特許第5761471号(P5761471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761471
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ニトリルゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/02 20060101AFI20150723BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150723BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20150723BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20150723BHJP
   F16C 33/72 20060101ALI20150723BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20150723BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C08L9/02
   C08K3/04
   C08K5/13
   C08K5/40
   F16C33/72
   F16J15/10 Y
   F16J15/16 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-551438(P2014-551438)
(86)(22)【出願日】2014年6月18日
(86)【国際出願番号】JP2014066135
(87)【国際公開番号】WO2015005081
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-145465(P2013-145465)
(32)【優先日】2013年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】矢本 博光
(72)【発明者】
【氏名】小宮 英治
(72)【発明者】
【氏名】青柳 裕一
(72)【発明者】
【氏名】古川 智規
(72)【発明者】
【氏名】貝瀬 友宏
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102367300(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102417630(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102432926(CN,A)
【文献】 特開平10−087897(JP,A)
【文献】 特開2012−097213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00− 13/08
C09K 3/10
F16C 33/72− 33/82
F16J 15/00− 15/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルゴム100重量部に対して、SRFまたはHAFカーボンブラック5〜50重量部、平均粒子径5μm以下のグラファイト5〜60重量部、ケッチェンブラックまたはアセチレンブラックよりなる導電性カーボン5〜50重量部、加硫系としてのイオウ-チウラム系加硫促進剤および老化防止剤としての2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンまたは2,5-ジ第3アミルハイドロキノンを含有してなり、チウラム系加硫促進剤がテトラメチルチウラムジスルフィドの場合、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンまたは2,5-ジ第3アミルハイドロキノンを0.5〜2.5重量部含有せしめ、チウラム系加硫促進剤がテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドの場合、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンまたは2,5-ジ第3アミルハイドロキノンを1.5〜3.5重量部含有せしめたニトリルゴム組成物。
【請求項2】
請求項1記載のニトリルゴム組成物から加硫成形されたゴム加硫成形品。
【請求項3】
シール材として用いられる請求項2記載のゴム加硫成形品。
【請求項4】
転がり軸受用オイルシールとして用いられる請求項3記載の加硫成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリルゴム組成物に関する。更に詳しくは、耐泥水性、低トルク性などにすぐれた加硫成形品を与え得るニトリルゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球規模の環境問題から、自動車業界においては軽量化と低燃費化が強く望まれている。これを受けて、自動車部品のうちオイルシールのような回転系の部品に関しては、自動車の燃費向上のために低トルク化が求められており、車輪用転がり軸受(ハブベアリング)についても低トルク化が望まれている。他方、車輪用転がり軸受は屋外で使用され、極端なケースでは泥水に曝されるような劣悪な環境で使用されるため、その弾性部材(オイルシール)にはさらに耐泥水性も求められているが、耐泥水性はトルク性能と相反する関係にある。
