特許第5761175号(P5761175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5761175感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法
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  • 特許5761175-感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法 図000046
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761175
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20150723BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20150723BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/039 601
   H01L21/30 502R
【請求項の数】6
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2012-505747(P2012-505747)
(86)(22)【出願日】2011年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2011056414
(87)【国際公開番号】WO2011115217
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2013年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2010-61699(P2010-61699)
(32)【優先日】2010年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光央
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−234330(JP,A)
【文献】 特開2009−271253(JP,A)
【文献】 特開2005−070418(JP,A)
【文献】 特開2007−145803(JP,A)
【文献】 特開2002−303981(JP,A)
【文献】 特開2010−102329(JP,A)
【文献】 特開2010−113319(JP,A)
【文献】 特開2010−091731(JP,A)
【文献】 特開2011−053360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂となる重合体(A)、
感放射線性酸発生剤(B)、
フッ素原子を含む重合体(C)、
比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物(D)(但し、ガンマ−ブチロラクトンを除く)、及び
下記式(10)で表される酸拡散制御剤(E)
を含有し、
前記低分子化合物(D)の前記重合体(A)100質量部に対する含有量が、10質量部以上500質量部以下であり、
前記低分子化合物(D)が、ニトリル化合物又はスルホキシドであり、
液浸露光用である感放射線性樹脂組成物。
【化1】
(式(10)中、複数のR20及び複数のR21は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基である。但し、上記アルキル基、アリール基又はアラルキル基が有する水素原子の一部若しくは全部は置換されていてもよい。複数のR20同士又は複数のR21同士が互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに、炭素数4〜20の2価の飽和若しくは不飽和炭化水素基又はその誘導体を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記低分子化合物(D)の前記重合体(A)100質量部に対する含有量が、30質量部以上300質量部以下である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合体(C)の前記重合体(A)100質量部に対する含有量が、0.1質量部以上5質量部以下である請求項1又は請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合体(A)が酸解離性基を有するアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の樹脂であって、酸解離性基が解離したときにアルカリ易溶性となる重合体(A1)である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合体(C)が、下記式(C1−1)〜(C1−3)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含む請求項1から請求項のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】
(式(C1−1)〜(C1−3)中、R28は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。式(C1−1)中、Rfは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基である。式(C1−2)中、R29は、(g+1)価の連結基である。gは、1〜3の整数である。式(C1−3)中、R30は、2価の連結基である。式(C1−2)及び(C1−3)中、R31は、相互に独立に、水素原子又は1価の有機基である。Rfは、相互に独立に、水素原子、フッ素原子、又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基である。但し、(C1−2)及び(C1−3)のそれぞれにおいて、全てのRfが水素原子である場合はない。)
【請求項6】
(1)請求項1から請求項のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
(2)前記フォトレジスト膜を液浸露光する工程と、
(3)液浸露光されたフォトレジスト膜を現象し、レジストパターンを形成する工程とを有するレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法に関する。更に詳しくは、後退接触角の高い塗膜を形成でき、現像後のパターン断面形状の矩形性が良好な感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子を製造する微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、0.10μm以下のレベル(即ち、サブクオーターミクロンレベル)における微細加工が可能なリソグラフィ技術が切望されている。しかし、従来のリソグラフィ技術では、放射線としてi線等の近紫外線を用いており、この近紫外線では、0.10μm以下のレベルの微細加工は極めて困難である。そこで、0.10μm以下のレベルでの微細加工を可能にするために、より波長の短い放射線を使用したリソグラフィ技術の開発が行われている。そして、より波長の短い放射線としては、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザー等の遠紫外線、X線、電子線等を挙げることができる。これらの中でも、KrFエキシマレーザー(波長248nm)やArFエキシマレーザー(波長193nm)が注目されている。
【0003】
しかしながら、微細加工の分野においては、更に微細なレジストパターン(例えば、線幅が45nm程度の微細なレジストパターン)を形成することが切望されており、更に微細なレジストパターンを形成可能にするために、例えば、露光装置の光源波長を短波長化することや、レンズの開口数(NA)を増大させること等が行われている。しかし、光源波長の短波長化を達成するためには、高額な新しい露光装置が必要になるという問題がある。また、レンズの開口数を増大させる場合、解像度と焦点深度がトレードオフの関係にあるため、たとえ解像度を向上させることができても、焦点深度が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、近年、このような問題を解決するリソグラフィ技術として、液浸露光(リキッドイマージョンリソグラフィ)法という方法が報告されている。この方法は、露光時に、レンズとフォトレジスト膜との間(フォトレジスト膜上)に液浸露光用液体(例えば、純水、フッ素系不活性液体等)を介在させるという方法である。この方法によれば、従来、空気や窒素等の不活性ガスで満たされていた露光光路空間を、空気等よりも屈折率(n)の大きい液浸露光用液体で満たすことになるため、従来と同様の露光光源を用いた場合であっても、露光装置の光源波長を短波長化等した場合と同様の効果、即ち、高い解像性が得られる。また、焦点深度の低下が生じない。
【0005】
従って、このような液浸露光法によれば、既存の装置に実装されているレンズを用いて、低コストで、解像性に優れ、更には焦点深度にも優れるレジストパターンを形成することができる。
【0006】
液浸露光プロセスとしては、例えば、感放射線性樹脂組成物から形成されるフォトレジスト膜を保護するため、フォトレジスト膜上に液浸上層膜を形成した上で、液浸露光する手法(例えば、特許文献1参照)が知られている。また、液浸上層膜を不要とするために、ベース樹脂とは別に高分子添加剤としてフッ素原子を有する重合体を含んだ感放射線性樹脂組成物を用いてフォトレジスト膜を形成する手法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。この手法によれば、フッ素原子を有する高分子添加剤がフォトレジスト膜表面付近に偏在するため、液浸露光に必要な撥水性が発現すると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開05/069076号パンフレット
【特許文献2】国際公開07/116664号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、液浸露光の際に十分なレジスト膜表面の撥水性を発現するために高分子添加剤としてフッ素原子を含む重合体を多量に添加することは、レジスト性能、例えば現像後のレジストパターン断面形状の矩形性など、本来感放射性樹脂組成物が有するレジスト性能を損なうという課題がある。
【0009】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、得られるパターン形状が良好であり、且つ液浸露光の際に十分なレジスト膜表面の撥水性を発現する感放射線性樹脂組成物及びそれを用いたレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、比誘電率が30以上の低分子化合物を添加することにより、前記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は以下の通りである。
[1]ベース樹脂となる重合体(A)、感放射線性酸発生剤(B)、フッ素原子を含む重合体(C)、及び比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物(D)を含有し、前記低分子化合物(D)の前記重合体(A)100質量部に対する含有量が、10質量部以上500質量部以下である感放射線性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、得られるパターン形状が良好であり、且つ液浸露光の際に十分なレジスト膜表面の撥水性を発現するため、化学増幅型レジストとして好適に利用することができる。そのため、本発明における感放射線性樹脂組成物は、リソグラフィー工程(特に、液浸露光プロセスを備えるリソグラフィー工程)、より好ましくはArFエキシマレーザーを光源とするリソグラフィー工程に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1〜6、参考例1、比較例2および3の組成物から得られた塗膜の後退接触角の測定値と、それぞれの組成物に含まれる低分子化合物の比誘電率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0015】
また、本明細書における「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」を意味し、「(メタ)クリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
本明細書において「置換基」とは、特に限定されるものではないが、例えば−RS1、−RS2−O−RS1、−RS2−CO−RS1、−RS2−CO−ORS1、−RS2−O−CO−RS1、−RS2−OH、−RS2−CN(RS1は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜30のアリール基を示し、これらの基の有する水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。RS2は炭素数1〜10のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基、炭素数6〜30のアリーレン基、またはこれらの基の有する水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基もしくは単結合を示す。)、ハロゲン原子を挙げることができる。
【0016】
また、「置換基を有する」とは、上記置換基を1種単独で1つ以上有すること、または上記置換基のうち複数種を各1つ以上有することを示す。
【0017】
[1]感放射線性樹脂組成物
