特許第5761414号(P5761414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5761414光信号受信装置、及び、光信号受信装置が備えるFFEの最適化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5761414
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】光信号受信装置、及び、光信号受信装置が備えるFFEの最適化方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2507 20130101AFI20150723BHJP
   H04B 3/04 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   H04B9/00 251
   H04B3/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-63809(P2014-63809)
(22)【出願日】2014年3月26日
【審査請求日】2014年3月26日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度総務省「超高速・低消費電力光ネットワーク技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】岩村 英志
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−163027(JP,A)
【文献】 特開2008−294752(JP,A)
【文献】 特開2008−271073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
H04B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した光信号をタップ数Lに分岐し、互いにビット周期TをサンプリングレートKで除算した時間差となる遅延を加えて、タップ係数wで与えられる重み付けをした後に加算して出力信号を生成する光信号処理部と、
ップ係数を取得し、前記光信号処理部に通知する制御部とを備える光信号受信装置であって
前記制御部は、
タップ係数wを示すタップ係数行列W、出力信号を示す出力信号行列Y及び光信号処理部での遅延量を示す遅延行列Uを生成する行列生成手段と、
出力信号を伝送前のトレーニング信号と一致させて、行列方程式Y=U・Wに対する近似計算を行うことによりタップ係数を取得する近似計算手段と、
前記出力信号行列Y及び前記遅延行列Uにサブピークに対応する行を挿入する行挿入手段と、
前記伝送前のトレーニング信号と、出力信号とを比較して、前記サブピークを取得するサブピーク取得手段と
当該光信号受信装置での受信可否を判定する受信可否判定手段と
を備え
前記受信可否判定手段での判定の結果、受信不可の場合は、前記行挿入手段が、前記出力信号行列Y及び前記遅延行列Uにサブピークに対応する行を挿入した後、前記近似計算手段が、タップ係数を取得し、前記光信号処理部においてタップ係数を設定する過程を、受信可能になるまで繰り返すことを特徴とする光信号受信装置。
【請求項2】
タップ係数行列W、出力信号行列Y及び遅延行列Uを用いて、出力信号を伝送前のトレーニング信号と一致させて、行列方程式Y=U・Wに対する近似計算を行うことによりタップ係数を取得する第1過程と、
前記第1過程で取得されたタップ係数を設定して、伝送前のトレーニング信号と、出力信号とを比較して、サブピークを取得する第2過程と、
設定されたタップ係数での受信可否を判定する第3過程と、
前記第3過程での判定の結果、受信不可と判定された場合に行われる、
前記出力信号行列Y及び前記遅延行列Uに前記サブピークに対応する行を挿入する第4過程と、
前記第過程で得られた、タップ係数行列W、出力信号行列Y及び遅延行列Uを用いて、出力信号を前記伝送前のトレーニング信号と一致させて、行列方程式Y=U・Wに対する近似計算を行うことによりタップ係数を取得する第5過程と
を備え、
前記第5過程の後、再び前記第3過程を行い、
前記第3過程での判定の結果、受信可能と判定されるまで前記第3、第4及び第5過程を繰り返す
ことを特徴とする最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、FFE(Feed Forward Equalizer)を備える光信号受信装置に関するものであり、特に光アクセスネットワークで用いて好適な光信号受信装置、及び、FFEの最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザからの多種多様なサービス要求を受ける光アクセスネットワークでは、トラフィック需要が時間及び空間的に偏在しており、今後、高効率なネットワーク制御を行うための新たなネットワークアーキテクチャが求められる。
