(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得る。また、本明細書において「任意の数A〜任意の数B」なる記載は、数A及び数Aより大きい範囲であって、数B及び数Bより小さい範囲を意味する。また、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なる。
【0023】
本発明に係るポリウレタン系接着剤は、主剤と硬化剤とを用いるものである。主剤と硬化剤とを使用時に混合する、いわゆる2液混合タイプの接着剤であってもよいし、主剤と硬化剤とが予め混合された1液タイプの接着剤であってもよい。さらに、複数の主剤、及び/又は複数の硬化剤を使用時に混合するタイプであってもよい。
【0024】
本発明のポリウレタン系接着剤は、同一または異なる素材の被着体を接合するために用いるものであり、後述するように環境耐性が高く、長期間に亘って接着強度を維持できるので、特に屋外用途において好適に用いられる。特に、太陽電池保護シート用接着剤として好適である。被着体は、特に限定されないが、例えば、プラスチック系素材と金属系素材との多層積層体の接合に好適に用いられる。勿論、プラスチック系素材同士、金属系素材同士の接合にも好適である。
【0025】
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、太陽電池に設けられている太陽電池素子の太陽光の入射面とは反対側の面を保護する太陽電池用裏面保護シートであって、2つ以上のシート状部材の積層体を備えるものである。そして、積層体を構成するシート状部材間の接着の少なくとも一部に、前述のポリウレタン系接着剤を用いて、塗布して硬化処理することによって形成した接着剤層が用いられている。
【0026】
本発明のポリウレタン系接着剤の主剤は、ポリエステルポリオール(A)、ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)、ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)を含む。
【0027】
ポリエステルポリオール(A)を構成する二塩基酸、及びそのエステル化合物(以上、まとめて「二塩基酸成分」という)としては、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及びそのエステル化合物を例示できる。
本発明のポリエステルポリオール(A)を構成する二塩基酸成分は、二塩基酸成分100モル%中に、芳香族二塩基酸成分が20〜60モル%、炭素数9以上の脂肪族二塩基酸成分が40〜80モル%となるように組み合わせて使用する。前記条件を満たす範囲において、他の脂肪族二塩基酸成分が含まれていてもよい。例えば、炭素数が9未満の脂肪族二塩基酸成分が含まれていてもよい。なお、本明細書でいう「炭素数9以上」とは、その化合物中の全炭素の合計数をいう。
芳香族二塩基酸成分が20モル%未満であると、充分な耐熱性、及び粘弾性が得られない恐れがあり、また硬化前の接着剤皮膜の凝集力が低くなり、フィルム積層時にトンネリング等の加工不良を引き起こす恐れがある。一方、芳香族二塩基酸成分が60モル%よりも多いと接着剤皮膜が硬くなり、未処理ポリエステルフィルム等の表面未処理素材への接着強度が低下する恐れがある。
また、炭素数9以上の脂肪族二塩基酸成分を使用せずに代わりに炭素数8以下のものだけを用いたり、炭素数9以上の脂肪族二塩基酸成分を用いてもその量が40モル%未満であると、ポリエステルポリオール(A)のエステル結合度が上がって加水分解基点が増加し、長期耐湿熱性に悪影響を与える恐れがある。炭素数9以上の脂肪族二塩基酸の量を40モル%〜80モル%の範囲とすることにより、ポリエステルポリオール(A)のエステル結合度を良好に保って加水分解基点が増加するのを抑制し、長期耐湿熱性を良好に保つことができる。
【0028】
本発明のポリエステルポリオール(A)を構成する二塩基酸成分中の芳香族二塩基酸成分の好ましいモル比は、25モル%〜55モル%であり、本発明のポリエステルポリオール(A)を構成する二塩基酸成分中の炭素数9以上の脂肪族二塩基酸成分のより好ましいモル比は、45モル%〜75モル%である。
【0029】
上記例示化合物のなかでも、芳香族二塩基酸成分としては、エステル化反応やエステル交換反応における反応性の観点から、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、無水フタル酸が好ましい。
炭素数9以上の脂肪族二塩基酸としては、親油性が高く疎水性を有し、ポリマーへの吸水を抑制する観点から、炭素数9のアゼライン酸、及び炭素数10のセバシン酸が好ましい。炭素数11以上の脂肪族二塩基酸では、芳香臭が強くなるため、加工作業環境への配慮を行なうことが好ましい。なお、本明細書における脂肪族二塩基酸は、脂肪族鎖と脂環式の両者を含む。
【0030】
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9−ナノンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。
多価アルコールは、単独で、あるいは2種以上で使用できるが、本発明の多価アルコールは、多価アルコール100モル%中、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールを20モル%以上〜100モル%以下の割合で使用する。なお、ここで「炭素数5以上」とは、多価アルコール中の全炭素数の合計数をいう。また、本明細書における「炭素数が5以上の脂肪族多価アルコール」は、脂肪族鎖と脂環式の両者を含む。
炭素数5以上の脂肪族多価アルコールの代わりに炭素数4以下の脂肪族多価アルコールだけを用いたり、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールの割合が20モル%未満であると、ポリエステルポリオール(A)のエステル結合度が上がって加水分解基点が増加し、長期耐湿熱性に影響する恐れがある。
【0031】
本発明のポリエステルポリオール(A)を構成する多価アルコールは、多価アルコール100モル%中、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールを25モル%〜90モル%であることがより好ましく、さらに好ましくは20モル%〜85モル%、特に好ましくは30モル%〜70モル%である。
【0032】
上記例示化合物のなかでも、炭素数5以上の脂肪族多価アルコールとして、側鎖を有し、溶解安定性を向上させる炭素数5のネオペンチルグリコール及び炭素数6の3−メチル−1,5−ペンタンジオール、並びに、親油性が高く疎水性を有しポリマーへの吸水を抑制する1,6−ヘキサンジオールなどが好ましい。
【0033】
ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量は、凝集力と接着強度を確保する観点から、10,000以上であることが好ましく、樹脂の溶解性、粘度、及び接着剤の塗工性(取り扱い性)の観点から、50,000以下であることが好ましく、15,000〜40,000であることがより好ましく、16,000〜39,000であることがさらに好ましく、18,000〜36,000であることが特に好ましい。
さらに、このポリエステルポリオール(A)におけるカルボキシル基と水酸基の反応(カルボキシル基と水酸基の反応比を1対1とする)によるエステル結合の割合を、分子中のエステル結合度(モル/100g)として表した際、1未満になるように設計することが望ましい。すなわち、本発明者らの知見によれば、エステル結合度を1未満とすることで、エステル結合の割合を小さくして耐加水分解性を高め、経時的な接着強度劣化をさらに抑制して長期の耐湿熱性を向上させることができる。
なお、本明細書の数平均分子量の値は、東ソー社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、標準ポリスチレン換算した値を示している。
【0034】
例えば、多塩基酸の中で、分子量の大きい(炭素数の多い)二塩基酸を選択することで、ポリエステルポリオール(A)の単位重量中(100g中)におけるエステル結合度を小さくすることができる。好ましくは、炭素数が9以上の脂肪族二塩基酸であり、例えば、炭素数が9のアゼライン酸、炭素数10のセバシン酸が挙げられる。但し、炭素数が15程度以上の脂肪族二塩基酸を使用する場合は、接着剤中のソフトセグメントである脂肪族炭素鎖の割合が大きくなり、接着剤の耐熱性が低くなる傾向があるので、他に耐熱性を考慮した設計をする必要もある。かかる観点から、脂肪族二塩基酸は、14以下とすることが好ましい。
【0035】
それに加えて、分子量の大きい(炭素数の多い)多価アルコールを選択することにより、ポリエステルポリオール(A)の単位重量中(100g中)のエステル結合度をさらに小さくすることができる。好ましくは、炭素数が5以上の脂肪族多価アルコールである。例えば、炭素数5のネオペンチルグリコール、炭素数6の3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。炭素数が多く直鎖状の多価アルコールは疎水性のものが多く、これらを選択することで分子鎖の親水度を下げる効果も期待できる。但し、炭素数が10程度以上の脂肪族多価アルコールを使用する場合は、上記と同様に、他に耐熱性を考慮した設計をする必要がある。かかる観点からは、炭素数が9以下の脂肪族多価アルコールとすることが好ましい。
【0036】
特に、工業用接着剤としての基本性能、例えば室温での接着強度、及び高温(80〜150℃など)下での接着強度の両立を考慮すると、ポリエステルポリオール(A)のエステル結合度は0.6〜0.99の範囲が好ましい。さらに0.75〜0.99の範囲とすることがより好ましい。芳香族二塩基酸の二塩基酸成分中における割合を上述した範囲とし、かつ、多価アルコール、二塩基酸成分の分子量を適切に制御してエステル結合度を0.6以上とすることにより、耐熱性を満足させつつ、未処理ポリエステルフィルム等の表面未処理素材への接着強度を向上させ、屋外暴露時における経時的な接着強度の低下を抑制して長期間にわたって信頼性の高い接着剤を提供することができる。
【0037】
食品用途におけるレトルトパウチ向け接着剤では、無水カルボン酸をポリオール末端の水酸基と反応させて酸変性させる例がある。
しかし、本発明者らの検討によると、この酸変性は長期の耐湿熱性を低下させるため、屋外用途の接着剤の場合には適さないことが判明した。すなわち、このようなレトルトパウチ向け接着剤に適した酸変性は、屋外暴露環境下ではエステル結合の経時的な加水分解を助長してしまうため、屋外用に用いられる本発明においては、ポリオール(A)の酸価(mgKOH/g)は5以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
【0038】
ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを水酸基過剰のもとでウレタン化反応させることにより得ることができる。ポリオール成分として、ポリカーボネートポリオールを必須とする。ポリオール成分100モル%中、ポリカーボネートポリオールは、少なくとも50%以上含むようにする。ポリオール成分100モル%の全てがポリカーボネートポリオールであってもよい。ポリオール成分100モル%中、50%以下の範囲内において前記ポリカーボネートポリオール以外のポリオールを含有していてもよい。
ポリカーボネートポリオールを少なくとも50%以上含むポリオール成分を構成成分とするポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)は、耐加水分解性の良好な柔軟性成分として機能する。ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)を、ポリオール(A)と併用することによって未処理ポリエステルフィルム等の表面未処理基材への接着強度と耐湿熱性を両立させる効果が得られる。
【0039】
ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)が、ポリオール成分100モル%中、ポリカーボネートポリオールは、60モル%〜100モル%以下であることがより好ましく70モル%〜100モル%以下であることがさらに好ましく、80モル%〜100モル%以下であることが特に好ましい。
【0040】
ポリカーボネートポリオールとしては、ジオールの少なくとも1種類と炭酸エステルを原料に用い、エステル交換に付することで得ることができる。ジオールの好適な例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−イソプロピル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。炭酸エステルの好適な例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。
また、カプロラクトンなどと共重合させることによりポリエステル結合を含むジオールを用いても良い。例えばクラレ社製C−1090、C−2050、C−2090、C−3090;宇部興産社製ETERNACOLL UH−50、ETERNACOLL UH−100、ETERNACOLL UH−200、ETERNACOLL UH−300、ETERNACOLL UH−50−200、ETERNACOLL UH−50−100;旭化成ケミカルズ社製T6002、T6001、T5652、T4672;ダイセル化学社製プラクセルCD CD205、プラクセルCD CD205PL、プラクセルCD CD210、プラクセルCD CD210PL、プラクセルCD CD220、プラクセルCD CD220PLなどが例示できる。ポリオールは、単独でも、2種類以上を併用しても良い。
【0041】
