5%として製造した。この実施例の多層光記録媒体の積層反射率、積層吸収率の状態を図12に示す。この多層光記録媒体10に対して、光ピックアップ90を用いて記録パワーを制御しながら情報を記録し、その再生光を評価した。
【0119】
一方、比較例とする多層光記録媒体(管理記号A/Normalタイプ)については、従来通り、積層状態での光検出器732の戻る反射光量と、各記録再生層に到達するレーザーパワーが、各記録再生層でほぼ同じとなる様に、各記録再生層を設計した。なお、この比較例の積層反射率、積層吸収率の状態は、図20で示したものと同じに設定し、中間層の構成は上記実施例と同様にした。
【0120】
なお、光ピックアップ90の記録パワー条件として、実施例では、各記録再生層群13A、13B内で、手前から奥側に行くほど記録パワーを増加させるように制御した。一方で、第2記録再生層群13Bから第1記録再生層群13Aの切換時では、記録パワーを減少させるようにした。具体的に、第2記録再生層群13Bに関しては、光入射面に最も近いL9記録再生層14Jの記録パワーを22.0mWに設定し、最も奥側のL4記録再生層14Eが30.0mWとなるように、順番に記録パワーを増加させた。一方、第1記録再生層群13Aにおける光入射面に最も近いL3記録再生層14Dでは、L4記録再生層14Eの記録パワーよりも小さい22.5mWに設定し、最も奥側のL0記録再生層14Aが30.0mWとなるように、順番に記録パワーを増加させた。即ち、記録パワーに関しては、記録再生層群14の積層反射率と反対に相関させるようにした。また、記録信号の線密度は25GBとし、記録スピードはBD1x(36Mbps)とした。
【0121】
なお、比較例の多層光記録媒体では、各記録再生層の特性に合わせて、略同じ記録パワーとなるように適宜制御した。
【0122】
このようにして記録した信号を、実施例と比較例で同じ再生パワーとなる3.0mWで再生した際の、再生信号の評価結果を図13に示す。
【0123】
この結果から分かるように、実施例の多層光記録媒体10と比較例の多層光記録媒体で、Jitterに関して遜色ない結果が得られることが分かる。特に、各記録再生層群13A、13Bの境界に位置するL4記録再生層14EやL3記録再生層14Dも、実用に耐えうる信号品質が得られることが分かる。特に、L4記録再生層14Eについては、設計手法で説明したとおり、実質的に評価可能な下限に近づくまで積層反射率を低下させているので反射光量が少ない。それにも関わらず、フォーカス、トラッキングサーボは安定しており、Jitterを含めた信号特性も、他の記録再生層と比較して大幅な劣化は認められない。また、光入射面の奥側の記録再生層群(L0〜L3記録再生層14A〜14D)については、比較例よりも、実施例の方が信号品質が良好になることも分かる。
【0124】
次に、この実施例と比較例について、最も共焦点クロストークの影響が顕著となる最も奥のL0記録再生層14Aについて、1周に亘って記録した際の信号写真を図14に示す。
【0125】
比較例の写真(A−L0)では、1周の記録信号において共焦点クロストークによる反射率の変動が顕著に観測される。この為、図13のグラフにおいても、比較例ではL0記録再生層のJitter特性が悪化していることが分かる。
【0126】
一方、実施例の写真(B−L0)となるL0記録再生層14Aでは、比較例で観測されるような反射率変動が大幅に抑制されていることが分かる。とりわけ、図13のグラフにおいても、光検出器732への反射光量が小さいにも関わらず、同じ再生パワーでJitter特性が改善していることが分かる。
【0127】
以上、本実施形態では、記録再生層が10〜20層であって、同じ特性の記録再生層で構成される記録再生層群が2〜3群で構成される場合について説明したが、本発明はこれに限られない。記録再生層が6層以上となる場合には、本発明を適用することで設計負担が大幅に軽減される。記録再生層が8層以上となる場合には、設計負担が一層大幅に軽減される。この際、少なくとも1つの記録再生層群(特に光入射面に最も近い記録再生層群)は、記録再生層を4層以上有するようにすることで、積層数を増大させることができる。また、少なくとも2つの記録再生層群(特に光入射面に最も近い記録再生層群と、2番目に近い記録再生層群)については、記録再生層を共に2層以上有することが好ましい。より望ましくは、少なくとも2つの記録再生層群(特に光入射面に最も近い記録再生層群と、2番目に近い記録再生層群)については、記録再生層を共に3層以上有することが好ましい。
【0128】
また、本発明では、評価機の制限、例えば球面収差補正範囲や、レーザーパワー等が許す限り、記録再生層の積層数を増やす事が可能であり、更に評価機上の制限に応じて、記録再生層群の数を4群以上に増やす事も可能である。
【0129】
更に、本実施形態では2種の膜厚となる中間層を採用する場合を示したが、本発明はこれに限定されず、中間層の厚みは適宜設定すれば良い。例えば、反射率変動の影響が、評価機で許される範囲である限り、中間層の膜厚を交互ではなく、記録再生層群内では同じにしても良い(第5実施形態参照)。この場合にも、切り替え位置の層間迷光の影響を低減させる為に、記録再生層群が切り替わる位置のみは、中間層の膜厚を大きく設定する事が望ましい。更に、中間層として複数の膜厚が設定されている場合は、その中の最大の膜厚を、記録再生層群の間に配置される中間層の膜厚に設定することが好ましい。
【0130】
なお、既に第4実施形態でも説明したが、2種類の膜厚の中間層を交互に配置する場合であって、記録再生層群を3群以上構成する際は、入射面側から2番目に近い記録再生層群以降で、少なくとも最も入射面側から遠い記録再生層群以外の各記録再生層群について記録再生層数は各々偶数層とすることが好ましい。このようにすると、記録再生層群が切り替わる中間層の膜厚を、常に厚い膜厚にすることができる。
【0131】
なお、本発明の多層光記録媒体は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の多層光記録媒体は、各種規格の光記録媒体に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0133】
10 多層光記録媒体
11 カバー層
12 支持基板
13A、13B 第1、第2記録再生層群
14A−14J L0−L9記録再生層
16A−16I 第1−第9中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図13
図14