特許第5761013号(P5761013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761013
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】アキュムレータ
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20150723BHJP
   F25B 43/02 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   F25B43/00 E
   F25B43/02 J
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-288603(P2011-288603)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137164(P2013-137164A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金澤 友佳子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 達也
(72)【発明者】
【氏名】下田 順一
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−060172(JP,U)
【文献】 実開平01−120065(JP,U)
【文献】 実開昭60−028370(JP,U)
【文献】 特開2004−309029(JP,A)
【文献】 実開昭60−180969(JP,U)
【文献】 実開昭60−165779(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0016887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
F25B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍装置(1)に設けられるアキュムレータ(80)であって、
上部に開口(92b)が形成されて内部空間(S)に冷媒が流入し、前記内部空間に液冷媒が貯留されるケーシング(81)と、
ガス冷媒を吸い込む吸込口(83b)が形成され、折り返し部(85)と貫通部(86)とを有し、前記吸込口が前記ケーシングの前記内部空間の上部に位置し、前記折り返し部が前記ケーシングの前記内部空間の下部で折り返されて前記貫通部が前記開口を介して前記ケーシングを貫通する出口管(83)と、
を備え、
前記折り返し部には、第1油戻し穴(85a)が形成されており、
前記折り返し部と前記貫通部との高さ方向における間には、前記第1油戻し穴よりも穴径の大きな第2油戻し穴(87a)が形成されており、
前記第2油戻し穴の高さ位置が、前記吸込口よりも低い位置にあり、且つ、前記冷凍装置の定常運転時に前記ケーシングの前記内部空間に貯留される液冷媒の最大の液面レベルである最大定常時液面レベルより高い位置にあり、且つ、前記冷凍装置の起動運転及びデフロスト運転時において前記ケーシングの前記内部空間に貯留される液冷媒の液面レベルである過渡時液面レベルよりも低い位置にある、
アキュムレータ。
【請求項2】
前記最大定常時液面レベルは、最も前記ケーシングの前記内部空間に液冷媒が溜まる温調条件において、前記冷凍装置の起動運転及びデフロスト運転を除く定常運転が行われる場合の液冷媒の液面レベルである、
請求項1に記載のアキュムレータ。
【請求項3】
前記最大定常時液面レベルは、冷媒回路に使用される冷媒量が最も多い場合の、前記冷凍装置の起動運転及びデフロスト運転を除く定常運転における液冷媒の液面レベルである、
請求項1又は2に記載のアキュムレータ。
【請求項4】
前記第2油戻し穴は、前記冷凍装置の起動運転及びデフロスト運転を除く定常運転において、前記出口管を流れる冷媒の圧力と前記ケーシングの前記内部空間の圧力とのバランスをとる、
請求項1〜のいずれか1項に記載のアキュムレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置や給湯装置等の冷凍装置には、アキュムレータが設けられているものがある。アキュムレータは、気液分離機能を有しており、圧縮機への液冷媒の流入を抑制する機能がある。
【0003】
ここで、冷凍装置においては、一般的に、圧縮機内に溜められている潤滑油の一部が、圧縮要素において圧縮されたガス冷媒と共に圧縮機外へと吐出される油上がりの問題がある。そして、アキュムレータを有する冷凍装置では、ガス冷媒と共に圧縮機外へと吐出された潤滑油は、アキュムレータ内の下部に溜まる現象が生じている。
