特許第5761235号(P5761235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761235
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】光ファイバ温度分布測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/32 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   G01K11/32 B
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-44272(P2013-44272)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-173877(P2014-173877A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】志田 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】大石 和司
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−209121(JP,A)
【文献】 特開2004−235809(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/056567(WO,A1)
【文献】 特開平2−238340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の符号変調を行った光パルス列を光ファイバに入射させる送光部と、前記光パルス列を前記光ファイバに入射させて得られる後方ラマン散乱光を受光する受光部と、該受光部からの受光信号と前記送光部で行われる前記符号変調の種類に応じた符号列との相関処理を施すことにより復調を行う復調部とを備えており、該復調部から出力される復調信号を用いて前記光ファイバの長さ方向における温度分布を測定する光ファイバ温度分布測定装置において、
前記送光部からインパルス状のパルス光が出力されたとした場合に得られる前記受光部の受光信号の歪みを補正し得る補正データを、装置内部の予め規定された複数の温度毎に記憶する記憶部と
装置内部の温度を測定する温度センサと、
前記温度センサで測定された温度に応じた補正データを前記記憶部から読み出し、読み出した補正データを用いて、前記復調部からの復調信号若しくは前記受光部からの受光信号の補正を行う補正部と
を備えることを特徴とする光ファイバ温度分布測定装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記温度センサで測定された温度が前記予め規定された複数の温度の何れにも該当しない場合には、前記温度センサで測定された温度に近い温度における補正データを補間したデータを用いて前記補正を行うことを特徴とする請求項1記載の光ファイバ温度分布測定装置。
【請求項3】
前記受光部は、前記後方ラマン散乱光に含まれるストークス光を受光する第1受光回路と、反ストークス光を受光する第2受光回路とを備えており、
前記記憶部は、前記ストークス光についての受光信号の歪みを補正し得る第1補正データと、前記反ストークス光についての受光信号の歪みを補正し得る第2補正データとを前記補正データとして記憶しており、
前記補正部は、前記第1補正データを用いて前記復調部からの前記ストークス光についての復調信号若しくは前記受光部からの前記ストークス光についての受光信号の補正を行い、前記第2補正データを用いて前記復調部からの前記反ストークス光についての復調信号若しくは前記受光部からの前記反ストークス光についての受光信号の補正を行う
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光ファイバ温度分布測定装置。
【請求項4】
前記復調部は、前記補正部を兼ねており、前記復調と前記補正とを同時に行うことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光ファイバ温度分布測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの長さ方向における温度分布を測定する光ファイバ温度分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバをセンサとして用い、光ファイバの長さ方向における物理量の分布を測定する分布型測定装置の研究・開発が盛んに行われている。この分布型測定装置の一種に、光ファイバ内で生ずる後方ラマン散乱光(ストークス光及び反ストークス光)を測定して光ファイバの長さ方向における温度分布を測定する光ファイバ温度分布測定装置がある。尚、この光ファイバ温度分布測定装置は、R−OTDR(Raman Optical Time Domain Reflectmetry)とも呼ばれる。
【0003】
