特許第5761072号(P5761072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761072
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】溶湯鍛造型
(51)【国際特許分類】
   B22D 18/02 20060101AFI20150723BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20150723BHJP
   B22C 9/22 20060101ALI20150723BHJP
   B22D 17/22 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   B22D18/02 M
   B22D18/02 C
   B22C9/06 A
   B22C9/22 Z
   !B22D17/22 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-37792(P2012-37792)
(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公開番号】特開2013-173151(P2013-173151A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茜谷 宗明
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−078360(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/066776(WO,A1)
【文献】 特開2000−015422(JP,A)
【文献】 特開昭61−130440(JP,A)
【文献】 特開昭55−014186(JP,A)
【文献】 特開2004−344944(JP,A)
【文献】 米国特許第04049040(US,A)
【文献】 国際公開第2012/086382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 18/02
B22C 9/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と、該下型に合わさる中間型と、該中間型及び上記下型に合わさる上型とを有し、上記下型及び上記中間型によって形成された凹部内に注ぎ込まれた溶湯を、上記上型によって加圧して鍛造するよう構成されており、
該上型と上記下型とが合わさったときの境界部分には、製品を成形するためのキャビティが形成され、
上記中間型と上記下型とが合わさったときの境界部分には、上記キャビティに連通する余剰空間が形成され、
該余剰空間には、上記上型によって圧力が加えられた溶湯に押されて後退する調整弁が配置されており、
上記キャビティは、製品を成形するための製品キャビティと、該製品キャビティの一方側に繋がり、該製品キャビティへ溶湯を補給するための補給キャビティと、上記製品キャビティの他方側に繋がり、充填される溶湯が上記製品キャビティ及び上記補給キャビティよりも先に冷却される冷却キャビティと、を備えており、
上記各キャビティにおける、冷却表面積Sに対する体積Vの比であるモジュラスM(=V/S)は、上記製品キャビティのモジュラスをMp、上記補給キャビティのモジュラスをMs、上記冷却キャビティのモジュラスをMcとしたとき、Ms>Mp>Mcの関係を有しており、
上記余剰空間は、上記補給キャビティに連通されていることを特徴とする溶湯鍛造型。
【請求項2】
請求項1に記載の溶湯鍛造型において、上記調整弁は、付勢手段による付勢力を外側から受けて上記余剰空間内に配置されており、かつ、上記付勢力に打ち勝つ所定の大きさ以上の圧力が加わったときに後退するよう構成されていることを特徴とする溶湯鍛造型。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶湯鍛造型において、上記調整弁は、上記余剰空間内に配置される先端部に、先端に向かうに連れて縮径するテーパ先端面を有していることを特徴とする溶湯鍛造型。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶湯鍛造型において、上記製品キャビティ、上記補給キャビティ及び上記冷却キャビティは、環形状に形成してあり、
上記補給キャビティは、上記製品キャビティの一方側としての外周側において、該製品キャビティに対して環状に連続して繋がっており、
上記冷却キャビティは、複数のフィン状キャビティ部を連ねてなるとともに、上記製品キャビティの他方側としての内周側において、該製品キャビティに対して環状に連続して繋がっており、