【0004】
よって、このようなアキュムレータでは、特許文献1(特開2008−106964号公報)に開示のように、ガス冷媒を圧縮機へと導くための導出管の下部に、潤滑油が圧縮機へと戻すことができる潤滑油戻し穴が形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、圧縮機を低速運転すると、潤滑油戻し穴を介してアキュムレータ内に溜められた液冷媒が圧縮機へと戻されることが懸念される。このため、圧縮機の湿り運転が生じる虞がある。そこで、湿り運転を抑制するために、例えば、潤滑油戻し穴を小さくしたとすると、油上がりが多い場合に、潤滑油戻し穴が小さいため、十分な量の潤滑油が圧縮機に戻らず、圧縮機の保護が確実にできないことが懸念される。よって、このような場合には、より速やかに潤滑油を圧縮機に戻すことが必要になると考えられる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、さまざまな状況下においても、潤滑油を極力早く流出させることができるアキュムレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点に係るアキュムレータは、冷凍装置に設けられるアキュムレータである。本発明の第1観点に係るアキュムレータは、ケーシングと、出口管とを備える。ケーシングは、上部に開口が形成されて内部空間に冷媒が流入し、内部空間に液冷媒が貯留される。出口管は、ガス冷媒を吸い込む吸込口が形成され、折り返し部と貫通部とを有する。吸込口はケーシングの内部空間の上部に位置し、折り返し部がケーシングの内部空間の下部で折り返されて貫通部が開口を介してケーシングを貫通する。折り返し部には、第1油戻し穴が形成されている。折り返し部と貫通部との高さ方向における間には、第1油戻し穴よりも穴径の大きな第2油戻し穴が形成されている。第2油戻し穴の高さ位置が、吸込口よりも低い位置にあり、且つ、冷凍装置の定常運転時にケーシングの内部空間に貯留される液冷媒の最大の液面レベルである最大定常時液面レベルより高い位置にあり、且つ、冷凍装置の起動運転及びデフロスト運転時においてケーシングの内部空間に貯留される液冷媒の液面レベルである過渡時液面レベルよりも低い位置にある
【0008】
ここで、圧縮機構を低速運転する場合を考慮して、例えば、第1油戻し穴を小さくしたとすると、油上がりが多い場合に、十分な量の潤滑油が圧縮機構に戻らず、圧縮機構の保護が確実にできないことが懸念される。よって、このような場合に対応するために、本実施形態では、出口管に、第1油戻し穴とは別の第2油戻し穴を形成している。この第2油戻し穴は、冷凍装置の定常運転時にケーシングの内部空間に貯留される液冷媒の最大の液面レベルである最大定常時液面レベルよりも高い位置に位置するように形成されている。よって、定常運転時においては、第1油戻し穴を介して潤滑油を流出させることができ、最大定常時液面レベルを超えるような場合には、第1油戻し穴と第2油戻し穴とにより、潤滑油を流出させることができる。このように、本実施形態では、さまざまな状況下においても、潤滑油を極力早く流出させることができる。
【0009】
ここでは、定常運転時よりも多くアキュムレータの内部空間に液冷媒が溜まると考えられる起動運転及びデフロスト運転における、アキュムレータの内部空間に貯留される液冷媒の液面レベルを、過渡時液面レベルとしている。すなわち、過渡時液面レベルは、最大定常時液面レベルよりも高い位置にある。
【0010】
本発明では、最大定常時液面レベルを超えて過渡時液面レベルに達した場合であっても、第2油戻し穴が、過渡時液面レベルよりも低い位置に形成されているので、第1油戻し穴及び第2油戻し穴によって、速やかに潤滑油を流出させることができる。
【0011】
本発明の第2観点に係るアキュムレータは、本発明の第1観点に係るアキュムレータであって、最大定常時液面レベルは、最もケーシングの内部空間に液冷媒が溜まる温調条件において、冷凍装置の起動運転及びデフロスト運転を除く定常運転が行われる場合の、液冷媒の液面レベルである。
【0012】
本発明では、第2油戻し穴を、定常運転において最もケーシングの内部空間に液冷媒が溜まる温調条件、における液冷媒の液面レベルよりも高い位置に形成している。よって、定常運転時においては、第1油戻し穴により、速やかに潤滑油を流出させることができる。
【0013】