【0003】
最適な通信容量の提供、異種サービスの統合などを可能とするネットワークアーキテクチャの一例として、時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)技術をベースとする、従来のPON(Passive Optical Network)技術に、波長分割多重(WDM:Wavelength Divison Multiplexing)技術を付加し、ネットワーク上のトラヒック利用状況に応じて波長割当を行うようなWDM/TDM−PONの検討が進められている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
これにより、トラヒックに応じた局側端末(OLT:Optical Line Terminal)の駆動制御が可能となり、帯域利用効率の向上によるセンターオフィスの低消費電力化が期待されている。このWDM/TDM−PONは、大容量化と多分岐化によりカバーエリアを広域化することを目的としており、そのためには、伝送距離の長延化によるOLT統合が必要となる。
【0005】
伝送距離の長延化の技術に関して、波長分散の影響で波形が劣化する問題に対応するため、波長分散補償技術が用いられる。波長分散補償技術として、電気分散補償(EDC:Electorical Dispersion Compensating)技術がある(例えば、特許文献1参照)。EDC技術は、波長分散により歪んだ信号波形を、デジタル信号処理により歪み補正をする技術である。
【0006】
EDC技術の一つに、FFEがある(例えば、特許文献2参照)。FFEは、受信した光信号を分岐し、遅延を加えて重み付けをした後に、受信信号を重ね合わせることで波形を補正する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−287695号公報
【特許文献2】特開平9−326728号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】中村浩崇他著「柔軟なサービスアップグレードを実現する波長可変型WDM/TDM−PON」2010年電子情報通信学会ソサイエティ大会 B−10−40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
FFEに関して、80km伝送のシミュレーションを行った結果を図1に示す。図1は、シミュレーションによる時間波形を示す図である。図1は横軸に時間(単位ps)を取って示し、縦軸に伝送前の時間波形のピークで規格化した信号強度を取って示している。図1では、伝送前の時間波形をIで示し、伝送後にFFEを用いない場合(FFE無)の時間波形をIIで示し、伝送後にFFEを用いた場合(FFE有)の時間波形をIIIで示している。
【0010】
図1に示すように、FFE無の時間波形(II)は、伝送前の時間波形(I)に比べて時間幅が広がった波形に劣化している。これに対し、FFE有の時間波形(III)は、伝送前(I)と同程度の時間幅となっている。
【0011】
ここで、伝送後のFFE有での時間波形(III)では、本来、信号以外の部分はゼロレベルになるはずであるが、隣接部(図中、Aで示す。)に、サブピークが生じている。このため、このサブピークに起因するノイズ成分が付加されるという問題がある。
【0012】
図2(A)〜(C)は、シミュレーションによるアイダイアグラムを示している。図2(A)は、伝送後にFFEを用いない場合(FFE無)のアイダイアグラムである。FFE無の場合、波長分散により時間幅に広がりを持つ波形となる。この結果、隣のビットが侵入し、アイ開口が上下に分かれているため受信不可となる。
【0013】
図2(B)は、伝送後にFFEを用いた場合(FFE有)のアイダイアグラムである。FFE有の場合、アイ開口が確認できるが、サブピークの影響で、クリアな波形にはならない。このサブピークによるノイズは、LPF(Low Pass Filter)を挿入することで除去できる。
【0014】
図2(C)は、伝送後にFFEを用いた場合であって、さらに、10GHzのLPFを挿入した場合(FFE有−LPF有)のアイダイアグラムである。LPFを挿入することにより、アイ開口が図2(B)に示すFFE有―LPF無と比べて改善されている。
【0015】
しかしながら、追加コンポーネントであるLPFが必要となるため、コストアップにつながる。
