(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761041
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】放電管ランプを備えた光源装置
(51)【国際特許分類】
H05B 41/24 20060101AFI20150723BHJP
H05B 41/18 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
H05B41/24
H05B41/18
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-6902(P2012-6902)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-149366(P2013-149366A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】豊後 一
【審査官】
三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−146972(JP,A)
【文献】
特開2007−309958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 41/24
H05B 41/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管ランプ、前記放電管ランプにトリガ電圧を印加して放電を開始させるトリガ電源部及び放電を開始した前記放電管ランプの放電状態を維持するための放電維持電圧を前記放電管ランプに印加する放電維持電源を備え、前記放電管ランプの点灯と消灯を行なうランプ点灯部と、
前記ランプ点灯部の前記放電管ランプの点灯動作を制御するランプ点灯制御部を備えたメイン回路と、
前記ランプ点灯部及び前記メイン回路とは別途設けられ、前記メイン回路を介して前記放電管ランプのメンテナンス情報を記憶するとともに、前記放電管ランプの点灯時に発生する電磁波ノイズの影響を受けるサブ回路と、を備え、
前記メイン回路は前記サブ回路の動作を制御するサブ回路制御部も備え、前記サブ回路制御部は前記ランプ点灯部において前記放電管ランプにトリガ電圧が印加される際に前記サブ回路へ印加する電圧を遮断して前記サブ回路の動作を停止させるように構成されている放電管ランプを備えた光源装置。
【請求項2】
前記サブ回路制御部は、前記放電管ランプに前記トリガ電圧が印加される際に前記メイン回路と前記サブ回路の間の信号経路を遮断するように構成されている請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記サブ回路制御部は、前記放電管ランプにトリガ電圧を印加する際に前記ランプ点灯制御部が発するトリガ信号に基づいて前記サブ回路への電源電圧印加のオン/オフを切り替える電源スイッチを備えている請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記サブ回路制御部は、前記トリガ信号に基づいて前記メイン回路と前記サブ回路との間の信号経路の接続と遮断を切り替える信号スイッチをさらに備えている請求項3に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフの検出器や分光光度計、
原子吸光光度計などの分析装置における放電管ランプを備えた光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電管ランプは、電極間にかかる電圧により絶縁破壊を起こし、電流が流れる時に管内の気体が励起されることによる発光現象を利用するランプであり、代表的なものとしてキセノンランプや重水素ランプが挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。液体クロマトグラフの検出器や分光光度計などの装置では、これらのランプが一般的に使用されている。それらの装置では、放電管ランプの点灯時に放電管内の電極間にトリガ電圧を印加して絶縁破壊を起こした後、電極間の放電を維持するための電圧を印加するとともに電極間を流れる電流値が一定になるように定電流制御することで発光量を一定に制御して測定に用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−209418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放電管ランプを点灯させるために必要なトリガ電圧は、キセノンランプでは30kV程度、重水素ランプでは600V程度であるが、このような高電圧が印加される際には電磁波ノイズが発生することが知られており、回路基板が電磁波ノイズによって誤動作するという問題があった。