具体的に、上記の光ファイバ温度分布測定装置は、光ファイバの一端からパルス状のレーザ光を光ファイバ内に入射させて、レーザ光が光ファイバ内を伝播することによって順次生ずる後方ラマン散乱光を光ファイバの一端側で順次受光する動作を繰り返す。そして、光ファイバの長手方向の測定点の各々におけるストークス光と反ストークス光との強度比(正確には、ストークス光の強度の平均値と反ストークス光の強度の平均値との比)を求めることによって光ファイバの長手方向における温度分布を測定している。
【0004】
また、近年においては、ゴーレイ符号(Golay code)やバーカー符号(Barker code)を用いて符号変調した光パルス列を光ファイバに入射させ、光ファイバからの後方ラマン散乱光を受光して得られる受光信号に対して相関処理(復調)を行うことで、ダイナミックレンジを向上させる光ファイバ温度分布測定装置も実現されている。以下の特許文献1には、ゴーレイ符号を用いて符号変調した光パルス列を光ファイバに入射させて温度分布を測定する従来の光ファイバ温度分布測定装置が開示されている。また、以下の特許文献2には、装置本体側の温度変化による測定誤差の発生を防ぐことが可能な従来の光ファイバ温度分布測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−242141号公報
【特許文献2】特開2011−242142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ゴーレイ符号等を用いて変調した光パルス列を光ファイバに入射させて測定を行う光ファイバ温度分布測定装置では、光源或いは駆動回路(光源を駆動する駆動回路)の特性によって、光ファイバに入射させる光パルス列が忠実に変調されない場合がある。このような光パルス列を用いて光ファイバの測定を行うと、大きな温度変化が生じている箇所(温度変化点)や大きな損失変化が生じている箇所(損失変化点)において、温度測定値に歪み(誤差)が生ずる。このような歪みを補正する方法としては、歪みが生じた箇所の近傍で得られたデータを用いて補正する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、光ファイバ内で生じたストークス光及び反ストークス光を受光して得られる受光信号の信号強度は、光ファイバの温度に依存して変化する。このため、上述した方法によって歪みを補正しようとしても期待する補正がなされずに、却って測定精度が悪化する場合があるという問題がある。また、光ファイバ温度分布測定装置の内部に設けられた送光部(上記の光源及び駆動回路を含む)及び受光部は温度依存性を有しており、光ファイバ温度分布測定装置の環境温度によっても上述した歪みの程度が変化するため、測定精度を向上させるには環境温度を考慮して歪みを適切に補正する必要がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、温度変化点や損失変化点における温度測定値の歪みを適切に補正することによって測定精度の向上を図ることが可能な光ファイバ温度分布測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の光ファイバ温度分布測定装置は、所定の符号変調を行った光パルス列を光ファイバ(FB)に入射させる送光部(10、11)と、前記光パルス列を前記光ファイバに入射させて得られる後方ラマン散乱光を受光する受光部(14、15a、15b)と、該受光部からの受光信号と前記送光部で行われる前記符号変調の種類に応じた符号列との相関処理を施すことにより復調を行う復調部(18)とを備えており、該復調部から出力される復調信号を用いて前記光ファイバの長さ方向における温度分布を測定する光ファイバ温度分布測定装置(1、2)において、前記送光部からインパルス状のパルス光が出力されたとした場合に得られる前記受光部の受光信号の歪みを補正し得る補正データ(AD)を記憶する記憶部(20)と、前記記憶部に記憶された前記補正データを用いて、前記復調部からの復調信号若しくは前記受光部からの受光信号の補正を行う補正部(21、30)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、送光部からインパルス状のパルス光が出力されたとした場合に得られる受光部の受光信号の歪みを補正し得る補正データが記憶部に記憶され、記憶部に記憶された補正データを用いて復調部からの復調信号若しくは受光部からの受光信号を補正する処理が補正部によって行われる。
また、本発明の光ファイバ温度分布測定装置は、前記記憶部が、予め規定された複数の温度における補正データを記憶することを特徴としている。
また、本発明の光ファイバ温度分布測定装置は、装置内部の温度を測定する温度センサ(13b)を備えており、前記補正部が、前記温度センサで測定された温度に応じた補正データを前記記憶部から読み出して前記補正を行うことを特徴としている。
また、本発明の光ファイバ温度分布測定装置は、前記補正部が、前記温度センサで測定された温度が前記予め規定された複数の温度の何れにも該当しない場合には、前記温度センサで測定された温度に近い温度における補正データを補間したデータを用いて前記補正を行うことを特徴としている。
