(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761099
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】多結晶シリコン反応炉
(51)【国際特許分類】
C01B 33/035 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
C01B33/035
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-74356(P2012-74356)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-203593(P2013-203593A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】桐井 精一
(72)【発明者】
【氏名】北川 輝久
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−51837(JP,A)
【文献】
特開2009−256188(JP,A)
【文献】
特開2009−256191(JP,A)
【文献】
特開2010−235438(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103466628(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉内にクロロシラン類等のシリコン化合物を含む原料ガスを供給するとともに、この反応炉内のシリコン芯棒に通電して発熱させ、このシリコン芯棒の表面に多結晶シリコンを析出させてロッドとして成長させる多結晶シリコン反応炉であって、
前記反応炉の底板部に、この底板部に対して電気絶縁状態に設けられた電極と、
この電極に立設され、前記シリコン芯棒を保持する芯棒保持穴が形成されているとともに、この芯棒保持穴の側方に外面から連通するネジ穴が形成されているカーボン製の芯棒ホルダと、
この芯棒ホルダの前記ネジ穴に螺合して前記シリコン芯棒を固定するカーボン製の止めネジと
を備え、
前記芯棒ホルダに比較して、前記止めネジは熱膨張係数が大きいことを特徴とする多結晶シリコン反応炉。
【請求項2】
前記芯棒ホルダに比較して、前記止めネジは機械的強度が大きいことを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコン反応炉。
【請求項3】
前記芯棒ホルダの曲げ強さが20MPa以上30MPa以下、熱膨張係数が2.0×10-6/℃以上4.0×10-6/℃以下であり、前記止めネジの曲げ強さが40MPa以上60MPa以下、熱膨張係数が3.5×10-6/℃以上5.0×10-6/℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の多結晶シリコン反応炉。
【請求項4】
前記芯棒ホルダが押出成形材を切削して形成され、前記止めネジが冷間等方圧プレス成形材を切削して形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の多結晶シリコン反応炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱したシリコン芯棒の表面に多結晶シリコンを析出させて多結晶シリコンのロッドを製造する多結晶シリコン反応炉に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体材料となる高純度の多結晶シリコンの製造方法として、シーメンス法が知られている。シーメンス法は、クロロシランと水素との混合ガスからなる原料ガスを加熱したシードに接触させ、その表面に原料ガスの熱分解および水素還元によって生じた多結晶シリコンを析出させる製造方法である。この製造方法を実施する装置として、密閉した反応炉の炉底に設置された電極ユニットに多数のシリコン芯棒(スタータフィラメント)を立設した多結晶シリコン反応炉が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