ポリカーボネートポリオール以外のポリオールとしては、ポリエステルジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのいわゆるプレポリマーや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブチレングリコール、1,9−ナノンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどの低分子ポリオールが例示できる。ポリカーボネートポリオール以外のポリオールは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0042】
ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)におけるポリオール成分100モル%中に、ポリカーボネートポリオールは50〜100モル%となるように使用し、ウレタン結合1つに対する数平均分子量で表されるウレタン結合当量が1,000〜2,500となるように組み合わせて使用する。ウレタン結合当量のより好ましい範囲は、1,100〜2,400であり、さらに好ましい範囲は、1,200〜2,300である。
ウレタン結合当量が1,000未満であると、ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)の柔軟性が低くなり、未処理ポリエステルフィルム等の表面未処理素材に対して十分な接着強度が得られない恐れがあり、ウレタン結合当量が2,500を超えるとポリカーボネートポリオールの凝集力が低下して、フィルム積層時にトンネリング等の加工不良を引き起こす恐れがある。
ポリカーボネートポリオール以外のポリオール成分としてポリエステルジオール等のプレポリマーを用い、ポリカーボネートポリオールが50モル%未満の場合、耐加水分解性の優れるカーボネート骨格の効果が低くなり、屋外暴露により接着強度が低下する恐れがある。
ポリカーボネートポリオール以外のポリオール成分としてエチレングリコールなどの低分子ポリオールを用い、ポリカーボネートポリオールが50モル%未満の場合、ウレタン結合当量が低くなり、ポリカーボネートポリウレタンポリオール由来の柔軟性効果が低くなり、未処理ポリエステルフィルム等の表面未処理素材に対して十分な接着強度が得られない恐れがある。
【0043】
ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)を得るために用いられるポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートなどが例示でき、これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。耐候性の点から前記ジイソシアネート成分としては、脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0044】
ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)の数平均分子量は、10,000〜30,000であることが好ましく、10,000〜20,000であることがより好ましく、特に好ましくは、10,000〜15,000である。
ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)数平均分子量が10,000未満だとポリカーボネートポリオールの凝集力が低下しフィルム積層時にトンネリング等の加工不良を引き起こす恐れがある。また、屋外暴露時に接着強度が低下する恐れがある。一方、ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)の数平均分子量が30,000を超えると、ポリエステルポリオール(A)やビスフェノール型エポキシ樹脂(C)との相溶性が悪くなる恐れがあり、未処理ポリエステルフィルム等の表面未処理素材への接着強度が十分でない恐れがある。
【0045】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)としては、数平均分子量が1,000未満の化合物が用いられる。数平均分子量が1,000以上であると、接着剤皮膜が硬くなり、未処理ポリエステルフィルム等の表面未処理素材への接着強度が得られない。ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)を主剤に含有させることにより、耐久性試験時に接着剤皮膜中のエステル部位の分解によって発生した官能基をエポキシ基と反応させることができ、接着剤皮膜の分子量低下を抑制でき、接着強度低下を抑えることができる。
【0046】
ポリエステルポリオール(A)とポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)とビスフェノール型エポキシ樹脂(C)とは、(A)〜(C)の合計100重量%を基準として、ポリエステルポリオール(A)を40〜70重量%、ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)を15〜35重量%、ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)を15〜35重量%含有することが好ましい。
ポリエステルポリオール(A)が40重量%未満であると未処理ポリエステルフィルム等の表面未処理素材に対する相互作用が小さくなり、接着強度が十分でない傾向にある。一方、ポリエステルポリオール(A)が70重量%を超えると耐久性試験時に加水分解の程度が大きくなり、接着強度が低下してしまう恐れがある。
ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)が15重量%未満であると柔軟な成分が少なくなり、耐久性試験後にジッパリングによる接着強度低下が起こり、また35重量%を超えると未処理ポリエステルフィルム等の表面未処理素材に対する相互作用が小さくなり、接着強度が十分でない傾向にある。
ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)が15重量%未満であると耐久性試験時に接着剤皮膜の分子量低下抑制の効果が小さく、接着強度が低下してしまう傾向にある。一方、35重量%を超えると耐久性試験時にエポキシ樹脂の自己架橋による接着剤皮膜の高弾性化が起こり、ジッパリングによる接着強度低下が起こる恐れがある。
【0047】
主剤は、金属箔等の金属系素材や、無機酸化物蒸着プラスチックフィルムなどに対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基を有するトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジル基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
【0048】
