特許第5761467号(P5761467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5761467
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】フラックス回収装置及びはんだ付け装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/08 20060101AFI20150723BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20150723BHJP
   B23K 101/42 20060101ALN20150723BHJP
【FI】
   B23K3/08
   H05K3/34 507J
   B23K101:42
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-543716(P2014-543716)
(86)(22)【出願日】2014年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2014065797
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-226663(P2013-226663)
(32)【優先日】2013年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桧山 勉
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄太
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭48−084070(JP,U)
【文献】 特開2007−053158(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/112040(WO,A1)
【文献】 特開2004−267928(JP,A)
【文献】 特開2008−168201(JP,A)
【文献】 特開2007−000781(JP,A)
【文献】 特開平03−181391(JP,A)
【文献】 特開平05−302736(JP,A)
【文献】 特開平04−267917(JP,A)
【文献】 実開平02−095523(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第02101497(GB,A)
【文献】 国際公開第2009/127769(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0167740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/08
H05K 3/34
B23K 101/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けに用いられるフラックスから気化したフラックス成分を含む混合気体からフラックス成分を回収するフラックス回収装置であって、
前記混合気体に水を散水する第1の散水部と
記混合気体を導入して、前記混合気体からフラックス成分を分離する分離部と、
前記分離部の内側全周囲に降水流を形成する第2の散水部と、
前記分離部内で発生する水蒸気を除去する結露手段と
を備え、
前記分離部は、
上側部に前記混合気体を導入する導入部、上部に開口部を有し、下部に円錐部を有したフラックス成分分離用の筒状体と、
前記筒状体の開口部に係合された蓋部とを備え、
前記蓋部は円盤状の本体部を有し、
所定の長さを有した排気用の円筒部が前記本体部を貫く形態で設けられ、
前記円錐部は排水口を有し、
前記第2の散水部は、前記筒状体の内壁及び前記円筒部の外壁からなる前記分離部の内側全周囲に降水流を形成し、
前記筒状体の接線方向から前記導入部へ前記混合気体が取り込まれると、
前記混合気体は、水と混合された状態で旋回流となり、この旋回流からフラックス成分を含んだが分離されて前記排水口から排水されるとともに
前記円筒部は一端から前記混合気体から分離された気体を取り込んで他端から吸出することにより、前記分離部の導入部に導入される前記混合気体からフラックス成分を分離するようにしたフラックス回収装置。
【請求項2】
前記第1の散水部は、
前記水を扇状又は円錐状に散水するノズルを有するとともに、
前記第2の散水部は、複数の吹き出し口を有して前記水を放射状に散水する環状管を有する請求項1に記載のフラックス回収装置。
【請求項3】
前記分離部から回収される水を浄化する水浄化装置を備えた請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のフラックス回収装置。
【請求項4】
前記水浄化装置は、オゾン処理部及び活性炭フィルターからなることを特徴とする請求項3に記載のフラックス回収装置。
【請求項5】
前記第1の散水部及び前記第2の散水部に水を供給する給水部と、
前記給水部の水を冷却する冷却部と
を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフラックス回収装置。
【請求項6】
前記結露手段は前記水浄化装置に接続され、結露手段によって回収された水を前記水浄化装置に供給するようにした請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のフラックス回収装置。
【請求項7】
はんだ処理部と、