本発明の第3観点に係るアキュムレータは、本発明の第1観点又は第2観点に係るアキュムレータであって、最大定常時液面レベルは、冷媒回路に使用される冷媒量が最も多い場合の、冷凍装置の起動運転及びデフロスト運転を除く定常運転における液冷媒の液面レベルである。
【0014】
本発明では、第2油戻し穴を、冷媒回路に使用される冷媒量が最も多い場合の定常運転における液冷媒の液面レベルよりも高い位置に形成している。よって、定常運転時においては、第1油戻し穴により、速やかに潤滑油を流出させることができる。
【0015】
発明の第4観点に係るアキュムレータは、本発明の第1観点〜第3観点のいずれかに係るアキュムレータであって、第2油戻し穴は、冷凍装置の起動運転及びデフロスト運転を除く定常運転において、出口管を流れる冷媒の圧力とケーシングの内部空間の圧力とのバランスをとる。
【0016】
本発明では、第2油戻し穴を、その高さ位置が最大定常時液面レベルよりも高い位置にあるように形成している。よって、定常運転時において、第2油戻し穴を均圧穴として機能させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1観点に係るアキュムレータでは、さまざまな状況下においても、潤滑油を極力早く流出させることができる。
【0018】
また、第1油戻し穴及び第2油戻し穴により、速やかに潤滑油を流出させることができる。
【0019】
本発明の第2観点及び第3観点に係るアキュムレータでは、第1油戻し穴により、速やかに潤滑油を流出させることができる。
【0020】
本発明の第4観点に係るアキュムレータでは、定常運転時において、第2油戻し穴を均圧穴として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るアキュムレータが採用された冷凍装置の一例としての空気調和装置の概略構成図。
図2】アキュムレータの概略構成図。
図3】空気調和装置の定常運転時における定常時液面レベルを示すためのアキュムレータの概略構成図。
図4】空気調和装置のデフロスト運転及び起動運転時における過渡時液面レベルを示すためのアキュムレータの概略構成図。
図5】制御部の制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明に係るアキュムレータ80が設けられる冷凍装置の一例としての空気調和装置1の一実施形態について説明する。尚、以下の実施形態は、本発明の一つの具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
(1)空気調和装置1の構成
図1は、本発明の一実施形態に係るアキュムレータ80が採用された冷凍装置の一例としての空気調和装置1の概略構成図である。
【0024】
空気調和装置1は、冷房運転や暖房運転を実行可能な空気調和装置であり、室外ユニット20と、室内ユニット40と、室外ユニット20と室内ユニット40とを接続するための液冷媒連絡配管71及びガス冷媒連絡配管72と、を備えている。室外ユニット20と、室内ユニット40と、液冷媒連絡配管71及びガス冷媒連絡配管72とが接続されることにより、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。また、空気調和装置1を構成する各種の機器は、制御部9(図5を参照)によって制御される。
【0025】
(1−1)室内ユニット40
まず、室内ユニット40の構成について説明する。室内ユニット40は、冷媒回路10の一部を構成する室内側冷媒回路40aを有している。室内側冷媒回路40aは、主として、室内熱交換器42を有している。室内熱交換器42は、クロスフィン型の熱交換器であり、外を通過する室内空気と内部を流れる冷媒との間で熱交換を行わせる。これにより、室内熱交換器42は、冷房運転時には、冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時には、冷媒の凝縮器として機能して室内空気を加熱する。
【0026】
室内ユニット40は、さらに、室内ファン44を有している。室内ファン44は、回転することにより室内空気を取り込んで室内熱交換器42に送風し、室内熱交換器42における冷媒と室内空気との熱交換を促進する。
【0027】
(1−2)室外ユニット20
室外ユニット20は、冷媒回路10の一部を構成する室外側冷媒回路20aを有している。室外側冷媒回路20aは、主として、圧縮機構21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張機構24と、アキュムレータ80と、液側閉鎖弁26と、ガス側閉鎖弁27と、圧縮機構付属容器28と、これらの機器を接続する室外ユニット冷媒配管31と、を有している。さらに、室外ユニット20は、室外ファン35も有している。