シランカップリング剤の添加量は、前記(A)〜(C)の合計100重量部に対し、0.5〜5重量部であることが好ましく、1〜3重量部であることがより好ましい。0.5重量部未満では、シランカップリング剤を添加することによる金属箔に対する接着強度向上効果に乏しく、5重量部以上添加しても、それ以上の性能の向上は認められない。
【0049】
その他、接着剤用として公知の添加剤を主剤に配合することができる。例えば、反応促進剤を使用することができる。例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種または2種以上の反応促進剤を使用できる。
【0050】
ラミネート外観を向上させる目的で、公知のレベリング剤または消泡剤を、主剤に配合することもできる。
【0051】
レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンなどが挙げられる。
【0052】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物などの公知のものが挙げられる。
【0053】
次に、上述の主剤と組み合わせて使用される硬化剤について説明する。
硬化剤は、ポリイソシアネート(D)成分を含む。このポリイソシアネート(D)成分は、イソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネート成分を必須とし、他の任意のポリイソシアネート成分を含むことができる。さらに、硬化剤は、上記ポリイソシアネート(D)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、任意に、周知の硬化剤を含むことができる。
イソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネート成分は、硬化剤100重量%中に、50〜100重量%含まれる。硬化剤中に、イソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネート成分を前記範囲で含むことにより、接着剤層の長期にわたる耐湿熱性を得ることができる。
【0054】
イソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネート成分としては、接着剤層の経時的な黄変を低減させる観点から、脂肪族または脂環族のジイソシアネート由来の化合物が用いられることが好ましい。
より具体的には、イソシアヌレートとしては、長期高温下での樹脂膨潤を抑えてポリマーへの吸水を低減させるのに有効な耐熱性を有するものとして、脂環族のジイソシアネートである3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル=イソシアネート(以下、イソホロンジイソシアネート)や、脂肪族のジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレートが好ましく、さらに好ましくは、より耐熱性の高いイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートである。これらのイソシアヌレートは、主剤と混合した後のポットライフが長く、溶液安定性が良好である点からも好ましい。
【0055】
ポリイソシアネート(D)としては、上記のイソシアヌレート骨格を有するものの他に、任意のポリイソシアネートを含むことができる。屋外用途向けの接着剤であるため、低黄変型の脂肪族または脂環族のポリイソシアネートであることが好ましい。
具体的には、低分子量ポリイソシアネート、低分子量ポリイソシアネートと水または多価アルコールとを反応させて得られるポリウレタンイソシアネート、及び低分子量イソシアネートの二量体等から選ばれる1種以上を併用することができる。
【0056】
低分子量ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、2,4−あるいは2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらの混合物が挙げられる。これらの低分子量ポリイソシアネートと反応させる多価アルコールとしては、例えば、上記ポリエステルポリウレタンポリオールを製造する前段階のポリエステルポリオールの原料として前記したものが挙げられる。
【0057】
硬化剤は、上記ポリイソシアネート(D)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、任意に、周知のオキサゾリン化合物、例えば、2,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2,2−(1,4−ブチレン)−ビス(2−オキサゾリン)またはヒドラジド化合物、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドを含むことができる。
また、単官能のイソシアネート成分を用いることもできる。
【0058】
ポリイソシアネート(D)は、ポリエステルポリオール(A)とポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)中の水酸基の合計に対して、ポリイソシアネート(D)中のイソシアネート基が当量比にして1.0〜10.0になるように配合されることが好ましい。
【0059】
次に本発明の太陽電池用裏面保護シートについて説明する。まず、本発明に係る太陽電池モジュールの概略の一例である模式的断面図を
図1に示す。太陽電池モジュール100は、同図に示すように、太陽電池素子である太陽電池セル1、太陽電池用表面保護シート2、受光面側封止材層3、非受光面側封止材層4、太陽電池用裏面保護シート5を備える。太陽電池セル1は、
図1に示すように、太陽電池セル1の受光面側に位置する受光面側封止材層3と、太陽電池セル1の非受光面側に位置する非受光面側封止材層4とに挟持され、封止されている。そして、受光面側封止材層3は、太陽電池用表面保護シート2によって保護され、非受光面側封止材4は、太陽電池用裏面保護シート5によって保護されている。なお、本発明に係る太陽電池モジュールの構成は、
図1の構成に限定されず種々の変形が可能である。
【0060】
太陽電池用裏面保護シート5は、例えば、耐候性、水蒸気バリア性、電気絶縁性、機械特性、実装作業性などの性能を満足させるために、通常、複数層のシート状部材の積層体からなる。
【0061】
図2A〜
図2Fに、本発明に係る太陽電池用裏面保護シート5の例を説明する模式的断面図を示す。
図2Aの太陽電池用裏面保護シート5aは、第1シート状部材11、第2シート状部材12の2層のシート状部材を有する。第1シート状部材11と第2シート状部材12は、ポリウレタン系接着剤から形成された接着剤層51(以下、単に「接着剤層51」とも云う)を介して接合されている。第1シート状部材11と第2シート状部材12は、プラスチックフィルム、金属箔、金属層付きプラスチックフィルム、金属酸化物層付きプラスチックフィルム、非金属酸化物層付きプラスチックフィルム、及び窒化珪素層付きプラスチックフィルム等により形成することができる。金属層、金属酸化物層、非金属酸化物層、窒化珪素層は、蒸着等により形成することができる。
