(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被駆動部分(551)の前記長手方向の移動距離(L)に対する前記被駆動部分(551)の先端における前記長手方向と交差する方向の変位(h)の比(h/L)が0.15〜0.25の範囲内である、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の駆動機構(70)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の駆動機構では、垂直風向調整羽根のスイング幅を大きくするには、[モータ軸から第1のリンクと第2のリンクとの連結点まで]の距離を大きくする必要があり、その分だけモータの必要トルクが増大するので、モータの大型化を招来する。
【0004】
逆に、モータを小型化しようとすると、当該距離を小さくする必要があり、垂直風向調整羽根のスイング幅が制限される。
【0005】
本発明の課題は、垂直風向調整羽根のスイング幅を従来と同等に維持しながらモータの小型化を実現する、空調機の可動部材の駆動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る駆動機構は、空調機の可動部材を駆動する駆動機構であって、モータと、ピニオンと、ラックと、ガイドとを備えている。ピニオンは、モータの回転軸に固定される。ラックは、可動部材に直接または間接的に連結される被駆動部分を有し、ピニオンと噛み合う。ガイドは、被駆動部分が湾曲軌道を描きながら移動できるようにラックを案内する。
また、ガイドは、ラックが貫通する筒部を有している。ラックは、筒部に収納される部分から筒部の内面に向って隆起する突起を有している。
【0007】
この駆動機構では、回転運動を往復直線運動に変換するラック&ピニオン機構において、ラックに湾曲軌道を描かせることによって、ラック&ピニオン機構から直に揺動運動を取り出せるので、従来のようなラックの直線運動を揺動運動に変換する部材を省くことができる。
【0008】
また、ピニオンの回転量で可動部材のスイング量を調節できるので、従来のような[モータ軸から第1のリンクと第2のリンクとの連結点まで]の距離でスイング量を調節する構成よりもモータのトルクを小さくすることができる。
【0009】
さらに、突起と筒部内面とのクリアランスが、ラックの被駆動部分の長手方向と交差する方向の振れ幅をとなるので、このクリアランスを調整することによって必要な振れ幅を得ることができる。
【0010】
本発明の第2観点に係る駆動機構は、空調機の可動部材を駆動する駆動機構であって、モータと、ピニオンと、ラックと、ガイドとを備えている。ピニオンは、モータの回転軸に固定される。ラックは、可動部材に直接または間接的に連結される被駆動部分を有し、ピニオンと噛み合う。ガイドは、被駆動部分が湾曲軌道を描きながら移動できるようにラックを案内する。また、ガイドは、ラックが貫通する筒部を有している。ラックは、被駆動部分の先端から筒部に収容される部分までの間に、筒部の開口面積よりも大きい鍔を有している。
【0011】
この駆動機構では、回転運動を往復直線運動に変換するラック&ピニオン機構において、ラックに湾曲軌道を描かせることによって、ラック&ピニオン機構から直に揺動運動を取り出せるので、従来のようなラックの直線運動を揺動運動に変換する部材を省くことができる。
【0012】
また、ピニオンの回転量で可動部材のスイング量を調節できるので、従来のような[モータ軸から第1のリンクと第2のリンクとの連結点まで]の距離でスイング量を調節する構成よりもモータのトルクを小さくすることができる。
【0013】
さらに、たとえば空調機の調和空気が流通する部分に当該駆動機構を配置した場合、冷風が被駆動部分に沿ってガイドの筒部に入り込もうとする。しかしながら、この駆動装置では、鍔が存在することによって筒部への冷風の進入が阻害されるので、筒部の内側が結露するような事態は防止される。
【0014】