本発明の感放射線性樹脂組成物は、ベース樹脂となる重合体(A)と、感放射線性酸発生剤(B)と、フッ素原子を含む重合体(C)と、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物(D)(以下、「化合物(D)」ともいう。)と、を含有するものである。
【0018】
尚、本発明の感放射線性樹脂組成物は、前記重合体(A)、前記感放射線性酸発生剤(B)、前記重合体(C)及び前記化合物(D)以外にも、酸拡散制御剤(以下、「酸拡散制御剤(E)」ともいう)、各種添加剤(以下、「添加剤(F)ともいう」)、溶剤(以下、「溶剤(G)」ともいう)等を更に含有するものであってもよい。
【0019】
以下、本発明の感放射線性樹脂組成物を構成する各成分について具体的に説明する。
【0020】
[1−1]重合体(A)
重合体(A)(以下、「重合体(A)」ともいう)は、本発明の感放射線性樹脂組成物のベース樹脂となるものである。ベース樹脂により、フォトレジスト膜のうち、露光された部分と露光されていない部分との間に現像液に対する溶解性の差を生じる。このような重合体(A)としては、例えば、酸解離性基を有するアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の樹脂であって、酸解離性基が解離したときにアルカリ易溶性となる重合体(以下、「重合体(A1)」ともいう)や、アルカリ現像液と親和性を示す官能基、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基等の酸素含有官能基を1種以上有する、アルカリ現像液に可溶な重合体(以下、「重合体(A2)」ともいう)がある。重合体(A1)は、ポジ型感放射線性樹脂組成物のベース樹脂として好適に用いることができる。また、重合体(A2)は、ネガ型感放射線性樹脂組成物のベース樹脂として好適に用いることができる。
【0021】
(フッ素原子の含有率)
本発明の感放射線性樹脂組成物において、上記重合体(A)に含まれるフッ素原子の含有率は、後述する重合体(C)に含まれるフッ素原子の含有率よりも小さいことが好ましい。これにより、重合体(C)がフォトレジスト膜表層に偏在し易くなる。従って、形成するフォトレジスト膜の表層部分の撥水性を高めることができ、液浸露光時に液浸上層膜を別途形成しなくても良好な撥水性を有するフォトレジスト膜を形成することができる。なお、重合体(A)におけるフッ素原子の具体的含有率は、重合体(A)全体を100質量%とした場合に、0質量%以上20質量%以下が好ましく、0質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
【0022】
[1−1−1]重合体(A1)
前記重合体(A1)は酸解離性基を有しており、アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の樹脂であり、酸解離性基が解離したときにアルカリ易溶性となる樹脂である。酸解離性基とは、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基中の水素原子を置換した基をいい、酸の存在下で解離する基をいう。このような酸解離性基の例としては、置換メチル基、1−置換エチル基、1−置換−n−プロピル基、1−分岐アルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、環式酸解離性基等がある。また、「アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性」とは、重合体(A1)を含有する感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたフォトレジスト膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、当該フォトレジスト膜の代わりに重合体(A1)のみを用いて形成した被膜を現像した場合に、被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質をいう。このような重合体(A1)としては酸解離性基を有する繰り返し単位を含むものを挙げることができる。
【0023】
〔酸解離性基を有する繰り返し単位〕
酸解離性基を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(P)」ともいう。)としては、下記一般式(P−1)で表されるものを挙げることができる。
【0024】
【化1】
【0025】
一般式(P−1)中、Rは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
は酸解離性基を示す。
【0026】
一般式(P−1)中のRは、一般式(P−2)で表される基であることが好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
一般式(P−2)中、Rp1は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基を示し、Rp2及びRp3は、相互に独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基を示すか、或いは相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに形成される炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を示す。
【0029】
一般式(P−2)中、Rp1〜Rp3として表される基のうち、炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等がある。
【0030】
また、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基としては、例えば、アダマンタン骨格、ノルボルナン骨格等の有橋式骨格や、シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン骨格を有する基;これらの基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種又は1個以上で置換した基等の脂環式骨格を有する基がある。
【0031】
これらの中でも、Rp1が炭素数1〜4のアルキル基であり、Rp2及びRp3が相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともにアダマンタン骨格またはシクロアルカン骨格を有する2価の基を形成することが好ましい。
【0032】
繰り返し単位(P−1)の具体例としては、下記式(P−i)〜(P−iv)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0033】
【化3】
【0034】
一般式(P−i)〜(P−iv)中、Rは、一般式(P−1)の説明と同義である。Rp1〜Rp3は、一般式(P−2)の説明と同義であり、相互に独立である。Rp2及びRp3は相互に結合してそれぞれが結合している炭素原子とともに炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成していてもよい。nは相互に独立に1〜3の整数を示す。
【0035】
前記重合体(A1)は、繰り返し単位(P)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0036】
また、重合体(A)は、ラクトン骨格を含有する繰り返し単位を更に含むことが好ましい。重合体(A)がラクトン骨格を含有する繰り返し単位を含むことにより、当該感放射線性樹脂組成物の現像性を高めることができる。
(ラクトン構造を有する繰り返し単位)
ラクトン構造を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(L)」ともいう。)としては、下記式(L−1)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0037】
【化4】
【0038】
上記一般式(L−1)において、Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。RL1は単結合または2価の連結基を示す。RLcはラクトン構造を有する1価の有機基を示す。
【0039】
上記一般式(L−1)中、RL1で示される2価の連結基としては、例えば炭素数1〜3のアルカンジイル基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらを組み合わせた基等を挙げることができる。なお、これらを組み合わせた基である場合、他の基を介して同一の基を複数組み合わせたものであってもよい。
【0040】
上記RL1としては、より優れた現像性を発揮することができる点から、単結合であることが好ましい。
【0041】
上記一般式(L−1)中、RLcとしては下記一般式式(Lc−1)〜(Lc−6)で表されるものを挙げることができる。
【0042】
【化5】
【0043】
一般式(Lc−1)〜(Lc−6)において、RLc1はそれぞれ独立に酸素原子又はメチレン基を示す。RLc2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。nLc1はそれぞれ独立に0または1である。nLc2は0〜3の整数である。「*」は一般式(L−1)中のRL1に結合する結合手を示す。また、一般式(Lc−1)〜(Lc−6)で表される基は置換基を有していてもよい。なお、これらの基の中でも、一般式(Lc−1)で表される基が好ましい。
【0044】
繰り返し単位(L)の具体例としては、特開2007−304537号公報[0054]〜[0057]段落に記載のもの、下記式で表されるものを挙げることができる。
【0045】
【化6】
【0046】
上記各式において、Rは水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0047】
なお、前記重合体(A1)は繰り返し単位(L)を1種単独で又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。上記繰り返し単位(L)を与える好ましい単量体としては、国際公開2007/116664号パンフレット[0043]段落、に記載のものを挙げることができる。
【0048】
また、前記重合体(A)は、前述の繰り返し単位以外に、下記一般式(3)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3)」ともいう。)、及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(4)」ともいう。)のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。重合体(A)が繰り返し単位(3)又は繰り返し単位(4)を含むことにより、当該感放射線性樹脂組成物のレジスト性能をより高めることができる。
【0049】
【化7】
【0050】
一般式(3)において、Rは水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示し、Rは炭素数7〜20の1価の多環型脂環式炭化水素基を示す。
【0051】
【化8】
【0052】
一般式(4)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Yは単結合又は炭素数1〜3の2価の有機基を示し、Yは互いに独立して、単結合又は炭素数1〜3の2価の有機基を示し、Rは互いに独立して、水素原子、水酸基、シアノ基、又はCOOR10基を示す。但し、R10は水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数3〜20の脂環式のアルキル基を示す。
【0053】
一般式(3)においてRで示される炭素数7〜20の1価の多環型脂環式炭化水素基としては、ノルボルナン骨格を有する基やアダマンタン骨格を有する基等を挙げることができる。これらの中でも、ノルボルナン骨格を有する基が好ましい。
【0054】
前記繰り返し単位(3)を与える好ましい単量体としては、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[4.4.0]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−ビシクロ[2.2.2]オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルエステル、(メタ)アクリル酸−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニルエステル、(メタ)アクリル酸−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニルエステル等を挙げることができる。
【0055】
前記重合体(A)は、さらに、環状カーボナート構造を有する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0056】
(環状カーボナート構造を有する繰り返し単位)
環状カーボナート構造を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(Cc)」ともいう。)としては、下記式(C−1)で表されるものを挙げることができる。
【0057】
【化9】
【0058】
上記一般式(C−1)において、Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。RC1は単結合または2価の連結基を示す。RCcは環状カーボネート構造を有する1価の有機基を示す。
【0059】
上記一般式(C−1)中、RCcとしては下記一般式式(Cc−1)または(Cc−2)で表される基を挙げることができる。
【0060】
【化10】
【0061】
