(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニトロン化合物(B)が、N−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン、N−フェニル−α−(3−カルボキシフェニル)ニトロン、N−フェニル−α−(2−カルボキシフェニル)ニトロン、N−(4−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、N−(3−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンおよびN−(2−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンからなる群より選択される化合物である、請求項1に記載の変性ポリマー。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の変性ポリマー、および、その変性ポリマーを含有するゴム組成物、並びに、そのゴム組成物を使用した空気入りタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[変性ポリマー]
本発明の変性ポリマーは、スチレン−共役ジエン共重合体(A)を、ニトロン化合物(B)によって変性することで得られる変性ポリマーである。ここで、上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)中のスチレン単位の含有量は、10質量%以上であり、上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)に含まれる全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合は、5mol%以上である。
本発明の変性ポリマーはこのような構成をとるため、ゴム組成物としたときの発熱性が変性により大幅に低減されたものになると考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
【0012】
上述のとおり、本発明の変性ポリマーでは、ニトロン化合物で変性するポリマーとして特定の構造を有するスチレン−共役ジエン共重合体を使用する。具体的には、スチレン単位の含有量が10質量%以上であり、また、全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合が5mol%以上であるスチレン−共役ジエン共重合体を使用する。ここで、ビニル結合に由来する二重結合は立体障害が少ないためにニトロン化合物で変性されやすい。また、スチレン単位はニトロン化合物との相溶性向上に寄与する。そのため、本発明の変性ポリマーは、スチレン−共役ジエン共重合体が極めて均質にニトロン化合物で変性された構造を有するものと考えられる。結果として、変性による発熱性の低減効果が効率良く発揮され、ゴム組成物としたときの発熱性が変性により大幅に低減されたものになると考えられる。
このことは後述する比較例が示すように、特定の構造を有さないスチレン−共役ジエン共重合体を使用した場合(比較例1および2)には、変性による発熱性の低減が小さいことからも推測される。
【0013】
以下、スチレン−共役ジエン共重合体(A)、および、ニトロン化合物(B)、並びに、本発明の変性ポリマーの製造方法について詳述する。
【0014】
<スチレン−共役ジエン共重合体(A)>
本発明の変性ポリマーに使用されるスチレン−共役ジエン共重合体(A)は、スチレン−共役ジエン共重合体(A)中のスチレン単位の含有量が10質量%以上であり、スチレン−共役ジエン共重合体(A)に含まれる全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合が5mol%以上である、スチレン−共役ジエン共重合体であれば特に制限されない。
【0015】
スチレン−共役ジエン共重合体(A)を製造する際に使用される共役ジエンは特に制限されず、その具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。なかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。すなわち、スチレン−共役ジエン共重合体(A)は、スチレンブタジエンゴム(SBR)であることが好ましい。
【0016】
上述のとおり、スチレン−共役ジエン共重合体(A)中のスチレン単位の含有量(以下、スチレン単位含有量とも言う)は10質量%以上である。なかでも、変性によるウェットグリップ性能の向上が大きくなる理由から、26質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
上述のとおり、スチレン−共役ジエン共重合体(A)に含まれる全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合(以下、ビニル結合量とも言う)は5mol%以上である。なかでも、10mol%以上であることが好ましく、20mol%以上であることがより好ましく、35mol%以上であることがさらに好ましく、変性による発熱性の低減がより大きくなる理由から、50mol%以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されず、100mol%以下であり、80mol%以下であることが好ましい。
ここで、「スチレン−共役ジエン共重合体(A)に含まれる全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合」とは、スチレン−共役ジエン共重合体(A)に含まれる共役ジエンに由来する全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合(mol%)を表し、より具体的には、共役ジエンの結合様式であるシス−1,4−結合、トランス−1,4−結合および1,2−ビニル結合のうち1,2−ビニル結合が占める割合(mol%)を表す。
【0018】
上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)の重量平均分子量は、取扱い性の観点から、100,000〜1,500,000であることが好ましく、300,000〜1,300,000であることがより好ましい。スチレン−共役ジエン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0019】