【0016】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、FFEを用いる光信号受信装置であって、追加コンポーネントなしで、FFEにより付加されるノイズの影響を低減する光信号受信装置、及び、光信号受信装置が備えるFFEの最適化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するために、この発明の光信号受信装置は、受信した光信号をタップ数Lに分岐し、遅延を加えて、タップ係数wで与えられる重み付けをした後に加算して出力信号を生成する光信号処理部と、タップ係数を取得し、光信号処理部に通知する制御部とを備えて構成される。制御部は、タップ係数wを示すタップ係数行列W、出力信号を示す出力信号行列Y及び光信号処理部での遅延を示す遅延行列Uを生成する行列生成手段と、出力信号を伝送前のトレーニング信号と一致させて、行列方程式Y=U・Wに対する近似計算を行うことによりタップ係数を取得する近似計算手段と、出力信号行列Y及び遅延行列Uにサブピークに対応する行を挿入する行挿入手段と、伝送前のトレーニング信号と、出力信号とを比較して、サブピークを取得するサブピーク取得手段と、当該光信号受信装置での受信可否を判定する受信可否判定手段とを備える。そして、受信可否判定手段での判定の結果、受信不可の場合は、行挿入手段が、出力信号行列Y及び遅延行列Uにサブピークに対応する行を挿入した後、近似計算手段が、タップ係数を取得し、光信号処理部においてタップ係数を設定する過程を、受信可能になるまで繰り返す。
【0018】
また、この発明の最適化方法によれば、以下の過程を備えて構成される。
【0019】
先ず、第1過程において、タップ係数行列W、出力信号行列Y及び遅延行列Uを用いて、出力信号を伝送前のトレーニング信号と一致させて、行列方程式Y=U・Wに対する近似計算を行うことによりタップ係数を取得する。次に、第2過程において、第1過程で取得されたタップ係数を設定して、伝送前のトレーニング信号と、出力信号とを比較して、サブピークを取得する。次に、第3過程において、設定されたタップ係数での受信可否を判定する。第3過程での判定の結果、受信不可と判定された場合には、以下の第4過程と第5過程が行われる。
【0020】
第4過程では、出力信号行列Y及び遅延行列Uにサブピークに対応する行を挿入する。第5過程では、第過程で得られた、タップ係数行列W、出力信号行列Y及び遅延行列Uを用いて、出力信号を伝送前のトレーニング信号と一致させて、行列方程式Y=U・Wに対する近似計算を行うことによりタップ係数を取得する。この第5過程の後、再び第3過程が行われ、第3過程で判定の結果、受信可能と判定されるまで第3、第4及び第5過程を繰り返す。
【発明の効果】
【0021】
この発明の光信号受信装置及びFFEの最適化方法によれば、単純にFFEを用いた場合に生じるサブピークの影響を、行列演算の際にサブピークに対応する行を挿入している。これにより、近似計算におけるサブピークの寄与度が大きくなるので、サブピークの影響が追加のコンポーネントなしに容易に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】シミュレーションによる時間波形を示す図である。
図2】シミュレーションによるアイダイアグラムを示している。
図3】この実施形態の光信号受信装置の模式図である。
図4】最適化方法の処理フローを示す図である。
図5】PRBSを用いて得られたアイダイアグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0024】
図3を参照して、この発明の光信号受信装置の実施形態について説明する。図3は、この実施形態の光信号受信装置の模式図である。この実施形態の光信号受信装置は、光信号処理部100と、制御部200と備えて構成される。
【0025】
光信号処理部100は、受信した光信号を分岐し、遅延を加えて重み付けをした後に、受信信号を重ね合わせる処理を行う。光信号処理部100は、タップ数をLとしたとき、L個の重み付け回路120−1〜Lと、L−1個の遅延回路110−1〜(L−1)を備えて構成される。ここで、タップ数Lは、光信号の分岐数に相当する。
【0026】