一般式(Cc−1)中、nC1は0〜2の整数を示す。一般式(Cc−2)中、nC2〜nC5は、それぞれ独立に、0〜2の整数を示す。一般式(Cc−1)及び一般式(Cc−2)中、「*」は、一般式(C−1)中のRC1に結合する結合手を示す。また、一般式(Cc−1)〜(Cc−2)で表される基は置換基を有していてもよい。
【0062】
上記一般式(Cc−1)または(Cc−2)で表される基としては下記一般式(Cc−11)または(Cc−21)で表されるものを挙げることができる。
【0063】
【化11】
【0064】
一般式(Cc−11)及び一般式(Cc−21)中、「*」は、一般式(C−1)中のRC1に結合する結合手を示す。
【0065】
繰り返し単位(Cc)のうち、上記式(Cc−11)または(Cc−21)で表される基を有するものの具体例としては、下記式で表されるものを挙げることができる。
【0066】
【化12】
【0067】
上記各式中、Rは水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0068】
その他繰り返し単位(Cc)の具体例としては下記式で表されるものを挙げることができる。
【0069】
【化13】
【0070】
上記各式中、Rは水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0071】
なお、繰り返し単位(Cc)を形成するための単量体は、従来公知の方法により合成することができ、具体的には、Tetrahedron Letters,Vol.27,No.32 p.3741(1986)、Organic Letters,Vol.4,No.15 p.2561(2002)等に記載された方法で合成することができる。
【0072】
なお、上記繰り返し単位(Cc)は1種単独で又は2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0073】
また、前記重合体(A)は、前述の繰り返し単位以外の繰り返し単位(以下、「他の繰り返し単位」ともいう。)を更に含んでいてもよい。
【0074】
前記他の繰り返し単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルメチル等の有橋式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸カルボキシノルボルニル、(メタ)アクリル酸カルボキシトリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸カルボキシテトラシクロウンデカニル等の不飽和カルボン酸の有橋式炭化水素骨格を有するカルボキシル基含有エステル類;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−メトキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−シクロペンチルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2−シクロヘキシルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2−(4−メトキシシクロヘキシル)オキシカルボニルエチル等の有橋式炭化水素骨格をもたない(メタ)アクリル酸エステル類;
α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸n−ブチル等のα−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、クロトンニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル、メサコンニトリル、シトラコンニトリル、イタコンニトリル等の不飽和ニトリル化合物;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、マレインアミド、フマルアミド、メサコンアミド、シトラコンアミド、イタコンアミド等の不飽和アミド化合物;N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の他の含窒素ビニル化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和カルボン酸(無水物)類;(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸2−カルボキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−カルボキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−カルボキシブチル、(メタ)アクリル酸4−カルボキシシクロヘキシル等の不飽和カルボン酸の有橋式炭化水素骨格をもたないカルボキシル基含有エステル類;
1,2−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルジメチロールジ(メタ)アクリレート等の有橋式炭化水素骨格を有する多官能性単量体;
メチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンジ(メタ)アクリレート、1,3−ビス(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンジ(メタ)アクリレート等の有橋式炭化水素骨格をもたない多官能性単量体等の多官能性単量体の重合性不飽和結合が開裂した単位を挙げることができる。
【0075】
前記重合体(A1)は、前記他の繰り返し単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0076】
また、前記重合体(A1)における前記繰り返し単位(P)の含有割合は、重合体(A1)に含まれる全繰り返し単位の合計を100モル%とした場合に、10〜90モル%であることが好ましく、より好ましくは20〜80モル%、更に好ましくは30〜70モル%である。この繰り返し単位(P)の含有割合が10〜90モル%である場合、レジストとしての現像性、欠陥性、LWR、PEB温度依存性等を向上させることができるため好ましい。
【0077】
前記繰り返し単位(L)の含有割合は、重合体(A1)に含まれる全繰り返し単位の合計を100モル%とした場合に、10〜70モル%であることが好ましく、より好ましくは15〜65モル%、更に好ましくは20〜60モル%である。この繰り返し単位(2)の含有割合が10〜70モル%である場合、レジストとしての現像性を向上させることができるため好ましい。
【0078】
前記繰り返し単位(3)の含有割合は、重合体(A1)に含まれる全繰り返し単位の合計を100モル%とした場合に、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは25モル%以下である。前記繰り返し単位(4)の含有割合は、重合体(A1)に含まれる全繰り返し単位の合計を100モル%とした場合に、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは25モル%以下である。前記繰り返し単位(Cc)の含有割合は、重合体(A1)に含まれる全繰り返し単位の合計を100モル%とした場合に、10〜70モル%であることが好ましく、より好ましくは15〜65モル%、更に好ましくは20〜60モル%である。
【0079】
前記他の繰り返し単位の含有割合は、重合体(A1)に含まれる全繰り返し単位の合計を100モル%とした場合に、50モル%以下であることが好ましく、より好ましくは40モル%以下である。
【0080】
(重合体(A)の製造方法)
重合体(A)の製造方法は特に限定されず、ラジカル重合等の常法に従って合成することができる。特に、(1)各単量体とラジカル開始剤を含有する反応溶液を、反応溶媒若しくは単量体を含有する反応溶液に滴下して重合反応させる方法、(2)各単量体を含有する反応溶液と、ラジカル開始剤を含有する反応溶液とを、各々別々に反応溶媒若しくは単量体を含有する反応溶液に滴下して重合反応させる方法、(3)各単量体について調製された反応溶液と、ラジカル開始剤を含有する反応溶液とを、各々別々に反応溶媒若しくは単量体を含有する反応溶液に滴下して重合反応させる方法等が好ましい。
【0081】
各反応における反応温度は、使用する開始剤の種類によって適宜設定できるが、例えば、30℃〜180℃が一般的である。尚、各反応における反応温度は、40℃〜160℃であることが好ましく、より好ましくは50℃〜140℃である。
【0082】
滴下に要する時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体によって適宜設定できるが、30分〜8時間であることが好ましく、より好ましくは45分〜6時間、更に好ましくは1時間〜5時間である。
また、滴下時間を含む全反応時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体によって適宜設定できるが、30分〜8時間であることが好ましく、より好ましくは45分〜7時間、更に好ましくは1時間〜6時間である。
【0083】
単量体を含有する溶液に滴下する場合、滴下する溶液中のモノマーの含有割合は、重合に用いられる全単量体量に対して30モル%以上が好ましく、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。
【0084】
前記重合体(A)の重合に使用されるラジカル開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−2−プロペニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1―ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル)等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
また、重合に使用する溶媒としては、使用する単量体を溶解し、重合を阻害するような溶媒でなければ使用可能である。尚、重合を阻害する溶媒としては、重合を禁止する溶媒、例えば、ニトロベンゼン類や、連鎖移動を起こさせる溶媒、例えば、メルカプト化合物を挙げることができる。
【0086】
前記重合に好適に使用することができる溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル及びラクトン類、ニトリル類、並びにこれらの溶媒の混合液を挙げることができる。
【0087】
前記重合反応後、得られた樹脂は、再沈殿法により回収することが好ましい。即ち、重合終了後、反応液は再沈溶媒に投入され、目的の樹脂が粉体として回収される。
【0088】
この再沈溶媒としては、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル及びラクトン類、ニトリル類、並びにこれらの溶媒の混合液を挙げることができる。
【0089】
また、重合体(A)には、これまでに説明した単量体由来の低分子量成分が含まれるが、その含有割合は、重合体(A)の総量(100質量%)に対して、0.1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.07質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。この低分子量成分の含有割合が0.1質量%以下である場合、重合体(A)を使用してレジスト膜を作製し、液浸露光を行う際に、レジスト膜に接触した水への溶出物の量を少なくすることができる。更に、レジスト保管時にレジスト中に異物が発生することがなく、レジスト塗布時においても塗布ムラが発生することなく、レジストパターンを形成する際における欠陥の発生を十分に抑制することができる。
【0090】
尚、本発明において、前記単量体由来の低分子量成分は、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマーが挙げられ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算分子量が500以下の成分のこととする。このポリスチレン換算分子量が500以下の成分は、例えば、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法との組合せ等により除去することができる。
【0091】
また、この低分子量成分は、重合体(A)の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析することができる。尚、重合体(A)は、ハロゲン、金属等の不純物が少ないほど好ましく、それにより、レジストとしたときの感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等を更に改善することができる。
【0092】
また、重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1000〜100000であることが好ましく、より好ましくは1000〜30000、更に好ましくは1000〜20000である。この重合体(A)のMwが1000未満の場合、レジストとした際の耐熱性が低下する傾向がある。一方、このMwが100000を超える場合、レジストとした際の現像性が低下する傾向がある。
【0093】
また、重合体(A)のMwとGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.0〜5.0であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0、更に好ましくは1.0〜2.0である。
【0094】
また、本発明における感放射線性樹脂組成物には、前記重合体(A)が1種類のみ含有されていてもよいし、2種以上を含有されていてもよい。
【0095】
[1−2]感放射線性酸発生剤(B)