本発明の第3観点に係る駆動機構は、空調機の可動部材を駆動する駆動機構であって、モータと、ピニオンと、ラックと、ガイドと、ギアボックスとを備えている。ピニオンは、モータの回転軸に固定される。ラックは、可動部材に直接または間接的に連結される被駆動部分を有し、ピニオンと噛み合う。ガイドは、被駆動部分が湾曲軌道を描きながら移動できるようにラックを案内する。ギアボックスは、ラックとピニオンとの噛み合い部分を収容する。また、ガイドは、ギアボックス内部と連通しラックが貫通する筒部を有している。ラックは、ピニオンとの噛み合い部分を挟んでピニオンと反対側の領域に、対向する端面の間隔がラックの移動距離よりも大きい案内溝をさらに有している。ギアボックスは、ラックとピニオンとの噛み合い部分を収容した状態のときにラックの案内溝に入り込むリブを有している。
【0015】
この駆動機構では、回転運動を往復直線運動に変換するラック&ピニオン機構において、ラックに湾曲軌道を描かせることによって、ラック&ピニオン機構から直に揺動運動を取り出せるので、従来のようなラックの直線運動を揺動運動に変換する部材を省くことができる。
【0016】
また、ピニオンの回転量で可動部材のスイング量を調節できるので、従来のような[モータ軸から第1のリンクと第2のリンクとの連結点まで]の距離でスイング量を調節する構成よりもモータのトルクを小さくすることができる。
【0017】
さらに、ラック&ピニオンはピニオンの回転量を制御することでラックの移動距離が調節されるが、モータのオーバーランによるラックの抜け落ち等を防止するためには機械的拘束が必要である。この駆動機構では、モータが万一オーバーランしてもラックの案内溝にギアボックス側のリブが入り込んでいるので、リブと案内溝の端部とが当接してラックの抜け落ちは防止される。
【0018】
本発明の第
4観点に係る駆動機構は、第1観点
から第3観点のいずれか1つに係る駆動機構であって、ガイドが、被駆動部分の長手方向と交差する方向の振れ幅を所定範囲まで許容して被駆動部分に湾曲軌道を描かせる。
【0019】
本来、ラック&ピニオンはラックに往復直線運動させることを前提に利用されるので、ラックに揺動運動をさせる機能は備わっていない。しかし、この駆動機構では、ガイドが、ラックの被駆動部分の長手方向と交差する方向の振れ幅を所定範囲まで許容することによって、被駆動部分が湾曲軌道を描かくので、ラック&ピニオンから直にラックの揺動運動を取り出すことができる。したがって、従来のようなリンク構造よりも部品点数を少なくすることができる。
【0020】
本発明の第
5観点に係る駆動機構は、第1観点
から第4観点のいずれか1つに係る駆動機構であって、湾曲軌道が円弧軌道である。
【0021】
本発明の第
6観点に係る駆動機構は、第
5観点に係る駆動機構であって、被駆動部分の先端が描く円弧の半径が100mm以下である。
【0022】
本発明の第
7観点に係る駆動機構は、第1観点から第
6観点のいずれか1つに係る駆動機構であって、被駆動部分の長手方向の移動距離Lに対する被駆動部分の先端における長手方向と交差する方向の変位hの比(h/L)が0.15〜0.25の範囲内である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1観点に係る駆動機構は、回転運動を往復直線運動に変換するラック&ピニオン機構において、ラックに湾曲軌道を描かせることによって、ラック&ピニオン機構から直に揺動運動を取り出せるので、従来のようなラックの直線運動を揺動運動に変換する部材を省くことができる。また、ピニオンの回転量で可動部材のスイング量を調節できるので、従来のような[モータ軸から第1のリンクと第2のリンクとの連結点まで]の距離でスイング量を調節する構成よりもモータのトルクを小さくすることができる。
さらに、突起と筒部内面とのクリアランスが、ラックの被駆動部分の長手方向と交差する方向の振れ幅をとなるので、このクリアランスを調整することによって必要な振れ幅を得ることができる。
【0024】
本発明の第2観点に係る駆動機構では、鍔が存在することによって筒部への冷風の進入が阻害されるので、筒部の内側が結露するような事態は防止される。
【0025】
本発明の第3観点に係る駆動機構では、モータが万一オーバーランしてもラックの案内溝にギアボックス側のリブが入り込んでいるので、リブと案内溝の端部とが当接してラックの抜け落ちは防止される。
【0026】
本発明の第
4観点から第