前記はんだ処理部で発生するフラックス成分を含む混合気体からフラックス成分を回収する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフラックス回収装置を備えるはんだ付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス成分を含む混合気体から、フラックス成分を含まない気体を分離して、フラックス成分を回収するフラックス回収装置及びはんだ付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、回路基板の所定の面に電子部品をはんだ付け処理する場合に、リフロー炉や、噴流はんだ付け装置等が使用されている。例えば、このリフロー炉で、はんだ付け処理する場合、ソルダペーストを用いて行われる。ソルダペーストは、フラックスとはんだ粉末とを混合してペースト状にしたもので、印刷またはディスペンサー等により回路基板のはんだ付け部に塗布し、その上に電子部品を搭載させてからリフロー炉で加熱溶融させることにより、回路基板と電子部品を電気的に接続する。なお、はんだ付け処理を行う雰囲気は、不活性ガスを充填させた雰囲気、または、大気(空気)雰囲気となっているのが一般的である。
【0003】
フラックスは、はんだ付けされる金属表面の酸化膜を除去し、また、はんだ付け工程における加熱処理時に金属表面が再酸化するのを防止する。フラックスは、はんだ粉末の表面張力を小さくして濡れを良くする作用がある。フラックスは、松脂、チキソ剤及び活性剤等の固形成分を溶剤で溶解させてある。
【0004】
回路基板に塗布されたソルダペーストは、予備加熱ゾーンでは、フラックス成分中、特に溶剤が揮散(気化)してフラックスヒュームとなり、また予備加熱ゾーンで溶融したフラックス成分中、特にロジン等の固形成分は本加熱ゾーンで高温に曝されると、やはり気化してヒュームとなって炉内を浮遊する。これら溶剤や固形成分由来のヒュームは、炉内で比較的温度の低い部分、例えば回路基板を炉内に搬送するコンベア、炉を構成するフレーム(例えば、ノズルプレート、冷却プレート、ラビリンス等)、炉の出入口に設置されたラビリンス等に接すると冷やされて結露し、さらに温度が下がると粘着性のある固形物となる。これらヒュームが固形物となったもの、いわゆるヒューム固形物がリフロー炉を構成する各構成部に大量に付着すると問題が生じる。
【0005】
例えば、ヒューム固形物がコンベアに大量に付着すると、回路基板がコンベアに粘着して搬出時に回路基板がコンベアから離れずコンベアのスプロケットに巻き込まれて回路基板が破損する。フレームに大量に付着すると、堆積したヒューム固形物が搬送中の回路基板上に落下して回路基板を汚すことになる。
【0006】
そこで、これらヒューム固形物の付着による問題に鑑み、従来より炉内のフラックス成分を除去する方法や装置が多数提案されている。すなわち、はんだ処理時に発生するフラックス成分と、はんだ処理部内の上記雰囲気(不活性雰囲気、大気雰囲気)由来の気体とが混合された混合気体から、フラックス成分を分離し、クリーンな気体をはんだ付け処理部に循環させるフラックス回収装置を有するはんだ付け装置が種々提案されている。
【0007】
特許文献1にはリフロー炉に適用可能なフラックス回収装置が開示されている。このフラックス回収装置によれば、サイクロン機構を有する遠心分離器を備え、略円筒状のサイクロン外周部と、このサイクロン外周部に収容された略円筒状のサイクロン内周部とで二重管状に形成されている。サイクロン外周部の外壁面には冷却プレートが設けられ、遠心分離器内に導入されたフラックス成分を含む混合ガスを冷却するようになされる。
【0008】
混合ガスは、遠心分離器内に流入し、冷却プレートによって冷却されながらサイクロン外周部の内壁とサイクロン内周部の外壁との間で螺旋状の下向き気流を形成する。この間に冷却されて液化したフラックス成分が遠心分離されてサイクロン外周部の内壁に付着する。サイクロン外周部の内壁に付着したフラックス成分は、サイクロン外周部の内壁に沿って自重落下し、フラックス収容部に回収される。これにより、清浄化された空気をリフロー炉に導出できるというものである。
【0009】
上述のフラックス回収装置に関連して、特許文献2〜5にはクリーンルームに適用可能な室内清浄化装置が開示されている。室内清浄化装置によれば、水噴霧装置及び除滴サイクロンを備え、水噴霧装置はクリーンルームに接続され、当該クリーンルームから排気される空気に超微細の水滴を付与する。クリーンルームから排気される空気には塵埃が含まれている。超微細の水滴は水噴霧装置内に充満されている。水噴霧装置には除滴サイクロンが接続され、水滴が付与された空気をサイクロン流を利用して、空気と塵埃等とを分離する。これにより、清浄化された空気をクリーンルームに給気するようになされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−033577号公報
【特許文献2】特開昭 62−149318号公報
【特許文献3】特公平 03−076993号公報
【特許文献4】特公平 03−076994号公報
【特許文献5】特公平 05−058755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、従来例に係るフラックス回収装置及びはんだ付け装置によれば、次のような問題がある。
i.特許文献1に見られるようなリフロー炉によれば、フラックス回収装置のサイクロン機構に冷却プレートが設けられ、混合ガスが冷却プレートによって冷却されながらサイクロン外周部の内壁とサイクロン内周部の外壁との間で螺旋状の下向き気流を形成する。この間に冷却されて液化したフラックス成分が遠心分離されてサイクロン外周部の内壁に付着する方法が採られる。
【0012】
このため、混合ガスが十分に冷却されていない状態では、遠心分離が進まず、サイクロン外周部の内壁とサイクロン内周部の外壁との間で螺旋状に旋回する状態となる。これにより、特許文献2に見られるような水滴が付与された空気をサイクロン流を利用して、空気と塵埃等とを分離する方法に比べて、冷却プレートを設けた構造にしてはサイクロン流による分離効率が悪いという問題がある。
【0013】