前記感放射線性酸発生剤(B)(以下、単に「酸発生剤(B)」ともいう。)は、露光により酸を発生するものであり、光酸発生剤として機能する。この酸発生剤は、重合体(A1)と共に用いた場合には露光により発生した酸によって、感放射線性樹脂組成物に含有される重合体(A1)(及び重合体(C))中に存在する酸解離性基を解離させて、樹脂をアルカリ可溶性とする。そして、その結果、レジスト被膜の露光部がアルカリ現像液に易溶性となり、これによりポジ型のレジストパターンが形成される。このような酸発生剤(B)としては、例えば、特開2009−134088号公報の段落[0080]〜[0113]に記載されている化合物などを挙げることができる。
【0096】
酸発生剤(B)としては、具体的には、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、シクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシル・メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジシクロヘキシル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(1−ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、
トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、パーフルオロ−n−オクタンスルホニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシイミドトリフルオロメタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、N−ヒドロキシスクシイミドパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネートが好ましい。なお、酸発生剤(B)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0097】
酸発生剤(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2質量部以上27質量部以下であることが更に好ましく、5質量部以上25質量部以下であることが特に好ましい。上記含有量が過少であると、形成したフォトレジスト膜の感度及び解像度が低下するおそれがある。一方、過剰であると、感放射線性樹脂組成物の塗布性及が悪化したり現像後のパターン形状が悪化したりするおそれがある。
【0098】
[1−3]重合体(C)
この重合体(C)は、フッ素原子を含む重合体であり、本発明の感放射線性樹脂組成物に対して高分子添加剤として含有される成分である。
【0099】
重合体(C)は、重合体(A)よりもフッ素原子の含有率が高いものであることが好ましい。重合体(C)と重合体(A)とを含む感放射線性樹脂組成物を用いてフォトレジスト膜を形成した場合、フォトレジスト膜の表面において重合体(C)の分布が高くなる傾向がある。即ち、重合体(C)が、フォトレジスト膜の最表面に偏在する傾向がある。従って、フォトレジスト膜と液浸媒体とを遮断することを目的として、フォトレジスト膜に、上層膜を形成する必要がなく、そのまま、液浸露光法に好適に用いることができる。
【0100】
尚、本発明の効果を十分に発揮するためには、上記重合体(A)におけるフッ素原子の含有率と、上記重合体(C)におけるフッ素原子の含有率との差が1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0101】
重合体(C)におけるフッ素原子の含有率は、重合体(C)全体を100質量%とした場合に、好ましくは5質量%以上、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは5〜40質量%である。また、重合体(C)におけるフッ素原子の含有率は、3atom%以上20atom%以下が好ましく、5atom%以上15atm%以下がさらに好ましい。このようなフッ素含有率とすることで、重合体(C)がフォトレジスト膜の最表面に偏在化しやすく、当該感放射線性樹脂組成物を液浸露光法により好適に用いることができる。
なお、重合体(C)におけるフッ素原子含有率は、13C−NMRを用いて測定することができる。
【0102】
重合体(C)は、重合体中にフッ素原子を有するものであれば特に限定されないが、フッ素原子を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(C1)」ともいう)を有する重合体であることが好ましい。このような繰り返し単位(C1)の具体例としては、下記一般式(C1−1)〜(C1−3)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(C1−1)〜(C1−3)」ともいう)を挙げることができる。重合体(C)が、繰り返し単位(C1−1)〜(C1−3)を有する場合、フォトレジスト膜中の酸発生剤や酸拡散制御剤等の液浸露光液に対する溶出を抑制することができる。また、フォトレジスト膜と液浸露光液との後退接触角の向上により、液浸露光液に由来する水滴がフォトレジスト膜上に残り難く、液浸露光液に起因する欠陥の発生を抑制することもできる。
【0103】
【化14】
【0104】
一般式(C1−1)〜(C1−3)中、R28は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。一般式(C1−1)中、Rfは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基を示す。一般式(C1−2)中、R29は、(g+1)価の連結基を示す。gは、1〜3の整数を示す。一般式(C1−3)中、R30は、2価の連結基を示す。一般式(C1−2)及び(C1−3)中、R31は、水素原子又は1価の有機基を示す。Rfは、相互に独立に、水素原子、電子吸引性基を示す。
【0105】
(繰り返し単位(C1−1))
一般式(C1−1)中のRfの例としては、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基や、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数4〜20の脂環式炭化水素基又はそれから誘導される基がある。
【0106】
少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基の部分フッ素化或いはパーフルオロアルキル化した基等を挙げることができる。
【0107】
また、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数4〜20の脂環式炭化水素基又はそれから誘導される基の例としては、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−(1−シクロヘキシルエチル)基、1−(2−シクロヘキシルエチル基)、シクロヘプチル基、シクロヘプチルメチル基、1−(1−シクロヘプチルエチル)基、1−(2−シクロヘプチルエチル)基、2−ノルボルニル基等の脂環式炭化水素基の部分フッ素化或いはパーフルオロアルキル化した基等がある。
【0108】
Rfとしては、これらの中でも、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状のアルキル基がさらに好ましい。Rfとして、これらの基を用いることで、重合体(C)の表面への偏在化が高まることなどにより、各種レジスト性能を高めることができる。
【0109】
繰り返し単位(C1−1)を与える単量体の好適例としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル等がある。
【0110】
(繰り返し単位(C1−2)及び(C1−3))
一般式(C1−2)及び(C1−3)中、R31は、水素原子又は1価の有機基を示す。1価の有機基としては炭素数1〜30の1価の置換基を有していてもよい炭化水素基、酸解離性基やアルカリ解離性基を挙げることができる。
【0111】
炭素数1〜30の1価の炭化水素基の例としては、炭素数1〜10で直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基や炭素数3〜30の脂環式炭化水素基があり、炭素数1〜7の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基及び炭素数3〜7の脂環式炭化水素基が好ましい。
【0112】
炭素数1〜10で直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基等を挙げることができる。また、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。また、この炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0113】
一般式(C1−2)及び(C1−3)中、R31として表される基のうち、酸解離性基とは、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の極性官能基中の水素原子を置換する基であって、酸の存在下で解離する基をいう。具体的には、t−ブトキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、(チオテトラヒドロピラニルスルファニル)メチル基、(チオテトラヒドロフラニルスルファニル)メチル基や、アルコキシ置換メチル基、アルキルスルファニル置換メチル基等を挙げることができる。なお、アルコキシ置換メチル基におけるアルコキシル基(置換基)、アルキルスルファニル置換メチル基におけるアルキル基(置換基)としては、例えば、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数1〜4のアルキル基がある。
【0114】
また、酸解離性基の具体例としては、下記一般式(12)で表される基も挙げることができる。
【0115】
−CR321322323 (12)
(一般式(12)中、R321〜R323は、一般式(P−2)中のRp1〜Rp3と同義である。)
これらの酸解離性基の中でも、一般式(12)で表される基、t−ブトキシカルボニル基、アルコキシ置換メチル基等が好ましい。繰り返し単位(C1−2)においては、t−ブトキシカルボニル基、アルコキシ置換メチル基が更に好ましい。繰り返し単位(C1−3)においては、アルコキシ置換メチル基、一般式(12)で表される基が更に好ましい。
【0116】
重合体(C)が、酸解離性基を有する繰り返し単位(C1−2)又は(C1−3)を有する重合体である場合、フォトレジスト膜の露光部における重合体(C)の溶解性を向上させることができるので好ましい。これは、後述するレジストパターン形成方法における露光工程において、フォトレジスト膜の露光部で発生した酸と反応して極性基を生じるためと考えられる。
【0117】
一般式(C1−2)及び(C1−3)中、R31として表される基のうち、アルカリ解離性基とは、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の極性官能基中の水素原子を置換する基であって、アルカリの存在下で解離する基をいう。アルカリ解離性基としては前記の性質を示すものであれば特に限定されないが、一般式(C1−2)においては、下記一般式(R−1)で表される基が好ましい。また、一般式(C1−3)においては、前記一般式(R−2)〜(R−4)で表される基が好ましい。
【0118】
【化15】
【0119】
一般式(R−1)中、R41は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜7の炭化水素基を示す。
【0120】
一般式(R−1)中、R41の好適例としては、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1〜7の直鎖状又は分岐状のアルキル基や、水素原子の全部又は一部がフッ素原子に置換された炭素数3〜7の脂環式炭化水素基がある。
【0121】
炭素数1〜7の直鎖状又は分岐状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基等を挙げることができる。
【0122】
また、炭素数3〜7の脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0123】
41として表される基は、炭素数1〜7の直鎖状又は分岐状のアルキル基で、かつカルボニル基に連結する炭素原子に結合する水素原子の1つがフッ素原子で置換されるか又はカルボニル基に連結する炭素原子に結合する水素原子は置換されず、他の炭素原子に結合する全ての水素原子がフッ素原子で置換された基が更に好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基が特に好ましい。
【0124】
【化16】
【0125】
一般式(R−2)中、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数2〜10のアシル基、又は炭素数2〜10のアシロキシ基を示す。但し、Rが複数存在する場合は相互に独立である。mは、0〜5の整数を示す。
【0126】
【化17】
【0127】
一般式(R−3)中、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数2〜10のアシル基、又は炭素数2〜10のアシロキシ基を示す。但し、Rが複数存在する場合は相互に独立である。mは、0〜4の整数を示す。
【0128】
【化18】
【0129】
一般式(R−4)中、R及びRは、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基を示す。但し、R及びRが互いに結合してそれぞれが結合する炭素原子とともに炭素数4〜20の脂環式構造を形成してもよい。
【0130】
