【文献】
小林 真輔 , 越塚 登 , 坂村 健 ,超小型チップネットワーキング技術,電子情報通信学会誌,日本,社団法人電子情報通信学会 ,2008年 7月 1日,91(7),595-603
【文献】
北村 晃一 , 眞田 幸俊 ,コンパレータを用いたIR-UWBによる位置測定の実験的検討,電子情報通信学会技術研究報告. WBS, ワイドバンドシステム,日本,社団法人電子情報通信学会 ,2005年10月21日,105(365),31-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記GPS位置計測システムの発明によって、建物内や地下街等であっても、人工衛星からの微弱な信号を受信可能となった。
しかし、GPS位置計測システムでは、三次元的な位置の特定―――例えば、ビル内の何階に居るのかといった特定―――は至難であるという欠点があった。
また、歩行者に、加速センサ,ジャイロ,地磁気センサ等を搭載した自律走行ナビも提案されてはいるが、累積誤差があり、少し離れると位置がずれてくるという欠点があった。
さらに、UWBを使って距離計測を行うという考えも存在するが、法令上許容された電力で送信されたUWBの電波は、極めて微弱であるため、壁や床を通過すると一層微弱化して、距離計測が不可能であるという重大な問題があって、ほとんど実用に供されていない。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来の問題を解決して、壁や床や天井や障害物が存在するビルや病院や駅等の建物、あるいは、地下街等に於ても、超高感度で計測でき、かつ、三次元の位置計測を容易に行えるシステムを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る超高感度位置計測システムは、M系列のPN符号を周期的に送信すると共に、既知の三次元の位置に予め設置された複数のUWB送受信機と、複数の上記UWB送受信機の同期を取るためのサーバーと、上記UWB送受信機から同期をとって周期的に送信される信号を受信して、固有のタグ識別信号を付加して反射させるように、移動対象物に付設されるUWB用RFタグと、を具備し、複数のUWB送受信機は、上記RFタグから反射されるM系列のPN符号を、同期加算及び相関計算することによって、上記RFタグが付設された上記移動対象物と、上記複数のUWB送受信機の各々との間の距
離を求め、さらに、上記サーバー又は上記UWB送受信機に於て、上記距離に基づいて、上記移動対象物の三次元の位置を計算するように構成したものであ
る。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、壁や床や天井や障害物が多く存在するビル、病院、駅、施設や地下街等に於ても、人又は物の位置を正確に知ることが可能となる。特に、従来のGPS測位システムでは困難であった“三次元”の(人や物の)位置を高精度に、しかも、(従来は極めて短距離の狭小範囲にのみ使用可能と考えられてきた)UWBを巧妙に活用した優れた発明である。しかも、法律で規制された微小電力下でのUWBの出力のままで、上述の効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図4と
図5は、本発明に係る超高感度の位置の計測システムの適用場所の一例として、病院10を例示する。この病院10としては、地上4階建てで、地下1階を備えた場合を示し、
図5に星印にて示すように、多数(複数)のUWB送受信機1…を、病院10の各階に、複数個ずつ、配設する。なお、本発明に於て、UWBとは、Ultra Wide Bandのことを言う。
【0010】
図5に示した正面図では、各階毎に、略均等に複数個のUWB送受信機1…が配設されていることを示しているが、病院10を平面的に見れば、二次元的に略均等に散点状に配設する(図示省略)。さらに、建物の壁2が存在するところでは、UWB送受信機1,1の相互間隔を短縮するのが望ましい。逆に、壁2が無い広いロビー等では、UWB送受信機1,1の相互間隔を大きくすることが可能である。また、地下は相互間隔を短縮するのが望ましい。
【0011】
図1に示す実施の一形態に於て、上記壁2を有する場所に、UWB送受信機1は、既知の位置―――三次元の位置―――に予め設置され、M系列PN符号を、周期的に送信する(
図6参照)。