ii.特許文献2〜5に見られるような水噴霧装置と除滴サイクロンとを分離し、配管によって接続した構造をそのままフラックス回収装置に適用した場合、超微細の水滴が付与された混合ガス(フラックスヒュームガス)が水噴霧装置から除滴サイクロンへ至る間に、そのフラックス成分が冷却されて液状化及び固化する。このことで、液化及び固化したフラックス成分が除滴サイクロンの導入管や導入口等を塞いだり、フラックス成分が詰まったりして、除滴サイクロン(サイクロン発生部)への混合ガスの流入を妨げるという問題が懸念される。
【0014】
また、分離の過程で発生した水蒸気が、はんだ処理部に流れこむと、はんだ処理部内の低温部で水蒸気が結露し水滴となる。この水滴が炉内に付着すると、錆が発生する原因となる。また、水滴が回路基板に付着すると、回路基板が吸湿する。吸湿した回路基板は、はんだ処理時の加熱によって吸湿した水分が蒸発する。この水分の蒸発に伴ってはんだ付け部位のはんだが飛散する現象が生じる場合がある。はんだ飛散が生じると、飛散したはんだにより端子間が電気的なショート状態を引き起こす、いわゆるはんだブリッジというはんだ付け不良の原因となる。さらに、吸湿した回路基板が経年変化によりはんだ付け部位の劣化や、マイグレーションを引き起こす要因ともなる。このように炉内に侵入した水蒸気によって回路基板の信頼性に係わる不具合が生じる場合がある。さらに、再利用できる水が減少してしまう。
【0015】
そこで、本発明はこのような課題を解決したものであって、分離部の構造を工夫して、フラックス成分を含む混合気体からフラックス成分と気体とを効率良く分離できるようにするとともに、当該分離部内で発生する水蒸気を結露させて回収しはんだ処理部内へ水蒸気が流れ込まないようにすること、及び、回収した水蒸気を再利用できるようにしたフラックス回収装置及びはんだ付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載のフラックス回収装置は、はんだ付けに用いられるフラックスから気化したフラックス成分を含む混合気体からフラックス成分を回収するフラックス回収装置であって、前記混合気体に水を散水する第1の散水部と、混合気体を導入して、前記混合気体からフラックス成分を分離する分離部と、前記分離部の内側全周囲に降水流を形成する第2の散水部と、前記分離部内で発生する水蒸気を除去する結露手段とを備え、前記分離部は、上側部に前記混合気体を導入する導入部、上部に開口部を有し、下部に円錐部を有したフラックス成分分離用の筒状体と、前記筒状体の開口部に係合された蓋部とを備え、前記蓋部は円盤状の本体部を有し、所定の長さを有した排気用の円筒部が前記本体部を貫く形態で設けられ、前記円錐部は排水口を有し、前記第2の散水部は、前記筒状体の内壁及び前記円筒部の外壁からなる前記分離部の内側全周囲に降水流を形成し、前記筒状体の接線方向から前記導入部へ前記混合気体が取り込まれると、前記混合気体は、水と混合された状態で旋回流となり、この旋回流からフラックス成分を含んだが分離されて前記排水口から排水されるとともに、前記円筒部は一端から前記混合気体から分離された気体を取り込んで他端から吸出することにより、前記分離部の導入部に導入される前記混合気体からフラックス成分を分離するようにしたものである。
【0018】
請求項に記載のフラックス回収装置は請求項において、前記第1の散水部は、前記水を扇状又は円錐状に散水するノズルを有し、前記第2の散水部は、複数の吹き出し口を有して前記水を放射状に散水する環状管を有するものである。
【0019】
請求項に記載のフラックス回収装置は請求項1または請求項のいずれか1項において、前記分離部から回収される水を浄化する水浄化装置を備えたものである。
【0020】
請求項に記載のフラックス回収装置は請求項において、前記水浄化装置は、オゾン処理部及び活性炭フィルターからなるものである。
【0021】
請求項に記載のフラックス回収装置は、請求項1から請求項のいずれか1項において、前記第1の散水部及び前記第2散水部に水を供給する給水部と、前記給水部の水を冷却する冷却部とを備えたものである。
【0022】
請求項に記載のフラックス回収装置は、請求項から請求項のいずれか1項において、前記結露手段は前記水浄化装置に接続され、結露手段によって回収された水を前記水浄化装置に供給するようにしたものである。
【0023】
請求項に記載のはんだ付け装置は、はんだ処理部と、前記はんだ処理部で発生するフラックス成分を含む混合気体からフラックス成分を回収する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のフラックス回収装置を備えるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフラックス回収装置によれば、分離部内に導入されたフラックス成分を含む混合気体は、第1の散水部によって形成される旋回流(渦流)によって水気を帯びて分離部内を旋回する。この旋回流によって水気を帯びた混合気体は、フラックス成分を含んだ水と気体とに分離され、気体よりも重いフラックス成分を含んだ水は、排水口から外部へ排水される。また、前記分離部内で発生した水蒸気は、結露手段により冷やされて水滴となって回収される。
【0025】
これにより、フラックス成分を含む混合気体からフラックス成分を効率良く回収できるようになる。また、水蒸気のはんだ処理部への浸入を防ぐことができるため、炉内の錆の発生や、回路基板が吸湿することに伴って生じる不具合を未然に防ぐことができる。また、水の再利用率を向上させることができる。さらに、分離部内の旋回流及び降水流が、フラックス成分が分離部内壁に付着することを防止するため、分離部内壁のメンテナンスが不要となる。
【0026】
本発明に係るフラックス回収装置が備えられたはんだ付け装置によれば、フラックス成分が回収可能であり、また、効率的に水を再利用できるリフロー炉や噴流はんだ付け装置等を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】はんだ付け装置1の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明に係る実施形態としてのフラックス回収装置100の構成例を示す斜視図である。