一般式(R−2)中のR及び(R−3)中のRとして表される基のうち、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等がある。これらの中でも、フッ素原子が好ましい。
【0131】
また、炭素数1〜10のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、2−(2−メチルプロピル)基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(2−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(2−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基、3−(3−メチルペンチル)基等がある。
【0132】
更に、炭素数2〜10のアルコキシル基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等がある。また、炭素数2〜10のアシル基の例としては、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基等がある。更に、炭素数2〜10のアシロキシ基の例としては、アセトキシ基、エチリルオキシ基、ブチリルオキシ基、t−ブチリルオキシ基、t−アミリルオキシ基、n−ヘキサンカルボニロキシ基、n−オクタンカルボニロキシ基等がある。
【0133】
一般式(R−4)中、R及びRとして表される基のうち、炭素数1〜10のアルキル基としては、R及びRで例示した炭素数1〜10のアルキル基と同じものを例示することができる。
【0134】
また、R及びRが互いに結合してそれぞれが結合する炭素原子とともに形成される炭素数4〜20の脂環式構造の例としては、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、1−(1−シクロペンチルエチル)基、1−(2−シクロペンチルエチル)基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−(1−シクロヘキシルエチル)基、1−(2−シクロヘキシルエチル基)、シクロヘプチル基、シクロヘプチルメチル基、1−(1−シクロヘプチルエチル)基、1−(2−シクロヘプチルエチル)基、2−ノルボルニル基等がある。
【0135】
一般式(R−4)として表される基の具体例としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−(2−メチルブチル)基、1−(3−メチルブチル)基、2−(3−メチルブチル)基、ネオペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−(2−メチルペンチル)基、1−(3−メチルペンチル)基、1−(4−メチルペンチル)基、2−(3−メチルペンチル)基、2−(4−メチルペンチル)基、3−(2−メチルペンチル)基等を挙げることができる。これらの中でも、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基が好ましい。
【0136】
重合体(C)が、アルカリ解離性基を有する繰り返し単位(C1−2)又は(C1−3)を有する重合体である場合、重合体(C)のアルカリ現像液に対する親和性を向上させることができるので好ましい。これは、後述するレジストパターン形成方法の現像工程において、重合体(C)が現像液と反応し、極性基を生じるためであると考えられる。
【0137】
一般式(C1−2)及び(C1−3)中、R31として表される基が水素原子である場合、繰り返し単位(C1−2)及び(C1−3)は、極性基であるヒドロキシル基やカルボキシル基を有することになる。重合体(C)が、このような繰り返し単位を有することにより、後述するレジストパターン形成方法の現像工程において、重合体(C)のアルカリ現像液に対する親和性を向上させることができる。
【0138】
一般式(C1−2)中、R29は、(g+1)価の連結基を示す。このような連結基の例としては、単結合又は炭素数1〜30の(n+1)価の炭化水素基がある。また、これらの炭化水素基と、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、−CO−O−基、又は−CO−NH−基との組み合わせがある。なお、gは、1〜3の整数を示す。但し、gが2又は3の場合、一般式(C1−2)において下記一般式(C1−2−a)で表される構造は相互に独立である。
【0139】
【化19】
【0140】
一般式(C1−2−a)中、R31及びRfは、一般式(C1−2)中のR31及びRfと同じである。
【0141】
鎖状構造のR29の例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、2−メチルプロパン、ペンタン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素から水素原子を(g+1)個取り除いた構造の(g+1)価の脂肪族炭化水素基等がある。
【0142】
また、環状構造のR29の例としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン等の炭素数4〜20の脂環式炭化水素から水素原子を(g+1)個取り除いた構造の(g+1)価の脂環式炭化水素基;ベンゼン、ナフタレン等の炭素数6〜30の芳香族炭化水素から水素原子を(g+1)個取り除いた構造の(g+1)価の芳香族炭化水素基等がある。
【0143】
更に、R29のうち、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、−CO−O−基、又は−CO−NH−基を有する構造の例としては、下記一般式(R29−1)〜(R29−8)で表される構造がある。
【0144】
【化20】
【0145】
一般式(R29−1)〜(R29−8)中、R33は、相互に独立に、単結合、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。
【0146】
一般式(R29−1)〜(R29−8)中、R33として表される基のうち、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、及び炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、一般式(C1−2−a)中のR29の説明をそのまま適用することができる。また、R29は置換基を有していてもよい。
【0147】
一般式(C1−3)中、R30として表される連結基としては、一般式(C1−2−a)中のR29の説明において、g=1とした場合の説明を適用することができる。
【0148】
一般式(C1−2)又は一般式(C1−3)において、Rfとして表される電子求引性基としては、フッ素原子、又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基としては、一般式(C1−1)中のRfと同様のことがいえる。
(C1−2)及び(C1−3)のそれぞれにおいて、全てのRfが水素原子でないことが好ましい。
また、(C1−2)及び(C1−3)のそれぞれにおいて、全てのRfが水素原子である場合、R31は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましい。
【0149】
一般式(C1−2)及び(C1−3)中、下記一般式(C1−2−b)で表される部分構造の例としては、下記式(C1−2−b1)〜(C1−2−b5)で表される部分構造がある。これらの中でも、一般式(C1−2)においては、下記式(C1−2−b5)で表される部分構造が好ましく、一般式(C1−3)においては、下記式(C1−2−b3)で表される部分構造が好ましい。
【0150】
【化21】
【0151】
【化22】
【0152】
繰り返し単位(C1−2)の具体例としては、下記一般式(C1−2−1)及び(C1−2−2)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0153】
【化23】
【0154】
一般式(C1−2−1)及び(C1−2−2)中、R28、R29、R31、及びgは、一般式(C1−2)中のR28、R29、R31、及びgと同様のことがいえる。このような繰り返し単位を与える化合物の例としては、下記一般式(C1−2−m1)〜(C1−2−m5)で表される化合物がある。
【0155】
【化24】
【0156】
一般式(C1−2−m1)〜(C1−2−m5)中、R28及びR31は、一般式(C2−1)中のR28及びR31と同様のことがいえる。
【0157】
一般式(C1−2)に対応する一連の化合物に関して、R31として表される基が酸解離性基又はアルカリ解離性基である場合、例えば、R31が水素原子である化合物を原料として合成することができる。一例としてR31が一般式(R−1)で表される基である化合物について示すと、R31が水素原子である化合物を従来公知の方法によりフルオロアシル化することで形成することができる。より具体的には、(1)酸の存在下、アルコールとフルオロカルボン酸を縮合させてエステル化する、(2)塩基の存在下、アルコールとフルオロカルボン酸ハロゲン化物を縮合させてエステル化する等の方法を挙げることができる。
【0158】
繰り返し単位(C1−3)の具体例としては、下記一般式(C1−3−1)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0159】
【化25】
【0160】
一般式(C1−3−1)中、R28、R30及びR31は、一般式(C1−3)中の、R28、R30及びR31と同様のことがいえる。このような繰り返し単位を与える化合物の例としては、下記一般式(C1−3−m1)〜(C1−3−m4)で表される化合物がある。
【0161】
【化26】
【0162】
一般式(C1−3−m1)〜(C1−3−m4)中、R28及びR31は、一般式(C1−3)中のR28及びR31説明と同様のことがいえる。
【0163】
一般式(C1−3)に対応する一連の化合物に関して、R31として表される基が酸解離性基又はアルカリ解離性基である場合、例えば、R31が水素原子である化合物やその誘導体を原料として合成することができる。一例としてR31が一般式(R−4)で表される化合物について示すと、この化合物は、例えば、下記一般式(m−1)で表される化合物と、下記一般式(m−2)で表される化合物を反応させることによって合成することができる。
【0164】
【化27】
【0165】
一般式(m−1)中、R28、R30及びRfは、一般式(C1−3)中のR28、R30及びRfと同様のことがいえる。R34は、水酸基又はハロゲン原子を示す。
【0166】
【化28】
【0167】
一般式(m−2)中、R及びRは、一般式(R−4)中のR及びRと同様のことがいえる。
【0168】
重合体(C)は、繰り返し単位(C1−1)〜(C1−3)を1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよいが、繰り返し単位(C1−1)〜(C1−3)の少なくとも2種を有することが好ましく、繰り返し単位(C1−2)と繰り返し単位(C1−3)を組み合わせて有することが特に好ましい。また、繰り返し単位(C1−1)〜(C1−3)を1種のみ有する場合は、繰り返し単位(C1−1)を有することが好ましい。
【0169】
重合体(C)は、繰り返し単位(C1)以外にも、繰り返し単位(C1)以外の酸解離性基を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(C2)」ともいう)、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位(但し、繰り返し単位(C1)に該当するものを除く。)(以下、「繰り返し単位(C3)」ともいう)、又はラクトン骨格を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(C4)」ともいう)を、更に有することが好ましい。
【0170】
重合体(C)として、繰り返し単位(C2)を有するものを用いた場合、フォトレジスト膜の前進接触角と後退接触角との差を小さくすることができ、露光時のスキャン速度向上に対応することができる。繰り返し単位(C2)の好適例としては、前記繰り返し単位(P)がある。
【0171】
また、繰り返し単位(C2)としては、繰り返し単位(P)の中でも、一般式(C2−1)で表される繰り返し単位が特に好ましい。
【0172】
【化29】
【0173】
一般式(C2−1)中、R15は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。R35は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。kは、1〜4の整数を示す。
【0174】
一般式(C2−1)中、R35として表される炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等がある。
【0175】
重合体(C)は、繰り返し単位(C2)を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて有していてもよい。また、(C)重合体として、繰り返し単位(C3)又は繰り返し単位(C4)を有する場合、アルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる。
【0176】
繰り返し単位(C3)におけるアルカリ可溶性基は、pKaが4〜11の水素原子を有する官能基であることが好ましい。これは、アルカリ現像液に対する溶解性向上の観点からである。このような官能基の具体例としては、一般式(C−3a)や式(C−3b)で表される官能基等を挙げることができる。
【0177】
【化30】
【0178】
一般式(C−3a)中、R36は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基を示す。