【0062】
図2Aの好適な例としては、例えば、第1シート状部材11をプラスチックフィルムにより形成し、第2シート状部材12をアルミニウム等の金属やアルミナ等の金属酸化物や二酸化珪素等の非金属酸化物や窒化珪素等からなる蒸着層22が設けられたプラスチックフィルム21より構成する例が挙げられる。また、
図2Bの太陽電池用裏面保護シート5bのように、第2シート状部材12のアルミナ等の金属酸化物や二酸化珪素等の非金属酸化物等からなる蒸着層22が、接着剤層51側に設けられていてもよい。さらに
図2Cのように、第2シート状部材12としてアルミニウム箔等の金属箔23を用いることもできる。この場合、金属箔23の非受光面側には、白コート層等のコーティング層24を設けることもできる。コーティング層24は、必要に応じて着色とすることができる。
これら
図2A〜2Cの場合、第2シート状部材12が水蒸気バリア層として機能する。無論、第1シート状部材11、第2シート状部材が共にプラスチックフィルム等によって構成されていてもよい。シートを2層積層することによって、太陽電池用裏面保護シートに要求される複数の特性を効果的に満足させることができる。なお、本明細書でいうフィルムは、特に厚みに制限はないものとする。
【0063】
図2Dの太陽電池用裏面保護シート5dは、第1シート状部材11、第2シート状部材12、第3のシート状部材13の3層のシート状部材を有する。第1シート状部材11と第2シート状部材12は、第1接着剤層51を介して接合され、第2シート状部材12と第3シート状部材13は、第2接着剤層52を介して接合されている。
図2Dの好適な例としては、第1シート状部材11〜第3シート状部材13を全てプラスチックフィルムにより構成する例が挙げられる。また、
図2A,
図2Bのように、金属や金属酸化物や非金属酸化物が蒸着されたプラスチックフィルムがいずれかのシート状部材に採用されていてもよい。また、
図2Cのように、シート状部材自身がアルミニウム箔等の金属箔であってもよい。シートを3層積層することによって、太陽電池用裏面保護シートに要求される複数の特性をより効果的に満たすように設計することができる。
【0064】
図2Eに示す太陽電池用裏面保護シート5eは、第1シート状部材11、第2シート状部材12、第3シート状部材13、第4シート状部材14の4層のシート状部材を有する。第1シート状部材11と第2シート状部材12は、第1接着剤層51を介して接合され、第2シート状部材12と第3シート状部材13は、第2接着剤層52を介して接合され、第3シート状部材13と第4シート状部材14は、第3接着剤層53を介して接合されている。
図2Eの好適な例としては、例えば、第1シート状部材11、第2シート状部材12、第4シート状部材14をプラスチックフィルムにより構成し、第3シート状部材13をアルミニウム箔等の金属箔により構成する例が挙げられる。この場合、第3シート状部材13は、バリア層として機能する。シートを4層積層することによって、太陽電池用裏面保護シートの特性をより優れたものにすることができる。第3シート状部材13は、
図2Fに示す太陽電池用裏面保護シート5fのように、酸化珪素等からなる非金属酸化物層31をプラスチックフィルム32上に蒸着したものを用いてもよい。非金属酸化物層の代わりに金属や金属酸化物層をプラスチックフィルム32上に蒸着したものを用いることもできる。なお、
図2A〜
図2Fの各シート状部材の配置、層数や構成等は一例であって、種々の変形が可能である。
【0065】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリスルホン系樹脂フィルム、ポリ(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。
これらのプラスチックフィルムを支持体として、アクリル系、フッ素系塗料がコーティングされてなるフィルムや、ポリフッ化ビニリデンやアクリル樹脂などが共押出しにより積層されてなる多層フィルムなどを使用することができる。さらに、ウレタン系接着剤層などを介して上記のプラスチックフィルムが複数積層されたシート状部材を用いても良い。
【0066】
金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔などが挙げられる。
蒸着される金属酸化物もしくは非金属無機酸化物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物が使用できる。
【0067】
これらの中でも、太陽電池モジュールとして使用する際の耐候性、水蒸気バリア性、電気絶縁性、機械特性、実装作業性などの性能を満たす為に、温度に対する耐性を有する、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルムと、太陽電池セルの水の影響による出力低下を防止する為に水蒸気バリア性を有する金属酸化物もしくは非金属無機酸化物が蒸着されたプラスチックフィルムまたはアルミニウム箔などの金属箔と、光劣化による外観不良発生を防止する為に耐候性の良好なフッ素系樹脂フィルムとが積層されてなる太陽電池用裏面保護シートが好ましい。
【0068】
中でも、積層体のシート状部材の組合せとして、太陽光の入射面側から、非受光面側封止材層4と接着性の良好なポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルムや、ポリエステル系樹脂層やアクリル系樹脂層などを形成したポリエステル系樹脂フィルムを積層し、次いで電気絶縁性の付与を目的として、100μmより厚いポリエステル系樹脂フィルムを積層し、次いで場合によって水蒸気バリア性を有する金属酸化物もしくは非金属無機酸化物が蒸着されたプラスチックフィルムまたはアルミニウム箔などの金属箔を積層し、次いで光劣化による外観不良発生を防止する為に耐候性の良好なフッ素系樹脂フィルム、耐候性樹脂層を形成しても良いポリエステル系樹脂フィルムとが積層されてなる太陽電池用裏面保護シートが好ましい。
【0069】
本発明の太陽電池裏面保護シートは、例えば、通常用いられている方法を制限なく利用できる。例えば、一方のラミネート基材の片面に、コンマコーターやドライラミネーターによって接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、他方のラミネート基材と貼り合わせ、常温もしくは加温下で硬化させれば良い。ラミネート基材表面に塗布される接着剤量は、1〜50g/m
2程度であることが好ましい。ラミネート基材としては、用途に応じて任意の基材を、任意の数で選択することができ、3層以上の多層構成とする際には、各層の貼り合わせの全てまたは一部に本発明に係る接着剤を使用できる。