【0003】
転がり軸受用オイルシールに耐泥水性を付与することを目的として、ニトリルゴムにクレーを添加することが提案されている。しかるに、近年の転がり軸受用オイルシールには、走行、停止時の静電気により発生するラジオノイズ対策として導電性が求められることが多く、クレーの添加は大幅に導電性を低下させるため、導電用途への適用はできないといった制約がある。
【0004】
また、積雪地帯(寒冷地)では、融雪剤として塩化カルシウムが、凍結防止剤として塩化ナトリウムなどが道路上に散布されており、車輪用転がり軸受はかかる環境下においても使用されることとなる。凍結防止剤が散布された道路を走行した後は、自動車の金属(鉄)部品の防錆のため車体下部の水洗が一般的に行われている。
【0005】
ここで、凍結防止剤の水溶液にオイルシールが曝されると、極端な場合これらの水溶液が電解液となり、オイルシール構成材料の導電性ゴムと車輪軸などの金属との間に電位差が生じ、通電することが考えられる。この通電に至る過程において鉄がイオン化することとなるが、これが触媒となってシール材料となっているゴムの酸化劣化が促進され、ゴムの水への膨潤が増大するようになってしまう。特に、オイルシールの場合には、ゴムリップの内側は金属環に接着することにより固定されているため、膨潤が大きくなるとリップの外側を波打ち変形に至らしめる可能性がある。
【0006】
さらに、車輪用転がり軸受け用オイルシール材料には、材料特性上およびコスト上、ニトリルゴムが使用されることが一般的であるが、ニトリルゴムには化学構造上酸化されやすいブタジエンユニットを含んでおり、特に寒冷地用としてはニトリルゴムの中でも低温特性にすぐれているアクリロニトリル量が低いタイプのニトリルゴムが用いられる傾向にあり、アクリロニトリル含量の低いニトリルゴムは相対的にブタジエンユニットを多く含むものであるため、より酸化されやすい化学構造であるといえる。
【0007】
本出願人は先に、導電材料としての特性を維持するとともに、自動車などの車輪用転がり軸受用オイルシールなどに求められる耐泥水性、シール性を満足し、さらには低トルク性を達成しうるニトリルゴム組成物として、ニトリルゴム100重量部に対して、カーボンブラック5〜50重量部、平均粒子径5μm以下のグラファイト5〜60重量部およびこれら以外の他の導電性カーボン5〜50重量部を含有してなるものを提案している(特許文献1)。
【0008】
しかるに、この先行文献記載の各実施例で開示されているアルキル化ジフェニルアミン老化防止剤含有ニトリルゴム組成物から加硫成形されたゴム加硫成形品は、耐泥水性、シール性を満足し、さらには低トルク性を満足させるものの、後記比較例2に示される通り、凍結防止剤に曝された後に水で洗浄された場合のゴムの体積変化率が大きく、かかる点での改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−97213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、導電材料としての特性を維持するとともに、自動車などの転がり軸受用オイルシールなどに求められる耐泥水性、シール性、低トルク性を満足し、さらには凍結防止剤に曝された後に水で洗浄された場合のゴムの体積変化率が低く抑えられた加硫成形物を与えるニトリルゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる本発明の目的は、ニトリルゴム100重量部に対して、SRFまたはHAFカーボンブラック5〜50重量部、平均粒子径5μm以下のグラファイト5〜60重量部、ケッチェンブラックまたはアセチレンブラックよりなる導電性カーボン5〜50重量部、加硫系としてのイオウ-チウラム系加硫促進剤および老化防止剤としての2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンまたは2,5-ジ第3アミルハイドロキノンを含有してなり、チウラム系加硫促進剤がテトラメチルチウラムジスルフィドの場合、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンまたは2,5-ジ第3アミルハイドロキノンを0.5〜2.5重量部含有せしめ、チウラム系加硫促進剤がテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドの場合、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンまたは2,5-ジ第3アミルハイドロキノンを1.5〜3.5重量部含有せしめたニトリルゴム組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るニトリルゴム組成物から加硫成形されたゴム加硫成形品は、導電材料としての特性を維持するとともに、自動車などの転がり軸受用オイルシールなどに求められる耐泥水性、シール性、低トルク性を満足させ、さらに融雪剤や凍結防止剤に曝された後に水洗浄された場合においてもゴムの体積変化率が低く抑えられているといったすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