また、本発明の光ファイバ温度分布測定装置は、前記受光部が、前記後方ラマン散乱光に含まれるストークス光(ST)を受光する第1受光回路(15a)と、反ストークス光(AS)を受光する第2受光回路(15b)とを備えており、前記記憶部が、前記ストークス光についての受光信号の歪みを補正し得る第1補正データと、前記反ストークス光についての受光信号の歪みを補正し得る第2補正データとを前記補正データとして記憶しており、前記補正部が、前記第1補正データを用いて前記復調部からの前記ストークス光についての復調信号若しくは前記受光部からの前記ストークス光についての受光信号の補正を行い、前記第2補正データを用いて前記復調部からの前記反ストークス光についての復調信号若しくは前記受光部からの前記反ストークス光についての受光信号の補正を行うことを特徴としている。
また、本発明の光ファイバ温度分布測定装置は、前記復調部が、前記補正部を兼ねており、前記復調と前記補正とを同時に行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、送光部からインパルス状のパルス光が出力されたとした場合に得られる受光部の受光信号の歪みを補正し得る補正データを予め記憶部に記憶しておき、記憶部に記憶された補正データを用いて復調部からの復調信号若しくは受光部からの受光信号の補正を補正部が行っている。このため、温度変化点や損失変化点における温度測定値の歪みが適切に補正され、測定精度の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態による光ファイバ温度分布測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態による光ファイバ温度分布測定装置で用いられる補正データを説明するための図である。
図3】本発明の第1実施形態における補正データ算出方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態において補正データを算出するために用いられるサンプルデータ群の波形例を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態において補正データを算出するために求められる擬似的なインパルス応答を示すデータの波形を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態による光ファイバ温度分布測定装置の測定結果の一例を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態による光ファイバ温度分布測定装置の測定結果の他の例を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態による光ファイバ温度分布測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光ファイバ温度分布測定装置について詳細に説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による光ファイバ温度分布測定装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の光ファイバ温度分布測定装置1は、符号発生部10(送光部)、光源11(送光部)、方向性結合器12、温度基準部13、光フィルタ14(受光部)、光電変換回路(O/E)15a,15b(受光部)、増幅回路16a,16b、A/D変換回路17a,17b、復調部18、平均化回路19、記憶部20、補正部21、及び演算部22を備える。
【0014】
この光ファイバ温度分布測定装置1は、コネクタCNに接続される光ファイバFB内で生ずる後方ラマン散乱光(ストークス光及び反ストークス光)を受光して光ファイバFBの長さ方向における温度分布を測定する光ファイバ測定装置(R−OTDR)である。ここで、光ファイバFBは、例えば数km〜数十km程度の長さを有する石英系マルチモード光ファイバを用いることができる。尚、シングルモード光ファイバを用いてもよい。
【0015】
符号発生部10は、光源11から射出される光パルス列がゴーレイ符号を用いて符号変調された光パルス列となるような駆動信号(符号)を生成して光源11に出力する。また、符号発生部10は、上記の駆動信号とともに、平均化回路19を動作させるタイミングを規定するタイミング信号も出力する。ここで、nビット(例えば、64ビット)のゴーレイ符号は、以下の(1)式で表される2種類の符号列A0,B0であり、それぞれ(−1)と(+1)の要素からなる双極性相関符号である。但し、光は負のパワーを有さないため、符号発生部10は、A+,A−,B+,B−なる4種類の符号列を生成する。
【0016】
【数1】
【0017】
光源11は、例えば半導体レーザ等を備えており、符号発生部10から駆動信号が出力されるタイミングでパルス状のレーザ光の射出することにより、上記の駆動信号に応じた光パルス列を射出する。尚、光源11から射出されるレーザ光の波数をk0とする。方向性結合器12は、光源11から射出されたレーザ光が温度基準部13に導かれ、且つ、光ファイバFBで生じた後方散乱光が光フィルタ14に導かれるよう、光源11、温度基準部13、及び光フィルタ14を光学的に結合する。
【0018】