また特許文献2に示すように、従来、多結晶シリコン反応炉において、上下方向に沿って設けられた2本の棒状のシリコン芯棒と、これらシリコン芯棒の上端部同士を接続する連結部材とによりΠ字状に形成されたシード組立体が固定されている。このシード組立体は、電極ユニットを通じて電流が供給されてジュール熱が発生することにより、高温に加熱される。電極ユニットはカーボン等の導電材からなる芯棒保持電極を備え、反応炉の底部に固定されて、シリコン芯棒の下端部を保持している。
【0004】
特許文献2に記載された多結晶シリコン反応炉においては、カーボン製の芯棒保持電極の先端に、上下方向に延びる開口部が設けられている。シリコン芯棒はこの開口部に挿入されることにより立設され、芯棒保持電極に螺合する止めネジによって芯棒保持電極に対して固定される。多結晶シリコンは、シリコン芯棒全体と芯棒保持電極の上部を覆うように析出し、シリコン芯棒ごと切断されて多結晶シリコンロッドとして回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−213697号公報
【特許文献2】特開2009−256191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された多結晶シリコン反応炉においては、析出した多結晶シリコンの汚染を抑制するため、芯棒保持電極や止めネジはカーボンで形成されている。しかしながら、カーボンは精密な加工が難しく、精度が悪いと止めネジの螺合が緩くなる、あるいは螺入時にねじ山が削れるなどして、シリコン芯棒の固定が不完全になるおそれがある。
【0007】
シリコン芯棒の固定が不十分であると、シリコン芯棒と芯棒保持電極との接触が不十分となって局所的に電流が流れ、局部的な温度上昇によりシリコン芯棒の溶断が発生したり、シリコン芯棒への通電が不十分となってシリコン析出量の低下が起こったりするおそれがある。さらには、シリコン芯棒が傾いた状態になると、自重による倒壊や、シリコン芯棒が隣接して立設されている場合には相互に接触することによる連続した倒壊あるいは地絡による通電異常が生じるといった問題が発生する。このため、安定した反応が維持できず、シリコンの生産量が低下してしまうことになるため、芯棒保持電極に対して止めネジが確実に螺合される構造が求められる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、シリコン芯棒を確実に支持可能とする多結晶シリコン反応炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、反応炉内にクロロシラン類等のシリコン化合物を含む原料ガスを供給するとともに、この反応炉内のシリコン芯棒に通電して発熱させ、このシリコン芯棒の表面に多結晶シリコンを析出させてロッドとして成長させる多結晶シリコン反応炉であって、前記反応炉の底板部に、この底板部に対して電気絶縁状態に設けられた電極と、この電極に立設され、前記シリコン芯棒を保持する芯棒保持穴が形成されているとともに、この芯棒保持穴の側方に外面から連通するネジ穴が形成されているカーボン製の芯棒ホルダと、この芯棒ホルダの前記ネジ穴に螺合して前記シリコン芯棒を固定するカーボン製の止めネジとを備え、前記芯棒ホルダに比較して、前記止めネジは熱膨張係数が大きいことを特徴とする。
【0010】
この多結晶シリコン反応炉によれば、芯棒ホルダの熱膨張係数よりも止めネジの熱膨張係数が大きいので、加熱された芯棒ホルダおよび止めネジが高温となることにより芯棒ホルダのネジ穴と止めネジとのクリアランスが小さくなって螺合が強固となり止めネジがゆるみ難くなり、シリコン芯棒を確実に支持できる。
【0011】
この多結晶シリコン反応炉において、前記ホルダに比較して、前記止めネジの機械的強度が大きいことが好ましい。この場合、シリコン芯棒の着脱や保持状態の調整等を目的として止めネジを複数回緩めたり、締め直したりした場合にも、止めネジのねじ山の摩耗や破損を低減することができる。したがって、止めネジがゆるみ難い状態を維持することができ、シリコン芯棒を確実に支持できる。
【0012】
この多結晶シリコン反応炉において、前記芯棒ホルダの曲げ強さが20MPa以上30MPa以下、熱膨張係数が2.0×10
-6/℃以上4.0×10
-6/℃以下であり、前記止めネジの曲げ強さが40MPa以上60MPa以下、熱膨張係数が3.5×10