3は、複数の上記UWB送受信機1…の同期を取るためのサーバーである。通信手段4を介して、サーバー3と複数のUWB送受信機1…とは、相互に送受信可能に接続される。
5はディスプレイ(表示手段)であって、後述のタグ位置を画面に表示できる。このディスプレイ5はサーバー3と接続されている。なお、
図1では、床や天井等を省略して、上方の階や下方の階に於ける、UWB送受信機1を図示省略したが、
図5を参酌すれば、上下方向にも、配置されていることが理解できる。
【0012】
そして、サーバー3から通信手段4を介して送信される同期信号によって、全てのUWB送受信機1は同期して、M系列のPN符号を(周期的に)送信するが、その送信される信号I
0 を受信可能なのが、
図1に示したUWB用RFタグTである。このRFタグTは、医者,看護師等の人,あるいは、医療機器やカルテ等の物から成る移動対象物20に付設(取着)される。
【0013】
上記UWB送受信機1から同期をとって周期的に送られる信号I
0 を受信すると、このRFタグTは、それ固有のタグ識別信号(ID)を付加して反射させる。この反射させる信号を、It として、
図1に示した。
複数個のUWB送受信機1は、このように反射してくる反射信号It ―――M系列のPN符号を備えている―――を、同期加算及び相関計算する(
図6参照)。このUWB送受信機1に於ける
同期加算及び相関計算によって、RFタグTと受信したUWB送受信機1との距離を求め得る。即ち、上記RFタグTが付設された移動対象物20との距離が求められる。
【0014】
さらに追加説明すれば、上述したように、本発明では、UWBの電波によりM系列PN符号を周期的に複数回(n回とする)送信I
0 して、RFタグTにて反射した信号It を、UWB送受信機1にて受信し、受信側(送受信機)で復調されたM系列PN符号をn回にわたって同期加算して、その後、相関計算(サンプリング数をmとする)を、することにより1/√mnだけ内部熱雑音を減少させることができる。即ち雑音の中にうずもれた壁ごし、あるいは、床・天井ごしの信号であっても、雑音の中から、信号を、浮かび上らせることができる。
一般にデータXをx(n)(ただしn=0:m−1)、データYをh(n)(ただしn=0:m−1)、kを整数として0≦k≦m−1としたとき、相互相関計算式は次で与えられる。
【0016】
ここでy(0),y(1),y(2),………y(m−1)を計算。ここでy(k)の計算においてデータの加算回数はm個である。データx(n)に重畳している雑音が熱雑音のような統計的性質にあうガウス性のものとするとm回の加算により雑音の成分は1/√mの比率で減少することが知られている。そしてこの計算を相関計算という。(等価な相関計算は高速演算としてFFTを用いて、一般によく知られて用いられる方法があるが、ここでは原理説明のため一般的な計算方法を示した)。またy(0),y(1),y(2),………y(m−1)のそれぞれの絶対値が、最大の値であればy(mm)の絶対値を相関のピーク値とする。(ただし0≦mm≦m−1)このときのmmを遅延量τと呼ぶ。また、遅延量とピーク値y(mm)を求めることを相関のピーク値を求めるという。またここでデータXが周期性信号をn回同期して得られたx(n)とすれば、この相関計算により熱雑音軽減量は1/√mnの比率で減少する。そして、本発明ではPNコードをx(n)、レプリカPN符号をh(n)、nを同期加算回数、mをPNコード信号1周期分のサンプル数として、相関計算により熱雑音軽減量は1/√mnの比率で減少する。
一例として、m=2046、n= 10000の場合には、1/√(2046×10000)に熱雑音は軽減される。
【0017】
図5に示すように、三次元空間に存在するUWB用RFタグTであって、壁2、床、天井にて遮断されていても、壁ごし、床、天井ごしに、UWB送受信機1によって、雑音の中から信号を浮かび上らせることができ、そのUWB送受信機1と、タグTが敷設された移動対象物20との、距離を求め得る。
図1では、RFタグTとして、左から2番目のRFタグT
2 をもって送信,受信,反射を示しているが、反射信号It は、RFタグTから直接(そのまま)に反射しても良いが、所望によりRFタグTにて増幅して反射(増幅反射)するも好ましい。
【0018】
そして、
図1に示すように、4個の既知の三次元位置のUWB送受信機1,1,1,1の各々とRFタグT
