特許第5761333号(P5761333)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761333
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   H01S5/022
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-507020(P2013-507020)
(86)(22)【出願日】2011年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2011058360
(87)【国際公開番号】WO2012132018
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2013年9月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 康夫
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−025791(JP,A)
【文献】 特開2006−154594(JP,A)
【文献】 特開2006−337727(JP,A)
【文献】 特開2009−199083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/02−5/022
G02B 6/42−6/43
H05K 5/00−5/06
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に設けられた光コネクタと、内部に前記光コネクタに接続された通信ユニットが設けられたケースと、
ケージに挿抜される前記ケースの前面に設けられ、回動するベイルと、
前記ベイルの回動に連動し、前記ケースの側面に設けられ、前後方向にスライドするスライド板と、
前記スライド板に設けられ、前記ケージの側面に設けられた係合片に係合自在であり、前記ベイルの回動時に連動する前記スライド板のスライドにより係合状態が解除される係合片と
前記ケースの両側面に前記ケースの前後方向に溝形成されたスライド溝と、
前記スライド溝の後端に、前記スライド溝の底部を一端とし、前記ケースの前後方向に対し連続的に高さが変化し、他端が前記ケースの側面位置に一致する傾斜面と、を備え、
前記ベイルと前記スライド板は、一体化された板金を薄厚のバネ部を介して折り曲げた状態に形成し
前記ベイルは、前記ケースを前記ケージに取り付けるときの取り付け時位置にあるときには、前記光コネクタの前面位置から逸れた上方に位置し、
前記ケースを前記ケージから取り外すときの前記回動時の取り外し時位置にあるときには、前記ケースの引き出し方向と平行な前記光コネクタの前面側に位置し、
前記バネ部は、前記ベイルと、前記スライド板との間で所定のバネ力を発生させ、前記ベイルを前記光コネクタの前面位置から逸れた上方位置に付勢し、
前記スライド板の係合片は、前記ケースの側面よりも凹んだ前記スライド溝の内部に位置し、
前記ケースを前記ケージから取り外す際、前記ベイルを前記取り外し時位置に回動させることにより、前記スライド板が前記ベイルの回動に連動して前記スライド溝の後端側に移動して前記スライド板の前記係合片と前記ケージの前記係合片との係合状態が解除されて前記ケージの前記係合片の後部方向に所定距離離れて位置し、この後に前記ケースを前記ケージの前方に引き出すことにより、前記ケージの前記係合片の端部が前記傾斜面の傾斜に沿って滑り上がり、前記ケージの外側に徐々に押し広げられて前記傾斜面の後部位置が前記ケースの側面と同一面となり、前記ケースを引き出し続けることにより、前記スライド板の前記係合片が前記ケージの前記係合片に係合せずに、前記ケージの前記係合片の部分を通過し、前記ケースを前記ケージから取り外せることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記バネ部は、前記ベイルと、前記スライド板との間で所定のバネ力を発生させ、前記スライド板に対し前記ベイルが所定角度となるよう付勢することを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記ベイルと、前記スライド板には、それぞれ前記所定角度の位置を保持する保持部が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記ベイルと、前記スライド板は、金属材料により一体化されたことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記ベイルと、前記スライド板は、プラスチック成型材料により一体化されたことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケージに対し着脱自在な光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外形や特性等のインターフェースが規定された業界標準(以下、MSA:Multi Source Agreement)のプラガブル型光モジュールが採用されてきている。