図3】分離部10の寸法例を示す斜視図である。
図4】分離部10の組立例(その1)を示す分解斜視図である。
図5】分離部10の組立例(その2)を示す分解斜視図である。
図6】分離部10の組立例(その3)を示す分解斜視図である。
図7】フラックス回収装置100の動作例(その1)を示す側面視一部破砕の断面図である。
図8】フラックス回収装置100の動作例(その2)を示す上面視断面図である。
図9】変形例としてのフラックス回収装置100’の構成及び動作例を示す上面視断面図である。
図10】水冷コイル型の結露手段の斜視図である。
図11】空冷多管型の結露手段の斜視図である。
図12】水浄化装置50のシステムフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態として、フラックス回収装置及びはんだ付け装置について説明する。本発明のフラックス回収装置100は、はんだ処理時に発生するフラックス成分を含む混合気体からフラックス成分を回収する装置である。ここに、フラックス成分を含む混合気体とは、はんだ処理時に発生する気体状となったフラックス成分と、はんだ処理部内の雰囲気(不活性雰囲気、大気雰囲気)由来の気体とが混在した気体をいう。
【0029】
図1を参照して、本発明を適用できるはんだ付け装置1の構成例について説明する。このはんだ付け装置1は、本例においては、大気雰囲気中で処理されるはんだ処理部40を有し、はんだ処理部40内で発生した混合気体からフラックス成分を回収した上で、処理雰囲気(空気)のみをはんだ処理部40に戻すフラックス回収装置100を有する。なお、はんだ処理部内の雰囲気が不活性雰囲気である場合においても適用できる。
【0030】
実際には、はんだ処理部40の排気口403から混合気体2を回収し、フラックス回収後の処理雰囲気(空気)は送風機30を介してはんだ処理部40の吸気口402側に戻されて再利用される。
【0031】
本発明に係るフラックス回収装置100は、混合気体2よりフラックス成分を回収・分離する筒状の分離器15を有する。分離器15は、外筒とそれよりも短かな内筒(円筒部)14とで構成され、分離器15は、頂部側が開放端となされたもので、その頂部側から混合気体が供給される。
【0032】
フラックス成分の分離及び回収は、混合気体の他に水が利用され、分離器15内に供給された水と混合気体を分離器15内で旋回させながら流下させて行われる。そのため、分離器15の頂部は蓋部11によって覆われると共に、分離器15の頂部側外周面の一部を利用して、水や混合気体の導入部(導入口)13が設けられる。
【0033】
外部より供給される水3は、第1と第2の散水系に分離された上で供給されるもので、まず頂部側に設けられた導入口303を介して頂部側よりその内周面側に沿って流下しながら散水する構成が採用されている(以下この散水系に供する水3を導水3Bとして表す)。この他に、分離器15の入り口側に設けられた第1の散水部20Aで混合気体2に水3が吹き付けられ、その状態で、混合気体が分離器15内に導かれる。この散水系に使用される水3を以下では導水3Aとして表現する。
【0034】
導水3Aは分離器15の内壁面側に衝突するような流速となされており、その結果として導水3A及び頂部より散水された導水3Bの一部は螺旋状に旋回しながら流下する(点線で示す旋回流a)。導水3Bの一部は分離器15の内壁を流れ落ちる(点線で示す降水流c)ため、混合気体に含まれるフラックス成分は内壁面に触れることなく外筒底部側まで導かれることになり、フラックス成分が付着して分離器15の内壁面が汚れるようなことがなくなる。
【0035】
分離器15にはさらに以下のような構成が施される。蓋部11の中央部から分離器15内部に向かって連結用の筒体12が設けられ、この連結用筒体(円筒部)12が内筒14の上端部と連結される。連結用の筒体12を省き、内筒14を蓋部11の外部まで露出する構成としてもよい。
【0036】
分離器15内を混合気体は外筒底部側まで流下するが、その過程で分離器15内に供給された水3によって混合気体のうちフラックス成分は冷却されて、フラックス成分の殆どが液化、固形化が始まるとともに、フラックス成分は、散水された水分で被覆されるようになる。一方、混合気体のうち気体成分(殆ど水蒸気を含んだ空気)は内筒14の開口部側に吸い込まれ、吸い込まれた気体成分は内筒14内を上昇して気体の吸出口204側まで到達する。
【0037】
吸出口204まで導かれた気体成分は結露手段17に導かれる。結露手段17によって気体成分が冷やされるため、気体成分中の水蒸気成分が結露する。この結露手段17を設けることによって、結露手段17を通過した気体は水蒸気を含まない、乾いた空気のみとなる。その後この空気は送風機30を介して上述したはんだ処理部40に供給される(第1循環経路)。したがって、はんだ処理部40には乾いた空気を送り込むことができる。なお、結露によって生じた水滴は後述する水浄化装置50に供給される
【0038】
一方、水分で被覆されたフラックス成分と水は、分離器15の底部側に設けられた排水口401より排水される。排水口401は水浄化装置50の入口501に連結されている。水浄化装置50の詳細は後述するとして、この水浄化装置50によって水とフラックス成分とが分離され、フラックス6が回収される。浄化された水3は排水口502より排水されて再び分離器15における処理水として再利用される(第2循環経路)。必要に応じて新たに水を補給しても良い。
【0039】
続いて、図2及び図3を参照して、上述したフラックス回収装置100を詳細に説明する。分離部10は蓋部11及びフラックス分離用の筒状体(以下分離器15という)を有している。分離器15は、上部にフランジ状の開口部301を有し、上側部には導入部13が設けられ、下部には円錐部304を有している。分離器15の上側部は、矩形窓状に切り抜かれ(開口され)、付け根部302とされている。分離器15は、一例として、所定の厚みを有したステンレス板から形成されている。