温度基準部13は、巻回された光ファイバ13aと温度センサ13bとを備えており、光ファイバ温度分布測定装置1内部の温度(基準温度)を得るためのものである。光ファイバ13aは、一端が方向性結合器12と光学的に結合され、他端がコネクタCN(光ファイバFBの一端が接続されるコネクタ)と光学的に結合された数十〜数百m程度の全長を有する光ファイバである。温度センサ13bは、例えば白金測温抵抗体を備えており、光ファイバ13aの近傍の温度を測定する。この温度センサ13bの測定結果は、補正部21及び演算部22に出力される。
【0019】
光フィルタ14は、方向性結合器12からの後方散乱光に含まれる後方ラマン散乱光(ストークス光ST及び反ストークス光AS)を抽出するとともに、ストークス光STと反ストークス光ASとを分離して出力するフィルタである。尚、光ファイバFBで生ずるラマンシフト(波数)をkrとすると、ストークス光STの波数はk0−krで表され、反ストークス光ASの波数はk0+krで表される。
【0020】
光電変換回路15a(第1受光回路)及び光電変換回路15b(第2受光回路)は、例えばアバランシェ・フォトダイオード等の受光素子を備えており、光フィルタ14から出力されるストークス光ST及び反ストークス光ASをそれぞれ光電変換する。増幅回路16a,16bは光電変換回路15a,15bから出力される光電変換信号をそれぞれ所定の増幅率で増幅する。
【0021】
A/D変換回路17a,17bは、増幅回路16a,16bで増幅された光電変換信号をサンプリングし、ディジタル化したサンプルデータを出力する。これらA/D変換回路17a,17bは、コネクタCNの位置を原点とし、光ファイバFBの長手方向に一定間隔(例えば、1[m]の間隔)で設定されたサンプルポイント(測定点)において生ずる後方ラマン散乱光(ストークス光ST及び反ストークス光AS)の光電変換信号をサンプリングするように動作タイミングが規定される。
【0022】
復調部18は、A/D変換回路17a,17bから出力されるサンプルデータと、符号発生部10で用いられるゴーレイ符号との相関処理を施すことによって復調を行う。具体的に、復調部18は、A/D変換回路17a,17bから出力されるサンプルデータの各々に対して以下の(2)式に示す相互相関を演算することによって、A/D変換回路17a,17bから出力されるサンプルデータの信号強度Q1をそれぞれ求める。
【0023】
【数2】
【0024】
ここで、上記(2)式中のS(A+),S(A−),S(B+),S(B−)は、符号列A+,A−,B+,B−によって変調された光パルス列をそれぞれ光ファイバFBに入射させたときに得られるサンプルデータ群である。また、上記(2)式中に示す演算子(記号「○」の中に記号「×」が付された演算子)は、畳み込み演算(コンボリューション)を示す演算子である。
【0025】
平均化回路19は、符号発生部10からのタイミング信号によって動作し、光源11から複数回に亘って射出される光パルス列が光ファイバFBに入射される度に得られる復調部18からのサンプルデータ群(ストークス光STについてのサンプルデータ群及び反ストークス光ASについてのサンプルデータ群)をそれぞれ平均化する。光ファイバFBで生ずる後方ラマン散乱光(ストークス光ST及び反ストークス光AS)は微弱であるため、光ファイバFBに対して複数回に亘ってレーザ光を入射させて得られるサンプルデータを平均化することにより、所望の信号対雑音比(S/N比)を得ている。
【0026】
記憶部20は、平均化回路19から出力されるサンプルデータ群(ストークス光STについてのサンプルデータ群及び反ストークス光ASについてのサンプルデータ群)の歪みを補正し得る補正データADを記憶する。この補正データADは、大きな温度変化が生じている箇所(温度変化点)や大きな損失変化が生じている箇所(損失変化点)で得られるインパルス応答の歪みを補正し得るデータである。
【0027】
図2は、本発明の第1実施形態による光ファイバ温度分布測定装置で用いられる補正データを説明するための図である。図2に示す通り、補正データADは、ストークス光STについてのサンプルデータ群の歪みを補正し得る補正データ(第1補正データ)と、反ストークス光ASについてのサンプルデータ群の歪みを補正し得る補正データ(第2補正データ)とからなる。このように、ストークス光STについての補正データと反ストークスASについての補正データとを別々に設けるのは、ストークス光ST及び反ストークス光ASに対する光フィルタ14及び光電変換回路15a,15bの特性がそれぞれ異なるからである。
【0028】
また、図2に示す通り、上述したストークス光STについての補正データ及び反ストークスASについての補正データは、予め規定された複数の温度(図2に示す例では、4℃刻みの温度)毎に用意されている。このように、複数の温度毎に補正データを用意するのは、光源11、光フィルタ14、及び光電変換回路15a,15bが温度特性を有するためである。尚、温度変化点における温度変化が20℃である場合に、歪みに起因する温度変化は約0.5℃であるため、図2に示す通り4℃刻みで温度データを用意することにより約0.1℃の測定精度が得られることになる。
【0029】
ここで、図2においては、理解を容易にするために、0℃から4℃刻みの温度(0℃、4℃、8℃、…)おけるストークス光STについての補正データをd101、d102、d103、…と表記し、反ストークス光STについての補正データをd201、d202、d203、…と表記している。しかしながら、これらの補正データは、単純な1つのデータではなく複数のデータからなるもの(データ列又はデータ群)である。