また、任意の一のシート状部材にポリウレタン系接着剤を塗工し、形成されたポリウレタン系接着剤層に他のシート状部材を重ねた後、常温、又は加温下で硬化させて接着剤層を形成したり、あるいは、任意の一のシート状部材にポリウレタン系接着剤を塗工して加熱硬化し、ポリウレタン系接着剤層を形成し、接着剤層を形成した後、他のシート状部材形成用塗液を塗工し、熱もしくは活性エネルギー線により他のシート状部材を形成したりすることによって製造することができる。この他のシート状部材形成用塗液としては、プラスチックフィルムの形成に使用され得る、ポリエステル系樹脂溶液、ポリエチレン系樹脂溶液、ポリプロピレン系樹脂溶液、ポリ塩化ビニル系樹脂溶液、ポリカーボネート系樹脂溶液、ポリスルホン系樹脂溶液、ポリ(メタ)アクリル系樹脂溶液、フッ素系樹脂溶液等が好ましい例として挙げられる。
【0070】
太陽電池用裏面保護シートとして要求される性能、価格、生産性等を勘案して、種々の製造方法を選択したり、さらに組み合わせたりすることができる。
【0071】
ポリウレタン系接着剤をシート状部材に塗工する際、塗液を適度な粘度に調整するために、乾燥工程においてシート状部材への影響がない範囲内で溶剤が含まれてもよい。ポリウレタン系接着剤が溶剤を含む場合には、溶剤を揮散させた後、硬化処理により接着剤層を得ることができる。
溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等のアルコール類、水等が挙げられる。これら溶剤は単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
本発明においてポリウレタン系接着剤をシート状部材に塗工する装置としては、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等が挙げられる。
【0073】
シート状部材に塗布される接着剤量は、乾燥膜厚で0.1〜50g/m
2程度であることが好ましい。より好ましくは、1〜50g/m
2程度である。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ示す。
<ポリエステルポリオールA1の製造>
エチレングリコール48.6部、ネオペンチルグリコール34.9部、イソフタル酸41.5部、アゼライン酸141部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜240℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、温度を下げた後に酢酸エチルで希釈して、ポリエステルポリオールA1の樹脂溶液(固形分50%)を得た。A1の性状を表1に示す。
【0075】
<ポリエステルポリオールA2〜A9の製造>
表1の組成に従って、A1と同様にしてポリエステルポリオールA2〜A9の樹脂溶液(固形分50%)を得た。A2〜A9の性状を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
<ポリカーボネートポリウレタンポリオールB1の製造>
プラクセルCD CD220を385.6部、イソホロンジイソシアネート30部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら150℃に加熱し、ウレタン化反応を行った。150℃で3時間反応させ、IRにてイソシアネートのピークが消失したことを確認し、温度を下げた後に酢酸エチルで希釈して、ポリカーボネートポリウレタンポリオールB1の樹脂溶液(固形分50%)を得た。B1の性状を表2に示す。
【0078】
<ポリカーボネートポリウレタンポリオールB2〜B8の製造>
表2の組成に従って、B1と同様にしてポリカーボネートポリウレタンポリオールB2〜B8の樹脂溶液(固形分50%)を得た。B2〜B8の性状を表2に示す。
【0079】
表2中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0080】
C−1090:クラレ社製ポリカーボネートジオール 数平均分子量=1,000
CD220:ダイセル社製ポリカーボネートジオール 数平均分子量=2,000
UH−3000:宇部興産社製ポリカーボネートジオール 数平均分子量=3,000
C−5090:クラレ社製ポリカーボネートジオール 数平均分子量=5,000
IPDI:イソホロンジイソシアネート
【0081】
【表2】
【0082】
<主剤の製造>
ポリエステルポリオール(A1)の樹脂溶液(固形分50%):97部、ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B1)の樹脂溶液(固形分50%):48.5部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)であるYD−134:24.25部とその他の成分を表3Aに示す重量部に従って配合し、主剤1を得た。
主剤2〜32も同様にして得た。
【0083】
表3A、表3B中の成分の詳細は以下の通りである。
YD−134:東都化成社製 ビスフェノールA型樹脂 数平均分子量=470
YD−012:東都化成社製 ビスフェノールA型樹脂 数平均分子量=1,100
jER828:三菱化学社製 ビスフェノールA型樹脂 数平均分子量=370
jER834:三菱化学社製 ビスフェノールA型樹脂 数平均分子量=470
jER1001:三菱化学社製 ビスフェノールA型樹脂 数平均分子量=900
KBE−403:信越化学工業社製 エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤
【0084】
【表3A】
【表3B】
【0085】
上記ポリエステルポリオールA1〜A5、A9、ポリカーボネートポリウレタンポリウレタンB1〜B3は、本発明で規定する構成を充たすポリエステルポリオール(A)、ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)に相当するものであり、主剤1〜18、32は本発明における実施例用の主剤である。
【0086】
なお、以下のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオールは、それぞれ記載の理由により、本発明でいうポリエステルポリオール(A)、ポリカーボネートポリウレタンポリオール(B)には含まれない。
【0087】
ポリエステルポリオールA6:芳香族二塩基酸の構成比率が20モル%未満であり、炭素数9以上の脂肪族二塩基酸の構成比率が80モル%を超える。
【0088】
ポリエステルポリオールA7:芳香族二塩基酸の構成比率が60モル%を超え、炭素数9以上の脂肪族二塩基酸の構成比率が40モル%未満である。
【0089】
ポリエステルポリオールA8:炭素数9以上の脂肪族二塩基酸の構成比率が40モル%未満であり、エステル結合度が0.99を超える。
【0090】
ポリカーボネートポリウレタンポリオールB4:ウレタン結合当量が1,000未満である。