【0028】
(1−2−1)圧縮機構21
圧縮機構21は、圧縮機構付属容器28を介してガス冷媒を吸入し、吸入したガス冷媒を、冷凍サイクルにおける高圧まで圧縮して吐出側から吐出する。圧縮機構21は、圧縮機構ケーシング21a内に、圧縮要素駆動モータ21bと、駆動軸21cと、圧縮要素21dとが収容された密閉式構造を有している。圧縮要素駆動モータ21bは、駆動軸21cを介して圧縮要素21dを駆動する。
【0029】
圧縮機構21の圧縮機構ケーシング21a内の下方部分には、圧縮要素21d等の潤滑性を良好に保つための潤滑油が貯留されている。ここで、圧縮機構付属容器28とは、液冷媒を貯留する機能を有する容器である。
【0030】
(1−2−2)四路切換弁22
四路切換弁22は、冷媒回路10内における冷媒の流れ方向を切り換える。四路切換弁22は、冷房運転時に、圧縮機構21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とを接続すると共に圧縮機構21の吸入側とガス側閉鎖弁27とを接続する。つまり、冷房運転時には、図1の実線状態に制御されている。また、四路切換弁22は、暖房運転時に、圧縮機構21の吐出側とガス側閉鎖弁27とを接続すると共に圧縮機構21の吸入側と室外熱交換器23のガス側とを接続する。つまり、暖房運転時には、図1の点線状態に制御されている。
【0031】
(1−2−3)室外熱交換器23
室外熱交換器23は、外を通過する室外空気と内部を流れる冷媒との間で熱交換を行わせる。本実施形態では、室外熱交換器23として、いわゆる積層型の熱交換器が用いられている。室外熱交換器23は、冷房運転時には、冷媒の凝縮器として機能し、暖房運転時には、冷媒の蒸発器として機能する。尚、室外ファン35が、この室外熱交換器23に対面するように配置されている。室外ファン35は、回転することにより室外空気を取り込んで室外熱交換器23に送風し、室外熱交換器23と室外空気との熱交換を促進する。
【0032】
(1−2−4)室外膨張機構24
室外膨張機構24は、冷媒圧力や冷媒流量の調節を行うために、室外熱交換器23と液側閉鎖弁26との間の室外ユニット冷媒配管31に配置される。室外膨張機構24は、制御部9の指令に応じて開度が調整される電動弁である。
【0033】
(1−2−5)閉鎖弁26,27及び冷媒連絡配管71,72
液側閉鎖弁26及びガス側閉鎖弁27は、手動で開け閉めする手動弁であり、それぞれ、液冷媒連絡配管71及びガス冷媒連絡配管72に接続されている。液冷媒連絡配管71は、室内ユニット40の室内熱交換器42の液側と室外ユニット20の液側閉鎖弁26との間を接続している。ガス冷媒連絡配管72は、室内ユニット40の室内熱交換器42のガス側と室外ユニット20のガス側閉鎖弁27との間を接続している。
【0034】
(2)アキュムレータ80の詳細構成
図2は、アキュムレータ80の概略構成図である。図3は、空気調和装置1の定常運転時における定常時液面レベルを示すためのアキュムレータ80の概略構成図である。図4は、空気調和装置1のデフロスト運転及び起動運転時における過渡時液面レベルを示すためのアキュムレータ80の概略構成図である。
【0035】
アキュムレータ80は、図1に示すように、圧縮機構21の冷媒流れ上流側に配置され、圧縮機構21に吸入される冷媒の気液分離や一時的な貯留を行うことが可能な容器である。
【0036】
アキュムレータ80は、図2に示すように、ケーシング81と、入口管82と、出口管83とを備えている。
【0037】
(2−1)ケーシング81
ケーシング81は、上下方向に延びる縦円筒形状の容器であり、主として、円筒状の胴部91と、胴部91の上下方向の両端を閉じるお椀形状の上椀部92及び下椀部93と、を有している。また、ケーシング81の内部には、四路切換弁22を通過した冷媒が流入する内部空間Sが形成されている。ケーシング81は、ケーシング81の内部空間Sにおいて液冷媒が下方部分に貯留されることによって、気液二相状態の冷媒がガス冷媒と液冷媒とに分離されるように、構成されている。
【0038】
ケーシング81には、その上椀部92に、複数(本実施形態では、2つ)の開口92a,92bが形成されている。開口92aには、入口管82が挿入され、入口管82の空洞部82aとケーシング81の内部空間Sとを連通させている。開口92bには、出口管83が挿入され、出口管83の空洞部83aとケーシング81の内部空間Sとを連通させている。
【0039】
(2−2)入口管82