このプラガブル型光モジュールは、ケース(ケージ)に対し光モジュールが挿抜可能となっている。この光モジュールに対しては、ケージ形状が簡素で、組み立て性がよく、ケージに対して簡単に着脱できることが要求されている。光モジュールとしては、たとえば光トランシーバがある。
【0003】
光モジュールは、前面に光コネクタの挿抜口が設けられ、また、光モジュールの前面には、ケージから光モジュールの挿抜を操作するためのベイルが回動自在に設けられている。ケージから光モジュールを取り外すときには、ベイル部分を持って引き出しておこなう。また、ケージに対する光モジュールの取り付け時には、光モジュールをケージ方向に押し込んでおこなう。
【0004】
また、ベイルの回動に連動して係合機能が動作するよう構成されており、ケージに対する光モジュールの取り付け時に、光モジュールの前面を開放させた位置(取り付け時位置)にベイルを回動させることにより、ケージの係合部と光モジュールの係合部とが互いに係合し、光モジュールをケージ内に固定保持できる。一方、光モジュールの取り外し時に、ベイルを光モジュールと平行な水平位置(取り外し時位置)に回動させることにより、ケージと光モジュールの係合部の係合が解除され、ケージから光モジュールを取り外せる状態になる。
【0005】
このような光モジュールとして、スプリングやカム等の着脱機構を設けてベイルの回動に付勢力を与え、ベイルが取り付け時位置に回動している状態では、光モジュールをケージに固定保持する技術が開示されている(たとえば、下記特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−522530号公報
【特許文献2】特表2005−522853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の着脱機構では、部品点数が多く、部品コストが高くなるとともに、組み立てを容易におこなうことができなかった。たとえば、ベイルと係合部とがそれぞれ別部品であるため、各部品の寸法公差や部品の曲げ度合いなどが相互の部品間の組み立て精度に影響を及ぼし、歩留まりを向上させることが難しかった。組み立て精度がばらつくと、ベイルの回動状態と、係合部での係合状態が設計通りに連動せず、ケージに対する光モジュールの係合状態が不安定になることも考えられる。また、着脱機構としてスプリングやカムが必要であるため、これらを組み込む作業に手間がかかった。
【0008】
開示の技術は、上述した問題点を解消するものであり、少ない部品点数で、精度よく簡単に組み立てることができる光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示技術は、前面に設けられた光コネクタと、内部に前記光コネクタに接続された通信ユニットが設けられたケースと、ケージに挿抜される前記ケースの前面に設けられ、回動するベイルと、前記ベイルの回動に連動し、前記ケースの側面に設けられ、前後方向にスライドするスライド板と、前記スライド板に設けられ、前記ケージの側面に設けられた係合片に係合自在であり、前記ベイルの回動時に連動する前記スライド板のスライドにより係合状態が解除される係合片と、前記ケースの両側面に前記ケースの前後方向に溝形成されたスライド溝と、前記スライド溝の後端に、前記スライド溝の底部を一端とし、前記ケースの前後方向に対し連続的に高さが変化し、他端が前記ケースの側面位置に一致する傾斜面と、を備え、前記ベイルと前記スライド板は、一体化された板金を薄厚のバネ部を介して折り曲げた状態に形成し、前記ベイルは、前記ケースを前記ケージに取り付けるときの取り付け時位置にあるときには、前記光コネクタの前面位置から逸れた上方に位置し、前記ケースを前記ケージから取り外すときの前記回動時の取り外し時位置にあるときには、前記ケースの引き出し方向と平行な前記光コネクタの前面側に位置し、前記バネ部は、前記ベイルと、前記スライド板との間で所定のバネ力を発生させ、前記ベイルを前記光コネクタの前面位置から逸れた上方位置に付勢し、前記スライド板の係合片は、前記ケースの側面よりも凹んだ前記スライド溝の内部に