【0030】
尚、詳細は後述するが、補正データADは、光ファイバFBがコネクタCNに接続されていない状態で、温度基準部13に設けられた光ファイバ13aにパルス光を入射させて得られるサンプルデータ群(平均化回路19で得られるサンプルデータ群)をコンピュータ(図示省略)に読み出し、読み出したサンプルデータに対して演算を施すことによって求められる。ここで、補正データADを求める際に光ファイバFBを用いずに光ファイバ13aを用いるのは、温度変化点や損失変化点におけるインパルス応答をより正確に求めるためである。尚、求められた補正データADは、光ファイバFBがコネクタCNに接続されて測定が開始される前に予め記憶部20に記憶される。
【0031】
補正部21は、記憶部20に記憶された補正データADを用いて平均化回路19から出力されるサンプルデータ群(ストークス光STについてのサンプルデータ群及び反ストークス光ASについてのサンプルデータ群)をそれぞれ補正する。具体的に、補正部21は、温度センサ13bの測定結果で示される温度に応じた補正データADを記憶部20から読み出し、読み出した補正データADとストークス光STについてのサンプルデータ群との畳み込み演算、及び読み出した補正データADと反ストークス光ASについてのサンプルデータ群との畳み込み演算をそれぞれ行う。
【0032】
ここで、補正部21は、温度センサ13bの測定結果で示される温度における補正データが記憶部20に記憶されていない場合には、温度センサ13bの測定結果に近い温度における補正データを記憶部20から複数読み出し、読み出した複数のデータを補間したデータを用いて上述した補正を行うようにしても良い。例えば、温度センサ13bの測定結果で示される温度が26℃である場合には、図2に示す温度24℃における補正データ「d107」,「d207」と、温度28℃における補正データ「d108」,「d208」とを読み出す。そして、補正データ「d107」,「d108」を直線補間したデータを用いてストークス光STについてのサンプルデータ群を補正し、補正データ「d207」,「d208」を直線補間したデータを用いて反ストークス光ASについてのサンプルデータ群を補正する。
【0033】
演算部22は、温度センサ13bの測定結果を参照しつつ、補正部21で補正されたストークス光STについてのサンプルデータ群と、補正部21で補正された反ストークス光ASについてのサンプルデータ群とを用いて、サンプルポイント(測定点)毎の強度比を求める演算を行う。かかる演算によってサンプルポイント毎の温度が求められ、これにより光ファイバFBの長さ方向における温度分布が得られる。
【0034】
次に、本実施形態の光ファイバ温度分布測定装置1の動作について説明する。以下では、まず温度分布測定装置1で用いられる補正データADを求める方法(以下、「補正データ算出方法」という)について説明し、次に光ファイバFBを用いて光ファイバFBの長手方向における温度分布を温度分布測定装置1で測定する動作(以下、「温度分布測定動作」という)について説明する。
【0035】
〈補正データ算出方法〉
図3は、本発明の第1実施形態における補正データ算出方法を示すフローチャートである。図3に示す通り、まず光ファイバ温度分布測定装置1のコネクタCNから光ファイバFBを取り外した状態で、光ファイバ温度分布測定装置1の内部の温度を変えつつ光ファイバ13aの特性を測定する動作が行われる(ステップS11)。
【0036】
具体的には、光ファイバ温度分布測定装置1の内部温度を目標温度に設定した上で、光源11からのパルス光を光ファイバ13aに入射させ、光ファイバ13aから得られる後方ラマン散乱光(ストークス光ST及び反ストークス光AS)を測定する動作が、目標温度を変えながら繰り返し行われる。これにより、各目標温度におけるストークス光STについてのサンプルデータ群、及び反ストークス光ASについてのサンプルデータ群が平均化回路19で求められる。
【0037】
以上の動作が終了すると、測定されたサンプルデータ群をコンピュータに読み出す作業が行われる(ステップS12)。例えば、光ファイバ温度分布測定装置1にパーソナルコンピュータを接続して、平均化回路19で求められた各温度についてのサンプルデータ群(ストークス光STについてのサンプルデータ群、及び反ストークス光ASについてのサンプルデータ群)をパーソナルコンピュータに読み出す作業が行われる。
【0038】
サンプルデータ群の読み出しが完了すると、読み出した各温度のサンプルデータ群に対するデータ処理(切出し処理及び合成処理)を行って、各温度のサンプルデータ群をインパルス応答を示すデータに変換する処理がコンピュータで行われる(ステップS13)。このような変換を行うのは、光ファイバ温度分布測定装置1の大幅なコスト上昇を招くことなくインパルス応答を求めるためである。
【0039】
ここで、インパルス応答を求めるには、本来であればパルス幅が極めて狭いパルス光を光源11から射出して光ファイバ13aに入射させて、光ファイバ13a内で発生する後方ラマン散乱光を測定する必要がある。しかしながら、光源11から射出されるパルス光のパルス幅を狭くするには光ファイバ温度分布測定装置1の構成を変える必要があり、大幅なコスト上昇を招いてしまう。そこで、本実施形態では、サンプルデータ群に対するデータ処理を行ってインパルス応答を擬似的に求めることにより、大幅なコスト上昇を招くことなくインパルス応答を得るようにしている。