入口管82は、室外ユニット連絡配管31の四路切換弁22とアキュムレータ80との間の部分に接続される配管である。入口管82の内部に形成される空洞部82aは、冷媒が流れる冷媒流路を形成している。入口管82の一端は、冷媒をケーシング81の内部空間Sに流入させるための流入口82bが形成されている。入口管82は、開口92aを介してケーシング81の上椀部92を貫通しており、流入口82bがケーシング81の内部空間Sの上部に位置するように配置されている。
【0040】
(2−3)出口管83
出口管83は、室外ユニット連絡配管31のアキュムレータ80と圧縮機構付属容器28との間の部分に接続される配管である。出口管83の内部に形成される空洞部83aは、冷媒が流れる冷媒流路を形成している。出口管83の一端は、ケーシング81の内部空間Sに存在するガス冷媒を出口管83に吸い込むための吸込口83bが形成されている。出口管83は、吸込口83bがケーシング81の内部空間Sの上部に位置するように配置されている。
【0041】
出口管83は、略J字形状を有しており、吸込口83bが形成される吸込部84と、吸込部84に接続される湾曲形状の折り返し部85と、開口92bを介してケーシング81の上椀部92を貫通する貫通部86と、折り返し部85と貫通部86とを接続する接続部87と、を有している。折り返し部85は、出口管83の折り返される部分であり、ケーシング81の内部空間Sの下部に位置している。
【0042】
出口管83は、折り返し部85に、第1油戻し穴85aが形成されるように構成されている。第1油戻し穴85aは、ケーシング81の内部空間Sの下部に液冷媒と共に貯留された潤滑油を圧縮機構21へ戻すための穴である。
【0043】
ここで、従来、圧縮機構(圧縮要素駆動モータ)を低速で運転すると、第1油戻し穴を介してアキュムレータの内部空間に貯留された液冷媒が圧縮機構へと戻される虞がある。このため、圧縮機構の湿り運転が生じることが懸念される。
【0044】
そこで、本実施形態では、第1油戻し穴85aの直径を従来の一般的な油戻し穴よりも小さくしている。具体的には、本実施形態の第1油戻し穴85aの直径は、例えば、0.7mmである。
【0045】
一方、圧縮機構の湿り運転を抑制するために第1油戻し穴を小さくすると、例えば、潤滑油に液冷媒が寝込んでいる状態において起動運転が行われる場合など油上がりが多い場合に、十分な量の潤滑油が圧縮機構に戻らず、圧縮機構の保護が確実にできないことが懸念される。よって、このような場合には、より速やかに潤滑油を圧縮機構に戻すことが必要である。
【0046】
そこで、本発明では、出口管83に第2油戻し穴87aを形成している。以下、第2油戻し穴87aについて説明する。
【0047】
(3)第2油戻し穴87a
第2油戻し穴87aは、出口管83の接続部87に形成されている。すなわち、第2油戻し穴87aは、出口管83において、折り返し部85と貫通部86との高さ方向における間の部分に形成されている。
【0048】
第2油戻し穴87aは、その高さ位置が、吸込口83bよりも低い位置にあるように形成されている。すなわち、第2油戻し穴87aは、一般的にアキュムレータの出口管に形成される均圧穴とは異なる穴である。また、第2油戻し穴87aは、図3に示すように、定常時液面レベルよりも高い位置にあるように形成されている。
【0049】
ここで、定常時液面レベルとは、空気調和装置1の定常運転時にケーシング81の内部空間Sに貯留される液冷媒の液面の高さ位置である。本実施形態では、定常時液面レベル
の最大となる最大定常時液面レベルを決定している。つまり、最大定常時液面レベルとは、空気調和装置1の定常運転時にケーシング81の内部空間Sに貯留される液冷媒の最大の液面レベルである。そして、その決定した最大定常時液面レベルよりも高い位置に、第2油戻し穴87aを形成している。尚、最大定常時液面レベルとは、具体的には、空気調和装置1の定常運転時に最もケーシング81の内部空間Sに液冷媒が溜まると考えられる条件(例えば、外気等の温調条件)における、その液冷媒の液面レベルである。条件としては、例えば、冷媒回路10内において、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23又は室内熱交換器42で蒸発しきれなかった冷媒が多く存在するような温調条件が挙げられる。より具体的には、例えば、暖房運転を行っている場合の外気の温度が低い温度であるような条件が挙げられる。
【0050】
ここで、定常運転とは、室内ユニット40の負荷に応じて、空気調和装置1の各種機器の動作を制御する運転のことであり、暖房運転や冷房運転が含まれる。尚、定常運転には、デフロスト運転や起動運転は含まれない。