【0179】
一般式(C−3a)中、R36として表される少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、トリフルオロメチル基等が好ましい。
【0180】
なお、繰り返し単位(C3)の主鎖骨格は、特に限定されるものではないが、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、又はα−トリフルオロアクリル酸エステル等の骨格であることが好ましい。
【0181】
繰り返し単位(C3)の例としては、一般式(C3−a−1)、(C3−b−1)で表される化合物に由来する繰り返し単位がある。
【0182】
【化31】
【0183】
一般式(C3−a−1)及び(C3−b−1)中、R38は、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。R39は、単結合又は炭素数1〜20の2価の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示す。一般式(C3−a−1)中、R37は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基を示す。nは、0又は1を示す。
【0184】
一般式(C3−a−1)及び(C3−b−1)中、R39として表される基に関しては、一般式(C1−3)におけるR30と同様のことがいえる。また、一般式(C3−a−1)中、R37として表される基は、一般式(C3−a)中のR36と同様のことがいえる。
【0185】
重合体(C)は、繰り返し単位(C3)を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて有してもよい。
【0186】
繰り返し単位(C4)の例としては、前記繰り返し単位(L)がある。
【0187】
ここで、重合体(C)中の全繰り返し単位の合計を100mol%とした場合の、各繰り返し単位の好ましい含有割合を以下に示す。繰り返し単位(C1)の含有割合は、20〜90mol%であることが好ましく、20〜80mol%であることが特に好ましい。
【0188】
また、繰り返し単位(C2)の含有割合は、通常80mol%以下であり、好ましくは20〜80mol%であり、より好ましくは30〜75mol%であり、更に好ましくは30〜70mol%である。繰り返し単位(C2)の含有割合がこの範囲内である場合には、前進接触角と後退接触角との差を小さくするという観点から特に有効である。更に、繰り返し単位(C3)の含有割合は、通常50mol%以下であり、好ましくは5〜30mol%であり、更に好ましくは5〜20mol%である。繰り返し単位(C4)の含有割合は、通常50mol%以下であり、好ましくは5〜30mol%であり、更に好ましくは5〜20mol%である。
【0189】
前記重合体(C)は、各繰り返し単位を与える単量体を用いて、前述の重合体(A)の製造方法と同様の方法によって合成することができる。
【0190】
また、重合体(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1000〜100000であることが好ましく、より好ましくは1000〜30000、更に好ましくは1000〜20000である。この重合体(C)のMwが1000未満の場合、レジストとした際の耐熱性が低下する傾向がある。一方、このMwが100000を超える場合、レジストとした際の現像性が低下する傾向がある。また、Mwが上記範囲の重合体(C)を用いることで、化合物(D)による偏在化促進能をより効果的に発揮させることができる。
【0191】
また、重合体(C)のMwとGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.0〜5.0であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0、更に好ましくは1.0〜2.0である。
【0192】
また、本発明における感放射線性樹脂組成物には、前記重合体(C)が1種類のみ含有されていてもよいし、2種以上含有されていてもよい。
【0193】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、重合体(C)の含有量は、前記重合体(A)を100質量部とした場合に、固形分換算で、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。この重合体(C)の含有量が上記範囲内であると、液浸露光においてレジスト膜表面に撥水性を発現させる作用が得られる点で好ましい。
【0194】
[1−4]化合物(D)
前記化合物(D)は、液浸露光においてレジスト膜表面に撥水性を発現させる作用を示す重合体(C)を、効率的にレジスト膜表面に偏析させる効果を有するものである。そのため、この化合物(D)を含有させることで、重合体(C)の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って、パターン形状等のレジスト基本特性を損なうことなく、レジスト膜の撥水性を維持することができる。
【0195】
なお、「低分子化合物」とは非重合体であることを示し、好ましくは分子量が50以上500以下のものを示す。
【0196】
化合物(D)は、30以上の比誘電率を有する。この「比誘電率」は、媒質の誘電率と真空の誘電率の比のことであるである。なお、化合物についての比誘電率は「化学便覧 基礎編 改訂5版」等に記載された値を参照することができる。また、上記化学便覧に記載のない化合物の比誘電率としては、JIS C2138に記載の方法により、20℃において測定した値を用いることができる。
【0197】
本発明において、特定の比誘電率を有する化合物を添加することによりフォトレジスト膜の撥水性を向上させられる要因は定かではないが、特定の比誘電率を有する化合物を添加することにより膜全体の極性を高めることとなり、その結果フッ素原子を含む重合体(C)のような表面エネルギーが小さいものをより膜の上層へと偏在させることができると考えられる。なお、上記偏在化機能をより効果的に奏するために、化合物(D)の比誘電率は35以上が好ましく、40以上がさらに好ましく、45以上が特に好ましい。
【0198】
一方、化合物(D)の比誘電率の上限は、200であるが、100がさらに好ましい。この比誘電率が上記上限を超える場合は、例えば塗布性が低下する場合などがある。
【0199】
化合物(D)として、成膜工程や露光後加熱工程などのレジストパターン形成過程における揮発を抑えるため、沸点が大気圧下にて100℃以上であることが必要であり、180℃以上であることが好ましい。一方、この沸点の上限は特に限定されないが、フォトレジスト膜の形成性等を考慮すると、350℃が好ましく、300℃がさらに好ましい。
【0200】
なお、化合物(D)は上記の性質を満たす限り限定されないが、溶剤に溶解することが好ましい。また、添加することによる感度への影響が少ないことから、環状カーボネート化合物またはニトリル化合物であることが好ましい。
【0201】
環状カーボネート化合物としては、下記式で表されるものを挙げることができる。
【0202】
【化32】
【0203】
式中、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、不飽和結合を有していてもよい。
【0204】
これらの化合物の中でも、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、スクシノニトリルが特に好ましい。
【0205】
化合物(D)の具体例としては、下記の表1に記載のものが挙げられる。
【0206】
【表1】
【0207】
本発明における感放射線性樹脂組成物には、前記化合物(D)が1種類のみ含有されていてもよいし、2種以上含有されていてもよい。
【0208】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物において、前記化合物(D)の含有量は、レジスト膜表面に少ない添加量の重合体(C)を偏析させる効果を得る観点から、前記重合体(A)を100質量部とした場合に、10質量部以上500質量部以下であり、より好ましくは30質量部以上300質量部以下である。化合物(D)の含有割合が10質量部未満である場合、少量の重合体(C)添加においてレジスト膜表面の撥水性を十分に得ることができない。一方、この含有量が500質量部を超える場合、現像後のレジストパターン形状の矩形性が著しく劣化するおそれがある。
【0209】
また、同様に、レジスト膜表面に少ない添加量の重合体(C)を偏析させる効果を得る観点から、前記化合物(D)の含有量は、重合体(C)1質量部に対して4質量部以上300質量部以下が好ましく、10質量部以上220質量部以下がさらに好ましい。
【0210】
[1−5]酸拡散制御剤(E)
本発明の感放射線性樹脂組成物は、これまでに説明した重合体(A)、酸発生剤(B)、重合体(C)及び化合物(D)に加えて、酸拡散制御剤(E)を更に含有していてもよい。
【0211】
この酸拡散制御剤(E)は、露光により酸発生剤から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制するものである。即ち、酸拡散制御剤として機能するものである。このような酸拡散制御剤(E)を配合することにより、得られる感放射線性樹脂組成物は、貯蔵安定性が向上し、またレジストとしての像度が更に向上するとともに、露光から露光後の加熱処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物となる。
【0212】
前記酸拡散制御剤(E)としては、例えば、下記一般式(10)で表される化合物(酸拡散制御剤(e1))を好適に用いることができる。
【0213】
【化33】
【0214】
一般式(10)中においてR20及びR21は、相互に独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状の置換されていてもよいアルキル基、アリール基又はアラルキル基、或いはR20同士或いはR21同士が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成される炭素数4〜20の2価の飽和或いは不飽和炭化水素基若しくはその誘導体を示す。
【0215】
前記一般式(10)で表される酸拡散制御剤(e1)としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルピペラジン; N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物等を挙げることができる。
【0216】
また、前記酸拡散制御剤(E)としては、前述の酸拡散制御剤(e1)以外にも、例えば、3級アミン化合物、4級アンモニウムヒドロキシド化合物、その他含窒素複素環化合物等を挙げることができる。
【0217】
前記3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類;トリエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン等のアルカノールアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等を挙げることができる。
【0218】
前記4級アンモニウムヒドロキシド化合物としては、例えば、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。
【0219】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン等のピリジン類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール等を挙げることができる。
【0220】
また、前記酸拡散制御剤(E)としては、光崩壊性塩基を用いることができる。この光崩壊性塩基は、露光により分解して酸拡散制御性としての塩基性を失うオニウム塩化合物である。
【0221】
このようなオニウム塩化合物の具体例としては、下記一般式(11)で表されるスルホニウム塩化合物、及び下記一般式(12)で表されるヨードニウム塩化合物を挙げることができる。
【0222】
【化34】
【0223】
前記一般式(11)及び(12)におけるR22〜R26は、相互に独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子を示す。
【0224】
また、Zは、OH、R−COO、R−SO(但し、Rはアルキル基、アリール基、又はアルカリール基を示す)、又は下記式(13)で表されるアニオンを示す。
【0225】
【化35】
【0226】
前記スルホニウム塩化合物及びヨードニウム塩化合物の具体例としては、トリフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、トリフェニルスルホニウムアセテート、トリフェニルスルホニウムサリチレート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムハイドロオキサイド、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムアセテート、ジフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムサリチレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムハイドロオキサイド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムサリチレート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムハイドロオキサイド、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムアセテート、4−t−ブチルフェニル−4−ヒドロキシフェニルヨードニウムサリチレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、4−t−ブトキシフェニル・ジフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート等を挙げることができる。