【0005】
放電管ランプの点灯時の電磁波ノイズは放電管ランプや放電管ランプに接続されているケーブル(ランプケーブル)から発生するため、装置内における放電管ランプ、ケーブル及び回路基板の配置について、放電管ランプやランプケーブルと回路基板との間に電磁シールド材を配置する、ケーブルをできる限り短くする、又は回路基板を放電管ランプやケーブルの周辺に配置しないといった制約を課すことにより、回路基板に対する電磁波ノイズの影響を防止する必要があった。
【0006】
装置内の基板構成上メイン回路基板とサブ回路基板が別々に存在する場合、各々は通常(信号)ケーブル接続されるが、この接続ケーブルは一般的に電磁波ノイズの影響を受け易い。したがって、サブ回路基板をランプケーブルの近傍に配置させる場合、電磁波ノイズによる誤動作が起きやすくなる。
ランプケーブルを長くすると大きな電磁波ノイズが発生してサブ回路の誤動作を発生させる原因になるため、サブ回路基板がランプケーブル等の近傍に配置された装置では放電管ランプの交換の際に放電管ランプを装置内部から引き出せるような構造にすることは困難であった。
【0007】
また、不揮発性メモリの搭載されたサブ回路を放電管ランプの直近に配置すると、不揮発性メモリへの制御信号が電磁波ノイズの影響で意図しない電圧に振れて、その記憶内容が書き換えられてしまうなどの不具合が発生するため、放電管ランプの通算点灯時間や点灯回数などの情報を記憶するサブ回路を交換可能部品(放電管ランプ)側にもたせるようにすることも困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、放電管ランプの点灯時に発生する電磁波ノイズがサブ回路に影響を与えないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる光源装置は、放電管ランプ、放電管ランプにトリガ電圧を印加して放電を開始させるトリガ電源部及び放電を開始した放電管ランプの放電状態を維持するための放電維持電圧を放電管ランプに印加する放電維持電源を備え、放電管ランプの点灯と消灯を行なうメイン回路と、ランプ点灯部及び前記メイン回路とは別途設けられたサブ回路と、を備え、メイン回路はサブ回路の動作を制御するサブ回路制御部も備え、サブ回路制御部はランプ点灯部において放電管ランプにトリガ電圧が印加される際にサブ回路へ印加する電圧を遮断してサブ回路の動作を停止させるように構成されているものである。
サブ回路とは、ランプの点灯動作を制御するメイン回路とは別の基板上に構成される回路基板をいう。サブ回路の一例として、不揮発性メモリを搭載させてランプの点灯回数などメンテナンスに関する情報をその回路基板に記憶していくものがある。
【0010】
本発明では、メイン回路に光源装置が電気的に接続されており、メイン回路とサブ回路との間の電気的な接続と遮断の切替えを行なうことができる接続切替え部をさらに備え、制御部は接続切替え部の動作も制御するものであり、放電管ランプにトリガ電圧を印加する際にはメイン回路とサブ回路の間の電気的接続を遮断するように構成されていることが好ましい。そうすれば、放電管ランプの点灯時に発生する電磁波ノイズによってサブ回路の誤動作(例えば、不揮発性メモリの記憶内容が書き換えられるなど)を防止することができる。
【0011】
好ましい実施例では、サブ回路制御部は、放電管ランプにトリガ電圧を印加する際にランプ点灯制御部が発するトリガ信号に基づいてサブ回路への電圧印加のオン/オフを切り替える電源スイッチを備えている。これにより、サブ回路制御部の構成を簡単なものにすることができる。
【0012】
さらに、サブ回路制御部は、トリガ信号に基づいて前記メイン回路とサブ回路との間の信号経路の接続と遮断を切り替える信号スイッチをさらに備えていることが好ましい。そうすれば、信号経路を通じてサブ回路側へ電磁波ノイズが入ることを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光源装置では、メイン回路がサブ回路の動作を制御するサブ回路制御部を備え、サブ回路制御部はランプ点灯部において放電管ランプにトリガ電圧が印加される際にサブ回路へ印加する電圧を遮断してサブ回路の動作を停止させるように構成されているので、高電圧であるトリガ電圧が放電管ランプに印加されて電磁波ノイズが発生する際にサブ回路基板への電力供給が停止され、放電管ランプ点灯時にサブ回路基板が誤動作することが防止される。したがって、放電管ランプやランプケーブルの周辺にサブ回路基板を設置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】放電管ランプを備えた装置の一実施例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】同実施例のランプ点灯部の一例を示す回路図である。