<ニトロン化合物(B)>
本発明の変性ポリマーに使用されるニトロン化合物(B)は、下記式(1)で表されるニトロン基を有する化合物であれば特に制限されない。
【0021】
上記式(1)中、*は結合位置を表す。
【0022】
上記ニトロン化合物(B)は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0024】
上記式(2)中、XおよびYは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または、芳香族複素環基を表す。
【0025】
XまたはYで表される脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などが挙げられ、なかでも、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、なかでも、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3〜6のシクロアルキル基がより好ましい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基などが挙げられ、なかでも、炭素数2〜18のアルケニル基が好ましく、炭素数2〜6のアルケニル基がより好ましい。
【0026】
XまたはYで表される芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられ、なかでも、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フェニル基、ナフチル基がさらに好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などが挙げられ、なかでも、炭素数7〜13のアラルキル基が好ましく、炭素数7〜11のアラルキル基がより好ましく、ベンジル基がさらに好ましい。
【0027】
XまたはYで表される芳香族複素環基としては、例えば、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基(イミダゾール基)、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基(ピリジン基)、フラン基、チオフェン基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基等が挙げられる。なかでも、ピリジル基が好ましい。
【0028】
XまたはYで表される基が有してもよい置換基としては、特に限定されず、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。なかでも、カルボキシ基が好ましい。
なお、このような置換基を有する芳香族炭化水素基としては、例えば、トリル基、キシリル基などの置換基を有するアリール基;メチルベンジル基、エチルベンジル基、メチルフェネチル基などの置換基を有するアラルキル基;等が挙げられる。
【0029】
上記式(2)で表される化合物は、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0031】
式(3)中、mおよびnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を示し、mとnとの合計が1以上である。
mが示す整数としては、ニトロン化合物を合成する際の溶媒への溶解度が良好になり合成が容易になるという理由から、0〜2の整数が好ましく、0〜1の整数がより好ましい。
nが示す整数としては、ニトロン化合物を合成する際の溶媒への溶解度が良好になり合成が容易になるという理由から、0〜2の整数が好ましく、0〜1の整数がより好ましい。
また、mとnとの合計(m+n)は、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0032】
このような式(3)で表されるカルボキシニトロンとしては特に制限されないが、下記式(3−1)で表されるN−フェニル−α−(4−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(3−2)で表されるN−フェニル−α−(3−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(3−3)で表されるN−フェニル−α−(2−カルボキシフェニル)ニトロン、下記式(3−4)で表されるN−(4−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、下記式(3−5)で表されるN−(3−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロン、および、下記式(3−6)で表されるN−(2−カルボキシフェニル)−α−フェニルニトロンからなる群より選択される化合物であることが好ましい。
【0034】
ニトロン化合物(B)の合成方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ヒドロキシアミノ基(−NHOH)を有する化合物と、アルデヒド基(−CHO)を有する化合物とを、ヒドロキシアミノ基とアルデヒド基とのモル比(−NHOH/−CHO)が1.0〜1.5となる量で、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン等)下で、室温で1〜24時間撹拌することにより、両基が反応し、ニトロン基を有するニトロンを与える。
【0035】
<変性ポリマーの製造方法>
本発明の変性ポリマーの製造方法としては特に制限されないが、上述したスチレン−共役ジエン共重合体(A)とニトロン化合物(B)とを、例えば100〜200℃で1〜30分間混合する方法が挙げられる。
このとき、下記式(4)または下記式(5)に示すように、上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)が有する共役ジエンに由来する二重結合とニトロン化合物(B)が有するニトロン基との間で、環化付加反応が起こり、五員環を与える。なお、下記式(4)は1,4−結合とニトロン化合物との反応を表し、下記式(5)は1,2−ビニル結合とニトロン化合物との反応を表す。
【0038】