位置し、前記ケースを前記ケージから取り外す際、前記ベイルを前記取り外し時位置に回動させることにより、前記スライド板が前記ベイルの回動に連動して前記スライド溝の後端側に移動して前記スライド板の前記係合片と前記ケージの前記係合片との係合状態が解除されて前記ケージの前記係合片の後部方向に所定距離離れて位置し、この後に前記ケースを前記ケージの前方に引き出すことにより、前記ケージの前記係合片の端部が前記傾斜面の傾斜に沿って滑り上がり、前記ケージの外側に徐々に押し広げられて前記傾斜面の後部位置が前記ケースの側面と同一面となり、前記ケースを引き出し続けることにより、前記スライド板の前記係合片が前記ケージの前記係合片に係合せずに、前記ケージの前記係合片の部分を通過し、前記ケースを前記ケージから取り外せる。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、少ない部品点数で、精度よく簡単に組み立てることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態にかかる光モジュールを示す全体斜視図である(取り付け時位置)。
図2図2は、実施の形態にかかる光モジュールを示す全体斜視図である(取り外し時位置)。
図3図3は、ベイルとスライド板の一体構造を示す展開図である。
図4図4は、ベイルスライダを組み立てた状態を示す側面図である。
図5-1】図5−1は、ストッパを示す拡大側面図である。
図5-2】図5−2は、ストッパを示す拡大断面図である。
図6-1】図6−1は、光モジュールのベイルスライダの動作を示す側面図である(取り付け時位置)。
図6-2】図6−2は、光モジュールのベイルスライダの動作を示す側面図である(取り外し時位置)。
図7-1】図7−1は、ケージに対する光モジュールの挿抜状態を示す斜視図である(取り付け時位置)。
図7-2】図7−2は、ケージに対する光モジュールの挿抜状態を示す斜視図である(取り外し時位置)。
図8-1】図8−1は、ケージに対する光モジュールの固定状態を示す側面図である。
図8-2】図8−2は、ケージに対する光モジュールの固定解除動作を示す側面図である(その1)。
図8-3】図8−3は、ケージに対する光モジュールの固定解除動作を示す側面図である(その2)。
図9-1】図9−1は、ケージに対する光モジュールの固定状態を示す拡大図である。
図9-2】図9−2は、ケージに対する光モジュールの固定解除動作を示す拡大図である(その1)。
図9-3】図9−3は、ケージに対する光モジュールの固定解除動作を示す拡大図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、開示技術の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる光モジュールを示す全体斜視図である。図1に示す状態は、ベイルが取り付け時位置に位置している状態である。取り付け時位置とは、光モジュールをケージに取り付けるときのベイルの回動位置であり、ベイルの初期位置の状態である。
【0014】
光モジュール100は、シールドされたケース101の前面に光コネクタ102が設けられている。ケース101内部には、光信号を送信する送信ユニット、および光信号を受信する受信ユニットが設けられており、これら送信ユニット、および受信ユニットは光コネクタ102を介して光信号を送受信する。
【0015】
ケース101の前面には、ベイル103が回動自在に設けられている。ベイル103は、ケース101の前面側下端部に位置する軸104に回動自在に支持された所定長さの一対のアーム105と、アーム105,105間に連設される操作用の把手部106と、を含む。把手部106は、樹脂等の手で操作した際に滑りにくい材質で形成されている。図1に示すように、ベイル103は、取り付け時位置にあるとき光コネクタ102の前面位置から逸れた上方に位置している。
【0016】
ケース101の両側面には、スライダ110が設けられる。このスライダ110は、ベイル103の回動に連動して、ケース101の前後方向にスライド自在なスライド板111を有する。ケース101の両側面には、スライド板111の板厚程度のスライド溝120がケース101の前後方向に溝形成され、スライダ110は、スライド溝120内部でケース101の前後方向にスライドする。
【0017】
このスライダ110は、一端(基端)がベイル103に連結されており、ベイル103の回動に連動して前後にスライドする。また、スライダ110の他端(自由端)には、係合片112が設けられており、この係合片112は、後述するケージの係合片(ラッチプレート)に係合することにより、ケージに対する光モジュール100の取り付け状態を固定保持する。