【0227】
尚、これらの酸拡散制御剤(E)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0228】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物において、前記酸拡散制御剤(E)の含有量は、レジストとしての高い感度を確保する観点から、前記重合体(A)を100質量部とした場合に、10質量部未満であることが好ましく、より好ましくは5質量部未満である。この酸拡散制御剤(E)の含有量が10質量部以上である場合、レジストとしての感度が著しく低下する傾向にある。尚、この含有量が0.001質量部未満では、プロセス条件によってはレジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0229】
[1−6]添加剤(F)
本発明の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、脂環式骨格含有添加剤(f1)、界面活性剤(f2)、増感剤(f3)等の各種の添加剤(F)を配合することができる。
【0230】
尚、各添加剤の含有割合は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0231】
前記脂環式骨格含有添加剤(f1)は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を更に改善する作用を示す成分である。
【0232】
このような脂環式骨格含有添加剤(f1)としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル、1−アダマンタンカルボン酸t−ブトキシカルボニルメチル、1−アダマンタンカルボン酸α−ブチロラクトンエステル、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジ酢酸ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(アダマンチルカルボニルオキシ)ヘキサン等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル、デオキシコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、デオキシコール酸3−オキソシクロヘキシル、デオキシコール酸テトラヒドロピラニル、デオキシコール酸メバロノラクトンエステル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル、リトコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、リトコール酸3−オキソシクロヘキシル、リトコール酸テトラヒドロピラニル、リトコール酸メバロノラクトンエステル等のリトコール酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジn−ブチル、アジピン酸ジt−ブチル等のアルキルカルボン酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン等を挙げることができる。
【0233】
これらの脂環式骨格含有添加剤(f1)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0234】
前記界面活性剤(f2)は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。
【0235】
このような界面活性剤(f2)としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤のほか、以下商品名で、KP341(信越化学工業社製)、ポリフローNo.75、同No.95(共栄社化学社製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックスF171、同F173(大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子社製)等を挙げることができる。
【0236】
これらの界面活性剤(f2)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0237】
前記増感剤(f3)は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤(B)に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示すものであり、感放射線性樹脂組成物のみかけの感度を向上させる効果を有する。
【0238】
このような増感剤(f3)としては、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等を挙げることができる。
【0239】
これらの増感剤(f3)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0240】
また、前記添加剤(F)としては、染料、顔料、及び接着助剤からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。例えば、染料或いは顔料を添加剤(F)として用いることによって、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できる。また、接着助剤を添加剤(F)として用いることによって、基板との接着性を改善することができる。
【0241】
更には、前記添加剤(F)として、アルカリ可溶性樹脂、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等を挙げることができる。
【0242】
尚、添加剤(F)は、必要に応じてこれまでに説明したそれぞれの添加剤を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0243】
[1−7]溶剤(G)
溶剤(G)としては、重合体(A)、感放射線性酸発生剤(B)、重合体(C)及び比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物(D)が溶解する溶剤であれば、特に限定されるものではない。尚、感放射線性樹脂組成物が、酸拡散制御剤(E)及び添加剤(F)を更に含有する場合には、これらの成分も溶解する溶剤であることが好ましい。
【0244】
なお、前記溶剤(G)の比誘電率としては、30未満であることが好ましく、20以下であることがさらに好ましい。また、上記溶剤(G)の比誘電率としては、化合物(D)の比誘電率よりも15以上小さいことがさらに好ましい。このような比誘電率を有する溶剤(G)を用いることで、化合物(D)が重合体(C)を表面に偏在させる機能をより高めることができる。
また、上記溶剤(G)の沸点としては、50℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下であることがより好ましく、1atmにおける沸点が化合物(D)より15℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがさらに好ましい。
【0245】
前記溶剤(G)としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;環状のケトン類;直鎖状若しくは分岐状のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類;3−アルコキシプロピオン酸アルキル類のほか、
n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トルエン、キシレン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル;
エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル等を挙げることができる。
【0246】
これらのなかでも、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することが好ましい。更に、環状のケトン類、直鎖状若しくは分岐状のケトン類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類等が好ましい。
【0247】
尚、これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0248】
[2]フォトレジストパターンの形成方法
本発明の感放射線性樹脂組成物は、液浸露光用の感放射線性樹脂組成物として有用であり、特に化学増幅型レジストとして有用である。化学増幅型レジストにおいては、露光により酸発生剤から発生した酸の作用によって、樹脂成分中の酸解離性基が解離して、カルボキシル基を生じ、その結果、レジストの露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高くなり、この露光部がアルカリ現像液によって溶解、除去され、ポジ型のフォトレジストパターンが得られる。
【0249】
そして、本発明のフォトレジストパターンを形成する方法は、(1)前記感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にフォトレジスト膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう。)と、(2)前記フォトレジスト膜を液浸露光する工程(以下、「工程(2)」ともいう。)と、(3)液浸露光されたフォトレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程(以下、「工程(3)」ともいう。)と、を有する。
【0250】
前記工程(1)では、本発明の感放射線性樹脂組成物を溶剤に溶解させて得られた樹脂組成物溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウェハ、二酸化シリコンで被覆されたウェハ等の基板上に塗布することにより、フォトレジスト膜が形成される。具体的には、得られるレジスト膜が所定の膜厚となるように感放射線性樹脂組成物溶液を塗布したのち、プレベーク(PB)することにより塗膜中の溶剤を揮発させ、レジスト膜が形成される。
【0251】
レジスト膜の厚みは特に限定されないが、10〜5000nmであることが好ましく、10〜2000nmであることが更に好ましい。
【0252】
また、プレベークの加熱条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって変わるが、30〜200℃程度であることが好ましく、50〜150℃であることが更に好ましい。
【0253】
尚、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いたフォトレジストパターン形成方法においては、必要に応じて液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜を後述する工程(2)の前に、レジスト膜上に設けることができる。
【0254】
この際に用いられる液浸用保護膜は、特に限定されないが、後述する工程(3)の前に溶剤により剥離される溶剤剥離型液浸用保護膜(例えば、特開2006−227632号公報等参照)や、工程(3)の現像と同時に剥離される現像液剥離型液浸用保護膜(例えば、WO2005−069076号公報、及びWO2006−035790号公報等参照)等が挙げられる。特に、スループット等を考慮した場合には、一般的に後者の現像液剥離型液浸用保護膜を用いることが好ましい。
【0255】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いたフォトレジストパターン形成方法においては、感放射線性樹脂組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば、特公平6−12452号公報(特開昭59−93448号公報)等に開示されているように、使用される基板上に有機系或いは無機系の反射防止膜を形成しておくこともできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、特開平5−188598号公報等に開示されているように、フォトレジスト膜上に保護膜を設けることもできる。更に、前記した液浸用保護膜をフォトレジスト膜上に設けることもできる。尚、これらの技術は併用することができる。
【0256】
前記工程(2)では、工程(1)で形成されたフォトレジスト膜に、水等の液浸媒体(液浸液)を介して、放射線を照射し、フォトレジスト膜を液浸露光する。尚、この際には、所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。
【0257】
前記放射線としては、使用される酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を適宜選定して使用されるが、ArFエキシマレーザー(波長193nm)或いはKrFエキシマレーザー(波長248nm)で代表される遠紫外線が好ましく、特にArFエキシマレーザー(波長193nm)が好ましい。
【0258】
また、露光量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選定される。本発明の感放射線性樹脂組成物を用いたレジストパターン形成方法においては、露光後に加熱処理(ポスト・エクスポージャー・ベーク:PEB)を行うことが好ましい。PEBにより、樹脂成分中の酸解離性基の解離反応が円滑に進行する。