-6/℃以上5.0×10
-6/℃以下であることが好ましい。
【0013】
芯棒ホルダの曲げ強さが前記範囲よりも低いと、シリコン芯棒へのシリコン析出過程で反応の原料ガス流によりシリコン芯棒が揺れたりすることで傾くなどした場合、多結晶シリコンの析出により増加するシリコンロッドの重量を支え切れずに芯棒ホルダの破損やこれによるシリコンロッドの倒壊のおそれがある。一方、芯棒ホルダの曲げ強さが前記範囲よりも高いと、多結晶シリコン析出後の回収時に切断しにくくなり、回収作業に手間がかかる。
【0014】
また、芯棒ホルダの熱膨張係数が前記範囲ではない場合は、シリコン析出後の冷却時においてシリコンとの熱膨張係数差が大きく、シリコンのクラックや割れが生じやすくなる。芯棒ホルダの熱膨張係数が前記範囲よりも高く止めネジの曲げ強さが前記範囲よりも低い場合、芯棒ホルダへの止めネジ螺挿時において止めねじが欠けたり、シリコン芯棒を強固に固定できなかったりするおそれがある。また、止めネジの曲げ強さが前記範囲よりも高い場合、加工しにくく、量産が難しくなる。
【0015】
また、止めネジの熱膨張係数が前記範囲よりも低いと、螺合を強固にする効果が不十分なものとなる。一方、止めネジの熱膨張係数が前記範囲よりも高いと、通電時において芯棒ホルダのネジ部あるいは本体の破損が生じるおそれがある。
【0016】
芯棒ホルダと止めネジの熱膨張係数については、上記範囲において、芯棒ホルダの熱膨張係数<止めネジの熱膨張係数となるような範囲が望ましい。また、芯棒ホルダの熱膨張係数と止めネジの熱膨張係数の差は、通電時の芯棒ホルダの破損を防止し、安定したシリコン析出を可能とするために、1.5×10
-6/℃以下が望ましい。
【0017】
この多結晶シリコン反応炉において、前記芯棒ホルダが押出成形材を切削して形成され、前記止めネジが冷間等方圧プレス成形材を切削して形成されていることが好ましい。一般にカーボンの押出成形材は熱膨張係数が低いので、前記芯棒ホルダの材料を得る上で好適である。一方、カーボンの冷間等方圧プレス成形材は、押出成形材に比較して機械的強度が高く、線膨張係数が高いので、本発明の多結晶シリコン反応炉における止めネジの材料に好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シリコン芯棒を確実に支持可能とする多結晶シリコン反応炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】多結晶シリコン製造装置において、反応炉のベルジャを一部切欠いた斜視図である。
【
図3】
図2に示す反応炉中の電極ユニットおよびシード組立体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の多結晶シリコン反応炉の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、反応炉10内にクロロシラン類等のシリコン化合物を含む原料ガスを供給するとともに、この反応炉10内のシリコン芯棒20に通電して発熱させ、このシリコン芯棒20の表面に多結晶シリコンを析出させロッドとして成長させる多結晶シリコン製造装置の全体図である。
【0021】
多結晶シリコン製造装置の反応炉10は、炉底を構成する底板部12と、この底板部12上に脱着自在に取り付けられた釣鐘形状のベルジャ14とを具備している。底板部12の上面はほぼ平坦な水平面に形成される。ベルジャ14は、全体として釣鐘形状をしていて、天井がドーム型であって、その内部空間は中央部が最も高く外周部が最も低く形成されている。また、底板部12およびベルジャ14の壁はジャケット構造(図示略)とされ、冷却水によって冷却される。
【0022】
底板部12には、多結晶シリコンの種棒(シード)となるシリコン芯棒20が取り付けられる電極ユニット30と、クロロシランガスと水素ガスとを含む原料ガスを炉内に噴出するための噴出ノズル(ガス供給口)16と、反応後のガスを炉外に排出するためのガス排出口18とがそれぞれ複数設けられている。
【0023】