【0040】
導入部13は分離器15の円形部位から接線方向に延在する形態で形成されている。導入部13は断面が矩形でダクト状を成しており、その一端が上述の付け根部302で分離器15と連通されている。導入部13の他端には矩形状又は円形状の導入口303が設けられている。導入部13は分離部10の懐部位にスリット305(開口部)を有している。ここに懐部位とは、付け根部302における導入部13と分離器15との間の接合箇所の内側をいい、以下、懐側という。
【0041】
導入部13は分離器15と同様なステンレス板から成形される。導入口303ははんだ付け装置1の排気口等に連結される。前記排気口には、はんだ処理時に発生したフラックス成分を含む混合気体が排気されるようになる。
【0042】
この例では、分離部10の直前に第1の散水部20Aが設けられる。第1の散水部20Aは、例えば、導入部13の接線方向xの内側であって、導入部13の懐側に設けられる。第1の散水部20Aはノズル25を有し、ノズル25によって水を扇状(又は円錐状)に散水する(一次降水)。ノズル25は、例えば、導入口303の全域に水膜を形成して当該水膜に混合気体を通過させる。ノズル25から散布される水によって、混合気体は冷却されるので、混合気体中のフラックス成分の液化、固形化が始まるとともに、フラックス成分は、散水された水分で被覆されるようになる。
【0043】
なお、第1の散水部20Aから霧状(ミスト状)になるように散水すると、効率良く混合気体中のフラックス成分に水がまとわり着くよう(被覆されるよう)になる。また、上述のように第1の散水部20Aは導入部13の接線方向xの内側であって、導入部13の懐側に設けられており、送風機30によって、散水された水は分離器15内に引き込まれるため、分離器15の内周囲(内壁)に沿って旋回しながら下降する旋回流となる。
【0044】
分離器15の上部には蓋部11が取り付けられている。蓋部11は円盤状の本体部101を有し、分離器15のフランジ状の開口部301を塞ぐ形態でネジ止めされている。蓋部11は例えば、厚手のステンレス板を鍔状に切り抜き加工して形成されている。蓋部11には、排気用の円筒部12が旋回流の中心位置(軸)に沿って、本体部101を貫く形態で設けられる。円筒部12は所定の長さを有している。円筒部12の下方には、更に同軸大径の円筒部14が接合されている。円筒部14も所定の長さを有している。
【0045】
また、蓋部11の裏側であって、分離器15の内側上部(円筒部12の周囲)には第2の散水部20Bが設けられる。第2の散水部20Bは環状管を有し、当該環状管の表面に複数の吹き出し口が設けられている。第2の散水部20Bは、分離器15の内周囲(内壁)や、円筒部12,14の外周囲(外壁)に水を放射状に散布する(二次降水)。これにより、分離器15の内壁や円筒部12,14の外壁に降水流を形成して、水気を帯びたフラックス成分が分離器15の内壁や円筒部12,14の外壁に付着することを防止できる。従って、分離器15の内壁や円筒部12,14の外壁を清掃することが不要となり、結果としてメンテナンスが不要となる。
【0046】
円筒部12の一端には気体の吸出口204が設けられ、他端には円筒部14が接合されている。円筒部14の他端には吸気口201が設けられている。吸出口204は、結露手段17に接続される。さらに結露手段17の他端は送風機等に接続される。これにより、はんだ処理時に発生するフラックス成分を含んだ混合気体からフラックス成分が分離された気体5は、吸気口201から取り込まれて、吸出口204から結露手段17を経由して送風機30へ送られる。気体5は水蒸気を含むが、結露手段17は、気体5に含まれる水蒸気を冷却し、水滴にして除去する。水滴が取り除かれた気体7は、送風機30に送られる。水滴は水浄化装置50に送られる。送風機30は、はんだ処理部40にフラックス及び水蒸気回収後のクリーンな気体7を送風するようになされる。
【0047】
一方、上述の円錐部304には、排水口401が設けられ、クリーンな気体が分離された後、フラックス成分を含む水を排水するようになされる。水は、各散水部から散水されたものである。はんだ処理時に発生するフラックス成分を含んだ混合気体は、分離器15の接線方向から導入口303へ取り込まれるときに、第1の散水部20Aによって一次降水が施され、水気を帯びるようになる。分離器15の内側で第2の散水部20Bによって二次降水が施される(図7、8参照)。
【0048】
なお、図中、xは第1の散水部20Aにおける散水方向でもあり、yは導入口303における混合気体の導入方向でもあり、zは、分離器15内におけるフラックス成分を含んだ水の旋回(渦)流の降下方向でもある。
【0049】
続いて、図3を参照して、分離部10の寸法例について説明する。この図に示すL1は円筒部12の蓋部11内の長さであり、L2は円筒部14の長さである。円筒部12は円筒部14の長さに比べて短い長さを有しており、蓋部11の内側へ埋め込まれる形態で設けられている。
【0050】
この例では、蓋部11を基準にして長さL1+L2の位置に吸気口201が設けられている。ある程度の長さL1+L2を確保するようにしたのは、フラックス成分を含んだ水が吸気口201へ帰還されるのを阻止するためである。Hは分離器15の高さである。D1は蓋部11や、分離器15等の外径であり、D2は円錐部304の排水口401の口径である。
【0051】
また、bは導入口303の開口幅であり、hは導入口303の高さである。dは吸出口204の口径である。導入部13の側面にはスリット305が形成されている。スリット305は所定の長さL0及び幅Wを有している。スリット305には図2に示した第1の散水部20Aが取り付けられる。
【0052】