7観点のいずれかに係る駆動機構では、ガイドが、ラックの被駆動部分の長手方向と交差する方向の振れ幅を所定範囲まで許容することによって、被駆動部分が湾曲軌道を描かくので、ラック&ピニオンから直にラックの揺動運動を取り出すことができる。したがって、従来のようなリンク構造よりも部品点数を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0029】
(1)空調室内機10の構成
図1は、運転停止時の空調室内機10の断面図である。
図1において、空調室内機10は壁掛けタイプであり、本体ケーシング11、室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40が搭載されている。
【0030】
本体ケーシング11は、天面部11a、前面パネル11b、背面板11c及び下部水平板11dを有し、内部に室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40を収納している。
【0031】
天面部11aは、本体ケーシング11の上部に位置し、天面部11aの前部には、吸込口(図示せず)が設けられている。
【0032】
前面パネル11bは室内機の前面部を構成しており、吸込口がないフラットな形状を成している。また、前面パネル11bは、その上端が天面部11aに回動自在に支持され、ヒンジ式に動作することができる。
【0033】
室内熱交換器13及び室内ファン14は、底フレーム16に取り付けられている。室内熱交換器13は、通過する空気との間で熱交換を行う。また、室内熱交換器13は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成し、その下方に室内ファン14が位置する。室内ファン14は、クロスフローファンであり、室内から取り込んだ空気を、室内熱交換器13に当てて通過させた後、室内に吹き出す。
【0034】
本体ケーシング11の下部には、吹出口15が設けられている。吹出口15には、吹出口15から吹き出される吹出空気の方向を変更する上下風向調整羽根31が回動自在に取り付けられている。上下風向調整羽根31は、モータ(図示せず)によって駆動し、吹出空気の方向を変更するだけでなく、吹出口15を開閉することもできる。上下風向調整羽根31は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0035】
また、吹出口15は、吹出流路18によって本体ケーシング11の内部と繋がっている。吹出流路18は、吹出口15から底フレーム16のスクロール17に沿って形成されている。
【0036】
室内空気は、室内ファン14の稼動によって吸込口、室内熱交換器13を経て室内ファン14に吸い込まれ、室内ファン14から吹出流路18を経て吹出口15から吹き出される。
【0037】
制御部40は、本体ケーシング11を前面パネル11bから視て室内熱交換器13及び室内ファン14の右側方に位置しており、室内ファン14の回転数制御、上下風向調整羽根31の動作制御を行う。
【0038】
図2Aは、運転時における通常前吹き状態の空調室内機10の部分断面図である。
図2Aにおいて、例えば、リモコン等によってユーザーが「前吹き」を選択したとき、制御部40は上下風向調整羽根31の内側面31bが略水平になる位置まで上下風向調整羽根31を回動させる。なお、上下風向調整羽根31の内側面31bが円弧曲面をなしている場合は、内側面31bの前方端E1における接線が略水平になるまで上下風向調整羽根31を回動させる。その結果、吹出空気は、前吹き状態となる。
【0039】
図2Bは、運転時における通常前方下吹き状態の空調室内機10の部分断面図である。
図2Bにおいて、例えば、リモコン等によってユーザーが吹出方向を「通常前吹き」よりも下方に向けたいとき、「通常前方下吹き」を選択すればよい。
【0040】
このとき、制御部40は、上下風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線が水平よりも前下がりになるまで上下風向調整羽根31を回動させる。その結果、吹出空気は、前方下吹き状態となる。
【0041】
(2)詳細構成
(2−1)前面パネル11b
図1に示すように、前面パネル11bは本体ケーシング11の上部前方からなだらかな円弧曲面を描きながら下部水平板11dの前方エッジに向かって延びている。
【0042】