原料ガスの噴出ノズル16は、各シリコン芯棒20に対して均一に原料ガスを供給するように、反応炉10の底板部12の上面のほぼ全域に分散して適宜の間隔をあけながら複数設置されている。これら噴出ノズル16は、反応炉10の外部の原料ガス供給源50に接続されている。また、ガス排出口18は、底板部12の上の外周部付近に周方向に適宜の間隔をあけて複数設置され、外部の排ガス処理系52に接続されている。電極ユニット30には、電源回路54が接続されている。
【0024】
シリコン芯棒20は、下端部が電極ユニット30内に差し込まれた状態に固定され、上方に延びて立設されている。各シリコン芯棒20の上端部には、2本のシリコン芯棒20を対として連結する連結部材22が取り付けられている。この、連結部材22は、その両端に形成された円筒状の貫通穴22aを、各シリコン芯棒20の上端に形成された円柱状のボス部20aに係合させている(
図3参照)。この連結部材22もシリコン芯棒20と同じシリコンによって形成されている。2本のシリコン芯棒20とこれらを連結する連結部材22とによって、全体としてΠ字状をなすシード組立体24が構成されている。シード組立体24は、電極ユニット30が反応炉10の中心から概略同心円状に配置されていることにより、全体としてほぼ同心円状に配置されている。
【0025】
電極ユニット30についてより具体的には、
図2に示すように、反応炉10内に、1本のシリコン芯棒20を保持する電極ユニット30(30A)と、2本のシリコン芯棒20を保持する電極ユニット30(30B)とが配設されている。各シード組立体24は、複数個の電極ユニット30A,30Bの間をまたぐように複数組設けられている。これら電極ユニット30A,30Bは、1個の電極ユニット30A、複数個の電極ユニット30B、1個の電極ユニット30Aの順に並べられ、複数のシード組立体24を直列に接続している。つまり、一つのシード組立体24の両シリコン芯棒20は、隣接する異なる電極ユニット30A,30Bによってそれぞれ保持されている。
【0026】
つまり、電極ユニット30Aにはシード組立体24の2本のシリコン芯棒20のうちの1本が保持され、電極ユニット30Bには、2組のシード組立体24のシリコン芯棒20が1本ずつ保持されている。そして、列の両端の電極ユニット30Aに接続された電源ケーブルを通じて、電流が流れるように構成されている。
【0027】
このように構成される多結晶シリコン製造装置において、ヒーター等(図示略)で加熱したあと、各電極ユニット30からシリコン芯棒20に通電することにより、シリコン芯棒20を電気抵抗による発熱状態とする。さらに、各シリコン芯棒20は、隣接するシリコン芯棒20からの輻射熱を受けて加熱される。そして、ジュール熱と輻射熱とが相乗して高温状態となったシリコン芯棒20の表面で、原料ガスが反応して、多結晶シリコンが析出する。
【0028】
電極ユニット30(30A,30B)にシリコン芯棒20を保持する構造について、より詳細に説明する。1本のシリコン芯棒20を保持する電極ユニット30Aは、
図3に示すように、反応炉10の底板部12に形成された貫通穴12a内に挿入状態にかつこの底板部12に対して電気絶縁状態に設けられた電極32の上部に、1本の芯棒ホルダ34が立設された構造となっている。2本のシリコン芯棒20を保持する電極ユニット30Bは、反応炉10の底板部12に形成された貫通穴12a内に挿入状態にかつこの底板部12に対して電気絶縁状態に設けられた電極33の上部に、2本の芯棒ホルダ34が立設された構造となっている。
【0029】
各電極ユニット30A,30Bに設けられた芯棒ホルダ34は、カーボン製であり、シリコン芯棒20を挿入されて略鉛直に保持する芯棒保持穴34aが上端部から内部にかけて形成されている。この芯棒ホルダ34の上部には、芯棒保持穴34aに略直交するように外面から連通して互いに対向する2つのネジ穴34bが形成されている。このネジ穴34bには、シリコン芯棒20を固定するカーボン製の止めネジ36が螺合している。
【0030】
図4に示すように、芯棒ホルダ34の保持穴34aは、上下方向に対して交差する水平方向の断面が四つの角部を有する矩形である。この保持穴34aにおいて対向する2つの角部に、外面から連通するネジ穴34bが保持穴34aに直交して形成されている。これら2つのネジ穴34bのうちの一方に、シリコン芯棒20を固定する止めネジ36が螺合されている。止めネジ36は芯棒ホルダ34と同じくカーボン製であるが、芯棒ホルダ34に比較して機械的強度および熱膨張係数が大きく、その一端部に+形状または−形状のドライバー工具溝が形成されている。