なお、第1の散水部20Aから導入口303の全域に水膜を形成することで、圧力損失が増加することが予想される。この例でスリット305の長さL0は70〜80mm程度であり、その幅Wは5〜10mm程度に設定される。これらにより、分離部10を構成する。
【0053】
図4図6を参照して、分離部10の組立例(その1〜3)について説明する。図4において、まず、第1の散水部20Aを分離器15に取り付ける。これに先立って、導入部13、スリット305及び孔部306を設けた分離器15を準備する。孔部306は第2の散水部20Bを取り付ける部分である。
【0054】
例えば、分離器15については、「9」字状に切り抜いた天板に、帯板を切り曲げ円筒加工した部分に、更に、矩形状の導入部13となる部分を接合して形成する。導入部13の所定の位置には、長さL0×幅Wのスリット305(開口部)を形成する。また、孔部306は帯板を円筒加工する前に展開状態で所定の位置に孔開け加工しておくとよい。
【0055】
もちろん、天板の中央には開口部301を形成する。当該開口部301は、蓋部11を係合するために、開放面側はフランジ形状となされ、例えば、8箇所のボルト係合用の雌ねじがフランジ面に形成されたものを準備する。
【0056】
次に第1の散水部20Aとして、枠部材21、パッキン部材22、I型の取付け部材23、パッキン部材24、ノズル25及びノズル継続部26を準備する。枠部材21にはスリット305とほぼ同じ大きさの長孔角形状の開口部221を有したものを準備する。枠部材21には蓋部11や導入部13等と同等の材質のものを使用するとよい。枠部材21の四隅にはネジ21aが施される。パッキン部材22には、中央部に長孔角形状の開口部222及び、四隅にボルト貫通用の開口部22aを形成したゴム板を準備する。
【0057】
I型の取付け部材23には、扁平扇状の水膜を誘導可能なスペース(扁平ダクト)を有したものを準備する。例えば、扁平ダクトの一方の側が枠部材21に面接合可能なフランジ部位となるように形成し、他方の側がノズル継続部26に面接合可能なフランジ部位となるように形成する。
【0058】
一方のフランジ部位は枠部材21の開口部221と同じ長孔角形状の開口部(図示せず)を有しており、その四隅には、ボルト貫通用の開口部23aを形成したものを準備する。他方のフランジ部位はノズル25の口径とほぼ等しい円形状の開口部231を開口し、その四隅には、ボルト貫通用の開口部23bを形成したものを準備する。パッキン部材24には、中央部に円形状の開口部241及び、四隅にボルト貫通用の開口部24aを形成したゴム板を準備する。
【0059】
ノズル継続部26にはノズル25、給水管251及びノズル板252を有したものを準備する。もちろん、ノズル継続部26はノズル25と給水管251とを接続可能な構造であればよい。ノズル25はノズル板252に設けられている。ノズル板252の四隅には、ボルト貫通用の開口部25aを形成したものを準備する。ノズル25には扁平扇状に水を散水可能な先端形状を有したものを準備する。
【0060】
これらの部材が準備できたら、図4に示したパッキン部材22を取付け部材23と枠部材21との間に挟んで、当該取付け部材23を枠部材21に取り付ける。このとき、開口部221及び開口部222を位置合わせする。その後、図示しない4本のボルトを使用して、取付け部材23のフランジ部位の四隅を枠部材21に固定する。
【0061】
次に、ノズル継続部26を取付け部材23に取り付ける。この例では、ノズル25の先端部をパッキン部材24の開口部241に挿通する。パッキン部材24を取付け部材23とノズル継続部26との間に挟んで、当該取付け部材23にノズル継続部26を取り付ける。図示しない4本のボルトを使用して、ノズル継続部26を取付け部材23のフランジ部位の四隅に固定する。この固定によって、散水部付きの分離器15が得られる。
【0062】
散水部付きの分離器15が準備できたら、図5に示す蓋部11を組み立てる。蓋部11には本体部101に円筒部12を接合したものを準備する。例えば、本体部101には所定の厚みを有した金属板を円盤状に切り出し、その周囲に係合用の8個の孔部11aを形成し、かつ、その中央部位に円筒接合用の開口部(図示せず)を形成したものを準備する。
【0063】
円筒部12には、所定の外径を有したパイプ素材を所定の長さに切断し、当該パイプ素材を本体部101の円筒接合用の開口部に挿通した後、そのパイプ素材の上・下部をフランジ状に加工する。パイプ素材は挿通した状態の所定の位置で本体部101の図示しない開口部に接合する。円筒部12は、他端が開口部203を成している。これにより、こま状の蓋部材が得られる。
【0064】
この例では、円筒部12の下方に円筒部14を接合する。例えば、円筒部14には、円筒部12の外径よりも一回り大きな外径を有したパイプ素材を所定の長さに切断し、当該パイプ素材に円筒接合用の開口部202を形成する。当該パイプ素材の上部はフランジ状に加工する。例えば、パイプ素材の上部に環状平板(鍔状板)を接合する。これにより、上部フランジ部位を有した円筒部14が得られる。
【0065】
これらの部材が準備できたら、こま状の蓋部材と円筒部14とを接合する。例えば、円筒部12の開口部203と円筒部14の開口部202とを位置合わせした状態で、円筒部12のフランジ部位と円筒部14の上部フランジ部位とを溶接する。これにより、円筒部14を接合した蓋部11が得られる。
【0066】
これらの部材が準備できたら、図6に示す円筒部付きの蓋部11を分離器15に取り付ける。これに先立って、分離器15の内側に第2の散水部20Bを取り付ける。第2の散水部20Bには、例えば、環状のパイプの表面に複数の吹き出し口を設けたものを準備する。吹き出し口は、例えば、管軸と直交する方向において、1つ置きに、外側及び内側に向けて開口するとよい。外側に向けて開口した吹き出し口によって、分離器15の内周囲(内壁)に水を放射状に散布できるようになる。また、内側に向けて開口した吹き出し口によって、円筒部12,14の外周囲(外壁)に水を放射状に散布できるようになる。
【0067】