【
図3】同実施例の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図1における電源および信号経路の接続と遮断を示すブロック図である。
【
図5】
図4の例における信号波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
放電管ランプを備えた光源装置の一実施例について
図1を用いて説明する。
この光源装置は、放電管ランプを備えて、その点灯や消灯を行なうためのランプ点灯部2を備え、ランプ点灯部2の放電管ランプから発せられる光を利用して測定を行なう光源装置である。ランプ点灯部2の近傍に、ランプ点灯部2の放電管ランプの点灯時間や点灯回数などの情報(メンテナンス情報)を記憶しておく不揮発性メモリを備えたサブ回路4が設けられている。
【0016】
ランプ点灯部2における放電管ランプの点灯や消灯の動作とサブ回路4の動作はともにメイン回路6に設けられたランプ点灯制御部としての演算制御部8により制御される。演算制御部8は、例えばCPUにより構成されている。ランプ点灯部2とサブ回路4はメイン回路6を介して信号が送受信されるように構成されている。ランプ点灯部2のメンテナンス情報は演算制御部8を介してサブ回路4に入力されるようになっており、サブ回路4に入力されたメンテナンス情報はサブ回路4に搭載されている不揮発性メモリに記憶される。逆に、サブ回路4の不揮発性メモリに記憶されているメンテナンス情報は演算制御部8によって読み出され、例えば放電管ランプの点灯時間や点灯回数が所定の交換目安値に達している場合に放電管ランプの交換を促す表示を行なうなど、放電管ランプの管理などに用いられる。
【0017】
メイン回路6は演算制御部8のほかに、信号切替え部10及びサブ回路電源部12を備えている。信号切替え部10はサブ回路4と演算制御部8との間に電気的に接続されており、その信号経路の遮断と接続を切り替えるものである。サブ回路電源部12はサブ回路4が動作するための電源のオン・オフの切替えを行なうものである。信号切替え部10及びサブ回路電源部12はサブ回路制御部を構成している。信号切替え部10及びサブ回路電源部12には、ランプ点灯部2の放電管ランプを点灯する前に、放電管ランプの点灯開始の信号が演算制御部8から送信されるようになっており、信号切替え部10及びサブ回路電源部12はその信号によってサブ回路4と演算制御部8との間の信号経路を遮断するとともにサブ回路4の電源をオフに切り替えるように構成されている。
【0018】
ランプ点灯部2の具体的な構成の一例を
図2に示す。この例に示すランプ点灯部2は放電管ランプである重水素ランプ14を点灯させるものである。ランプ点灯部2は、ランプ14、ヒータ電源16、トリガ電源部18及び定電流電源部20を備えている。ヒータ電源部16は重水素ランプ14のヒータに電圧を印加して加熱するものである。トリガ電源部18は、重水素ランプ14の電極間に放電を起こさせるためのトリガ電圧を印加するためのものである。トリガ電源部18は電源22、コンデンサ24、トリガ抵抗26及びトリガスイッチ28を備えており、重水素ランプ14を点灯する際にトリガスイッチ28が切り替えられることでコンデンサ24に蓄電された電圧を重水素ランプ14に印加する。定電流電源部20は重水素ランプ14の電極に陽極電圧を印加するとともに、放電を開始した重水素ランプ14の電極間に放電維持電圧を印加する。
【0019】
演算制御部8はトリガ電源部18の動作を制御する。重水素ランプ14の点灯動作を開始する際は、重水素ランプ14のヒータが加熱されて点灯可能な状態となっており、トリガ電源部18のトリガスイッチ28はコンデンサ24にトリガ電圧を蓄電する回路を構成する状態になっている。演算制御部8がトリガスイッチ28を切り替える信号(トリガ信号)をトリガスイッチ28に与え、トリガスイッチ28が切り替えられて重水素ランプ14にコンデンサに蓄電されたトリガ電圧が印加される。
【0020】
図1の演算制御部8はトリガスイッチ28にトリガ信号を与える前に、
信号切替え部10及びサブ回路電源部12に対してサブ回路4と演算制御部8との間の信号経路を遮断するとともにサブ回路4の電源をオフにするよう信号を送信する。
【0021】
この実施例の装置における放電管ランプの点灯動作の詳細ついて
図3を
図1及び
図2とともに参照して説明する。
まず、放電管ランプ(重水素ランプ)14にヒータ電源16からヒータ電圧を印加するとともに定電流電源部20から陽極電圧を印加する(ステップS1)。このとき、トリガ電源部18では電源22がオンにされ、コンデンサ24に電圧が蓄電される。
【0022】