【0051】
また、第2油戻し穴87aは、その高さ位置が、過渡時液面レベルよりも低い位置となるように、形成されている。過渡時液面レベルとは、空気調和装置1のデフロスト運転及び起動運転時において、ケーシング81の内部空間Sに貯留される液冷媒の液面の高さ位置である。本実施形態では、定常運転時よりもアキュムレータ80の内部空間Sに液冷媒が多く溜まると考えられる起動運転及びデフロスト運転を過渡時として、その過渡時における、アキュムレータ80の内部空間Sに貯留される液冷媒の液面レベルを、過渡時液面レベルとしている。すなわち、過渡時液面レベルは、最大定常時液面レベルよりも高い位置にある。
【0052】
尚、第2油戻し穴87aは、第1油戻し穴85aを従来よりも小さくしたとしても過渡時において第1油戻し穴85aと第2油戻し穴87aとにより潤滑油を圧縮機構21に十分に戻すことができる直径、を有している。
【0053】
(4)制御部9
図5は、制御部9の制御ブロック図である。
【0054】
制御部9は、マイクロコンピュータやメモリ等から成る。制御部9は、空気調和装置1を構成する各種の機器を制御することによって、空気調和装置1における各種の運転を実行する。各種の運転には、定常運転としての冷房運転や暖房運転、デフロスト運転、起動運転等がある。
【0055】
制御部9は、空気調和装置1に設けられる複数のセンサからそれぞれデータを受信し、これらのデータを、各運転において、圧縮機構21や室外膨張機構24、四路切換弁22、室外ファン35、室内ファン44等の動作を制御するための情報として用いている。尚、複数のセンサの一部として、圧縮機構21に吸入される冷媒の温度を検知するための吸入温度センサ71が挙げられる。
【0056】
以下、制御部9によって実行される空気調和装置1の各種の運転について説明する。
【0057】
(5)各種運転
(5−1)冷房運転
冷房運転時は、図1において、四路切換弁22を実線で示す状態に制御する。すなわち、四路切換弁22は、圧縮機構21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とを接続すると共に圧縮機構21の吸入側とガス側閉鎖弁27とを接続する。また、室外膨張機構24の開度を調整する。冷房運転時には、室外熱交換器23が冷媒の凝縮器として機能し、室内熱交換器42が冷媒の蒸発器として機能する。
【0058】
このような状態の冷媒回路10において、低圧のガス冷媒は、圧縮機構21に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機構21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁22を通じて、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた高圧の冷媒は、そこで室外空気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23において凝縮した高圧の冷媒は、室外膨張機構24に送られる。室外膨張機構24に流入した冷媒は、室外膨張機構24によって低圧に減圧される。室外膨張機構24で減圧された低圧の冷媒は、液側閉鎖弁26及び液冷媒連絡配管71を通って、室内熱交換器42に入る。室内熱交換器42に入った低圧の冷媒は、そこで室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内空気は冷却される。室内熱交換器42において蒸発した低圧の冷媒は、ガス冷媒連絡配管72、ガス側閉鎖弁27及び四路切換弁22を通じて、アキュムレータ80に流入する。アキュムレータ80に流入した冷媒は、液冷媒が分離されて圧縮機構付属容器28に送られる。尚、例え、アキュムレータ80で液冷媒が完全に分離されなかったとしても、圧縮機構付属容器28で液冷媒を溜めることができる。アキュムレータ80及び圧縮機構付属容器28において、液冷媒が除かれた低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機構21に吸入される。
【0059】
(5−2)暖房運転
暖房運転時は、図1において、四路切換弁22を点線で示す状態に制御する。すなわち、四路切換弁22は、圧縮機構21の吐出側とガス側閉鎖弁27とを接続すると共に圧縮機構21の吸入側と室外熱交換器23のガス側とを接続する。また、室外膨張機構24の開度を調整する。暖房運転時には、室外熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能し、室内熱交換器42が冷媒の凝縮器として機能する。