上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)に反応させるニトロン化合物(B)の量は、上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく0.3〜5質量部がより好ましい。
【0039】
本発明の変性ポリマーの変性率は特に制限されないが、0.10mol%以上であることが好ましく、変性による発熱性の低減がより大きくなる理由から、0.20mol%以上であることがより好ましい。変性率の上限は特に制限されないが、2.0mol%以下であることが好ましい。
ここで、変性率とは、上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)が有する共役ジエンに由来する全ての二重結合のうち、ニトロン化合物(B)によって変性された割合(mol%)を表し、より具体的には、ニトロン化合物(B)による変性によって上記式(4)または上記式(5)の構造が形成された割合(mol%)を表す。変性率は、例えば、上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)および変性ポリマー(すなわち、変性前後のポリマー)のNMR測定を行うことで求めることができる。
【0040】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物(以下、本発明の組成物とも言う)は、本発明の変性ポリマーを含有するゴム組成物である。
【0041】
本発明の変性ポリマーについては上述のとおりである。
本発明の組成物が変性ポリマー以外のジエン系ゴムを含有する場合、変性ポリマー以外のジエン系ゴムと本発明の変性ポリマーとの合計に対する変性ポリマーの含有量は特に制限されないが、10〜100質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。
【0042】
本発明の組成物は、その効果や目的を損なわない範囲で本発明の変性ポリマー以外の成分を含有してもよい。そのような成分としては、本発明の変性ポリマー以外のジエン系ゴム、シリカ、カーボンブラック、シランカップリング剤(例えば、エボニックデグサ社製Si69、エボニックデグサ社製Si363)、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、オイル、液状ポリマー、テルペン樹脂、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤が挙げられる。
【0043】
<ジエン系ゴム>
本発明の組成物は、上述した変性ポリマー以外のジエン系ゴムを含有するのが好ましい。
上記ジエン系ゴムは特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。上記ジエン系ゴム(A)は、1種のジエン系ゴムを単独で用いても、2種以上のジエン系ゴムを併用してもよい。
【0044】
本発明において、上記ジエン系ゴムとしては、得られるタイヤの耐摩耗性の観点から、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴムを用いることが好ましく、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体とともにブタジエンゴム(BR)を併用することがより好ましい。
また、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。なかでも、得られるタイヤの耐摩耗性の観点から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)であることが好ましい。
【0045】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体中の芳香族ビニル単位含有量は、得られるタイヤの耐摩耗性と靭性のバランスの観点から、20〜80質量%であることが好ましく、26〜70質量%であることがより好ましい。
また、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体に含まれる全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合は、20〜80mol%であることが好ましく、25〜65mol%であることがより好ましい。ここで、ビニル結合の割合とは、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体に含まれる共役ジエンに由来する全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合(mol%)を表し、より具体的には、共役ジエンの結合様式であるシス−1,4−結合、トランス−1,4−結合および1,2−ビニル結合のうち1,2−ビニル結合が占める割合を表す。
【0046】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の重量平均分子量は、加工性と得られるタイヤの靭性とのバランスの観点から、100,000〜1,500,000であることが好ましく、600,000〜1,300,000であることがより好ましい。重量平均分子量の測定方法は上述したスチレン−共役ジエン共重合体(A)と同じである。
【0047】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、その製造方法について特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。
また、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を製造する際に使用される単量体としての、芳香族ビニルおよび共役ジエンは特に限定されない。
共役ジエン単量体の具体例は、上述したスチレン−共役ジエン共重合体(A)と同じである。
また、芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、tert−ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4−ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0048】