第2の散水部20Bの取り付けが終わったら、図6に示すパッキン部材16を介在させて、当該蓋部11を分離器15に取り付ける。パッキン部材16には、その中央部に円形状の開口部161を有したO型のゴム板を準備する。パッキン部材16の周囲には、例えば、角度45°置きにボルト貫通用の開口部16aが設けられている。
【0068】
このとき、蓋部11の円筒部14をパッキン部材16の開口部161に挿通し、その後、円筒部14の先端を分離器15の中へ挿通すると共に第2の散水部20Bに挿通する。そして、パッキン部材16を分離器15と蓋部11との間に挟んだ状態で、分離器15のフランジ部位に蓋部11を重ね合わせて、当該分離器15を蓋部11で閉蓋する形態で取り付ける。そのとき、図示しない8本のボルトを使用して、その周囲を固定する。これにより、図2に示した分離部10が完成する。
【0069】
図7及び図8を参照して、フラックス回収装置100の動作例(その1,2)について説明をする。なお、図8図7に示したフラックス回収装置100のX1−X1矢視断面図である。この例では、混合気体2が分離器15の接線方向から導入口303を介して取り込まれる。
【0070】
図7において、第1の散水部20Aを側面から見たとき、ノズル25から導入口303へ向けて導水3Aが扁平扇状に散水される(一次降水)。扇状の水膜の大きさは、当該導入口303に接続されるパイプの口径よりも広いことが好ましい。水膜の広さをパイプの口径よりも大きくすることで、漏れなく当該水膜に混合気体2を通過させることができる。これにより、導入口303の全域に渡って水膜(水のカーテン)で通路を遮断する形態を採ることができる。
【0071】
図7に示した第1の散水部20Aによって、混合気体2は水気を帯びて、図8に示す付け根部302で分離器15内に進入する。送風機30で気体を巡回させているので、分離器15では旋回流aが発生する。旋回流aは白抜き矢印で示す時計方向(右巻き)に回転する。このとき、第2の散水部20Bは、放射状に導水3Bを散水する。
【0072】
この例で、第2の散水部20Bは分離器15の内壁に降水流c(図7参照)を形成すると共に、円筒部12,14の外壁に降水流cを形成する(二次降水)。この降水流cに向かって、図中、白抜き矢印に示す水気を帯びた混合気体2が進入する。水気を帯びた混合気体2は旋回しながら、排水口401の側に降下する。
【0073】
混合気体2は、旋回流aに乗って分離器15内を旋回しながら、円筒部12,14の外周と分離器15の内周の間を降下する。この旋回中に、フラックス6を含んだ水4と、気体5とが遠心分離され、気体5よりも重いフラックス6を含んだ水4は、排水口401へ導かれる。このように、混合気体2への一次降水を施した後に、二次降水しているので、フラックス6の回収性を向上できるようになるとともに、フラックス6が分離器15の内壁や円筒部12,14の外壁に付着することを防止することができる。
【0074】
なお、円筒部12の吸出口204(排気口)に導かれたフラックス回収後の気体5は、結露手段17によって、水蒸気成分が取り除かれ(除湿され)る。除湿された気体7は、送風機30の送風力を利用してはんだ処理部40に戻される。分離器15の排水口401からは、外部(紙面の下方)へフラックス6を含んだ水4が排水される。当該水4は、水蒸気を含む混合気体2から分離されたものである。これにより、混合気体2から効率良くフラックス6を分離でき、気体5を清浄化できると共にフラックス6を回収できるようになる。
【0075】
<変形例>
図9を参照して、変形例としてのフラックス回収装置100’の構成及び動作例について説明する。フラックス回収装置100’は、フラックス回収装置100の第2の散水部20Bと異なる構造の第2の散水部20B’を備えている。第2の散水部20B’は、第2の散水部20Bと同様にして、環状のパイプの表面に複数の吹き出し口を設けているが、その開口方向が管軸(線)と直交する方向ではなく、その外側は管軸の接線方向に沿う方向に穿設されている。
【0076】
反対側(内側)は、管軸線対称の方向に穿設されている。これらの方向は旋回流aと同調する方向である。管軸の接線方向に開口した吹き出し口によって、分離器15の内周囲(内壁)に水を旋回放射状に散布できるようになる。また、内側に管軸線対称の方向に開口した吹き出し口によって、円筒部12,14の外周囲(外壁)に水を旋回放射状に散布できるようになる。これにより、分離器15の内壁に旋回状の降水流cを形成すると共に、円筒部12,14の外壁に旋回状の降水流cを形成する(二次降水)。この旋回状の降水流cに向かって、図中、白抜き矢印に示す水気を帯びた混合気体2が進入する。水気を帯びた混合気体2は旋回を助長されながら、排水口401の側に降下できるようになる。
【0077】
図10、11を参照して、結露手段の例を説明する。結露手段は以下に限らない。まず図10を参照して結露手段17の水冷コイル型結露手段の例を説明する。結露手段17は、箱体であり(図10では内部を開示している)、パイプ72,73,74が接続され、熱伝導性が良好なコイル状のパイプ71が内部に備わっている。前記パイプ71の入口と出口は外部の給水装置等に接続されていて、入り口から出口へ水が循環する仕組みになっている。結露の手順を説明すると、まず前記パイプ71内に水などの液体を流して、当該パイプの表面を冷却する。分離器15から送られてきた水蒸気を含む気体5が、パイプ72から結露手段17内に入り、パイプ71により冷やされて結露する。結露により発生した水は、パイプ74から外部に流出、回収され、再利用される。水が除去された気体7がパイプ73から排気されて送風機30に送られる。
【0078】