【0060】
このような状態の冷媒回路10において、低圧のガス冷媒は、圧縮機構21に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機構21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁22、ガス側閉鎖弁27及びガス冷媒連絡配管72を通って、室内熱交換器42に入る。室内熱交換器42に入った高圧の冷媒は、そこで室内空気と熱交換を行って凝縮する。これにより、室内空気は加熱される。室内熱交換器42で凝縮した高圧の冷媒は、液冷媒連絡配管71及び液側閉鎖弁26を通って、室外膨張機構24に至る。室外膨張機構24に流入した冷媒は、室外膨張機構24によって低圧に減圧され、その後、室外熱交換器23に入る。室外熱交換器23を通る冷媒は、室外ファン35によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23で蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁22を通じて、アキュムレータ80に流入する。アキュムレータ80に流入した冷媒は、液冷媒が分離されて圧縮機構付属容器28に送られる。尚、例え、アキュムレータ80で液冷媒が完全に分離されなかったとしても、圧縮機構付属容器28で液冷媒を溜めることができる。アキュムレータ80及び圧縮機構付属容器28において、液冷媒が除かれた低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機構21に吸入される。
【0061】
(5−3)デフロスト運転
デフロスト運転とは、暖房運転時において、室外熱交換器23に付着した霜や氷を溶かすために、暖房サイクルの状態(図1の点線に示す状態)から冷房サイクルの状態(図1の実線に示す状態)に切り換える運転である。
【0062】
デフロスト運転時は、図1において、四路切換弁22を実線で示す状態に制御する。すなわち、デフロスト運転時は、四路切換弁22を、冷房運転時と同様の状態に制御する。また、デフロスト運転時は、室外ファン35及び室内ファン44を停止状態に制御する。
【0063】
この冷媒回路10の状態において、低圧のガス冷媒は、圧縮機構21に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機構21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁22を経由して室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた高圧の冷媒は、室外熱交換器23を通過する際に、室外熱交換器23に付着した霜や氷と熱交換を行って放熱した高圧の液冷媒になると共に、室外熱交換器23に付着した霜や氷を溶かす。室外熱交換器23を通過した冷媒は、室外膨張機構24によって減圧されて低圧の冷媒となり、液側閉鎖弁26及び液冷媒連絡配管71を経由して室内ユニット40に送られる。室内ユニット40に送られた低圧の冷媒は、室内熱交換器42に送られる。室内熱交換器42に送られた低圧の冷媒は、室内熱交換器42で室内空気と熱交換を行って蒸発されて低圧のガス冷媒となる。低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡配管72及びガス側閉鎖弁27を経由して室外ユニット20に送られ、四路切換弁22を経由してアキュムレータ80に流入する。尚、室内ファン44が停止しているために室内熱交換器42で蒸発されなかった低圧の液冷媒がある場合には、その液冷媒は、アキュムレータ80に溜められることになる。アキュムレータ80に流入した冷媒は、液冷媒が分離されて圧縮機構付属容器28に送られる。尚、例え、アキュムレータ80で液冷媒が完全に分離されなかったとしても、圧縮機構付属容器28で液冷媒を溜めることができる。アキュムレータ80及び圧縮機構付属容器28において、液冷媒が除かれた低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機構21に吸入される。
【0064】
(5−4)起動運転
起動運転とは、空気調和装置1の、停止している停止状態から開始される運転であり、開始後所定時間が経過するまで行われる運転である。起動運転では、定常運転時に比べて低い回転数で、圧縮機構21が運転される。尚、ここでの所定時間とは、予め制御部9に記憶されている任意の時間である。