上記調整弁が配置された上記余剰空間は、上記補給キャビティの周方向における複数箇所に形成されていることを特徴とする溶湯鍛造型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下型に注ぎ込んだ溶湯を上型によって加圧して鍛造を行う溶湯鍛造型に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム材料等の製品を製造する方法として、金型内のキャビティに外部から溶湯を注入して、高速・高圧で射出鋳造を行うダイカスト鋳造法が知られている。この鋳造法においては、高速・高圧で鋳造を行うために、鋳造条件の変動があると、製造する製品の品質が安定しないおそれがある。また、高速・高圧での鋳造を実現するために、設備が大型化してしまう。
【0003】
また、例えば、特許文献1の溶湯鍛造法およびその装置においては、下型、下パンチ及びカウンターバランスピストンによって形成されるキャビティ内へ溶湯を供給し、キャビティ内へ上パンチを押し込んで溶湯を所定圧力で加圧している。そして、余剰の溶湯を、カウンターバランスピストンの下降によって形成される空間内へ逃している。これにより、キャビティ内への溶湯供給量を一定にし、溶湯加圧力を確実にもたらし、製品への欠陥の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−49764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等の従来の溶湯鍛造法においては、鍛造によって製造した製品の取り出しを容易にするための工夫はなされていない。特許文献1においては、上パンチの移動方向に対してカウンターバランスピストンが平行に移動する。そのため、製品を取り出すときに不都合は生じない。しかし、製造する製品の形状によっては、特許文献1の装置を使用すると、製造後の製品の取り出しができない場合がある。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、鋳巣の発生を抑制して安定して溶湯鍛造を行うことができ、鍛造製品の取り出しを容易にすることができる溶湯鍛造型を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下型と、該下型に合わさる中間型と、該中間型及び上記下型に合わさる上型とを有し、上記下型及び上記中間型によって形成された凹部内に注ぎ込まれた溶湯を、上記上型によって加圧して鍛造するよう構成されており、
該上型と上記下型とが合わさったときの境界部分には、製品を成形するためのキャビティが形成され、
上記中間型と上記下型とが合わさったときの境界部分には、上記キャビティに連通する余剰空間が形成され、
該余剰空間には、上記上型によって圧力が加えられた溶湯に押されて後退する調整弁が配置されており、
上記キャビティは、製品を成形するための製品キャビティと、該製品キャビティの一方側に繋がり、該製品キャビティへ溶湯を補給するための補給キャビティと、上記製品キャビティの他方側に繋がり、充填される溶湯が上記製品キャビティ及び上記補給キャビティよりも先に冷却される冷却キャビティと、を備えており、
上記各キャビティにおける、冷却表面積Sに対する体積Vの比であるモジュラスM(=V/S)は、上記製品キャビティのモジュラスをMp、上記補給キャビティのモジュラスをMs、上記冷却キャビティのモジュラスをMcとしたとき、Ms>Mp>Mcの関係を有しており、
上記余剰空間は、上記補給キャビティに連通されていることを特徴とする溶湯鍛造型にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記溶湯鍛造型においては、下型内に注ぎ込んだ溶湯に鍛造を行う場合に、中間型及び調整弁を用いる点に工夫をしている。
鍛造製品を製造するに当たっては、下型及び中間型に対して上型が開いた状態において、下型及び中間型によって形成された凹部内に溶湯を注ぎ込む。次いで、溶湯が溜められた下型及び中間型に対して上型を下降させる。そして、溶湯が上型によって押されるときには、溶湯が充填されたキャビティが形成されるとともに、このキャビティに不要になった溶湯の一部が、調整弁を後退させながら余剰空間へ流れ込む。
このとき、キャビティ内の溶湯に所定の圧力が加わった後、余剰空間内の調整弁が後退する。また、調整弁によって、キャビティ内の溶湯に圧力が加わった状態が維持される。これにより、キャビティの全体に溶湯が行き渡るようにして、鋳巣の発生を抑制することができる。
【0009】
また、製造した鍛造製品を取り出す際には、上型及び中間型を下型から上昇させる。このとき、中間型を下型から離すことにより、調整弁を取り外すことができる。そのため、鍛造製品を取り出す際に、余剰空間に形成された鍛造製品の一部が、中間型及び調整弁によって遮られないようにすることができる。これにより、鍛造製品の取り出しが容易である。