さらに、図11を参照して、結露手段の変形例としての結露手段17’を説明する。結露手段17’は、空冷多管型の結露手段である。結露手段17’は、箱体であり(図11では内部を開示している)、外部に接続されているパイプ81〜85と、内部に1つ以上のパイプからなるパイプ群86が備わっている。詳細は省略するも、パイプ83とパイプ群86の各パイプ及びパイプ84は、それぞれパイプ内部が連通しており、パイプ83の入口は冷風機など(図示しない)に接続されている。結露の手順を説明すると、まず前記パイプ83内を冷たい空気が流れてパイプ群86の周り表面を冷却した後、パイプ84から排出される。分離器15から吸出された水蒸気を含む気体5が、パイプ81から結露手段17’内に入り、前記パイプ群86の周り表面で冷やされて結露する。結露により発生した水は、パイプ85から外部に流出、回収され、再利用される。水が除去された気体7がパイプ82から吸出されて送風機30に送られる。
【0079】
図1、12を参照して、水浄化装置50の構成例について説明する。水浄化装置50は、例えばオゾン処理部90と活性炭吸着部91(活性炭フィルター)の組み合わせからなる。オゾン処理部90は、オゾン処理槽92と滞留槽93及び発泡管94からなる。フラックス6を含んだ水4は、入口501からオゾン処理部90に入り、オゾン処理槽92を通って滞留槽93へ移動し、排水口503から活性炭吸着部91の入口504へ排水される。
【0080】
発泡管94は、外部のオゾン発生器95に接続されていて、オゾン発生器95で発生したオゾンを泡状にしてオゾン処理槽内へ供給している。水4がオゾン処理槽92のオゾン雰囲気中を通過すると、水4中の有機物(フラックス6)が、オゾンの酸化力により分解される。さらに滞留槽93は、水4を滞留させてオゾンによる分解反応を促進させる。次に活性炭吸着部91のフィルターを通過することによって分解物が活性炭に吸着されるので、水の浄化を行うことが可能となる。また、フィルターは複数種類のメッシュを備え、これらを単独で又は組み合わせて使用されるようにしても良い。
【0081】
活性炭吸着部91の排水口502から流出した水3”は、給水部51に送られる。給水部51では、前記水3”と外部から送られる清浄な水3’が混合されて水を冷却する手段としてのチラー52に送られる。チラー52では給水部51から送られた水3が水冷され、散水部20Aに送られる導水3Aと散水部20Bに送られる導水3Bに分かれる。本発明では、水を再利用しているために、循環に伴い水の温度が徐々に暖められる。このことを回避するために冷却手段としてチラーが用いられる。本例においては、図1に示すように給水部51に対して直列にチラー52を配した例を示している。この配置に限定することなく、例えば、給水部51に対して並列にチラー52を配して、給水部51の水をチラー52で冷却した後、再度、給水部51に戻すような配置であっても良い。なお、外部から送られる清浄な水3’は、水の循環において不足した分を必要に応じて補充(補給)するためのものである。
【0082】
このようにフラックス回収装置100によれば、装置内で発生した水蒸気を結露手段により回収し、再利用することができるようになる。しかも、フラックス成分を含んだ混合気体2への一次降水を施した後に、二次降水しているので、分離器15の中でフラックス6を効率良く分離できるようになる。
【0083】
また、はんだ付け装置1によれば、本発明に係るフラックス回収装置100やフラックス回収装置100’が備えられるので、旋回流a及び降水流cを利用してフラックス6が回収可能な凝縮方式の高性能のフラックス回収機能を有した熱風リフロー炉や噴流はんだ付け装置等を提供できるようになる。
【0084】
なお、本発明はフラックス塗布装置におけるフラックス回収装置としても適用できる。フラックス塗布装置は図示せずも、フラックス塗布部と、本発明に係るフラックス回収装置を備え、フラックス塗布部で発生するフラックス成分を含む混合気体からフラックス成分を回収する。フラックス塗布装置によれば、回路基板に塗布されない浮遊する余剰フラックスが塗布装置内に付着し堆積し、回路基板上に落下することにより回路基板を汚す等、同様の問題がある。このため、本発明を適用することによって、余剰フラックスを含んだ混合気体から、余剰フラックスを分離し、クリーンな気体を塗布装置内に循環できるようになる。
【0085】
従って、本発明のフラックス回収装置100,100’は、リフロー炉等に適用して、はんだ処理部40で加熱されて発生するフラックス成分を含む混合気体2からクリーンな気体を分離することができる。また、フラックス塗布装置等に適用して、はんだ処理部としてのフラックス塗布部で発生する余剰フラックスを含む混合気体からクリーンな気体を分離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、リフロー処理や、溶融はんだ付け処理や、フラックス塗布処理時に回収されるフラックス成分を含む混合気体から、旋回流及び降水流を利用してフラックス成分を回収すると共に水蒸気を除去するフラックス回収機能を備えたリフロー炉、溶融はんだ付け装置及びフラックス塗布装置等に適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0087】
1 はんだ付け装置
10 分離部
11 蓋部
12,14 円筒部
13 導入部
15 分離器
16 パッキング部材
17 結露手段
20A 第1の散水部
20B 第2の散水部
30 送風機
40 はんだ処理部
50 水浄化装置
100,100’ フラックス回収装置
【要約】
フラックス成分を含む混合気体から、フラックス成分を含まない気体を分離して、フラックス成分を回収できるようにする。分離部内で発生する水蒸気を、結露手段により冷やして水滴として回収し、再利用する。
フラックス成分を含む混合気体に水を散水する第1の散水部(20A)と、第1の散水部(20A)から散水された状態で混合気体を導入する導入口を有して旋回流により混合気体からフラックス成分を分離する分離部(10)と、分離部(10)の内側に降水流を形成する第2の散水部(20B)と、分離部(10)内で発生する水蒸気を冷やして水滴にし、除去する結露手段(17)とを備えるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12