【0065】
(6)特徴
(6−1)
本実施形態では、圧縮機構21を低速運転する場合を考慮して、出口管83の折り返し部85に形成される第1油戻し穴85aの直径を小さくしている。これにより、圧縮機構21に液冷媒が戻されることによる圧縮機構21の湿り運転を抑制できる。
【0066】
ここで、上述したように、圧縮機構の湿り運転を抑制するために第1油戻し穴を従来よりも小さくしたとすると、潤滑油に液冷媒が寝込んでいる状態において起動運転を行う場合など油上がりが多い場合に十分な量の潤滑油が圧縮機構に戻らず、圧縮機構の保護が確実にできないことが懸念される。よって、このような場合には、速やかに潤滑油を圧縮機に戻すことが必要になると考えられる。
【0067】
そこで、本実施形態では、出口管83において、第1油戻し穴85aとは別に、第2油戻し穴87aを形成している。第2油戻し穴87aは、最大定常時液面レベルよりも高い位置に形成されている。また、第2油戻し穴87aは、過渡時液面レベルよりも低い位置に形成されている。すなわち、本実施形態では、第2油戻し穴87aの高さ位置を、最大定常時液面レベルを超えたときに使用できるような位置に選定している。
【0068】
以上のように、本実施形態では、定常運転時においては、第1油戻し穴85aにより、潤滑油を速やかに圧縮機構21へと戻すことができ、起動運転時(特に、潤滑油に液冷媒が寝込んでいる状態において行われる起動運転時)やデフロスト運転時(過渡時)においては、第1油戻し穴85a及び第2油戻し穴87aにより、潤滑油を速やかに圧縮機構21へと戻すことができる。すなわち、さまざまな状況下においても、潤滑油をアキュムレータ80の内部空間Sから極力早く流出させることができる、
(6−2)
本実施形態では、第2油戻し穴87aが最大定常時液面レベルよりも高い位置に形成されていることにより、定常運転時においては、第1油戻し穴85aのみで潤滑油を戻すことができる。よって、定常運転時においては、第2油戻し穴87aを、出口管83の空洞部83aを流れる冷媒の圧力と、ケーシング81の内部空間Sの圧力とのバランスをとる均圧穴として機能させることができる。
【0069】
(7)変形例
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、上記の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0070】
(7−1)変形例A
上記実施形態では、最大定常時液面レベルとは、空気調和装置1の定常運転時において、最もケーシング81の内部空間Sに液冷媒が溜まる温調条件における液冷媒の液面の高さ位置であると説明した。
【0071】
しかし、最大定常時液面レベルとしては、その他にも、例えば、冷媒回路10に使用される冷媒量が最も多い場合において定常運転が行われるときのケーシング81の内部空間Sに貯留される液冷媒の液面レベル、が挙げられる。さらに、最大定常時液面レベルとしては、例えば、冷媒回路10に使用される冷媒量が最も多い場合であって、最もケーシング81の内部空間Sに液冷媒が溜まる温調条件において定常運転が行われる場合の、ケーシング81の内部空間Sに貯留される液冷媒の液面レベル、が挙げられる。
【0072】
(7−2)変形例B
上記実施形態では、起動運転とは、開始後所定時間が経過するまで行われる運転であると説明したが、これに限られるものではない。例えば、起動運転は、圧縮機構21から吐出された冷媒の圧力及び/又は温度を監視し、これらの圧力や温度が所定圧力や所定温度になるまで行われる運転であってもよい。
【0073】
(7−3)変形例C
上記実施形態では、空気調和装置1に設けられるアキュムレータ80を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。例えば、本発明は、ヒートポンプ式の給湯装置に適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明では、空気調和装置等の冷凍装置に設けられるアキュムレータに種々適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 空気調和装置(冷凍装置)
80 アキュムレータ
81 ケーシング
83 出口管
83b 吸込口
85 折り返し部
85a 第1油戻し穴
86 貫通部
87a 第2油戻し穴
92b 開口
S ケーシングの内部空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2008−106964号公報
図1
図2
図3
図4
図5