入力信号u(t)は2分岐され、一方は、第1の重み付け回路120−1に送られ、他方は、第1の遅延回路110−1に送られる。第1の遅延回路110−1で遅延を受けた第1の遅延信号は2分岐され、一方は第2の重み付け回路120−2に送られ、他方は、第2の遅延回路110−2に送られる。同様に、第m−1の遅延回路110−(m−1)で遅延を受けた第m−1の遅延信号は2分岐され、一方は第mの重み付け回路120−mに送られ、他方は第mの遅延回路110−mに送られる。第L−1の遅延回路110−(L−1)で遅延を受けた第L−1の遅延信号は、第Lの重み付け回路120−Lに送られる。ここで、各遅延回路110では、ビット周期TとサンプリングレートKに対して、T/Kの遅延が与えられる。また、各重み付け回路120ではタップ係数w(xは1以上L以下の整数)の重み付けが与えられる。各重み付け回路120で重み付けが与えられた信号は、加算回路130で加算され、出力信号y(t)として出力される。なお、以下の説明では出力信号をFFE信号とも称する。
【0027】
この出力信号y(t)は、制御部200にも送られる。また、制御部200で生成されたタップ係数設定信号が光信号処理部100に送られる。光信号処理部100は、各重み付け回路120のタップ係数wを、タップ係数設定信号で指示された値に設定する。以上説明した光信号処理部100は、従来公知の任意好適なFFEと同様に構成することができる。
【0028】
制御部200は、タップ係数取得手段210、サブピーク取得手段220、タップ係数設定手段230及び受信可否判定手段240を備えて構成される。タップ係数取得手段210は、行列生成手段212、行挿入手段214及び近似計算手段216を備えている。制御部200は、例えばプログラマブルチップを用いて構成することができる。制御部200がプログラムを実行することにより、各機能手段が実現される。また、制御部200は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などの記憶手段250を備えている。この記憶手段250には、制御部200の各機能手段の処理結果や、光信号処理部100からの出力信号などが読出し及び書換自在に格納されている。また、記憶手段250には、基準信号となる予め定められたパターンのトレーニング信号が、読み出し自在に格納されている。各機能手段の動作の詳細については後述する。
【0029】
次に、図3及び4を参照して、光信号受信装置が備えるFFE、すなわち重み付け回路のタップ係数wの最適化方法について説明する。図4は最適化方法の処理フローを示す図である。
【0030】
先ず、第1過程(S1)において、出力信号y(t)が既知のトレーニング信号と同様になるタップ係数wを取得する。光信号受信装置が伝送路を経て受信したトレーニング信号が、光信号処理部100への入力信号u(t)となる。入力信号u(t)は、伝送前のトレーニング信号に対して、伝送により劣化している。光信号処理部100、すなわち、FFEでの処理の結果得られる、出力信号y(t)は、以下の式(1)で示される。
【0031】
【数1】
【0032】
入力信号u(t)は、伝送により劣化しているが、出力信号y(t)が、伝送前のトレーニング信号である基準信号s(t)と一致するようにタップ係数を定めることにより、劣化の影響を低減することができる。ここで、tを1以上2L−1以下の整数として考える。この場合、式(1)は、2L−1行1列の出力信号行列Y、2L−1行L列の遅延行列U、及び、L行1列のタップ係数行列Wを用いて、Y=U・Wと表される。ここで、出力信号を示す出力信号行列Yのk、1成分Yk、1は、y(k)である。また、遅延回路110での遅延の程度を示す遅延行列Uのk、x成分Uk、xは、u(−x+t+1)×T/Kである。また、タップ係数を示すタップ係数行列Wのx、1成分Wx,1は、wである。
【0033】
行列生成手段212は、これら行列Y,U及びWを生成する。
【0034】
一例としてタップ数Lが3の場合について説明する。この場合、出力信号行列Yは、5行1列となり、y(1)〜y(5)は、以下の式(2)〜(6)で示される。
【0035】
【数2】
【0036】
【数3】
【0037】
【数4】
【0038】
【数5】
【0039】
【数6】
【0040】
ここで、タップ数Lが3であるため、入力信号については、u(T/K)、u(2T/K)及びu(3T/K)のみ考慮し、u(−T/K)、u(0)、u(4T/K)及びu(5T/K)はいずれも0として考える。
【0041】
この結果、上記の式(2)〜(6)は、以下の行列方程式(7)で示される。
【0042】
【数7】
【0043】
タップ係数w、w及びwは、この行列方程式(7)の解となる。すなわち、タップ係数w、w及びwは、以下の行列方程式(8)で与えられる。
【0044】
【数8】
【0045】
そこで、近似計算手段216が、これらの解を最小二乗法により求める。
【0046】
近似計算手段216において、タップ係数wが求められた後、タップ係数設定手段230が、タップ係数設定信号を生成して、光信号処理部100に送る。光信号処理部100では、タップ係数設定信号で指示されたタップ係数wを各重み付け回路120に設定する。