一定時間が経過した後、サブ回路4が動作しているか否かを確認し(ステップS2)、サブ回路4が動作していないことが確認された場合には、サブ回路電源部12によってサブ回路4の電源をオフにするとともに、メイン回路6(演算制御部8)とサブ回路4との間の信号経路を
信号切替え部10により遮断する(ステップS3)。サブ回路4が動作中である場合にはサブ回路4の動作が終了するまで待機し、サブ回路4の動作が終了した後で、サブ回路電源部12によってサブ回路4の電源をオフにするとともにメイン回路6とサブ回路4との間の信号経路を
信号切替え部10により遮断する(ステップS3)。
【0023】
サブ回路4の電源がオフの状態でかつメイン回路6とサブ回路4との間の信号経路が遮断されている状態で、トリガ電源部18のトリガスイッチ18を切り替えてコンデンサ24に蓄電されたトリガ電圧を放電管ランプ14に印加する(ステップS4)。放電管ランプ14にトリガ電圧を印加すると、高電圧による磁場によって電磁波ノイズが発生するが、サブ回路4は電源がオフの状態になっているとともにメイン回路6との間の信号経路も完全に遮断されているため、サブ回路4が誤動作を起こすこともなく、また不揮発性メモリの内容が書き換えられることもない。
【0024】
トリガ電圧の印加により放電管ランプ14の電極間で放電が開始された後、定電流電源部20からの放電維持電圧によってその放電が維持され、放電管ランプ14が点灯する(ステップS5)。正常に放電管ランプ14が点灯した場合には、サブ回路4の電源をオンにするとともにメイン回路6とサブ回路4との間の信号経路を接続し、サブ回路4を通常の作動状態に復帰させる(ステップS6)。そして、サブ回路4の不揮発性メモリに放電管ランプ14の点灯回数などの情報を記憶させる(ステップS7)。
【0025】
トリガ電圧を印加しても放電管ランプ14が正常に点灯しなかった場合(ステップS5)、予め設定された所定の回数までトリガ電圧の印加を繰り返し行ない(ステップS8)、なお放電管ランプ14が点灯しない場合には操作者にエラーを通知する(ステップS9)。
【0026】
なお、
図2の実施例では、放電管ランプとして重水素ランプが用いられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばキセノンランプに対しても同様に適用することができる。
【0027】
図4を用いて、
図1の例における電源及び信号経路の接続と遮断について説明する。
メイン回路6はサブ回路4を駆動するための5Vの電圧の印加のオン・オフを切り替える電源スイッチ12a、サブ回路4への書込み信号経路の遮断と接続を切り替える信号スイッチ10a、及びサブ回路4からの情報読出し信号経路の遮断と接続を切り替える信号スイッチ10bを備えている。電源スイッチ12aは
図1におけるサブ回路電源部12を構成し、信号スイッチ10a及び10bは信号切替え部10を構成している。電源スイッチ12a、信号スイッチ10a及び10bは、演算制御部8(
図1)からのトリガ信号により切替え動作を行なうようになっている。
【0028】
図5にこれらの信号経路を流れる電気信号の波形を示す。Aは演算制御部8から出力される5Vの電圧、Bは演算制御部8から出力されるトリガ信号、Cはサブ回路に印加される電源電圧、Dは
図4中の情報書込み信号(書込み信号が信号スイッチされた後)である。Bのトリガ信号が出力(トリガ電圧印加)されると、電源スイッチ12aがオンからオフの状態に切り替えられ、Cのサブ回路への印加電圧が遮断される。このとき、信号スイッチ10a及び10bもこの信号経路を遮断する状態に切り替えられ、Dに示されるようにサブ回路4への情報書込み信号が遮断される。
【0029】
図5の例では、トリガ信号が3.4秒間出されるようになっており、ランプ点灯時の電磁波ノイズはこの時間内で発生が終了する。トリガ信号の終了後、電源スイッチ12aは直ちにサブ回路4への電源電圧印加を復帰させる。これに対し、信号スイッチ10a及び10bはトリガ信号終了後一定時間経過してからメイン回路6とサブ回路4との間の信号経路を復帰させるようになっている。これは、サブ回路4の電源復帰後、所定の初期化動作等を行う必要があるためである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、重水素ランプやキセノンランプなどの放電管ランプを点灯させることによって得られる光を利用して種々の測定を行なう装置、例えば分光光度計などに利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
2 ランプ点灯部
4 サブ回路
6 メイン回路
8 演算制御部
10 信号切替え部
12 サブ回路電源部
14 重水素ランプ
16 ヒータ電源
18 トリガ電源部
20 定電流電源部
22 電源
24 コンデンサ
26 トリガ抵抗
28 トリガスイッチ