2 との(上述の如くして求めた)距離に基づいて、RFタグT
2 ―――移動対象物20―――の位置を、サーバー3に於て、又は、UWB送受信機1に於て、演算する。これによって、目的の移動対象物20の位置計測が行われ、ディスプレイ5に表示される。
【0019】
次に、
図2は本発明の他の実施の形態であって、
図1と相違する点は、1個の送受信機1Aのみから、M系列のPN符号を周期的に送信するように構成され、他の3個の送受信機1B,1B,1Bはすべて受信のみを行う構成である。
1個のUWB送受信機1Aから、M系列のPN符号を、複数回、周期的に送信する。送信した信号I
0 を、RFタグT
2 は受信し、受信した信号I
0 に、タグ識別信号IDを付加して、直接に、又は、増幅して、反射し、その信号It を、(図例では)4個の送受信機1A,1B,1B,1Bにて受信する。そして、タグ識別符号IDを識別する。
【0020】
4個の送受信機1A,1B,1B,1Bの各々に於て、同期加算及び相関計算を行うことによって、各々と、RFタグT
2 との距離を求められる。4個の送受信機1A,1B,1B,1Bの三次元位置が既知であるので、4個の(求められた)上記距離によって、RFタグT
2 の三次元位置(三次元座標)が求められる。
【0021】
なお、
図2に於ては、1個の送信可能なUWB送受信機1Aと3個(乃至それ以上の)受信用のUWB送受信機1Bを例示したが、
図5に示すように、多数個の送受信機1を配設する場合には、所定の個数から成る群毎に、1個の送信可能なUWB送受信機1Aを設けることとする。つまり、全体としては、送信可能なUWB送受信機1Aは、比較的離れて散点状に複数個を設置し、他方、受信専用のUWB送受信機1Bについては、比較的近接した散点状に、(3倍以上の個数をもって)多目に設置する構成とする。
【0022】
次に、
図3は
参考例を示し、M系列のPN符号を同期的に送信すると共に、既知の位置に予め設置した複数のUWB送信機30と、この複数のUWB送信機30の同期を取るためのサーバー3と、UWB送信機30から同期を取りつつ、周期的に送信される信号I
0 を受信する移動自在な(携帯可能な)UWB受信機40とを、備える。
UWB受信機40は、UWB送信機30から受信したM系列のPN符号を、同期加算及び相関計算する電子回路を備え、これによって、複数個(好ましくは4個以上)のUWB送信機30との距離を求めることができる。
【0023】
このように求めた距離に基づいて、自己の位置をUWB受信機40自身が計算するよう構成する。そして、UWB受信機40には、図示省略したが、ディスプレイ(表示画面)を設けてい
る。
【0024】
ところで、
図2に於て、送受信機1AとRFタグT
2 との距離、及び、RFタグT
2 と他の送受信機Bとの距離の和を計算し、このような和を3通り求める、楕球の交点を演算すれば、FRタグT
2 の三次元座標(三次元の位置)が求められる。そのように、RFタグT
2 と個々の送受信機1との距離を求めずに、上記和を求めて、和が一定の一つの楕球を決定し、2つ以上の楕球の交点が、RFタグT
2 の求める三次元座標とするも、望ましい。
【0025】
上述の各実施の形態に於て、UWB送受信機1,1A,1
Bの配設位置が既知であると述べたが、その既知なる配設三次元位置に関しては、サーバー3に予め記憶させておくのが望ましい。なお、送受信機1,1A,1
B自身に、既知なる三次元位置を予め記憶させることも可能である。
また、UWB用RFタグTに増幅回路及び電池を内蔵して、増幅反射させることも望ましい点は、既述の通りである。
【0026】
図4と
図5に例示した病院10にあっては、緊急患者が発生した場合に、医師等(移動対象物)の所在場所が、立体的に直ちに確認できて、好ましいといえる。また、高層ビルや駅やショッピングセンター等の建物や施設や地下街に於て、人又は物から成る移動対象物20を、迅速に確認できて、本発明の用途は広いといえる。また、本発明は、従来のGPSによる測位システムでは至難とされてきたところの三次元的測位が可能となり、その用途が前述の如く広いと共に、所望により、二次元的測位のGPSと結合するも、望ましい測位システムであるといえる。
【0027】
本発明は、従来は余りに微弱過ぎて、測位システムには、ほとんど実用性が無いと思われてきたUWBを巧妙に実用性の高いものとして、新たな用途を開拓する革新的発明である。