【0018】
図2は、実施の形態にかかる光モジュールを示す全体斜視図である。図2に示す状態は、ベイルが取り外し時位置に位置している状態である。取り外し時位置とは、光モジュールをケージから取り外すときのベイルの回動位置である。
【0019】
ベイル103は、取り外し時位置のときには、光モジュール100の引き出し方向と平行な光コネクタ102の前面側に位置する。この取り外し時位置の際、スライダ110は、ベイル103の回動に連動してスライド溝120内で後端側に移動し、スライダ110の係合片112は、ケージの係合片との係合状態が解除される。
【0020】
スライド溝120の後端には、傾斜面121が設けられている。傾斜面121は、スライド溝120の溝の底部を一端とし、光モジュール100の前後方向に対し連続的に高さが変化し、他端がケース101の側面位置に一致するテーパ面である。この傾斜面121は、光モジュール100をケージから取り外すとき、ケージの係合片に接触して係合片112を外側に押し出し、係合片112部分を通過させる(係合片同士の再度の係合を防ぐ)ための解除部として機能する。
【0021】
図3は、ベイルとスライド板の一体構造を示す展開図である。上述したベイル103と、スライダ110は、図3に示すように、ベイルスライダ300として一体形成されている。ベイルスライダ300は、たとえば、ベリリウム銅や同等の材質の金属板をプレス加工して形成される。これらベイル103と、スライダ110との間には、所定長さのバネ部301が形成され、このバネ部301により、ベイル103とスライダ110とを連結している。
【0022】
ベイルスライダ300は、たとえば板厚が0.5mmであり、バネ部301については、0.03mm以下となるよう部分的にプレス圧を変更させ薄厚に形成する。また、バネ部301の長さ(光モジュール100の幅方向に沿った長さ)は、少なくとも3mm以上の長さとする。ベイルスライダ300の材質は、プラスチック成型材料を用いてもよく、たとえば、バネ部301部分にバネ性を持たせることができる液晶ポリマーを用いることができる。
【0023】
そして、このベイルスライダ300は、図3に示す一点鎖線の部分で折り曲げて、ベイル103と、スライダ110が形成される。バネ部301については、組み立てた際に所定の曲率を有することにより、ベイル103の回動力をスライド板111に伝達させることができ、かつ、バネ力を維持することができる。この付勢力は、スライド板111の位置を基準として、ベイル103を取り付け時位置(初期位置)に付勢する。この取り付け時位置は、光モジュール100の固定保持位置である。そして、バネ部301は、ベイル103を取り外し時位置に回動させたときに、バネ力を保持でき、かつスライド板111をスライドさせる際の推力に負けない座屈応力を発生させる。
【0024】
図3に記載した各部を説明する。ベイル103側には、バネ部301に接続され、両端にアーム105,105が接続される中間体302が設けられる。アーム105,105の基端部には、軸104が軸支するための軸穴105aがそれぞれ開口される。また、一対のアーム105,105先端には、それぞれ折曲部105b,105bが設けられ、この折曲部105b,105bを折り曲げた部分に把手部106が取り付けられる。アーム105の略中間部分には、ベイル103の取り付け時位置を保持するための保持部(ストッパ)105cが形成されている(詳細は後述する)。ストッパ105c部分の弾性力を付与するために、アーム105におけるストッパ105cの周囲には、ストッパ105c部分を突出させるための空間を形成する溝105ccが設けられている。
【0025】
スライダ110側には、バネ部301に接続され、両端にスライド板111,111が接続される中間体303が設けられる。スライド板111の基端には、スライド動作時に軸104にかからないようにするための長穴状の逃げ溝304が形成されている。また、スライド板111の基端には、ベイル103のストッパ105cの回動位置に対応して、ベイル103が取り付け時位置のとき、アーム105の一部分に、ストッパ105cに係合する保持部(保持溝)305が設けられている。また、スライド板111の基端には、光モジュール100の前方上部に設けられる摺接片に摺接する摺接部306が設けられている。摺接部306は、光モジュール100の摺接片上をスライド自在である。
【0026】