それ故、上記溶湯鍛造型によれば、鋳巣の発生を抑制して安定して溶湯鍛造を行うことができ、鍛造製品の取り出しを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例にかかる、鍛造を行った状態の溶湯鍛造型を示す断面図。
図2】実施例にかかる、固定型部、中間型部、上型が互いに離れた状態の溶湯鍛造型を示す断面図。
図3】実施例にかかる、固定型部及び中間型部によって形成された凹部に、溶湯を注ぎ込んだ状態の溶湯鍛造型を示す断面図。
図4】実施例にかかる、溶湯鍛造型におけるキャビティの形成状態を、上方から見た状態で示す断面図。
図5】実施例にかかる、鍛造製品を示す断面図。
図6】実施例にかかる、他の溶湯鍛造型において、固定型部及び中間型部によって形成された凹部に溶湯を注ぎ込んだ状態を示す断面図。
図7】実施例にかかる、他の溶湯鍛造型において、鍛造を行った状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した溶湯鍛造型における好ましい実施の形態につき説明する。
上記溶湯鍛造型において、上記中間型は、上記上型とは別の加圧源によって押されて上記下型に維持されるようにすることができる。また、中間型は、加圧源によって下降する上型の一部によって、下方へ押されるようにすることもできる。
また、上記キャビティの一部は、中間型と下型とが合わさったときの境界部分に形成されていてもよい。
【0012】
また、上記調整弁は、付勢手段による付勢力を外側から受けて上記余剰空間内に配置されており、かつ、上記付勢力に打ち勝つ所定の大きさ以上の圧力が加わったときに後退するよう構成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、付勢手段の付勢力を調整することにより、キャビティ内及び余剰空間内の溶湯に加わる圧力を適切に調整することができる。そして、適切なタイミングで、調整弁の後退動作を行うことができる。
【0013】
また、上記調整弁は、上記余剰空間内に配置される先端部に、先端に向かうに連れて縮径するテーパ先端面を有していてもよい(請求項3)。
この場合には、余剰空間内の溶湯から調整弁に加わる圧力を適切にすることができ、製造後の鍛造品の取り出しを容易にすることができる。
【0014】
また、上記キャビティは、製品を成形するための製品キャビティと、該製品キャビティの一方側に繋がり、充填される溶湯を上記製品キャビティへ補給するための補給キャビティと、上記製品キャビティの他方側に繋がり、充填される溶湯が上記製品キャビティ及び上記補給キャビティよりも先に冷却される冷却キャビティと、を備えており、上記各キャビティにおける、冷却表面積Sに対する体積Vの比であるモジュラスM(=V/S)は、上記製品キャビティのモジュラスをMp、上記補給キャビティのモジュラスをMs、上記冷却キャビティのモジュラスをMcとしたとき、Ms>Mp>Mcの関係を有しており、上記余剰空間は、上記補給キャビティに連通されてい
【0015】
ャビティにおいては、冷却キャビティに充填された溶湯が先に凝固し、次いで、製品キャビティに充填された溶湯が凝固し、最後に、補給キャビティに充填された溶湯が凝固する。これにより、溶湯をキャビティの一方から他方に向けて順次凝固させることができる。そのため、簡単な工夫により、製品キャビティに成形する鋳物製品に鋳巣(未充填の空洞、亀裂、縮小化等の変形)が発生しないようにすることができる。
なお、上記冷却表面積Sとは、溶湯と接触するキャビティの表面積のことをいう。
【0016】
また、上記製品キャビティ、上記補給キャビティ及び上記冷却キャビティは、環形状に形成してあり、上記補給キャビティは、上記製品キャビティの一方側としての外周側において、該製品キャビティに対して環状に連続して繋がっており、上記冷却キャビティは、複数のフィン状キャビティ部を連ねてなるとともに、上記製品キャビティの他方側としての内周側において、該製品キャビティに対して環状に連続して繋がっており、上記調整弁が配置された上記余剰空間は、上記補給キャビティの周方向における複数箇所に形成されていてもよい(請求項)。
この場合には、環形状の製品キャビティ、補給キャビティ及び冷却キャビティに対して、調整弁が配置された余剰空間を適切に形成することができる。そして、環形状の鋳物製品に鋳巣が発生しないようにすることができる。
【実施例】
【0017】
以下に、上記溶湯鍛造型1にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の溶湯鍛造型1は、図1に示すごとく、下型3と、下型3に合わさる中間型4と、中間型4及び下型3に合わさる上型5とを有し、下型3及び中間型4によって形成された凹部65内に注ぎ込まれた溶湯Yを、上型5によって加圧して鍛造するよう構成されている。