(2−2)吹出口15
図1に示すように、吹出口15は、本体ケーシング11の下部に形成されており、横方向(
図1紙面と直交する方向)を長辺とする長方形の開口である。吹出口15の下端は下部水平板11dの前方エッジに接しており、吹出口15の下端と上端とを結ぶ仮想面は前方上向きに傾斜している。
【0043】
(2−3)スクロール17
スクロール17は、室内ファン14に対峙するように湾曲した隔壁であり、底フレーム16の一部である。スクロール17の終端Fは、吹出口15の周縁近傍まで到達している。吹出流路18を通る空気は、スクロール17に沿って進み、スクロール17の終端Fの接線方向に送られる。したがって、吹出口15に上下風向調整羽根31がなければ、吹出口15から吹き出される吹出空気の風向は、スクロール17の終端Fの接線に概ね沿った方向である。
【0044】
(2−4)上下風向調整羽根31
上下風向調整羽根31は、吹出口15を塞ぐことができる程度の面積を有している。上下風向調整羽根31が吹出口15を閉じた状態において、その外側面31aは前面パネル11bの曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。また、上下風向調整羽根31の内側面31b(
図2A及び
図2B参照)も、外面にほぼ平行な円弧曲面を成している。
【0045】
上下風向調整羽根31は、下端部に回動軸311を有している。回動軸311は、吹出口15の下端近傍で、本体ケーシング11に固定されているステッピングモータ(図示せず)の回転軸に連結されている。
【0046】
回動軸311が
図1正面視反時計方向に回動することによって、上下風向調整羽根31の上端が吹出口15の上端側から遠ざかるように動作して吹出口15を開ける。逆に、回動軸311が
図1正面視時計方向に回動することによって、上下風向調整羽根31の上端が吹出口15の上端側へ近づくように動作して吹出口15を閉じる。
【0047】
上下風向調整羽根31が吹出口15を開けている状態において、吹出口15から吹き出された吹出空気は、上下風向調整羽根31の内側面31bに概ね沿って流れる。すなわち、スクロール17の終端Fの接線方向に概ね沿って吹き出された吹出空気は、その風向が上下風向調整羽根31によってやや上向きに変更される。
【0048】
(2−5)垂直風向調整羽根20
図3は、羽根片201及びその周辺の斜視図である。
図3において、垂直風向調整羽根20は、複数の羽根片201と、複数の羽根片201を連結する連結棒203を有している。また、垂直風向調整羽根20は、吹出流路18において、上下風向調整羽根31よりも室内ファン14近傍に配置されている。
【0049】
複数枚の羽根片201は、連結棒203が吹出口15の長手方向に沿って往復移動することによって、その長手方向に対して垂直な状態を中心に左右に揺動する。なお、連結棒203は、モータ(図示せず)によって往復移動する。
【0050】
羽根片201は、吹出流路18の室内ファン14側から吹出口15側に向って徐々に面積が拡大する板片であり、吹出口15側に連結棒203が挿入されるスリット孔201aが形成され、室内ファン14側の端部には本体ケーシング11内部に支持される支持部201bが形成されている。また、羽根片201には、中央部から支持部201bに向って延びる2つのスリット201cが形成されている。
【0051】
複数枚の羽根片201は、連結棒203が吹出口15の長手方向に沿って往復移動することによって、本体ケーシング11の長手方向に対して垂直な状態を中心に左右に揺動する。なお、連結棒203は、駆動ユニット70(
図4A〜
図4C参照)によって往復移動する。
【0052】
(2−6)駆動ユニット70
図4Aは、本発明の一実施形態に係る駆動ユニット70の第1状態における当該駆動ユニット70の断面図である。また、
図4Bは、第2状態における駆動ユニット70の断面図である。さらに、
図4Cは、第3状態における駆動ユニット70の断面図である。
【0053】
図4Aにおいて、駆動ユニット70は、モータ51と、ピニオン53と、ラック55と、ガイド57と、ギアボックス61を備えている。
【0054】
なお、
図4A〜
図4Bにおける、第2状態とはアーム部551が最も飛び出した状態であり、第3状態とはアーム部551が最も引っ込んだ状態であり、第1状態とは第2状態と第3状態との中間状態を意味する。