【0040】
図4は、本発明の第1実施形態において補正データを算出するために用いられるサンプルデータ群の波形例を示す図である。尚、図3においては、コネクタCNの位置を原点とした距離を横軸にとり、後方ラマン散乱光の信号レベルを縦軸にとってある。尚、コネクタCNから光源11側に距離D[m]だけ離れた位置(距離−D[m]の位置)には、光ファイバ13aの一端(光源11からのパルス光が入射される端部)が配置されている。
【0041】
図4中において、符号W1を付した曲線は、ストークス光STについてのサンプルデータ群の波形を示す曲線であり、符号W2を付した曲線は、反ストークス光ASについてのサンプルデータ群の波形を示す曲線である。これらの波形W1,W2を参照すると、ストークス光STについてのサンプルデータ群及び反ストークス光ASについてのサンプルデータ群は何れも、光ファイバ13aの一端(距離−D[m]の位置)において信号レベルが急激に立ち上がり、光ファイバ13aの内部において徐々に信号レベルが下降し、コネクタCNの位置(原点)において信号レベルが急激に立ち下がる変化を示す。尚、ストークス光STについてのサンプルデータ群は、反ストークス光ASについてのサンプルデータ群よりも全体的に信号レベルが高い。
【0042】
図4に示す信号レベルの変化を示すサンプルデータ群が得られた場合には、信号レベルが急激に立ち上がっている部分(距離−D[m]の位置)のサンプルデータ群と、信号レベルが急激に立ち下がっている部分(原点)のサンプルデータ群とが切り出され、切り出されたサンプルデータ群を合成する処理が行われる。かかる処理によって、徐々に信号レベルが下降する部分(光ファイバ13aの内部における部分)のサンプルデータ群が除かれ、図5に示す擬似的なインパルス応答を示すデータが求められる。
【0043】
図5は、本発明の第1実施形態において補正データを算出するために求められる擬似的なインパルス応答を示すデータの波形を示す図である。尚、図5中において、符号W11を付した曲線は、ストークス光STについてのサンプルデータ群に対するデータ処理を行って得られるデータの波形を示す曲線であり、符号W12を付した曲線は、反ストークス光ASについてのサンプルデータ群に対するデータ処理を行って得られるデータの波形を示す曲線である。
【0044】
図5を参照すると、波形W1,W2は何れも、おおむねδ関数的な変化を示すものであることが分かる。但し、立ち上がりの開始部分及び立ち下がりの終了部分においては波形が乱れており、インパルス応答の歪みが生じていることが分かる。また、図5を参照すると、ストークス光STについてのインパルス応答の歪み、及び反ストークス光ASについてのインパルス応答の歪みがそれぞれ異なっていることが分かる。これは、ストークス光ST及び反ストークス光ASに対する光フィルタ14及び光電変換回路15a,15bの特性がそれぞれ異なるからである。
【0045】
以上の処理が終了すると、ステップS13で求められた各温度の擬似的なインパルス応答を示すデータを、インパルス応答の歪みを補正し得る補正データADに変換する処理がコンピュータで行われる(ステップS14)。具体的には、ステップS13で得られたデータをh(i)とすると、以下の(3)式で示す関係が成立するデータh−1(i)を求める処理が行われる。つまり、データh(i)とデータh−1(i)とを畳み込んだ結果が、「000…00100…000」となるデータh−1(i)を求める処理が行われる。
【0046】
【数3】
【0047】
いま、説明の簡単のために、h={a,b,c,d,e}、h−1={A,B,C,D,E}とすると、ステップS14の処理では、例えば、中心を含む前半部分のデータ(a,b,c)及び(A,B,C)と、後半部分のデータ(d,e)及び(D,E)とに分け、各部分のデータについて(3)式で示す関係が成立するデータh−1(i)を求める処理が行われる。
【0048】
例えば、上記の前半部分のデータ(a,b,c)及び(A,B,C)について、上記(3)式に示す演算を行うと、以下の(4)式が得られる。
【0049】
【数4】
【0050】
そして、上記(4)式が{0,0,0,0,1}となるデータ(A,B,C)を求める処理が行われ、C=1/c,B=−b/c,A=−a/c+b/cが得られる。後半部分のデータについても前半部分のデータと同様の演算が行われる。以上の処理によって、インパルス応答の歪みを補正し得る補正データが求められる。
【0051】
以上の処理が終了すると、求められた各温度の補正データADを光ファイバ温度分布測定装置1の記憶部20に記憶させる作業が行われる(ステップS15)。例えば、再び光ファイバ温度分布測定装置1にパーソナルコンピュータを接続して、パーソナルコンピュータで求められた各温度の補正データAD(ストークス光STについての補正データ、及び反ストークス光ASについての補正データ)を記憶部20に記憶する作業が行われる。
【0052】
〈温度分布測定動作〉