NBRとしては、結合アクリロニトリル含量が15〜48%、好ましくは22〜35%で、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が25〜85、好ましくは30〜60のアクリロニトリル−ブタジエンゴムが用いられ、実際には市販品、例えばJSR製品N240S、N241等をそのまま用いることができる。このNBRに対しては、カーボンブラック、特定平均粒子径のグラファイト、これら以外の他の導電性カーボンおよび老化防止剤としての2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンまたは2,5-ジ第3アミルハイドロキノンが添加されて、本発明のNBR組成物が調製される。
【0014】
SRFまたはHAFカーボンブラックは、NBR 100重量部当り5〜50重量部、好ましくは15〜40重量部の割合で用いられる。SRFまたはHAFカーボンブラックがこれより少ない割合で用いられると、材料強度が不足するようになり、一方これより多い割合で用いられると、材料硬度が高すぎるようになり好ましくない。
【0015】
グラファイトとしては、平均粒子径(日機装製マイクロトラックHRA9320-X100により測定)が5μm以下、好ましくは1〜5μmのものが用いられる。グラファイトの平均粒子径がこれより大きいものを用いると、トルク値が大きくなり、本発明の目的とする低トルク化を達成することができない。かかるグラファイトは、このような平均粒子径を有するものとして一般に市販されているものをそのまま用いることができ、NBR 100重量部当り5〜60重量部、好ましくは10〜60重量部の割合で用いられる。グラファイトがこれより少ない割合で用いられると、トルク低減効果が得られないようになり、一方これより多い割合で用いられると、加工性が悪化するため好ましくない。
【0016】
ケッチェンブラックまたはアセチレンブラックよりなる導電性カーボンは、NBR 100重量部当り5〜50重量部、好ましくは5〜40重量部の割合で用いられる。ケッチェンブラックまたはアセチレンブラックよりなる導電性カーボンがこれより少ない割合で用いられると、体積抵抗率が高くなってしまい、一方これより多い割合で用いられると、材料硬度が高すぎるようになり好ましくない。
【0017】
SRFまたはHAFカーボンブラック、グラファイトと、ケッチェンブラックまたはアセチレンブラックよりなる導電性カーボンは、これらの合計量がNBR 100重量部当り15〜100重量部、好ましくは15〜80重量部の割合となるように用いられる。これらの合計量がこれより少ない割合で用いられると、体積抵抗率が高くなってしまい、一方これより多い割合で用いられると、材料硬度が高すぎるようになり好ましくない。
【0018】
老化防止剤としては、アミン-ケトン系、芳香族第二級アミン系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系、ベンズイミダゾール系、ジチオカルバミン酸系、チオウレア系、亜リン酸系、有機チオ酸系、特殊ワックス系等の各種老化防止剤があるが、本発明の目的を達成するためには、ポリフェノール系老化防止剤のみが有効である。
【0019】
ポリフェノール系老化防止剤としては、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンまたは2,5-ジ第3アミルハイドロキノンが、NBR 100重量部当り0.5〜3.5重量部、好ましくは1〜3重量部の割合で用いられる。老化防止剤がこれより少ない割合で用いられると融雪剤や凍結防止剤に曝された後に洗浄された場合のゴムの体積変化率を低く抑えることができず、一方これより多く用いた場合にはスコーチタイムが短くなってしまうようになる。
【0020】
SRFまたはHAFカーボンブラック、グラファイトと、ケッチェンブラックまたはアセチレンブラックよりなる導電性カーボンを配合したNBRの加硫は、イオウ加硫系が用いられる。
【0021】
イオウ加硫には加硫促進剤が併用され、加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドのチウラムジスルフィド系加硫促進剤が用いられる。
【0022】
チウラムジスルフィド系加硫促進剤は、その種類に応じてニトリルゴム100重量部当りのポリオール系老化防止剤の配合量が異なり、テトラメチルチウラムジスルフィドの場合にあっては0.5〜2.5重量部、好ましくは1〜2重量部の範囲であり、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドにあっては、1.5〜3.5重量部、好ましくは2〜3重量部の範囲にある。
【0023】
組成物中には、以上の成分以外に、シリカ、活性炭酸カルシウム等のカーボンブラック以外の他の補強剤、タルク、けい酸カルシウム等の充填剤、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等の受酸剤、ジオクチルセバケート(DOS)等の可塑剤などゴム工業で一般的に用いられている各種配合剤が適宜添加されて用いられる。
【0024】