上型5と下型3とが合わさったときの境界部分Kには、製品を成形するためのキャビティ6が形成され、中間型4と下型3とが合わさったときの境界部分Kには、キャビティ6に連通する余剰空間64が形成される。余剰空間64には、上型5によって圧力が加えられた溶湯Yに押されて後退する調整弁7が配置される。
【0018】
以下に、本例の溶湯鍛造型1につき、図1図7を参照して詳説する。
本例の溶湯鍛造型1は、金属を溶融させた溶湯Yに対して加圧を行って鍛造をすることにより、鍛造に要する加圧力を小さくしたものである。溶湯鍛造型1は、上型5を可動させる動力源11等と合わさって、溶湯鍛造装置を構成する。
図1に示すごとく、上型5は、油圧力、空圧力、電動力等の動力源11によって駆動されて、昇降するよう構成されている。図2に示すごとく、下型3は、架台20等に固定され、上型5及び中間型4は、別々に可動するよう構成されている。また、図3に示すごとく、上型5を開けた状態において、下型3と中間型4とによって、溶湯Yを注ぎ込んで溜めるための凹部65が形成される。なお、上型5及び中間型4は、手動によって可動させることもできる。
【0019】
図1図4に示すごとく、本例のキャビティ6は、製品を成形するための製品キャビティ61と、製品キャビティ61の一方側に繋がり、製品キャビティ61へ溶湯Yを補給するための補給キャビティ62と、製品キャビティ61の他方側に繋がり、充填される溶湯Yが製品キャビティ61及び補給キャビティ62よりも先に冷却される冷却キャビティ63とを備えている。各キャビティ61,62,63における、冷却表面積Sに対する体積Vの比であるモジュラスM(=V/S)は、製品キャビティ61のモジュラスをMp、補給キャビティ62のモジュラスをMs、冷却キャビティ63のモジュラスをMcとしたとき、Ms>Mp>Mcの関係を有している。
【0020】
図4図5に示すごとく、本例の溶湯鍛造型1によって製造する鍛造製品8は、円環形状を有する部材である。ここで、図5は、溶湯鍛造型1によって製造した鍛造製品8を示す断面図であり、対応する各キャビティ61,62,63及び余剰空間64をカッコ書きの符号で示す。
製品キャビティ61、補給キャビティ62及び冷却キャビティ63は、円環形状に形成されている。補給キャビティ62は、製品キャビティ61の一方側としての外周側において、製品キャビティ61に対して円環状に連続して繋がっている。冷却キャビティ63は、複数のフィン状キャビティ部631を連ねてなるとともに、製品キャビティ61の他方側としての内周側において、製品キャビティ61に対して円環状に連続して繋がっている。
【0021】
補給キャビティ62は、そのモジュラスMsをできるだけ小さくするために、円形状の断面を有している。補給キャビティ62の体積は、製品キャビティ61の体積よりも大きくなっている。冷却キャビティ63は、そのモジュラスMcをできるだけ大きくするために、複数のフィン状キャビティ部631を、円環形状の製品キャビティ61の円環形状の軸方向中心位置からその軸方向の両側に向けて枝分かれ状に有している。製品キャビティ61は、その代表断面形状が円環形状の周方向に連続して形成されている。
【0022】
図4に示すごとく、調整弁7が配置された余剰空間64は、補給キャビティ62に対する外周側から、その周方向における複数箇所に連通して形成されている。中間型4は、補給キャビティ62に対する外周側において、余剰空間64を形成する部分に、円環形状に形成されている。余剰空間64における上側部分の一部は、中間型4によって形成されている。
図1に示すごとく、各調整弁7は、円柱形状のピンによって構成されている。各余剰空間64は、下型3と中間型4との境界部分Kにおいて調整弁7を摺動させる断面円形状の空間として形成されている。余剰空間64の下半分は下型3に形成され、余剰空間64の上半分は中間型4に形成されている。
【0023】
調整弁7は、下型3と中間型4との境界部分Kの外側から余剰空間64内に配置されている。調整弁7は、付勢手段71による付勢力を外側から受けて余剰空間64内に配置されており、かつ、付勢手段71の付勢力に打ち勝つ所定の大きさ以上の圧力が加わったときに後退するよう構成されている。本例の付勢手段71は、圧縮バネによって構成されている。付勢手段71は、圧縮バネ以外にも、空気圧による付勢力を作用させることができるガススプリングとすることができる。また、調整弁7は、余剰空間64内に配置される先端部に、先端に向かうに連れて縮径するテーパ先端面72を有している。
【0024】
下型3において、製品キャビティ61の下方位置には、鍛造後の鍛造製品8を取り出すためのエジェクタピン31が昇降可能に配設されている。