スライド板111の自由端には、係合片112にバネ力を持たせるためのバネ片307と、傾斜面121に接しないよう、中央部に端部から前後方向に所定長さを有して長溝状に形成された逃げ溝308が形成されている。バネ片307は、スライド溝120の底面方向にバネ力を発生させる。係合片112は、逃げ溝308を挟んでスライド板111の高さ方向に2箇所形成されている。
【0027】
図4は、ベイルスライダを組み立てた状態を示す側面図である。図3に示した板状のベイルスライダ300を折り曲げることにより、ベイル103と、スライダ110を形成することができる。また、これらベイル103と、スライダ110との間のバネ部301は、図示のように、90°の角度範囲で円弧状に曲がる形となり、ベイル103と、スライダ110との間にバネ力を発生させる。
【0028】
ベイルスライダ300のバネ部301は、図4に示す状態、すなわち、水平なスライダ110に対しベイル103が直交して上部に位置する(90°起立した状態)取り付け時位置の状態が安定状態とされる。このため、ベイル103が図2に示すように、取り外し時位置に回動したときには、初期状態である取り付け時位置に戻ろうとする力を発生させる。このように、ベイルスライダ300は、ベイル103の回動運動をスライダ110の往復運動に直接変換するとともに、ベイル103とスライダ110との間に設けたバネ部301により、ベイル103とスライダ110との間に初期状態(取り付け時位置)に復帰させる付勢力を付与している。
【0029】
また、ベイル103が取り付け時位置の際、アーム105に設けられたストッパ105cがスライダ110の保持溝305部分に係合し、固定保持することができる。これにより、ケージに光モジュール100を装着した状態において、ベイル103は光コネクタ102の装着部分を覆う如く落ちることを防止でき、光コネクタ102に対する挿抜操作を阻害せず、光コネクタの挿抜の操作性を向上できる。
【0030】
図5−1および図5−2は、それぞれストッパを示す拡大図である。図5−1は、ストッパの拡大側面図、図5−2は、ストッパの拡大断面図である。これらの図に示すように、ベイル103のストッパ105cは、アーム105を部分的にプレス加工することにより、凸状に形成されている。これに対応して、スライダ110の保持溝305は、スライド板111を部分的にプレス加工することにより、凹状に形成されている。これにより、ベイル103の凸状のストッパ105cは、取り付け時位置において、スライダ110の凹状の保持溝305に嵌り込み、この位置を固定保持することができる。
【0031】
(ベイルスライダの動作)
図6−1および図6−2は、それぞれ光モジュールのベイルスライダの動作を示す側面図である。図6−1は、ベイル103を初期位置である取り付け時位置に回動させた状態を示す図、図6−2は、ベイル103を取り外し時位置に回動させた状態を示す図である。
【0032】
図6−1に示す取り付け時位置は、ベイルスライダ300のベイル103に設けられた把手部106を手で操作し、軸104を中心に上部位置に回動させる。これにより、ストッパ105cが保持溝305に嵌り、ベイル103の位置を固定している。バネ部301は、この取り付け時位置の方向に付勢されており、ベイル103は、取り付け時位置を安定して保持できる。このとき、スライド板111は、バネ部301を介して前面側に移動した状態にある。そして、スライド板111の係合片112は、傾斜面121の位置より前面に位置している。
【0033】
一方、図6−2に示す取り外し時位置は、ベイルスライダ300のベイル103に設けられた把手部106を手で操作し、軸104を中心に光モジュール100の前面に回動させる。この際、ストッパ105cは保持溝305から外れる。また、ベイル103の回動に伴い、中間体302が光モジュール100の後部に移動する。この移動量は、バネ部301を介してスライド板111を後部側に移動させる。これにより、スライド板111の係合片112は、傾斜面121より後部に位置する。また、バネ部301は、付勢力と逆の力が加えられた状態にあり、取り付け時位置の方向に戻ろうとする力を発生させる。
【0034】
(ケージに対する光モジュールの挿抜操作)
図7−1および図7−2は、ケージに対する光モジュールの挿抜状態を示す斜視図である。ケージ700は、前面の開口部701から光モジュール100を挿抜可能に収容するシールドされた枠体である。このケージ700は、底部に設けられた複数のピン702を図示しない基板に差し込みハンダ付け等により基板上に固定される。ケージ700内部にはコネクタが設けられ、光モジュール100と電気的に接続される。
【0035】