【0259】
このPEBの加熱条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって変わるが、30〜200℃であることが好ましく、より好ましくは50〜170℃である。
【0260】
前記工程(3)では、露光されたフォトレジスト膜を現像することにより、所定のフォトレジストパターンを形成する。この現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。
【0261】
前記アルカリ性水溶液の濃度は、10質量%以下であることが好ましい。このアルカリ性水溶液の濃度が10質量%を超えると、非露光部も現像液に溶解するおそれがある。
【0262】
また、前記アルカリ性水溶液を用いた現像液は、例えば、有機溶媒を添加したものであってもよい。この有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0263】
この有機溶媒の使用量は、アルカリ性水溶液100体積部に対して、100体積部以下とすることが好ましい。この場合、有機溶媒の割合が100体積部を超えると、現像性が低下して、露光部の現像残りが多くなるおそれがある。
【0264】
また、前記アルカリ性水溶液からなる現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。
【0265】
尚、アルカリ性水溶液からなる現像液で現像したのちは、一般に、水で洗浄して乾燥する。
【実施例】
【0266】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0267】
[1]重合体(A−1)の合成
以下、重合体(A)の合成例について説明する。尚、下記の各合成例における各測定は、下記の要領で行った。
【0268】
(1)Mw、Mn、及びMw/Mn
東ソー社製のGPCカラム(商品名「G2000HXL」2本、商品名「G3000HXL」1本、商品名「G4000HXL」1本)を使用し、流量:1.0ミリリットル/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度「Mw/Mn」は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0269】
(2)13C−NMR分析
各樹脂の13C−NMR分析は、日本電子社製の商品名「JNM−EX270」を使用し、測定した。
【0270】
(3)低分子量成分の残存割合
ジーエルサイエンス社製の商品名「Intersil ODS−25μmカラム」(4.6mmφ×250mm)を使用し、流量:1.0ミリリットル/分、溶出溶媒:アクリロニトリル/0.1%リン酸水溶液の分析条件で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。尚、本実施例においては、低分子量成分の残存割合として、ポリスチレン換算重量平均分子量が500以下の成分の割合を算出した。
【0271】
また、下記の各合成に用いた単量体[化合物(M−1)〜(M−4)]の構造を以下に示す。
【0272】
【化36】
【0273】
(合成例1)
単量体(M−1)42.22g(40モル%)、単量体(M−2)30.29g(35モル%)、単量体(M−3)15.69g(15モル%)、及び単量体(M−4)11.79g(10モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)6.23gを投入した単量体溶液を準備した。一方、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの三つ口フラスコに100gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、フラスコ内をマグネティックスターラーで攪拌しながら80℃になるように加熱した。次いで、滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始時を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、2000gのメタノールに投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を、400gのメタノールにてスラリー状で2度洗浄した。その後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の共重合体を得た(79g、収率79%)。
【0274】
得られた共重合体は、Mwが5900、Mw/Mnが1.69であり、13C−NMR分析の結果、単量体(M−1)、(M−2)、(M−3)、及び(M−4)に由来する各繰り返し単位の含有割合が40.6:35.1:13.9:10.4(モル%)であり、酸解離性基を含む繰り返し単位の含有量は45.5モル%であった。また、低分子量成分の残存割合は0.20%であった。この共重合体を重合体(A−1)とする(下式参照)。
【0275】
【化37】
【0276】
[2]重合体(C−1)の合成
(合成例2)
下記式で表される単量体(M−5)35.81g(70モル%)、及び下記式で表される単量体(M−5)14.17g(30モル%)を、2−ブタノン70gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)3.23gを投入した単量体溶液を準備した。一方、500mLの三口フラスコに30gの2−ブタノンを投入し、30分窒素パージした。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱した。次いで、滴下漏斗を用い、予め準備しておいた単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、その重合溶液を2L分液漏斗に移液した。次いで、150gのn−ヘキサンでその重合溶液を希釈し、600gのメタノールを投入して混合した後、21gの蒸留水を投入して更に攪拌し、30分静置した。その後、下層を回収し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液とした。その樹脂溶液の固形分(重合体)の物性値は以下のとおりであり、収率は60%であった。
【0277】
得られた共重合体は、Mwが7300、Mw/Mnが1.6であり、13C−NMR分析の結果、フッ素含量が9.60atom%、単量体(M−5)及び(M−6)に由来する各繰り返し単位の含有割合が70.5:29.5(モル%)であった。この共重合体を重合体(C−1)とする。
【0278】
【化38】
【0279】
[3]感放射線性樹脂組成物の調製
表2に示す割合で、重合体(A)、酸発生剤(B)、重合体(C)、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物(D)、酸拡散制御剤(E)及び溶剤(G)を混合し、実施例1〜8、参考例1及び比較例1〜6の各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0280】
【表2】
【0281】
尚、表2に示す酸発生剤(B)、低分子化合物(D)、その他の化合物、酸拡散制御剤(E)及び溶剤(G)の詳細は以下の通りである。また、表中、「部」は、質量基準である。
【0282】
<酸発生剤(B)>
(B−1):トリフェニルスルホニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
(B−2):1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
<低分子化合物(D)>
(D−1):ガンマ−ブチロラクトン(比誘電率42、沸点204℃)
(D−2):プロピレンカーボネート
(D−3):ジメチルスルホキシド
(D−4):スクシノニトリル
(D−5):エチレングリコール
(D−6):グリセリン
(D−7):N−メチルピロリドン
<比誘電率が30以下、沸点100℃以上の低分子化合物>
(D−8):ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(比誘電率8.3、沸点213℃)
<比誘電率が30以上、沸点100℃以下の低分子化合物>
(D−9):アセトニトリル(比誘電率37、沸点82℃)
<酸拡散制御剤(E)>
(E−1):N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
<溶剤(G)>
(G−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(比誘電率8、沸点146℃)
(G−2):シクロヘキサノン(比誘電率16、沸点156℃)
【0283】
[4]実施例の評価
実施例1〜9及び比較例1〜6の各感放射線性樹脂組成物について、以下のように下記(1)〜(7)の各種評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0284】
各評価方法は以下の通りである。
【0285】
(1)後退接触角
8インチシリコンウエハ上に、各感放射線性樹脂組成物をスピンコートし、ホットプレート上で90℃、60秒PBを行い、膜厚120nmの塗膜(フォトレジスト膜)を形成した。その後、商品名「DSA−10」(KRUS社製)を使用して、速やかに、室温:23℃、湿度:45%、常圧の環境下で、次の手順により後退接触角を測定した。
【0286】
商品名「DSA−10」(KRUS社製)のウェハステージ位置を調整し、この調整したステージ上に前記ウェハをセットする。次に、針に水を注入し、前記セットしたウェハ上に水滴を形成可能な初期位置に前記針の位置を微調整する。その後、この針から水を排出させて前記ウェハ上に25μLの水滴を形成し、一旦、この水滴から針を引き抜き、再び前記初期位置に針を引き下げて水滴内に配置する。続いて、10μL/minの速度で90秒間、針によって水滴を吸引すると同時に接触角を毎秒1回測定する(合計90回)。このうち、接触角の測定値が安定した時点から20秒間の接触角についての平均値を算出して後退接触角(°)とした。
【0287】
(2)感度
コータ/デベロッパ(商品名「CLEAN TRACK ACT8」、東京エレクトロン社製)を用いて、8インチシリコンウエハの表面に、まず、膜厚300nmの有機下層膜を形成し、次いで、膜厚45nmの無機中間膜(SOG:スピン・オン・グラス)を形成して基板とした。
【0288】
その後、各感放射線性樹脂組成物を前記基板上に、前記コータ/デベロッパにて、スピンコートし、表3に示す条件でベーク(PB)を行うことにより、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。次いで、ArFエキシマレーザー露光装置(商品名「NSR S306C」、ニコン社製、照明条件;NA0.78、σ0/σ1=0.93/0.62、Dipole)を用い、マスクパターンを介してレジスト膜を露光した。その後、表3示す条件でベーク(PEB)を行った後、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液によって、23℃、30秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0289】
得られたレジスト膜において、線幅が75nmであるライン、ラインとラインとの距離が75nm(ライン・アンド・スペースが1対1)であるレジストパターンを形成する際の露光量(mJ/cm)を最適露光量とした。そして、この最適露光量を感度として評価した。線幅及びラインとラインとの距離の測定は、走査型電子顕微鏡(商品名「S−9380」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。なお、この数値が小さいほど高感度であることを示す。
【0290】
(3)パターン形状
前記感度の評価で得たレジスト膜の75nmライン・アンド・スペースパターンの断面形状を、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡(商品名「S−4800」)で観察し、レジストパターンの中間での線幅Lbと、膜の上部での線幅Laを測定した。測定した結果、La/Lbで算出される値が、0.9≦La/Lb≦1.1の範囲内である場合を「良好」とし、0.85≦La/Lb≦1.15の範囲内である場合を「やや良好」とし、範囲外である場合を「不良」とした。
【0291】
【表3】
【0292】
【表4】
【0293】
表4から明らかなように、所定量の比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物(D)を特定量含有する感放射線性樹脂組成物は、高い後退接触角を有する塗膜が得られた。また、現像後のパターン形状も良好であった。これらのことから、本発明の感放射線性樹脂組成物は液浸露光の際に、十分なレジスト膜表面の撥水性を発現するだけでなく、得られるパターン形状が良好であることが分かった。
【0294】
各実施例・比較例の組成物から得られた塗膜の後退接触角(RCA)の測定値と、それぞれの組成物に含まれる低分子化合物の比誘電率との関係を図1に示す。比誘電率と塗膜の後退接触角との間にある程度の相関があることがわかる。また、化合物D−9のように比誘電率が30以上でも沸点が100℃未満の化合物を添加した場合には後退接触角を上昇させる効果が見られなかった。これは、成膜時に揮発してしまうことが原因であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0295】
本発明の感放射線性組成物は、後退接触角の高い塗膜が得られるため、液浸露光に際して液浸上層膜を形成する必要がない。また、得られるパターン形状の矩形性が良好である。そのため、ArFエキシマレーザー等を光源とするリソグラフィー工程に好適に用いられ、特に、液浸露光工程において好適に用いられる。
図1