動作が開始されると、符号発生部10から駆動信号が出力され、この駆動信号に基づいて光源11からはゴーレイ符号を用いて符号変調された光パルス列が順次射出される。この光パルス列は、方向性結合器12、温度基準部13、及びコネクタCNを順に介して光ファイバFBに入射し、光ファイバFB中を伝播する。光パルス列が光ファイバFB中を進むと、後方ラマン散乱光(ストークス光ST及び反ストークス光AS)を含む後方散乱光が発生する。この後方散乱光は、光ファイバFB中を光パルス列の進行方向とは逆方向に進み、コネクタCN、温度基準部13、及び方向性結合器12を順に介して光フィルタ14に入射する。そして、光フィルタ14において、ストークス光STと反ストークス光ASとが抽出されて分離される。
【0053】
ストークス光ST及び反ストークス光ASは、光電変換回路15a,15bでそれぞれ光電変換されて、それらの光電変換信号が増幅回路16a,16bでそれぞれ増幅される。増幅回路16a,16bで増幅された光電変換信号は、A/D変換回路17a,17bにおいてそれぞれサンプリングされる。これらA/D変換回路17a,17bでサンプリングされたサンプルデータは復調部18に出力され、符号発生部10で用いられるゴーレイ符号との相関処理が施されてそれぞれ復調される。復調部18で復調されたサンプルデータは、平均化回路19に出力され、光ファイバFBの長手方向に設定されたサンプルポイント数分のサンプルデータ群がそれぞれ蓄えられる。
【0054】
ゴーレイ符号を用いて符号変調された光パルス列が光ファイバFBに入射される度に以上の処理が繰り返し行われ、A/D変換回路17a,17bから順次サンプルポイント数分のサンプルデータ群がそれぞれ出力される。そして、A/D変換回路17aから順次出力されるストークス光STについてのサンプルデータ群が平均化回路19でサンプルポイント毎に平均化されるとともに、A/D変換回路17baから順次出力される反ストークス光ASについてのサンプルデータ群が平均化回路19でサンプルポイント毎に平均化される。
【0055】
平均化回路19における平均化処理が終了すると、平均化されたサンプルデータ群(ストークス光STについてのサンプルデータ群及び反ストークス光ASについてのサンプルデータ群)の歪みを補正する処理が補正部21でそれぞれ行われる。具体的には、温度センサ13bの測定結果で示される温度に応じた補正データADが記憶部20から補正部21に読み出され、読み出された補正データADとストークス光STについてのサンプルデータ群との畳み込み演算、及び読み出した補正データADと反ストークス光ASについてのサンプルデータ群との畳み込み演算がそれぞれ行われる
【0056】
ここで、温度センサ13bの測定結果で示される温度における補正データが記憶部20に記憶されていない場合には、温度センサ13bの測定結果に近い温度における補正データが記憶部20から補正部21に複数読み出される。そして、読み出された複数のデータを補間したデータが補正部21で求められ、このデータを用いて上述した畳み込み演算がそれぞれ行われる。
【0057】
補正部21における処理が終了すると、演算部22において、補正されたストークス光STについてのサンプルデータ群と補正された反ストークス光ASについてのサンプルデータ群とを用いて、サンプルポイント(測定点)毎の強度比が求められ、これによりサンプルポイント毎の温度が求められる。このようにして、光ファイバFBの長さ方向における温度分布が求められる。
【0058】
図6は、本発明の第1実施形態による光ファイバ温度分布測定装置の測定結果の一例を示す図である。尚、図6に示す測定結果は、光ファイバFBの温度を一定の温度T1(例えば、28[℃]程度)に設定したときに得られたものである。図6中の符号L1が付された曲線は、補正部21による補正を行って得られた温度分布を示す曲線であり、符号L2が付された曲線は、補正部21による補正を行わずに得られた温度分布を示す曲線である。
【0059】
図6を参照すると、曲線L2は、光ファイバ温度分布測定装置1のコネクタCNに近い部分(距離が小さい部分)において温度T1から大きくずれているのに対し、曲線L1は、全体に亘って温度T1からのずれが小さいことが分かる。これにより、補正データADを用いた補正を行うことによって、コネクタCNに近い損失変化点におけるサンプルデータ群の歪みが適切に補正されるのが分かる。
【0060】
図7は、本発明の第1実施形態による光ファイバ温度分布測定装置の測定結果の他の例を示す図である。尚、図7に示す測定結果は、光ファイバFBの温度を一定の温度T2(例えば、12[℃]程度)に設定し、且つ光ファイバ温度分布測定装置1の内部の温度を所定の温度TD(例えば、70[℃])に設定したときに得られたものである。図7中の符号L11が付された曲線は、温度TDにおける補正データを用いた補正を行って得られた温度分布を示す曲線であり、符号L12が付された曲線は、温度TDとは大きく異なる温度(例えば、25[℃])における補正データを用いた補正を行って得られた温度分布を示す曲線である。また、符号L13が付された曲線は、補正部21による補正を行わずに得られた温度分布を示す曲線である。
【0061】