組成物の調製は、インタミックス、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機あるいはオープンロールなどを用いて混練することによって行われ、その加硫は、射出成形機、圧縮成形機、加硫プレス等を用い、一般に約160〜200℃で約3〜30分間程度加熱することによって行われ、更に必要に応じて約140〜160℃で約0.5〜10時間加熱する二次加硫も行われる。
【実施例】
【0025】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0026】
実施例1
〔配合例I〕
ニトリルゴム(JSR製品JSR N240S;AN含量26%、 100重量部
ムーニー粘度ML1+4(100℃)56)
ケッチェンブラック(ライオン製品EC-600JD) 7 〃
カーボンブラック(東海カーボン製品シーストS-SVH) 25 〃
グラファイト(日本黒鉛工業製品HOP;平均粒子径 約3μm) 30 〃
酸化亜鉛(堺化学工業製品) 10 〃
ステアリン酸(ミヨシ油脂製品) 1 〃
ワックス(精工化学製品サンタイトR) 2 〃
2,5-ジ第3ブチルハイドロキノン 2 〃
(ポリフェノール系老化防止剤;大内新興化学工業製品
ノクラックNS-7)
可塑剤(ランクセス製品ブルカノールOT) 9 〃
イオウ(鶴見化学工業製品) 1 〃
加硫促進剤(テトラメチルチウラムジスルフィド; 2.8 〃
大内新興化学工業製品ノクセラーTT)
加硫促進剤(スルフェンアミド系加硫促進剤; 3.8 〃
大内新興化学工業製品ノクセラーCZ)
以上の各配合成分をニーダおよびオープンロールで混練し、生地特性(ムーニー粘度、スコーチタイム)を測定した後、混練物について170℃、10分間のプレス加硫および150℃、30分間のオーブン加硫を行ない、250×120×2mmおよび50×20×0.2mmのテストピースを作製した。得られたテストピースを用いて、常態物性の測定および浸漬試験を行った。
生地特性:ASTM D1646に対応するJIS K6300-1:2001(ムーニー試験)準

125℃で最低ムーニー粘度およびスコーチタイムT5を測定
スコーチタイムは、生地の安定性、加硫成形性の観点より、
6分以上が好ましい
常態物性:ASTM D2240に対応するJIS K6253-3:1997(硬さ;デュロメー
タA瞬時)準拠
ASTM D412に対応するJIS KK6251:2010(引張強さ、破断時伸
び)準拠
250×120×2mmのテストピースを使用
浸漬試験:50×20×0.2mmのテストピース2個を鉄製の虫ピンで刺して固
定し、a〜cの手順で塩水浸漬、乾燥、水道水浸漬を行った後
、試験前後の体積変化率を算出
a.5重量%の塩水50mlに70℃で70時間浸漬
−降雪路面走行時の凍結防止剤散布によるオイルシールの
暴露を想定−
b.23℃で12時間常温乾燥
−凍結防止剤の散布されていない路面を走行し、洗浄前の
状態を想定−
c.水道水50mlに23℃、70時間浸漬
−自動車金属部の防錆のため、水道水による洗浄を想定−
【0027】
実施例2
実施例1において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノン量が1重量部に変更されて用いられた。
【0028】
実施例3
実施例1において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりに2,5-ジ第3アミルハイドロキノン(ポリフェノール系老化防止剤;大内新興化学工業製品ノクラックDAH)が同量(2重量部)用いられた。
【0029】
実施例4
実施例3において、2,5-ジ第3アミルハイドロキノン量が1重量部に変更されて用いられた。
【0030】
比較例1
実施例1において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンが用いられなかった。
【0031】
比較例2
実施例1において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりにアルキル化ジフェニルアミン(芳香族第二級アミン系老化防止剤;大内新興化学工業製品ノクラックODA-NS)4重量部が用いられた。
【0032】
比較例3
実施例1において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりにN,N´-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン(芳香族第二級アミン系老化防止剤;大内新興化学工業製品ノクラックWhite)が同量(2重量部)用いられた。
【0033】
比較例4
実施例1において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりにチオジプロピオン酸ジラウリル(有機チオ酸系老化防止剤;大内新興化学工業製品ノクラック400)3重量部が用いられた。
【0034】
比較例5
実施例1において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりに2,2-メチレンビス(4-エチル-6-第3ブチルフェノール)(ビスフェノール系老化防止剤;大内新興化学工業製品ノクラックNS-5)が同量(2重量部)用いられた。
【0035】
比較例6
実施例1において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノン量が3重量部に変更されて用いられた。