【0055】
(2−6−1)モータ51
モータ51は、ステッピングモータである。モータ51は、入力されるパルス数に応じた回転量を出力する回転軸51aを有している。
【0056】
(2−6−2)ピニオン53
ピニオン53は、モータ51の回転軸51aに固定される小型の歯車である。ピニオン53は、モータ51の回転軸51aの回転方向と同じ方向に、回転軸51aの回転量と同じ回転量を出力する。
【0057】
(2−6−3)ラック55
ラック55は、ラック部552とアーム部551とを有している。ラック部552は、ピニオン53と噛み合う。また、ラック部552は、ピニオン53との噛み合い部分を挟んでピニオン53と反対側の領域に案内溝557が設けられている。案内溝557において、長手方向の2つの対向する端面の間隔は、ラック55の移動距離よりも大きい。
【0058】
アーム部551は、先端に凸形ファスナ551aが形成されている。凸形ファスナ551aは、連結棒203の端部に設けられた連結孔にスナップフィットで挿入されることによって、連結棒203に連結される。
【0059】
また、ラック55は、アーム部551の先端からガイド57まで間に、アーム部551からその断面積を拡張するように隆起する鍔555を有している。
【0060】
さらに、ラック55は、アーム部551のうちのガイド57に案内される部分において、ガイド57の内面に向って隆起する突起553を有している。
【0061】
(2−6−4)
ガイド57は、ラック55が貫通する筒部571から成り、アーム部551が湾曲軌道を描きながら移動できるようにラック55を案内する。
【0062】
なお、ラック55の鍔555は、アーム部551の先端から筒部571に収容される部分まで間に位置し、鍔555の面積は筒部571の開口面積よりも大きく設定されている。そのため、調和空気が流通する部分に配置された場合でも、冷風が筒部571に入り込もうとしても、鍔555が存在することによって筒部571への冷風の進入を阻害するので、筒部571の内側が結露するような事態は防止される。
【0063】
また、ラック55の突起553は、筒部571に収納される部分から筒部571の内面に向って隆起している。
【0064】
(2−6−5)ギアボックス61
ギアボックス61は、ラック55とピニオン53との噛み合い部分を収容する。ガイド57は、ギアボックス61内部と連通し
、ラック55が貫通する筒部571を有している。
【0065】
また、ギアボックス61は、リブ611を有している。リブ611は、ラック55とピニオン53との噛み合い部分を収容した状態のときにラック55の案内溝557に入り込む。通常のラック&ピニオン機構は、ピニオンの回転量を制御することでラックの移動距離が調節されるが、モータのオーバーランによるラックの抜け落ち等を防止するためには機械的拘束が必要である。本実施形態では、モータ51が万一オーバーランしてもラック部552の案内溝557にギアボックス61側のリブ611が入り込んでいるので、リブ611と案内溝557の端部とが当接するのでラック55の抜け落ちは防止されている。
【0066】
(3)駆動ユニット70の動作
駆動ユニット70が搭載されている空調室内機10の運転、例えば冷房運転が開始されると、
図2Aに示すように、上下風向調整羽根31の回動軸311が反時計方向に回動することによって、上下風向調整羽根31の上端が吹出口15の上端側から遠ざかるように動作して吹出口15を開ける。
【0067】
ユーザー、リモコン等によって「通常前吹き」を選択したとき、制御部40は上下風向調整羽根31の内側面31bが略水平になる位置まで上下風向調整羽根31を回動させる。この結果、調和空気が吹出口15からほぼ水平に吹き出される。
【0068】
また、制御部40は、垂直風向調整羽根20の羽根片201を左右に揺動させて、吹出空気を左右交互に吹き出させる。制御部40は、連結棒203を吹出口15の長手方向に沿って往復移動させるために、モータ51の回転軸51aを時計方向および反時計方に交互に回転させる。
【0069】
回転軸51aの回転量はそのままピニオン53の回転量としてラック55に伝達されるので、ラック55のアーム部551の先端に連結されている連結棒203が長手方向に往復運動を行う。その結果、垂直風向調整羽根20の羽根片201を左右に揺動する。