ポリカーボネートポリウレタンポリオールB5:数平均分子量が10,000未満である。
ポリカーボネートポリウレタンポリオールB6:数平均分子量が30,000を超える。
ポリカーボネートポリウレタンポリオールB7:ウレタン結合当量が2,500を超える。
ポリカーボネートポリウレタンポリオールB8:ポリオール成分中のポリカーボネートポリオール成分のモル比が50%未満であり、ウレタン結合当量が1,000未満である。
【0091】
<実施例1〜21>、<比較例1〜15>
各種主剤と以下の硬化剤を100:10(重量比)で配合し、酢酸エチルで希釈して固形分30%に調整した溶液を各実施例、各比較例の接着剤溶液とし、後述する方法にて評価した。
表4A、表4Bに、実施例1〜21及び比較例1〜15として各組み合わせを記載する。
【0092】
<硬化剤D1>
イソホロンジイソシアネートの三量体を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤D1とする。
<硬化剤D2>
ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤D2とする。
<硬化剤D3>
イソホロンジイソシアネートの三量体100部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体100部を70℃で混合し、酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤D3とする。
<硬化剤D4>
ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤D4とする。
<硬化剤D5>
ヘキサメチレンジイソシアネートの水とのアダクト体を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤D5とする。
【0093】
上記硬化剤D1〜D3は、本発明で規定する硬化剤に相当するものである。一方、硬化剤D4及びD5は、イソシアヌレート骨格を有するポリイソシアネート成分を含まないため、本発明で規定するポリイソシアネート(D)に相当しない。
【0094】
<性能試験>
実施例、及び比較例の各接着剤溶液を用い、以下に示すように未処理ポリエステルフィルム(東レ社製、ルミラーX−10S、厚み50μm)同士を貼り付けて多層フィルム(複合ラミネート材)を作製し、以下の性能試験を行なった。
【0095】
未処理ポリエステルフィルムに接着剤を、塗布量:8〜10g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、未処理ポリエステルフィルムを積層した。その後、60℃、7日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を硬化させた。
得られた多層フィルムを恒温恒湿槽に入れ、85℃85%RH雰囲気下で密閉した。これを1000時間、2000時間経時させた。
【0096】
経時させた上記多層フィルムを200mm×15mmの大きさに切断し、6時間室温乾燥後、ASTM D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて荷重速度300mm/分でT型剥離試験を行った。未処理ポリエステルフィルムと未処理ポリエステルフィルムとの間の剥離強度(N/15mm巾)を、それぞれ5個の試験片の平均値で示した。
各剥離強度の平均値に応じて、次の4段階の評価を行なった。
【0097】
◎:7N/15mm 以上(実用上優れる)
○:5N/15mm 以上、7N/15mm 未満(実用域)
△:3N/15mm 以上、5N/15mm 未満(実用下限)
×:3N/15mm 未満
以上の結果を表4A,表4Bに併せて示す。
【0098】
【表4A】
【表4B】
【0099】
表4Aに示すように、実施例の接着剤は、未処理ポリエステルフィルムへの接着強度に優れ、耐湿熱性に優れ、長期にわたり接着強度を維持することができる。従って、屋外用途向けの長期耐湿熱性に優れている。
【0100】
<実施例22、比較例16>
実施例22の場合は主剤1と硬化剤D1とを、比較例16の場合は主剤19と硬化剤D1とを、実施例1と同様に100:10(重量比)で配合し、酢酸エチルで希釈して固形分30%に調整した溶液を接着剤溶液とした。
未処理ポリエステルフィルム(厚み125μm)の片面に接着剤を、塗布量:8〜10g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、ホワイトPVFフィルム(厚み37.5μm)を積層した。さらに、未処理ポリエステルフィルムのホワイトPVFフィルムを積層していない面に、接着剤を塗布量:8〜10g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、EVAフィルム(厚み100μm)を積層した。その後、60℃、7日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を硬化させて太陽電池用裏面保護シートを得、実施例1と同様の方法で評価した。
【0101】
<実施例23、比較例17>
未処理ポリエステルフィルム(厚み75μm)の片面に、実施例22、比較例16で用いたのと同じ接着剤を、塗布量:8〜10g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、アルミホイル(厚み17.5μm)を積層した。さらに積層したアルミホイル面に接着剤を、塗布量:8〜10g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し溶剤を揮散させた後、ホワイトPVFフィルム(厚み37.5μm)を積層した。さらに、未処理ポリエステルフィルムのアルミホイルを積層していない面に、接着剤を塗布量:8〜10g/平方メートルとなる量でドライラミネーターによって塗布し、溶剤を揮散させた後、EVAフィルム(厚み100μm)を積層した。その後、60℃、7日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を硬化させて太陽電池用裏面保護シートを得、実施例1と同様の方法で評価した。
【0102】
<実施例24>
実施例23で用いた未処理ポリエステルフィルム(厚み75μm)の代わりに、表面をコロナ処理してなる処理ポリエステルフィルム(厚み75μm)を用いた以外は、実施例23と同様にして、太陽電池用裏面保護シートを得、実施例1と同様の方法で評価した。
【0103】
<比較例18>
(ポリオールX1の製造)