また、ケージ700の両側部には、光モジュール100の係合片112に係合する係合片(ラッチプレート)703が設けられている。このラッチプレート703は、ケージ700の側面に略コ字型の切り込みを形成し、後部側の端部703aがケージ700内部(光モジュール100側)に突出した状態で保持されるよう、傾斜状に折り曲げてなる。このラッチプレート703は、内側(光モジュール100の側面)からの力が加わっている間は、外側に開くが、力が加わらなくなれば、バネ力により元の状態(端部703aがケージ700内部に突出する状態に戻る。
【0036】
図7−1に示すように、ケージ700に対する光モジュール100の取り付けは、ベイル103を取り付け時位置に回動させた状態で、光モジュール100をケージ700の開口部701を介して内部に押し込むだけでよい。これにより、光モジュール100の係合片112がケージ700のラッチプレート703に係合して、固定保持できるようになる(係合状態の詳細は後述する)。図7−1に示す状態は、ケージ700に対し、光モジュール100が規定の位置に取り付けられた状態を示す図である。この後、光コネクタ102に光ファイバ等の相手側コネクタが差し込まれ、光信号を送受できるようになる。
【0037】
なお、ベイル103を取り外し時位置に回動させた状態であっても、光モジュール100をケージ700に取り付けることができる。この場合、ケージ700に対して光モジュール100を規定の位置まで押し込んだ後に、ベイル103を取り付け時位置に回動させることにより、光モジュール100をケージ700に固定保持できるようになる。
【0038】
図7−2に示すように、ケージ700からの光モジュール100の取り外しは、ベイル103を取り外し時位置に回動させた状態で、把手部106を指等で引っ掛け、光モジュール100をケージ700の前面に引き出せばよい。
【0039】
(光モジュールの固定および固定解除動作)
図8−1〜図8−3は、それぞれケージに対する光モジュールの固定および固定解除動作を示す側面図である。図8−1は、ケージに対する光モジュールの固定状態を示す側面図である。ケージ700に光モジュール100を取り付ける際には、図8−1に示すように、ケージ700に光モジュール100を押し込み装着するだけでよい。
【0040】
図8−1に示すように、ベイル103が取り付け時位置に位置した状態において、スライド板111の係合片112は、ケージ700のラッチプレート703の端部703aに係合する。これにより、ケージ700に対して光モジュール100を取り付けた位置を固定保持できる。同時に、ラッチプレート703の端部703aは、係合片112の前面側に入り込む形で係合しているため、ケージ700に対する光モジュール100の抜け止めができる。
【0041】
つぎに、ケージに対する光モジュールの固定解除動作を説明する。この固定解除は、
1.ベイル103を取り外し時位置に回動させる(図8−1)。
2.光モジュール100を取り外す(図8−2)。
という簡単な操作でおこなえる。
【0042】
図8−2は、ケージに対する光モジュールの固定解除動作を示す側面図である。図8−1に示した光モジュール100の固定状態において、ベイル103を取り外し時位置に回動させることにより、スライド板111が後部にスライドし、スライド板111の係合片112は、ケージ700のラッチプレート703の端部703aとの係合状態が解除され、端部703aの後部方向に所定距離離れて位置する。
【0043】
図8−3は、ケージに対する光モジュールの固定解除動作を示す側面図である。図8−2の操作後、把手部106を持ち、光モジュール100をケージ700の前方に引き出すことにより、光モジュール100全体が前面側に移動する。これにより、ケージ700のラッチプレート703は、傾斜面121の傾斜に沿ってケージ700の外側に徐々に押し広げられる。
【0044】
傾斜面121の後部位置(図中符号121a)は、光モジュール100のケース101の側面と同一面であり、スライド板111の係合片112は、ケース101の側面よりも凹んだスライド溝120の内部に収まっている。このため、図8−3に示した状態以降においても、光モジュール100を引き出し続けることにより、係合片112は、ケージ700のラッチプレート703に係合せずに、ラッチプレート703部分を通過することができる。これにより、光モジュール100をケージ700から取り外すことができる。
【0045】
図9−1〜図9−3は、それぞれケージに対する光モジュールの固定および固定解除動作を示す拡大図である。これら図9−1〜図9−3は、図8−1〜図8−3にそれぞれ対応した拡大図である。また、各図の(a)は、部分拡大斜視図、(b)は、部分拡大平断面図である。
【0046】