【0070】
ここで、連結棒203は、単純な往復運動を描いているわけではなく、
図3に示すようにアーム部551の先端が円弧軌跡を描きながら往復運動をしている。これは、垂直風向調整羽根20の羽根片201が左右に揺動する際に、連結棒203が吹出口15の前方側へ押し出されるように動くので、連結棒203自体も円弧軌跡を描いており、その動きを妨げないようするためである。
【0071】
本来、ラック&ピニオン機構はラックに往復直線運動させることを前提に利用されるので、通常、ラックに揺動運動をさせる機能は備わっていない。
【0072】
しかし、駆動ユニット70では、ガイド57が、ラック55のアーム部551の長手方向と交差する方向の振れ幅を所定範囲まで許容することによって、アーム部551が湾曲軌道(円弧軌道)を描かくので、ラック&ピニオンから直にラックの揺動運動を取り出すことができる。
【0073】
図4Cに示すように、アーム部551の長手方向と交差する方向の振れ幅は、アーム部551の長手方向の移動距離Lに対するアーム部551の先端における長手方向と交差する方向の変位hの比(h/L)で表すと0.15〜0.25の範囲内に設定されており、これによって、アーム部551の先端が描く円弧の半径は100mm以下となる。
【0074】
ここで、駆動ユニット70のラック&ピニオン機構から、ラック55の揺動運動を取り出せる要因は、ラック55のアーム部551と、アーム部551を案内するガイド57の筒部571とのクリアランスを通常では設定されない程度まで拡張したことにある。
【0075】
通常、ラック55は直線的に移動させるためにそれを案内する部材とのクリアランスを移動に差障りが無い程度まで詰めて使用するが、本実施形態では、通説の逆を行ったことにより、アーム部551の先端が、ラック55とピニオン53との噛み合い点近傍を中心に回動できるようになり、ラック55の往復時に先端が上記クリアランスに応じて揺動することを可能にした。
【0076】
なお、アーム部551との筒部571とのクリアランスは、ラック55の突起553の高さを調整することによって変更することができる。つまり、突起553と筒部571内面とのクリアランスが、アーム部551の長手方向と交差する方向の振れ幅をとなるので、このクリアランスを調整することによって必要な振れ幅を得ることができる。
【0077】
以上のように、駆動ユニット70は、ラック55に湾曲軌道を描かせることによって、ラック&ピニオン機構から直に揺動運動を取り出せるので、従来のようなラックの直線運動を揺動運動に変換する部材を省くことができる。
【0078】
(4)特徴
(4−1)
駆動ユニット70では、回転運動を往復直線運動に変換するラック&ピニオン機構において、ラックに湾曲軌道を描かせることによって、ラック55とピニオン53とから直に揺動運動を取り出せるので、従来のようなラックの直線運動を揺動運動に変換する部材を省くことができる。また、ピニオン53の回転量で垂直風向調整羽根20の羽根片201のスイング量を調節できるので、従来のような[モータ軸から第1のリンクと第2のリンクとの連結点まで]の距離でスイング量を調節する構成よりもモータのトルクを小さくすることができる。
【0079】
(4−2)
ガイド57が、ラック55のアーム部551の長手方向と交差する方向の振れ幅を所定範囲まで許容することによって、アーム部551が湾曲軌道(円弧軌道)を描かくので、ラック55とピニオン53とから直にラック55の揺動運動を取り出すことができる。したがって、従来のようなリンク構造よりも部品点数を少なくすることができる。
【0080】
(4−3)
突起553と筒部571内面とのクリアランスが、ラック55のアーム部551の長手方向と交差する方向の振れ幅をとなるので、このクリアランスを調整することによって必要な振れ幅を得ることができる。
【0081】
(4−4)
鍔555が存在することによって筒部571への冷風の進入が阻害されるので、筒部571の内側が結露するような事態は防止される。
【0082】
(4−5)
モータ51が万一オーバーランしてもラック55の案内溝557にギアボックス61側のリブ611が入り込んでいるので、リブ611と案内溝557の端部とが当接してラック55の抜け落ちは防止される。