図7を参照すると、曲線L13は、図6中の曲線L2と同様に、光ファイバ温度分布測定装置1のコネクタCNに近い部分(距離が小さい部分)において温度T2から大きくずれているのに対し、曲線L11,L12は、全体に亘って曲線L13よりも温度T2からのずれが小さいことが分かる。ここで、曲線L11,L12を比較すると、曲線L11は、光ファイバ温度分布測定装置1のコネクタCNに近い部分において、温度T2からのずれが曲線L12よりも小さくなっていることが分かる。これにより、補正データADを用いた補正を行えばコネクタCNに近い損失変化点におけるサンプルデータ群の歪みが補正されるが、光ファイバ温度分布測定装置1の内部温度に応じた適切な補正データ補正データADを用いた補正を行うことによって、コネクタCNに近い損失変化点におけるサンプルデータ群の歪みがより適切に補正されるのが分かる。
【0062】
以上の通り、本実施形態では、温度変化点や損失変化点で得られるインパルス応答の歪みを補正し得るデータである補正データADを予め記憶部20に記憶しておき、補正部21が記憶部20に記憶された補正データADを用いて、平均化回路19で平均化されたサンプルデータ群(ストークス光ST及び反ストークス光ASについてのサンプルデータ群)の歪みを補正するようにしている。これにより、光源11、光フィルタ14、光電変換回路15a,15b等の特性に応じて温度変化点や損失変化点におけるサンプルデータ群の歪みを適切に補正することができるため測定精度の向上を図ることができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
図8は、本発明の第2実施形態による光ファイバ温度分布測定装置の要部構成を示すブロック図である。図8に示す通り、本実施形態の光ファイバ温度分布測定装置2は、図1中の補正部21を省略するとともに、図1中の復調部18に変えて復調補正部30を設けた構成である。
【0064】
変復調補正部30は、図1に示す光ファイバ温度分布測定装置1が備える復調部18と補正部21とを兼ねるものである。つまり、変復調補正部30は、A/D変換回路17a,17bから出力されるサンプルデータと、符号発生部10で用いられるゴーレイ符号との相関処理を施すことによって復調をそれぞれ行うとともに、記憶部20に記憶された補正データADを用いてA/D変換回路17a,17bから出力されるサンプルデータの補正をそれぞれ行う。
【0065】
ここで、図1に示す光ファイバ温度分布測定装置1の平均化回路19から出力されるサンプルデータ群の信号強度Q2は、以下の(5)式で表される。
【数5】
【0066】
また、補正部21で用いられる補正データADをIとすると、補正部21から出力されるサンプルデータ群(演算部22に入力されるサンプルデータ群)の信号強度Q3は以下の(6)式で表される。
【数6】
【0067】
上記(6)式は、以下の(7)式に変形することが可能である。
【数7】
【0068】
上記(6),(7)から、演算部22に入力されるサンプルデータ群は、図1に示す補正部21の補正が平均化回路19の後段で行われた場合であっても、平均化回路19の前段で行われた場合であっても、等しいものになることが分かる。このため、本実施形態では、図1に示す光ファイバ温度分布測定装置1が備える復調部18と補正部21とを兼ねる復調補正部30を平均化回路19の前段に設けて構成を簡略化している。尚、本実施形態の光ファイバ温度分布測定装置2の動作は、補正データADを用いた補正が平均化回路19の前段で行われる点を除いては、図1に示す光ファイバ温度分布測定装置1の動作と同様であるため、動作の詳細な説明は省略する。
【0069】
本実施形態においては、温度変化点や損失変化点で得られるインパルス応答の歪みを補正し得るデータである補正データADを予め記憶部20に記憶しておき、復調補正部30が、A/D変換回路17a,17bから出力されるサンプルデータの復調を行うと同時に補正データADを用いて歪みを補正するようにしている。これにより、光源11、光フィルタ14、光電変換回路15a,15b等の特性に応じて温度変化点や損失変化点におけるサンプルデータ群の歪みを適切に補正することができるため測定精度の向上を図ることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態による光ファイバ温度分布測定装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、ストークス光STと反ストークス光ASとを光電変換回路15a,15bでそれぞれ光電変換し、これらの光電変換信号に対してA/D変換回路17a,17bでそれぞれサンプリングする構成について説明した。しかしながら、光周波数の領域でストークス光STと反ストークス光ASとを同一のタイミングでサンプリングし、サンプリングされたストークス光STと反ストークス光ASとを光電変換回路15a,15bを用いて個別に光電変換する構成であっても良い。かかる構成の場合には、A/D変換回路17a,17bは省略される。また、本発明の光ファイバ温度分布測定装置は、上述したゴーレイ符号以外に、バーカー符号等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0071】
1,2 光ファイバ温度分布測定装置
10 符号発生部
11 光源
13b 温度センサ
14 光フィルタ
15a,15b 光電変換回路
18 復調部
20 記憶部
21 補正部
30 補正部
AD 補正データ
AS 反ストークス光
FB 光ファイバ
ST ストークス光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8