図9−1〜図9−3の(b)に示すように、光モジュール100のケース101の側面に形成されるスライド溝120の後部には、一段深い段差溝120aが形成されている。この段差溝120aは、前後の長さが、ベイル103の回動によるスライド板111のスライド量に対応した長さとされている。また、段差溝120aの深さは、スライド板111の係合片112の高さ(折り曲げによる突出量)に対応している。この係合片112は、スライド板111のバネ片307のバネ力により、段差溝120aの内部に収まるよう付勢されている。これにより、係合片112は、スライド溝120(厳密には段差溝120a)から突出せず、光モジュール100のケース101の側面に突出しない状態が保たれる。
【0047】
図9−1に示すように、光モジュール100をケージ700に装着した状態では、ケージ700のラッチプレート703の端部703aは、光モジュール100のケース101の側面方向に傾斜しており、スライド板111の係合片112に係合する。これにより、ケージ700に対する光モジュール100の前方への移動が禁止でき、光モジュール100を抜け止めし、固定保持できる。
【0048】
ところで、スライド板111の係合片112は、図9−1に示すように、バネ性を有しており、段差溝120aが設けられている箇所では、係合片112が図示のように段差溝120aの方向に傾斜する。光モジュール100をケージ700に装着する際、この係合片112は、スライド溝120部分を通過する際には、スライド板111と同一面となってこのスライド溝120部分を後部に移動する。
【0049】
図9−2に示すように、ケージ700から光モジュール100を取り外す際には、はじめに、ベイル103を取り外し時位置に回動させることにより、スライド板111が後部にスライドし、スライド板111の係合片112は、ケージ700のラッチプレート703の端部703aとの係合状態が解除される。この係合片112は、ラッチプレート703の端部703aの後部方向に所定距離離れて位置する。
【0050】
続いて、図9−3に示すように、把手部106を持ち、光モジュール100をケージ700の前方に引き出すことにより、光モジュール100全体が前面側に移動する。これにより、ケージ700のラッチプレート703は、端部703aが傾斜面121の傾斜に沿って滑り上がり、ケージ700の外側に徐々に押し広げられる。
【0051】
そして、傾斜面121の後部位置(図中符号121a)は、光モジュール100のケース101の側面と同一面であり、スライド板111の係合片112は、ケース101の側面よりも凹んだスライド溝120の内部に収まっている。このため、図9−3に示した状態以降においても、光モジュール100を引き出し続けることにより、係合片112は、ケージ700のラッチプレート703に係合せずに、ラッチプレート703部分を通過することができる。これにより、光モジュール100をケージ700から取り外すことができる。
【0052】
ケージ700から光モジュール100を取り外した後、ベイル103はバネ部301のバネ力により、初期状態である取り付け時位置に復帰する力により、ベイル103のアーム105は、保持溝305に保持することができる。
【0053】
上述した実施の形態によれば、ベイル103とスライダ110をベイルスライダ300として一体化して形成したので、部品点数を削減できるとともに、一体化したベイルスライダ300を折り曲げるだけで容易に製造できるようになる。また、ベイルスライダ300は、ベイル103の回動運動をスライダ110の往復運動に直接変換する簡素な構造であり、カムとカム溝等を用いる必要がなく、部品点数の削減、歩留まりを向上でき、組み立てを容易におこなえるようになる。
【0054】
また、ベイルスライダ300は、バネ部301のバネ力により、ベイル103が取り付け時位置に復帰するため、ケージ700から光モジュール100を取り外した状態においては、常時ベイル103を取り付け時位置に固定保持できる。これにより、光モジュール100は、常にケージ700に装着可能な状態にすることができ、手動でベイル103を初期状態の位置に戻す操作を省くことができ、操作性を向上できる。
【符号の説明】
【0055】
100 光モジュール
101 ケース
102 光コネクタ
103 ベイル
104 軸
105 アーム
105c ストッパ
106 把手部
110 スライダ
111 スライド板
112 係合片
120 スライド溝
120a 段差溝
121 傾斜面
300 ベイルスライダ
301 バネ部
307 バネ片
700 ケージ
703 ラッチプレート(係合片)
703a 端部
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
図9-2】
図9-3】