本発明において、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を用いる場合の含有量は特に制限されないが、得られるタイヤの耐摩耗性の観点から、ジエン系ゴムと上述した変性ポリマーとの合計に対して、0〜90質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましい。
また、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体とともに上記ブタジエンゴム(BR)を併用する場合、上記ブタジエンゴム(BR)の含有量は特に制限されないが、ジエン系ゴムと上述した変性ポリマーとの合計に対して、10〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。
【0049】
<シリカ>
本発明の組成物はシリカを含有するのが好ましい。
上記シリカは特に制限されないが、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
本発明において、上記シリカは、ゴムの補強性の観点から、湿式シリカであることが好ましい。
【0050】
上記シリカの含有量は特に制限されないが、上記変性ポリマーと上記ジエン系ゴムとの合計100質量部に対して、20〜130質量部であることが好ましく、25〜95質量部であることがより好ましい。
【0051】
<カーボンブラック>
本発明の組成物はカーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックは、特に限定されず、例えば、SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、FEF等の各種グレードのものを使用することができる。
【0052】
上記カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、上記変性ポリマーと上記ジエン系ゴムとの合計100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、3〜60質量部であることがより好ましい。
【0053】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄または加硫促進剤を含有する場合は、硫黄および加硫促進剤以外の成分を先に混合し(例えば、60〜160℃で混合し)、冷却してから、硫黄または加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0054】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物を使用した空気入りタイヤである。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッドに使用した空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0055】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
【0056】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
<ニトロン化合物(化合物1)の合成>
2Lナスフラスコに、40℃に温めたメタノール(900mL)を入れ、ここに、下記式(b−1)で表されるテレフタルアルデヒド酸(30.0g)を加えて溶かした。この溶液に、下記式(a−1)で表されるフェニルヒドロキシアミン(21.8g)をメタノール(100mL)に溶かしたものを加え、室温で19時間撹拌した。撹拌終了後、メタノールからの再結晶により、下記式(c−1)で表されるニトロン化合物(カルボキシニトロン)を得た(41.7g)。収率は86%であった。得られたニトロン化合物を化合物1とする。
【0059】
【化7】
【0060】
<ニトロン化合物(化合物2)の合成>
2Lナスフラスコに、40℃に温めたメタノール(900mL)を入れ、ここに、下記式(b−2)で表される2−ピリジンカルボキシアルデヒド(21.4g)を加えて溶かした。この溶液に、下記式(a−2)で表されるフェニルヒドロキシアミン(21.8g)をメタノール(100mL)に溶かしたものを加え、室温で19時間撹拌した。撹拌終了後、メタノールからの再結晶により、下記式(c−2)で表されるニトロン化合物(ピリジルニトロン)を得た(39.0g)。収率は90%であった。得られたニトロン化合物を化合物2とする。
【0061】
【化8】
【0062】
<ニトロン化合物(化合物3)の合成>
300mLナスフラスコに、下記式(b−3)で表されるイミダゾール−4−カルボキシアルデヒド(35g)およびエタノール(10mL)を入れ、ここに、下記式(a−3)で表されるフェニルヒドロキシアミン(43.65g)をエタノール(70mL)に溶かしたものを加え、室温で22時間撹拌した。撹拌終了後、エタノールからの再結晶により、下記式(c−3)で表されるニトロン化合物(イミダゾールニトロン)を得た。得られたニトロン化合物を化合物3とする。
【0063】
【化9】
【0064】
<変性ポリマーの製造>
下記表1に示される「変性前のSBRのスチレン単位含有量」および「変性前のSBRのビニル結合量」を有するSBR(100質量部(油展品の場合は、SBRの正味の量として100質量部))と下記表1に示されるニトロン化合物(上述のとおり合成した化合物1〜3)(1質量部、実施例8のみ:7質量部、実施例9のみ:0.5質量部)とをミキサー(160℃)で5分間混合することで、SBRをニトロン化合物で変性した変性ポリマー(実施例および比較例の変性ポリマー)を得た。ここで、スチレン単位含有量とは、上述した「スチレン−共役ジエン共重合体中のスチレン単位の含有量」を表す。また、ビニル結合量とは、上述した「スチレン−共役ジエン共重合体に含まれる全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合」を表す。
また、得られた変性ポリマーについてNMR測定を行い、変性率を求めた。具体的には、ニトロン化合物として化合物1を使用した例については、変性前後のポリマーについて、CDCl
3を溶媒とした
1H−NMR測定(CDCl