【0047】
次に、第2過程(S2)において、サブピーク取得手段220が、基準信号と出力信号との比較、すなわち、トレーニング信号の伝送前と、伝送後にFFEを用いた場合との比較により、サブピークを取得する。
【0048】
次に、第3過程(S3)において、受信可否判定手段240が、受信可否判定を行う。受信可否判定は、例えば、擬似ランダム・ビット・シーケンス(PRBS:Pseudo−random Bit Sequence)を用いて行うことができる。
【0049】
図5(A)〜(H)は、PRBSを用いて得られたアイダイアグラムを示す図である。
【0050】
受信可否判定手段240は、このアイダイアグラムから、アイ開口率を示すQ値を取得する。このQ値は、例えば、Hレベル信号とLレベル信号の信号強度の平均値S及びSと、これらの標準偏差σ及びσを用いて、Q=(S−S)/(σ+σ)で与えられる。
【0051】
受信可否判定手段240は、このQ値を、予め記憶手段250に格納されている閾値と比較する。Q値が閾値より大きい場合に、受信可否判定手段240は、受信可能と判断し、閾値より小さい場合に、受信不可と判断する。受信不可の場合は、サブピークの影響が考えられる。そこで、この場合、S40において、行挿入手段214が、サブピークに対応する行を行列方程式に挿入した後、再びタップ係数を取得する。例えば、ピークとなるy(3)に対して、y(1)にサブピークが存在する場合は、y(1)に対応する行を追加し、新たな行列方程式(9)を得る。
【0052】
【数9】
【0053】
これは、サブピークが生じている行の最小二乗法における重み付けを大きくすることで、サブピークの影響を除去することに対応する。
【0054】
その後、第5過程(S5)において、近似計算手段216が、行が追加された行列方程式に対して第1過程と同様の近似計算を行い、タップ係数wを取得する。
【0055】
タップ係数を取得した後、S5で得られた新たなタップ係数を用いてS3の受信可否判定を行う。この結果、図5に示すアイダイアグラムが得られる。受信可能となるまで、このS3〜S5の過程が繰り返される。図5(A)〜(H)は、この繰り返しの中で得られたアイダイアグラムである。図5(A)は、行の挿入がないときのアイダイアグラムである。図5(B)〜(H)は、それぞれサブピークが生じる行を1、3、5、7、9、11及び15行挿入し、サブピークが生じる行sを2、4、6、8、10、12及び16行としたときのアイダイアグラムである。
【0056】
S5の受信可否判定の結果、受信可能となった場合には、S6において、受信可能となるタップ係数を設定して、処理を終了する。この場合、例えば閾値を12.5[dB]とした場合、s=8でQ=12.9[dB]となるので、s=8の時に得られたタップ係数が採用される。
【0057】
なお、ここでは、PRBSを用いたQ値により受信可能となった時点で、処理を終了する例を説明したが、これに限定されない。
【0058】
S1やS5で得られたタップ係数の値とQ値とを対応付けて、記憶手段に保存しておき、Q値が最大となるタップ係数に設定するなどしても良い。この場合、s=10でQ=13.02[dB]であるので、s=12でQ=12.98[dB]となった場合に、s=10の時に得られたタップ係数が採用される。また、後段の信号処理部等で受信可否を判定してもよい。
【符号の説明】
【0059】
100 光信号処理部
110 遅延回路
120 重み付け回路
130 加算回路
200 制御部
210 タップ係数取得手段
212 行列生成手段
214 行挿入手段
216 近似計算手段
220 サブピーク取得手段
230 タップ係数設定手段
240 受信可否判定手段
250 記憶手段
【要約】
【課題】追加コンポーネントなしで、FFEにより付加されるノイズの影響を低減する。
【解決手段】S1で、タップ係数行列W、出力信号行列Y及び遅延行列Uを用いて伝送前のトレーニング信号と、出力信号とが同様になるようにタップ係数を取得する。S2で、S1で取得されたタップ係数を設定して、伝送前のトレーニング信号と、出力信号とを比較して、サブピークを取得する。S3で、設定されたタップ係数での受信可否を判定する。S3での判定の結果、受信不可と判定された場合に、出力信号行列Y及び遅延行列Uにサブピークに対応する行を挿入する過程(S4)と、S4で得られた、タップ係数行列W、出力信号行列Y及び遅延行列Uを用いて、伝送前のトレーニング信号と、出力信号とが同様になるようにタップ係数を取得する過程(S5)が行われる。S5の後、再びS3が行われる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5