テレフタル酸ジメチル119.5部、エチレングリコール92.2部、ネオペンチルグリコール72.2部、及び酢酸亜鉛0.02部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜210℃に加熱し、エステル交換反応を行なった。理論量の97%のメタノールが留出した後、イソフタル酸93.0部、アゼライン酸130.0を仕込み、160〜270℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が0.8mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が80,000のポリエステルポリオール(エステル結合度0.93モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールX1とする。
【0104】
(ポリオールX2の製造)
ネオペンチルグリコール94.2部、1,6−ヘキサンジオール91.7部、エチレングリコール37.6部、イソフタル酸211.5部、セバシン酸122.9部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜250℃に加熱し、エステル化反応を行なった。このまま反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、酸価が1mgKOH/g以下となったところで減圧下での反応を停止し、重量平均分子量が6,000の前段階のポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールにイソホロンジイソシアネート22.9部を徐々に加え、100〜150℃で加熱反応させた。6時間反応後に、重量平均分子量35,000のポリエステルポリウレタンポリオール(エステル結合度0.79モル/100g)を得た。酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、ポリオールX2とする。
【0105】
(ポリオールX3の製造)
ポリオールX1:100部とポリオールX2:40部を70℃で加熱・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液をポリオールX3とする。
【0106】
(主剤33の製造)
ポリオールX3:140部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製、YD−012)30部、エポキシ基含有オルガノシランカップリング剤3部を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を、主剤33とする。
(接着剤及びシート)
得られた主剤33と硬化剤D1とを100:14(重量比)で配合し、酢酸エチルで希釈し固形分を30%に調整した溶液を接着剤溶液とし、実施例23と同様にして、[PVFフィルム/接着剤/アルミホイル/接着剤/未処理ポリエステルフィルム/接着剤/EVAフィルム]の積層構成のシートを得、実施例1と同様の方法で評価した。
【0107】
<参考例1>
得られた主剤33と硬化剤D1とを100:14(重量比)で配合し、酢酸エチルで希釈し固形分を30%に調整した溶液を接着剤溶液とし、実施例24と同様にして、[PVFフィルム/接着剤/アルミホイル/接着剤/処理ポリエステルフィルム/接着剤/EVAフィルム]の積層構成のシートを得、実施例1と同様の方法で評価した。
【0108】
<比較例19>
<ポリオールX4の製造>
(末端一級水酸基が2.5官能、数平均分子量10,000ポリエステルポリオール)イソフタル酸31.3部、アジピン酸27.5部、エチレングリコール7.0部、ネオペンチルグリコール15.7部、及び1,6−ヘキサンジオール17.8部、トリメチロールプロパン0.54部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160〜240℃まで徐々に加熱し、エステル化反応を行なった。240℃で1時間反応し、酸価を測定し、15以下になったら反応缶を徐々に1〜2トールまで減圧し、所定の粘度に達した時、反応を停止し、とりだした。
このポリオールX4はGPCで分子量を測定し数平均分子量10,000、水酸基価14.1、酸価0.3であり、末端一級水酸基が平均2.5官能のポリエステルポリオールである。
【0109】
(主剤34の製造)
ポリオールX4を100部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製、YD−012)30部、シランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)1部、及び触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部を加えた樹脂溶液を70℃で加熱・溶解・混合し、酢酸エチルで希釈して得られた固形分50%の樹脂溶液を主剤34とする。
【0110】
(硬化剤D6の製造)
6官能のイソシアネート基のアダクト体(ジュラネートMHG80(旭化成社製)30部、イソホロンジイソシアネートの三量体70部を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤D6とする。
【0111】
(接着剤、及びシート)
主剤34と硬化剤D6とを100:14(重量比)で配合し、酢酸エチルで希釈し固形分を30%に調整した溶液を接着剤溶液とし、実施例23と同様にして、[PVFフィルム/接着剤/アルミホイル/接着剤/未処理ポリエステルフィルム/接着剤/EVAフィルム]の積層構成のシートを得、実施例1と同様の方法で評価した。
【0112】
<参考例2>
主剤34と硬化剤D6とを100:14(重量比)で配合し、酢酸エチルで希釈し固形分を30%に調整した溶液を接着剤溶液とし、実施例24と同様にして、[PVFフィルム/接着剤/アルミホイル/接着剤/処理ポリエステルフィルム/接着剤/EVAフィルム]の積層構成のシートを得、実施例1と同様の方法で評価した。
【0113】
実施例22〜24、比較例16〜19、参考例1、2の接着強度の評価結果を表5に示す。
【0114】
【表5】
【0115】
JIS C 8917(結晶系太陽電池モジュールの環境試験方法、及び耐久試験方法)には、85℃85%RH下で1000時間に耐久すること、という耐湿性試験が定められており、特に過酷な試験方法として知られている。表4A、表5より、本実施例においては、いずれも85℃85%RH雰囲気下での2000時間(24時間×90日)の経時による耐性が良好であり、長期の耐湿熱性に優れていることがわかる。すなわち、本発明の実施例に係る接着剤は、多層構造を有する太陽電池用裏面保護シートのシート層間に用いられる接着剤として適した接着剤であることがわかる。しかも、本実施例によれば、表面未処理素材に対する接着強度も良好であるという優れた効果を有する。
【0116】
太陽電池用裏面保護シートがこのような長期耐湿熱試験において、十分な層間接着強度(ラミネート強度)を保持し、シート層間にデラミネーションを発生させないことにより、太陽電池素子の保護、発電効率の維持、さらに太陽電池の寿命延長に寄与することができる。太陽電池の寿命延長は、太陽電池システムの普及につながり、化石燃料以外でのエネルギー確保の観点から、環境保全に寄与することにもなる。