3、400MHz、TMS)により、8.08ppm付近(カルボキシ基に隣接する2つのプロトンに帰属する)のピーク面積を測定し、変性率を算出した。また、ニトロン化合物として化合物2または3を使用した例についても、それぞれピリジル基またはイミダゾリル基に由来するピーク面積を測定した以外は同様に変性率を算出した。なお、変性後のポリマー(変性ブタジエンゴム)の
1H−NMR測定は、変性後の生成物をトルエンに溶解して、メタノールに沈殿させる精製を2回繰り返した後に、減圧下で乾燥したサンプルを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0065】
なお、実施例1〜11で変性ポリマーの製造に用いたSBRの詳細は以下のとおりである。
・実施例1:タフデン 1000(旭化成ケミカルズ社製)
・実施例2:タフデン 2000R(旭化成ケミカルズ社製)
・実施例3:NIPOL 1502(日本ゼオン社製)
・実施例4:NIPOL NS460(日本ゼオン社製、油展品(油展量:37.5質量%))
・実施例5:NIPOL 9548(日本ゼオン社製、油展品(油展量:37.5質量%))
・実施例6:タフデン3835(旭化成ケミカルズ社製、油展品(油展量:37.5質量%))
・実施例7:NIPOL NS522(日本ゼオン社製)
・実施例8:NIPOL NS460(日本ゼオン社製、油展品(油展量:37.5質量%))
・実施例9:タフデン 1000(旭化成ケミカルズ社製)
・実施例10:タフデン3835(旭化成ケミカルズ社製、油展品(油展量:37.5質量%))
・実施例11:タフデン3835(旭化成ケミカルズ社製、油展品(油展量:37.5質量%))
【0066】
<ゴム組成物の調製>
下記表1のゴム組成物の欄に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。具体的には、まず、下記表1に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、80℃のバンバリーミキサーで5分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄および加硫促進剤を混合し、ゴム組成物を得た。
【0067】
<評価用加硫ゴムシートの作製>
調製したゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で20分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
【0068】
<tanδ(0℃)>
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度0℃の損失正接tanδ(0℃)を測定した。
結果を表1に示す。なお、結果は、各変性ポリマー(30質量部)の代わりに変性前の各SBR(30質量部)を使用した場合の値を100%とするパーセンテージで表した。なお、tanδ(0℃)の値が大きいほど、ウェットグリップ性能が優れる。
【0069】
<tanδ(60℃)>
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の損失正接tanδ(60℃)を測定した。結果は、各変性ポリマー(30質量部)の代わりに変性前の各SBR(30質量部)を使用した場合の値を100%とするパーセンテージで表した。なお、tanδ(60℃)が小さいほど、発熱性が低く、好ましい。
【0070】
【表1】
【0071】
上記表1に示されているゴム組成物の各成分の詳細は以下のとおりである。
・BR:ブタジエンゴム(NIPOL BR 1220、日本ゼオン社製)
・SBR:スチレンブタジエンゴム(E580(旭化成ケミカルズ社製、油展品(油展量:37.5質量%))
・変性ポリマー:上述のとおり合成した各変性ポリマー(各実施例および比較例の変性ポリマー)
・シリカ:ZEOSIL 165GR(ロディアシリカコリア社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
・亜鉛華:亜鉛華3号(正同化学社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・老化防止剤:SANTOFLEX 6PPD(Soltia Europe社製)
・シランカップリング剤:Si69(エボニック・デグサ社製)
・プロセスオイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・硫黄:油処理硫黄(軽井沢精錬所社製)
・加硫促進剤(CZ):ノクセラー CZ−G(大内振興化学工業社製)
・加硫促進剤(DPG):ソクシノール D−G:(住友化学社製)
【0072】
表1から分かるように、変性するポリマーとして特定の構造(スチレン単位含有量、ビニル結合の割合)を有するスチレン−共役ジエン共重合体を使用した実施例1〜11は、いずれも変性により発熱性が大幅に低減されていた。
実施例1〜9の対比から、変性ポリマーの変性率が0.20mol%以上である実施例1〜8は、変性による発熱性の低減がより大きかった。
実施例1〜8の対比から、スチレン単位含有量が26質量%以上である実施例4〜8は、変性によるウェットグリップ性能の向上が大きかった。なかでも、ビニル結合の割合が50mol%以上である実施例4および8は、変性による発熱性の低減がより大きかった。
実施例6と10と11との対比から、ニトロン化合物として上述した式(3)で表される化合物(カルボキシニトロン)を使用した実施例6は、変性による発熱性の低減がより大きかった。
一方、変性するポリマーとして特定の構造を有するスチレン−共役ジエン共重合体以外のスチレン−共役ジエン共重合体を使用した比較例1および2は、いずれも変性による発熱性の低減が小さかった。
【課題】ゴム組成物としたときの発熱性が変性により大幅に低減された変性ポリマー、および、その変性ポリマーを含有するゴム組成物、並びに、そのゴム組成物を使用した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】スチレン−共役ジエン共重合体(A)を、ニトロン化合物(B)によって変性することで得られる変性ポリマーであって、上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)中のスチレン単位の含有量が、10質量%以上であり、上記スチレン−共役ジエン共重合体(A)に含まれる全ての二重結合のうちビニル結合が占める割合が、5mol%以上である、変性ポリマー。