本例の中間型4は、補給キャビティ62の上側部分の一部を形成し、本例の上型5は、補給キャビティ62の上側部分の一部、並びに製品キャビティ61及び冷却キャビティ63の上側部分を形成する。
【0025】
図1に示すごとく、上型5においては、キャビティ6と外部の大気とを連通する空気穴を形成することができる。これにより、上型5が下降して溶湯Yを加圧するときには、キャビティ6内に残留する空気を外部へ抜き出すことができる。
なお、上型5においてキャビティ6を形成する部分を、溶湯Yを通過させない一方、空気を通過させるこの多孔性材料によって構成することもできる。この場合にも、キャビティ6内に残留する空気を外部へ抜き出すことができる。
【0026】
次に、溶湯鍛造型1を用いて鍛造を行う動作及びその作用効果につき説明する。
鍛造製品8を製造するに当たっては、図3に示すごとく、下型3の上に中間型4が重なり、これらの間に形成された余剰空間64内に調整弁7を配置しておく。また、調整弁7は、外周側から付勢手段(圧縮バネ)71によって押圧しておく。そして、下型3と中間型4とによって、注ぎ込まれる溶湯Yを溜めておくことができる凹部65が形成される。また、上型5は、下型3及び中間型4に対する上方に退避させておく。
【0027】
次いで、同図に示すごとく、下型3と中間型4とによって形成された凹部65に溶湯Yを注ぎ込む。そして、図1に示すごとく、溶湯Yが溜められた下型3及び中間型4に対して上型5を下降させる。溶湯Yが上型5によって押されるときには、溶湯Yが充填された製品キャビティ61、補給キャビティ62及び冷却キャビティ63が形成されるとともに、これらのキャビティ61,62,63に不要になった溶湯Yの一部が、調整弁7を外周側へ後退させながら、複数の余剰空間64へ流れ込む。
なお、上型5の外周側部分には、中間型4を上方から押さえる部分を形成しておき、上型5によって溶湯Yを加圧する際には、上型5によって中間型4を上方から押さえることができる。
【0028】
このとき、各調整弁7には、付勢手段71による付勢力が作用しており、各キャビティ61,62,63内の溶湯Yに所定の圧力が加わった後、余剰空間64内の調整弁7が後退する。また、各調整弁7に作用する付勢力によって、各キャビティ61,62,63内の溶湯Yに圧力が加わった状態が維持される。これにより、キャビティ6の全体に溶湯Yが行き渡るようにして、鋳巣の発生を抑制することができる。
【0029】
また、各キャビティ61,62,63及び余剰空間64に鍛造製品8が成形された後には、この鍛造製品8を取り出すために、上型5及び中間型4を下型3から上昇させる。このとき、中間型4を下型3から離すことにより、調整弁7を取り外すことができる。そして、エジェクタピン31を上昇させて、鍛造製品8を下型3から取り外す。
本例の溶湯鍛造型1においては、中間型4及び調整弁7を取り外せるため、鍛造製品8を取り出す際に、余剰空間64に形成された鍛造製品8の一部が、中間型4及び調整弁7によって遮られないようにすることができる。これにより、鍛造製品8の取り出しを容易にすることができる。
それ故、溶湯鍛造型1によれば、鋳巣の発生を抑制して安定して溶湯鍛造を行うことができ、鍛造製品8の取り出しを容易にすることができる。
なお、鍛造製品8は、補給キャビティ62及び余剰空間64に形成された部分と、冷却キャビティ63に形成された部分とを切除して、最終的な製品とする。
【0030】
また、溶湯Yに対して鍛造を行うため、鍛造を行う圧力を低減することができ、装置の小型化を図ることができる。さらに、調整弁7は、溶湯Yの圧力を受けて後退する。そのため、シリンダー等の動力源11によって動作させるのは上型5のみとすることができ、動力源11の低減とその制御の簡略化を図ることができる。これにより、溶湯鍛造型1を用いる装置の構成を極めて簡単にすることができる。
【0031】
図6図7に示すごとく、中間型4は、下型3と上型5との境界部分Kにおいて、成形する製品の形状に応じて、溶湯Yが充填されにくい部分にのみ設けることができる。調整弁7が配置された余剰空間64は、中間型4と下型3との間に形成する。上型5には、中間型4を上方から押さえる押さえ部51が形成されている。
この場合においても、下型3と中間型4とによって形成された凹部65に溶湯Yを注ぎ込み、下型3及び中間型4に対して上型5を下降させる。そして、調整弁7が押されながらキャビティ6から余剰空間64へ溶湯Yが流れ込み、キャビティ6内の溶湯Yに所定の圧力を加えて、鍛造製品8を製造することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 溶湯鍛造型
2 下型
3 固定型部
4 中間型部
5 上型
6 キャビティ
7 調整弁
Y 溶湯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7