【0036】
比較例7
実施例1において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりに2,5-ジ第3アミルハイドロキノン(ノクラックDAH)3重量部が用いられた。
【0037】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表1に示される。
【0038】
実施例5
実施例1において、配合例Iの代わりに次の配合例IIが用いられた。
〔配合例II〕
ニトリルゴム(JSR製品JSR N240S;AN含量26%、 100重量部
ムーニー粘度ML1+4(100℃)56)
カーボンブラック(東海カーボン製品シーストS-SVH) 25 〃
グラファイト(日本黒鉛工業製品HOP;平均粒子径 約3μm) 30 〃
ケッチェンブラック(ライオン製品EC-600JD) 7 〃
酸化亜鉛(堺化学工業製品) 10 〃
ステアリン酸(ミヨシ油脂製品) 1 〃
ワックス(精工化学製品サンタイトR) 2 〃
2,5-ジ第3ブチルハイドロキノン(ノクラックNS-7) 3 〃
可塑剤(ランクセス製品ブルカノールOT) 9 〃
イオウ(鶴見化学工業製品) 1 〃
加硫促進剤(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラム 12 〃
ジスルフィド;大内新興化学工業製品ノクセラーTOT-N)
加硫促進剤(ノクセラーCZ) 3.8 〃
【0039】
実施例6
実施例5において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノン量が2重量部に変更されて用いられた。
【0040】
実施例7
実施例5において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりに2,5-ジ第3アミルハイドロキノンが同量(3重量部)用いられた。
【0041】
実施例8
実施例7において、2,5-ジ第3アミルハイドロキノン量が2重量部に変更されて用いられた。
【0042】
比較例8
実施例5において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンが用いられなかった。
【0043】
比較例9
実施例5において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりにアルキル化ジフェニルアミンが4重量部が用いられた。
【0044】
比較例10
実施例5において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりに2,2-メチレンビス(4-エチル-6-第3ブチルフェノール)が2重量部用いられた。
【0045】
比較例11
実施例5において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンが4重量部用いられた。
【0046】
比較例12
実施例5において、2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンの代わりに2,5-ジ第3アミルハイドロキノン(ノクラックDAH)4重量部が用いられた。
【0047】
以上の実施例5〜8、比較例8〜12で得られた結果は、次の表2に示される。
【0048】
以上の結果より、次のことがいえる。
(1) 各実施例ではスコーチタイムT5はいずれも7分以上と十分に長く、また浸漬試験後の体積変化率も3.6%以下と小さくなっており、これらの両特性にすぐれた加硫物が得られている。
(2) 老化防止剤を全く使用しない場合には、浸漬試験後の体積変化率が非常に大きく耐塩水性に劣っている(比較例1、8)。
(3) 特許文献1で規定されている配合で、その実施例で用いられている芳香族第二級アミン系老化防止剤、すなわちアルキル化ジフェニルアミンが添加された場合は、浸漬試験後のゴムの膨潤が大きく、耐塩水性に劣っている(比較例2、9)。
(4) 老化防止剤として芳香族第二級アミン系老化防止剤であるN,N´-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンが添加された場合は、浸漬試験後のゴムの膨潤が大きく、耐塩水性に劣っている(比較例3)。
(5) 老化防止剤として有機チオ酸系老化防止剤であるチオジプロピオン酸ジラウリルのみが添加された場合は、浸漬試験後のゴムの膨潤は抑えられるものの、スコーチタイムT5が短くなってしまい、生地保管性あるいは加硫成形性に劣るようになる(比較例4)。
(6)ビスフェノール系老化防止剤である2,2-メチレンビス(4-エチル-6-第3ブチルフェノール)が添加された場合は、浸漬試験後のゴムの膨潤が抑えられず、耐塩水性に劣っている(比較例5、10)。
(7) 2,5-ジ第3ブチルハイドロキノンまたは2,5-ジ第3アミルハイドロキノンを規定よりも少量または過剰量用いた場合には、生地の安定性、加硫成形性を示すスコーチタイムが所望の6分間以上に達しない(比較例6〜7、11〜12)。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のニトリルゴム組成物から加硫成形されたゴム加硫成形品は、耐泥水性、耐塩水性、シール性、低トルク化を満足させる材料であるため、自動車のハブベアリング用泥水シール材として有効に用いられる。