【0031】
芯棒ホルダ34は押出成形材を切削して形成されており、その曲げ強さが20MPa以上30MPa以下、熱膨張係数が2.0×10
-6/℃以上4.0×10
-6/℃以下である。これに対して、止めネジ36は冷間等方圧プレス成形材(CIP成形材)を切削して形成されており、その曲げ強さが40MPa以上60MPa以下、熱膨張係数が3.5×10
-6/℃以上5.5×10
-6/℃以下である。芯棒ホルダ34および止めネジ36に用いられる好適な材料特性の組み合わせ例を表1に示す。
【0033】
表1に示すように、カーボンの押出成形材からなる芯棒ホルダ34は熱膨張係数が低い。一方、カーボンの冷間等方圧プレス成形材からなる止めネジ36は、押出成形材に比較して機械的強度が高く、熱膨張係数が大きい。
【0034】
保持穴34aに挿入されるシリコン芯棒20は、保持穴34aよりも小さい略矩形断面を有する棒状部材である。したがって、シリコン芯棒20は、芯棒ホルダ34に対して、保持穴34aとの寸法差の範囲で移動可能であり、
図4に示すように、止めネジ36が締め込まれて止めネジ36の先端部がシリコン芯棒20の角部(稜線)を押圧することにより、止めネジ36に対向する保持穴34aの符号F,Gで示す2面に押しつけられて固定され、この2面F,Gの接触によってシリコン芯棒20と芯棒ホルダ34とが電気的に導通する。
【0035】
なお、止めネジ36は、いずれのネジ穴34bにも螺合させてもよい。どちらのネジ穴34bに螺合させるかによって、芯棒ホルダ34に対するシリコン芯棒20の相対位置を変更することができる。このように、止めネジ36を取り付けるネジ穴34bを変更することにより、シリコン芯棒20が撓んでいた場合などに、シード組立体24の歪みを小さくすることができる。
【0036】
しかしながら、一方のネジ穴34bに取り付けた止めネジ36を取り外し、他方のネジ穴34bに取り付け直す場合、着脱により止めネジ36が折れたり止めネジ36のねじ山が損傷したりすると、シリコン芯棒20の固定が不十分となるおそれがある。これに対して、本発明では芯棒ホルダ34の機械的強度よりも止めネジ36の機械的強度が高いので、止めネジ36のねじ山が破損しにくく、もう一方のネジ穴34bに確実に取り付けることができ、シリコン芯棒20を安定して保持することができる。
【0037】
また、多結晶シリコン反応炉10においては、高純度のシリコンを製造するために、芯棒ホルダ34および止めネジ36がいずれもカーボンで形成されているが、カーボンは精密な加工が難しいため、止めネジ36とネジ穴34bとの螺合が緩くなるおそれがある。これに対して、本発明では芯棒ホルダ34の熱膨張係数よりも止めネジ36の熱膨張係数が大きいので、止めネジ36の熱膨張に対してネジ穴34bの熱膨張が小さく、シリコン芯棒20の加熱に伴う芯棒ホルダ34および止めネジ36の温度上昇に従い、止めネジ36とネジ穴34bとの間の遊びが小さくなる。これにより止めネジ36とネジ穴34bとの締結力が上昇するので、シリコン芯棒20を確実に固定することができる。
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、芯棒ホルダに取り付けられてシリコン芯棒を固定する止めネジの機械的強度が芯棒ホルダの機械的強度よりも高いので、止めネジの破損が防止され、シード組立体の歪みを修整するために止めネジをネジ穴に対して着脱した場合であっても、確実な螺合が可能となる。また、止めネジの熱膨張係数が芯棒ホルダの熱膨張係数よりも大きいので、止めネジおよび芯棒ホルダの加工が精密でなく常温では螺合が緩くても、反応炉内の温度上昇に伴い遊びが小さくなり強く締結される。したがって、多結晶シリコン反応炉において、シリコン芯棒を確実に支持することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 反応炉
12 底板部
12a 貫通穴
14 ベルジャ
16 噴出ノズル(ガス供給口)
18 ガス排出口
20 シリコン芯棒
20a ボス部
22 連結部材
22a 貫通穴
24 シード組立体
30(30A,30B) 電極ユニット
32,33 電極
34 芯棒ホルダ
34a 保持穴
34b ネジ穴
36 止めネジ